説明

エスカレータ装置

【課題】エスカレータを駆け上がったり、駆け下がったりするような異常乗車に起因する事故に対応するエスカレータ装置を提供する。
【解決手段】エスカレータ装置は、エスカレータを撮影する映像手段からの映像を解析して異常乗車の状態を検知するエスカレータ装置において、上記エスカレータを無人で運転して得た上記映像から移動物の移動量を判別し、および、人が正常に乗車した上記エスカレータを運転して得た上記映像から人の移動範囲を判別する初期設定処理と、通常運転された上記エスカレータの上記映像を解析し得た移動量が上記初期設定処理において判別された移動量と異なっているとき、または通常運転された上記エスカレータの上記映像を解析し得た移動範囲が上記初期設定処理において判別された移動範囲を超えているとき異常乗車として警告を発する異常乗車検知処理と、を実行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、エスカレータの乗客が被る事故を減少するエスカレータ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、周辺の監視を行うエスカレータは、エスカレータの異常状態を検出して動作する安全スイッチと、この安全スイッチの動作によりエスカレータを停止させる手段と、エスカレータ周辺の状況を撮像する撮像手段を備えており、この撮像手段の出力画像を基にしてエスカレータを不正規な状態で利用している乗客を検出する画像処理手段と、この画像処理手段の出力に応じて不正利用に対する注意喚起を行う案内手段と、安全スイッチの動作により撮像手段の出力画像のうちの所定時間分を記憶する手段を備えている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開平11−60132号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、エスカレータに絡む事故には乗客がエスカレータを駆け上がったりするという不正常な動きに起因する事故が含まれており、従来の安全装置では対応できないという問題がある。
【0005】
この発明の目的は、エスカレータを駆け上がったり、駆け下がったりするような異常乗車に起因する事故に対応するエスカレータ装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係るエスカレータ装置は、エスカレータを撮影する映像手段からの映像を解析して異常乗車の状態を検知するエスカレータ装置において、上記エスカレータを無人で運転して得た上記映像から移動物の移動量を判別し、および、人が正常に乗車した上記エスカレータを運転して得た上記映像から人の移動範囲を判別する初期設定処理と、通常運転された上記エスカレータの上記映像を解析し得た移動量が上記初期設定処理において判別された移動量と異なっているとき、または通常運転された上記エスカレータの上記映像を解析し得た移動範囲が上記初期設定処理において判別された移動範囲を超えているとき異常乗車として警告を発する異常乗車検知処理と、を実行する。
【発明の効果】
【0007】
この発明に係るエスカレータ装置の効果は、エスカレータを駆け上がったり、駆け下がったりするような異常乗車を自動的に検知し警告を発することにより異常乗車を行っている人に注意を喚起して事故を減らすことができることである。
また、乗客が固定物に接近したことを検出したときにはエスカレータを緊急に停止することにより乗客の挟み込みを防止することができることである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
図1は、この発明を実施するための最良の形態のエスカレータ装置の概略図である。
この発明に係るエスカレータ装置は、図1に示すように、エスカレータ11の移動手摺12、踏段13、エスカレータ11を制御するエスカレータ制御部6、エスカレータ11およびその周辺の状況を撮像する映像手段としてのデジタルカメラ7、デジタルカメラ7により撮像された映像を解析してエスカレータ11を監視する映像解析装置1、エスカレータ11の利用者に対して注意を喚起する案内を行う案内手段としてのスピーカー8を備える。
なお、図1では分かり易いようにデジタルカメラ7と映像解析装置1を別々に図示しているが、実際には、映像解析装置1はデジタルカメラ7の内部に内蔵されている。
【0009】
図2は、図1の映像解析装置1の機能を示す機能ブロック図である。
この発明に係る映像解析装置1は、映像処理部2、映像解析部3、警報処理部4、映像蓄積部5を有する。
映像処理部2は、デジタルカメラ7からの映像信号を受信し、映像解析部3用に信号処理を行い映像表示部としての液晶モニタ9へ映像信号を送信する。
映像解析部3は、エスカレータ制御部6からの運転信号と連動し、映像処理部2からの映像処理信号から判別点を求め、その判別点の移動量と記憶した正常時映像との比較処理により異常検出を行う。
警報処理部4は、映像解析部3での異常検出時にスピーカー8へ警告出力を行う。
映像蓄積部5は、警告出力時にデジタルカメラ7が撮影した映像のうち所定の時間帯の映像を蓄積する。
作業ツール10は、初期設定処理を実行するときの特異点設定、記憶データの転送や採取、映像蓄積部5の記録映像の再生・保存・削除を行う。そして、作業ツール10は設定および映像確認するものであるので、必要に応じ映像解析装置1と接続することができる。
【0010】
図3は、映像解析部3が実行する初期設定処理の手順を示すフローチャートである。
ステップS1では、エスカレータ11を停止したときの映像(以下、「停止時映像」と称す)を解析し、壁や天井などの固定物を判別する。
ステップS2では、停止時画像の解析が完了したか否かを判断し、解析が完了したときにはステップS3に進み、解析が未完了のときにはステップS1に戻る。
ステップS3では、特異点設定を行う。特異点設定とは、停止時映像の解析で明暗や濃淡差などが少ないために固定物と判別が出来なかった場合に作業ツール10を用いて設定する。
ステップS4では、特異点設定が完了したか否かを判断し、特異点設定が完了したときにはステップS5に進み、特異点設定が未完了であるときにはステップS3に戻る。
【0011】
ステップS5では、エスカレータ11を運転し且つ乗客を載せないようにしたときの映像(以下、「乗客無運転時映像」と称す)を解析する。ここでは、エスカレータ運転時で移動手摺12と踏段13の移動映像解析を行う。ステップS1の停止時映像の解析と異なり、移動検出したものをエスカレータ移動部と判別する。エスカレータ移動部は移動手摺12と踏段13に識別のし易いテープを貼り、踏段13は踏段上の警戒色など明暗や濃淡差のある箇所を判別点として移動量を認識する。
ステップS6では、乗客無運転時映像の解析が終了したか否かを判断し、解析が終了したときにはステップS7に進み、解析が終了していないときにはステップS5に戻る。
【0012】
ステップS7では、エスカレータを運転し且つ乗客を正常に載られせたときの映像(以下、「乗客有運転時映像」と称す)を解析する。乗客の手、頭、身体、脚などをエスカレータ11や固定物との映像比較することができる箇所を判別点15として認識し、移動範囲を求める。
ステップS8では、乗客有運転時映像の解析が終了したか否かを判断し、解析が終了したときにはステップS9に進み、解析が終了していないときにはステップS7に戻る。
ステップS9では、ステップS5の乗客無運転時映像の解析の結果として得られる移動手摺12や踏段13の移動量やステップS7の乗客有運転時映像の解析の結果として得られる移動範囲を記憶して初期設定処理を終了する。
【0013】
図4は、一般の乗客にエスカレータの使用が供用されたときの異常乗車検知処理の手順を示すフローチャートである。
ステップS11では、エスカレータ11が一般用に運転を開始し、エスカレータ制御部6より運転信号を受け取ると、映像処理部2から送られてくる映像を解析し、判別点15の移動量、判別点15の移動範囲を求める。
ステップS12では、映像解析部3での乗客の判別点15の移動量がステップS7の乗客有運転時映像の解析で得て記憶した移動量と異なるか否かを判断し、移動量が異なっていないときにはステップS13に進み、移動量が異なっているときステップS14に進む。
図5は、乗客14が踏段13上に乗車している状態を示す図である。
例えば、乗客14の判別点15(図5の場合は頭部)が踏段13の移動量より多い場合は駆け上り、少ない場合は駆け下りと判断する。
【0014】
ステップS13では、映像解析部3での乗客の判別点15の移動範囲がステップS7の乗客有運転時映像解析で得て記憶した移動範囲より広いか否かを判断し、広いときにはステップS14に進み、広くないときにはステップS17に進む。
【0015】
図6、図7は、乗客14が移動手摺12より外に身体の一部を出した状態を示す図である。図6では、乗客14が手を移動手摺12より外側に出している状態を示し、図7では、乗客14が頭を移動手摺12より外側に出している状態を示す。
そして、乗客14の判別点15とした手または頭が移動手摺12より外側で検出した場合は乗り出しと判断する。
ステップS14では、警報処理部4はスピーカー8より警告を発しステップS15に進む。
ステップS15では、乗客14の判別点15がステップS1で検出した固定物に接近したか否かを判断し、判別点15が固定物に接近したときにはステップS16に進み、判別点15が固定物に接近しないときにはステップS11に戻る。
ステップS16では、映像解析部3よりエスカレータ制御部6へ緊急停止信号を出力しエスカレータ11を停止し乗客の挟み込みを防止する。
ステップS17では、エスカレータ11が停止しエスカレータ制御部6からの運転信号が途切れたか否かを判断し、運転信号が途切れたときには異常乗車検知処理を終了し、運転信号が継続しているときにはステップS11に戻る。
【0016】
この発明に係るエスカレータ装置は、エスカレータ11を駆け上がったり、駆け下がったりするような異常乗車を自動的に検知し警告を発することにより異常乗車を行っている人に注意を喚起して事故を減らすことができる。
また、乗客が固定物に接近したことを検出したときにはエスカレータ11を緊急に停止することにより乗客の挟み込みを防止することができる。
なお、上述の説明ではエスカレータに関して説明したが、歩く歩道のようなマンコンベアにも本発明を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】この発明を実施するための最良の形態のエスカレータ装置の概略図である。
【図2】図1の映像解析装置の機能を示す機能ブロック図である。
【図3】映像解析部が実行する初期設定処理の手順を示すフローチャートである。
【図4】一般の乗客にエスカレータの使用が供用されたときの異常乗車検知処理の手順を示すフローチャートである。
【図5】乗客が踏段上に乗車している状態を示す図である。
【図6】乗客の手が移動手摺の外側にはみ出している状態を示す図である。
【図7】乗客の頭が移動手摺の外側にはみ出している状態を示す図である。
【符号の説明】
【0018】
1 映像解析装置、2 映像処理部、3 映像解析部、4 警報処理部、5 映像蓄積部、6 エスカレータ制御部、7 デジタルカメラ、8 スピーカー、9 液晶モニタ、10 作業ツール、11 エスカレータ、12 移動手摺、13 踏段、14 乗客、15 判別点。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エスカレータを撮影する映像手段からの映像を解析して異常乗車の状態を検知するエスカレータ装置において、
上記エスカレータを無人で運転して得た上記映像から移動物の移動量を判別し、および、人が正常に乗車した上記エスカレータを運転して得た上記映像から人の移動範囲を判別する初期設定処理と、
通常運転された上記エスカレータの上記映像を解析し得た移動量が上記初期設定処理において判別された移動量と異なっているとき、または通常運転された上記エスカレータの上記映像を解析し得た移動範囲が上記初期設定処理において判別された移動範囲を超えているとき異常乗車として警告を発する異常乗車検知処理と、を実行することを特徴とするエスカレータ装置。
【請求項2】
上記初期設定処理として上記エスカレータを停止して得た上記映像から固定物を判別し、
上記異常乗車検知処理として通常運転された上記エスカレータの上記映像を解析し得た判別点が上記固定物に接近したとき上記エスカレータを停止することを特徴とする請求項1に記載のエスカレータ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−256010(P2009−256010A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−104892(P2008−104892)
【出願日】平成20年4月14日(2008.4.14)
【出願人】(000236056)三菱電機ビルテクノサービス株式会社 (1,792)
【Fターム(参考)】