説明

エステル溶媒混合物を使用するブタジエンポリマーの臭素化プロセス

ブタジエンコポリマーを、臭素化剤としてある種の第四級アンモニウム又はホスホニウムトリブロミドを使用して臭素化させる。この臭素化は酢酸n−ブチル及び酢酸エチルの混合物の溶液中で実施する。この臭素化プロセスは、温和な条件下で容易に進行し、優れた熱安定性を有する臭素化生成物を生成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本件特許出願は2008年12月19日出願の米国仮特許出願第61/139,085号からの優先権を主張する。
【0002】
本発明はブタジエンコポリマーの臭素化プロセスに関する。
【背景技術】
【0003】
臭素化ポリブタジエンポリマー及びコポリマーは、ポリスチレンフォーム又は他のポリマー用の可能性のある難燃剤として同定されている。臭素化ポリブタジエンポリマー及びコポリマーに伴う問題点は、これらが、注意深く合成しないと、溶融処理操作に於いて遭遇する温度条件に耐えるのに熱的に充分に安定ではないことである。これらの材料が製造される臭素化プロセスは臭素化ポリマー及びコポリマーの熱安定性に非常に大きい影響を有することができる。
【0004】
特許文献1は、臭素化剤として第四級アンモニウムトリブロミドを使用して、ブタジエンコポリマーを臭素化するプロセスを記載している。この臭素化は、溶媒の存在下に実施する。特許文献1に従って、適切な溶媒は、エーテル、例えばテトラヒドロフラン;ハロゲン化アルカン、例えば四塩化炭素、クロロホルム、ジクロロメタン、ブロモクロロメタン及び1,2−ジクロロエタン;炭化水素、例えばシクロヘキサン、シクロペンタン、シクロオクタン及びトルエン並びにハロゲン化芳香族化合物、例えばブロモベンゼン、クロロベンゼン及びジクロロベンゼンを含む。臭素化ポリマーの熱安定性を低下させることに対する懸念のために、特許文献1では、酸素を含まない溶媒が好ましいと記載されている。特許文献1に記載されたプロセスは、臭素化をハロゲン化溶媒中で実施するときに、非常に良好な熱安定性を有する臭素化ブタジエンポリマーを生成することができる。
【0005】
特許文献1中に記載されているプロセスに於いて、ハロゲン化溶媒を使用することの利点は、これらの溶媒が連続式プロセスで非常に扱いやすいことである。第四級アンモニウムトリブロミドは、ブタジエンポリマーを臭素化するときに、対応する第四級アンモニウムモノブロミド塩に転化される。第四級アンモニウムモノブロミド塩は、ハロゲン化溶媒中での溶解度が非常に少ない。このために、第四級アンモニウムモノブロミド塩は、水抽出プロセスによって、臭素化ブタジエンポリマーから分離することができる。第四級アンモニウムモノブロミド塩を、水性環境中で元素状臭素と接触させることによって、トリブロミドを再生させることができる。再生された第四級アンモニウムトリブロミドは、ハロゲン化溶媒を使用して水相から抽出することができる。これらの抽出プロセスは、連続的又は半連続的に、操作することができ、効率的で低コストの製造プロセスに至り得る。更に、これらの抽出プロセスによって、このプロセスを操作するために必要な、高価な第三級アンモニウム化合物の量を最小にすることが可能になる。従って、ハロゲン化溶媒は、プロセス経済性に於いて、かつ臭素化ブタジエンポリマーの品質に於いて、利益をもたらす。
【0006】
特許文献1中に記載されているハロゲン化溶媒及び炭化水素溶媒から離れることの要望が存在する。これは、主として、環境的又は作業者暴露の問題(ハロゲン化溶媒の場合に於けるような)及び化石系資源への依存を減少させるための要求(多数の炭化水素に伴う問題のような)に起因する。しかしながら、ハロゲン化溶媒及び炭化水素溶媒に置き換わる如何なる溶媒も、同様の利点を提供しなくてはならない。即ち、この溶媒は、良好な熱安定性を有する臭素化ポリマー生成物を製造できなくてはならず、このプロセスは、温和な反応条件下で臭素化ポリマーへの高い転化率をもたらさなくてはならず、そして好ましくは、この溶媒は、連続式又は半連続式操作に適合しなくてはならない。
【0007】
種々のエステル化合物は、毎年再生可能な資源から得られる炭水化物のような原料を使用して製造することができる。これらのエステルは、また、本質的にハロゲンを含有しておらず、これは環境的問題又は作業者の暴露問題を減少させる。
【0008】
エステルは、小さい分子が臭素化される種々の臭素化反応のための溶媒として、使用されてきた。ジオキサン、メタノール及び酢酸エチルは、特許文献2中に、臭素化剤として元素状臭素を使用する、3,5−ビス[(ビスジメチルカルバモイル)オキシ]アセトフェノンの臭素化のための溶媒として記載されている。特許文献3に於いては、2−アルコキシピリジンが、酢酸エチル及び酢酸ナトリウムの存在下に、臭素化剤として元素状臭素を使用して、臭素化されている。特許文献4には、Brイオン及びある種の水混和性溶媒(これはエステル化合物を含有し得る)の存在下に、前駆体材料を臭素化することによる、ヘキサブロモシクロドデカンの製造方法が記載されている。特許文献5には、脂肪酸エステル溶媒の存在下に、臭素化剤としてN−ブロモスクシンイミドを使用して、t−ブチル 4−メチルビフェニル−2−カルボキシラートを臭素化することが記載されている。酢酸エチルは、臭素化剤として元素状臭素又はN−ブロモスクシンイミドを使用する、ベンジル化合物及びメチルキノリンの臭素化に於ける溶媒として使用されてきた。シクロブタノンは、酢酸エチルの存在下に、元素状臭素によってハロゲン化されてきた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】国際特許出願公開第WO2008/021417号明細書
【特許文献2】KR第803291号明細書
【特許文献3】JP第2004−051591号明細書
【特許文献4】US第2002045783号明細書
【特許文献5】JP第2001−1213846号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、ブタジエンポリマーを、酢酸n−ブチル/酢酸エチル溶媒混合物中の、少なくとも1種のフェニルトリアルキルアンモニウムトリブロミド、ベンジルトリアルキルアンモニウムトリブロミド、テトラアルキルアンモニウムトリブロミド又は第四級ホスホニウムトリブロミドの溶液と、ブタジエンポリマー中の非芳香族炭素−炭素二重結合の少なくとも85%を臭素化するために充分な条件下で接触させることによって、ブタジエンポリマーを臭素化することを含んでなるプロセスである。
【0011】
酢酸n−ブチル/酢酸エチル溶媒混合物は、第三級アンモニウム又はホスホニウムトリブロミド臭素化剤によるブタジエンポリマーの容易な臭素化を提供する。この臭素化は、温和な又は中程度の条件下で、商業的に妥当な反応時間内に、高い転化率まで進行させることができる。この臭素化ポリマーは、下記の熱重量分析(TGA)法によって示されるように、優れた熱安定性を示す傾向にある。本発明に従って製造された臭素化ポリマーは、しばしば、出発ポリマーのブタジエン単位の90%以上の転化率でも、約240℃よりも高い、しばしば250℃又はそれ以上の、下記のTGA方法に従って決定された、5%重量損失温度を示す。特に、測定可能な臭素化は、出発ポリマー中に存在し得る芳香族基上で、殆ど又は全く起こらない。ポリマーの中に導入された臭素基の5%よりも少なくが、アリル性若しくは第三級炭素原子に結合されており、又は他の方法でポリマーの中に弱く結合されている。多くても、非常に低いレベルのみの酸素含有不純物が、ブタジエンポリマーに導入される。
【0012】
前記溶媒混合物は、臭素化反応の副生物として生成する第四級アンモニウム又はホスホニウムモノブロミド塩は、酢酸n−ブチル/酢酸エチル溶媒混合物中で低い溶解度を有するので、連続式又は半連続式プロセスに於いて使用するのに適している。その結果、臭素化ブタジエンポリマー溶液からモノブロミド塩副生物を回収するために、水抽出方法を使用することができる。第四級アンモニウム又はホスホニウムトリブロミドは、このモノブロミド塩から、元素状臭素との反応によって再生することができ、水中よりも酢酸n−ブチル/酢酸エチル溶媒混合物中に、一層可溶性であるトリブロミドは、連続式又は半連続式方式で水相から抽出して、第四級アンモニウム又はホスホニウムトリブロミド溶液を再生することができる。
【0013】
本発明の別の利点は、酢酸n−ブチル/酢酸エチル溶媒混合物が、多数のブタジエンポリマー及び臭素化ブタジエンポリマーのための、良好な溶媒でもあることである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明のプロセスに於ける出発ポリマーはブタジエンのホモポリマー又はコポリマーである。これらの中で好ましいのは、ブタジエンと少なくとも1種のビニル芳香族モノマーとのコポリマーである。このようなコポリマーはランダム、ブロック又はグラフトコポリマーであってよい。「ビニル芳香族」モノマーは、芳香族環の炭素原子に直接結合されている重合性エチレン性不飽和基を有する芳香族化合物である。ビニル芳香族モノマーには、置換されていない物質、例えばスチレン及びビニルナフタレン並びにエチレン性不飽和基上で置換されている(例えばα−メチルスチレン)及び/又は環置換されている化合物が含まれる。環置換されたビニル芳香族モノマーには、芳香族環の炭素原子に直接結合されているハロゲン、アルコキシ、ニトロ又は置換若しくは非置換のアルキル基を有するものが含まれる。このような環置換されたビニル芳香族モノマーの例には、2−又は4−ブロモスチレン、2−又は4−クロロスチレン、2−又は4−メトキシスチレン、2−又は4−ニトロスチレン、2−又は4−メチルスチレン及び2,4−ジメチルスチレンが含まれる。好ましいビニル芳香族モノマーはスチレン、α−メチルスチレン、パラ−メチルスチレン及びこれらの混合物である。
【0015】
有用な出発ブタジエンポリマーは、少なくとも10重量%の重合したブタジエンを含有している。ブタジエンは、重合して、2種の繰り返し単位を形成する。本明細書に於いて「1,2−ブタジエン単位」と参照される第一の種類は、形:
【0016】
−CH2−CH−

CH=CH2
【0017】
を取り、そして、ポリマーに側鎖の不飽和基が導入されている。本明細書に於いて「1,4−ブタジエン」単位として参照される第二の種類は、形、−CH2−CH=CH−CH2−をとり、主ポリマー鎖の中に不飽和を導入する。出発ブタジエンポリマーは、好ましくは少なくとも幾らかの1,2−ブタジエン単位を含有している。この出発ブタジエンポリマー中のブタジエン単位の、少なくとも10%、好ましくは少なくとも15%、更に好ましくは少なくとも20%、なお更に好ましくは少なくとも25%は1,2−ブタジエン単位である。1,2−ブタジエン単位は、出発ブタジエンポリマー中のブタジエン単位の少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%又は少なくとも70%を構成することができる。1,2−ブタジエン単位の比率は出発ポリマー中のブタジエン単位の85%よりも多く又は90%よりも多くてよい。
【0018】
1,2−ブタジエン含有量が制御されたブタジエンポリマーの製造方法は、Journal of Polymer Science(D,Macromolecular Review)、第3巻、第317頁(1968年)に於いて、J.F.Henderson及びM.Szwarcによって、J.Polym.Sci.A-2、9、43-57(1971)に於いてY.Tanaka、Y.Takeuchi、M.Kobayashi及びH.Tadokoroによって、Macromolecules、6、129-133(1973)に於いてJ.Zymona、E.Santte及びH.Harwoodによって、そしてJ.Polym.Sci.Polym.Chem.、21、1853-1860(1983)に於いてH.Ashitaka等によって記載されている。
【0019】
スチレン/ブタジエンコポリマーが、特に、その中に臭素化ブタジエンポリマーが使用されるバルクポリマーが、スチレンホモポリマー又はコポリマーであるとき、特に好ましい。出発ポリマーとして有用なスチレン/ブタジエンブロックコポリマーには、商品名VECTOR(登録商標)でDexco Polymersから入手可能なものが含まれる。スチレン/ブタジエンランダムコポリマーは、Polymer、第46巻、第4166頁(2005年)中にA.F.Halasaによって記載された方法に従って製造することができる。スチレン/ブタジエングラフトコポリマーは、Journal of Polymer Science(Polymer Chemistry Edition)、第14巻、第497頁(1976年)中に、A.F.Halasaによって記載された方法に従って製造することができる。スチレン/ブタジエンランダム及びグラフトコポリマーは、また、Anionic Polymerization Principles and Practical Applications、Marcel Dekker,Inc.、ニューヨーク、1996年刊の第9章中に、Hsieh及びQuirkによって記載された方法に従って製造することができる。
【0020】
出発ブタジエンポリマーは、ブタジエン及びビニル芳香族モノマー以外のモノマーを重合させることによって形成された、繰り返し単位を含むこともできる。このような他のモノマーには、オレフィン、例えばエチレン及びプロピレン、アクリレート又はアクリルモノマー、例えばメタクリル酸メチル、アクリル酸メチル、アクリル酸などが含まれる。これらのモノマーはビニル芳香族モノマー及び/又はブタジエンとランダムに重合させることができ、ブロックを形成するように重合させることができ、又は出発ブタジエンポリマーの上にグラフトさせることができる。
【0021】
出発ブタジエンポリマーの最も好ましい種類は、1個又はそれ以上のポリスチレンブロック及び1個又はそれ以上のポリブタジエンブロックを含有するブロックコポリマーである。これらの中で、ジブロックコポリマー及びトリブロックコポリマーが特に好ましい。
【0022】
臭素化剤はフェニルトリアルキルアンモニウムトリブロミド、ベンジルトリアルキルアンモニウムトリブロミド、テトラアルキルアンモニウムトリブロミド又は第四級ホスホニウムトリブロミドである。適当な第四級アンモニウムトリブロミドの例には、フェニルトリメチルアンモニウムトリブロミド、ベンジルトリメチルアンモニウムトリブロミド、テトラメチルアンモニウムトリブロミド、テトラエチルアンモニウムトリブロミド、テトラプロピルアンモニウムトリブロミド、テトラ−n−ブチルアンモニウムトリブロミド等が含まれる。適当な第四級ホスホニウムトリブロミドは、式R4+(式中、それぞれのRは炭化水素基である)によって表すことができる、第四級ホスホニウム基を有する。第四級ホスホニウムトリブロミドは、テトラアルキルホスホニウムトリブロミド(この場合、R基のそれぞれはアルキルである)であってよい。4個のR基は、全て同じものであってよい。その代わりに、リン原子に結合された2種、3種又は4種の異なったR基が存在していてもよい。R基は、それぞれ、好ましくは炭素数1〜20のアルキルである。R基は、更に好ましくは炭素数1〜8のアルキル基である。具体的な第四級ホスホニウムトリブロミドの例には、テトラメチルホスホニウムトリブロミド、テトラエチルホスホニウムトリブロミド、テトラ(n−プロピル)ホスホニウムトリブロミド、テトラ(n−ブチル)ホスホニウムトリブロミド、テトラヘキシルホスホニウムトリブロミド、テトラオクチルホスホニウムトリブロミド、トリヘキシルテトラデシルホスホニウムトリブロミド等又はこれらの混合物が含まれる。
【0023】
前記トリブロミド臭素化剤は、対応する第四級ホスホニウムモノブロミド塩又は第四級ホスホニウムモノブロミド塩を、元素状臭素と混合することによって製造することができる。このモノブロミド塩は、通常、水溶性であり、従って、トリブロミドを製造する便利な方法は、元素状臭素を、モノブロミド塩の水溶液に添加することである。この反応は、ほぼ室温でよく進行するが、所望により、より高い温度又はより低い温度を使用することができる。このトリブロミドは、水相から沈殿する傾向があり、従って、任意の好都合な固液分離方法によって、液相から回収することができる。第四級アンモニウム又はホスホニウムトリブロミドは、酢酸n−ブチル/酢酸エチル溶媒混合物中に可溶性であり、出発ブタジエンポリマーとのブレンドを容易に実施するために、所望により、このような溶媒混合物中に溶解させることができる。この溶媒混合物又はその何れかの成分を使用して、第四級アンモニウム又はホスホニウムトリブロミドを、水相から抽出することができる。このような抽出工程は、連続的又は半連続的に、行うことができる。
【0024】
更に、前記トリブロミドは、その場で(in situ)、出発ブタジエンポリマー(これは、前記溶媒混合物中に溶解させることができるか又はできない)の存在下で生成させることができる。このプロセスは、添加される臭素をポリマーに運ぶように機能し、そして好ましい、高価な化合物のより少ない量を使用することの利点を有する。この反応系列に於いて元素状臭素が消費されるとき、より多くの臭素を反応混合物に、連続的又は間欠的に、添加して、トリブロミドを再生し、反応を維持することができる。
【0025】
前記臭素化反応は、酢酸n−ブチル及び酢酸エチルの混合物の溶液中の第四級アンモニウム又はホスホニウムトリブロミドによって実施される。この溶媒の重量比は、トリブロミド臭素化剤について良好な溶解度をもたらすように選択される。好ましくは、出発ブタジエンポリマーも、臭素化反応の間に存在する相対量で、この溶媒混合物中に可溶性である。この溶媒混合物の成分の比は、必要に応じて、出発ブタジエンポリマーが溶媒混合物中に可溶性であるように変化させることができる。この溶媒混合物は、好ましくは約30:70〜90:10の重量比で、酢酸n−ブチル及び酢酸エチルを含有している。更に好ましい溶媒混合物は、好ましくは50:50〜85:15の重量比で、酢酸n−ブチル及び酢酸エチルを含有している。60:40〜75:25の重量比がなお更に好ましい。
【0026】
前記反応は、出発ブタジエンポリマーをトリブロミド臭素化剤溶液と混合し、この混合物を、ブタジエン単位の所望の部分が臭素化されるまで反応させることによって実施される。トリブロミドは、溶媒混合物を、トリブロミド臭素化剤及び出発ブタジエンポリマー混合物の混合物に添加することによって、出発ブタジエンポリマーの存在下で溶媒混合物中に溶解させることができる。また、元素状臭素を、溶媒及び出発ブタジエンポリマーの存在下で、対応する第四級アンモニウム又はホスホニウムモノブロミド塩に添加することによって、出発ブタジエンポリマーの存在下でトリブロミド溶液を形成することもできる。
【0027】
前記溶媒は、第四級アンモニウム又はホスホニウムトリブロミド及び、好ましくは出発ブタジエンポリマーを、反応の条件下で溶解させるために充分な量で使用する。溶媒中の出発ブタジエンポリマーの濃度は、例えば1〜50重量%、特に5〜35重量%の範囲内であってよい。コポリマー中のブタジエン単位の1モル当たり、約0.5〜約5モルのトリブロミド臭素化剤が適切に使用され、更に適切な量は約0.9〜約2.5モル/モルであり、なお更に適切な量は1〜1.5モル/モルである。
【0028】
一般的に、前記臭素化を実施するために、温和乃至中程度の条件のみが必要である。臭素化温度は、−20〜100℃の範囲であってよく、好ましくは0〜90℃であり、特に10〜85℃である。100℃よりも高い温度を使用することができるが、必要ではなく、選択率の低下及び/又は副生物の増加に至り得る。臭素化反応が進行するとき、トリブロミドは、対応する第四級アンモニウムモノブロミド塩又は第四級ホスホニウムモノブロミド塩に転化されるようになる。
【0029】
出発ブタジエンポリマーは、所望の量の臭素化を達成するために十分な時間、第四級アンモニウム又はホスホニウムトリブロミド溶液と接触状態に保持される。典型的には、この反応は、コポリマー中のブタジエン単位の少なくとも90%が臭素化されるまで、更に好ましくはこのブタジエン単位の少なくとも95%が臭素化されるまで続ける。このブタジエン単位の100%まで、臭素化することができる。更に典型的には、このブタジエン単位の97%まで、98%まで又は99%までを、商業的に妥当な反応時間内に、前記のような温和乃至中程度の反応条件下で臭素化することができる。この臭素化の程度はプロトンNMR方法を使用して決定することができる。残留する二重結合パーセント、重合されたスチレンモノマー含有量及び1,2−異性体含有量は、適当なプロトン(テトラメチルシラン(TMS)に対して、残留二重結合プロトンは、4.8ppmと6ppmとの間にあり、スチレン芳香族プロトンは、6.2〜7.6ppmの間にあり、臭素化ポリブタジエンのためのプロトンは、3.0ppmと4.8ppmとの間にある)に起因する、シグナルの積分面積を比較することによって決定することができる。Varian INOVA(登録商標)300NMR分光計又は均等デバイスが、このような決定のために有用であり、定量的積分のためにプロトンの緩和を最大にするために10〜30秒間の遅延時間で操作される。ジュウテロ置換溶媒、例えばジュウテロ−クロロホルム又はd5−ピリジンがNMR分析用のサンプルを希釈するために適している。
【0030】
出発ブタジエンポリマーは、ブタジエンポリマーが臭素化されるようになるとき、反応混合物中で溶解性がより小さくなってきて、溶媒混合物から部分的に又は完全に沈殿するであろう。しかしながら、このプロセスを、臭素化ブタジエンポリマーが、少なくとも部分的に、好ましくは完全に溶媒中に溶解するように運転することが、一般的に好ましい。いくつかの場合に、反応の間に生成する第四級アンモニウム又はホスホニウムモノブロミド塩の幾らか又は全部が、溶媒混合物から沈殿するか又は反応の間に存在する場合、水相に移動することができる。
【0031】
前記臭素化反応は、連続式又は回分式反応器内で、実施することができる。反応動力学が速いときには、連続式反応器が一般的に好ましい。それは、これが、より小さく、従ってコストがより低いからである。単位操作の間のサージ容器は、一般的に同様により小さい。所望により、複数の反応器を、並列で又は直列で使用することができる。
【0032】
前記臭素化反応によって、臭素化ブタジエンポリマー、溶媒及び第四級アンモニウム又はホスホニウムモノブロミドを含有する粗製反応混合物が製造される(トリブロミドが元素状臭素を反応混合物の中に添加することによって連続的に再生されない場合)。臭素が反応の間に添加されない場合でも、幾らかの残留する第四級アンモニウムトリブロミド又は第四級ホスホニウムトリブロミドが存在し得る。本発明の幾つかの態様に於いて、水相が存在し得る。この粗製反応混合物には、少量の他の物質が含有され得る。第四級アンモニウム又はホスホニウムモノブロミド塩は、この溶媒混合物中で小さい溶解度を有し、それで、水相が存在しない場合、粗製反応混合物から沈殿する傾向がある。水相が存在する場合、第四級アンモニウム又はホスホニウムモノブロミド塩は、水相中に溶解するようになり、この場合、粗製反応混合物は、二相系又はエマルジョン(これは、有機相及び水相に加えて、幾らかの未溶解の第四級アンモニウム若しくはホスホニウムモノブロミド塩及び/又は未溶解の臭素化ブタジエンポリマーを含有するであろう)を形成するであろう。
【0033】
臭素化ブタジエンポリマーは溶液又はスラリーから回収され、残留する第四級アンモニウム又はホスホニウム化合物(単数又は複数)から分離される。第四級アンモニウム又はホスホニウム化合物が、主としてモノブロミド塩の形である通常の場合に、臭素化ブタジエンポリマーを第四級アンモニウム又はホスホニウム化合物から除去するために、抽出プロセスが非常に有用である。この抽出は、臭素化ブタジエンポリマー溶液又はスラリーを水相と接触させることによって実施する。第四級アンモニウム又はホスホニウムモノブロミド塩は、溶媒混合物中よりも水中で一層大きく可溶性であるので、これらは水相の方に分配されるであろう。臭素化ブタジエンポリマーは、水相中で殆ど溶解度を有しておらず、それ故、溶媒混合物と共に残留する。抽出工程に於いて使用された水相は、好ましくは還元剤を含有する。この還元剤は、任意の残留する第四級アンモニウム又はホスホニウムトリブロミド(これは、溶媒混合物中に可溶性である)を、対応するモノブロミド塩(これは、溶媒混合物中であまり可溶性ではないが、水相中で一層可溶性である)に転化させる。これは、抽出の効率を上昇させ、価値のある第四級アンモニウム又はホスホニウムモノブロミド塩の高い回収率を確実にする。
【0034】
抽出工程に続いて、まだ臭素化ブタジエンポリマーを含有している有機相を、生成物の回収のための下流の操作に送ることができる。抽出工程から得られた第四級アンモニウム又はホスホニウムモノブロミド水溶液を、臭素及びより多くの酢酸n−ブチル/酢酸エチル溶媒混合物(又はその成分)と接触させて、対応する第四級アンモニウム又はホスホニウムトリブロミドを再生させることができる。この臭素は、この溶媒混合物中の溶液として添加することができる。しかしながら、この臭素は溶媒のバルクから分離して添加することが好ましい。この方法で再生される第四級アンモニウム又はホスホニウムトリブロミドは、有機相の中に分配され、第四級アンモニウム又はホスホニウムトリブロミドの溶液を形成する。
【0035】
トリブロミドとモノブロミドとの異なる溶解度は、半連続式又は連続式プロセスのための基礎を形成することができる。半連続式又は連続式プロセスには、第四級アンモニウム又はホスホニウムトリブロミドを製造するための抽出プロセス及び第四級アンモニウム又はホスホニウムモノブロミド塩を臭素化ポリマーから分離するための他の抽出プロセスが含まれる。
【0036】
従って、好ましい態様に於いて、本発明の臭素化プロセスは、
a.出発ブタジエンポリマーを、酢酸n−ブチル/酢酸エチル溶媒混合物中の第四級アンモニウム又はホスホニウムトリブロミドの溶液と、出発ブタジエンポリマーと第四級アンモニウムトリブロミドとが反応して、臭素化ブタジエンポリマー及び第四級アンモニウム又はホスホニウムモノブロミド副生物を製造するような条件下で接触させ、この溶媒混合物中の臭素化ブタジエンポリマーの溶液又はスラリーを反応中に生成させ、
b.この臭素化ブタジエンポリマーの溶液又はスラリーを、水相と連続的又は半連続的に接触させて、第四級アンモニウム又はホスホニウムモノブロミド塩水溶液又は水性スラリー及び臭素化ブタジエンポリマーの洗浄された溶液又はスラリーを形成させ、
c.工程bに於いて得られた第四級アンモニウム又はホスホニウムモノブロミド塩水溶液又は水性スラリーを、元素状臭素並びに酢酸n−ブチル及び酢酸エチルの混合物と、連続的又は半連続的に、接触させて、水性ラフィネート流並びに酢酸n−ブチル及び酢酸エチルの混合物中の第四級アンモニウム又はホスホニウムトリブロミドの溶液を形成させ、そして
d.工程cに於いて得られた第四級アンモニウム又はホスホニウムトリブロミド溶液を、工程aの中に循環させる
ことを含んでなる。
【0037】
臭素化反応の間に水相が存在する場合、水抽出工程の間にエマルジョンが形成されるであろう。このようなエマルジョンが形成する場合、一つの生成物回収アプローチは、臭素化ブタジエンポリマーをこのエマルジョンから直接的に回収することである。水及び溶媒混合物の両方を含有している残留する液相を、次いで、廃棄するか、又は好ましくは、元素状臭素と接触させて、上記の工程cに於けるように、第四級アンモニウム又はホスホニウムトリブロミド塩を再生させることができる。別の代替方法は、エマルジョンを、臭素化ブタジエンポリマーを除去する前に破壊して、別々の有機相及び水相を形成することである。次いで、臭素化ブタジエンポリマーを溶媒相から回収し、第四級アンモニウム又はホスホニウムモノブロミド塩を含有する水相を、上記の工程cに於けるように、溶媒混合物中のトリブロミド塩の溶液を再生するために送ることができる。
【0038】
臭素化ブタジエンポリマーは、臭素化ブタジエンポリマーから溶媒をストリッピングすることにより、溶媒から臭素化ブタジエンポリマーを沈殿させ、続いて液体−固体分離工程により又は他の適切な手段により、溶媒混合物から回収することができる。便利なストリッピングプロセスには、スチームを臭素化ブタジエンポリマー溶液と接触させて、溶媒を揮発させるためのエネルギーを供給するスチームストリッピング工程が含まれる。これは、好ましくは、溶液を小滴に形成し、この小滴をスチームに暴露することによって行われる。これによって、臭素化ブタジエンポリマーの粒子が製造され、必要な場合、臭素化ブタジエンポリマーは、ポリマーのガラス転移温度よりも低く冷却されて、小さい粒子を形成することができる。しかしながら、他の溶媒ストリッピング方法も使用することができる。
【0039】
反応溶液から臭素化ブタジエンポリマーを回収する代替方法は、反溶媒(antisolvent)、例えばアルコール(これは、臭素化ブタジエンポリマー溶液に添加されたとき、臭素化ブタジエンポリマーを固体として沈殿させる)の添加によるものである。この目的のために、イソプロパノールが、特に有用な反溶媒である。この固体ポリマーは、固体−液体分離技術、例えば濾過又は遠心分離によって溶媒相から分離することができる。
【0040】
本発明に従って実施する臭素化反応は、幾つかの点で、高度に選択的である傾向がある。出発ブタジエンポリマー中に存在し得る芳香環上では、臭素化は殆ど又は全く起こらない。他の場合に、臭素化は1,2−及び1,4−ブタジエン単位の両方の炭素−炭素二重結合で起こる傾向があり、そして臭素化は、アリル性又は第三級炭素原子で、臭素化は殆ど又は全く起こらないように起こる傾向がある。臭素化は、アリル性又は第三級炭素原子で望ましくない臭素を導入する傾向があるフリーラジカル機構ではなくて、イオン機構によって起こると信じられる。これらのアリル性又は第三級臭素は、臭素化コポリマーの温度安定性に不利に影響を与えると信じられる。
【0041】
本発明のプロセスは、優れた熱安定性を有する臭素化ブタジエンポリマー製品を製造する傾向がある。熱安定性の有用な指標は、5%重量損失温度であり、これは、下記のような熱重量分析によって測定される。即ち、10ミリグラムのポリマーを、TA InstrumentsモデルHi−Res TGA2950又は均等装置を使用して、気体状窒素の60ミリリットル/分(mL/min)流及び室温(公称25℃)から600℃までの範囲に亘る10℃/分の加熱速度で分析する。このサンプルによる質量損失を、加熱工程の間モニターし、(揮発物質の損失に起因する)100℃での重量に対して比較し、サンプルがその最初の重量の5%を失ったときの温度を、5%重量損失温度(5%WLT)として指定する。この方法は、サンプルが、最初のサンプル重量基準で5重量%の蓄積重量損失を受ける温度を与える。この臭素化コポリマーは、好ましくは少なくとも240℃、更に好ましくは少なくとも250℃の5%WLTを示す。ブタジエン単位の少なくとも90%又は少なくとも95%が臭素化されており、このような5%WLT値を有する臭素化ブタジエンポリマーが、特に関心のあるものである。
【0042】
熱安定性に於ける更なる増加は、時々、特許文献1に記載されているように、臭素化ブタジエンポリマーがアルカリ金属塩基によって処理された場合に見られる。
【0043】
本発明に従って製造された臭素化ブタジエンポリマーは、種々の有機バルクポリマー用の難燃添加剤として有用である。関心のあるバルクポリマーには、ビニル芳香族又はアルケニル芳香族ポリマー(アルケニル芳香族ホモポリマー、アルケニル芳香族コポリマー又は1種若しくはそれ以上のアルケニル芳香族ホモポリマー及び/若しくはアルケニル芳香族コポリマーのブレンドを含む)並びにその中に、この臭素化コポリマーが可溶性であるか又はサイズが25μmよりも小さい、好ましくは10μmよりも小さいドメインを形成するように分散させることができる他のポリマーが含まれる。ブレンド重量基準で、0.1重量%〜25重量%の範囲内の臭素含有量を有するブレンドを提供するために充分な臭素化コポリマーが、ブレンド中に好ましく存在する。
【0044】
臭素化ポリマーとバルクポリマーとの混合物は、溶融加工することができる。本発明の目的のために、溶融加工には、バルクポリマー及び臭素化ブタジエンポリマーの溶融物を作ること、この溶融物をある方式で造形すること、次いでこの造形された溶融物を冷却してそれを固化し、そして物品を形成することが含まれる。これらの溶融加工操作の例には、押出、射出成形、圧縮成形、流延等が含まれる。最も関心のある溶融加工操作は、押出発泡である。それぞれの場合に、溶融加工操作は、任意の好都合な方式で実施することができる。溶融加工操作は、臭素化ブタジエンポリマーの存在以外は、完全に従来どおりの方式で実施することができる。
【0045】
溶融加工操作の間に存在してよい他の添加剤には、特別の溶融加工操作に於いて有用であるように、例えば滑剤、例えばステアリン酸バリウム又はステアリン酸亜鉛、UV安定剤、顔料、核生成剤、可塑剤、FR相乗剤、IRブロッカー等が含まれる。
【0046】
押出発泡は、バルクポリマー、臭素化ブタジエンポリマー、発泡剤及び有用である他の添加剤を含有する加圧された溶融物を形成することによって、実施される。原材料が混合され、ポリマーが溶融したとき、得られるゲルを、開孔を通して、より低い圧力のゾーンに押し進め、そこで、発泡剤が膨張し、ポリマーが固化して、フォーム(発泡体)を形成する。押出フォームは、シート(1/2インチ(12mm)以下の厚さを有する)、厚板若しくはボードストック(boardstock)(1/2インチ(12mm)〜12インチ(30cm)以上の厚さを有する)又は他の便利な形状の形をとることができる。このフォームは、所望により、押し出されて、融合ストランドフォームを形成することができる。
【0047】
種々の原材料を、個別に又は種々の組み合わせで、加工装置の中に供給することができる。バルクポリマー及び臭素化ブタジエンポリマーを、溶融加工操作の前に溶融ブレンドし、溶融混合物又はブレンドの粒子を、溶融加工操作の中に導入することができる。発泡剤を、ポリマー材料が溶融した後、別の流れとして導入することが好ましい。
【0048】
押出フォームを製造するとき、気泡を発生させ、溶融混合物がダイを通過した後、それを膨張させる気体を提供するために、発泡剤を使用する。この発泡剤は、物理的(吸熱)型又は化学的(発熱)型又は両方の組み合わせであってよい。物理的発泡剤には、二酸化炭素、窒素、空気、水、アルゴン、C2〜C8炭化水素、例えばブタン又はペンタンの種々の環式及び非環式異性体、アルコール、例えばエタノール並びに種々のエーテル、エステル、ケトン、ヒドロフルオロカーボン、クロロフルオロカーボン、ヒドロクロロフルオロカーボン等が含まれる。化学的発泡剤には、所謂「アゾ」発泡剤、ある種のヒドラジド、セミカルバジド及びニトロソ化合物、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素アンモニウム及び炭酸アンモニウム並びにこれらの1種又はそれ以上とクエン酸との混合物が含まれる。発泡剤の他の適当な種類は、ポリマー性シェル内にカプセル化される。
【0049】
使用される発泡剤の量は、フォームに所望の密度を与えるために十分である。押出ポリマーフォームは、適切には、約1〜約30ポンド/立方フート(pcf)(16〜480kg/m3)、特に約1.2〜約10pcf(19.2〜160kg/m3)、最も好ましくは約1.2〜約4pcf(19.2〜64kg/m3)の発泡密度を有する。
【0050】
他の材料が、押出発泡プロセスの間に、そして得られる押出ポリマーフォーム中に存在してよい。これらには、溶融流れ促進剤、他のFR試薬(ヘキサブロモシクロドデカンを含む)、他のハロゲン化FR試薬及び/又は非ハロゲン化FR試薬、FR相乗剤、IR減衰剤、腐食防止剤、着色剤、安定剤、核生成剤、防腐剤、殺生物剤、酸化防止剤、充填剤、強化剤等が含まれる。これら及び他の添加剤は、特別の製品のために又は特別の溶融加工操作に於いて、所望する又は必要な場合に使用することができる。
【0051】
前記溶融加工操作によって製造された物品は、他の溶融加工操作に於いて製造された同様の物品と同じ方式で使用することができる。物品がフォームであるとき、このフォームは、好ましくは80kg/m3以下、更に好ましくは64kg/m3以下、なお更に好ましくは48kg/m3以下の密度を有する。断熱材として使用されるフォームは、好ましくは24〜48kg/m3の密度を有するボードストックの形にある。ビレットフォームは、好ましくは24〜64kg/m3、更に好ましくは28〜48kg/m3の密度を有する。このフォームは、好ましくはASTM D3576に従って、0.1〜4.0mm、特に0.1〜0.8mmの範囲内の平均気泡サイズを有する。このフォームは圧倒的に独立気泡であってよく、即ちASTM D6226−05に従って、30%又はそれ以下、好ましくは10%又はそれ以下、なお更に好ましくは5%又はそれ以下の連続気泡を含有してよい。より多くの連続気泡のフォームも本発明に従って製造することができる。
【0052】
本発明に従って製造されたボードストックフォームは、建築物フォーム断熱材として、屋根又は壁アセンブリの一部として有用である。本発明に従って製造された他のフォームは、装飾ビレット、パイプ断熱材として及び成形コンクリート基礎応用に於いて使用することができる。
【0053】
以下の実施例は、本発明を例示するために示すが、本発明の範囲を限定するために示すものではない。全ての部及びパーセントは、他の方法で示されない限り、重量基準である。
【実施例】
【0054】
底部排液口、窒素入口及びオーバーヘッド攪拌機を取り付けた500mLの丸底フラスコに、脱イオン水91g及びテトラエチルアンモニウムモノブロミド塩103g(0.25モル)を添加する。臭素32g(0.20モル)を、反応器内容物に、攪拌しながら、1分間よりも短い時間で添加する。テトラエチルアンモニウムトリブロミドが生成するときに生じる発熱によって、反応器内容物の温度は、20℃から27℃まで上昇する。酢酸n−ブチル103gを添加し、続いて酢酸エチル154gを添加する。酢酸エチルの添加が完結した後、テトラエチルアンモニウムトリブロミドは完全に溶解し、2個の分離した液相(有機相及び水相)が、反応器内で形成される。反応器内容物を添加漏斗に移し、液相を、下の水相と上の有機相(これはテトラエチルアンモニウムトリブロミドを含有している)とに分離させる。水相を漏斗から排出させ、保存する。
【0055】
ポリスチレン−ポリブタジエンブロックコポリマー(ポリブタジエン54重量%、ブタジエン繰り返し単位0.20モル)20gを、酢酸n−ブチル257g中に溶解させる。得られる溶液を、テトラエチルアンモニウムトリブロミド溶液を含有する添加漏斗、オーバーヘッド攪拌機及び窒素入口を取り付けた2Lの丸底フラスコ内で、87℃まで加熱する。テトラエチルアンモニウムトリブロミド溶液を、ブロックコポリマー溶液に、約20分間かけて添加する。これによって、反応器内容物の温度は約74℃まで低下する。74〜86℃で、1時間攪拌した後、トリブロミド生成工程からの保存した水層を反応容器に添加し、温度を66℃まで低下させる。反応器内容物を、66℃で更に約1時間攪拌し、この時点で、水中の重亜硫酸ナトリウムの10%溶液23gを添加する。水層と有機層とを分離する。脱イオン水213gを有機層に添加して、乳化した混合物を形成する。この混合物を、2−プロパノール1003gに添加して、臭素化ポリマーを沈殿させる。得られるスラリーを濾過し、固体を2−プロパノール437gで洗浄する。フィルターケークを乾燥させて、粗製臭素化ポリマー50gを得る。この固体を、塩化メチレン441g中に再溶解させる。得られる溶液を、脱イオン水400gによって2回抽出する。この臭素化ポリマーを、再び、2−プロパノール中に沈殿させ、沈殿したポリマーを濾過し、2−プロパノールで洗浄し、乾燥させる。臭素化ポリマー46.6g(90%収率)が得られる。プロトンNMRは、出発ポリマー中のブタジエン単位の97%が、臭素化されたことを示している。臭素のわずかに2.1%がアリル性又は第三級炭素原子に結合されている。この物質の5%WLTは259℃である。
【0056】
反応溶媒として酢酸エチルのみを使用して、この実験を繰り返す。5%WLTは264℃であり、不純物はNMRによって1.1%であり、両方の値は、酢酸n−ブチル/酢酸エチル混合物を使用して得られるものに匹敵する。しかしながら、ブタジエンの僅か約90%が臭素化される。溶媒混合物の使用によって、等価の反応条件下で臭素化の著しく高いレベルがもたらされ、一方、不純物の非常に類似したレベル及び匹敵する熱安定性がもたらされる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブタジエンポリマーを、酢酸n−ブチル/酢酸エチル溶媒混合物中の、少なくとも1種のフェニルトリアルキルアンモニウムトリブロミド、ベンジルトリアルキルアンモニウムトリブロミド、テトラアルキルアンモニウムトリブロミド又は第四級ホスホニウムトリブロミドの溶液と、ブタジエンポリマー中の非芳香族炭素−炭素二重結合の少なくとも85%を臭素化するのに充分な条件下で接触させることによって、ブタジエンポリマーを臭素化することを含んでなるプロセス。
【請求項2】
前記トリブロミド臭素化剤がフェニルトリメチルアンモニウムトリブロミド、ベンジルトリメチルアンモニウムトリブロミド、テトラエチルアンモニウムトリブロミド、テトラプロピルアンモニウムトリブロミド、テトラ−n−ブチルアンモニウムトリブロミド又はこれらの2種若しくはそれ以上の混合物である請求項1記載のプロセス。
【請求項3】
前記トリブロミド臭素化剤がテトラメチルホスホニウムトリブロミド、テトラエチルホスホニウムトリブロミド、テトラ(n−プロピル)ホスホニウムトリブロミド、テトラ(n−ブチル)ホスホニウムトリブロミド、テトラヘキシルホスホニウムトリブロミド、テトラオクチルホスホニウムトリブロミド、トリヘキシルテトラデシルホスホニウムトリブロミド等又はこれらの2種若しくはそれ以上の混合物である請求項1記載のプロセス。
【請求項3】
反応混合物又はその一部に反溶媒を添加して、臭素化ブタジエンポリマーを溶媒混合物から沈殿させることによって、臭素化ブタジエンポリマーを回収する請求項1〜3のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項4】
a.出発ブタジエンポリマーを、酢酸n−ブチル/酢酸エチル溶媒混合物中の第四級アンモニウム又はホスホニウムトリブロミドの溶液と、出発ブタジエンポリマーと第四級アンモニウムトリブロミドとが反応して、臭素化ブタジエンポリマー及び第四級アンモニウム又はホスホニウムモノブロミド副生物を製造するような条件下で、接触させて、溶媒混合物中の臭素化ブタジエンポリマーの溶液又はスラリーを反応中に生成させ、
b.前記臭素化ブタジエンポリマーの溶液又はスラリーを、水相と連続的又は半連続的に、接触させて、第四級アンモニウム又はホスホニウムモノブロミド水溶液又は水性スラリー及び臭素化ブタジエンポリマーの洗浄された溶液又はスラリーを形成させ、
c.工程bに於いて得られた第四級アンモニウム又はホスホニウムモノブロミド水溶液又は水性スラリーを、元素状臭素並びに酢酸n−ブチル及び酢酸エチルの混合物と、連続的又は半連続的に、接触させて、水性ラフィネート流並びに酢酸n−ブチル及び酢酸エチルの混合物中の第四級アンモニウム又はホスホニウムトリブロミドの溶液を形成させ、そして
d.工程cに於いて得られた第四級アンモニウム又はホスホニウムトリブロミド溶液を、工程aに循環させる
工程を含んでなる請求項1〜3のいずれか1項に記載のプロセス。

【公表番号】特表2012−512943(P2012−512943A)
【公表日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−542235(P2011−542235)
【出願日】平成21年12月7日(2009.12.7)
【国際出願番号】PCT/US2009/067036
【国際公開番号】WO2010/080286
【国際公開日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【出願人】(502141050)ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー (1,383)
【Fターム(参考)】