説明

エストロゲン組成物およびその使用による治療方法

医薬組成物が少なくとも一つのエストロゲン化合物を含み、該組成物が外陰膣表面に単位用量投与剤として適応され、該少なくとも一つの非脂質内相と外陰膣表面に生体接着性を有する該少なくとも一つの脂質外相を含み、該少なくとも一つのエストロゲン化合物は、組成物の単位用量あたり約5〜約1000μgのエストラジオール相当量として存在し、外陰膣表面に組成物が投与されたとき、約3時間〜約30日間該少なくとも一つのエストロゲン化合物が放出される。該組成物は、例えば更年期の又は更年期後の女性における萎縮性膣炎又はそれに関連した疾患の治療のための外陰膣投与に有用である。女性患者の泌尿生殖器系の低エストロゲン関連疾患の治療方法は、ある治療投与計画に従って少なくとも一つのエストロゲン化合物を膣内投与することを含み、この治療投与計画では、該少なくとも一つのエストロゲン化合物の段階的に増加する1日量を放出する一連の組成物を、少なくとも約1ヶ月間投与する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2005年8月12日に出願された米国仮特許出願第60/707,662号の利益を主張するものであり、該出願に開示されたもの全てが本明細書に援用される。
【0002】
本発明は、エストロゲン化合物の経膣送達に適した医薬組成物に関する。本発明はさらに、更年期中又はその後に起こる、エストロゲンの減少したレベルに関連する泌尿生殖器系の状態を有する女性に該組成物を使用する治療方法にも関する。
【背景技術】
【0003】
更年期又は更年期後の女性における主要な問題は、閉経に伴い天然のエストロゲンの供給が減少することにより、泌尿生殖器系の疾患を含む種々の疾患が引き起こされることである。そのような疾患は、エストラジオール、エチニルエストラジオール、複合エストロゲンホルモン、エストリオール及び/又はエストロンのようなエストロゲン化合物を、局所的に(例えば膣内的に)又は全身的に(例えば経口的又は経皮的に)投与することにより改善され又は修復される。
【0004】
そのような疾患の中に、泌尿生殖器萎縮性疾患、例えば、萎縮性膣炎、膣及び/又は外陰部の乾燥、ひりひりする痛み、掻痒及び/又は刺激性炎症で特徴付けられる疾患、及び膣壁の弾力性の喪失がある。これらの状態は、二次的に、性的活動を不快又は苦痛にする性交疼痛を招いたり、尿失禁及び/又は尿道感染の罹患率の増加を招いたりする。
【0005】
更年期後の低エストロゲン症に関連する萎縮性膣炎は、エストロゲン化合物の膣投与などで容易に治療できる。膣萎縮に対するエストロゲン膣製剤の安全性と有効性に関してはクランダール、 ジャーナル・オブ・ウーメンズ・ヘルス、 vol.11、 No.10、 2002年、 857〜877頁(Crandall (2002)"Journal of Women's Health 11(10)"P.857〜877)によって論評されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、たとえエストロゲン化合物の局所的膣投与であっても、エストロゲンの全身的レベルのかなりの増加を招き、これは子宮内膜増殖症を含む副作用と関係して来るし、また、これはいくつかの研究が示唆しているように乳ガンの高い危険性を招き、さらに特定的には乳ガン生存者の乳ガン再発の危険性が高くなる。従って、全身的送達を最小化する一方で、エストロゲン化合物を泌尿生殖器系へ局所的に効果的な送達をすることが望まれており、そしてこれを達成するための改良された組成物およびそれを使用する方法に対する必要が存在する。
【0007】
リオックス等、 メノポーズ、 vol.7、 iss.3、 2000年、 156〜161頁、(Rioux et al. (2000), "Menoause 7(3)"P.156〜161)は次のように報告している。萎縮性膣炎をエストラジオール膣錠(Vagifem(登録商標)、ノボノルディスク)で治療すると、全身性エストラジオール濃度が通常の更年期後の範囲を外れる(すなわち、>49pg/ml)患者の頻度が、複合ウマエストロゲン膣クリーム(Premarin(登録商標)、ワイス−アイエルスト)の場合に比較して減少する。彼らは、差異の原因の一部として、膣錠でのエストロゲン用量が少ないこと(25μg対1.25mg)および膣錠はエストラジオールの徐放性製剤であることを挙げている。
【0008】
米国特許第4,551,148号明細書(Riley等)は、非脂質性内相と脂質性連続性外相からなる単位セルを含む膣ドラッグデリバリーのための制御放出システムを提案している。活性薬剤は少なくとも内相に存在する。
【0009】
米国特許第5,266,329号明細書(Riley)は、抗真菌剤を活性成分とする、そのような膣ドラッグデリバリーシステムを提案している。
【0010】
トンプソン及びレヴィンソン、 ドラッグ デリバリー システム アンド サイエンスィーズ、 vol.2、 No.1、 2002年、 17〜19頁、(Thompson & Levinson (2002), "Drug Delivery Systems & Sciences" 2(1), P.17〜19)はVagiSite(登録商標)とよぶ生体接着性局所ドラッグデリバリーシステムについて記載している。これは、内相の割合の高い油中水型エマルジョン系であり、膣腔の中に活性薬剤の実体を投与するための送達場所を提供するものである。彼らは、VagiSite(登録商標)系がGynazole−1(登録商標)という抗真菌膣クリームに組み込まれていると記載している。
【0011】
米国特許公開第2003/0180366号明細書(Kirschner等)は、酸性に緩衝され、薬剤を含む水溶性内相と、水不溶性の外相又はフィルムからなる小球を有している膣ドラッグデリバリーシステムを提案している。
【0012】
米国特許公開第2004/0234606号明細書(Levine等)は、膣投与のための組成物を提案している。これは、治療薬(子宮収縮抑制剤であるテルブタリンを例示している)とポリカルボフィルのような生体接着性の、水膨潤性ではあるが水不溶性の架橋ポリカルボン酸を含み、膣粘膜からの、薬剤の制御された持続放出性を与えるよう構成されている。該組成物の投与は、不利益な血中濃度なしに局所組織濃度を達成するとされている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明により、少なくとも一つのエストロゲン化合物を含む医薬組成物が提供される。該組成物は、単位用量として外陰膣表面、例えば膣粘膜表面への投与のために適応される。該組成物は少なくとも一つの非脂質性内相と、外陰膣表面に生体接着性の少なくとも一つの脂質性外相を有する。該少なくとも一つのエストロゲン化合物が、該組成物の単位用量あたり約5〜約1000μgのエストラジオール相当量で存在する。そして、外陰膣表面へ該組成物が投与されると、約3時間〜約30日、より特定的には約2日〜約14日の間、該少なくとも一つのエストロゲン化合物が放出される。
【0014】
特定の態様において、該少なくとも一つのエストロゲン化合物が、該組成物の単位用量あたり約5〜約500μgのエストラジオール相当量で存在し、例えば、約2日〜約14日の間、その徐放のために適応される。
【0015】
該組成物は、典型的には、製薬技術においてクリームと記載されるタイプの油中水型エマルジョンである。
【0016】
そのようなクリームを含む膣エストロゲンデリバリーシステムおよび膣粘膜表面に投与するのに適した投与器もさらに提供される。
【0017】
そのうえさらに、女性患者の泌尿生殖器系の低エストロゲン症関連の疾患を治療する方法も提供される。この方法は、単位用量あたり約5〜約500μgのエストラジオール相当量を含む、ここに記載された医薬組成物の外陰膣表面、例えば膣粘膜表面への投与を含んでいる。
【0018】
そのうえさらに、女性患者の泌尿生殖器系の低エストロゲン症関連の疾患を治療する方法も提供される。この方法は、ある治療投与計画に従って少なくとも一つのエストロゲン化合物を膣内投与することを含み、この治療投与計画では、該少なくとも一つのエストロゲン化合物の段階的に増加する1日量を放出する一連の組成物類を、少なくとも約1ヶ月間投与する。
【0019】
追加的な態様が、以下の詳細な説明に記載されている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明の組成物は、例示的には油中水型エマルジョンの形をとることができる。これは一般的には上で引用した、米国特許第4,551,148号明細書、米国特許第5,266,329号明細書、米国特許公開第2003/0180366号明細書のいずれかに記載されており、又はさらに米国特許公開第2005/0095245号明細書(Riley等)にも記載されている。しかしながら、少なくとも、エストロゲン化合物を活性物質として含む点でこれらとは異なる。そのような油中水型エマルジョンは半固形形状、例えば膣クリームとして提供されることができる。上で指摘したように、エストロゲン化合物が、該組成物の単位用量あたり約5〜約1000μgのエストラジオール相当量で、例えば約5〜約500μgのエストラジオール相当量で存在する。さらに、該組成物は、外陰膣表面に投与されたとき、約3時間〜約30日の間、例えば約3時間〜約14日の間、又は約3時間〜約10日の間、エストロゲン化合物を放出するように製剤化されている。
【0021】
ここで、「外陰膣表面」とは、膣腔の粘膜表面、外陰部の非粘膜性表面、皮膚の直接的周辺領域を含む、女性の生殖器の外面又は内面のいずれをも意味する。ある態様において、より特定的には、該組成物は膣粘膜表面への投与として適応され、該組成物の外相はそのような表面に生体接着性である。
【0022】
一態様において、該組成物は、トンプソン及びレビンソン(2002年)による前掲書中に記載されたVagiSite(登録商標)という生体接着性局所ドラッグデリバリーシステム又は実質的にそれと同等のデリバリーシステムとして、少なくとも一つのエストロゲン化合物を活性薬剤として含有した状態で製剤化される。
【0023】
「エストロゲン化合物」とはここでは、何れかの化合物又はそれらの混合物であり、天然、生合成又は化学合成由来を問わず、ヒトの女性にエストロゲン活性を示すものである。エストロゲン化合物はステロイド化合物も非ステロイド化合物も含む。例示的な非ステロイド性エストロゲン化合物は、ブロパロエストロール(broparoestrol)、クロロトリアニセン(chlorotrianisene)、ジエンエストロール(dienestrol)、ジエチルスチルベストロール、フォスフェストロール(fosfestrol)、ヘキセストロール(hexestrol)、メテストロール(methestrol)、およびそれらの塩およびエステル、それらのエナンチオマーおよびラセミ体などの誘導体、それらの混合物などを含むがこれに制限されない。例示的なステロイド性エストロゲン化合物は、複合エストロゲンホルモン(例えばPremarin(登録商標))、エキレニン(equilenin)、エキリン(equilin)、エストラジオール、エストリオール、エストロン、エチニルエストラジオール、メストラノール、モキセストロール(moxestrol)、キネストラジオール(quinestradiol)、キネストロール(quinestrol)、およびそれらの塩およびエステル、それらのエナンチオマーおよびラセミ体などの誘導体、それらの混合物などを含むがこれに制限されない。
【0024】
例示的な一態様において、該少なくとも一つのエストロゲン化合物はステロイド化合物を含む。
【0025】
より特定的な例示的態様として、該少なくとも一つのエストロゲン化合物は、複合エストロゲンホルモン、エストラジオール、エチニルエストラジオール、エストリオールおよびエストロンからなる群から選択される化合物を含む。
【0026】
その上さらに特定的な例示的態様として、該少なくとも一つのエストロゲン化合物は、エストラジオール又はエチニルエストラジオールのようなその誘導体を含む。
【0027】
該少なくとも一つのエストロゲン化合物の量は、ここでは、文脈が他の要求をしない限り、エストラジオール相当量として表される。本発明の組成物は、単位用量あたり約5〜約1000μgのエストラジオール相当量、例えば約10〜約500μgのエストラジオール相当量を提供する。種々の態様において、該少なくとも一つのエストロゲン化合物は、全エストラジオール相当量として、該組成物の単位用量あたり約20〜約450μg、約25〜約400μg、約25〜約250μg、約25〜約150μg、又は例示的には、約25μg、約50μg、約100μg、約150μg、約200μg、約250μg、約300μg、約350μg、又は約400μg存在する。
【0028】
単位用量は、ここで記載されるように、外陰膣表面例えば膣粘膜表面に1回投与するのに適した該組成物の量である。患者にとって最も便宜的には、該組成物は単位分割用量で、典型的には個々に包装されて提供される。しかし、これは本発明が必要とするものではない。膣クリームの便宜的な単位分割用量は約1〜約10gの量であるが、より多くの量又はより少ない量、例えば約0.1gのように少ない量、約25gのように多い量、又は約0.2〜約10g、約0.25〜約5g、約0.5〜約2g、も必要であれば使用される。膣クリームの特別に適当な単位用量は、約2〜約6gの量、例えば、約2g、約3g、約4g、又は約5gである。単位用量が約1gのとき、該組成物の全エストラジオール相当濃度は、約5〜約1000μg/g、例えば約10〜約500μg/g、種々の態様においては、約20〜約450μg/g、約25〜約400μg/g、約25〜約250μg/g、又は約25〜約150μg/gである。単位用量が1gより多いか少ないとき、適当なエストラジオール相当濃度範囲は、それぞれ対応して低く又は高くされてよい。例えば、単位用量が約5gの量のとき、該組成物の全エストラジオール相当濃度は約1〜約200μg/g、例えば約2〜約100μg/g、種々の態様においては、約4〜約90μg/g、約5〜約80μg/g、約5〜約50μg/g、又は約5〜約30μg/gである。
【0029】
一つの特定的な低用量態様において、該組成物の全エストラジオール相当濃度は、約5〜約250μg/g、例えば約10〜約150μg/g又は約20〜約100μg/gである。ある使用のために、約100μg/g(約0.01%)よりも実質的に少ないエストラジオール相当濃度、例えば約20、約25、約40、約50、約60又は約75μg/gを有するクリームが提供されうる。ある状況において、そのようなクリームのエストラジオール相当濃度は、約50μg/g(約0.005%)よりも少なく、例えば約25よりも少なく、約15よりも少なく、又は約5μg/gよりも少なくすることができる。
【0030】
別の特定的な低用量態様において、全エストラジオール相当濃度、放出速度(もっと詳しく以下に記載される)および単位用量は、約2〜約75μg、例えば約5〜約50μg、例示的には約7、約14、約21、約28又は約42μgエストラジオール相当量/日の送達を提供する。
【0031】
便宜的には、本発明の膣クリームの単位投与量は既充填容器又は投与器、例えばミズーリ州セントルイスのKV Pharmaceutical Co.のGynazole−1(登録商標)膣クリームで用いられている物と同様な投与器として供給される。
【0032】
本発明の膣クリーム組成物を含むエストロゲンデリバリーシステム、例えば、使い捨て投与器、さらに特定的には、該組成物の単位用量で既充填された使い捨て投与器は、本発明の一態様である。
【0033】
該少なくとも一つのエストロゲン化合物は内相および外相の一方又は両方に存在することができる。一態様において、該一つのエストロゲン化合物は少なくとも一部が該組成物の内相に存在し、分散形、例えばその中の溶液又は懸濁液、又は非分散形であることができる。場合によって、該少なくとも一つのエストロゲン化合物の実質的に全量が内相の中に存在することができる。該少なくとも一つのエストロゲン化合物の可溶化は、例えば、共溶媒及び/又は界面活性剤を用いて達成されることができる。少なくとも一つのエストロゲン化合物は、少なくとも一部が微粒子の形態、例えば、微粉化された形態で存在することができ、内相及び/又は外相の中の微粒子懸濁液として分散されていることができる。種々の態様において、該少なくとも一つのエストロゲン化合物は、内相及び/又は外相中の、溶液、凝集体、リポソーム、マイクロカプセル及び/又はミセルの中に存在することができる。内相(非脂質性)及び外相(脂質性)の両方に存在するときは、該少なくとも一つのエストロゲン化合物は、該非脂質性相及び脂質性相において、同一又は異なる量で存在することができる。
【0034】
該組成物は、外陰膣表面、例えば膣粘膜表面に投与されたとき、約3時間〜約30日の期間に該少なくとも一つのエストロゲン化合物を放出するように適応される。本明細書に援用された開示文献、特には上記で引用した米国特許第4,551,148号明細書および第5,266,329号明細書および米国特許公開第2003/0180366号明細書および第2005/0095245号明細書、を含むここに開示されたものに基づき、当業者は、必要以上の実験をすることなく、該組成物からの該少なくとも一つのエストロゲン化合物の放出速度を調整し、ここで要求される、約3時間〜約30日の期間の放出を達成することができる。一態様において、放出期間は約12時間〜約10日、例えば、約1〜約10日、約2〜約10日、又は約3〜約7日の一つである。他の態様において、放出期間は約3時間〜約14日、例えば、約12時間〜約14日、約1〜約14日、約3〜約14日又は約15〜約30日のうちの一つである。特別な態様において、放出期間は、1日1回〜1ヶ月に1回、例えば1ヶ月に約1〜約2回、1週間に約1〜約3回のように該組成物が適応されるような期間である。
【0035】
放出速度は、インビボ試験によって、又は何らかの適当なインビトロ法によって決定されることができる。例示的なインビトロ法は、Franzセルシステムのような開放型拡散セルシステムを使用し、典型的には、適当な厚さ例えば70μmの、ポリスルホン、セルロース酢酸/硝酸混合エステル又はポリテトラフルオロエチレンのような適切な非活性の合成膜が装着される。受容媒体は、本発明におけるエストロゲン化合物が溶解できるもの、例えば、水/エタノール媒体であるべきである。試験組成物は、膜の上に均一に置かれる(例示的には、クリームのような半固形組成物約300mgを直径25mmの膜に置くのが適当な量である)そして溶媒の蒸発と組成物の変化を防止するために閉鎖状態に保たれる。これが無限投与状態に相当する。受容流体の一定量が適当な間隔をおいて、分析のために除去され、新しい受容流体の一定量で交換される結果、膜は放出試験の間中受容流体に接触し続ける。上に概略を示したような放出速度試験が典型的に繰り替えされ、比較のために既知の放出性を示す標準組成物を用いて実施されることができる。
【0036】
「放出期間」又は同等の用語は、ここでは、該少なくとも一つのエストロゲン化合物が、低エストロゲン症関連局所状態、例えば、萎縮性膣炎に対し治療的有用性又は予防効果を提供するに充分な量で吸収され、吸収部位、例えば膣腔、又はその近くで薬効を生じるために利用できるようにされる期間を表す。
【0037】
該組成物は、典型的には、それぞれが内相と外相を有する単位セルを含んでいる。少なくとも一つの内相は不連続性であり、非脂質性で、一般的に水と混和できる。例示的には、内相は水、グリセリン、プロピレングリコール、ソルビトール、又はそれらの二つ又はそれ以上の組み合わせからなる。内相は、それ自身単相、二相又は多相であることができ、例えば溶液、懸濁液、エマルジョン、又はそれらの組み合わせの形態をとる。内相は一つ又はそれ以上の懸濁した固体、浸透圧性薬剤、増量剤、希釈剤、緩衝剤、キレート化剤、保存剤、又は他の物質を含むことができる。場合によって、内相は約2.0〜約6.0、例えば、約2.5〜約5.5、又は約3.5〜約5.0の内部pHの酸性に緩衝される。一態様において、内相は、膣環境に実質的に最適の内部pH、すなわち、刺激性炎症、痒み又は他の不快を生じないpH及び/又はカンジダ種のような菌類病原体又はエンテロコッカス種のような病原菌を含む膣腔で一般的な病原にとって不利なpHの酸性に緩衝される。典型的には、そのようなpHはおよそ4.5である。
【0038】
外相は、脂質性であり、一般的には連続性である。「脂質性」という用語は、ここでは、中性脂肪、脂肪酸、ワックス、ホスファチド、ペトロラタム、一塩基のアルコールの脂肪酸エステル、鉱油、などを含む有機化合物の群のいずれかであり、つぎの性質を有するものに関連しうる。水に不溶であり、アルコール、エーテル、クロロホルム又は他の脂性溶媒に可溶であり、脂っぽい感じを与える。適当な油類の例は、約5.6〜約68.7センチストークス、例えば約25〜約65センチストークスの粘度を持つ鉱油類、ココナッツ、パーム核、カカオ脂、綿実、落花生、オリーブ、パーム、ヒマワリ、ゴマ、コーン、紅花、菜種(カノーラ)および大豆油などの植物油類および天然由来の短鎖脂肪酸類の分画された液状トリグリセリドである。
【0039】
「脂質性」という用語は、例えば天然および合成リン脂質類を含む、両親媒性の化合物類にも関連することができる。適当なリン脂質は、例えば、ジオレイルホスファチジルコリン、ジミリストイルホスファチジルコリン、ジペンタデカノイルホスファチジルコリン、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)およびジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)のようなホスファチジルコリンエステル;ジオレイルホスファチジルエタノールアミンおよびジパルミトイルホスファチジルエタノールアミン(DPPE)といったホスファチジルエタノールアミンエステル;ホスファチジルセリン;ホスファチジルグリセロール;ホスファチジルイノシトール;などを含むことができる。リン脂質および他の両親媒性の化合物類は本件組成物の安定性を増すことができる。
【0040】
両親媒性の化合物類は本発明の組成物において乳化剤として作用することができる。いずれかの製薬的に受容可能な乳化剤又はそれらの組み合わせは、制限されずに、グリセリルモノオレエート、グリセリルモノステアレート、グリセリルモノイソステアレートおよびグリセリルモノパルミテートのような中鎖および長鎖モノグリセリドおよびジグリセリド、およびポリグリセリル−3オレエートのような脂肪酸のポリグリセリルエステルを含んだものが使用されうる。そのような試剤は該組成物の中で皮膚軟化剤としても作用しうる。
【0041】
エストロゲン化合物(類)の放出速度に影響する因子としては、他の因子の中でも、使用される特定のエストロゲン化合物(類)、エストロゲン化合物(類)の物理的形態、(例えば、溶液なのか又は微粒子形態なのか、微粒子の場合、その平均粒子サイズ)、該組成物の粘度、外相における両親媒性の化合物類を含む脂質性化合物類の選択と相対的な量、内相の浸透圧特性、および内相と外相の相対的容量を含むことができる。内相にエストロゲン化合物(類)を含み、および相対的に小さい内相の率(全容量に対する内相が占める容量の百分率で表される)の組成物において、外相は比較的厚い膜を形成する傾向があり、エストロゲン化合物(類)は放出される際、その膜を通過しなければならない。従って放出速度はそのような組成物において著しく低下させられる。
【0042】
適当な内相率は、どのようなシステムにおいても通常の試験によって確立されることができる。一態様において、内相率は少なくとも約70容量%である。
【0043】
例示的には、膣クリームのような本発明の半固形組成物は、約5,000〜約1,000,000センチポイズ、例えば約5,000〜約750,000センチポイズ、約100,000〜約800,000センチポイズ、約100,000〜約400,000センチポイズ、約350,000〜約750,000センチポイズ、約100,000〜約550,000センチポイズ、約250,000〜約400,000センチポイズ、約200,000〜約350,000センチポイズ、又は約350,000〜約550,000センチポイズの粘度を有することができる。組成物の粘膜表面への生体接着性は、他の特性の中でも、該組成物の完全性を保つ充分な粘性を要する。粘度を増加することのできる任意的な成分は、他の特性の中でも、マイクロクリスタリンワックス、コロイド状二酸化ケイ素、および、多糖類、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、などのセルロース性重合体、ポリエチレングリコール、アクリレート重合体、等の種々の製薬的に受容できる重合体を含む。例示的な態様において、ここで有用な組成物は、熱硬化性重合体、例えばポロキサマー407(例えばBASFのPluronicTM F−127として入手できる)のようなポロキサマーを含む熱ゲル化性製剤である。
【0044】
例示的な態様において、膣クリームは、少なくとも一つのエストロゲン化合物、例えばエストラジオール、エチニルエストラジオール又はエストロン、水、ソルビトール、プロピレングリコール、少なくとも一つの長鎖モノグリセリド、例えばグリセリルモノオレエート、グリセリルモノステアレート、グリセリルモノイソステアレート又はグリセリルモノパルミテート、キレート化剤、例えばエデト酸ジソジウム、少なくとも一つの抗菌性保存剤、例えばメチルパラベン及び/又はプロピルパラベン、鉱油、マイクロクリスタリンワックスおよびコロイド状二酸化ケイ素、例えば疎水的に改質されたコロイド状二酸化ケイ素を含む。
【0045】
膣クリームの形態の本発明の組成物は、医薬クリームを製造する既知のバッチ式又は連続式製法によって製造されることができる。従来のエマルジョンの製法においては、混合機、均質化機、粉砕機、衝撃表面、超音波、振盪あるいは振動を用いて、成分にせん断力が加えられる。混合せん断は、過剰のエネルギーによってエマルジョンが破壊されるのを防ぐために、比較的低レベルにされるべきである。
【0046】
例示的には、内相および外相は最初は別々に製造される。典型的バッチ式方法では、惑星型又は他の適当な混合機中で、安定したエマルジョンが形成されるまで混合しながら、内相が外相に加えられる。添加速度と混合スピードがエマルジョンの形成と粘度を最適化するために調整される。典型的な連続式方法において、外相が複数の羽根車を有する連続式混合機の中に、混合室内の一番下の羽根車のレベルに届くまで導入される。次いで、二つの相は同時に、適当な割合で、混合機の底から導入され、羽根車は成分にせん断を与えるために回転する。生成したエマルジョンは混合機の頂部から排出される。混合室への流速および混合スピードはエマルジョンの形成と粘度を最適化するために調整される。
【0047】
本発明の組成物は、局所皮膚科学的有用性、例えば治癒の促進のために、少なくとも一つのエストロゲン化合物を送達するための皮膚のどの部分でも局所的に投与されることができる。かくして、本発明の一態様において、皮膚の領域へ局所皮膚科学的有用性を提供する方法は、少なくとも一つのエストロゲン化合物を含み、少なくとも一つの非脂質性内相と、皮膚表面に生体接着性の少なくとも一つの脂質性外相を含む組成物を皮膚の領域へ局所的に投与することを含む。ここで、該少なくとも一つのエストロゲン化合物が、該組成物の単位用量あたり約5〜約1000μgのエストラジオール相当量で存在する。
【0048】
さらに特定的には、本発明の組成物は、外陰の外部表面及び/又はその周辺の皮膚の領域へ局所的に投与されることができる。追加的に又は代替的には、該組成物は、膣内に投与されることができる。一態様において、該組成物は膣クリーム、すなわち膣粘膜表面に投与のために適応される半固形製剤である。
【0049】
投与される該組成物の量は、特定のエストロゲン化合物又は存在する化合物類、該組成物中のそのような化合物又は化合物類の濃度、投与頻度(例えば放出速度によって決定される)及び他の要因に依存するであろう。例示として、放出期間が5日であり、50μg/gのエストラジオール又はエストラジオール以外のエストゲロン化合物の相当する量を含む組成物1gの投与は、約10μgのエストラジオール相当量/日の送達となる。
【0050】
本発明の膣クリームは、例えば場合により1回投与量のクリームで既に充填された投与器のような手段により、膣腔の中の粘膜面に接触するように投与されうる。場合により仰臥位を取っている患者に、投与器の先端が、例えば後膣円蓋のような膣の高い位置に静かに挿入されうる。そして、クリームが投与器のプランジャーによる押出によって先端から放出されうる。
【0051】
単位用量あたり約5〜約500μgのエストラジオール相当量を含む本発明の組成物の膣投与からなる方法は、女性の泌尿生殖器系、特に、外陰の関連領域、子宮頸部および尿道を含む膣腔及びその壁面における局所的な低エストロゲン症関連疾患の治療および予防に有用である。そのような方法が有用である低エストロゲン症関連疾患は、尿失禁(急迫性尿失禁及びストレス性尿失禁)、尿意切迫及び頻尿、夜間頻尿、および排尿障害のような低部尿道症状;増加した尿路感染症;子宮頸部形成異常;および外陰部疼痛症が含まれるがこれに制限されない。より特定的には、そのような方法は、特に更年期あるいは更年期後の患者における萎縮性膣炎(その観察的徴候には青白さ、点状出血、及び/又は膣粘膜のもろさが含まれる)およびそれに関連した疾患、例えば外陰膣乾燥、刺激性炎症、掻痒、分泌及び/又は性交疼痛の治療に有用である。この方法は一般的に泌尿生殖器の老化の症状をもった更年期後の女性の治療に有用である。
【0052】
延長された放出期間が本発明のいくつかの態様の組成物類により実現される。そのような延長された放出期間は、患者にとって、制限はされないがすぐ下の部分で論じられるいくつかの有用性をもたらす。
【0053】
第一に、速放性の組成物に比べて、投与の頻度が著しく減少させられる。一般的に、持続放出性の組成物の効果的な治療のための投与頻度は、2〜30日毎に1回、例えば1ヶ月に1ないし2回、2〜14日毎に1回、2〜10日毎に1回、又は1週間に約1〜約3回、例示的には1週間に約3回、1週間に約2回、又は1週間に約1回である。
【0054】
第二に、そのような組成物からのゆっくりした放出は、例えば血清中濃度により測定される全身性エストロゲンレベルの大幅な上昇を引き起こさずに、エストロゲンの治療的に有効な局所濃度の維持をもたらすことができる。増加した血清エストロゲンレベルによる望ましくない作用又は副作用のリスクはこうして最小化される。この有用性は、乳がん生存者のような、血清エストロゲンの高レベルが特別のリスクをもたらすと思われる女性の亜母集団にとって特に大きい。
【0055】
第三に、エストロゲン化合物の投与量は、局所的な低エストロゲン症関連疾患、例えば萎縮性膣炎、の治療のための最小有効量に近いレベルまで、徐放性による薬剤節約効果と副作用最小化効果の利点を生かしながら減少させることができる。
【0056】
本発明の方法における種々の態様において、該組成物の単位用量における該少なくとも一つのエストロゲン化合物の量と放出速度は、上記したような膣投与の際、大部分は約50pg/mlを超えない、大部分は約20pg/mlを超えない、大部分は約10pg/mlを超えない、大部分は約5pg/mlを超えない又は大部分は約2pg/mlを超えない、血清エストラジオール濃度に増加する結果となるように選択される。「大部分は」という用語はこの文脈の中で、投与後の大部分(50%を超える、典型的には約70%を超える)の放出期間中、血清エストラジオールが上述した濃度を超えないことを意味する。
【0057】
本発明の方法における他の態様において、該組成物の単位用量における該少なくとも一つのエストロゲン化合物の量と放出速度は、上記したような膣投与の際、約50pg/mlを超えない、約20pg/mlを超えない、約10pg/mlを超えない、約5pg/mlを超えない又は約2pg/mlを超えない、血清エストラジオール濃度のピーク増加となる結果となるように選択される。
【0058】
最近開発された生物試験により、20pg/ml以下のような血清エストラジオール濃度の小さな変化も検出し定量できるようになった。
【0059】
一態様において、ここに記載したような組成物は、本発明の際市場にあるエストロゲン膣クリーム製品が送達するよりも実質的により少ない投与量でエストロゲン化合物を送達する。そのような製品の例は、Warner ChilcottのEstrace(登録商標)というエストラジオール膣クリームで0.01%のエストラジオールを含む。外陰および膣萎縮の治療におけるEstrace(登録商標)クリームの通常の投与範囲は1日1〜4gであり、従って100〜400μg/日のエストラジオールを送達する。比較してみると、本態様の膣クリームは例示的に約2〜約50μg、例えば約3〜約30μg/日のエストラジオール相当量を送達する。
【0060】
エストロゲンの膣送達においてしばしば見落とされる問題は、萎縮性膣炎の患者における膣粘膜及び/又は上皮は健康な人の対応する組織よりも、エストラジオールのようなエストロゲン化合物をより効果的に吸収するということである。その結果、本発明の方法による萎縮性膣炎の治療は膣粘膜及び/又は上皮をより健康な状態に再生するのに有効であり、吸収の効率は低下していく傾向にある。
【0061】
そこで、女性患者の泌尿生殖器系の低エストロゲン症関連疾患の治療方法が提供される。この方法は、ある治療投薬計画に従って少なくとも一つのエストロゲン化合物を膣内投与することを含み、この治療投与計画では、該少なくとも一つのエストロゲン化合物の段階的に増加する、例えばエストラジオール相当量で示される1日量を放出する一連の組成物群を、少なくとも約1ヶ月、例えば約1〜約12ヶ月の間投与する。
【0062】
エストラジオール相当量の1日量の増加は、膣粘膜及び/又は上皮の徐々な再生から生じる吸収の低下を補うように調節されうる。外陰膣萎縮の重症度に従って、該少なくとも一つのエストロゲン化合物の初期投与量は、約2〜約20μgエストラジオール相当量/日を送達する量でありうる。より重症の場合はより低い初期投与量が適当であり、より軽症の場合はより高い初期投与量が適当である。初期投与量に応じて膣粘膜及び/又は上皮が再生する速度にある程度対応して決定されるが、典型的には約1〜約8週間、例えば約1〜約4週間の適当な期間の後、患者はより高い投与量、例えば約10〜約50μgエストラジオール相当量/日を送達する量へと移行される。必要ならば、あるいは希望されるときは、より高い投与量への移行を投与計画に含めることができるが、典型的には、約50μgエストラジオール相当量/日の薬量送達は超えることはないだろう。そのような投与計画で、典型的には全部で少なくとも約3ヶ月、例えば約3〜約12ヶ月、場合により、患者が治療にゆっくりと反応するような場合にはより長い期間の後治療は終了され、又は場合により維持投与量の形で無期限に治療が続けられる。適当な維持投与量は約250μgエストラジオール相当量/日まで、しかしより典型的には約10〜約25エストラジオール相当量/日で送達することができる。
【0063】
そのような投与計画によって用いられるエストロゲン化合物(類)は投与計画の経過とともに変更することができるが、典型的には同じ化合物又は化合物類が上記したように用量を変えるのみで、期間中用いられる。
【0064】
上記したような投与計画に従ってエストロゲン化合物(類)を送達する組成物の形態は重要ではなく、膣クリーム、熱ゲル化性製剤、錠剤、ペッサリー、および膣リングのようなインプラントが含まれる。該組成物、例えば膣クリームは、該少なくとも一つのエストロゲン化合物の放出速度を1日1回〜1ヶ月に1回、例えば1週間に約1〜約3回の投与スケジュールで提供するものでありうる。
【0065】
一態様において、投与計画の各段階で用いられる該組成物は、膣クリームである。同じクリームが、継続する段階で、投与されるクリームの量を増加して用いられることができる;代替的には、患者は該少なくとも一つのエストロゲン化合物のより高い濃度のクリームに移行し、同じ量の投与を続けるようにすることができる。該クリームは、維持目的を除いて、毎日の投与に要求される従来の放出性能をもったものでありうる。しかしながら、特定の態様において、該組成物は徐放性のクリーム、例えば少なくとも一つの非脂質性内相と、膣粘膜表面に生体接着性の少なくとも一つの脂質性外相を持ったものであり、ここで該少なくとも一つのエストロゲン化合物は組成物の単位用量あたり約5〜約500μgエストラジオール相当量の量で存在し、膣粘膜表面への組成物の投与時に該少なくとも一つのエストロゲン化合物が、約2〜約30日、例えば約2〜約14日、又は約2〜約10日の期間中放出される。該少なくとも一つのエストロゲン化合物は非脂質性相、脂質性相又はその両者に存在することができ、非脂質性相、脂質性相には同一又は異なる量で存在することができる。
【0066】
そのような徐放性クリーム、例えば該少なくとも一つのエストロゲン化合物の低用量(例えば約5〜50μg/日のエストラジオール相当量)を送達するものは、上記した投与計画による使用によく適応される。
【0067】
例示のためだけであるが、約2週間の初期期間(投与計画の第1週から第2週)の間、約5〜約10μg、例示的には約7μgのエストラジオール相当量/日を放出する組成物が投与されることができる。そのような組成物は、単位用量あたり、約25μgのエストラジオール相当量、例えばエチニルエストラジオールの形で、1週間に2回投与される。この初期期間に続いて、より多くの量のエストロゲン、例えば約10〜約20μg、例示的には約14μgのエストラジオール相当量/日を含む組成物が投与されることができる。例えば、第3週から第12週には、投与される組成物は、単位用量あたり約50μgエストラジオール相当量を含むものであり、1週間に2回投与されうる;その後、例えば、第13週から第26週には、組成物は、単位用量あたり約100μgエストラジオール相当量を含むものであり、1週間に2回投与されうる。第26週の後は、維持用量、例えば約150μgが週1回投与されうる。
【0068】
本方法によって使用されるキットがさらに提供される。このキットは複数の膣クリームを含み、各クリームは少なくとも一つの非脂質性内相と、膣粘膜表面に生体接着性の少なくとも一つの脂質性外相を有するものであり、ここで該少なくとも一つのエストロゲン化合物は該クリームの単位用量あたり約5〜約500μgエストラジオール相当量で存在し、膣粘膜表面へのクリームを投与するとに該少なくとも一つのエストロゲン化合物が、約3時間〜約30日、例えば約3時間〜約14日、約3時間〜約10日、又は約2〜約10日の期間中放出される。複数の膣クリームは、少なくとも約1ヶ月、例えば約1〜約12ヶ月の期間中、膣粘膜表面へ、該少なくとも一つのエストロゲン化合物を段階的に増加する1日量を放出するように段階的な順序で適応される。このキットは、場合により、さらに紙及び/又は電子的形態の、処方された投与計画に従った投与のための指示書を含む。
【実施例】
【0069】
次の実施例は、単に例示的なものであり、この開示をいかなる意味でも制限するものではない。
【0070】
以下に詳細に示される各組成物は、上記されたバッチ式又は連続式方法を含め、半固形エマルジョンを製造するための当該技術分野でいかなる既知の方法によっても製造することができる。
[実施例1]エストラジオールクリーム
【表1】

[実施例2]エチニルエストラジオールクリーム
【表2】

[実施例3]エストロンクリーム
【表3】

[実施例4]エストラジオール膣クリーム製剤
【表4】

【0071】
実施例1−4の組成物は、約5gの投与量で、外陰膣表面に、より特定的には膣粘膜表面に、女性患者の泌尿生殖器系の低エストロゲン症関連疾患、例えば萎縮性膣炎の治療のために、ここに記載された方法によって投与されうる。
【0072】
ここに引用された全ての特許及び文献は、その内容全体が本出願に援用される。
【0073】
「含む」および「含んでいる」の用語は、排他的ではなくむしろ包含的に理解されるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
組成物が単位投与量で外陰膣表面に投与されるように適応され、少なくとも一つの非脂質性内相と該外陰膣表面に生体接着性の少なくとも一つの脂質性外相とを有する少なくとも一つのエストロゲン化合物を含む医薬組成物であって、該少なくとも一つのエストロゲン化合物が、該組成物の単位用量あたり約5〜約1000μgエストラジオール相当量で存在し、該組成物が該外陰膣表面に投与されたとき、該少なくとも一つのエストロゲン化合物が約3時間〜約30日の期間にわたって放出されることを特徴とする医薬組成物。
【請求項2】
該組成物が投与されるように適応される該外陰膣表面が膣粘膜表面であることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
該少なくとも一つのエストロゲン化合物が、該組成物の単位用量あたり約5〜約500μgエストラジオール相当量で存在し、該組成物が膣粘膜表面に投与されたとき、該少なくとも一つのエストロゲン化合物が約2〜約10日の期間にわたって放出されることを特徴とする請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
該組成物が膣クリームの形態であることを特徴とする請求項2に記載の組成物。
【請求項5】
該少なくとも一つのエストロゲン化合物がステロイドであることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
該少なくとも一つのエストロゲン化合物が、複合エストロゲンホルモン、エストラジオール、エチニルエストラジオール、エストリオールおよびエストロンからなる群から選択されることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
該少なくとも一つのエストロゲン化合物が、エストラジオール又はエチニルエストラジオールであることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
該少なくとも一つのエストロゲン化合物が、該組成物の単位用量あたり約25〜約250μgエストラジオール相当量で存在することを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
該少なくとも一つのエストロゲン化合物が、1日1回〜1ヶ月に1回の投与スケジュールに相当する期間にわたって放出されることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
該少なくとも一つのエストロゲン化合物が、1週間に1回〜3回の投与スケジュールに相当する期間にわたって放出されることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
請求項4に記載の組成物及び投与器を含むことを特徴とする膣エストロゲンデリバリーシステム。
【請求項12】
該投与器が使い捨てできることを特徴とする請求項11に記載のデリバリーシステム。
【請求項13】
該投与器が単位投与量の該組成物で充填済みにされることを特徴とする請求項12に記載のデリバリーシステム。
【請求項14】
少なくとも一つのエストロゲン化合物を含むとともに、少なくとも一つの非脂質性内相と皮膚表面に生体接着性の少なくとも一つの脂質性外相とを有し、該少なくとも一つのエストロゲン化合物が組成物の単位用量あたり約5〜約1000μgエストラジオール相当量で存在するする組成物の、皮膚の領域へ局所経皮的効能をもたらすための該皮膚の領域へ局所投与するための薬剤の製造への使用。
【請求項15】
少なくとも一つのエストロゲン化合物を含むとともに、少なくとも一つの非脂質性内相と外陰膣表面に生体接着性の少なくとも一つの脂質性外相とを有し、該少なくとも一つのエストロゲン化合物が組成物の単位用量あたり約5〜約500μgエストラジオール相当量で存在する組成物の、患者の泌尿生殖器系の低エストロゲン症関連疾患の治療のため女性患者の外陰膣表面へ投与するための薬剤の製造への使用であって、該外陰膣表面へ該組成物が投与されたとき、該少なくとも一つのエストロゲン化合物が約3時間〜約30日の期間にわたって放出されることを特徴とする組成物の使用。
【請求項16】
該組成物が投与される該外陰膣表面が膣粘膜表面であることを特徴とする請求項15に記載の使用。
【請求項17】
該疾患が、尿失禁、尿意切迫、頻尿、夜間頻尿、排尿障害、頻繁な尿道感染症、子宮頸部形成異常、外陰部疼痛症、萎縮性膣炎、外陰膣乾燥、刺激性炎症、掻痒、分泌、性交疼痛および更年期後の泌尿生殖器の老化からなる群から選択されることを特徴とする請求項15に記載の使用。
【請求項18】
該疾患が、萎縮性膣炎又はそれに関連した疾患であることを特徴とする請求項15に記載の使用。
【請求項19】
該薬剤が1週間に約1〜約3回の頻度での投与用に製造されていることを特徴とする請求項15に記載の使用。
【請求項20】
該少なくとも一つのエストロゲン化合物の量と放出速度が、血清エストラジオール濃度の大部分が50pg/mlを超えない増加となるように選択されることを特徴とする請求項15に記載の使用。
【請求項21】
該少なくとも一つのエストロゲン化合物の量と放出速度が、血清エストラジオール濃度の大部分が10pg/mlを超えない増加となるように選択されることを特徴とする請求項15に記載の使用。
【請求項22】
該少なくとも一つのエストロゲン化合物の量と放出速度が、血清エストラジオール濃度の大部分が5pg/mlを超えない増加となるように選択されることを特徴とする請求項15に記載の使用。
【請求項23】
該少なくとも一つのエストロゲン化合物の量と放出速度が、血清エストラジオール濃度の大部分が2pg/mlを超えない増加となるように選択されることを特徴とする請求項15に記載の使用。
【請求項24】
患者の泌尿生殖器系の低エストロゲン症関連疾患の治療のため、該少なくとも一つのエストロゲン化合物の段階的に増加する1日量を放出する一連の組成物類が、少なくとも約1ヶ月間にわたって投与される治療投薬計画に従って女性患者へ膣内投与するための薬剤の製造のための、少なくとも一つのエストロゲン化合物の使用。
【請求項25】
該少なくとも一つのエストロゲン化合物の1日量の増加が膣粘膜及び/又は上皮の段階的な再生から生じる吸収の低下を補うように調節されていることを特徴とする請求項24の使用。
【請求項26】
該投与計画が、約1〜約8週間の間、約2〜約20μgエストラジオール相当量/日の量で送達するのに効果的な該少なくとも一つのエストロゲン化合物の初期投与、続いて約10〜約50μgエストラジオール相当量/日の量で送達するのに効果的な該少なくとも一つのエストロゲン化合物のより高い投与への移行を含むことを特徴とする請求項24に記載の使用。
【請求項27】
該投与計画がさらに、約50μgエストラジオール相当量/日で送達するのに効果的な量を超えない、該少なくとも一つのエストロゲン化合物のさらに高い投与への移行を含むことを特徴とする請求項24に記載の使用。
【請求項28】
該投与計画が、全体で少なくとも約3ヶ月間継続されることを特徴とする請求項24に記載の使用。
【請求項29】
該投与計画が、全体で約3〜約12ヶ月間継続されることを特徴とする請求項24に記載の使用。
【請求項30】
前期期間の終りに、該投与計画が、維持投与の形態で無期限に継続されることを特徴とする請求項29に記載の使用。
【請求項31】
該少なくとも一つのエストロゲン化合物がステロイドであることを特徴とする請求項24に記載の使用。
【請求項32】
該少なくとも一つのエストロゲン化合物が複合エストロゲンホルモン、エストラジオール、エチニルエストラジオール、エストリオールおよびエストロンからなる群から選択されることを特徴とする請求項24に記載の使用。
【請求項33】
該少なくとも一つのエストロゲン化合物がエストラジオール又はエチニルエストラジオールであることを特徴とする請求項24に記載の使用。
【請求項34】
該組成物類が、膣クリーム、熱ゲル化性製剤、錠剤、ペッサリー、およびインプラントからなる群から独立して選択されることを特徴とする請求項24に記載の使用。
【請求項35】
該投与計画の各段階で使用される該組成物が膣クリームであることを特徴とする請求項24に記載の使用。
【請求項36】
該少なくとも一つのエストロゲン化合物が、該膣クリームの単位用量当たり約25〜約250μgエストラジオール相当量で存在することを特徴とする請求項35に記載の使用。
【請求項37】
該少なくとも一つのエストロゲン化合物が、1日1回〜1ヶ月1回の投与スケジュールに相当する投与期間にわたって放出されることを特徴とする請求項35に記載の使用。
【請求項38】
該少なくとも一つのエストロゲン化合物が、1週間に1〜3回の投与スケジュールに相当する投与期間にわたって放出されることを特徴とする請求項35に記載の使用。
【請求項39】
膣クリームが、該少なくとも一つの非脂質性内相と膣粘膜表面に生体接着性の少なくとも一つの脂質性外相とを有し、該少なくとも一つのエストロゲン化合物が、該膣クリームの単位用量あたり約5〜約500μgエストラジオール相当量で存在し、該組成物が膣粘膜表面に投与されたとき、該少なくとも一つのエストロゲン化合物が約2〜約30日の期間にわたって放出されることを特徴とする請求項35に記載の使用。
【請求項40】
該膣クリームが、投与器によって投与されることを特徴とする請求項35に記載の使用。
【請求項41】
該投与器が使い捨てできることを特徴とする請求項40の使用。
【請求項42】
該投与器が単位投与量の該膣クリームで充填済みにされることを特徴とする請求項41の使用。
【請求項43】
少なくとも一つのエストロゲン化合物を含む複数の膣クリーム類を含むキットであって、
(a)各膣クリームが、少なくとも一つの非脂質性内相と膣粘膜表面に生体接着性の少なくとも一つの脂質性外相とを有し、該少なくとも一つのエストロゲン化合物が、該各クリームの単位用量あたり約5〜約500μgエストラジオール相当量で存在し、該クリームが膣粘膜表面に投与されたとき、該少なくとも一つのエストロゲン化合物が約3時間〜約30日の期間にわたって放出され、
(b)該複数の膣クリーム類が、膣粘膜表面に少なくとも約1ヶ月間にわたって段階的順序で投与されたとき、該少なくとも一つのエストロゲン化合物が段階的に増加する1日量で放出されるよう適応されることを特徴とするキット。
【請求項44】
さらに、所定の投与計画に従った投与の指示書を含むことを特徴とする請求項43に記載のキット。

【公表番号】特表2009−504667(P2009−504667A)
【公表日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−526186(P2008−526186)
【出願日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【国際出願番号】PCT/US2006/031153
【国際公開番号】WO2007/021805
【国際公開日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【出願人】(500460818)ドラッグテック コーポレイション (2)
【Fターム(参考)】