エゼクタ
【課題】低流量域におけるガスの流量制御性を向上できるエゼクタを提供すること。
【解決手段】
エゼクタ50は、ニードル70と、ニードル70を内部に収容し、第1流体室63に導入された水素ガスをニードル70との隙間に流通させて、吐出口84から吐出するノズル80とを備え、第3流体室64に導入されるカソードガスの圧力に基づいて、ニードル70の先端部71とノズル80の吐出口84とを相対移動させることで、ノズル80から吐出される水素ガスの流量を調整する。ニードル70を収容するとともに吐出口84を形成するノズル80のノズル流路83には、吐出口84へ向かって縮径するテーパ形状部86が形成され、ニードル70の先端部71には、Oリング76が設けられる。また、ニードル70の先端部71とノズル80の吐出口84とを互いに接近する方向に相対移動させると、Oリング76はテーパ形状部86に接し、ノズル流路83を遮断する。
【解決手段】
エゼクタ50は、ニードル70と、ニードル70を内部に収容し、第1流体室63に導入された水素ガスをニードル70との隙間に流通させて、吐出口84から吐出するノズル80とを備え、第3流体室64に導入されるカソードガスの圧力に基づいて、ニードル70の先端部71とノズル80の吐出口84とを相対移動させることで、ノズル80から吐出される水素ガスの流量を調整する。ニードル70を収容するとともに吐出口84を形成するノズル80のノズル流路83には、吐出口84へ向かって縮径するテーパ形状部86が形成され、ニードル70の先端部71には、Oリング76が設けられる。また、ニードル70の先端部71とノズル80の吐出口84とを互いに接近する方向に相対移動させると、Oリング76はテーパ形状部86に接し、ノズル流路83を遮断する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エゼクタに関する。詳しくは、燃料電池システムに搭載されるエゼクタに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車の新たな動力源として燃料電池システムが注目されている。燃料電池システムは、例えば、反応ガスを化学反応させて発電する燃料電池と、反応ガス流路を介して燃料電池に反応ガスを供給する反応ガス供給装置と、この反応ガス供給装置を制御する制御装置と、を備える。
【0003】
燃料電池は、例えば、数十個から数百個のセルが積層されたスタック構造である。ここで、各セルは、膜電極構造体(MEA)を一対のセパレータで挟持して構成され、膜電極構造体は、アノード電極(陰極)およびカソード電極(陽極)の2つの電極と、これら電極に挟持された固体高分子電解質膜とで構成される。このような燃料電池に対し、反応ガス供給装置によりアノード電極にアノードガスとしての水素ガスを供給し、カソード電極にカソードガスとしてのエアを供給すると、電気化学反応により発電する。
【0004】
燃料電池に供給する水素ガスには、例えば水素タンクに貯蔵しておいたものが用いられることが多いが、水素タンクから供給される水素ガスには発電に必要な量よりも多くの量の水素が含まれているため、燃料電池のアノード電極から排出されたガス(以下、「アノードオフガス」という)には、発電に供されず余剰となった水素が含まれている。そこで、燃料電池システムでは、循環装置を用いてアノードオフガスを回収するとともに、この回収したアノードオフガスを、水素タンクから供給された水素ガスに合流させて燃料電池に再び供給している。
【0005】
以下、このような循環装置について、外部に動力源を必要とせず、ガスの圧力エネルギを利用して水素ガスとアノードオフガスとを合流する、いわゆる空圧駆動式のエゼクタを例に説明する(特許文献1参照)。
【0006】
特許文献1に示されたエゼクタは、筐体と、この筐体内部に進退可能に設けられたニードルと、筐体内部に設けられニードルを収容する略筒状のノズルと、を備える。このようなエゼクタに対し、水素タンクからの水素ガスはノズル内部に導入され、ノズル内部のニードルとの隙間を流通して、ノズルの先端側の吐出口から吐出される。ここで、吐出口から吐出される水素ガスの流量や吐出圧は、ニードルの変位量に応じて調整することができる。一方アノードオフガスは、吐出口から吐出された水素ガスの負圧によりノズル外部の吐出口の近傍に導入され、吐出された水素ガスに合流されるようになっている。
【0007】
一方、ニードルを変位させる機構として、ニードルの基端側には信号圧が導入される空気極圧導入室が設けられ、さらにこの空気極圧導入室に隣接して燃料極圧導入室が設けられ、この燃料極圧導入室にはアノードオフガスが配管を通して背圧として導入される。また、空気極圧導入室とノズル内部とは第1ダイアフラムで仕切られており、空気極圧導入室と燃料極導入室とは第2ダイアフラムで仕切られている。
【0008】
このエゼクタによれば、空気極圧導入室と燃料極圧導入室との差圧に応じてノズル内部でニードルが進退される。また、ニードルの先端部のうちノズルの吐出口にかかる部分はテーパ状に形成されており、これにより、ニードルの進退に応じて吐出口の開口面積を変化させて、水素ガスの流量および吐出圧を調整することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2002−227799号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、燃料電池に対し必要な量の水素を安定して供給し続けるためには、エゼクタには低流量域から高流量域まで安定して水素ガスを吐出できる性能が要求される。しかしながら、高流量域と低流量域とでは、吐出される水素ガスの流量の調整に係る部分は異なったものとなる。つまり、高流量域における水素ガスの流量は、上述のようなニードルのテーパ状に形成された部分で調整されるのに対し、低流量域における水素ガスの流量は、ニードルのうち水素ガスの流路を締切る部分で調整される。したがって、特に低流量域における水素ガスの流量制御性を向上するには、水素ガスの流路を締切る構造について詳細に検討する必要があるものの、特許文献1には締切り構造に関する記載はない。
【0011】
本発明は、上述した課題に鑑みてなされたものであり、ノズル内部のニードルを進退させることでノズルから吐出されるガスの流量を調整するエゼクタにおいて、低流量域におけるガスの流量制御性を向上できるエゼクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するため請求項1に記載の発明は、第1ガス(例えば、後述の水素ガス)が導入される第1流体室(例えば、後述の第1流体室63)と、ニードル(例えば、後述のニードル70)と、当該ニードルを内部に収容し、前記第1流体室に導入された第1ガスを前記ニードルとの隙間に流通させて、吐出口(例えば、後述の吐出口84)から吐出するノズル(例えば、後述のノズル80)と、当該ノズルの先端側に設けられて第2ガス(例えば、後述のアノードオフガス)が導入される第2流体室(例えば、後述の第2流体室62)と、前記ノズルから吐出された第1ガスの負圧により前記第2流体室に導入される第2ガスを吸引して第1ガスに合流させるディフューザ(例えば、後述のディフューザ93)と、第3ガス(例えば、後述のエア)が導入される第3流体室(例えば、後述の第3流体室64)と、を備え、当該第3流体室に導入される第3ガスの圧力に基づいて、前記ニードルの先端側と前記ノズルの吐出口とを相対移動させることで、前記ノズルから吐出される第1ガスの流量を調整するエゼクタ(例えば、後述のエゼクタ50)を提供する。前記ニードルを収容するとともに前記吐出口を形成する前記ノズルのノズル流路(例えば、後述のノズル流路83)には、前記吐出口へ向かって縮径するテーパ形状部(例えば、後述のテーパ形状部86)が形成され、前記ニードルの先端側には、シール部材(例えば、後述のOリング76)が設けられる。また、前記ニードルの先端側と前記ノズルの吐出口とを互いに接近する方向に相対移動させると、前記シール部材は前記テーパ形状部に接し、前記ノズル流路を遮断する。
【0013】
本発明によれば、第3流体室に導入される第3ガスの圧力に基づいて、ニードルの先端側とノズルの吐出口とを相対移動させることで、ノズルの吐出口から吐出される第1ガスの流量を調整する。また、ノズル流路に吐出口へ向かって縮径するテーパ形状部を設け、さらにこのノズル流路内に収容されるニードルの先端側にシール部材を設けた。そして、吐出口から吐出される第1ガスの流れを遮断する場合、すなわちノズル流路を締切る場合、ニードルの先端側とノズルの吐出口とを互いに接近する方向に相対移動し、シール部材とテーパ形状部とを密接させる。
【0014】
ところで、第1ガスの流量が調整される吐出口の径に対して非常に大きな径のシール部材を用いてノズル流路を締切った場合、吐出口の径とシール部材の径との差に起因して、ノズル流路を締切る際に、吐出口から吐出される第1ガスの流量が急激に変化する場合がある。これに対して本発明では、ニードルを収容するノズル流路のうち吐出口近傍のテーパ形状部において、ニードルの先端側に設けられたシール部材で締切ることにより、このシール部材の径を吐出口の径に近いものにすることができる。このため、本発明によれば、ノズル流路の締切り近傍の低流量域における第1ガスの流量をなだらかに変化させ、かつ、吐出圧を連続的に変化させることができるので、低流量域における第1ガスの流量制御性を向上することができる。また、シール部材の径を吐出口の径に近づけることにより、より小さな力でノズル流路を締切ることができるので、締切り性も向上することができる。
【0015】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のエゼクタにおいて、前記第3流体室は、前記ノズルの基端側に設けられ、前記第1流体室は、前記第2流体室と前記第3流体室との間に設けられ、前記第1流体室と前記第2流体室とは、第1ダイアフラム(例えば、後述の第1ダイアフラム65)で仕切られ、前記第1流体室と前記第3流体室とは、第2ダイアフラム(例えば、後述の第2ダイアフラム66)で仕切られる。前記エゼクタは、前記第3流体室に導入された第3ガスの圧力により、前記ニードルの先端側と前記ノズルの吐出口とを互いに離隔する方向に相対移動させ、前記第2流体室に導入された第2ガスの圧力により、前記ニードルの先端側と前記ノズルの吐出口とを互いに接近する方向に相対移動させる。
【0016】
本発明によれば、第1流体室と第2流体室とを第1ダイアフラムで仕切るとともに、第1流体室と第3流体室とを第2ダイアフラムで仕切る。そして、第3ガスの圧力により、ニードルとノズルとを互いに離隔する方向に相対移動させ、第2ガスの圧力により、ニードルとノズルとを互いに接近する方向に相対移動させる。
【0017】
これにより、第1ガスの圧力が変動すると、この圧力の変動は、第1流体室の両側に形成されたダイアフラムを介して、第2流体室および第3流体室に伝わる。よって、第2流体室に導入された第2ガスと第3流体室に導入された第3ガスとは、圧力変動の影響を受けることになるが、第2ガスと第3ガスとでは、ニードルとノズルとを相対移動させる方向が逆になるため、この圧力変動の影響は相殺される。よって、ノズルとニードルとを相対移動させる力は、第2流体室と第3流体室との差圧にのみ依存することになる。したがって、エゼクタから送出するガス流量を一定にできる。その結果、第1流体室に導入する第1ガスの圧力を制御するレギュレータが不要となる。
【0018】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載のエゼクタにおいて、前記第3流体室は、前記ノズルの基端側に設けられ、前記第1流体室と前記第3流体室との間には、大気に連通する第4流体室(例えば、後述の第4流体室101A)が設けられ、前記第1流体室と前記第2流体室とは、第1ダイアフラム(例えば、後述の第1ダイアフラム65A)で仕切られ、前記第1流体室と前記第4流体室とは、前記第1ダイアフラムと略等しい有効面積を有する第2ダイアフラム(例えば、後述の第2ダイアフラム66A)で仕切られ、前記第3流体室と前記第4流体室とは、前記第1ダイアフラムおよび前記第2ダイアフラムとは異なる有効面積を有する第3ダイアフラム(例えば、後述の第3ダイアフラム102A)で仕切られ、前記第3流体室に導入された第3ガスの圧力により、前記ニードルの先端側と前記ノズルの吐出口とを互いに離隔する方向に相対移動させ、前記第2流体室に導入された第2ガスの圧力により、前記ニードルの先端側と前記ノズルの吐出口とを互いに接近する方向に相対移動させる。
【0019】
本発明によれば、第1流体室と第3流体室との間に、大気に連通する第4流体室を設ける。そして、第1流体室と第2流体室との間を第1ダイアフラムで仕切り、第1流体室と第4流体室との間を第2ダイアフラムで仕切り、第3流体室と第4流体室との間を第3ダイアフラムで仕切る。そして、第3ガスの圧力により、ニードルとノズルとを互いに離隔する方向に相対移動させ、第2ガスの圧力により、ニードルとノズルとを互いに接近する方向に相対移動させる。
【0020】
そして、第1ダイアフラムと第2ダイアフラムの有効面積を略等しくするとともに、第3ダイアフラムの有効面積をこれら第1、第2ダイアフラムの有効面積と異なるようにした。これにより、第3ダイアフラムの有効面積と前記第1ダイアフラムの有効面積との比に応じた倍圧で、第3流体室に導入される第3ガスの圧力を増幅又は減衰し、第1、第2ダイアフラムに作用させることができる。したがって、この倍圧で、ノズルから吐出される第1ガスの吐出圧すなわち第2流体室の圧力を増幅又は減衰することができる。
【0021】
請求項4に記載の発明は、請求項1から3の何れかに記載のエゼクタにおいて、前記シール部材は、Oリング(例えば、後述のOリング76)であり、前記ニードルの外周面には、前記Oリングを保持する環状の溝(例えば、後述の溝75)が形成されている。
【0022】
本発明によれば、シール部材にOリングを用い、このOリングをニードルの外周面に形成された環状の溝に保持させた。これにより、例えばシール部材を焼き付けた場合と比較して、小型で簡便な構造にすることができかつ生産コストを抑えることができる。
【0023】
請求項5に記載の発明は、請求項1から4の何れかに記載のエゼクタにおいて、前記エゼクタは、アノードガス(例えば、後述の水素ガス)およびカソードガス(例えば、後述のエア)を反応させて発電を行う燃料電池(例えば、後述の燃料電池10)にアノードガスを供給する。前記ディフューザの送出口(例えば、後述の送出口61)は、前記燃料電池に接続され、前記第1流体室には、アノードガス供給源(例えば、後述の水素タンク22)から第1ガスとしてアノードガスが導入され、前記第2流体室には、第2ガスとして前記燃料電池から排出されるアノードオフガスが導入され、前記第3流体室には、第3ガスとしてのカソードガスが導入される。
【0024】
従来では、配管を用いて、アノードオフガスをニードルの基端側に背圧として導入するが、アノードオフガスには燃料電池で生成された水分が含まれるため、アノードオフガス内に含まれる水分が配管内で凍結し、エゼクタの性能が低下するおそれがある。しかしながら、本発明によれば、ノズルの先端側の第2流体室に導入されるアノードオフガスをノズルの基端側に導入しないので、アノードオフガスに含まれる水分が凍結しても、エゼクタの性能が低下するのを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の第1実施形態に係るエゼクタが適用された燃料電池システムの構成を示すブロック図である。
【図2】上記実施形態に係るエゼクタの構造を示す断面図である。
【図3】上記実施形態に係るノズルの吐出口とニードルの先端部とが互いに最も離隔する方向に相対移動した状態におけるエゼクタの断面図である。
【図4】上記実施形態に係るノズルの吐出口とニードルの先端部とが互いに最も接近する方向に相対移動した状態におけるエゼクタの断面図である。
【図5】上記実施形態に係るノズルの先端部およびニードルの先端部の構造を示す断面図である。
【図6】上記実施形態に係るノズルの先端部およびニードルの先端部の構造を示す断面図である。
【図7】上記実施形態に係るノズルの先端部およびニードルの先端部の構造を示す断面図である。
【図8】従来のエゼクタの構造を示す断面図である。
【図9】水素ガスの流量とノズルのストローク量との関係を示す図である。
【図10】本発明の第2実施形態に係るエゼクタの構造を示す断面図である。
【図11】上記実施形態に係る第3流体室に供給されるエアの圧力と吐出圧との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の各実施形態を図面に基づいて説明する。
【0027】
[第1実施形態]
図1は、本発明の第1実施形態に係るエゼクタが適用された燃料電池システム1の構成を示すブロック図である。
燃料電池システム1は、車両に搭載され、反応ガスを反応させて発電を行う燃料電池10と、この燃料電池10に水素ガスやエア(空気)を供給する供給装置20と、これらを制御する制御装置30と、を有する。
【0028】
このような燃料電池10は、アノード電極(陰極)側にアノードガスとしての水素ガスが供給され、カソード電極(陽極)側にカソードガスとしての酸素を含むエアが供給されると、電気化学反応により発電する。
【0029】
供給装置20は、燃料電池10のカソード電極側にエアを供給するエアポンプ21と、アノード電極側に水素ガスを供給するアノードガス供給源としての水素タンク22およびエゼクタ50と、燃料電池10から排出されるガスを処理する希釈器23と、を含んで構成される。
【0030】
エアポンプ21は、エア供給路41を介して、燃料電池10のカソード電極側に接続されている。エア供給路41は途中で分岐されており、この分岐した部分は、エア分岐路411となり、後述のエゼクタ50に接続される。エア分岐路411には、オリフィス413と、エア分岐路411を流通するエアの流量を調整する流量調整バルブ412とが、上流側から下流側へ向かってこの順で設けられている。なお、この流量調整バルブ412には、例えば、エア分岐路411内のエアの排出するインジェクタが用いられる。燃料電池10のカソード電極側には、エア排出路42が接続され、このエア排出路42の途中には、上述の希釈器23が設けられる。
【0031】
水素タンク22は、水素供給路43を介して、燃料電池10のアノード電極側に接続されている。水素供給路43には、上流側から順に、レギュレータ431、遮断弁432、およびエゼクタ50が設けられる。燃料電池10のアノード電極側には、水素排出路44が接続され、この水素排出路44は、希釈器23に接続される。この水素排出路44には、パージ弁441が設けられている。また、水素排出路44のうちパージ弁441よりも燃料電池10側では、水素排出路44が分岐されて水素還流路45となり、この水素還流路45は、上述のエゼクタ50に接続されている。また、水素還流路45には、水素ガスの逆流を防止する逆止弁451が設けられている。このパージ弁441を開くことにより、水素排出路44内の水素ガスは、希釈器23に流入し、エア排出路42内のエアで希釈されて排出される。
【0032】
なお以下では、エア供給路41と、エア分岐路411と、エア排出路42とで構成されるエアの流路を総称してカソード系という。また、水素供給路43と、水素排出路44と、水素還流路45とで構成される水素の循環流路を総称してアノード系という。
【0033】
エゼクタ50は、燃料電池10から水素排出路44に排出された水素オフガスを、水素還流路45を通して回収し、水素供給路25に還流する。ここで、エゼクタ50は、エア分岐路411から導入するエアの圧力に基づいて、水素還流路45から回収する水素ガス流量を調整する。
【0034】
制御装置30は、供給装置20を制御して、燃料電池10を発電させる。このとき、制御装置30は、流量調整バルブ412を駆動することでアノード系内の圧力を調整する。具体的には、制御装置30は、アノード系内の圧力を上昇させる場合には、流量調整バルブ412を駆動して、エゼクタ50に導入するエア圧力を上昇させる。一方、アノード系内の圧力を低下させる場合には、流量調整バルブ412を駆動して、エゼクタ50の導入するエア圧力を低下させる。
【0035】
具体的には、制御装置30は、以下の手順で燃料電池10を発電させる。
すなわち、パージ弁441を閉じるとともに、遮断弁432を開く。そして、エアポンプ21を駆動することにより、エア供給路41を介して、燃料電池10のカソード側にエアを供給する。同時に、水素タンク22から、水素供給路43を介して、燃料電池10のアノード側に水素ガスを供給する。
【0036】
燃料電池10に供給された水素ガスおよびエアは、発電に供された後、燃料電池10からアノード側の生成水などの残留水とともに、水素排出路44およびエア排出路42に流入する。パージ弁441は閉じているので、水素排出路44に流れた水素ガスは、水素還流路45を通って水素供給路43に還流されて、再利用される。
【0037】
ここで、エアポンプ21から供給されたエアの一部は、エア分岐路411にも流入する。流量調整バルブ412を駆動し、エア分岐路411を通ってエゼクタ50に流入するエアの圧力を変化させることにより、アノード系内の圧力を調整する。
【0038】
その後、パージ弁441を適当な開度で開くことにより、水素排出路44に排出された水素ガスは、希釈器23に流入する。この希釈器23に流入した水素ガスは、希釈器23において、エア排出路42を流通するエアで希釈されて、外部に排出される。
【0039】
図2は、エゼクタ50の構造を示す断面図である。
エゼクタ50は、筐体60と、この筐体60内部に固定されたニードル70と、このニードル70を収容する略筒状のノズル80と、を備える。
【0040】
ニードル70は略棒状であり、その先端部71には先端へ向かうに従い縮径するようにテーパ形状部77が形成されている。先端部71のうち、テーパ形状部77が形成された部分よりも基端側の外周面には環状の溝75が形成されており、この溝75には、シール部材としてのOリング76が嵌装されている。
【0041】
ニードル70の中心には、延在方向に沿って伸びる貫通孔としてのガス流路72が、その基端面から先端部71にかけて形成されている。そして、ニードル70のうち、ノズル80の後述のテーパ形状部86に連通する部分、並びに、筐体60の後述の第1流体室63に連通する部分には、それぞれ、複数の貫通孔が形成されている。
【0042】
また、ニードル70の略中央には、ガス流路72に対し垂直に延びる鍔部73が形成されており、この鍔部73には円盤状のニードル支持部97が基端側から取り付けられている。さらにこのニードル支持部97は、固定ねじ98によりニードル70とともに筐体60の内壁面に固定される。
【0043】
ノズル80は、ニードル70の基端側に設けられた基端部81と、ニードル70の先端側に設けられた先端部82と、これら基端部81と先端部82とを連結する連結ピン88と、を備える。連結ピン88は、カラー89とともにニードル支持部97に形成された挿通孔99に挿通されている。
【0044】
ノズル80の先端部82には、筐体60の延出方向に沿って延びる貫通孔としてのノズル流路83が形成されている。このノズル流路83は、ニードル70の鍔部73よりも先端側を収容するとともに、その先端面は、吐出口84となっている。また、このノズル流路83の先端側の吐出口84の近傍には、吐出口84へ向かって縮径するテーパ形状部86が形成され、さらにこのノズル流路83の基端側には、円筒状の軸受85が設けられている。
一方、ノズル80の基端部81には、ニードル70の鍔部73よりも基端側を収容する凹部87が形成されている。
【0045】
ニードル70の鍔部73よりも先端側は、ノズル80の先端部82のノズル流路83に挿入されて、軸受85に支持される。一方、ニードル70の鍔部73よりも基端側は、ノズル80の基端部81の凹部87に嵌合されて支持される。これにより、ニードル70はノズル80の内部に収容され、またノズル80はニードル70により同軸方向に進退可能に保持される。すなわち、ニードル70の先端部71とノズル80の吐出口84とは相対移動可能となる。
【0046】
また、ノズル80の前進する方向への移動は、ノズル80の基端部81がニードル支持部97に接することにより規制される(後述の図3参照)。この状態で、ニードル70の先端部71とノズル80の吐出口84とは最も離隔した状態となる。
一方、ノズル80の後退する方向への移動は、ノズル80の先端部82のテーパ形状部86がニードル70のOリング76に接することにより規制される(後述の図4参照)。この状態で、ノズル80の吐出口84とニードル70の先端部71とは最も接近した状態となる。
なお以下の説明では、ニードル70のOリング76がノズル80のテーパ形状部86に接した状態から、ノズル80が前進する方向へ変位した量をストローク量という。
【0047】
以上のニードル70およびノズル80によれば、ノズル80の基端部81と先端部82との間に導入された水素ガスは、ノズル流路83に設けられたニードル70のガス流路72内に導入され、ノズル流路83内のニードル70との隙間を流通して、ノズル80の吐出口84から吐出される。
【0048】
筐体60は、略筒状であり、この筐体60の先端面には、送出口61が形成される。この送出口61には、水素供給路43を介して燃料電池10が接続される。
【0049】
また、筐体60には、ノズル80を付勢してノズル80とニードル70との相対位置を保持する2つのばね95,96と、筐体60の基端面に螺合されて、これらばね95,96の付勢力を調整する調整ねじ92と、が設けられている。ばね95は、ノズル80を先端部82側から基端部81側へ向かって付勢する。一方ばね96は、ばね95とは逆に、ノズル80を基端部81側から先端部82側へ向かって付勢する。
【0050】
ノズル80の外壁面と筐体60の内壁面との間の空間は、ノズル80の先端側に位置する第2流体室62、ノズル80の中央部側に位置する第1流体室63、ノズル80の基端側に位置する第3流体室64の3つに仕切られている。つまり、第1流体室63は、第2流体室62と第3流体室64との間に設けられている。
【0051】
第1流体室63と第2流体室62とは、第1ダイアフラム65で仕切られている。この第1ダイアフラム65は、ノズル80の先端部82と筐体60の内壁面との間に形成されている。第1流体室63と第3流体室64とは、第2ダイアフラム66で仕切られている。この第2ダイアフラム66は、ノズル80の基端部81と筐体60の内壁面との間に形成されている。
【0052】
すなわち、第1流体室63は、第1ダイアフラム65および第2ダイアフラム66で仕切られて、ノズル80の基端部81と先端部82との間に設けられることになる。また、これら第1ダイアフラム65および第2ダイアフラム66の有効面積は略同一となっている。
【0053】
筐体60には、第1流体室63に連通する第1連通孔67、第2流体室62に連通する第2連通孔68、および、第3流体室64に連通する第3連通孔69が形成されている。第1連通孔67には、水素供給路43を介して水素タンク22が接続され、この第1連通孔67を通して、水素タンク22から第1ガスとしての水素ガスが第1流体室63に導入される。そして、この第1流体室63に導入された水素ガスは、ノズル80に導入されて、ノズル80の吐出口84から吐出される。
【0054】
第2連通孔68には、水素還流路45が接続され、この第2連通孔68を通して、燃料電池10から排出された第2ガスとしてのアノードオフガスが第2流体室62に導入される。第3連通孔69には、エア分岐路411が接続され、この第3連通孔69を通して、第3ガスとしてのエアが第3流体室64にエア信号圧として導入される。
【0055】
筐体60の先端側の形状は、ディフューザ93となっており、ノズル80の吐出口84に接続されている。このディフューザ93は、具体的には、筐体60の内径が送出口61に向かうに従い急激に狭くなり、その後、緩やかに拡がることにより形成される。ディフューザ93は、ノズル80の吐出口84から吐出された水素ガスの流速を上昇させて送出口61から送出し、この送出される水素ガスの負圧により、第2流体室62に導入されるアノードオフガスを吸引して、吐出口84から吐出される水素ガスに合流させる。
【0056】
第3流体室64がノズル80の基端側に設けられているため、ニードル70とノズル80とは、第3流体室64に導入されたエア信号圧により、それぞれの先端部71と吐出口84が互いに離隔する方向に相対移動される。一方、第2流体室62がノズル80の先端側に設けられているため、ニードル70とノズル80とは、第2流体室62に導入されたアノードオフガスの圧力により、それぞれの先端部71と吐出口84が互いに接近する方向に相対移動される。つまり、第3流体室64に作用するエア信号圧をPairとし、第2流体室62に作用する水素ガスの吐出圧(アノード系内の圧力)をPoutとし、第1ダイアフラム65および第2ダイアフラム66の有効面積をSとし、ノズル80を第3流体室64側へ後退させる2つのばね95,96による付勢力をFとすると、下記式が成立する。
F=(Pair−Pout)×S
【0057】
したがって、第1ダイアフラム65および第2ダイアフラム66の有効面積を同一のものとすると、第3流体室64と第2流体室62との差圧(Pair−Pout)は、ばね95,96による付勢力Fのみにより規定されることとなる。一方、ばね95,96による付勢力Fは、ノズル80のストローク量、すなわちノズル80とニードル70との相対位置に応じて変化する。したがって、第3流体室64と第2流体室62との差圧(Pair−Pout)に応じて、ニードル70の先端部71とノズル80の吐出口84との相対位置が変化し、その結果、後に詳述するように吐出口84から吐出される水素ガスの流量や吐出圧が調整される。
【0058】
次に、以上のように構成されたエゼクタ50の動作について、図3および図4を参照して説明する。
図3および図4は、それぞれエゼクタ50の動作を説明するための断面図である。より具体的には、図3は、ノズル80の吐出口84とニードル70の先端部71とが互いに離隔する方向に相対移動した状態におけるエゼクタ50の断面図である。図4は、ノズル80の吐出口84とニードル70の先端部71とが互いに接近する方向に相対移動した状態におけるエゼクタ50の断面図である。
【0059】
第3流体室64に導入されたエア信号圧が、所定値ここでは第2流体室62に導入されたアノードオフガスの圧力よりも高い場合、図3に示すように、ノズル80が前進する。そして、第1流体室63に導入された水素ガスは、ノズル流路83に設けられたニードル70のガス流路72内に導入され、Oリング76とノズル80のテーパ形状部86との隙間、およびニードル70のテーパ形状部77と吐出口84との隙間を流通して、ノズル80から吐出される。ノズル80から吐出された水素ガスは、ディフューザ93により流速が上昇して送出口61から送出される。第2流体室62に導入されたアノードオフガスは、このように水素ガスを送出することで発生した負圧により吸引され、吐出口84から吐出される水素ガスに合流する。
【0060】
ここで、第3流体室64に導入されたエア信号圧を上昇させると、ノズル80がさらに前進する。そして、ノズル80の吐出口84とニードル70のテーパ形状部77との隙間、すなわち吐出口84の開口面積が大きくなる。その結果、ノズル80から吐出される水素ガス流量が増加し、アノード系内の圧力が上昇する。一方、第3流体室64に導入されたエア信号圧を低下させると、吐出口84の開口面積が小さくなる。その結果、ノズル80から吐出される水素ガス流量が減少し、アノード系内の圧力が低下する。
【0061】
また、第3流体室64に導入されたエア信号圧が、所定値ここでは第2流体室62に導入されるアノードオフガスの圧力以下である場合、図4に示すように、ノズル80が後退する。そして、図4に示すように、ニードル70のOリング76がノズル流路83のテーパ形状部86に接し、ノズル流路83を遮断する。これにより、ノズル80から吐出される水素ガスの流量はゼロになる。
【0062】
次に、ノズル80のストローク量を変化させたときにおけるノズル流路83内の水素ガスの流れの変化について、図5〜図7を参照して説明する。
図5〜図7は、それぞれ、ノズル80の先端部82およびニードル70の先端部71の構造を示す断面図である。より具体的には、図5はストローク量が最小のときの断面図であり、図7はストローク量が最大のときの断面図である。図6は、ストローク量がこれら図5および図7の中間のときの断面図である。
【0063】
上述のようにノズル80から吐出される水素ガスの流量は、ノズル80のストローク量に応じて調整されるようになっている。より具体的には、Oリング76とノズル80のテーパ形状部86との隙間、および、ニードル70のテーパ形状部77と吐出口84との隙間の異なる2つの部分において、ノズル流路83内の水素ガスの流れを制限することにより、ノズル80から吐出される水素ガスの流量が制御される。
【0064】
先ず、図5に示す状態では、Oリング76がノズル80のテーパ形状部86に接しており、ノズル流路83は遮断され、ノズル80から吐出される水素ガスの流量はゼロとなる。ノズル流路83を遮断した状態からストローク量を増加すると、Oリング76とノズル80のテーパ形状部86との間に隙間が形成され、これにより、ノズル80から水素ガスが吐出され始める。ここで、ストローク量が僅かである場合、ニードル70のテーパ形状部77側の隙間よりもOリング76側の隙間の方が小さいため、ノズル80から吐出される水素ガスの流量はOリング76側の隙間の大きさに応じて制御される。
【0065】
図5に示す状態からストローク量を増加し、図6に示す状態にすると、Oリング76側の隙間が吐出口84側の隙間よりも大きくなる。このため、ノズル80から吐出される水素ガスの流量を制御する部分は、Oリング76側からテーパ形状部77側へと移行する。そして、図6に示す状態から図7に示すストローク量が最大の状態になるまでは、ノズル80から吐出される水素ガスの流量は、テーパ形状部77側の隙間の大きさに応じて制御されることとなる。
【0066】
次に、水素ガスの流量制御性について、図8および図9を参照して本実施形態のエゼクタ50と従来のエゼクタとを比較する。
図8は、従来のエゼクタ150の構造を示す断面図である。
上述のように、本実施形態のエゼクタ50では、ニードル70の先端部71に設けられたOリング76により、水素ガスが流通するノズル流路83を締切る。これに対して、従来のエゼクタ150では、ニードル170のうち軸受185よりも基端側に設けられた円盤状のバルブ173が設けられ、ノズル180の先端部182のうちバルブ173と対向する部分には環状のゴムシール178が設けられている。すなわち、従来のエゼクタ150は、ノズル180が後退すると、バルブ173がゴムシール178に接することにより、水素ガスの流路を遮断する構造となっている。
【0067】
図8に示すように、ノズル流路183内のニードル170との隙間に水素ガスを流通させる構造のエゼクタ150では、水素ガスの流路を遮断するバルブ173を軸受185よりも基端側に設けると、バルブ173の径を軸受185の径よりも大きくせざるを得ない。このため、バルブ173の径は吐出口184の径と比較して非常に大きくなってしまう。
【0068】
図9は、水素ガスの流量とノズルのストローク量との関係を示す図である。図9において、破線は従来のエゼクタ150における上記関係を示し、実線は本実施形態のエゼクタ50における上記関係を示す。
【0069】
図9に示すように、水素ガスの流路を締切るバルブ173の径が吐出口184の径に対して大きいと、このバルブ173側の部分で流量が制御されるストローク量の小さい領域では、僅かなストローク量の変化で水素ガスの流量が大きく変化する。このため、水素ガスの流量を制御する部分が、バルブ173側からニードル170のテーパ形状部177側に移行する際、ストローク量に対する水素ガスの流量の変化率が急激に変化してしまう。
【0070】
これに対して本実施形態では、吐出口84に近い径を有するOリング76で水素ガスの流路を締切ることにより、ストローク量の変化に対する水素ガスの流量の変化を、従来と比較して小さくすることができる。このため、水素ガスの流量を制御する部分が、Oリング76側からテーパ形状部77側に移行する際における、ストローク量に対する水素ガスの流量の変化率の変化をなだらかにすることができるので、従来と比較して、低流量域における水素ガスの流量制御性を向上することができる。また、従来と比較して小さな面積で締切るため、より小さな力で締切ることができ、結果として締切り性を向上することもできる。
【0071】
本実施形態によれば、以下のような効果がある。
(1)第3流体室64に導入されるエア信号圧に基づいて、ニードル70の先端部71とノズル80の吐出口84とを相対移動させることで、ノズル80の吐出口84から吐出される水素ガスの流量を調整する。また、ノズル流路83に吐出口84へ向かって縮径するテーパ形状部86を設け、さらにこのノズル流路83内に収容されるニードル70の先端部71にOリング76を設けた。そして、吐出口84から吐出される水素ガスの流れを遮断する場合、すなわちノズル流路83を締切る場合、ニードル70の先端部71とノズル80の吐出口84とを互いに接近する方向に相対移動し、Oリング76とテーパ形状部86とを密接させる。
【0072】
また、ニードル70を収容するノズル流路83のうち吐出口84近傍のテーパ形状部86において、ニードル70の先端部71に設けられたOリング76で締切ることにより、このOリング76の径を吐出口84の径に近いものにすることができる。このため、ノズル流路83の締切り近傍の低流量域における水素ガスの流量をなだらかに変化させ、かつ、吐出圧を連続的に変化させることができるので、低流量域における水素ガスの流量制御性を向上することができる。また、Oリング76の径を吐出口84の径に近づけることにより、より小さな力でノズル流路83を締切ることができる。
【0073】
(2)第1流体室63と第2流体室62とを第1ダイアフラム65で仕切るとともに、第1流体室63と第3流体室64とを第2ダイアフラム66で仕切る。そして、エア分岐路411からのエアの圧力により、ニードル70とノズル80とを互いに接近する方向に相対移動させ、水素還流路45からのアノードオフガスの圧力により、ニードル70とノズル80とを互いに離隔する方向に相対移動させる。
【0074】
これにより、水素タンク22からの水素ガスの圧力が変動すると、この圧力の変動は、第1流体室63の両側に形成されたダイアフラム65,66を介して、第2流体室62および第3流体室64に伝わる。よって、第2流体室62に導入された水素還流路45からのアノードオフガスと第3流体室64に導入されたエア分岐路411からのエアとは、圧力変動の影響を受けることになるが、水素還流路45からのアノードオフガスとエア分岐路411からのエアとでは、ニードル70とノズル80とを相対移動させる方向が逆になるため、この圧力変動の影響は相殺される。よって、ノズル80とニードル70とを相対移動させる力は、第2流体室62と第3流体室64との差圧にのみ依存することになる。したがって、エゼクタ50から送出するガス流量を一定にできる。その結果、第1流体室63に導入する水素ガスの圧力を制御するレギュレータが不要となる。
【0075】
(3)Oリング76をニードル70の先端部71の外周面に形成された環状の溝75に保持させた。これにより、例えばシール部材を焼き付けた場合と比較して、小型で簡便な構造にすることができかつ生産コストを抑えることができる。
【0076】
(4)第2流体室62に導入されるアノードオフガスをノズル80の基端側に導入しないので、アノードオフガスに含まれる水分が凍結しても、エゼクタ50の性能が低下するのを防止できる。
【0077】
[第2実施形態]
本発明の第2実施形態について、図10および図11を参照して説明する。
以下の第2実施形態の説明にあたって、第1実施形態と同一の構成については同一の符号を付し、その説明を省略又は簡略化する。
【0078】
図10は、本発明の第2実施形態に係るエゼクタ50Aの構造を示す断面図である。本実施形態のエゼクタ50Aは、筐体60Aおよびノズル80Aの構成が第1実施形態と異なる。
【0079】
ノズル80Aの外壁面と筐体60Aの内壁面との間の空間は、ノズル80Aの先端側に位置する第2流体室62、ノズル80Aの中央部側に位置する第1流体室63A、ノズル80Aの基端側に位置する第3流体室64A、第1流体室63Aと第3流体室64Aとの間に設けられた第4流体室101Aの3つに仕切られている。
【0080】
第1流体室63Aと第2流体室62とは、第1ダイアフラム65Aで仕切られている。この第1ダイアフラム65は、ノズル80Aの先端部82と筐体60Aの内壁面との間に形成されている。第1流体室63と第4流体室101Aとは、第2ダイアフラム66Aで仕切られている。この第2ダイアフラム66Aは、ノズル80Aの基端部81Aと筐体60Aの内壁面との間に形成されている。第3流体室64Aと第4流体室101Aとは、第3ダイアフラム102Aで仕切られている。この第3ダイアフラム102Aは、ノズル80Aの基端部81Aと筐体60Aの内壁面との間のうち第2ダイアフラム66Aよりも基端側に形成されている。
すなわち、第1流体室63Aは、第1ダイアフラム65Aおよび第2ダイアフラム66Aで仕切られて、ノズル80Aの基端部81Aと先端部82との間に設けられることになる。また、これら第1ダイアフラム65Aおよび第2ダイアフラム66Aの有効面積は略同一となっており、第3ダイアフラム102Aの有効面積は第1ダイアフラム65Aおよび第2ダイアフラム66Aの有効面積と異なっている。
【0081】
筐体60Aには、第1流体室63Aに連通する第1連通孔67、第2流体室62に連通する第2連通孔68、第3流体室64Aに連通する第3連通孔69の他、第4流体室101Aに連通する第4連通孔103Aが形成されている。第4流体室101Aは、この第4連通孔103Aを介して大気に連通する。
【0082】
第3流体室64Aがノズル80Aの基端側に設けられているため、ニードル70とノズル80Aとは、第3流体室64Aに導入されたエア信号圧により、それぞれの先端部71と吐出口84が互いに離隔する方向に相対移動される。一方、第2流体室62がノズル80Aの先端側に設けられているため、ニードル70とノズル80Aとは、第2流体室62Aに導入されたアノードオフガスの圧力により、それぞれの先端部71と吐出口84が互いに接近する方向に相対移動される。
【0083】
第3流体室64Aに作用するエア信号圧をPairとし、第2流体室62に作用する水素ガスの吐出圧(アノード系内の圧力)をPoutとする。また、第1ダイアフラム65Aおよび第2ダイアフラム66Aの有効面積をShとし、第3ダイアフラム102Aの有効面積をSaとすると、第3流体室64Aに作用するエア信号圧のゲージ圧Pair_gaugeと、第2流体室62に作用する水素ガスの吐出圧のゲージ圧Pout_gaugeとの間に、下記式に示すような関係式が成立する。
Pout_gauge=Pair_gauge×(Sa/Sh)
【0084】
つまり、本実施形態のエゼクタ50Aでは、第1、第2ダイアフラム65A,66Aの有効面積Shと第3ダイアフラム102Aの有効面積をSaとを異なったものにすることにより、この比(Sa/Sh)に応じた倍圧で、エア信号圧Pair_gaugeを増幅又は減衰し、第1、第2ダイアフラム65A,66Aに作用させることができ、結果として、吐出圧Pout_gauge、すなわち第2流体室62内の圧力を増幅又は減衰することができる。
【0085】
図11は、第3流体室64Aに供給されるエアの圧力Pair_gaugeと吐出圧Pout_gaugeとの関係を示すグラフである。
図11に示すように、面積比(Sa/Sh)を1より大きくすることにより、面積比(Sa/Sh)を1とした場合と比較して、吐出圧Pout_gaugeを増幅させることが可能となる。このように、本実施形態では、エアコンプレッサの回転数を制御しエア信号圧を調整することで、図11中ハッチングで示すような領域内で吐出圧を制御することができる。また逆に、面積比(Sa/Sh)を1より小さくすることにより、面積比(Sa/Sh)を1とした場合と比較して、吐出圧Pout_gaugeを減衰させることも可能となる。
【0086】
以上のように、本実施形態のエゼクタ50Aは、第3流体室64Aに導入されたエア信号圧を増幅又は減衰したものに基づいて、ニードル70の先端側とノズル80Aの吐出口84とを相対移動させるとともに、ノズル80Aから吐出される水素ガスの流量を調整する。したがって、第1実施形態の(1)、(3)、(4)と同様の効果を奏することができる。
【0087】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良などは本発明に含まれるものである。
例えば、上記実施形態では、複数のダイアフラム65,66やばね95,96などを用い、エアの圧力に応じてノズル80とニードル70とを相対移動させるように構成したが、これに限るものではない。例えば、モータやソレノイドなどの電磁式の駆動源を用い、エアの圧力に応じてノズルとニードルとを相対移動させるように構成してもよい。
【符号の説明】
【0088】
10 燃料電池
22 水素タンク(アノードガス供給源)
50,50A エゼクタ
60,60A 筐体
62 第2流体室
63,63A 第1流体室
64,64A 第3流体室
65,65A 第1ダイアフラム
66,66A 第2ダイアフラム
70 ニードル
71 先端部
75 溝
76 Oリング
80 ノズル
83 ノズル流路
84 吐出口
86 テーパ形状部
93 ディフューザ
101A 第4流体室
102A 第3ダイアフラム
103A 第4連通孔
【技術分野】
【0001】
本発明は、エゼクタに関する。詳しくは、燃料電池システムに搭載されるエゼクタに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車の新たな動力源として燃料電池システムが注目されている。燃料電池システムは、例えば、反応ガスを化学反応させて発電する燃料電池と、反応ガス流路を介して燃料電池に反応ガスを供給する反応ガス供給装置と、この反応ガス供給装置を制御する制御装置と、を備える。
【0003】
燃料電池は、例えば、数十個から数百個のセルが積層されたスタック構造である。ここで、各セルは、膜電極構造体(MEA)を一対のセパレータで挟持して構成され、膜電極構造体は、アノード電極(陰極)およびカソード電極(陽極)の2つの電極と、これら電極に挟持された固体高分子電解質膜とで構成される。このような燃料電池に対し、反応ガス供給装置によりアノード電極にアノードガスとしての水素ガスを供給し、カソード電極にカソードガスとしてのエアを供給すると、電気化学反応により発電する。
【0004】
燃料電池に供給する水素ガスには、例えば水素タンクに貯蔵しておいたものが用いられることが多いが、水素タンクから供給される水素ガスには発電に必要な量よりも多くの量の水素が含まれているため、燃料電池のアノード電極から排出されたガス(以下、「アノードオフガス」という)には、発電に供されず余剰となった水素が含まれている。そこで、燃料電池システムでは、循環装置を用いてアノードオフガスを回収するとともに、この回収したアノードオフガスを、水素タンクから供給された水素ガスに合流させて燃料電池に再び供給している。
【0005】
以下、このような循環装置について、外部に動力源を必要とせず、ガスの圧力エネルギを利用して水素ガスとアノードオフガスとを合流する、いわゆる空圧駆動式のエゼクタを例に説明する(特許文献1参照)。
【0006】
特許文献1に示されたエゼクタは、筐体と、この筐体内部に進退可能に設けられたニードルと、筐体内部に設けられニードルを収容する略筒状のノズルと、を備える。このようなエゼクタに対し、水素タンクからの水素ガスはノズル内部に導入され、ノズル内部のニードルとの隙間を流通して、ノズルの先端側の吐出口から吐出される。ここで、吐出口から吐出される水素ガスの流量や吐出圧は、ニードルの変位量に応じて調整することができる。一方アノードオフガスは、吐出口から吐出された水素ガスの負圧によりノズル外部の吐出口の近傍に導入され、吐出された水素ガスに合流されるようになっている。
【0007】
一方、ニードルを変位させる機構として、ニードルの基端側には信号圧が導入される空気極圧導入室が設けられ、さらにこの空気極圧導入室に隣接して燃料極圧導入室が設けられ、この燃料極圧導入室にはアノードオフガスが配管を通して背圧として導入される。また、空気極圧導入室とノズル内部とは第1ダイアフラムで仕切られており、空気極圧導入室と燃料極導入室とは第2ダイアフラムで仕切られている。
【0008】
このエゼクタによれば、空気極圧導入室と燃料極圧導入室との差圧に応じてノズル内部でニードルが進退される。また、ニードルの先端部のうちノズルの吐出口にかかる部分はテーパ状に形成されており、これにより、ニードルの進退に応じて吐出口の開口面積を変化させて、水素ガスの流量および吐出圧を調整することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2002−227799号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、燃料電池に対し必要な量の水素を安定して供給し続けるためには、エゼクタには低流量域から高流量域まで安定して水素ガスを吐出できる性能が要求される。しかしながら、高流量域と低流量域とでは、吐出される水素ガスの流量の調整に係る部分は異なったものとなる。つまり、高流量域における水素ガスの流量は、上述のようなニードルのテーパ状に形成された部分で調整されるのに対し、低流量域における水素ガスの流量は、ニードルのうち水素ガスの流路を締切る部分で調整される。したがって、特に低流量域における水素ガスの流量制御性を向上するには、水素ガスの流路を締切る構造について詳細に検討する必要があるものの、特許文献1には締切り構造に関する記載はない。
【0011】
本発明は、上述した課題に鑑みてなされたものであり、ノズル内部のニードルを進退させることでノズルから吐出されるガスの流量を調整するエゼクタにおいて、低流量域におけるガスの流量制御性を向上できるエゼクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するため請求項1に記載の発明は、第1ガス(例えば、後述の水素ガス)が導入される第1流体室(例えば、後述の第1流体室63)と、ニードル(例えば、後述のニードル70)と、当該ニードルを内部に収容し、前記第1流体室に導入された第1ガスを前記ニードルとの隙間に流通させて、吐出口(例えば、後述の吐出口84)から吐出するノズル(例えば、後述のノズル80)と、当該ノズルの先端側に設けられて第2ガス(例えば、後述のアノードオフガス)が導入される第2流体室(例えば、後述の第2流体室62)と、前記ノズルから吐出された第1ガスの負圧により前記第2流体室に導入される第2ガスを吸引して第1ガスに合流させるディフューザ(例えば、後述のディフューザ93)と、第3ガス(例えば、後述のエア)が導入される第3流体室(例えば、後述の第3流体室64)と、を備え、当該第3流体室に導入される第3ガスの圧力に基づいて、前記ニードルの先端側と前記ノズルの吐出口とを相対移動させることで、前記ノズルから吐出される第1ガスの流量を調整するエゼクタ(例えば、後述のエゼクタ50)を提供する。前記ニードルを収容するとともに前記吐出口を形成する前記ノズルのノズル流路(例えば、後述のノズル流路83)には、前記吐出口へ向かって縮径するテーパ形状部(例えば、後述のテーパ形状部86)が形成され、前記ニードルの先端側には、シール部材(例えば、後述のOリング76)が設けられる。また、前記ニードルの先端側と前記ノズルの吐出口とを互いに接近する方向に相対移動させると、前記シール部材は前記テーパ形状部に接し、前記ノズル流路を遮断する。
【0013】
本発明によれば、第3流体室に導入される第3ガスの圧力に基づいて、ニードルの先端側とノズルの吐出口とを相対移動させることで、ノズルの吐出口から吐出される第1ガスの流量を調整する。また、ノズル流路に吐出口へ向かって縮径するテーパ形状部を設け、さらにこのノズル流路内に収容されるニードルの先端側にシール部材を設けた。そして、吐出口から吐出される第1ガスの流れを遮断する場合、すなわちノズル流路を締切る場合、ニードルの先端側とノズルの吐出口とを互いに接近する方向に相対移動し、シール部材とテーパ形状部とを密接させる。
【0014】
ところで、第1ガスの流量が調整される吐出口の径に対して非常に大きな径のシール部材を用いてノズル流路を締切った場合、吐出口の径とシール部材の径との差に起因して、ノズル流路を締切る際に、吐出口から吐出される第1ガスの流量が急激に変化する場合がある。これに対して本発明では、ニードルを収容するノズル流路のうち吐出口近傍のテーパ形状部において、ニードルの先端側に設けられたシール部材で締切ることにより、このシール部材の径を吐出口の径に近いものにすることができる。このため、本発明によれば、ノズル流路の締切り近傍の低流量域における第1ガスの流量をなだらかに変化させ、かつ、吐出圧を連続的に変化させることができるので、低流量域における第1ガスの流量制御性を向上することができる。また、シール部材の径を吐出口の径に近づけることにより、より小さな力でノズル流路を締切ることができるので、締切り性も向上することができる。
【0015】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のエゼクタにおいて、前記第3流体室は、前記ノズルの基端側に設けられ、前記第1流体室は、前記第2流体室と前記第3流体室との間に設けられ、前記第1流体室と前記第2流体室とは、第1ダイアフラム(例えば、後述の第1ダイアフラム65)で仕切られ、前記第1流体室と前記第3流体室とは、第2ダイアフラム(例えば、後述の第2ダイアフラム66)で仕切られる。前記エゼクタは、前記第3流体室に導入された第3ガスの圧力により、前記ニードルの先端側と前記ノズルの吐出口とを互いに離隔する方向に相対移動させ、前記第2流体室に導入された第2ガスの圧力により、前記ニードルの先端側と前記ノズルの吐出口とを互いに接近する方向に相対移動させる。
【0016】
本発明によれば、第1流体室と第2流体室とを第1ダイアフラムで仕切るとともに、第1流体室と第3流体室とを第2ダイアフラムで仕切る。そして、第3ガスの圧力により、ニードルとノズルとを互いに離隔する方向に相対移動させ、第2ガスの圧力により、ニードルとノズルとを互いに接近する方向に相対移動させる。
【0017】
これにより、第1ガスの圧力が変動すると、この圧力の変動は、第1流体室の両側に形成されたダイアフラムを介して、第2流体室および第3流体室に伝わる。よって、第2流体室に導入された第2ガスと第3流体室に導入された第3ガスとは、圧力変動の影響を受けることになるが、第2ガスと第3ガスとでは、ニードルとノズルとを相対移動させる方向が逆になるため、この圧力変動の影響は相殺される。よって、ノズルとニードルとを相対移動させる力は、第2流体室と第3流体室との差圧にのみ依存することになる。したがって、エゼクタから送出するガス流量を一定にできる。その結果、第1流体室に導入する第1ガスの圧力を制御するレギュレータが不要となる。
【0018】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載のエゼクタにおいて、前記第3流体室は、前記ノズルの基端側に設けられ、前記第1流体室と前記第3流体室との間には、大気に連通する第4流体室(例えば、後述の第4流体室101A)が設けられ、前記第1流体室と前記第2流体室とは、第1ダイアフラム(例えば、後述の第1ダイアフラム65A)で仕切られ、前記第1流体室と前記第4流体室とは、前記第1ダイアフラムと略等しい有効面積を有する第2ダイアフラム(例えば、後述の第2ダイアフラム66A)で仕切られ、前記第3流体室と前記第4流体室とは、前記第1ダイアフラムおよび前記第2ダイアフラムとは異なる有効面積を有する第3ダイアフラム(例えば、後述の第3ダイアフラム102A)で仕切られ、前記第3流体室に導入された第3ガスの圧力により、前記ニードルの先端側と前記ノズルの吐出口とを互いに離隔する方向に相対移動させ、前記第2流体室に導入された第2ガスの圧力により、前記ニードルの先端側と前記ノズルの吐出口とを互いに接近する方向に相対移動させる。
【0019】
本発明によれば、第1流体室と第3流体室との間に、大気に連通する第4流体室を設ける。そして、第1流体室と第2流体室との間を第1ダイアフラムで仕切り、第1流体室と第4流体室との間を第2ダイアフラムで仕切り、第3流体室と第4流体室との間を第3ダイアフラムで仕切る。そして、第3ガスの圧力により、ニードルとノズルとを互いに離隔する方向に相対移動させ、第2ガスの圧力により、ニードルとノズルとを互いに接近する方向に相対移動させる。
【0020】
そして、第1ダイアフラムと第2ダイアフラムの有効面積を略等しくするとともに、第3ダイアフラムの有効面積をこれら第1、第2ダイアフラムの有効面積と異なるようにした。これにより、第3ダイアフラムの有効面積と前記第1ダイアフラムの有効面積との比に応じた倍圧で、第3流体室に導入される第3ガスの圧力を増幅又は減衰し、第1、第2ダイアフラムに作用させることができる。したがって、この倍圧で、ノズルから吐出される第1ガスの吐出圧すなわち第2流体室の圧力を増幅又は減衰することができる。
【0021】
請求項4に記載の発明は、請求項1から3の何れかに記載のエゼクタにおいて、前記シール部材は、Oリング(例えば、後述のOリング76)であり、前記ニードルの外周面には、前記Oリングを保持する環状の溝(例えば、後述の溝75)が形成されている。
【0022】
本発明によれば、シール部材にOリングを用い、このOリングをニードルの外周面に形成された環状の溝に保持させた。これにより、例えばシール部材を焼き付けた場合と比較して、小型で簡便な構造にすることができかつ生産コストを抑えることができる。
【0023】
請求項5に記載の発明は、請求項1から4の何れかに記載のエゼクタにおいて、前記エゼクタは、アノードガス(例えば、後述の水素ガス)およびカソードガス(例えば、後述のエア)を反応させて発電を行う燃料電池(例えば、後述の燃料電池10)にアノードガスを供給する。前記ディフューザの送出口(例えば、後述の送出口61)は、前記燃料電池に接続され、前記第1流体室には、アノードガス供給源(例えば、後述の水素タンク22)から第1ガスとしてアノードガスが導入され、前記第2流体室には、第2ガスとして前記燃料電池から排出されるアノードオフガスが導入され、前記第3流体室には、第3ガスとしてのカソードガスが導入される。
【0024】
従来では、配管を用いて、アノードオフガスをニードルの基端側に背圧として導入するが、アノードオフガスには燃料電池で生成された水分が含まれるため、アノードオフガス内に含まれる水分が配管内で凍結し、エゼクタの性能が低下するおそれがある。しかしながら、本発明によれば、ノズルの先端側の第2流体室に導入されるアノードオフガスをノズルの基端側に導入しないので、アノードオフガスに含まれる水分が凍結しても、エゼクタの性能が低下するのを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の第1実施形態に係るエゼクタが適用された燃料電池システムの構成を示すブロック図である。
【図2】上記実施形態に係るエゼクタの構造を示す断面図である。
【図3】上記実施形態に係るノズルの吐出口とニードルの先端部とが互いに最も離隔する方向に相対移動した状態におけるエゼクタの断面図である。
【図4】上記実施形態に係るノズルの吐出口とニードルの先端部とが互いに最も接近する方向に相対移動した状態におけるエゼクタの断面図である。
【図5】上記実施形態に係るノズルの先端部およびニードルの先端部の構造を示す断面図である。
【図6】上記実施形態に係るノズルの先端部およびニードルの先端部の構造を示す断面図である。
【図7】上記実施形態に係るノズルの先端部およびニードルの先端部の構造を示す断面図である。
【図8】従来のエゼクタの構造を示す断面図である。
【図9】水素ガスの流量とノズルのストローク量との関係を示す図である。
【図10】本発明の第2実施形態に係るエゼクタの構造を示す断面図である。
【図11】上記実施形態に係る第3流体室に供給されるエアの圧力と吐出圧との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の各実施形態を図面に基づいて説明する。
【0027】
[第1実施形態]
図1は、本発明の第1実施形態に係るエゼクタが適用された燃料電池システム1の構成を示すブロック図である。
燃料電池システム1は、車両に搭載され、反応ガスを反応させて発電を行う燃料電池10と、この燃料電池10に水素ガスやエア(空気)を供給する供給装置20と、これらを制御する制御装置30と、を有する。
【0028】
このような燃料電池10は、アノード電極(陰極)側にアノードガスとしての水素ガスが供給され、カソード電極(陽極)側にカソードガスとしての酸素を含むエアが供給されると、電気化学反応により発電する。
【0029】
供給装置20は、燃料電池10のカソード電極側にエアを供給するエアポンプ21と、アノード電極側に水素ガスを供給するアノードガス供給源としての水素タンク22およびエゼクタ50と、燃料電池10から排出されるガスを処理する希釈器23と、を含んで構成される。
【0030】
エアポンプ21は、エア供給路41を介して、燃料電池10のカソード電極側に接続されている。エア供給路41は途中で分岐されており、この分岐した部分は、エア分岐路411となり、後述のエゼクタ50に接続される。エア分岐路411には、オリフィス413と、エア分岐路411を流通するエアの流量を調整する流量調整バルブ412とが、上流側から下流側へ向かってこの順で設けられている。なお、この流量調整バルブ412には、例えば、エア分岐路411内のエアの排出するインジェクタが用いられる。燃料電池10のカソード電極側には、エア排出路42が接続され、このエア排出路42の途中には、上述の希釈器23が設けられる。
【0031】
水素タンク22は、水素供給路43を介して、燃料電池10のアノード電極側に接続されている。水素供給路43には、上流側から順に、レギュレータ431、遮断弁432、およびエゼクタ50が設けられる。燃料電池10のアノード電極側には、水素排出路44が接続され、この水素排出路44は、希釈器23に接続される。この水素排出路44には、パージ弁441が設けられている。また、水素排出路44のうちパージ弁441よりも燃料電池10側では、水素排出路44が分岐されて水素還流路45となり、この水素還流路45は、上述のエゼクタ50に接続されている。また、水素還流路45には、水素ガスの逆流を防止する逆止弁451が設けられている。このパージ弁441を開くことにより、水素排出路44内の水素ガスは、希釈器23に流入し、エア排出路42内のエアで希釈されて排出される。
【0032】
なお以下では、エア供給路41と、エア分岐路411と、エア排出路42とで構成されるエアの流路を総称してカソード系という。また、水素供給路43と、水素排出路44と、水素還流路45とで構成される水素の循環流路を総称してアノード系という。
【0033】
エゼクタ50は、燃料電池10から水素排出路44に排出された水素オフガスを、水素還流路45を通して回収し、水素供給路25に還流する。ここで、エゼクタ50は、エア分岐路411から導入するエアの圧力に基づいて、水素還流路45から回収する水素ガス流量を調整する。
【0034】
制御装置30は、供給装置20を制御して、燃料電池10を発電させる。このとき、制御装置30は、流量調整バルブ412を駆動することでアノード系内の圧力を調整する。具体的には、制御装置30は、アノード系内の圧力を上昇させる場合には、流量調整バルブ412を駆動して、エゼクタ50に導入するエア圧力を上昇させる。一方、アノード系内の圧力を低下させる場合には、流量調整バルブ412を駆動して、エゼクタ50の導入するエア圧力を低下させる。
【0035】
具体的には、制御装置30は、以下の手順で燃料電池10を発電させる。
すなわち、パージ弁441を閉じるとともに、遮断弁432を開く。そして、エアポンプ21を駆動することにより、エア供給路41を介して、燃料電池10のカソード側にエアを供給する。同時に、水素タンク22から、水素供給路43を介して、燃料電池10のアノード側に水素ガスを供給する。
【0036】
燃料電池10に供給された水素ガスおよびエアは、発電に供された後、燃料電池10からアノード側の生成水などの残留水とともに、水素排出路44およびエア排出路42に流入する。パージ弁441は閉じているので、水素排出路44に流れた水素ガスは、水素還流路45を通って水素供給路43に還流されて、再利用される。
【0037】
ここで、エアポンプ21から供給されたエアの一部は、エア分岐路411にも流入する。流量調整バルブ412を駆動し、エア分岐路411を通ってエゼクタ50に流入するエアの圧力を変化させることにより、アノード系内の圧力を調整する。
【0038】
その後、パージ弁441を適当な開度で開くことにより、水素排出路44に排出された水素ガスは、希釈器23に流入する。この希釈器23に流入した水素ガスは、希釈器23において、エア排出路42を流通するエアで希釈されて、外部に排出される。
【0039】
図2は、エゼクタ50の構造を示す断面図である。
エゼクタ50は、筐体60と、この筐体60内部に固定されたニードル70と、このニードル70を収容する略筒状のノズル80と、を備える。
【0040】
ニードル70は略棒状であり、その先端部71には先端へ向かうに従い縮径するようにテーパ形状部77が形成されている。先端部71のうち、テーパ形状部77が形成された部分よりも基端側の外周面には環状の溝75が形成されており、この溝75には、シール部材としてのOリング76が嵌装されている。
【0041】
ニードル70の中心には、延在方向に沿って伸びる貫通孔としてのガス流路72が、その基端面から先端部71にかけて形成されている。そして、ニードル70のうち、ノズル80の後述のテーパ形状部86に連通する部分、並びに、筐体60の後述の第1流体室63に連通する部分には、それぞれ、複数の貫通孔が形成されている。
【0042】
また、ニードル70の略中央には、ガス流路72に対し垂直に延びる鍔部73が形成されており、この鍔部73には円盤状のニードル支持部97が基端側から取り付けられている。さらにこのニードル支持部97は、固定ねじ98によりニードル70とともに筐体60の内壁面に固定される。
【0043】
ノズル80は、ニードル70の基端側に設けられた基端部81と、ニードル70の先端側に設けられた先端部82と、これら基端部81と先端部82とを連結する連結ピン88と、を備える。連結ピン88は、カラー89とともにニードル支持部97に形成された挿通孔99に挿通されている。
【0044】
ノズル80の先端部82には、筐体60の延出方向に沿って延びる貫通孔としてのノズル流路83が形成されている。このノズル流路83は、ニードル70の鍔部73よりも先端側を収容するとともに、その先端面は、吐出口84となっている。また、このノズル流路83の先端側の吐出口84の近傍には、吐出口84へ向かって縮径するテーパ形状部86が形成され、さらにこのノズル流路83の基端側には、円筒状の軸受85が設けられている。
一方、ノズル80の基端部81には、ニードル70の鍔部73よりも基端側を収容する凹部87が形成されている。
【0045】
ニードル70の鍔部73よりも先端側は、ノズル80の先端部82のノズル流路83に挿入されて、軸受85に支持される。一方、ニードル70の鍔部73よりも基端側は、ノズル80の基端部81の凹部87に嵌合されて支持される。これにより、ニードル70はノズル80の内部に収容され、またノズル80はニードル70により同軸方向に進退可能に保持される。すなわち、ニードル70の先端部71とノズル80の吐出口84とは相対移動可能となる。
【0046】
また、ノズル80の前進する方向への移動は、ノズル80の基端部81がニードル支持部97に接することにより規制される(後述の図3参照)。この状態で、ニードル70の先端部71とノズル80の吐出口84とは最も離隔した状態となる。
一方、ノズル80の後退する方向への移動は、ノズル80の先端部82のテーパ形状部86がニードル70のOリング76に接することにより規制される(後述の図4参照)。この状態で、ノズル80の吐出口84とニードル70の先端部71とは最も接近した状態となる。
なお以下の説明では、ニードル70のOリング76がノズル80のテーパ形状部86に接した状態から、ノズル80が前進する方向へ変位した量をストローク量という。
【0047】
以上のニードル70およびノズル80によれば、ノズル80の基端部81と先端部82との間に導入された水素ガスは、ノズル流路83に設けられたニードル70のガス流路72内に導入され、ノズル流路83内のニードル70との隙間を流通して、ノズル80の吐出口84から吐出される。
【0048】
筐体60は、略筒状であり、この筐体60の先端面には、送出口61が形成される。この送出口61には、水素供給路43を介して燃料電池10が接続される。
【0049】
また、筐体60には、ノズル80を付勢してノズル80とニードル70との相対位置を保持する2つのばね95,96と、筐体60の基端面に螺合されて、これらばね95,96の付勢力を調整する調整ねじ92と、が設けられている。ばね95は、ノズル80を先端部82側から基端部81側へ向かって付勢する。一方ばね96は、ばね95とは逆に、ノズル80を基端部81側から先端部82側へ向かって付勢する。
【0050】
ノズル80の外壁面と筐体60の内壁面との間の空間は、ノズル80の先端側に位置する第2流体室62、ノズル80の中央部側に位置する第1流体室63、ノズル80の基端側に位置する第3流体室64の3つに仕切られている。つまり、第1流体室63は、第2流体室62と第3流体室64との間に設けられている。
【0051】
第1流体室63と第2流体室62とは、第1ダイアフラム65で仕切られている。この第1ダイアフラム65は、ノズル80の先端部82と筐体60の内壁面との間に形成されている。第1流体室63と第3流体室64とは、第2ダイアフラム66で仕切られている。この第2ダイアフラム66は、ノズル80の基端部81と筐体60の内壁面との間に形成されている。
【0052】
すなわち、第1流体室63は、第1ダイアフラム65および第2ダイアフラム66で仕切られて、ノズル80の基端部81と先端部82との間に設けられることになる。また、これら第1ダイアフラム65および第2ダイアフラム66の有効面積は略同一となっている。
【0053】
筐体60には、第1流体室63に連通する第1連通孔67、第2流体室62に連通する第2連通孔68、および、第3流体室64に連通する第3連通孔69が形成されている。第1連通孔67には、水素供給路43を介して水素タンク22が接続され、この第1連通孔67を通して、水素タンク22から第1ガスとしての水素ガスが第1流体室63に導入される。そして、この第1流体室63に導入された水素ガスは、ノズル80に導入されて、ノズル80の吐出口84から吐出される。
【0054】
第2連通孔68には、水素還流路45が接続され、この第2連通孔68を通して、燃料電池10から排出された第2ガスとしてのアノードオフガスが第2流体室62に導入される。第3連通孔69には、エア分岐路411が接続され、この第3連通孔69を通して、第3ガスとしてのエアが第3流体室64にエア信号圧として導入される。
【0055】
筐体60の先端側の形状は、ディフューザ93となっており、ノズル80の吐出口84に接続されている。このディフューザ93は、具体的には、筐体60の内径が送出口61に向かうに従い急激に狭くなり、その後、緩やかに拡がることにより形成される。ディフューザ93は、ノズル80の吐出口84から吐出された水素ガスの流速を上昇させて送出口61から送出し、この送出される水素ガスの負圧により、第2流体室62に導入されるアノードオフガスを吸引して、吐出口84から吐出される水素ガスに合流させる。
【0056】
第3流体室64がノズル80の基端側に設けられているため、ニードル70とノズル80とは、第3流体室64に導入されたエア信号圧により、それぞれの先端部71と吐出口84が互いに離隔する方向に相対移動される。一方、第2流体室62がノズル80の先端側に設けられているため、ニードル70とノズル80とは、第2流体室62に導入されたアノードオフガスの圧力により、それぞれの先端部71と吐出口84が互いに接近する方向に相対移動される。つまり、第3流体室64に作用するエア信号圧をPairとし、第2流体室62に作用する水素ガスの吐出圧(アノード系内の圧力)をPoutとし、第1ダイアフラム65および第2ダイアフラム66の有効面積をSとし、ノズル80を第3流体室64側へ後退させる2つのばね95,96による付勢力をFとすると、下記式が成立する。
F=(Pair−Pout)×S
【0057】
したがって、第1ダイアフラム65および第2ダイアフラム66の有効面積を同一のものとすると、第3流体室64と第2流体室62との差圧(Pair−Pout)は、ばね95,96による付勢力Fのみにより規定されることとなる。一方、ばね95,96による付勢力Fは、ノズル80のストローク量、すなわちノズル80とニードル70との相対位置に応じて変化する。したがって、第3流体室64と第2流体室62との差圧(Pair−Pout)に応じて、ニードル70の先端部71とノズル80の吐出口84との相対位置が変化し、その結果、後に詳述するように吐出口84から吐出される水素ガスの流量や吐出圧が調整される。
【0058】
次に、以上のように構成されたエゼクタ50の動作について、図3および図4を参照して説明する。
図3および図4は、それぞれエゼクタ50の動作を説明するための断面図である。より具体的には、図3は、ノズル80の吐出口84とニードル70の先端部71とが互いに離隔する方向に相対移動した状態におけるエゼクタ50の断面図である。図4は、ノズル80の吐出口84とニードル70の先端部71とが互いに接近する方向に相対移動した状態におけるエゼクタ50の断面図である。
【0059】
第3流体室64に導入されたエア信号圧が、所定値ここでは第2流体室62に導入されたアノードオフガスの圧力よりも高い場合、図3に示すように、ノズル80が前進する。そして、第1流体室63に導入された水素ガスは、ノズル流路83に設けられたニードル70のガス流路72内に導入され、Oリング76とノズル80のテーパ形状部86との隙間、およびニードル70のテーパ形状部77と吐出口84との隙間を流通して、ノズル80から吐出される。ノズル80から吐出された水素ガスは、ディフューザ93により流速が上昇して送出口61から送出される。第2流体室62に導入されたアノードオフガスは、このように水素ガスを送出することで発生した負圧により吸引され、吐出口84から吐出される水素ガスに合流する。
【0060】
ここで、第3流体室64に導入されたエア信号圧を上昇させると、ノズル80がさらに前進する。そして、ノズル80の吐出口84とニードル70のテーパ形状部77との隙間、すなわち吐出口84の開口面積が大きくなる。その結果、ノズル80から吐出される水素ガス流量が増加し、アノード系内の圧力が上昇する。一方、第3流体室64に導入されたエア信号圧を低下させると、吐出口84の開口面積が小さくなる。その結果、ノズル80から吐出される水素ガス流量が減少し、アノード系内の圧力が低下する。
【0061】
また、第3流体室64に導入されたエア信号圧が、所定値ここでは第2流体室62に導入されるアノードオフガスの圧力以下である場合、図4に示すように、ノズル80が後退する。そして、図4に示すように、ニードル70のOリング76がノズル流路83のテーパ形状部86に接し、ノズル流路83を遮断する。これにより、ノズル80から吐出される水素ガスの流量はゼロになる。
【0062】
次に、ノズル80のストローク量を変化させたときにおけるノズル流路83内の水素ガスの流れの変化について、図5〜図7を参照して説明する。
図5〜図7は、それぞれ、ノズル80の先端部82およびニードル70の先端部71の構造を示す断面図である。より具体的には、図5はストローク量が最小のときの断面図であり、図7はストローク量が最大のときの断面図である。図6は、ストローク量がこれら図5および図7の中間のときの断面図である。
【0063】
上述のようにノズル80から吐出される水素ガスの流量は、ノズル80のストローク量に応じて調整されるようになっている。より具体的には、Oリング76とノズル80のテーパ形状部86との隙間、および、ニードル70のテーパ形状部77と吐出口84との隙間の異なる2つの部分において、ノズル流路83内の水素ガスの流れを制限することにより、ノズル80から吐出される水素ガスの流量が制御される。
【0064】
先ず、図5に示す状態では、Oリング76がノズル80のテーパ形状部86に接しており、ノズル流路83は遮断され、ノズル80から吐出される水素ガスの流量はゼロとなる。ノズル流路83を遮断した状態からストローク量を増加すると、Oリング76とノズル80のテーパ形状部86との間に隙間が形成され、これにより、ノズル80から水素ガスが吐出され始める。ここで、ストローク量が僅かである場合、ニードル70のテーパ形状部77側の隙間よりもOリング76側の隙間の方が小さいため、ノズル80から吐出される水素ガスの流量はOリング76側の隙間の大きさに応じて制御される。
【0065】
図5に示す状態からストローク量を増加し、図6に示す状態にすると、Oリング76側の隙間が吐出口84側の隙間よりも大きくなる。このため、ノズル80から吐出される水素ガスの流量を制御する部分は、Oリング76側からテーパ形状部77側へと移行する。そして、図6に示す状態から図7に示すストローク量が最大の状態になるまでは、ノズル80から吐出される水素ガスの流量は、テーパ形状部77側の隙間の大きさに応じて制御されることとなる。
【0066】
次に、水素ガスの流量制御性について、図8および図9を参照して本実施形態のエゼクタ50と従来のエゼクタとを比較する。
図8は、従来のエゼクタ150の構造を示す断面図である。
上述のように、本実施形態のエゼクタ50では、ニードル70の先端部71に設けられたOリング76により、水素ガスが流通するノズル流路83を締切る。これに対して、従来のエゼクタ150では、ニードル170のうち軸受185よりも基端側に設けられた円盤状のバルブ173が設けられ、ノズル180の先端部182のうちバルブ173と対向する部分には環状のゴムシール178が設けられている。すなわち、従来のエゼクタ150は、ノズル180が後退すると、バルブ173がゴムシール178に接することにより、水素ガスの流路を遮断する構造となっている。
【0067】
図8に示すように、ノズル流路183内のニードル170との隙間に水素ガスを流通させる構造のエゼクタ150では、水素ガスの流路を遮断するバルブ173を軸受185よりも基端側に設けると、バルブ173の径を軸受185の径よりも大きくせざるを得ない。このため、バルブ173の径は吐出口184の径と比較して非常に大きくなってしまう。
【0068】
図9は、水素ガスの流量とノズルのストローク量との関係を示す図である。図9において、破線は従来のエゼクタ150における上記関係を示し、実線は本実施形態のエゼクタ50における上記関係を示す。
【0069】
図9に示すように、水素ガスの流路を締切るバルブ173の径が吐出口184の径に対して大きいと、このバルブ173側の部分で流量が制御されるストローク量の小さい領域では、僅かなストローク量の変化で水素ガスの流量が大きく変化する。このため、水素ガスの流量を制御する部分が、バルブ173側からニードル170のテーパ形状部177側に移行する際、ストローク量に対する水素ガスの流量の変化率が急激に変化してしまう。
【0070】
これに対して本実施形態では、吐出口84に近い径を有するOリング76で水素ガスの流路を締切ることにより、ストローク量の変化に対する水素ガスの流量の変化を、従来と比較して小さくすることができる。このため、水素ガスの流量を制御する部分が、Oリング76側からテーパ形状部77側に移行する際における、ストローク量に対する水素ガスの流量の変化率の変化をなだらかにすることができるので、従来と比較して、低流量域における水素ガスの流量制御性を向上することができる。また、従来と比較して小さな面積で締切るため、より小さな力で締切ることができ、結果として締切り性を向上することもできる。
【0071】
本実施形態によれば、以下のような効果がある。
(1)第3流体室64に導入されるエア信号圧に基づいて、ニードル70の先端部71とノズル80の吐出口84とを相対移動させることで、ノズル80の吐出口84から吐出される水素ガスの流量を調整する。また、ノズル流路83に吐出口84へ向かって縮径するテーパ形状部86を設け、さらにこのノズル流路83内に収容されるニードル70の先端部71にOリング76を設けた。そして、吐出口84から吐出される水素ガスの流れを遮断する場合、すなわちノズル流路83を締切る場合、ニードル70の先端部71とノズル80の吐出口84とを互いに接近する方向に相対移動し、Oリング76とテーパ形状部86とを密接させる。
【0072】
また、ニードル70を収容するノズル流路83のうち吐出口84近傍のテーパ形状部86において、ニードル70の先端部71に設けられたOリング76で締切ることにより、このOリング76の径を吐出口84の径に近いものにすることができる。このため、ノズル流路83の締切り近傍の低流量域における水素ガスの流量をなだらかに変化させ、かつ、吐出圧を連続的に変化させることができるので、低流量域における水素ガスの流量制御性を向上することができる。また、Oリング76の径を吐出口84の径に近づけることにより、より小さな力でノズル流路83を締切ることができる。
【0073】
(2)第1流体室63と第2流体室62とを第1ダイアフラム65で仕切るとともに、第1流体室63と第3流体室64とを第2ダイアフラム66で仕切る。そして、エア分岐路411からのエアの圧力により、ニードル70とノズル80とを互いに接近する方向に相対移動させ、水素還流路45からのアノードオフガスの圧力により、ニードル70とノズル80とを互いに離隔する方向に相対移動させる。
【0074】
これにより、水素タンク22からの水素ガスの圧力が変動すると、この圧力の変動は、第1流体室63の両側に形成されたダイアフラム65,66を介して、第2流体室62および第3流体室64に伝わる。よって、第2流体室62に導入された水素還流路45からのアノードオフガスと第3流体室64に導入されたエア分岐路411からのエアとは、圧力変動の影響を受けることになるが、水素還流路45からのアノードオフガスとエア分岐路411からのエアとでは、ニードル70とノズル80とを相対移動させる方向が逆になるため、この圧力変動の影響は相殺される。よって、ノズル80とニードル70とを相対移動させる力は、第2流体室62と第3流体室64との差圧にのみ依存することになる。したがって、エゼクタ50から送出するガス流量を一定にできる。その結果、第1流体室63に導入する水素ガスの圧力を制御するレギュレータが不要となる。
【0075】
(3)Oリング76をニードル70の先端部71の外周面に形成された環状の溝75に保持させた。これにより、例えばシール部材を焼き付けた場合と比較して、小型で簡便な構造にすることができかつ生産コストを抑えることができる。
【0076】
(4)第2流体室62に導入されるアノードオフガスをノズル80の基端側に導入しないので、アノードオフガスに含まれる水分が凍結しても、エゼクタ50の性能が低下するのを防止できる。
【0077】
[第2実施形態]
本発明の第2実施形態について、図10および図11を参照して説明する。
以下の第2実施形態の説明にあたって、第1実施形態と同一の構成については同一の符号を付し、その説明を省略又は簡略化する。
【0078】
図10は、本発明の第2実施形態に係るエゼクタ50Aの構造を示す断面図である。本実施形態のエゼクタ50Aは、筐体60Aおよびノズル80Aの構成が第1実施形態と異なる。
【0079】
ノズル80Aの外壁面と筐体60Aの内壁面との間の空間は、ノズル80Aの先端側に位置する第2流体室62、ノズル80Aの中央部側に位置する第1流体室63A、ノズル80Aの基端側に位置する第3流体室64A、第1流体室63Aと第3流体室64Aとの間に設けられた第4流体室101Aの3つに仕切られている。
【0080】
第1流体室63Aと第2流体室62とは、第1ダイアフラム65Aで仕切られている。この第1ダイアフラム65は、ノズル80Aの先端部82と筐体60Aの内壁面との間に形成されている。第1流体室63と第4流体室101Aとは、第2ダイアフラム66Aで仕切られている。この第2ダイアフラム66Aは、ノズル80Aの基端部81Aと筐体60Aの内壁面との間に形成されている。第3流体室64Aと第4流体室101Aとは、第3ダイアフラム102Aで仕切られている。この第3ダイアフラム102Aは、ノズル80Aの基端部81Aと筐体60Aの内壁面との間のうち第2ダイアフラム66Aよりも基端側に形成されている。
すなわち、第1流体室63Aは、第1ダイアフラム65Aおよび第2ダイアフラム66Aで仕切られて、ノズル80Aの基端部81Aと先端部82との間に設けられることになる。また、これら第1ダイアフラム65Aおよび第2ダイアフラム66Aの有効面積は略同一となっており、第3ダイアフラム102Aの有効面積は第1ダイアフラム65Aおよび第2ダイアフラム66Aの有効面積と異なっている。
【0081】
筐体60Aには、第1流体室63Aに連通する第1連通孔67、第2流体室62に連通する第2連通孔68、第3流体室64Aに連通する第3連通孔69の他、第4流体室101Aに連通する第4連通孔103Aが形成されている。第4流体室101Aは、この第4連通孔103Aを介して大気に連通する。
【0082】
第3流体室64Aがノズル80Aの基端側に設けられているため、ニードル70とノズル80Aとは、第3流体室64Aに導入されたエア信号圧により、それぞれの先端部71と吐出口84が互いに離隔する方向に相対移動される。一方、第2流体室62がノズル80Aの先端側に設けられているため、ニードル70とノズル80Aとは、第2流体室62Aに導入されたアノードオフガスの圧力により、それぞれの先端部71と吐出口84が互いに接近する方向に相対移動される。
【0083】
第3流体室64Aに作用するエア信号圧をPairとし、第2流体室62に作用する水素ガスの吐出圧(アノード系内の圧力)をPoutとする。また、第1ダイアフラム65Aおよび第2ダイアフラム66Aの有効面積をShとし、第3ダイアフラム102Aの有効面積をSaとすると、第3流体室64Aに作用するエア信号圧のゲージ圧Pair_gaugeと、第2流体室62に作用する水素ガスの吐出圧のゲージ圧Pout_gaugeとの間に、下記式に示すような関係式が成立する。
Pout_gauge=Pair_gauge×(Sa/Sh)
【0084】
つまり、本実施形態のエゼクタ50Aでは、第1、第2ダイアフラム65A,66Aの有効面積Shと第3ダイアフラム102Aの有効面積をSaとを異なったものにすることにより、この比(Sa/Sh)に応じた倍圧で、エア信号圧Pair_gaugeを増幅又は減衰し、第1、第2ダイアフラム65A,66Aに作用させることができ、結果として、吐出圧Pout_gauge、すなわち第2流体室62内の圧力を増幅又は減衰することができる。
【0085】
図11は、第3流体室64Aに供給されるエアの圧力Pair_gaugeと吐出圧Pout_gaugeとの関係を示すグラフである。
図11に示すように、面積比(Sa/Sh)を1より大きくすることにより、面積比(Sa/Sh)を1とした場合と比較して、吐出圧Pout_gaugeを増幅させることが可能となる。このように、本実施形態では、エアコンプレッサの回転数を制御しエア信号圧を調整することで、図11中ハッチングで示すような領域内で吐出圧を制御することができる。また逆に、面積比(Sa/Sh)を1より小さくすることにより、面積比(Sa/Sh)を1とした場合と比較して、吐出圧Pout_gaugeを減衰させることも可能となる。
【0086】
以上のように、本実施形態のエゼクタ50Aは、第3流体室64Aに導入されたエア信号圧を増幅又は減衰したものに基づいて、ニードル70の先端側とノズル80Aの吐出口84とを相対移動させるとともに、ノズル80Aから吐出される水素ガスの流量を調整する。したがって、第1実施形態の(1)、(3)、(4)と同様の効果を奏することができる。
【0087】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良などは本発明に含まれるものである。
例えば、上記実施形態では、複数のダイアフラム65,66やばね95,96などを用い、エアの圧力に応じてノズル80とニードル70とを相対移動させるように構成したが、これに限るものではない。例えば、モータやソレノイドなどの電磁式の駆動源を用い、エアの圧力に応じてノズルとニードルとを相対移動させるように構成してもよい。
【符号の説明】
【0088】
10 燃料電池
22 水素タンク(アノードガス供給源)
50,50A エゼクタ
60,60A 筐体
62 第2流体室
63,63A 第1流体室
64,64A 第3流体室
65,65A 第1ダイアフラム
66,66A 第2ダイアフラム
70 ニードル
71 先端部
75 溝
76 Oリング
80 ノズル
83 ノズル流路
84 吐出口
86 テーパ形状部
93 ディフューザ
101A 第4流体室
102A 第3ダイアフラム
103A 第4連通孔
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1ガスが導入される第1流体室と、
ニードルと、
当該ニードルを内部に収容し、前記第1流体室に導入された第1ガスを前記ニードルとの隙間に流通させて、吐出口から吐出するノズルと、
当該ノズルの先端側に設けられて第2ガスが導入される第2流体室と、
前記ノズルから吐出された第1ガスの負圧により前記第2流体室に導入される第2ガスを吸引して第1ガスに合流させるディフューザと、
第3ガスが導入される第3流体室と、を備え、
当該第3流体室に導入される第3ガスの圧力に基づいて、前記ニードルの先端側と前記ノズルの吐出口とを相対移動させることで、前記ノズルから吐出される第1ガスの流量を調整するエゼクタであって、
前記ニードルを収容するとともに前記吐出口を形成する前記ノズルのノズル流路には、前記吐出口へ向かって縮径するテーパ形状部が形成され、
前記ニードルの先端側には、シール部材が設けられ、
前記ニードルの先端側と前記ノズルの吐出口とを互いに接近する方向に相対移動させると、前記シール部材は前記テーパ形状部に接し、前記ノズル流路を遮断することを特徴とするエゼクタ。
【請求項2】
前記第3流体室は、前記ノズルの基端側に設けられ、
前記第1流体室は、前記第2流体室と前記第3流体室との間に設けられ、
前記第1流体室と前記第2流体室とは、第1ダイアフラムで仕切られ、
前記第1流体室と前記第3流体室とは、第2ダイアフラムで仕切られ、
前記第3流体室に導入された第3ガスの圧力により、前記ニードルの先端側と前記ノズルの吐出口とを互いに離隔する方向に相対移動させ、前記第2流体室に導入された第2ガスの圧力により、前記ニードルの先端側と前記ノズルの吐出口とを互いに接近する方向に相対移動させることを特徴とする請求項1に記載のエゼクタ。
【請求項3】
前記第3流体室は、前記ノズルの基端側に設けられ、
前記第1流体室と前記第3流体室との間には、大気に連通する第4流体室が設けられ、
前記第1流体室と前記第2流体室とは、第1ダイアフラムで仕切られ、
前記第1流体室と前記第4流体室とは、前記第1ダイアフラムと略等しい有効面積を有する第2ダイアフラムで仕切られ、
前記第3流体室と前記第4流体室とは、前記第1ダイアフラムおよび前記第2ダイアフラムとは異なる有効面積を有する第3ダイアフラムで仕切られ、
前記第3流体室に導入された第3ガスの圧力により、前記ニードルの先端側と前記ノズルの吐出口とを互いに離隔する方向に相対移動させ、前記第2流体室に導入された第2ガスの圧力により、前記ニードルの先端側と前記ノズルの吐出口とを互いに接近する方向に相対移動させることを特徴とする請求項1に記載のエゼクタ。
【請求項4】
前記シール部材は、Oリングであり、
前記ニードルの外周面には、前記Oリングを保持する環状の溝が形成されていることを特徴とする請求項1から3の何れかに記載のエゼクタ。
【請求項5】
アノードガスおよびカソードガスを反応させて発電を行う燃料電池にアノードガスを供給するエゼクタであって、
前記エゼクタは、請求項1から4の何れかに記載のエゼクタであり、
前記ディフューザの送出口は、前記燃料電池に接続され、
前記第1流体室には、アノードガス供給源から第1ガスとしてアノードガスが導入され、
前記第2流体室には、第2ガスとして前記燃料電池から排出されるアノードオフガスが導入され、
前記第3流体室には、第3ガスとしてのカソードガスが導入されることを特徴とするエゼクタ。
【請求項1】
第1ガスが導入される第1流体室と、
ニードルと、
当該ニードルを内部に収容し、前記第1流体室に導入された第1ガスを前記ニードルとの隙間に流通させて、吐出口から吐出するノズルと、
当該ノズルの先端側に設けられて第2ガスが導入される第2流体室と、
前記ノズルから吐出された第1ガスの負圧により前記第2流体室に導入される第2ガスを吸引して第1ガスに合流させるディフューザと、
第3ガスが導入される第3流体室と、を備え、
当該第3流体室に導入される第3ガスの圧力に基づいて、前記ニードルの先端側と前記ノズルの吐出口とを相対移動させることで、前記ノズルから吐出される第1ガスの流量を調整するエゼクタであって、
前記ニードルを収容するとともに前記吐出口を形成する前記ノズルのノズル流路には、前記吐出口へ向かって縮径するテーパ形状部が形成され、
前記ニードルの先端側には、シール部材が設けられ、
前記ニードルの先端側と前記ノズルの吐出口とを互いに接近する方向に相対移動させると、前記シール部材は前記テーパ形状部に接し、前記ノズル流路を遮断することを特徴とするエゼクタ。
【請求項2】
前記第3流体室は、前記ノズルの基端側に設けられ、
前記第1流体室は、前記第2流体室と前記第3流体室との間に設けられ、
前記第1流体室と前記第2流体室とは、第1ダイアフラムで仕切られ、
前記第1流体室と前記第3流体室とは、第2ダイアフラムで仕切られ、
前記第3流体室に導入された第3ガスの圧力により、前記ニードルの先端側と前記ノズルの吐出口とを互いに離隔する方向に相対移動させ、前記第2流体室に導入された第2ガスの圧力により、前記ニードルの先端側と前記ノズルの吐出口とを互いに接近する方向に相対移動させることを特徴とする請求項1に記載のエゼクタ。
【請求項3】
前記第3流体室は、前記ノズルの基端側に設けられ、
前記第1流体室と前記第3流体室との間には、大気に連通する第4流体室が設けられ、
前記第1流体室と前記第2流体室とは、第1ダイアフラムで仕切られ、
前記第1流体室と前記第4流体室とは、前記第1ダイアフラムと略等しい有効面積を有する第2ダイアフラムで仕切られ、
前記第3流体室と前記第4流体室とは、前記第1ダイアフラムおよび前記第2ダイアフラムとは異なる有効面積を有する第3ダイアフラムで仕切られ、
前記第3流体室に導入された第3ガスの圧力により、前記ニードルの先端側と前記ノズルの吐出口とを互いに離隔する方向に相対移動させ、前記第2流体室に導入された第2ガスの圧力により、前記ニードルの先端側と前記ノズルの吐出口とを互いに接近する方向に相対移動させることを特徴とする請求項1に記載のエゼクタ。
【請求項4】
前記シール部材は、Oリングであり、
前記ニードルの外周面には、前記Oリングを保持する環状の溝が形成されていることを特徴とする請求項1から3の何れかに記載のエゼクタ。
【請求項5】
アノードガスおよびカソードガスを反応させて発電を行う燃料電池にアノードガスを供給するエゼクタであって、
前記エゼクタは、請求項1から4の何れかに記載のエゼクタであり、
前記ディフューザの送出口は、前記燃料電池に接続され、
前記第1流体室には、アノードガス供給源から第1ガスとしてアノードガスが導入され、
前記第2流体室には、第2ガスとして前記燃料電池から排出されるアノードオフガスが導入され、
前記第3流体室には、第3ガスとしてのカソードガスが導入されることを特徴とするエゼクタ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2011−21516(P2011−21516A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−165914(P2009−165914)
【出願日】平成21年7月14日(2009.7.14)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年7月14日(2009.7.14)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】
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