説明

エチレンの処理方法

水を含むエチレンストリームから水を除去するための方法であって、該方法は:
− 水を含むエチレンストリームを分離槽に導入しおよび分離槽を通して該エチレンストリームを循環させ;
− 液体ジエチルエーテルストリームを分離槽に導入しおよび分離槽を通して該液体ジエチルエーテルストリームを循環させ、それにより該液体ジエチルエーテルストリームと該水を含むエチレンストリームとを接触させ;
− 分離槽から減少した含水量を有するエチレンストリームを回収し;ならびに任意で
− 分離槽から増加した含水量を有する液体ジエチルエーテルストリームを回収することからなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水を含むエチレンストリームから水を除去する方法に関する。
【0002】
特に、本発明は、液体ジエチルエーテルストリームを使用して水を含むエチレンストリームから水を除去する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
エチレンと他のアルケン(また、一般にオレフィンとも呼ばれる)は重要な大量生産型化学薬品でありおよびポリエチレンなどのポリマー製品を含む多くの化学製品の有用な出発材料である。伝統的に、エチレンのようなアルケンは、原油由来の炭化水素の水蒸気分解や接触分解によって生産されている。しかし、原油は有限資源であるので、原油由来でない原料を使用することができる、アルケン、特にエチレンを製造するための代替手段、経済的に実行可能な方法を見つけることに関心がある。
【0004】
近年ではアルケンの生産のための代替材料の探索は、例えば、糖、デンプン及び/又はセルロース系材料からの発酵によって製造することができ、あるいは合成ガスから製造することができる、メタノール、エタノール等のアルコール類の脱水によるアルケンの生産につながっている。
【0005】
アルコールからアルケンの製造方法の例は次のとおりである:
米国特許第5,817,906号明細書は、アルコールおよび水を含む粗酸素化物供給原料から軽質オレフィンを製造する方法を開示している。方法は2つの反応段階を採用している。まず、蒸留反応を用いて、アルコールをエーテルに変換する。エーテルは、その後続いて金属アルミノケイ酸塩触媒を含む酸素化変換ゾーンを通過して軽質オレフィンストリームを生成する。
【0006】
欧州特許出願公開第1,792,885号明細書は、エタノールを含有する原料からのエチレンの製造方法を開示している。ヘテロポリ酸に基づく触媒は、エタノール原料の脱水に適したものとして開示されている。
【0007】
国際公開第2008/138775号A1パンフレットは、一種以上のアルコールの脱水のための方法を開示しており、該方法は一種以上のエーテルの存在下で一種以上のアルコールを担持されたヘテロポリ酸触媒に接触させることからなる。
【0008】
エチレンは、下流の工業用途、例えばエチレン重合に使用される前に、エチレンストリームは、通常の精製操作に供される。一般的にエチレンストリームから除去する必要がある主な不純物は、アルコールの脱水における副産物として形成される水である。たとえば、アルケン供給原料、特にはエチレン供給原料内に、通常は低ppmの濃度程度の非常に低い含水量のみが、一般に触媒重合によるポリマーの調製に使用するために許容できるとみなされる;これは水が重合プロセスの触媒毒として作用し得るためである。アルケン、特にエチレンストリームから水を除去することが望ましい他の理由もある。例えば、エチレンストリームは、例えば−28℃での蒸留によるエチレンのさらなる精製のように、非常に低い温度で操作できる下流の機器に利用され得るが:そのような低温では、水が存在すると凍結する可能性があり、操作上の問題を生じさせる。
【0009】
別の方法は、エチレンからの水の除去のための先行技術に記載されている。モレキュラーシーブの使用は、水を除去するための公知の方法である(例えば、SRIコンサルティング(メンロパーク、カリフォルニア州94025)、Consulting Report PEP235, Process Economics Report 235,Chemicals from Ethanol, November 2007)は、エチレンがタイプ3Aモレキュラーシーブなどの適切な乾燥剤を用いて乾燥することができることを記載する。);しかし、この方法は、いくつかの潜在的限界および/または問題を起こしやすいように思われる。例えば:
− 半回分操作である。
− エチレンは、モレキュラーシーブ材料上で重合し得る
− 含水量の所望の低レベルを達成する方法を制御することは非常に困難である
− 同時に、その他の有機成分がモレキュラーシーブ材料に捕集される可能性があり、再生できなくなったり、高価な追加のリカバリ方法が必要とされる、ならびに
− モレキュラーシーブ分離法は、下流のエチレン圧縮機(それはエチレンがさらに下流の処理および/または使用に供することができる前に、必要とされる。)のサイズを増加させる、著しい圧力低下を引き起こす可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許第5,817,906号明細書
【特許文献2】欧州特許出願公開第1,792,885号明細書
【特許文献3】国際公開第2008/138775号A1パンフレット
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】SRIコンサルティング(メンロパーク、カリフォルニア州94025)、Consulting Report PEP235, Process Economics Report 235,Chemicals from Ethanol, November 2007
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
したがって、エチレンストリームからの水の除去のため、代わりの方法の必要がある。
【0013】
アルケンを生成するためにアルコールの脱水によって生成された粗製品組成物はまた、副産物の水と同様にエーテルをかなりの量含み得ることが観察されている。たとえば、エタノールの脱水からの粗製エチレン生成物は、通常、エチレンと水と同様にジエチルエーテルを含むことになり;使用される脱水プロセスに応じて、粗製エチレン生成物は本質的にエチレン、ジエチルエーテルおよび水から構成され得る。
【0014】
予期しないことには、水を含むエチレンストリームの水分濃度を低減するためにジエチルエーテルが使用できることが見いだされた。
【課題を解決するための手段】
【0015】
したがって、本発明は水を含むエチレンストリームから水を除去するための方法であって、該方法は:
− 水を含むエチレンストリームを分離槽に導入しおよび分離槽を通して該エチレンストリームを循環させ;
− 液体ジエチルエーテルストリームを分離槽に導入しおよび分離槽を通して該液体ジエチルエーテルストリームを循環させ、それにより該液体ジエチルエーテルストリームと該水を含むエチレンストリームとを接触させ;
− 分離槽から減少した含水量を有するエチレンストリームを回収し;ならびに任意で
− 分離槽から増加した含水量を有する液体ジエチルエーテルストリームを回収することからなる方法を提供する。
【0016】
有利には、本発明によって提供される水を含むエチレンストリームから水を除去するための方法は連続的に使用することができる。
【0017】
したがって、本発明の方法の好ましい実施態様では水を含むエチレンストリームから水を除去するための連続的方法が提供され、該方法は:
− 水を含むエチレンストリームを分離槽に導入しおよび分離槽を通して該エチレンストリームを循環させ;
− 液体ジエチルエーテルストリームを分離槽に導入しおよび分離槽を通して該液体ジエチルエーテルストリームを循環させ、それにより該液体ジエチルエーテルストリームと該水を含むエチレンストリームとを接触させ;
− 分離槽から減少した含水量を有するエチレンストリームを回収し;ならびに
− 分離槽から増加した含水量を有する液体ジエチルエーテルストリームを回収することからなる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】シーブトレイを用いた蒸留塔における、外部から供給される液体ジエチルエーテルストリームを使用する、水を含むエチレンストリームから水を除去するための方法を示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
用語“エチレンストリームから水を除去する”、“エチレンストリームから水を除去すること”等々は、水を含むエチレンストリーム中に存在する水の少なくとも一部が除去されている、すなわちエチレン・ストリーム中の水の濃度が減少することを意味する。
【0020】
理論に拘束されることを望むものではないが、本発明の方法では、水を含むエチレンストリームが液体ジエチルエーテルストリームと接触されそして該エチレンストリーム中に存在する水の少なくとも一部が吸着により液体ジエチルエーテルストリームによって除去されて、減少した含水量のエチレンストリームと増加された含水量のジエチルエーテルストリームが生じると考えられている。
【0021】
本発明により提供される水を含むエチレンストリームから水を除去するための方法は、本明細書中でスクラバープロセスとしても言及されることがある。水を含むエチレンストリームから水を除去するための方法が本発明により提供される分離槽はまた、スクラバーとして本明細書中で言及されることがある。
【0022】
本発明の方法において、液体ジエチルエーテルストリームが水を含むエチレンストリームから水を除去するために使用され、減少した含水量のエチレンストリームと増加した含水量の液体ジエチルエーテルストリーム、すなわち前記エチレンストリームから除去された水をさらに含む液体ジエチルエーテルストリームを生じる。本発明の方法で用いられる液体ジエチルエーテルストリームは、本明細書中でスクラビング供給原料として言及されることがある。
【0023】
本発明の方法に供される“水を含むエチレンストリーム”もまた本明細書中で“粗製エチレンストリーム”とも言及されることがある。好ましくは、前記粗製エチレンストリームは粗製エチレンストリームの総重量に基づいて、少なくとも60重量%のエチレン、より好ましくは少なくとも70重量%のエチレン、より好ましくは少なくとも75重量%のエチレンを含む。
【0024】
スクラバーへの導入前に粗製エチレンストリーム中に存在する水の量は、粗製エチレンストリームの総重量に基づいて、一般的に1.0重量%以下であり、好ましくは、スクラバーへの導入前に粗製エチレンストリーム中に存在する水の量は粗製エチレンストリームの総重量に基づいて、0.05から0.5重量%の範囲である。
【0025】
粗製エチレンストリームの供給源にもよるが、粗製エチレンストリームはまた、エチレンと水に加えてジエチルエーテルを含み得る。
【0026】
有利なことには、本発明の方法における粗製エチレンストリーム中の水の濃度を減少させるために使用される液体ジエチルエーテルストリームの供給源の少なくとも一部、好ましくは全部として、水を含むエチレンストリーム中に既に存在し得るジエチルエーテルが使用できることが見いだされた。
【0027】
したがって、本発明の一実施態様では、本発明の方法に供される水を含むエチレンストリーム(すなわち粗製エチレンストリーム)は水およびジエチルエーテルを含有するエチレンストリームである。
【0028】
本発明の方法の好ましい態様によれば、スクラバーへの導入前に、粗製エチレンストリームは、該エチレンストリーム中に存在する水をスクラビングするための十分なジエチルエーテルを含有する。本発明の方法のこの実施態様では、粗製エチレンストリームが、好ましくは該粗製エチレンストリームの総重量に基づいて少なくとも2重量%のジエチルエーテルを含み、より好ましくは、少なくとも10重量%のジエチルエーテルを含み、最も好ましくは、少なくとも15重量%のジエチルエーテルを含む。
【0029】
本発明の方法の好ましい態様によれば、スクラバーに導入される前に、粗製エチレンストリーム中のエチレン、水、ジエチルエーテルの合計量は、粗製エチレンストリームの総重量に基づいて、好ましくは少なくとも95重量%、より好ましくは少なくとも98重量%である。本発明の特定の実施態様の一つにおいて、粗製エチレンストリーム中のエチレン、水、ジエチルエーテルの合計量は、粗製エチレンストリームの総重量の100重量%である。
【0030】
エチレン、水、ジエチルエーテル以外の化合物、例えば他の酸素化物および/またはアルカンも、粗製エチレンストリームにおいて許容され得る。例えば、アセトアルデヒドおよび/またはエタノールおよび/またはジメチルエーテルおよび/またはエタンはまた、粗製エチレンストリーム中に一般的に存在し得る。通常は、粗製エチレンストリームに存在し得るこのような他の化合物はわずかな量でのみ存在するであろうし、好ましくは、粗製エチレンストリーム中に存在するエチレン、水、ジエチルエーテル以外の化合物の量は、粗製エチレンストリームの総重量に基づいて最大で5.0重量%、より好ましくは粗製エチレンストリームの総重量に基づいて、最大で2.5重量%、さらに好ましくは粗製エチレンストリームの総重量に基づいて、最大で1.0重量%で存在できる。
【0031】
本発明の方法に供される水を含むエチレンストリーム(すなわち、粗製エチレンストリーム)は、一般的にスクラバーに導入する前は気体状態である。スクラバーに導入する前に、粗製エチレンストリームの温度と圧力は、好ましくは、該粗製エチレンストリーム中に存在する水が凍結しないような温度と圧力であり、より好ましくは、温度は粗製エチレンストリームのそれぞれの圧力と組成において存在する水の液体凝固点および蒸気逆昇華点の大半よりも少なくとも5℃高い。
【0032】
スクラバーに導入前の粗製エチレン・ストリームの好ましい圧力は、好ましくは少なくとも0.5MPaであり、より好ましくは少なくとも1MPaであり、さらにより好ましくは少なくとも1.5MPaであり、最も好ましいスクラバーに導入前の粗製エチレンストリームの圧力は、1.5MPaから3MPaの範囲である。
【0033】
スクラバーに導入前の粗製エチレン・ストリームの好ましい温度は、好ましくは少なくとも0℃であり、より好ましくは少なくとも10℃であり、さらに好ましくは少なくとも15℃であり、最も好ましいスクラバーに導入前の粗製エチレンストリームの温度は20℃から50℃の範囲である。
【0034】
分離槽内に導入される液体ジエチルエーテルストリームは、粗製エチレンストリームから分離されたおよび/または分離槽内で形成され得た液体ストリームの状態で分離槽内に導入することができる。液体ジエチルエーテルストリームが分離槽内に形成されている場合は、ジエチルエーテルは、粗製エチレンストリーム中で分離槽に導入することができ、または該粗製エチレンストリームから独立して気体形態で分離槽に導入することができる。
【0035】
粗製エチレンストリームがジエチルエーテルを含む本発明の実施態様では、該ジエチルエーテルの少なくとも一部が液体ジエチルエーテルストリームのためのジエチルエーテル供給源として都合良く使用できる。この実施態様では、粗製エチレンストリーム中に存在するジエチルエーテルの少なくとも一部が凝縮して液体ジエチルエーテルストリームの少なくとも部分を形成する。粗製エチレンストリームからのジエチルエーテルに加えて、粗製エチレンストリームからのジエチルエーテルを補完するために追加のジエチルエーテルが分離槽に導入されて、液体ジエチルエーテルストリームを形成することができ;該追加のジエチルエーテルは外部供給から分離槽に導入される液体ジエチルエーテルストリームとして最も都合良く供給される。
【0036】
ジエチルエーテルに加えて、液体ジエチルエーテルストリームは他の化合物も含んでいてよい。好ましくは、液体ジエチルエーテルストリームは、該液体ジエチルエーテルストリームの総重量に基づいて、少なくとも40重量%のジエチルエーテル、より好ましくは少なくとも50重量%のジエチルエーテル、さらにより好ましくは少なくとも60重量%のジエチルエーテルを包含できる。
【0037】
本発明の方法の好ましい実施態様において、液体ジエチルエーテルストリームは、粗製エチレンストリームに存在するまたは存在し得る成分の水和物(例えば、エチレン水和物)形成温度を抑制するのに使用される溶剤もまた含んでいる。粗製エチレンストリーム中に存在する成分の水和物の形成を抑制するため使用される溶剤の例としては、エタノール、メタノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコールおよびグリセロールが含まれる。したがって、本発明の方法の特に好ましい実施態様では、液体ジエチルエーテルストリームは、エタノール、メタノールおよびエチレングリコールから選択される一種以上の溶剤を含む液体ジエチルエーテルストリームである。
【0038】
上記実施態様では、粗製エチレンストリーム中に存在する成分の水和物の形成を抑制するため使用される溶剤は分離槽に導入する前に液体ジエチルエーテルストリーム中に存在することができるか、ジエチルエーテルの供給源から独立して分離槽に導入されそして分離槽内のジエチルエーテルと統合して液体ジエチルエーテルを形成することができる。
【0039】
液体ジエチルエーテルストリームが粗製エチレンストリーム中に存在する成分の水和物の形成を抑制するために使用できる溶剤を含む実施態様では、該溶剤が有効量、すなわち分離槽内の条件下で粗製エチレンストリーム中に存在する成分の水和物の形成を抑制するのに十分な量、で存在することが好ましい。典型的には、液体ジエチルエーテルストリーム中の前記溶剤の量は、液体ジエチルエーテルストリームの総重量に基づいて、最大60重量%まで、より好ましくは、液体ジエチルエーテルストリームの総重量に基づいて、最大40重量%までであり、さらに好ましくは液体ジエチルエーテルストリームの総重量に基づいて1重量%から25重量%の範囲である。
【0040】
本発明の方法では、水を含むエチレンストリームおよび液体ジエチルエーテルストリームは、分離槽内に導入されておよび分離槽を通して循環され、前記液体ジエチルエーテルストリームと前記水を含有するエチレンストリームを接触させる。
【0041】
本発明の方法は気相と液相に接触させるのに適したおよび相分離を行うのに適したいずれかの容器で行うことができる。このような分離槽は、単一段または多段であってよく、これらに限定されないが、フラッシュ室および蒸留槽;例えば、シーブトレイ、バルブトレイ、構造充填物またはランダム充填物を用いた蒸留塔を含む。好ましくは本発明の方法は、多段蒸留塔で行われ、さらに好ましくはシーブトレイを用いた多段蒸留塔;バルブトレイを用いた多段蒸留塔;構造充填物を用いた多段蒸留塔および、ランダム充填物を用いた多段蒸留塔から選択された分離槽中で行われる。
【0042】
本発明の方法で使用される分離槽が多段槽である場合は、分離槽における分離の理想段の数は、少なくとも2;好ましくは少なくとも3であり:分離槽における分離の理想段の数でさらに好ましいのは2から1000の範囲で、より好ましくは2から500の範囲で、非常にもっと好ましくは3から500の範囲で、最も好ましくは3から400の範囲である。
【0043】
理論に拘束されることを望むものではないが、本発明の方法における分離槽の低温操作が、構造またはランダム充填物の分離効率を減少させかねない十分な表面張力をもつ液体を生じさせる可能性があるので、充填物よりもトレイを含む多段蒸留槽で本発明の方法を行うことが好ましいと考えられている。したがって、特に好ましい実施態様において、本発明の方法で使用される分離槽は、シーブトレイを用いた多段蒸留塔またはバルブトレイを用いた多段蒸留塔である。
【0044】
本発明の特別な実施態様一つでは、分離槽に還流を供給でき、すなわち分離槽の塔頂蒸気の分縮を用いる。分離槽に還流を供給するための手段は、分離槽に接続された外部熱伝達装置であってもよいし、実際の分離槽内に配置された熱伝達装置であってもよい。分離槽への還流を供給するために使用される任意の適切な熱伝達装置は、下記の熱伝達装置の種類に限定されないが:シェルアンドチューブ式、チューブの伝熱面を拡張する任意の手段;二重管;フィン/ファン;ガスケットまたは溶接製造のプレートおよびフレームのコンパクト;プリント回路;スパイラル巻き、落下膜又はスピニングディスクを含む。
【0045】
熱伝達装置での冷却は、好ましくは、冷却剤、例えば、これに限定されないが:エチレンおよび/またはプロピレングリコール溶液;プロピレン;エチレン;および、有機シリカ溶液;との間接熱伝達によって達成できる。加えてまたは代わりに、熱伝達装置の冷却は、直接熱伝達例えば、オレフィンを用いることによって達成できる。
【0046】
還流が分離槽に供給される場合には、液体ジエチルエーテルストリームは、都合良くは還流を介して、すなわち分離槽内の気相中に存在し得る任意のジエチルエーテルの凝縮により、分離槽に導入することができる。例えば、液体ジエチルエーテルストリームは、粗製エチレンストリーム中に存在するジエチルエーテルの凝縮によって分離槽に供給される還流を介して分離槽に導入することができる。
【0047】
還流はジエチルエーテルを含有する液体ストリームにより、拡張または置き換えられてもよく;ジエチルエーテルの供給源を限定するものではないが、当該ジエチルエーテルは分離槽からの流出ガスおよび/または液体流出液のさらなる分離から都合良く供給され得る。このようなストリームはまた、もしくは代わりに他の塔に導入することができる。
【0048】
本発明の方法が実行される分離槽は、好ましくは、少なくとも一つの入口と、少なくとも2つの出口を備える分離槽である。本発明の方法において、粗製エチレンストリームは少なくとも1つの入口から分離槽内に導入され、減少した含水量を有するエチレンストリームは、少なくとも1つの出口から回収され、そして分離槽を通って循環した液体ジエチルエーテルストリームは、減少した含水量を有するエチレンストリームが回収される出口と異なる、少なくとも1つの出口から回収される。分離槽に導入される液体ジエチルエーテルストリームは分離槽自体の内部で形成されていてもよく、少なくとも1つの追加の入口から分離槽に導入することもできるか、あるいは減少した含水量のエチレンストリームが回収される出口から分離槽に導入されてもよい。
【0049】
従って、本発明の方法の特定の実施態様では、分離槽は、少なくとも2つの入口および、少なくとも2つの出口で構成されている。このような実施態様では、粗製エチレンストリームは少なくとも1つの入口から導入することができ、液体ジエチルエーテルストリームは、粗製エチレンが導入された入口とは異なる少なくとも1つの入口から導入することができ、減少した含水量を有するエチレンストリームは少なくとも1つの出口から回収され、および分離槽を通して循環されている液体ジエチルエーテルストリームは減少した含水量を有するエチレンストリームが回収される出口とは異なる少なくとも1つの出口から回収される。
【0050】
粗製エチレンストリーム中に存在する成分の水和物の形成を抑制するため使用される溶剤が導入される実施の形態では、粗製エチレンストリーム中に存在する成分の水和物の形成を抑制するため使用される溶剤が、液体ジエチルエーテルストリームと同じ入口(または液体ジエチルエーテルストリームが分離槽内に形成されている場合は、粗製エチレンが導入された入口)から、あるいは少なくとも1つの追加の入口から導入される。
【0051】
本発明の方法において、粗製エチレンストリームと液体ジエチルエーテルストリームは両方とも、独立して分離槽を通して循環される。槽を通して循環されることとは、関連するストリームが分離槽の一部(例えば、入口および/またはコンデンサ)に導入され(形成/凝結による導入を含む)、該ストリームは、分離槽から除去される出口へ、槽を通して輸送されることを意味する。
【0052】
好ましくは、本発明の方法において、液体ジエチルエーテルストリームは、粗製エチレンストリームに対し向流方向に循環される。向流方向に循環されることは、2つのストリーム、粗製エチレンストリームと液体ジエチルエーテルストリームのそれぞれの流れの一般的な方向は、反対方向にあること、例えば全体的に上向きの流れ方向をもつ一方のストリームと全体的に下向きの流れ方向をもつ他のストリームであることを意味する。
【0053】
好都合なことに、本発明の方法で使用される分離槽は、粗製エチレンストリームが分離槽の下半分に位置する入口を通って分離槽に導入することができ、該粗製エチレンストリームは上方向の分離槽を通り、そして水の減少した濃度を有するエチレンストリームは分離槽の上半分に位置する出口を介して分離槽から除去されるように構成することができる。このような構成では、液体ジエチルエーテルストリームは、入口から、または分離槽内の凝縮による液体ジエチルエーテルストリームの形成のいずれかにより、分離槽の上半分において槽内に導入され得、次いで液体ジエチルエーテルストリームは下方向に容器を通過して、そして該液体ジエチルエーテルストリームは分離槽の下半分に位置する出口から除去される。
【0054】
本発明の特定の実施態様は、添付図面を参照して以下に記載される。添付図面とそれに付随する説明は、本発明の範囲を本明細書に記載された特定の実施態様に限定しようとするものではない。
【0055】
図1は、本発明の方法の可能な一実施態様を示す。図1において、水を含むエチレンストリーム(101)は、塔の底部付近の入口から蒸留塔(102)に入り、塔を通って上昇する。塔の頂部付近の入口から、液体ジエチルエーテルストリーム(103)は蒸留塔に入り、エチレンストリームに対して向流方向に塔を通って下降する。蒸留塔内には複数のシーブトレイ(104)が配置され、エチレンストリームはシーブトレイの孔を通って上方向へわたり、液体ジエチルエーテルストリームは“ダウンカマー”を通って下方向に流れる。蒸留塔の頂部にある出口から、減少した含水量を有するエチレンストリームが回収され(105)、そして、蒸留塔の底部にある出口から、増加した含水量を有する液体ジエチルエーテルストリームが除去される(106)。
【実施例】
【0056】
長さ90mm、外径9mm、内径約7mmのガラス製ダウンカマーで区切られた11のPTFEシーブトレイ段を含む、高さ約2650mmと、内径55mmの蒸留塔を以下の方法で使用した。
【0057】
ジエチルエーテル、水およびエタノールで飽和されたエチレンからなる粗製エチレン供給ストリームを、圧縮させおよび最下段の下から蒸留塔に導入した。粗製エチレンストリームの組成は、おおよそ、89.40モル%のエチレン、8.65モル%のジエチルエーテル、0.57モル%の水および1.38モル%のエタノールであった。
【0058】
蒸気流を蒸留塔の頂部から取り去り、そこから分縮器に供給した。処理内容物を約−40℃の入口温度を持つ冷媒に接触して、約−10℃の出口温度に冷却するために、分縮器は約34850mmの伝熱区域を供給した。
【0059】
分縮器からの冷却されたストリームは、気相から分離するために液相に対し十分な滞留時間を供給する容積2.4リットルの圧力容器に渡された。液相は、連続的に圧力容器から取り去られ、そして還流ストリームとして蒸留塔の最上段にフィードバックされた。該還流ストリームに、エタノールを連続的に注入した。
【0060】
減少した含水量を有するエチレンストリーム(“乾燥エチレン”)は、気相(“頭部”ストリーム)として圧力容器から取り去り、液体ストリームは蒸留塔の基底部(“基部”ストリーム)から取り去られた。
【0061】
圧力容器から取り去った乾燥エチレンの含水量は、露点計(AMT露点トランスミッタ、英国、Alpha Moisture Systems製)を用いて測定した。分析機からの露点の測定値は測定露点温度における水の分圧を予測することによって含水量に変換された(DIPPRデータベースのスポンサーリリース2.3.0で利用可能な、純水蒸気圧モデルを使用)。
【0062】
上記の方法からの条件および結果を以下の表1、表2および表3に示す。結果は、連続運転の123.5時間にわたって収集された。
【0063】
【表1】

【0064】
【表2】

【0065】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
水を含むエチレンストリームから水を除去するための方法であって、該方法は:
− 水を含むエチレンストリームを分離槽に導入しおよび分離槽を通して該エチレンストリームを循環させ;
− 液体ジエチルエーテルストリームを分離槽に導入しおよび分離槽を通して該液体ジエチルエーテルストリームを循環させ、それにより該液体ジエチルエーテルストリームと該水を含むエチレンストリームとを接触させ;
− 分離槽から減少した含水量を有するエチレンストリームを回収し;ならびに任意で
− 分離槽から増加した含水量を有する液体ジエチルエーテルストリームを回収することからなる方法。
【請求項2】
方法が連続的に運転される請求項1記載の方法。
【請求項3】
水を含むエチレンストリームが該水を含むエチレンストリームの総量に基づいて少なくとも60重量%のエチレンを含む請求項1または請求項2記載の方法。
【請求項4】
水を含むエチレンストリーム中に存在する水の量は該水を含むエチレンストリームの総重量に基づいて1.0重量%以下である請求項1ないし3のいずれか一項記載の方法。
【請求項5】
分離槽に導入する前の水を含むエチレンストリームの圧力は少なくとも0.5MPaである請求項1ないし4のいずれかに一項記載の方法。
【請求項6】
分離槽に導入する前の水を含むエチレンストリームの温度は、粗製エチレンストリームのそれぞれの圧力と組成において存在する水の液体凝固点および蒸気逆昇華点の大半よりも少なくとも5℃高い請求項1ないし5のいずれか一項記載の方法。
【請求項7】
分離槽に導入する前の水を含むエチレンストリームの温度は少なくとも0℃である請求項1ないし6のいずれか一項記載の方法。
【請求項8】
水を含むエチレンストリームはジエチルエーテルをさらに含む請求項1ないし7のいずれか一項記載の方法。
【請求項9】
エチレンストリームが水を含むエチレンストリームの総重量に基づいて、少なくとも2重量%のジエチルエーテルを含む請求項8記載の方法。
【請求項10】
水を含むエチレンストリーム中に存在するジエチルエーテルの少なくとも一部を液体ジエチルエーテルストリームのためのジエチルエーテルの供給源として使用する請求項8または9記載の方法。
【請求項11】
液体ジエチルエーテルストリームが、水を含むエチレンストリームに存在し得る成分の水和物の形成温度を抑制するために使用される溶剤を含む請求項1ないし10のいずれかに一項記載の方法。
【請求項12】
液体ジエチルエーテルストリームは、エタノール、メタノールおよびエチレングリコールから選択される一種以上の溶剤を含む請求項11記載の方法。
【請求項13】
溶剤が、ジエチルエーテルの供給源から独立して分離槽に導入され、および分離槽内のジエチルエーテルと統合されて液体ジエチルエーテルストリームを形成する請求項11または請求項12記載の方法。
【請求項14】
分離槽が多段蒸留塔である請求項1ないし13のいずれか一項記載の方法。
【請求項15】
還流が分離槽に供給される請求項1ないし14のいずれか一項記載の方法。

【図1】
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【公表番号】特表2013−501767(P2013−501767A)
【公表日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−524275(P2012−524275)
【出願日】平成22年8月10日(2010.8.10)
【国際出願番号】PCT/GB2010/001515
【国際公開番号】WO2011/018619
【国際公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【出願人】(397035070)
【Fターム(参考)】