説明

エチレン系不飽和青色アントラキノン染料

本発明は、エチレン系不飽和モノマーと共重合させ(即ち、硬化させ)て、着色アクリルポリマーのような着色組成物とされてもよい、一種以上のエチレン系不飽和光重合性基を含む下記式Iの新規な着色剤化合物に関する。この共重合された当該着色剤化合物を有する好適な塗料組成物には、例えばアクリレート及びメタクリレートエステル、着色ポリスチレン、及び他のエチレン系不飽和モノマーから得られる同様な着色ポリマー材料から製造されるポリマーが含まれる。また、本発明は、当該光重合性着色剤化合物の製造方法に関する。当該エチレン系不飽和着色剤化合物は、木材、ガラス、金属、熱可塑性樹脂などに塗布される塗料に使用すると好適である。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エチレン系不飽和モノマーと共重合され(又は硬化され)てもよい、一種以上のエチレン系不飽和(例えば、ビニル含有の)光重合性基を含む、新規な着色剤、即ち染料化合物に関する。この共重合された着色剤からは、着色アクリルポリマー、例えばアクリレート及びメタクリレートエステルから製造されるポリマー、着色ポリスチレン、及び他のエチレン系不飽和モノマーから得られる同様な着色ポリマー材料のような着色組成物が作られる。また、本発明は、当該光重合性着色剤化合物の製造方法に関する。本発明のエチレン系不飽和着色剤化合物は、木材、ガラス、金属、熱可塑性プラスチックなどに塗布される塗料としての用途に好適である。
【背景技術】
【0002】
着色ポリマー材料は、エポキシ基又はポリアクリロイルクロリドを有するテレポリマーのような反応性ポリマーと、アミノ又はヒドロキシ基のような求核性の反応性基を含有するアントラキノン染料とを化合させることによって製造される。同様に、アクリロイルアミノアントラキノン染料は、ビニル又はジビニルポリマーの主鎖に対してグラフトされる。これと同様にして、ある種のオレフィン基を含有するアントラキノン染料は重合されて、ポリマー染料/顔料が製造されてきた。(例えば、J.S.D.C.、1977年4月号、114〜125頁参照。)
【0003】
米国特許第4,115,056号明細書には、1個のアクリロイルオキシ基を含有する青色の置換1,4−ジアミノアントラキノン染料の製造と、これを種々な繊維、特にポリアミド繊維を着色する染料に使用することが記載されている。米国特許第4,943,617号明細書には、高い二色性を有する液晶コポリマーとするために共重合されるオレフィン基を含有する、ある種の青色の、置換1,5−ジアミノ−4,8−ジヒドロキシアントラキノン染料を含む液晶コポリマーが開示されている。米国特許第5,055,602号明細書には、重合性のアクリロイル及びメタクリロイル基を含有するある種の置換1,4−ジアミノアントラキノン染料の製造と、これを共重合させることで着色ポリアクリレートコンタクトレンズ材料に使用することが記載されている。
【0004】
米国特許第5,362,812号明細書には、(a)2−アルケニルアズラクトンを重合させ、そのポリマーと求核性基を含有する染料とを反応させることによって、また、(b)求核性染料をアルケニルアズラクトンと反応させ、次いで得られるこのフリーラジカル重合性の染料を重合させることによって、アントラキノンを含む種々な染料群をポリマー染料に転化させることが開示されている。当該ポリマー染料は、フォトレジスト法及びカラープルーフィング用に有用であることも報告されている。米国特許第5,367,039号明細書には、ビニルモノマーと、ある種のアントラキノン染料をメタクリロイル基で活性化することで得られる反応性のアントラキノン染料とを乳化重合することによって、インク、ペイント、トナーなどに好適な着色ビニルポリマーを得る製法が開示されている。
【0005】
光重合性の基を含有する数種のアントラキノンを含む種々な染料の製法や、これらの液晶テレビジョンセット、カラーコピー機、感光性レジスト樹脂組成物などの使用に好適なカラーフィルターへの応用については、米国特許第5,578,419号明細書に記載されている。光重合性基を含有する種々なアントラキノン染料の製造については、米国特許出願第20020068725号明細書に開示されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明では、当該分野で知られるそれと関連する溶剤又はモノマー中で改善された光安定性と溶解性を有する、経済的で、光重合性の青色アントラキノン着色剤を提供することを目的とする。驚くべきことに、このエチレン系不飽和青色着色剤から調製されたある基板上でのある種の塗料組成物は、同じ基板上での典型的な無色の塗膜よりも一層硬いことが見出されている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、下記式Iの構造を有する光重合性又はフリーラジカル重合性の、青色アントラキノン着色剤が提供される。
【化1】

式中、
Lは、共有炭素−炭素結合又は−O−、−S−、−SO2−、−CON(R2)−、−N(COR3)−、−N(R2)CO−、及び−N(SO23)−からなる群より選ばれる結合基であり、
Rは、C1〜C6−アルキレン、C1〜C6−アルキレン−Y−CH2CH2−、及び−(CH2CH2)m−Y−CH2CH2−からなる群より選ばれる二価の有機基であり、
1は、水素又はC1〜C6−アルキル、C1〜C6−アルコキシ及びハロゲンからなる群より選ばれる一種又は二種の基を表し、
2は、水素、C1〜C6−アルキル、C3〜C8−シクロアルキル又はアリールであり、
3は、C1〜C6−アルキル、C3〜C8−シクロアルキル又はアリールであり、
Xは、−O−又は−N(R2)−であり、
Yは、−O−、−S−、−SO2−、−N(SO23)−、又は−N(COR3)−であり、
nは、1又は2であり、
mは、2又は3であり、そして
Qは、エチレン系不飽和光重合性基又はフリーラジカル重合性基である。
【0008】
また、本発明によれば、トルエン、メチルエチルケトン、アセトン、ヘキサンジオールジアクリレート、トリ(プロピレングリコール)ジアクリレートなどが好適な溶剤である、エチレン系不飽和光重合性着色剤(例えば染料)の濃厚溶液の作製方法が提供される。当該濃厚溶液における染料の濃度は、0.5重量%〜40重量%であってよい。
【0009】
更に、本発明によれば、式Iの光重合性着色剤を含む塗料組成物が提供される。好ましい塗布基板は、熱可塑性プラスチック、ガラス、木材、紙、金属など、特に好ましい熱可塑性プラスチックは、ポリエステル、アクリル樹脂、及びポリカーボネートである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明で提供する着色剤は青色である。よって、本発明によれば、下記式Iの構造を有する光重合性又はフリーラジカル重合性の、青色アントラキノン着色剤が提供される。
【化2】

式中、
Lは、共有炭素−炭素結合又は−O−、−S−、−SO2−、−CON(R2)−、−N(COR3)−、−N(R2)CO−、及び−N(SO23)−からなる群より選ばれる結合基を表し、
Rは、C1〜C6−アルキレン、C1〜C6−アルキレン−Y−CH2CH2−、及び−(CH2CH2)m−Y−CH2CH2−からなる群より選ばれる二価の有機基であり、
1は、水素であるか又はC1〜C6−アルキル、C1〜C6−アルコキシ及びハロゲンからなる群より選ばれる一種又は二種の基を表し、
2は、水素、C1〜C6−アルキル、C3〜C8−シクロアルキル又はアリールであり、
3は、C1〜C6−アルキル、C3〜C8−シクロアルキル又はアリールであり、
Xは、−O−又は−N(R2)−であり、
Yは、−O−、−S−、−SO2−、−N(SO23)−、又は−N(COR3)−であり、
nは、1又は2であり、
mは、2又は3であり、そして
Qは、エチレン系不飽和光重合性基又はフリーラジカル開始重合性基である。
【0011】
前記の語句「エチレン系不飽和光重合性基」及び/又は「フリーラジカル開始重合性基」とは、ビニル基を有するそれらを含む反応性のC=C二重結合を有する部分をいう、と当業者に理解されている。この反応性の二重結合は、アリール基又はカルボニルのような電子吸引性基に結合されることによって活性化されていることが好ましい。当業者であれば、芳香環における環状内の共役二重結合は、例えば、通常の重合条件下ではフリーラジカル重合に対して非反応性であることが知られているから、当該環状内の二重結合がこの「反応性C=C二重結合」に含まれるとは考えない。
【0012】
好ましいQ基には、以下の有機基1〜9が含まれる。
1 −COC(R4)=CH−R5
2 −CONHCOC(R4)=CH−R5
3 −CONH−C1〜C6−アルキレン−OCOC(R4)=CH−R5

【化3】

5 −COCH=CH−CO28

【化4】


【化5】


【化6】


【化7】

ここで、
4は、水素又はC1〜C6−アルキルであり、
5は、水素;C1〜C6−アルキル;フェニル;C1〜C6−アルキル、C1〜C6−アルコキシ、−N(C1〜C6−アルキル)2、ニトロ、シアノ、C1〜C6−アルコキシカルボニル、C1〜C6−アルカノイルオキシ及びハロゲンからなる群より選ばれる一種以上の基で置換されたフェニル;1−もしくは2−ナフチル;C1〜C6−アルキル又はC1〜C6−アルコキシで置換された1−もしくは2−ナフチル;2−もしくは3−チエニル;C1〜C6−アルキル又はハロゲンで置換された2−もしくは3−チエニル;2−もしくは3−フリル;又はC1〜C6−アルキルで置換された2−もしくは3−フリルであり、
6およびR7は、独立して、水素、C1〜C6−アルキル、又はアリールであるか、あるいはR6及びR7は、結合して−(CH2)3〜5−基を表してよく、
8は、水素、C1〜C6−アルキル、C1〜C8−アルケニル、C3〜C8−シクロアルキル又はアリールであり、そして
9は、水素、C1〜C6−アルキル又はアリールである。
【0013】
用語「C1〜C6−アルキル」及び「C1〜C6−アルコキシ」により記載されるアルキル基は、1〜6個の炭素原子を有する直鎖または分枝鎖炭化水素基を指す。用語「C3〜C8−シクロアルキル」は、3〜8個の炭素原子を有する環状炭化水素基を指す。用語「アリール」には、フェニル及び1〜3個のC1〜C6−アルキル、C1〜C6−アルコキシ又はハロゲン基で置換されたフェニルが含まれる。用語「C1〜C6−アルキレン」は、選択的にヒドロキシ、ハロゲン、アリール、−OCOC1−C6−アルキル、又は−X−Qで置換された直鎖又は分枝鎖の二価の炭化水素基を指す。用語「ハロゲン」には、フッ素、塩素、臭素及びヨウ素が含まれる。用語「C1〜C6−アルコキシカルボニル」及び「C1〜C6−アルカノイルオキシ」は、それぞれ、基−CO21−C6−アルキル及び−O−COC1−C6−アルキルを指す。用語「C3〜C8−アルケニル」は、少なくとも1個の炭素−炭素二重結合を有する直鎖又は分枝鎖炭化水素を指す。
【0014】
当業者であれば、前述した一定範囲の炭素原子を有する基又は部分のそれぞれ、例えば、「C1〜C6−アルキル」には、C1基(メチル)及びC6基(ヘキシル)の末端の基のみならず、その相当する個々のC2、C3、C4およびC5基のそれぞれも含まれるものと理解される。加えて、この一定範囲の炭素原子内にある個々の基又は部分のそれぞれは、それらが更に一緒になって、本来が、一定の全体範囲内にある小範囲をも記述しているものと理解される。例えば、用語「C3〜C8−シクロアルキル」には、C3〜C8の個々の環状部分のみならず、例えば「C4〜C6−シクロアルキル」のような小範囲も含まれることが意図されている。
【0015】
本発明の好ましい実施態様は、RがC1〜C4−アルキレンであり、R1が水素であり、Lが酸素又は共有結合であり、Xが酸素であり、そしてQが下式(即ち、上記の基7):
【化8】

(式中、R4は水素又はメチルであり、R6及びR7はメチルであり、そして、nは1である。)
である場合の式Iの着色剤である。更に好ましい実施態様は、RがC1〜C4−アルキレンであり、R1が水素であり、Lが酸素又は共有結合であり、Xが酸素であり、そしてQが下式(即ち、上記の基1):
−C(O)C(R4)=CHR5
(式中、R4は水素又はメチルであり、R5は水素であり、そして、nは1である。)
である場合の式Iの着色剤である。
【0016】
式Iの着色剤は、下記のように、4,8−ジニトロアントラルフィン、4,5−ジニトロクリサジン又はその混合物を式IIの適当な芳香族アミンと反応させて、式IIIの中間体を得、次いで所望の試薬と更に反応させて、上記1〜9のQ基を導入することによって製造されてよい。
【化9】

【0017】
式IIIの中間体化合物は、酢酸セルロース及びポリエステル用の分散染料として有用であることが知られ、当業者に知られる手順によって製造される。(例えば、米国特許第2,651,641号、同第2,723,279号、同第2,726,251号、同第2,777,863号、同第2,798,081号、同第2,827,356号、同第2,933,508号及び同第2,945,867号明細書参照。)式IIIの中間体化合物は、下記の基1′〜9′に記載されるような適当な試薬でアシル化されて、前記の基1〜9によって表されるQ基を有する式Iの相当する着色剤が製造される。
【0018】
1´ ClCOC(R4)=CH−R5 又はO[COC(R4)=CH−R5]2
2´ O=C=N−COC(R4)=CH−R5
3´ O=C=N−C1〜C6−アルキレン−OCOC(R4)=CH−R5
4´
【化10】

5´
【化11】

6´
【化12】

7´
【化13】

8’
【化14】

9´
【化15】

【0019】
基5´及び9´の場合には、一度、式IIIがアシル化されて、式Iの化合物に対して相当するQが与えられた後に、適当なR8基が、当業者に知られる方法及び手順によって導入されてもよい。
【実施例】
【0020】
本発明の着色剤について、以下の実施例によって更に説明する。
【0021】
実施例1
1,5−ジヒドロキシ−8−ニトロ−4−[(3′−ヒドロキシメチル)アニリノ]アントラキノン(2.03g、0.005モル、米国特許第2,777,863号明細書の実施例37に基づいて製造)、3−イソプロペニル−α,α−ジメチルベンジルイソシアネート(1.06g、0.005モル)、トルエン(35mL)及びジブチル錫ジラウレート(4滴)の混合物を、加熱して、2.5時間、90℃で撹拌した。撹拌しながら、ヘプタン(50mL)を、約35℃で、滴状に添加した。当該染料は、幾分粘着性であったが、その有機層をデカンテーションにより取り除いた。新鮮なヘプタンを添加して、得られる固体を濾過により集め、ヘプタンで洗浄して、空気中で乾燥した。電解脱離質量分析法によって分析したところ、以下の構造が確証された。
【化16】

N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)中のUV可視光吸収スペクトルでは、618nm(吸光度係数−15,728)に吸収最大値が観察された。
【0022】
実施例2
1,8−ジヒドロキシ−5−ニトロ−4−[(3′−1′−ヒドロキシメチル)アニリノ]アントラキノン(2.10g、0.005モル、米国特許第2,651,641号明細書の実施例2に基づいて製造)、3−イソプロペニル−α,α−ジメチルベンジルイソシアネート(1.06g、0.005モル)、トルエン(30mL)及びジブチル錫ジラウレート(4滴)の混合物を、加熱して、3時間、90℃で撹拌した。青色の着色剤を、撹拌しながらヘプタン(200mL)中に浸漬することによって沈殿させ、真空濾過によって集め、ヘプタンで洗浄して、空気中で乾燥した(収率3.1g)。電解脱離質量分析法によって分析したところ、以下の構造が確証された。
【化17】

DMF中のUV可視光吸収スペクトルでは、616nm(吸光度係数−12,544)に吸収最大値が観察された。
【0023】
実施例3
1,8−ジヒドロキシ−5−ニトロ−4−[4´−(2′−ヒドロキシエチル)アニリノ]アントラキノン(52.5g、0.125モル、米国特許第2,641,602号明細書の実施例1に基づいて製造)、3−イソプロペニル−α,α−ジメチルベンジルイソシアネート(26.5g、0.125モル)、トルエン(40mL)及びジブチル錫ジラウレート(10滴)の混合物を、加熱して、1.5時間、90℃で撹拌した。薄層クロマトグラフ(1:1のTHF:シクロヘキサン)によると、不完全な反応を示した。追加の3−イソプロペニル−α,α−ジメチルベンジルイソシアネート(5g)、トルエン(50mL)及びジブチル錫ジラウレート(5滴)を加え、追加の1.5時間、加熱を継続した。反応混合物を放置して約60℃まで冷却し、撹拌しながらヘプタン(2.0L)に添加した。青色の生成物を、真空濾過によって集め、水で洗浄して、空気中で乾燥した(収率72.8g)。電解脱離質量分析法によって分析したところ、以下の構造が確証された。
【化18】

DMF中のUV可視光吸収スペクトルでは、623nm(吸光度係数−15,200)に吸収最大値が観察された。
【0024】
実施例4
機械的攪拌機、加熱マントル及びディーン−スタークトラップを備えた500mLの丸底フラスコに、1,8−ジヒドロキシ−5−ニトロ−4−[4´−(2′−ヒドロキシエチル)アニリノ]アントラキノン(25.0g、59.5ミリモル)及び100gのトルエンを添加した。混合物を撹拌、加熱して、還流し、水を取り除いた。約50℃まで冷却した時に、ヒドロキノン(50mg)、4−ジメチルアミノピリジン(364mg、0.05モル%)、トリエチルアミン(6.63g、65.5ミリモル)及びメタクリル酸無水物(10.10g、65.5ミルモル)をそれぞれ添加した。反応混合物を撹拌して、1.5時間還流したところ、この時間で、TLC(1:1のTHF/シクロヘキサン、Rf(初期青色スポット)=0.44、Rf(最終青色スポット)=0.75)となり、当該反応が完了していた。反応混合物を放置して室温まで冷却し、次いで濾過して、不溶性の物質を取り除いた。この反応混合物を、100mLの0.25モル酢酸水溶液、続いて200mLの蒸留水で二度洗浄した。このトルエン−染料溶液を、加熱マントル、機械的攪拌機及びディーン−スタークトラップを備えた500mLの丸底フラスコに添加し、次いで全ての水が取り除かれるまで加熱、還流した。トルエン−染料溶液を放置して室温まで冷却し、次いで濾過して不溶性の物質を取り除いたところ、146.13gのトルエン−染料溶液を得た。このトルエン−染料溶液のサンプル8.86gを、80℃の浴温度をもつ回転蒸発器を用いて、約15mmHgの圧力下で、約1時間濃縮したところ、粘調な固体として1.58gの青色染料を得た。トルエン溶液は、17.8重量%(wt%)の染料であると算定された。適当な場合、このメタクリレート−官能性青色染料は、トルエン溶液として使用することが可能である。これに代えて、当該トルエンは、当業者に知られる好適な手段によって、ヘキサンジオールジアクリレート、トリ(プロピレングリコール)ジアクリレートなどのような適当な重合性モノマーと置き換えられてもよい。HPLC−電解脱離質量分析法によって分析したところ、以下の構造が確証された。
【化19】

【0025】
実施例5〜26
表Iに掲載される着色剤は、実施例1〜4の着色剤を製造するために使用した一般的な方法によって製造した。当該着色剤は、表I中でより詳細に定義されるような以下の一般構造を有していた。
【化20】

【0026】
【表1】

【0027】
実施例27〜46
表IIに掲載される着色剤は、実施例1〜4の着色剤を製造するために使われる一般的な方法によって製造した。当該着色剤は、表II中でより詳細に定義されるような以下の一般構造を有していた。
【化21】

【0028】
【表2】

【0029】
前述したように、本発明では、また、好適な溶剤で、本発明の青色染料の濃厚溶液を作製する方法も提供される。好適な溶剤には、芳香族化合物、ケトン、アクリレート、メタクリレート、スチレンなどが含まれる。本発明の濃厚物では、トルエン、メチルエチルケトン、アセトン、ヘキサンジオールジアクリレート、トリ(プロピレングリコール)ジアクリレート及びこれらの混合物が、好適な溶剤である。溶液中での染料濃度は、0.5重量%(wt%)〜40wt%であってよく、10wt%〜30wt%であることが好ましい。当業者であれば、前述した範囲には、これらの範囲を満たす全ての画分が含まれ、そして、前述した低い方の範囲のそれぞれは、前掲した高い方の末端範囲と対になってもよいことが、理解されよう。
【0030】
更に、本発明では、また、式Iの着色剤を含む塗料組成物も提供される。かかる塗料組成物には、例えば、(i)一種以上の重合性ビニル化合物、(ii)本明細書に記載の一種以上の着色剤化合物、及び(iii)少なくとも一種の光重合開始剤が含まれる。好ましい塗布基板は、熱可塑性樹脂、ガラス、木材、金属、紙などであり、特に好ましい熱可塑性樹脂は、ポリエステル、アクリル樹脂及びポリカーボネートである。
【0031】
エチレン系不飽和物、即ち、ビニル基又は置換ビニル基を含む本発明で製造される活性化染料、即ち着色剤は、重合され、あるいは共重合されるが、これは、好ましくは、紫外線硬化樹脂を製造する技術分野において知られる方法によって、紫外線に暴露させることにより発生するフリーラジカルによる反応機構を用いて行われる。重合は、光重合開始剤を添加することによって促進させることができる。当該着色ポリマー材料は、通常、重合性ビニルモノマー中に、その他の溶剤を用いあるいは用いないで、共重合性の基を含有する活性化着色剤を溶解させ、次いで、1個以上のビニル基又は置換ビニル基を含有するオリゴマー又はポリマー材料と結合させることによって製造される。
【0032】
本発明に有用な重合性ビニル化合物には、光重合開始剤の存在下で紫外線に曝された時に重合を行うことができる少なくとも一種の不飽和基が含有されていること、つまり、当該塗料組成物は放射線硬化性であること、が必要である。かかる重合性ビニル化合物の具体例には、アクリル酸、メタクリル酸及びそれらの無水物;クロトン酸;イタコン酸及びその無水物;シアノアクリル酸及びそのエステル;アリル、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、ブチル、テトラヒドロフルフリル、シクロヘキシル、イソボルニル、n−ヘキシル、n−オクチル、イソオクチル、2−エチルヘキシル、ラウリル、ステアリル及びベンジルのアクリレート及びメタクリレートのようなアクリル酸エステル及びメタクリル酸エステル;及びエチレン及びプロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,4−ブタンジオール、ジエチレン及びジプロピレングリコール、トリエチレン及びトリプロピレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、ポリエチレングリコール、及びポリプロピレングリコール、エトキシル化ビスフェノールA,エトキシル化及びプロポキシル化ネオペンチルグリコールのジアクリレートエステル及びジメタクリレートエステル;トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、トリメチロールプロパン、エトキシリル化及びプロポキシル化トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、グリセロール、エトキシル化及びプロポキシル化グリセロールのトリアクリレートエステル及びトリメタクリレートエステル;ペンタエリスリトール及びエトキシル化及びプロポキシル化ペンタエリスリトールのテトラアクリレートエステル及びテトラメタクリレートエステル;アクリロニトリル;酢酸ビニル;ビニルトルエン;スチレン;N−ビニルピロリドン;α−メチルスチレン;マレエート/フマレートエステル;マレイン酸/フマル酸;クロトン酸エステル、及びクロトン酸が含まれる。
【0033】
本発明に有用な重合性ビニル化合物には、光重合開始剤の存在下に紫外線に暴露した時に重合を行うことができる不飽和基を含有するポリマーが含まれる。これら重合性ビニル化合物の製造及び用途は、例えば、G. Webster 編、「塗料、インク、及びペイント用UV及びEB配合物の化学及び技術、第II巻:プレポリマー及び反応性希釈剤」、John Wiley & Sons 社、ロンドン、1997年発行に記載されているように、当業者に周知である。かかるポリマーの、重合性ビニル化合物の具体例には、アクリル化及びメタクリル化ポリエステル、アクリル化及びメタクリル化ポリエーテル、アクリル化及びメタクリル化エポキシポリマー、アクリル化又はメタクリル化ウレタン、アクリル化又はメタクリル化ポリアクリレート(ポリメタクリレート)及び不飽和ポリエステルが含まれる。このアクリル化又はメタクリル化ポリマー及びオリゴマーは、典型的に、スチレン又は他のモノマーのいずれかと結合するが、それには1個以上のアクリレート基又はメタクリレート基、例えばモノマーのアクリレートエステル及びメタクリレートエステルが含まれ、そしてこれが反応性希釈剤として役立つ。当該分野で知られる慣例的な重縮合技術によって製造される不飽和ポリエステルは、殆どの場合、スチレン又は他のモノマーのいずれかと結合するが、それには1個以上のアクリレート基又はメタクリレート基が含まれ、これが反応性希釈剤として役立つ。当該分野で知られている不飽和ポリエステルの利用に係る第二の実施態様には、当該不飽和ポリエステルと2個以上のビニルエーテル基又は2個以上のビニルエステル基を含有するモノマーとの結合が含まれる(WO96/01283号、WO97/48744号、及びEPO322808号明細書参照)。
【0034】
本発明の塗料組成物には、当該組成物の基板への塗布を容易にすることを所望する場合には、選択的に一種以上の付加的な不活性有機溶剤が含まれてもよい。好適な溶剤の典型的な具体例には、ケトン、アルコール、エステル、塩素化炭化水素、グリコールエーテル、グリコールエステル、及びそれらの混合物が含まれるが、これらに限定されない。特定の具体例には、アセトン、2−ブタノン、2−ペンタノン、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、エチレングリコール二酢酸、エチル3−エトキシプロピオネート、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルグリコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、メチレンクロリド、クロロホルム、及びそれらの混合物が含まれるが、これらに限定されない。本発明の新規な塗料組成物に存在してもよい、加えられる、即ち外部からの溶剤の量は、当該塗料組成物の全量に対し、1〜40重量%、より典型的には1〜25重量%の範囲であってよい。
【0035】
ある重合性ビニルモノマーは、反応体及び溶剤の両者として役立っている。これらには、光重合開始剤の存在下で紫外線に曝される時に、重合を行うことができる少なくとも一種の不飽和基が含まれる。特定の具体例には、メタクリル酸、アクリル酸、エチルアクリレート及びメタクリレート、メチルアクリレート及びメタクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート及びメタクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート及びメタクリレート、ビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、1,4−ブタンジオールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、トリメチロールプロパンジビニルエーテル、及びネオペンチルグリコールジビニルエーテルのようなジビニルエーテル、ビニルエステル、ジビニルアジペート、ジビニルサクシネート、ジビニルグルタレート、ジビニル1,4−シクロヘキサンジカルボキシレート、ジビニル1,3−シクロヘキサンジカルボキシレート、ジビニルイソフタレート、及びジビニルテレフタレートのようなジビニルエステル、N−ビニルピロリドン、及びこれらの混合物が含まれるが、それらに限定されない。
【0036】
更に、本発明の組成物は、基板表面への適用及び塗工を容易にするため、溶剤に溶かすよりもむしろ水に分散させた方がよい場合がある。本発明の水分散組成物では、補助溶剤が、選択的に使用されてもよい。好適な補助溶剤の典型的な具体例には、アセトン、2−ブタノン、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、及びエチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコール、及びプロピレングリコールが含まれるが、これらに限定されない。水溶性のエチレン系不飽和溶剤の典型的な具体例には、メタクリル酸、アクリル酸、N−ビニルピロリドン、2−エトキシエチルアクリレート及びメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、ポリプロピレングリコールモノアクリレート及びモノメタクリレート、及びそれらの混合物が含まれるが、これらに限定されない。本発明の分散塗料組成物における好適な水性有機溶剤(即ち、有機溶剤と水)の量は、全塗料組成物の10〜90重量%、好ましくは75〜90重量%である。
【0037】
本発明の塗料組成物には、本明細書に記載の一種以上の反応性ビニル染料化合物が含まれる。当該染料化合物即ち化合物の濃度は、当該塗料組成物に存在する重合性ビニル化合物、即ち、塗料組成物の成分(i)の重量に対し、0.005〜30.0重量%、好ましくは0.5〜25重量%であってよい。本発明の塗料組成物には、通常、光重合開始剤が含まれる。光重合開始剤の量は、典型的に、塗料組成物に存在する重合性ビニル化合物の重量に対し、1〜15重量%、好ましくは3〜5重量%である。典型的な光重合開始剤には、商品名 ESACURE BO、EB1、EB3及びEB4(Fratelli Lamberti 製)の下に市販されているようなベンゾイン及びベンゾインエーテル;VICURE 10及び30(Stauffer 製);2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン(IRGACURE 651)、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン(IRGACURE 1173)、2−メチル−2−モルフォリノ−1−(p−メチルチオフェニル)プロパン−1−オン(IRGACURE 907)のようなベンジルケタール、(1−ヒドロキシシクロヘキシル)(フェニル)−メタノン(IRGACURE 184)のようなα−ヒドロキシアルキル−フェノン、2−ベンジル−2−(ジメチルアミノ)−1−(4−モルフォリノ−フェニル)ブタン−1−オン(IRGACURE 369)、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン(IRGACURE 1173)(Ciba Geigy 製)、UVATONE 8302(Upjohn 製);DEAP及びUVATONE 8301(Upjohn 製)のようなα,α−ジアルコキシアセトフェノン誘導体;DAROCUR 116、1173、及び2959(Merck 製);及びベンゾフェノンと第三アミンの混合物が含まれる。着色塗料組成物では、硬化速度は、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニル−ホスフィンオキシド(IRGANOX 819)、IRGACURE 819及び1700のようなホスフィンオキシド、並びにIRGACURE 1173と2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド(DAROCUR 4265)(Ciba 製)との重量で50/50の混合物のような、種々なホスフィンオキシド光重合開始剤を添加することによって改善することができる。かかる光重合開始剤及び硬化手順に関する更なる詳細は、米国特許第5,109,097号明細書のような公開文献に見られるが、当該文献は、ここに引用したことにより、本明細書中に含める。塗膜(フィルム)の厚さ、生成物の銘柄、光重合開始剤のタイプ、放射の線束、及び放射源にもよるが、典型的に、0.5秒〜30分間の紫外線に対する露光時間(50〜5000mj/cm2)が、硬化のために必要である。また、硬化は、日射、即ち直射日光からも起こる。
【0038】
本発明の塗料組成物には、典型的に塗料組成物に存在する一種以上の付加的な成分が含まれてもよい。かかる付加的な成分の具体例には、均展剤、レオロジー、及びシリコーン、フッ素化炭化水素又はセルロース系誘導体のような流れ調整剤;艶消し剤;顔料湿潤及び分散剤;界面活性剤;紫外線吸収剤;紫外線安定剤;着色顔料;脱泡及び消泡剤;沈降防止剤、垂れ防止剤及び増粘剤;皮張り防止剤;浮き色防止剤及び浮き防止剤;殺カビ剤及びカビ駆除剤;腐食防止剤;粘度調整剤;及び/又は融合助剤が含まれる。また、本発明の塗料組成物には、非反応性の改質樹脂が含まれてもよい。典型的な非反応性の改質樹脂には、アクリル酸及びメタクリル酸のホモポリマー及びコポリマー;メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、ブチル、テトラヒドロフルフリル、シクロヘキシル、イソボルニル、n−ヘキシル、n−オクチル、イソオクチル、2−エチルヘキシル、ラウリル、ステアリル及びベンジルアクリレート及びメタクリレートのようなアクリル酸及びメタクリル酸のアルキルエステルのホモポリマー及びコポリマー;アクリル化及びメタクリル化ウレタン、エポキシ、ポリエステル樹脂;シリコーンアクリレート;セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテート、セルロースプロピオネートのようなセルロースエステル;ニトロセルロース;メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、及びヒドロキシプロピルメチルセルロースのようなセルロースエーテルが含まれる。典型的な可塑剤には、ジメチルフタレート、ジエチルフタレート、ジプロピルフタレート、ジブチルフタレート、及びジオクチルフタレートのようなフタル酸のアルキルエステル;トリエチルシトレート及びトリブチルシトレートのようなクエン酸エステル;トリアセチン及びトリプロピオニン;及び Eastmann Chemical 社製のEastman 18−04、18−07、18−92及び18−99のようなグリセロールモノエステルが含まれる。付加的な添加剤の特定具体例は、「Raw Material Index」、National Paint & Coating 協会発行、1500番地、ロードアイランド通り、ノースウェールズ州、ワシントン、D.C.20005に見ることができる。
【0039】
本発明のポリマー塗膜は、典型的に、ASTM手順D−3732を用いて、少なくとも100MEK往復摩擦の耐溶剤性、好ましくは約200往復摩擦の耐溶剤性を有する。また、かかる塗膜は、典型的に、ASTM手順D−3363を用いて、F以上に大きい鉛筆硬度、好ましくはH以上に大きい鉛筆硬度を有する。当該塗料組成物は、慣用の塗工装置をもって基板に塗布することができる。塗布された基板は、次いで、大気中又は窒素中で、紫外線のような放射線に曝されて、硬化仕上げされる。水銀蒸気ランプ又はキセノンランプが、この硬化工程に適用可能である。本発明の塗膜は、また、電子ビームによって硬化されてもよい。
【0040】
本発明の放射線硬化性塗料組成物は、アルミニウムやスチールのような金属、プラスチック、ガラス、木材、紙、及び革のような基板に対する接着剤や塗料として適用される。木材基板上では、当該塗料組成物は、全体の透明な色と木目を共に鮮明化させる。それによって、種々な審美的な効果を達成することが可能である。慣用のステインよりも、むしろ本発明の着色塗料組成物を用いたときの方が、木目の隆起が抑えられ、かつより厚い塗膜が得られるため、仕上げの木材塗膜を得るに必要なサンダー仕上げの工程数は、減らしてもよい。本発明範囲の塗料組成物を自動車の下塗りに塗布すると、その場合、下塗りと視覚による色差(低アングルになる程長い光路長が生じ、そのためより高い色彩度が観察される)とが相まって種々な審美的な効果が与えられる。このことは、現在、下塗りで金属フレークの配向により達成されているのと同様なデザイン的効果が得られることとなる。本発明範囲の塗料組成物をウィンドーフィルムに塗布すると、自動車や建築の用途に好適である。本発明範囲の塗料組成物は、ファイバーオプチックケーブルのようなガラスに塗布されてもよい。
【0041】
種々な付加的な顔料、可塑剤、及び安定化剤が最終製品に配合されて、ある種の望ましい特性が得られるようにされてもよい。これらのことは、本発明の技術的範囲に含まれる。
【0042】
塗工、硬化、及び試験手順:
配合サンプルを使用して、これを線巻バーにより、ガラスプレート、アルミニウムプレート、圧延鋼材及びSpectar(登録商標)、Eastman Chemical 社(キングスポート、テネシー州)製のポリエステルに塗布した。未乾燥塗膜の厚さは、約4〜10μm(0.6〜3.0ミル)であった。紫外線に曝す前では、各塗膜は、有機溶剤に易溶性であった。
【0043】
特定基板上の塗膜を、24ft./分のベルト速度を用いて、American Ultraviolet 社の装置内に囲われた200ワット/インチの中圧水銀ランプから放射される紫外線に暴露した。当該ランプの下方を1〜4回通過させたところ、最大硬度で耐溶剤性の架橋塗膜を得た。
【0044】
各硬化塗膜(フィルム)を、ケーニッヒ(Konig)振子硬度(ASTM D4366、DIN 1522)及びメチルエチルケトン往復摩擦試験法による耐溶剤性に関して評価した。未被覆ガラスに係るケーニッヒ振子硬度の減衰時間は250秒であり、100秒を越える硬度を有する塗膜は、一般に、硬膜であると考えられている。このメチルエチルケトン(MEK)往復摩擦試験は、一片のチーズクロスをメチルエチルケトンで飽和させ、これを中圧で塗膜を前後に摩擦することによるASTM手順 D−3732に準じて行われる。往復摩擦の回数は、塗膜が取り除かれるまでカウントされる。アセトン溶解度試験は、乾燥した秤量前の硬化塗膜のサンプルを、アセトン中に25℃で、48時間浸漬させることにより行われる。塗膜が取り除かれたら、強制空気オーブン内で、60℃下、16時間乾燥し、再秤量する。残留する不溶性塗膜の重量%は、データから算出される。
【0045】
塗工実施例
本発明により提供される塗料及び塗料組成物並びにその製法について、以下の実施例により更に詳細に説明する。
【0046】
実施例47
8.09gのJaegalux UV1500ポリエステルアクリレート、3.96gのビスフェノールAエポキシアクリレート、3.58gのジプロピレングリコールジアクリレート(DPGDA)、2.83gのトリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA)、及び1.06gのDarocure 1173光重合開始剤からなる光重合性組成物を、これらの成分が完全に分散されるまで混合した。得られた塗料組成物を、線巻ロッドで引き伸ばして、4″×4″のガラスプレート、4″×4″のSpectar(登録商標)プラーク、3″×6″のアルミニウムプレート及び3″×6″の圧延鋼材プレート上に、4〜10μm厚の湿潤塗膜を塗布した。各パネルを、118.1ワット/cm(300ワット/インチ)の放射強度をもつランプを用いて、7.3m/分(24ft./分)の速度で紫外線硬化装置を通過させた。ケーニッヒ振子硬度の測定(ASTM D4366、DIN 1522)を、それぞれの塗布した基板上で行ったところ、硬膜が得られていること、を示した(表III)。耐薬品性は、MEK往復摩擦で試験した。当該塗膜は、300を超えるMEK往復摩擦に耐えた。
【0047】
実施例48
着色した、光重合性組成物を、0.2gの実施例3の青色染料と、8.89gのJaegalux UV1500ポリエステルアクリレート、4.25gのビスフェノールAエポキシアクリレート、3.62gのジプロピレングリコールジアクリレート(DPGDA)、2.83gのトリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA)、及び1.01gのDarocure 1173光重合開始剤からなる塗料組成物とを、これらの成分が完全に分散されるまで十分に混合することによって調製した。得られた約1%の青色染料を含む塗料組成物を、線巻ロッドで引き伸ばして、4″×4″のガラスプレート、4″×4″のSpectar(登録商標)プラーク、3″×6″のアルミニウムプレート及び3″×6″の圧延鋼材プレート上に、4〜10μm厚の湿潤塗膜を塗布した。各パネルを、118.1ワット/cm(300ワット/インチ)の放射強度をもつランプを用いて、7.3m/分(24ft./分)の速度で紫外線硬化装置を通過させた。ケーニッヒ振子硬度の測定(ASTM D4366、DIN 1522)を、それぞれの塗布した基板上で行ったところ、当該染料を含有したことによる硬度の著しい喪失は全くないこと、を示した(表III)。ここで興味のあることは、ガラスパネル上に染料を含有する塗膜では、対照、実施例51及び実施例55よりも一層硬いことが認められた。耐薬品性を、MEK往復摩擦で試験した。重合性染料を含まない対照、及び重合性染料を含む塗膜の両者は、300以上のMEK往復摩擦に耐えた。MEK摩擦試験の白色チーズクロス上には染料の色が全く観察されなかったが、このことは、当該染料が溶剤で塗膜から抽出されることはなく、硬化した塗膜のポリマーマトリクス中に完全に取り込まれていることを示している。
【0048】
実施例49
着色した、光重合性組成物を、1.15gの実施例4の青色染料と、7.98gのJaegalux UV1500ポリエステルアクリレート、4.08gのビスフェノールAエポキシアクリレート、3.69gのジプロピレングリコールジアクリレート(DPGDA)、2.84gのトリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA)、及び1.01gのDarocure 1173光重合開始剤からなる塗料組成物とを、これらの成分が完全に分散されるまで十分に混合することによって調製した。得られた約1%の青色染料を含む塗料組成物を、線巻ロッドで引き伸ばして、4″×4″のガラスプレート、4″×4″のSpectar(登録商標)プラーク、3″×6″のアルミニウムプレート及び3″×6″の圧延鋼材プレート上に、4〜10μm厚の湿潤塗膜を塗布した。各パネルを、118.1ワット/cm(300ワット/インチ)の放射強度をもつランプを用いて、7.3m/分(24ft./分)の速度で紫外線硬化装置を通過させた。ケーニッヒ振子硬度の測定(ASTM D4366、DIN 1522)を、それぞれの塗布した基板上で行ったところ、当該染料を含有したことによる硬度の著しい喪失は全くないこと、を示した(表III)。ここで興味のあることは、ガラスパネル上に染料を含有する塗膜では、対照、実施例51及び実施例59よりも一層硬いことが認められた。耐薬品性を、MEK往復摩擦で試験した。重合性染料を含まない対照、及び重合性染料を含む塗膜の両者は、300以上のMEK往復摩擦に耐えた。MEK摩擦試験の白色チーズクロス上には染料の色が全く観察されなかったが、このことは、当該染料が溶剤で塗膜から抽出されることはなく、硬化した塗膜のポリマーマトリクス中に完全に取り込まれていることを示している。
【0049】
実施例50〜61
表IIIに記載される実施例50〜61は、実施例47〜49における塗料を用いて塗布した種々の基板に関するケーニッヒ振子硬度の測定値を示す。
【表3】

【0050】
本発明について、その好ましい実施態様に特に言及して詳細に述べてきたが、その変形及び変更も、本発明の技術思想並びに技術的範囲に含まれるものと理解されるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の式Iの構造を有するアントラキノン着色剤。
【化1】

式中、
Lは、共有炭素−炭素結合又は−O−、−S−、−SO2−、−CON(R2)−、−N(COR3)−、−N(R2)CO−、及び−N(SO23)−からなる群より選ばれる結合基を表し、
Rは、C1〜C6−アルキレン、C1〜C6−アルキレン−Y−CH2CH2−、及び−(CH2CH2)m−Y−CH2CH2−からなる群より選ばれる二価の有機基であり、
1は、水素であるか、又はC1〜C6−アルキル、C1〜C6−アルコキシ及びハロゲンからなる群より選ばれる一種又は二種の基を表し、
2は、水素、C1〜C6−アルキル、C3〜C8−シクロアルキル又はアリールであり、
3は、C1〜C6−アルキル、C3〜C8−シクロアルキル又はアリールであり、
Xは、−O−又は−N(R2)−であり、
Yは、−O−、−S−、−SO2−、−N(SO23)−、又は−N(COR3)−であり、
nは、1又は2であり、
mは、2又は3であり、そして
Qは、エチレン系不飽和光重合性基又はフリーラジカル重合性基である。
【請求項2】
前記式中のQが、
1 −COC(R4)=CH−R5
2 −CONHCOC(R4)=CH−R5
3 −CONH−C1〜C6−アルキレン−OCOC(R4)=CH−R5

【化2】

5 −COCH=CH−CO28

【化3】


【化4】


【化5】

又は

【化6】

であり、
ここで、
4は、水素又はC1〜C6−アルキルであり、
5は、水素;C1〜C6−アルキル;フェニル;C1〜C6−アルキル、C1〜C6−アルコキシ、−N(C1〜C6−アルキル)2、ニトロ、シアノ、C1〜C6−アルコキシカルボニル、C1〜C6−アルカノイルオキシ及びハロゲンからなる群より選ばれる一種以上の基で置換されたフェニル;1−もしくは2−ナフチル;C1〜C6−アルキル又はC1〜C6−アルコキシで置換された1−もしくは2ナフチル;2−もしくは3−チエニル;C1〜C6−アルキル又はハロゲンで置換された2−もしくは3−チエニル;2−もしくは3−フリル;又はC1〜C6−アルキルで置換された2−もしくは3−フリルであり、
6及びR7は、独立して、水素、C1〜C6−アルキル、又はアリールであるか、あるいはR6及びR7は、結合して−(CH2)3〜5−基を表してよく、
8は、水素、C1〜C6−アルキル、C1〜C8−アルケニル、C3〜C8−シクロアルキル又はアリールであり、そして
9は、水素、C1〜C6−アルキル又はアリールである、
請求項1に記載の着色剤。
【請求項3】
前記式中のRがC1〜C4−アルキレンであり、R1が水素であり、Lが−O−又は共有結合であり、Xが−O−であり、そしてQが
【化7】

であり、ここで、R4は水素又はメチルであり、R6及びR7はメチルであり、そしてnは1である、請求項2に記載の着色剤。
【請求項4】
前記式中のRがC1〜C4−アルキレンであり、R1が水素であり、Lが−O−又は共有結合であり、Xが−O−であり、そしてQが−COC(R4)=CH−R5であり、ここで、R4は水素又はメチルであり、R5は水素であり、そしてnは1である、請求項2に記載の着色剤。
【請求項5】
下記の構造:
【化8】

を有する請求項1に記載の着色剤。
【請求項6】
下記の構造:
【化9】

を有する請求項1に記載の着色剤。
【請求項7】
下記の構造:
【化10】

を有する請求項1に記載の着色剤。
【請求項8】
下記の構造:
【化11】

を有する請求項1に記載の着色剤。
【請求項9】
(i)一種以上の重合性ビニル化合物、(ii)請求項1に記載の一種以上の着色剤化合物、及び(iii)少なくとも一種の光重合開始剤を含んでなる塗料組成物。
【請求項10】
(i)一種以上の重合性ビニル化合物、(ii)成分(i)の重量に対して0.5〜25重量%の濃度で存在する一種以上の着色剤化合物、及び(iii)当該塗料組成物に存在する重合性ビニル化合物の重量に対して1〜15重量%の濃度で存在する光重合開始剤を含んでなる、請求項9に記載の塗料組成物。
【請求項11】
一種以上の有機溶剤を更に含んでなる、請求項10に記載の塗料組成物。
【請求項12】
前記組成物が水に分散されている、請求項10に記載の塗料組成物。
【請求項13】
補助溶剤を更に含んでなる、請求項12に記載の塗料組成物。
【請求項14】
前記重合性ビニル化合物が、モノマーのアクリレート又はメタクリレートエステルを含む希釈剤中に、メタクリル化ポリエステル、アクリル化又はメタクリル化ポリエーテル、アクリル化又はメタクリル化エポキシポリマー、アクリル化又はメタクリル化ウレタン、又はこれらの混合物を含む、請求項10に記載の塗料組成物。
【請求項15】
溶剤及び請求項1に記載の着色剤を0.5〜40重量%の濃度で含む、着色剤濃厚物。
【請求項16】
前記溶剤がトルエン、メチルエチルケトン、アセトン、ヘキサンジオールジアクリレート、トリ(プロピレングリコール)ジアクリレート又はそれらの混合物であり、そして前記着色剤が10〜30重量%の濃度で存在する、請求項15に記載の着色剤濃厚物。
【請求項17】
一種以上の紫外線吸収化合物を0.1〜30重量%の濃度で更に含む、請求項16に記載の着色剤濃厚物。
【請求項18】
一種以上の酸化防止剤を0.01〜5重量%の濃度で更に含む、請求項16に記載の着色剤濃厚物。

【公表番号】特表2007−503509(P2007−503509A)
【公表日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−524714(P2006−524714)
【出願日】平成16年8月17日(2004.8.17)
【国際出願番号】PCT/US2004/026699
【国際公開番号】WO2005/021663
【国際公開日】平成17年3月10日(2005.3.10)
【出願人】(594055158)イーストマン ケミカル カンパニー (391)
【Fターム(参考)】