説明

エチレン系重合体及び成形体への応用

【課題】成形性に優れ、且つ機械的強度に特に優れ、外観に優れた成形体、とりわけブロー成形体、パイプおよびパイプ継ぎ手を与えるエチレン系重合体を提供すること。
【解決手段】炭素原子数6〜10のα-オレフィンから導かれる構成単位を0.01〜1.20mol%含むエチレン系重合体であって、クロス分別(CFC)において、下記の(1)または(2)のいずれか一つ以上を満たすエチレン系重合体。
(1) 73〜76℃で溶出する成分の重量平均分子量(Mw)が4,000を超えない。
(2)下記の関係式(Eq-1)を満たす。


(Eq-1中、Sxは70〜85℃で溶出する成分に基づく全ピークの面積合計値であり、Stotalは0〜145℃で溶出する成分に基づく全ピークの面積合計値である。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成形性に優れ、機械的強度および外観に優れた成形体を与えるエチレン系重合体、およびこれから得られる成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
フィルム、パイプ、ボトル容器など幅広い用途に使用されている高密度ポリエチレンは従来はチーグラー・ナッタ触媒やクロム触媒を用いて製造されてきた。しかし、これらの触媒の性質上、重合体の分子量分布や組成分布の制御には限界があった。
【0003】
近年、組成分布を制御しやすいシングルサイト触媒またはシングルサイト触媒を担体に担持した触媒を用いて、分子量が相対的に小さいエチレン単独重合体またはエチレン・α-オレフィン共重合体と、分子量が相対的に大きいエチレン単独重合体またはエチレン・α-オレフィン共重合体を含む、成形性および機械的強度に優れるエチレン系重合体を連続重合法によって製造する方法がいくつか開示されている。
【0004】
特開平11-106432号公報には担持型幾何拘束型シングルサイト触媒(CGC/Borate系触媒)を用いて重合することにより得られた、低分子量ポリエチレンと高分子量エチレン・α-オレフィン共重合体とを溶融ブレンドすることで調製された組成物が開示されている。しかし、該組成物の分子量分布が広くないため該組成物の流動性が劣る場合がある。また、前記公報の特許請求範囲においては、エチレンと共重合させるα-オレフィンの好ましい炭素数範囲が開示されていないが、炭素数が6未満の場合では、機械強度が十分には発現しないことが予想される。更に、単段重合品の分子量分布(Mw/Mn)が広いために、衝撃強度などの機械物性において、単段品の分子量分布が狭いものと比較して十分でないことも予想される。なお、単段重合品の組成分布が広いと上記の強度に劣るという予想は、(株)シーエムシー出版、「機能材料」、2001年3月号50頁記載のクロス分別(CFC)データ、特開平11-106432号公報の図2に記載のクロス分別(CFC)データからも明らかである。
【0005】
WO01/25328号公報には、CpTiNP(tBu)3Cl2とボレートまたはアルモキサンからなる触媒系を用いた溶液重合により得られるエチレン系重合体が開示されている。このエチレン系重合体においては、分子量が低い成分に分岐があるために結晶構造が弱く、従って機械強度に劣ることが予想される。また低分子量成分の分子量が比較的大きいために流動性に劣ることが予想される。さらに、該公報の特許請求範囲においては、エチレンと共重合させるα-オレフィンの好ましい炭素数範囲が開示されていないが、炭素数が6未満の場合は機械強度が十分には発現しないことも考えられる。
【0006】
EP1201711A1号公報には、シリカに担持したエチレン・ビス(4,5,6,7-テトラヒドロ-1-インデニル)ジルコニウムジクロライドとメチルアルモキサンからなる触媒系の存在下で、スラリー重合により得られたエチレン系重合体が開示されている。このエチレン系重合体のうち単段重合品は、分子量分布(Mw/Mn)が広いため、単段品の分子量分布が狭いものに比較して衝撃強度などが劣ることが予想される。また、分子量分布が広いということは活性種が不均一であると推測され、その結果として組成分布が広がり疲労強度が低下することが懸念される。加えて該公報の実施例の一部では分子量が小さい単段重合品と分子量が大きい単段重合品とを溶融混練している。このような混練法では、10μmを超えるような連続した結晶構造が生成することが多く、十分な強度が発現しない場合があると予想される。
【0007】
特開2002-53615号公報では、シリカに担持された特定のサリチルアルジミン配位子を有するジルコニウム化合物およびメチルアルモキサンからなる触媒系を用いて、スラリー重合して得られるエチレン系重合体が開示されている。該公報の特許請求範囲においては、エチレンと共重合するα-オレフィンの好ましい炭素数範囲が開示されていないが、該公報の実施例でα-オレフィンとして用いられている1-ブテン(炭素原子数=4)で得られるエチレン系重合体では、炭素数が少なく、機械強度が十分には発現しないことが想定される。
【0008】
一般に、エチレン系重合体は多峰性の分子量分布を示す。多峰間の分子量差が大きいと溶融混練では混ざりにくいため、通常は多段重合が採用される。多段重合は一般的に連続的に行われることが多い。このような連続多段重合の場合、低分子量体を生成するような重合環境にある重合器内に滞留している時間と、高分子量体を生成するような重合環境にある重合器内に滞留している時間との比には分布が生じるのが普通であり、特に気相法やスラリー法のように重合体が粒子形状をとる重合法の場合では粒子間で分子量の差が生じることがある。このような分子量の差は、特許第821037号公報などに記載されたチーグラー触媒を用いた場合でも認められたが、触媒がマルチサイトであるが故に、分子量分布が広く、そのために通常の溶融混練によるペレット化でも重合粒子同士はよく混ざり合っていた。一方、シングルサイト触媒を用いた場合は、分子量分布が狭いために通常の溶融混練によるペレット化では重合粒子同士が十分には混ざり合わないことが多い。それ故に重合粒子形状の履歴が残り、それが原因で流動の乱れが生じて外観が悪化したり、機械強度が十分に発現しないことがあった。また、このようなエチレン系重合体では、押出ストランドの表面粗さから求められる平滑度係数が大きくなる傾向があった。
【0009】
特許第821037号公報などに記載された、チーグラー触媒を用いたエチレン(共)重合体は、重合中にメチル分岐が副生するために分子鎖中にメチル分岐が存在する。メチル分岐は結晶中に取り込まれて結晶を弱くすることが知られており(例えば、Polymer,Vol.31,1999頁,1990年参照)、それが原因でエチレン(共)重合体の機械的強度を低下させていた。また、エチレンとα-オレフィンとの共重合においては、α-オレフィンをほとんど含まない場合は硬くて脆い成分が生成する、一方、α-オレフィンが過剰に共重合する場合は、柔らかくて結晶構造が弱い成分が生成する結果、べたつきの原因になる場合があった。さらに、分子量分布が広いために、低分子量体が成形物表面に粉状物質として付着する現象を呈するなどの問題があった。
【0010】
特開平9-183816号公報などに記載された、メタロセン触媒を用いる重合により得られるエチレン系重合体は、重合中にメチル分岐が副生する結果、分子鎖中にメチル分岐が存在する。メチル分岐は結晶中に取り込まれて結晶構造を弱くする。そのことが、機械的強度を低下させる原因となっていた。また、分子量が極めて大きいエチレン系重合体は、これまで開示されていない。
【0011】
クロム系触媒を用いた重合により得られるエチレン系重合体は、長鎖分岐を含有するために分子の拡がりが小さく、そのために機械的強度が劣っていた。また、重合中にメチル分岐が副生するために、分子鎖中にメチル分岐が存在していた。メチル分岐は結晶中に取り込まれて結晶構造を弱める。そのことが、機械的強度を低下させる原因になっていた。また、エチレンとα-オレフィンとの共重合体の場合は、α-オレフィンをほとんど含まない場合は硬くて脆い成分の生成する、一方でα-オレフィンを過剰に共重合した場合はべたつきの原因となったり、柔らかくて結晶構造が弱い成分が生成していた。
【0012】
WO93/08221号公報などに記載された拘束幾何触媒(CGC)を用いた重合により得られるエチレン系重合体は、重合中にメチル分岐が副生するため、分子鎖中にメチル分岐が存在していた。メチル分岐は結晶中に取り込まれて結晶構造を弱める。それが機械的強度低下の原因になっていた。また、長鎖分岐を含有するために分子の拡がりが小さく、そのために機械的強度が不十分であった。
【0013】
高圧ラジカル重合法により得られるエチレン系重合体は、重合中にメチル分岐や長鎖分岐が副生するため、分子鎖中にメチル分岐や長鎖分岐が存在していた。メチル分岐は結晶中に取り込まれて結晶強度を弱くする。そのことが、機械的強度を低下させる原因となっていた。また、長鎖分岐を含有するために分子の拡がりが小さく、分子量分布が広く、そのために機械的強度に劣っていた。
【0014】
特開平6-233723号公報などに記載されたTa、Nb錯体含有触媒を用いて低温重合により得られるエチレン系重合体は、GPCにより測定した重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)が小さいため、成形性が十分でない場合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特開平11-106432号公報
【特許文献2】特開平11-106432号公報
【特許文献3】WO01/25328号公報
【特許文献4】EP1201711A1号公報
【特許文献5】特開2002-53615号公報
【特許文献6】特許第821037号公報
【特許文献7】特開平9-183816号公報
【特許文献8】WO93/08221号公報
【特許文献9】特開平6-233723号公報
【非特許文献】
【0016】
【非特許文献1】(株)シーエムシー出版、「機能材料」、2001年3月号50頁
【非特許文献2】Polymer,Vol.31,1999頁,1990年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
成形性に優れ、且つ機械的強度に特に優れ、外観に優れた成形体、とりわけブロー成形体、パイプおよびパイプ継ぎ手を与えるエチレン系重合体を提供すること。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明者らは前記の従来技術に鑑みて、成形性に優れ、且つ機械的強度に優れた成形体が得られるようなエチレン系重合体について鋭意研究したところ、炭素原子数6〜10のα-オレフィンから導かれる構成単位を0.01〜1.20mol%含むエチレン系重合体であって、クロス分別(CFC)において、下記の(1)または(2)のいずれか一つ以上を満たすエチレン系重合体(E)が成形性に優れ、且つ機械的強度に特に優れ、外観に優れた成形体、とりわけブロー成形体、パイプおよびパイプ継ぎ手を与えることを見出し本発明を完成するに至った。
(1) 73〜76℃で溶出する成分の重量平均分子量(Mw)が4,000を超えない。
(2)下記の関係式(Eq-1)を満たす。
【0019】
【数1】

(Eq-1中、Sxは70〜85℃で溶出する成分に基づく全ピークの面積合計値であり、Stotalは0〜145℃で溶出する成分に基づく全ピークの面積合計値である。)
本発明に係わるエチレン系重合体(E)は、上記要件に加えて、下記(1')〜(7')の要件を全て満たすことが好ましい。
(1') 炭素原子数6〜10のα-オレフィンから導かれる構成単位を0.02〜1.00mol%含む。
(2') 密度(d)が945〜970kg/m3の範囲にある。
(3') 135℃、デカリン中で測定した極限粘度([η])が1.6〜4.0(dl/g)の範囲にある。
(4') GPCで測定した重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)が5 〜70の範囲にある。
(5') クロス分別(CFC)において、分子量が100,000未満で最も強いピークの頂点の溶出温度をT1(℃)、分子量が100,000以上で最も強いピークの頂点の溶出温度をT2(℃)とした場合、(T1−T2)(℃)が0〜11℃の範囲にある。
(6') [(T2−1)〜T2](℃)で溶出した画分のGPC曲線の中で、分子量が100,000以上で最も強いピークの頂点の分子量が200,000〜800,000の範囲にある。
(7') 95〜96℃で溶出する成分のGPC曲線のうち分子量が100,000以下の領域において最も強いピークの頂点の分子量が28,000を超えない。
【0020】
このエチレン系重合体を以下の説明では、エチレン系重合体(E')と呼ぶ場合がある。
本発明に係わる、更に好ましいエチレン系重合体は、上記の要件に加えて、13C-NMRで測定したメチル分岐が炭素原子1000個当たり0.1個未満である、という要件(以下の説明では、要件(1'')と呼ぶ場合がある)を満たしている。このようなエチレン系重合体のことを以下の説明では、エチレン系重合体(E'')と呼ぶ場合がある。
【0021】
本発明に係わる、特に好ましいエチレン系重合体は、上記の上述の全ての要件に加えて、下記要件(1''')および(2''')を同時に満たす。
(1''') GPC曲線を2つの対数正規分布曲線に分離した時に、各々の曲線の重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)が1.5〜3.5、高分子量側に分離された曲線の重量平均分子量(Mw2)が200,000〜800,000であり、
(2''') 押出ストランドの表面粗さから求められる平滑度係数Rが20μmを越えない。
以下の説明ではこのエチレン系重合体をエチレン系重合体(E''')と呼ぶ場合がある。
【0022】
本発明のエチレン系重合体(E)をブロー成形体に応用する場合、エチレン系重合体(E)が満たすべき前述要件に加えて、下記要件(1B)〜(3B)を同時に満たすことが好ましい。
(1B) 炭素原子数6〜10のα-オレフィンから導かれる構成単位を0.02〜0.20mol%含む。
(2B) GPCで測定した重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)が5 〜30の範囲にある。
(3B) クロス分別(CFC)において分子量が100,000未満で最も強いピークの頂点の溶出温度をT1(℃)、分子量が100,000以上で最も強いピークの頂点の溶出温度をT2(℃)とした場合、(T1−T2)(℃)が0〜5℃の範囲にある。
【0023】
以下の説明では、このエチレン系重合体を、エチレン系重合体(EB)と呼ぶ場合がある。
また、ブロー成形体用の更に好ましいエチレン系重合体は、上記要件(1B)〜(3B)に加えて下記要件(1B')および(2B')を同時に満たすことが好ましく〔このエチレン系重合体を、以下の説明ではエチレン系重合体(EB')と呼ぶ場合がある。〕、特に好ましくは下記要件(1B'')を満たすことが好ましい〔このエチレン系重合体を、以下の説明ではエチレン系重合体(EB'')と呼ぶ場合がある。〕。
(1B')ASTM-D-790に準拠して、23℃で測定した曲げ弾性率が1,500〜1,800MPaの範囲にある。
(2B')ASTM-D-1693に準拠して測定した50℃における耐環境応力破壊性ESCR(hr)が10時間以上で非破壊である。
(1B'')動的粘弾性装置を用いて測定した190℃、角周波数100 rad/secにおけるtanδ(=損失弾性率G''/貯蔵弾性率G')が0.7〜0.9である。
【0024】
また、ブロー成形体用のエチレン系重合体(EB)、(EB')および(EB'')においては、エチレン系重合体(E)が、前記要件(1)〜(7)をも満たすエチレン系重合体(E')であることが好ましく、エチレン系重合体(E')が、前記要件(1'')をも満たすエチレン系重合体(E'')であることが更に好ましく、更にはエチレン系重合体(E'')が、前記要件(1''')および(2''')をも満たすエチレン系重合体(E''')であることが特に好ましい。
【0025】
本発明に係わるエチレン系重合体(E)をパイプ用途に応用する場合、エチレン系重合体(E)が満たすべき前述要件に加えて、下記要件(1P)および(2P)を同時に満たすことが好ましい。
(1P) 炭素原子数6〜10のα-オレフィンから導かれる構成単位を0.10〜1.00mol%含む。
(2P) GPCで測定した重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)が11 〜70の範囲にある。
【0026】
以下の説明では、このエチレン系重合体を、エチレン系重合体(EP')と呼ぶ場合がある。
また、パイプ用の更に好ましいエチレン系重合体は、上記要件(1P)および(2P)に加えて下記要件(1P')を満たすことが好ましい〔このエチレン系重合体を、以下の説明ではエチレン系重合体(EP' ')と呼ぶ場合がある。〕。
(1P') JIS K-6744に準拠し、80℃で測定した引張疲労特性で破断に至る回数が10,000回のときの実応力が13MPa〜17MPa、破断に至る回数が100,000回のときの実応力が12〜16MPaである。
【0027】
また、パイプ用のエチレン系重合体(EP')および(EP'')においては、エチレン系重合体(E)が、前記要件(1)〜(7)をも満たすエチレン系重合体(E')であることが好ましく、エチレン系重合体(E')が、前記要件(1'')をも満たすエチレン系重合体(E'')であることが更に好ましく、更にはエチレン系重合体(E'')が、前記要件(1''')および(2''')をも満たすエチレン系重合体(E''')であることが特に好ましい。
【0028】
本発明に係るエチレン系重合体は、ブロー成形体、インフレーション成形体、キャスト成形体、押出ラミ成形体、パイプや異形などの押出成形体、発泡成形体、射出成形体などに成形することができる。さらに繊維、モノフィラメント、不織布などに使用することができる。これらの成形体には、エチレン系重合体からなる部分と、他の樹脂からなる部分とを含む成形体(積層体等)が含まれる。なお、該エチレン系重合体は成形過程で架橋されたものを用いてもよい。本発明に係るエチレン系重合体を、上記の成形体の中で、ブロー成形体およびパイプや異形などの押出成形体に用いると優れた特性を与える。
【発明の効果】
【0029】
本発明のエチレン系重合体は、成形性に優れ、且つ機械的強度に特に優れ、外観に優れた成形体、とりわけブロー成形体、パイプおよびパイプ継ぎ手を与える。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】実施例1で得られたエチレン系重合体のCFC等高線図である。
【図2】実施例1で得られたエチレン系重合体の低温側から見た3次元GPCチャート(鳥瞰図)とT2である。
【図3】実施例1で得られたエチレン系重合体の高温側から見た3次元GPCチャート(鳥瞰図)とT1である。
【図4】実施例1で得られたエチレン系重合体のピーク温度〔(T2-1)〜T2〕(℃)における溶出成分のGPC曲線である。
【図5】実施例1で得られたエチレン系重合体の73〜76(℃)で溶出する成分のGPC曲線である。
【図6】実施例1で得られたエチレン系重合体の95〜96(℃)で溶出する成分のGPC曲線である。
【図7】比較例1で得られたエチレン系重合体のCFC等高線図である。
【図8】比較例1で得られたエチレン系重合体の低温側から見た3次元GPCチャート(鳥瞰図)とT2である。
【図9】比較例1で得られたエチレン系重合体の高温側から見た3次元GPCチャート(鳥瞰図)とT1である。
【図10】比較例1で得られたエチレン系重合体のピーク温度〔(T2-1)〜T2〕(℃)における溶出成分のGPC曲線である。
【図11】比較例1で得られたエチレン系重合体の73〜76(℃)で溶出する成分のGPC曲線である。
【図12】比較例1で得られたエチレン系重合体の95〜96(℃)で溶出する成分のGPC曲線である。
【図13】比較例1で得られたエチレン系重合体の0〜145(℃)で溶出する成分の溶出曲線と成分量の積分値を表示したグラフである。
【図14】比較例5で得られたエチレン系重合体のCFC等高線図である。
【図15】比較例5で得られたエチレン系重合体の低温側から見た3次元GPCチャート(鳥瞰図)とT2である。
【図16】比較例5で得られたエチレン系重合体の高温側から見た3次元GPCチャート(鳥瞰図)とT1である。
【図17】比較例5で得られたエチレン系重合体のピーク温度〔(T2-1)〜T2〕(℃)における溶出成分のGPC曲線である。
【図18】比較例5で得られたエチレン系重合体の73〜76(℃)で溶出する成分のGPC曲線である。
【図19】比較例5で得られたエチレン系重合体の95〜96(℃)で溶出する成分のGPC曲線である。
【図20】実施例3で得られたエチレン系重合体のCFC等高線図である。
【図21】実施例3で得られたエチレン系重合体の低温側から見た3次元GPCチャート(鳥瞰図)とT2である。
【図22】実施例3で得られたエチレン系重合体の高温側から見た3次元GPCチャート(鳥瞰図)とT1である。
【図23】実施例3で得られたエチレン系重合体のピーク温度〔(T2-1)〜T2〕(℃)における溶出成分のGPC曲線である。
【図24】実施例3で得られたエチレン系重合体の73〜76(℃)で溶出する成分のGPC曲線である。
【図25】実施例3で得られたエチレン系重合体の95〜96(℃)で溶出する成分のGPC曲線である。
【図26】実施例3で得られたエチレン系重合体の0〜145(℃)で溶出する成分の溶出曲線と成分量の積分値を表示したグラフである。
【図27】いくつかの実施例と比較例についてCFC測定で得られた、溶出成分量の濃度積算(全体=100%)を示した図である。
【図28】GPC分離解析の一例を示したGPCチャートである。
【図29】エチレン系重合体の結晶構造の測定結果(75倍)の一例である。
【図30】エチレン系重合体の結晶構造の測定結果(150倍)の一例である。
【図31】ピンチオフ部の模式図である。
【図32】実施例と比較例の80℃引張疲労試験結果の比較を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明に係るエチレン系重合体(E)、ブロー成形体に好適に使用されるエチレン系重合体(EB)およびこれからなるブロー成形体、並びにパイプに好適に使用されるエチレン系重合体(EP)およびこれからなるパイプまたはパイプ継ぎ手について、発明を実施するための最良の形態を順次説明し、次いで本発明に係わるエチレン系重合体の代表的な製造方法および本発明に係わる各種の測定法を説明し、そして最後に実施例について説明する。
【0032】
エチレン系重合体(E)
本発明に係わるエチレン系重合体(E)は、炭素原子数6〜10のα-オレフィンから導かれる構成単位を0.01〜1.20mol%含むエチレン系重合体であり、通常はエチレンの単独重合体とエチレン/炭素原子数6〜10のα-オレフィンとの共重合体からなる。
【0033】
ここで炭素原子数が6〜10のα-オレフィン(以下単に「α-オレフィン」と略称する場合がある。)としては、例えば、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、3-メチル-1-ペンテン、1-オクテン、1-デセンなどが挙げられる。本発明においては、これらのα-オレフィンの中で、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、1-オクテンから選ばれる少なくても1種を用いることが好ましい。
【0034】
本発明に係わるエチレン系重合体(E)は、クロス分別(CFC)において、下記要件(1)または(2)のいずれかを満たすことを特徴としている。
(1) 73〜76℃で溶出する成分の重量平均分子量(Mw)が4,000を超えない。
(2)下記関係式(Eq-1)を満たす。
【0035】
【数2】

(Eq-1中、SxはCFCにおいて70〜85℃で溶出する成分に基づく全ピークの面積合計値であり、Stotalは0〜145℃で溶出する成分に基づく全ピークの面積合計値である。)
このようなエチレン系重合体(E)は、成形体に応用した場合、疲労特性などの長期物性などに優れる。以下、要件(1)および(2)について具体的に説明する。
【0036】
[要件(1)]
本発明に係わるエチレン系重合体(E)は、クロス分別(CFC)において、73〜76℃で溶出する成分の、GPCで測定した重量平均分子量(Mw)が4,000を超えない。より具体的に述べるならば、分子量が108以下の領域において検出されるGPCピークについての重量平均分子量(Mw)が4,000を超えない。重量平均分子量(Mw)の好ましい範囲は2,000〜4,000であり、更に好ましくは2,500〜3,500の範囲にある。このようなエチレン系重合体は、α-オレフィンが共重合した高分子量成分を含有量が少ないこと、または比較的分子量が低くかつ短鎖分岐を有するような成分を含有しないことを意味し、その場合成形体としての疲労強度などの長期物性に優れる。特開平11-106432号公報記載のエチレン・α-オレフィン共重合体は組成分布が広いために該範囲を満たさず、WO01/25328号公報記載のエチレン系重合体は比較的分子量が小さい成分にもα-オレフィンが共重合したことによる短鎖分岐が存在するために該範囲を満たさない。従来のチーグラー触媒やクロム触媒などからなるエチレン系重合体も組成分布が広いので該範囲を満たさない。
【0037】
後述するような触媒系を用い、後述するような重合条件を設定することで、この範囲にあるエチレン系重合体を製造出来る。具体的に述べると、本願実施例3に記載の条件で重合すると、クロス分別(CFC)装置を用いた昇温溶出分別において73〜76℃で溶出する成分の重量平均分子量(Mw)が2,900であり、触媒や重合温度を変更しない限り、また第一重合器にα-オレフィンを供給しない限り、更に第二重合器に供給するα-オレフィン、この場合1-ヘキセンを900g/hr以上にしない限り、該重量平均分子量(Mw)は4,000未満になる。
【0038】
[要件(2)]
本発明に係わるエチレン系重合体(E)は、クロス分別CFCにおいて、70〜85℃で溶出する成分に基づく全ピークの面積合計値をSx、0〜145℃で溶出する成分に基づく全ピークの面積合計値をStotalとした場合、下記式(Eq-1)で示される関係を満たす。
【0039】
【数3】

要件(2)を満たすこのようなエチレン系重合体は、要件(1)の項で述べた内容と同じく、α-オレフィンが共重合した高分子量成分を含有量が少ないこと、または比較的分子量が低くかつ短鎖分岐を有するような成分を含有しないことを意味し、その場合成形体としての疲労強度などの長期物性に優れる。特開平11-106432号公報記載のエチレン・α-オレフィン共重合体は組成分布が広いために上記式(Eq-1)の関係を満たさず、WO01/25328号公報記載のエチレン系重合体は比較的分子量が小さい成分にもα-オレフィンが共重合したことによる短鎖分岐が存在するために上記式(Eq-1)の関係を満たさない。従来のチーグラー触媒やクロム触媒などからなるエチレン系重合体も組成分布が広いので上記式(Eq-1)の関係を満たさない。なお、上記式(Eq-1)におけるSxおよびStotalはC-H結合の伸縮振動の赤外分析に基づく値であることから、Sx/Stotalの値は、原則として70〜85℃で溶出する成分の、0〜145℃で溶出する成分量に占める重量%に等しい。通常、本発明のエチレン系重合体については0〜145℃の領域のスキャンで全成分が溶出してしまうため、Sx/Stotalの値は、エチレン系重合体の単位重量に占める70〜85℃での溶出成分量の重量%と言い換えることもできる。
【0040】
後述するような触媒系を用い、後述するような重合条件を設定することで、この範囲にあるエチレン系重合体を製造出来る。具体的に述べると、本願実施例3に記載の条件で重合すると、得られたエチレン系重合体のクロス分別(CFC)において上記式(Eq-1)の左辺、すなわち (Sx/Stotal)の値は0.042であり、触媒や重合温度を変更しない限り、また第一重合器にα-オレフィンを供給しない限り、更に第二重合器に供給するα−オレフィン、この場合1-ヘキセンを900g/hr以上にしない限り、(Sx/Stotal)の値は上記関係式(Eq-1)を満たす。
【0041】
上記のエチレン系重合体(E)の中で更に好ましい形態は、下記要件(1')〜(7')を満たすエチレン系共重合体(E')である。
(1') 炭素原子数6〜10のα-オレフィンから導かれる構成単位を0.02〜1.00mol%含む。(2') 密度(d)が945〜970kg/m3の範囲にある。
(3') 135℃、デカリン中で測定した極限粘度([η])が1.6〜4.0(dl/g)の範囲にある。
(4') GPCで測定した重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)が5 〜70の範囲にある。
(5') クロス分別(CFC)においてピーク頂点の分子量が100,000未満で最も強いピークの頂点の溶出温度をT1(℃)、分子量が100,000以上で最も強いピークの頂点の溶出温度をT2(℃)とした場合、(T1−T2)(℃)が0〜11℃の範囲にある。
(6') クロス分別(CFC)において[(T2−1)〜T2](℃)で溶出した画分のGPC曲線の中で、分子量が100,000以上で最も強いピークの頂点の分子量が200,000〜800,000の範囲にある。
(7') クロス分別(CFC)において95〜96℃で溶出する成分のGPC曲線のうち分子量が100,000以下の領域において最も強いピークの頂点の分子量が28,000を超えない。
以下、要件(1')〜(7')について順次具体的に説明する。
【0042】
[要件(1')]
本発明に係わるエチレン系重合体(E')は、炭素原子数6〜10のα-オレフィンから導かれる構成単位を通常0.02〜1.00mol%含む。エチレン系重合体(E')が、エチレン単独重合体を含まない場合、即ちエチレンと炭素原子数6〜10のα-オレフィンとの共重合体のみである場合は、エチレンから導かれる構成単位は、通常99〜99.98 mol%、好ましくは99.5〜99.98 mol%、より好ましくは99.6〜99.98 mol%の割合で存在し、α-オレフィンから導かれる繰り返し単位は通常0.02〜1 mol%、好ましくは0.02〜0.5 mol%、より好ましくは0.02〜0.4 mol%の割合で存在することが好ましい。また、エチレン系重合体(E')はエチレン単独重合体を含有していることがあり、その場合エチレン・α-オレフィン共重合体部分のエチレンから導かれる構成単位は、通常95〜99.96 mol%、好ましくは97.5〜99.96 mol%、より好ましくは98〜99.96 mol%の割合で存在し、α-オレフィンから導かれる繰り返し単位は0.04〜5 mol%、好ましくは0.04〜2.5 mol%、より好ましくは0.04〜2.0 mol%の割合で存在することが好ましい。なお、エチレン単独重合体を含む場合であっても全重合体に占める、α-オレフィンから導かれる繰り返し単位は、通常0.02〜1 mol%、好ましくは0.02〜0.5 mol%、より好ましくは0.02〜0.4 mol%である。α-オレフィンの炭素数が5個以下の場合、α−オレフィンが結晶中にとり込まれる確率が高くなり(Polymer,Vol.31,1999頁,1990年参照)、その結果強度が弱くなるので好ましくない。α-オレフィンの炭素数が10個を超えると、流動の活性化エネルギーが大きくなって、成形時の粘度変化が大きく好ましくない。また、α-オレフィンの炭素数が10個を超えると、側鎖(エチレンと共重合したα-オレフィンに起因する分岐)が結晶化する場合があり、そうすると非晶部が弱くなるので、好ましくない。
【0043】
[要件(2')および要件(3')]
本発明に係わるエチレン系重合体(E')の密度(d)は945〜970kg/m3、好ましくは947〜969 kg/m3、より好ましくは950〜969 kg/m3、135℃デカリン中で測定した極限粘度([η])が1.6 〜4.0dl/g、好ましくは1.7〜3.8 dl/g、より好ましくは1.8〜3.7 dl/gの範囲にある。密度および極限粘度がこれら範囲にあるエチレン系重合体は、硬さと成形性のバランスに優れる。例えば重合器への水素、エチレン、α-オレフィンの供給量比、エチレン単独重合体とエチレン・α-オレフィン共重合体との重合量比などを変更することで、上記の数値範囲内で値を増減させることが出来る。具体的には溶媒をヘキサンとした実施例3のスラリー重合において、系内を均一になるように攪拌しながら重合を行うと、密度が953 kg/m3、[η]が3.10 dl/gとなり、第二重合槽に供給するエチレンを6.0kg/hr、水素を0.45N-リットル/hr、1-ヘキセンを300g/hrとすると密度が944 kg/m3、[η]が3.6 dl/gとなり、第一重合槽に供給するエチレンを7.0 kg/hr、水素は125N-リットル/hr、第二重合槽に供給するエチレンを3.0 kg/hr、水素を0.07N-リットル/hr、1-ヘキセンを30g/hrとすると密度が968 kg/m3、[η]が2.10 dl/gとなる。
【0044】
[要件(4')]
本発明に係わるエチレン系重合体(E')は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定したMw/Mn(Mw:重量平均分子量、Mn:数平均分子量)が通常5〜70、好ましくは5〜50の範囲にある。後述する触媒系を用い、後述する多段重合を実施する際に、各成分の分子量および重合量比を制御することで、この範囲にあるエチレン系重合体を製造出来る。
【0045】
例えば、各成分の分子量差を広げることによりMw/Mnは大きくすることができる。Mw/Mnが上記の範囲にある重合体は、機械的強度と成形性とのバランスに優れる。具体的には、本願実施例3に記載の条件で重合すると、Mw/Mnは14.8となる。ここで、第一重合槽に供給するエチレンを5.0kg/hrから7.0 kg/hr、水素を57N-リットル/hrから125N-リットル/hrに変更すると、第一重合槽で生成するエチレン重合体の分子量が小さくなることによってMw/Mnは18程度に、一方、第二重合槽に供給するエチレンを4.0 kg/hrから3.3kg/hr、水素を0.2N-リットル/hrから0.07N-リットル/hrに変更すると、第二重合槽で生成するエチレン系重合体の分子量が大きくなることによりMw/Mnは22程度になる。または第一重合槽に供給する水素を52N-リットル/hr、第二重合槽に供給するエチレンを6.0 kg/hr、水素を0.45N-リットル/hr、1-ヘキセンを200g/hrとすると、Mw/Mnは12程度になる。
【0046】
[要件(5')]
本発明に係わるエチレン系重合体の、クロス分別(CFC)装置を用いた昇温溶出分別において、分子量が100,000未満で、最も強いピークの頂点の溶出温度をT1(℃)、分子量が100,000以上で、最も強いピークの頂点の溶出温度をT2(℃)とした場合、(T1−T2)(℃)が0〜11℃の範囲にあり、好ましくは0〜10℃の範囲にあり、より好ましくは0〜9℃の範囲にある。なお、本発明に係わるCFC分析において「ピーク」とは、例えば第2図について説明すれば、溶質の分布(クロマトグラム)、即ち山の形状全体のことを示し、「最も強い(あるいは、最もピーク強度が強い)」とは山の高さが最も高いということであり、「ピークの頂点」とは、微分値がゼロ(すなわち山の頂点)になる点のことを言う。なお、山の頂点が存在しない場合には、微分値がゼロに最も近い点(すなわちショルダー)部分を指す。
【0047】
このようなエチレン系重合体は、後述する触媒系を用い、後述するような重合条件を設定することで、この範囲にあるエチレン系重合体を製造することができる。
α-オレフィンの共重合量を特定範囲で増減させることで、(T1−T2)をこの範囲内で増減させることが出来る。具体的には、実施例3に記載の条件で重合すると、クロス分別(CFC)装置を用いた昇温溶出分別において分子量が異なる2つのピークが存在し、溶出成分のピーク分子量が100,000よりも低く、最もピーク強度が強いピークの温度(T1)と、溶出成分のピーク分子量が100,000以上で、最もピーク強度が強いピークの温度(T2)との温度差が(T1−T2)(℃)が6℃となる。第二重合器に供給する1-ヘキセン量を130g/hrから50g/hrに変更することで、(T1−T2)(℃)が1℃となり、200g/hrに変更することで、(T1−T2)(℃)が11℃となる。
【0048】
[要件(6')]
本発明に係わるエチレン系重合体(E')のクロス分別(CFC)において、上記T2(℃)で溶出した画分のGPC曲線のうち、分子量が100,000以上で最も強いピークの頂点の分子量が200,000〜800,000の範囲にある。なお、T2(℃)で溶出した画分とは、〔(T2−1)〜T2〕(℃)で溶出した成分のことをさす。このようなエチレン系重合体は、疲労特性などの長期物性と成形性のバランスなどに優れる。後述するような触媒系を用い、後述するような重合条件を設定することで、この範囲にあるエチレン系重合体を製造出来る。共重合体を製造するような重合環境に供給するα-オレフィン量、水素量、エチレン量などを増減させることでT2(℃)で溶出した画分のGPC曲線のうち、最も分子量が高いピークの頂点の分子量を特定範囲で増減させることが出来る。具体的に述べると、実施例3に記載の条件で重合すると、クロス分別(CFC)装置を用いた昇温溶出分別において上記〔(T2−1)〜T2〕 (℃)で溶出した画分のGPC曲線のうち、分子量が100,000以上で最も強いピークの頂点の分子量が493,000となる。第二重合器に供給する1-ヘキセン量を130g/hrから200g/hrに、エチレン4.0kg/hrを6.0kg/hrに、水素0.2N-リットル/hrを0.45N-リットル/hrに変更すると、クロス分別(CFC)装置を用いた昇温溶出分別において上記〔(T2−1)〜T2〕(℃)で溶出した画分のGPC曲線のうち、分子量が100,000以上で最も強いピークの頂点の分子量は361,000となり、第二重合器に供給する水素0.2N-リットル/hrを0.1N-リットル/hrに変更するとクロス分別(CFC)装置を用いた昇温溶出分別において上記〔(T2−1)〜T2〕(℃)で溶出した画分のGPC曲線のうち、最も分子量が高いピークの頂点の分子量は680,000となる。従来知られているメタロセン触媒では、分子量分布が狭く、かつこのように分子量が高いエチレン系共重合体は得られなかった。
【0049】
[要件(7')]
本発明に係わるエチレン系重合体の、クロス分別(CFC)において95〜96℃で溶出する成分のGPC曲線のうち、最も強いピークの頂点の分子量が28,000を超えない。通常は15,000〜27,000の範囲にある。このようなエチレン系重合体は分子量が低くかつ短鎖分岐を有するような成分を含有しないことを意味し、その場合疲労強度などの長期物性に優れる。
【0050】
後述するような触媒系を用い、後述するような重合条件を設定することで、この範囲にあるエチレン系重合体を製造出来る。具体的に述べると、実施例3に記載の条件で重合すると、クロス分別(CFC)装置を用いた昇温溶出分別において95〜96℃で溶出する成分のGPC曲線のうち、最も強いピークの頂点の分子量は22,000であり、触媒や重合温度を変更しない限り、また第一重合器にα−オレフィンを供給しない限り、更に第二重合器に供給する水素量を10N-リットル/hr以上にしない限り、該Mwはこの範囲になる。WO01/25328号のように低分子量成分にも分岐が存在する場合には、低分子量成分の結晶性が低下するために同じ溶出温度でもより分子量が大きい成分が溶出してしまい、該要件を満たさない。
【0051】
上記のエチレン系重合体(E')の中で更に好ましい形態は、13C-NMRで測定したメチル分岐が炭素原子1000個当たり0.1個未満、好ましくは0.08個未満であるエチレン系重合体(E'')である。このような重合体は結晶構造が頑丈なため、機械的強度に優れる。後述で例示するような触媒系を用いて製造されるエチレン系重合体は、検出限界(炭素原子1000個当たり0.08個)以下であるため、メチル分岐は検出されない。
【0052】
前述のエチレン系重合体(E'')の中で、特に好ましい形態は、下記要件(1''')〜(2''')を同時に満たすエチレン系共重合体(E''')である。
(1''') GPC曲線を2つの対数正規分布曲線に分離した時に、各々の曲線の重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)が1.5〜3.5の範囲にあり、高分子量側に分離された曲線の重量平均分子量(Mw2)が200,000〜800,000にある。
(2''') 押出ストランドの表面粗さから求められる平滑度係数Rが20μmを越えない。
以下、要件(1''')および(2''')について具体的に説明する。
【0053】
[要件(1''')]
本発明に係わるエチレン系重合体(E''')は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定した分子量曲線(GPC曲線)を2つの対数正規分布曲線に分離した時に、各々の曲線の重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)が、通常1.5〜3.5、好ましくは1.5〜3.2の範囲にある。後述するような触媒系を用いて、後述するような多段重合を実施し、その際に選択する触媒化合物の種類や、多段重合する際の段数、および各成分の分子量を制御することで、この範囲にあるエチレン系重合体を製造出来る。気相で重合するとMw/Mnを大きく、一方スラリー相で重合すると除熱やモノマー拡散がより均一になるためにMw/Mnを小さくすることが可能である。さらに、触媒成分を担体に担持せずに用いると、均一系に近づくためにMw/Mnは小さくなる。特開平11-106432号公報に記載の担持型幾何拘束型シングルサイト触媒(CGC/Borate)を用いてスラリー重合した場合や、EP1201711A1号公報に記載のシリカに担持したエチレン・ビス(4,5,6,7-テトラヒドロ-1-インデニル)ジルコニウムジクロライドとメチルアルモキサンからなる触媒系を用いてスラリー重合した場合には、単段重合のMw/Mnが4以上となり、本願請求範囲を満たさない。なお、本願実施例1に記載の触媒を用いて80℃スラリー単段重合して得られるエチレン系重合体のMw/Mnは2.3程度である。
【0054】
また、本発明に係わるエチレン系重合体(E''')のGPC曲線を2つの対数正規分布曲線に分離した時に、高分子量側に分離された曲線の重量平均分子量(Mw2)が200,000〜800,000の範囲にある。エチレン系重合体を製造する際の水素、エチレン、α-オレフィン量比を選択することでMw2がこの範囲のエチレン系重合体を製造することが出来る。具体的に述べると、実施例3に記載の条件で重合すると、GPC曲線を2つの対数正規分布曲線に分離した時に、高分子量側に分離された曲線の重量平均分子量(Mw2)は416,000となる。第二重合槽に供給するエチレンを6.0kg/hr、水素を0.35N-リットル/hr、1-ヘキセンを200g/hrとすると、Mw2は312,000となり、第二重合槽に供給するエチレンを3.0kg/hr、水素を0.07N−リットル/hr、第二重合槽に供給する1-ヘキセンを30g/hrとすると、Mw2は539,000となる。Mw2がこの範囲にあるエチレン系重合体は強度と成形性とのバランスに優れる。
【0055】
[要件(2''')]
本発明に係わるエチレン系重合体(E''')は、押出ストランドの表面粗さから求められる平滑度係数Rが20μmを越えない、好ましくは15μmを越えない。気相重合法やスラリー重合法のように、重合により得られるエチレン系重合体が粒子状である場合では、溶融混練などの後処理を施しても重合粒子が完全には混じり合って分散せずに粘度が異なる部分がまだらに残ることがある。その場合、溶融樹脂をチューブまたはストランド状に押し出すと、表面に肌荒れが生じる。その場合には製品を成形した場合にも同様の肌荒れが生じる。その程度は表面粗さ測定から求める平滑度係数Rによって求められる。通常、気相重合法やスラリー重合法で製造されるエチレン系重合体粒子の大きさは数十μm〜2mm程度であり、重合粒子の形状履歴が残っていると、押出物表面に肌荒れが発生してRが20μmよりも大きくなり、例えば後述のような重合方法を選択すると、Rが20μmを越えない、通常は15μmを越えないエチレン系重合体を製造出来る。Rが20μmを越えなければ、0〜20μmでの変動はフィルム成形時の異物混入やダイスの傷、測定誤差などの本質とは関係のないところで生じうる。よって、Rは20μmを越えないことに意味がある。Rの値が20μmを越えるようなエチレン系重合体は、例えば実施例3で得られたエチレン系重合体パウダーを東洋精機社製ラボプラストミル(バッチ式異方向回転2軸混練機)を用いて190℃、25 rpm、15分など非常に長い時間溶融混練すればRが20μmを下回るエチレン系重合体を得ることが出来る。混練する時間の長さを更に長くすることでRをより小さくすることは可能である。ただし、分解や架橋に伴う構造変化を伴う場合がある。また、Rの値が20μmを越えるようなエチレン系重合体を、例えばパラキシレンのような良溶媒500mlに対して5g程度の割合で溶解させた後氷冷した5倍量程度のアセトンなどの貧溶媒中に10ml/分程度の速度で析出させた後、乾燥させてから溶融混練すると、Rの値が10μm以下のエチレン系重合体を得ることが出来る。Rが上記の値を越えない重合体は、重合粒子の履歴が無く均質であるため機械的強度が特に優れ、流動も均質となるので成形体の表面が平滑で外観に優れる。本願実施例1に示すように、バッチ式で2段重合を実施した場合には、長時間の溶融混練を施さなくてもRが20μmを越えない。更に、実施例3で得られるエチレン系重合体のうち、第一重合器からエチレン単独重合体を抜き出し、別途第二重合器の条件で単段スラリー重合により得られるエチレン系重合体とを溶融混練することでも、Rが20μmを超えないエチレン系重合体が得られる場合がある。
【0056】
本発明に係わるエチレン系重合体(E)、(E')、(E'')および(E''')は、190℃で溶融し、20℃で冷却した0.5mm厚プレスシートのミクロトーム切片を偏光顕微鏡で観察した際に、10μmを超えるような連続した結晶構造が観察されないことを特徴とする。
【0057】
具体的に述べると、190℃で溶融し、20℃で冷却した0.5mm厚プレスシートのミクロトーム切片を偏光顕微鏡で観察した際に、10μmを超えるような連続した結晶構造が観察されない。このようなエチレン系重合体は、機械強度に優れる。例えば本願実施例3で得られたエチレン系重合体パウダーを東洋精機社製ラボプラストミル(バッチ式異方向回転2軸混練機)を用いて190℃、25rpm、10分以上などある程度長い時間溶融混練すれば10μmを超えるような連続した結晶構造が観察されないエチレン系重合体を得ることが出来る。また、実施例1に示すように、バッチ式で2段重合を実施した場合には、ごく短時間の溶融混練を施すだけで10μmを超えるような連続した結晶構造が観察されないエチレン系重合体を得ることが出来る。一方、実施例3で得られるエチレン系重合体のうち、第一重合器からエチレン単独重合体を抜き出し、別途第二重合器の条件で単段スラリー重合により得られるエチレン系重合体とを溶融混練した場合には、混練時間を長くしても10μmを超えるような連続した結晶構造が観察される。
【0058】
また、本発明のエチレン系重合体(E)〜(E''')を得るための重合がスラリー相、または気相で実施されることが好ましい。スラリー相、または気相で重合、好ましくは多段重合すると、触媒の活性点1つに対応する1次粒子オーダー(ナノメートルオーダー)では分子量が大きく異なる2種のエチレン系重合体が重合時に混ざるので好ましい。
【0059】
ブロー成形体に好適に使用されるエチレン系重合体(EB
本発明に係わるエチレン系重合体(E)、好ましくは(E')、更に好ましくは(E'')、特に好ましくは(E''')の中で、ブロー成形体に好適に使用されるエチレン系重合体(EB)は、炭素原子数6〜10のα-オレフィンから導かれる構成単位濃度、Mw/Mn値およびクロス分別(CFC)における(T1−T2)値が、各々以下(1B)、(2B)および(3B)のように限定されていると好ましい。
(1B) 炭素原子数6〜10のα-オレフィンから導かれる構成単位を0.02〜0.20mol%含む。
(2B) GPCで測定した重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)が5 〜30の範囲にある。
(3B) クロス分別(CFC)においてピーク頂点の分子量が100,000未満で最も強いピークの頂点の溶出温度をT1(℃)、分子量が100,000以上で最も強いピークの頂点の溶出温度をT2(℃)とした場合、(T1−T2)(℃)が0〜5℃の範囲にある。
以下、要件(1B)および要件(3B)についてのみ補足説明をする。
【0060】
[要件(1B)]
本発明に係わる、ブロー成形体に好適に使用されるエチレン系重合体(EB)は、炭素原子数6〜10のα-オレフィンから導かれる構成単位を通常0.02〜0.2mol%含む。本発明のエチレン系重合体(EB)が、エチレン単独重合体を含まない場合、即ちエチレンと炭素原子数6〜10のα-オレフィンとの共重合体のみである場合は、エチレンから導かれる構成単位は、通常99.80〜99.98 mol%の割合で存在し、α-オレフィンから導かれる繰り返し単位は通常0.02〜0.20 mol%の割合で存在することが好ましい。また、エチレン系重合体(EB)はエチレン単独重合体を含有していることがあり、その場合エチレン・α-オレフィン共重合体部分のエチレンから導かれる構成単位は、通常99.00〜99.96 mol%、α-オレフィンから導かれる繰り返し単位は0.04〜1.00 mol%の割合で存在することが好ましい。なお、エチレン単独重合体を含む場合であっても全重合体に占める、α-オレフィンから導かれる繰り返し単位は、通常0.02〜0.20 mol%である。
【0061】
[要件(3B)]
本発明に関わる、ブロー成形体に好適に使用されるエチレン系重合体(EB)は、クロス分別(CFC)装置を用いた昇温溶出分別において、分子量が100,000未満で、最も強いピークの頂点の溶出温度をT1(℃)、分子量が100,000以上で、最も強いピークの頂点の溶出温度をT2(℃)とした場合、(T1−T2)(℃)が0〜5℃の範囲にあり、好ましくは0〜4℃の範囲にあり、より好ましくは0〜3℃の範囲にある。ここで、最も強いピークの頂点とは、微分値がゼロ(すなわち山の頂点)、山の頂点が存在しない場合には、微分値がゼロに最も近い点(すなわちショルダー)部分を指す。このようなエチレン系重合体は、剛性が高く、かつ耐環境応力破壊性などに優れる。後述するような触媒系を用い、後述するような重合条件を設定することで、この範囲にあるエチレン系重合体を製造出来る。α-オレフィンの共重合量を特定範囲で増減させることで、(T1−T2)をこの範囲内で増減させることが出来る。具体的には溶媒をヘキサンとした実施例14に記載の条件で重合すると、クロス分別(CFC)装置を用いた昇温溶出分別において分子量が異なる2つのピークが存在し、溶出成分の分子量が100,000よりも低く、最もピーク強度が強いピークの温度(T1)と、溶出成分の分子量が100,000以上で、最もピーク強度が強いピークの温度(T2)との温度差が(T1−T2)(℃)が1℃となる。第二重合器に供給する1-ヘキセン量を50g/hrから130g/hrに変更することで、(T1−T2)(℃)が5℃とすることができる。
【0062】
本発明に係わるエチレン系重合体(EB)は、上記要件(1B)〜(3B)に加えて下記要件(1B')および(2B')を満たすことが好ましく〔このエチレン系重合体のことをエチレン系重合体(EB')と呼ぶ場合がある〕、更に好ましくは下記要件(1B'')を満たす〔このエチレン系重合体を、以下の説明ではエチレン系重合体(EB'')と呼ぶ場合がある〕。
(1B') ASTM-D-790に準拠して、23℃で測定した曲げ弾性率が1,500〜1,800MPaの範囲にある。
(2B') ASTM-D-1693に準拠して測定した50℃における耐環境応力破壊性ESCR(hr)が10時間以上で非破壊である。
(1B'') 動的粘弾性装置を用いて測定した190℃、角周波数100 rad/secにおけるtanδ(=損失弾性率G''/貯蔵弾性率G')が0.7〜0.9である。
以下要件(1B')、(2B')および(1B'')について詳説する。
【0063】
[要件(1B')および(2B')]
本発明に係わるエチレン系重合体(EB')は、23℃で測定した曲げ弾性率が1,500〜1,800MPaの範囲にあり、50℃における耐環境応力破壊性ESCR(hr)が10時間以上で非破壊、好ましくは50時間以上で非破壊である。曲げ弾性率とESCRがこの範囲にあるエチレン系重合体は硬くて強いために、従来よりも成形品を薄くして使うことが出来る。後述するような触媒系を用い、後述するうな多段重合を実施する際に、重合器への水素、エチレン、α-オレフィンの供給量比などを変更して各成分の分子量および重合量比を制御することで、[η]がこの範囲にあるエチレン系重合体を製造出来る。具体的には、溶媒をヘキサンとした実施例14に記載の条件で重合したものを東洋精機社製ラボプラストミル(装置バッチ容積=60cm3)で190℃設定、50rpm,10分混練すると、曲げ弾性率が1,650MPa、ESCRが600時間で非破壊となり、第二重合槽に供給する1-ヘキセンを50g/hrから30g/hrに変更し、第二重合槽へ供給するエチレン量を4.0kg/hrから3.0kg/hrへ下げると、曲げ弾性率が1,780MPa、ESCRが233時間で50%破壊となりとなり、第二重合槽に供給する1-ヘキセンを50g/hrから65g/hrに変更すると、曲げ弾性率が1,520MPa、ESCRが600時間で非破壊となる。
【0064】
[要件(1B'')]
本発明に係わる、上記エチレン系重合体(EB')は、動的粘弾性装置を用いて測定した190℃、角周波数100 rad/secにおけるtanδ(損失弾性率G''/貯蔵弾性率G')が0.7〜0.9であることが好ましい。tanδがこの範囲にあると、ブロー成形したときのピンチ融着性に優れる。低分子量エチレン重合体の分子量を大きく、高分子量エチレン・α-オレフィン共重合体の分子量を小さくするほど、tanδが大きくなる傾向にある。なお、ピンチ融着性とは、押出機から押し出された筒状の溶融樹脂を金型ではさんで融着させる際の、融着部に樹脂が盛り上がって良くくっ付いていることを示す。tanδが大きいほど粘性が強いことを意味し、その場合に樹脂が盛り上がりやすいと考えられる。
【0065】
さらに、本発明に関わるブロー成形体用のエチレン系重合体 (EB)、(EB')および(EB'')は、140℃デカンに可溶であることが好ましい。これは、架橋工程を施していないことを意味し、架橋工程を施していないと再溶融して再利用することが可能であるし、成形品の製造工程がより簡便であり、好ましい。
【0066】
また、ブロー成形体用のエチレン系重合体(EB)、(EB')および(EB'')においては、エチレン系重合体(E)が、前述の要件(1')〜(7')を満たすエチレン系重合体(E')であることが好ましく、エチレン系重合体(E')が、前述要件(1'')をも満たすエチレン系重合体(E'')であることが更に好ましく、更にはエチレン系重合体(E'')が前述の要件(1''')および(2''')をも満たすエチレン系重合体(E''')であることが特に好ましい。換言すれば、本発明のブロー成形体用のエチレン系重合体としては、エチレン系重合体(E''')が前記要件(1B')、(2B')および(1B'')を共に満たすものが最も好適に使用される。
【0067】
パイプ用途に好適に使用されるエチレン系重合体(EP
本発明に係わるエチレン系重合体(E)、好ましくは(E')、更に好ましくは(E'')、特に好ましくは(E''')の中で、パイプ用途に好適に使用されるエチレン系重合体は、炭素原子数6〜10のα-オレフィンから導かれる構成単位濃度およびMw/Mn値が、各々以下(1P)および(2P)のように限定されていることが好ましい。このように限定されたエチレン系重合体のことを以下の説明ではエチレン系重合体(EP)と呼ぶ場合がある。
(1P) 炭素原子数6〜10のα-オレフィンから導かれる構成単位を0.10〜1.00mol%含む。
(2P) GPCで測定した重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)が11 〜70の範囲にある。
以下、要件(1P)および要件(2P)について説明をする。
【0068】
[要件(1P)]
本発明に係わる、パイプに好適に使用されるエチレン系重合体(EP)は、炭素原子数6〜10のα-オレフィンから導かれる構成単位を通常0.10〜1.00mol%含む。本発明のエチレン系重合体(EP)が、エチレン単独重合体を含まない場合、即ちエチレンと炭素原子数6〜10のα-オレフィンとの共重合体のみである場合は、エチレンから導かれる構成単位は、通常99.00〜99.90 mol%の割合で存在し、α-オレフィンから導かれる繰り返し単位は通常0.10〜1.00 mol%の割合で存在することが好ましい。また、エチレン系重合体(EP)はエチレン単独重合体を含有していることがあり、その場合エチレン・α-オレフィン共重合体部分のエチレンから導かれる構成単位は、通常95.00〜99.80 mol%、α-オレフィンから導かれる繰り返し単位は0.20〜5.00 mol%の割合で存在することが好ましい。なお、エチレン単独重合体を含む場合であっても全重合体に占める、α-オレフィンから導かれる繰り返し単位は、通常0.10〜1.00 mol%である。
【0069】
[要件(2P)]
本発明に係るエチレン系重合体(EP)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定したMw/Mn(Mw:重量平均分子量、Mn:数平均分子量)が通常11〜70、好ましくは11〜50の範囲にある。後述するような触媒系を用い、後述するような多段重合を実施する際に、各成分の分子量および重合量比を制御することで、この範囲にあるエチレン系重合体を製造出来る。例えば、各成分の分子量差を広げるとMw/Mnは大きくなる。Mw/Mnが上記の範囲にある重合体は、機械的強度と成形性とのバランスに優れる。具体的には、溶媒をヘキサンとした実施例1に記載の条件で重合すると、Mw/Mnは14.8となる。ここで、第一重合槽に供給するエチレンを5.0kg/hrから7.0kg/hr、水素を57N-リットル/hrから125N-リットル/hrに変更すると、第一重合槽で生成するエチレン重合体の分子量が小さくなることでMw/Mnは18程度に、一方、第二重合槽に供給するエチレンを4.0kg/hrから3.3kg/hr、水素を0.2N-リットル/hrから0.07N-リットル/hrに変更すると、第二重合槽で生成するエチレン系重合体の分子量が大きくなることでMw/Mnは22程度になる。また、第一重合槽に供給する水素を52N-リットル/hr、第二重合槽に供給するエチレンを6.0kg/hr、水素を0.45N-リットル/hr、1-ヘキセンを200g/hrとすると、Mw/Mnは12程度になる。
【0070】
本発明のエチレン系重合体(EP)は、上記要件(1P)および(2P)に加えて下記要件(1P')を満たすことが好ましい〔このエチレン系重合体のことをエチレン系重合体(EP')と呼ぶ場合がある〕。
(1P') JIS K-6744に準拠し、80℃で測定した引張疲労特性で破断に至る回数が10,000回のときの実応力が13MPa〜17MPa、破断に至る回数が100,000回のときの実応力が12〜16MPaである。
以下、要件(1P')について詳説する。
【0071】
[要件(1P')]
本発明に係わるエチレン系重合体(EP')は、試料にノッチを付けて80℃で測定した引張疲労特性で破断に至る回数が10,000回のときの実応力が13MPa〜17MPa、好ましくは14MPa〜16MPaであり、破断に至る回数が100,000回のときの実応力が12MPa〜17MPa、好ましくは13MPa〜16MPaの範囲にある。試料にノッチをつけて80℃で測定した引張疲労強度が該範囲にあるエチレン系重合体は破壊様式が脆性的である長期寿命特性に優れる。後述するような触媒系を用い、後述するような多段重合を実施する際に、各成分の分子量、エチレンと共重合するα-オレフィンの量、組成分布、重合量比、および相溶性を制御することで、この範囲にあるエチレン系重合体を製造出来る。
【0072】
例えば、特定のシングルサイト触媒を用い、請求項の範囲で[η]を大きくし、共重合するα-オレフィンとして炭素数6〜10のα-オレフィンを選択し、共重合体中のα-オレフィン量を0.1〜5.0 mol%の範囲で、組成分布が狭くなるような重合条件を選択することで、疲労強度を請求項の範囲内でより高くすることが出来る。
【0073】
具体的には、溶媒をヘキサンとした実施例3に記載の条件で重合し、実施例3に記載の条件で造粒すると、80℃で測定した引張疲労特性で破断に至る回数が10,000回のときの実応力が13.7MPaであり、破断に至る回数が100,000回のときの実応力が13.1MPaである。造粒をサーモプラスチック社製20mmφ単軸押出機(L/D=28、圧縮比=3)、230℃設定、100 rpm、フルフライトスクリュー、吐出量50g/minで実施した場合、80℃で測定した引張疲労特性で破断に至る回数が10,000回のときの実応力が12.3MPaであり、破断に至る回数が100,000回のときの実応力が11.3MPaとなり、請求範囲を満たさない。これは、重合粒子の相溶性が悪いためと推定している。また、重合の際、第二重合槽に供給するエチレンを3.3kg/hr、水素を0.07N−リットル/hrとし、実施例3に記載の条件で造粒すると、80℃で測定した引張疲労特性で破断に至る回数が10,000回のときの実応力が13.9MPaであり、破断に至る回数が100,000回のときの実応力が13.4MPaとなる。また、比較例1 のような重合条件を採用すると、80℃で測定した引張疲労特性で破断に至る回数が10,000回のときの実応力が12.1MPaであり、破断に至る回数が100,000回のときの実応力が11.2MPaとなり、請求範囲を満たさない。逆に実施例1と同じコモノマー量で、コモノマーを共重合する際の水素量を減量することで、樹脂の[η]を請求範囲の上限3.7dl/gに近づけるほど、破断に至る回数が10,000回及び100,000回の時の実応力が高くなる。また、同じ分子構造であっても、単段で重合した低分子量のエチレン単独重合体と単段で重合した高分子量のエチレン・α−オレフィン共重合体とを溶融ブレンドした場合には、10μmを超えるような連続した結晶構造が存在し、すなわち破壊しやすい低分子量エチレン単独重合体からなる10μmを超えるような連続した構造も有するために、ノッチを付けて80℃で測定する引張疲労強度が発現しない。
【0074】
さらに、分子構造として結晶部を弱くするような成分、即ち低分子量成分に短鎖分岐を含有していたり、高分子量成分に多すぎる短鎖分岐を含有していると、結晶と結晶とを結ぶ強いタイ分子が生成しにくくなることで非晶が弱くなったりするので、ノッチを付けた試料を80℃で測定する引張疲労強度が発現しない。なお、ここで言う10μmを超えるような連続した結晶構造が観察されないとは、190℃で溶融し、20℃で冷却した0.5mm厚プレスシートのミクロトーム切片を偏光顕微鏡で観察した際に、10μmを超えるような連続した結晶構造が観察されないことで、エチレン系重合体を神藤金属工業社製油圧式プレス成形機を用いて、190℃で融解させた後、10MPaの圧でシート形状とし、20℃に設定した冷却プレスで0.5mm厚のプレスシートを作成し、その後、ミクロトームなどを用いて0.5mm(プレスシートの厚み)×10〜20μm程度に切削し、その後、切削片にグリセリンを少量塗布してプレパラートに密着させて、その上からカバーガラスを乗せ、観察用試料とし、この試料をクロスニコルの偏光板の間にセットして75倍程度および150倍程度に拡大した光学顕微鏡で観察することでわかる。図29および図30に、視野の一部にのみ結晶構造が観察される場合で10μmを超える連続した結晶構造は存在しないとするものの例と、視野全体に結晶構造が観察される場合で10μmを超える連続した結晶構造が存在するとするものの例とを示す。なお、スケールバーは全長で0.5 mmである。図29が約75倍、図30が約150倍で観察した写真である。
【0075】
さらに、本発明に関わるパイプ用のエチレン系重合体 (EP)、(EP')および(EP'')は、140℃デカンに可溶であることが好ましい。これは、架橋工程を施していないことを意味し、架橋工程を施していないと再溶融して再利用することが可能であるし、成形品の製造工程がより簡便であり、好ましい。
【0076】
また、パイプ用のエチレン系重合体(EP)、(EP')および(EP'')においては、エチレン系重合体(E)が、前述要件(1')〜(7')を満たすエチレン系重合体(E')であることが好ましく、エチレン系重合体(E')が前述要件(1'')をも満たすエチレン系重合体(E'')であることが更に好ましく、またエチレン系重合体(E'')が上述の要件(1''')および(2''')をも満たすエチレン系重合体(E''')であることが特に好ましい。換言すれば、本発明のパイプ用のエチレン系重合体としては、エチレン系重合体(E''')が前記要件(1P')および(2P')を共に満たすものが最も好適に使用される。
【0077】
エチレン系重合体の製造方法
本発明に係るエチレン系重合体は、例えば、
(A)シクロペンタジエニル基とフルオレニル基が第14族原子を含む共有結合架橋によって結合されている遷移金属化合物と、
(B)(B-1) 有機金属化合物、
(B-2) 有機アルミニウムオキシ化合物、および
(B-3) 遷移金属化合物と反応してイオン対を形成する化合物
から選ばれる少なくとも1種の化合物と、担体(C)から形成されるオレフィン重合用触媒を用いて、エチレンを単独重合させるかまたはエチレンと炭素原子数6〜10のα-オレフィンとを共重合させることによって得ることができる。さらに詳しく述べると、本願実施例で使用した各成分(A)、(B)、(C)は以下の通りである。
【0078】
★(A)遷移金属化合物
遷移金属化合物(A)は、以下に記載する一般式(1)および(2)で表される化合物である。
【0079】
【化1】

【0080】
【化2】

(上記一般式(1)、(2)中、R7、R8、R9、R10、R11、R12、R13、R14、R15、R16、R17、R18、R19およびR20は水素原子、炭化水素基、ケイ素含有炭化水素基から選ばれ、それぞれ同一でも異なっていてもよく、R7〜R18までの隣接した置換基は互いに結合して環を形成してもよく、Aは一部不飽和結合および/または芳香族環を含んでいてもよい炭素原子数2〜20の2価の炭化水素基であり、Yとともに環構造を形成しており、AはYと共に形成する環を含めて2つ以上の環構造を含んでいてもよく、Yは炭素またはケイ素であり、Mは周期律表第4族から選ばれた金属であり、Qはハロゲン、炭化水素基、アニオン配位子または孤立電子対で配位可能な中性配位子から同一または異なる組合せで選んでもよく、jは1〜4の整数である。)
【0081】
具体的には、R7〜R10は水素であり、Yは炭素であり、MはZrであり、jは2である。
後述する本出願実施例で使用した遷移金属化合物(A)は具体的には下記式(3)および(4)であるが、本発明においてはこの遷移金属化合物に何ら限定されるものではない。
【0082】
【化3】

【0083】
【化4】

なお、上記式(3)および(4)で表わされる遷移金属化合物は、270MHz1H-NMR(日本電子 GSH-270)およびFD-質量分析(日本電子 SX-102A)を用いて構造決定した。
【0084】
★(B-1) 有機金属化合物
本発明で必要に応じて用いられる(B-1)有機金属化合物として、具体的には下記のような周期律表第1、2族および第12、13族の有機金属化合物が挙げられる。
【0085】
一般式 RamAl(ORb)nHpXq
(式中、RaおよびRbは、互いに同一でも異なっていてもよく、炭素原子数が1〜15、好ましくは1〜4の炭化水素基を示し、Xはハロゲン原子を示し、mは0<m≦3、nは0≦n<3、pは0≦p<3、qは0≦q<3の数であり、かつm+n+p+q=3である。)で表される有機アルミニウム化合物である。
後述する本願実施例において用いたアルミニウム化合物はトリイソブチルアルミニウム、またはトリエチルアルミニウムである。
【0086】
★(B-2) 有機アルミニウムオキシ化合物
本発明で必要に応じて用いられる(B-2)有機アルミニウムオキシ化合物は、従来公知のアルミノキサンであってもよく、また特開平2-78687号公報に例示されているようなベンゼン不溶性の有機アルミニウムオキシ化合物であってもよい。
後述する本願実施例において使用した有機アルミニウムオキシ化合物は市販されている日本アルキルアルミ株式会社製のMAO(=メチルアルモキサン)/トルエン溶液である。
【0087】
★(B-3) 遷移金属化合物と反応してイオン対を形成する化合物
本発明の架橋メタロセン化合物(A)と反応してイオン対を形成する化合物(B-3) (以下、「イオン化イオン性化合物」という。)としては、特開平1−501950号公報、特開平1−502036号公報、特開平3−179005号公報、特開平3−179006号公報、特開平3−207703号公報、特開平3−207704号公報、US−5321106号公報などに記載されたルイス酸、イオン性化合物、ボラン化合物およびカルボラン化合物などを挙げることができる。さらに、ヘテロポリ化合物およびイソポリ化合物も挙げることができる。このようなイオン化イオン性化合物(B-3)は、1種単独でまたは2種以上組み合せて用いられる。なお、後述する本願実施例において使用した(B)成分としては、今回上記に示した(B-1)および(B-2)の2つを用いている。
【0088】
★(C)微粒子状担体
本発明で必要に応じて用いられる(C)微粒子状担体は、無機または有機の化合物であって、顆粒状ないしは微粒子状の固体である。このうち無機化合物としては、多孔質酸化物、無機ハロゲン化物、粘土、粘土鉱物またはイオン交換性層状化合物が好ましい。このような多孔質酸化物は、種類および製法によりその性状は異なるが、本発明に好ましく用いられる担体は、粒径が1〜300μm、好ましくは3〜200μmであって、比表面積が50〜1000m2/g、好ましくは100〜800m2/gの範囲にあり、細孔容積が0.3〜3.0cm3/gの範囲にあることが望ましい。このような担体は、必要に応じて80〜1000℃、好ましくは100〜800℃で焼成して使用される。なお、後述する本願実施例において用いた担体は、特にことわらない限り平均粒径が12μm、比表面積が800m2/gであり、細孔容積が1.0cm3/gである旭硝子株式会社製のSiO2を用いた。
【0089】
本発明に係るオレフィン重合用触媒は、本発明の架橋メタロセン化合物(A)、(B-1) 有機金属化合物、(B-2) 有機アルミニウムオキシ化合物、および(B-3) イオン化イオン性化合物から選ばれる少なくとも1種の化合物(B)、必要に応じて微粒子状担体(C)と共に、必要に応じて後述するような特定の有機化合物成分(D)を含むこともできる。
【0090】
★(D)有機化合物成分
本発明において、(D)有機化合物成分は、必要に応じて、重合性能および生成ポリマーの物性を向上させる目的で使用される。このような有機化合物としては、アルコール類、フェノール性化合物、カルボン酸、リン化合物およびスルホン酸塩等が挙げられるが、この限りではない。
【0091】
★重 合
本発明に係るエチレン系重合体は、上記のようなオレフィン重合用触媒を用いて、既述のようにエチレンを単独重合させるかまたはエチレンと炭素原子数6〜10のα-オレフィンとを共重合させることにより得られる。
【0092】
重合の際には、各成分の使用法、添加順序は任意に選ばれるが、以下のような方法、(P1)〜(P10)が例示される。
(P1) 成分(A)と、(B-1)有機金属化合物、(B-2)有機アルミニウムオキシ化合物および(B-3) イオン化イオン性化合物から選ばれる少なくとも1種の成分(B)(以下単に「成分(B)」という。)とを任意の順序で重合器に添加する方法。
(P2) 成分(A)と成分(B)を予め接触させた触媒を重合器に添加する方法。
(P3) 成分(A)と成分(B)を予め接触させた触媒成分、および成分(B)を任意の順序で重合器に添加する方法。この場合各々の成分(B)は、同一でも異なっていてもよい。
(P4) 成分(A)を微粒子状担体(C)に担持した触媒成分、および成分(B)を任意の順序で重合器に添加する方法。
(P5) 成分(A)と成分(B)とを微粒子状担体(C)に担持した触媒を、重合器に添加する方法。
(P6) 成分(A)と成分(B)とを微粒子状担体(C)に担持した触媒成分、および成分(B)を任意の順序で重合器に添加する方法。この場合各々の成分(B)は、同一でも異なっていてもよい。
(P7) 成分(B)を微粒子状担体(C)に担持した触媒成分、および成分(A)を任意の順序で重合器に添加する方法。
(P8) 成分(B)を微粒子状担体(C)に担持した触媒成分、成分(A)、および成分(B)を任意の順序で重合器に添加する方法。この場合各々の成分(B)は、同一でも異なっていてもよい。
(P9) 成分(A)と成分(B)とを微粒子状担体(C)に担持した触媒を、成分(B)と予め接触させた触媒成分を、重合器に添加する方法。この場合各々の成分(B)は、同一でも異なっていてもよい。
(P10) 成分(A)と成分(B)とを微粒子状担体(C)に担持した触媒を、成分(B)と予め接触させた触媒成分、および成分(B)を任意の順序で重合器に添加する方法。この場合各々の成分(B)は、同一でも異なっていてもよい。
【0093】
上記の(P1)〜(P10)の各方法においては、各触媒成分の少なくとも2つ以上は予め接触されていてもよい。
上記の微粒子状担体(C)に成分(A)および成分(B)が担持された固体触媒成分はオレフィンが予備重合されていてもよい。この予備重合された固体触媒成分は、通常固体触媒成分1g当たり、ポリオレフィンが0.1〜1000g、好ましくは0.3〜500g、特に好ましくは1〜200gの割合で予備重合されて構成されている。
【0094】
また、重合を円滑に進行させる目的で、帯電防止剤やアンチファウリング剤などを併用したり、担体上に担持しても良い。
重合は溶解重合、懸濁重合などの液相重合法または気相重合法のいずれにおいても実施でき、特に懸濁重合および気相重合法が好んで採用される。
【0095】
液相重合法において用いられる不活性炭化水素媒体として具体的には、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、ドデカン、灯油などの脂肪族炭化水素;シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロペンタンなどの脂環族炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素;エチレンクロリド、クロルベンゼン、ジクロロメタンなどのハロゲン化炭化水素またはこれらの混合物などを挙げることができ、又オレフィン自身を溶媒として用いることもできる。
【0096】
上記のようなオレフィン重合用触媒を用いて、(共)重合を行うに際して、成分(A)は、反応容積1リットル当り、通常10-12〜10-2モル、好ましくは10-10〜10-3モルになるような量で用いられる。
【0097】
必要に応じて用いられる成分(B-1)は、成分(B-1)と、成分(A)中の遷移金属原子(M)とのモル比〔(B-1)/M〕が、通常0.01〜100,000、好ましくは0.05〜50,000となるような量で用いられる。
【0098】
必要に応じて用いられる成分(B-2)は、成分(B-2)中のアルミニウム原子と、成分(A)中の遷移金属原子(M)とのモル比〔(B-2)/M〕が、通常10〜500,000、好ましくは20〜100,000となるような量で用いられる。
【0099】
必要に応じて用いられる成分(B-3)は、成分(B-3)と、成分(A)中の遷移金属原子(M)とのモル比〔(B-3)/M〕が、通常1〜10、好ましくは1〜5となるような量で用いられる。
【0100】
必要に応じて用いられる成分(D)は、成分(B)が成分(B-1)の場合には、モル比〔(D)/(B-1)〕が通常0.01〜10、好ましくは0.1〜5となるような量で、成分(B)が成分(B-2)の場合には、モル比〔(D)/(B-2)〕が通常0.001〜2、好ましくは0.005〜1となるような量で、成分(B)が成分(B-3)の場合には、モル比〔(D)/(B-3)〕が通常0.01〜10、好ましくは0.1〜5となるような量で用いられる。
【0101】
また、このようなオレフィン重合用触媒を用いた重合温度は、通常-50〜+250℃、好ましくは0〜200℃、特に好ましくは60〜170℃の範囲である。重合圧力は、通常常圧〜100kg/cm2 、好ましくは常圧〜50kg/cm2の条件下であり、重合反応は、回分式(バッチ式)、半連続式、連続式のいずれの方法においても行うことができる。重合は、通常気相または重合粒子が溶媒中に析出しているスラリー相で行う。さらに重合を反応条件の異なる2段以上に分けて行う。このうち、バッチ式で行うことが好ましい。また、スラリー重合または気相重合の場合、重合温度は好ましくは60〜90℃、より好ましくは65〜85℃である。この温度範囲で重合することで、より組成分布が狭いエチレン系重合体が得られる。得られた重合体は数十〜数千μmφ程度の粒子状である。重合器が二つ以上からなる連続式で重合した場合には、良溶媒に溶解後に貧溶媒に析出させる、特定の混練機で十分に溶融混練するなどの操作が必要となる。
【0102】
本発明に係るエチレン系重合体を例えば二段階で製造する場合、前段階で極限粘度が0.3〜1.8dl/gのエチレン単独重合体を製造し、後段階で極限粘度が3.0〜10.0dl/gの(共)重合体を製造する。この順番は逆でもよい。
【0103】
このようなオレフィン重合用触媒はエチレンと共重合させるα-オレフィン(例えば1-ヘキセン)に対しても極めて高い重合性能を有するため、所定の重合が終了した後で、高すぎるα-オレフィン含量の共重合体が生成しないような工夫が必要である。例えば、重合槽内容物を重合槽から抜き出すと同時あるいは可及的速やかに、[1]溶媒分離装置で重合体と溶媒、未反応α-オレフィンとを分離する方法、[2]該内容物に窒素などの不活性ガスを加えて溶媒、未反応α-オレフィンを強制的に系外へ排出する方法、[3]該内容物にかかる圧力を制御して溶媒、未反応α-オレフィンを強制的に系外へ排出する方法、[4]該内容物に多量の溶媒を添加して実質的に重合が起こらないと考えられる濃度まで未反応α-オレフィンを希釈する方法、[5]メタノールなどの重合用触媒を失活させる物質を添加する方法、[6]実質的に重合が起こらないと考えられる温度まで該内容物を冷却する方法などを挙げることができる。 これらの方法は単独で実施してもよいし、いくつかを組み合わせて実施してもよい。
【0104】
得られるエチレン系重合体の分子量は、重合系に水素を存在させるか、または重合温度を変化させることによって調節することができる。さらに、使用する成分(B)の違いにより調節することもできる。
【0105】
重合反応により得られた重合体粒子は、以下の方法によりペレット化してもよい。
(1)エチレン系重合体粒子および所望により添加される他の成分を、押出機、ニーダー等を用いて機械的にブレンドして、所定の大きさにカットする方法。
(2)エチレン系重合体および所望により添加される他の成分を適当な良溶媒(例えば、ヘキサン、ヘプタン、デカン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエンおよびキシレン等の炭化水素溶媒)に溶解し、次いで溶媒を除去、しかる後に押出機、ニーダー等を用いて機械的にブレンドして、所定の大きさにカットする方法。
【0106】
本発明に係わるエチレン系重合体には、本発明の目的を損なわない範囲で、耐候性安定剤、耐熱安定剤、帯電防止剤、スリップ防止剤、アンチブロッキング剤、防曇剤、滑剤、染料、核剤、可塑剤、老化防止剤、塩酸吸収剤、酸化防止剤などの添加剤やカーボンブラック、酸化チタン、チタンイエロー、フタロシアニン、イソインドリノン、キナクリドン化合物、縮合アゾ化合物、群青、コバルトブルー等の顔料が必要に応じて配合されていてもよい。
【0107】
本発明に係るエチレン系重合体は、ブロー成形体、インフレーション成形体、キャスト成形体、押出ラミ成形体、パイプや異形などの押出成形体、発泡成形体、射出成形体などに成形することができる。さらに繊維、モノフィラメント、不織布などに使用することができる。これらの成形体には、エチレン系重合体からなる部分と、他の樹脂からなる部分とを含む成形体(積層体等)が含まれる。なお、該エチレン系重合体は成形過程で架橋されたものを用いてもよい。本発明に係るエチレン系重合体を、上記の成形体の中で、ブロー成形体およびパイプや異形などの押出成形体に用いると優れた特性を与えるので好ましい。
【0108】
本発明に係るブロー成形体用のエチレン系重合体(EB)は、ブロー成形により、ボトル容器、工業薬品缶、ガソリンタンクなどに成形することができる。これらの成形体には、エチレン系重合体(EB)からなる部分と、他の樹脂からなる部分とを含む成形体(積層体等)が含まれる。また、エチレン系重合体(EB)が顔料を含む場合、その濃度は通常0.01〜3.00重量%である。
【0109】
本発明に係るパイプ用のエチレン系重合体(EP)は、パイプや射出成形により成形されるパイプ用継ぎ手などに成形することができる。これらの成形体には、エチレン(共)重合体からなる部分と、他の樹脂からなる部分とを含む成形体(積層体等)が含まれる。また、エチレン系重合体(EB)が顔料を含む場合、その濃度は通常0.01〜3.00重量%である。
【0110】
各種物性の測定方法
★測定用試料の調製
粒子状のエチレン系重合体100重量部に対して、二次抗酸化剤としてのトリ(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)フォスフェートを0.1重量部、耐熱安定剤としてのn-オクタデシル-3-(4'-ヒドロキシ-3',5'-ジ-t-ブチルフェニル)プロピネートを0.1重量部、塩酸吸収剤としてのステアリン酸カルシウムを0.05重量部配合する。しかる後に東洋精機社製ラボプラストミル(2軸バッチ式溶融混練装置)を用い、設定温度190℃で、エチレン系重合体仕込み量40g(装置バッチ容積=60cm3)、50rpm、5分間または50rpm、10分間溶融混練後、取り出し20℃設定の冷却プレスでシートとし、これを適当な大きさに切断するなどして測定用試料とした。なお、通常の押出機を用いて造粒してもよい。ただし、連続2段重合して得られた粒子状のエチレン系重合体を造粒する際には、重合粒子を十分に均一化させるためにL/Dが長い2軸押出機を用いる等の工夫が必要である。
【0111】
★エチレン含量、αオレフィン含量の測定
13C-NMRによりエチレン重合体の分子鎖中における1,000カーボン当たりのメチル分岐数を測定した。測定は日本電子(株)社製Lambda 500型核磁気共鳴装置(1H:500MHz)を用いた。積算回数1万〜3万回にて測定した。なお、化学シフト基準として主鎖メチレンのピーク(29.97ppm)を用いた。直径10mm市販のNMR測定石英ガラス管中に、サンプル250〜400mgと和光純薬工業(株)社製特級o-ジクロルベンゼン:ISOTEC社製ベンゼン-d6=5:1(体積比)の混合液2mlを入れ、120℃にて加熱、均一分散させた溶液についてNMR測定を行った。NMRスペクトルにおける各吸収の帰属は、化学の領域増刊141号 NMR−総説と実験ガイド[I]、132頁〜133頁に準じて行った。エチレン・α-オレフィン共重合体の組成は、通常10mmφの試料管中で250〜400mgの共重合体を2mlのヘキサクロロブタジエンに均一に溶解させた試料の13C-NMR スペクトルを、測定温度120℃、測定周波数125.7MHz、スペクトル幅250,000Hz 、パルス繰返し時間4.5秒、45°パルスの測定条件下で測定して決定される。
【0112】
★クロス分別(CFC)
三菱油化社製CFC T-150A型を用い以下のようにして測定した。分離カラムはShodex AT-806MSが3本であり、溶離液はo-ジクロロベンゼンであり、試料濃度は0.1〜0.3wt/vol%であり、注入量は0.5mlであり、流速は1.0ml/minである。試料は145℃、2時間加熱後、0℃まで10℃/hrで降温、更に0℃で60min保持して試料をコーティングさせた。昇温溶出カラム容量は0.86ml、配管容量は0.06mlである。検出器はFOXBORO社製赤外分光器MIRAN 1A CVF型(CaF2セル)を用い、応答時間10秒の吸光度モードの設定で、3.42μm(2924cm-1)の赤外光を検知した。溶出温度は0℃〜145℃までを35〜55フラクションに分け、特に溶出ピーク付近では1℃きざみのフラクションに分けた。温度表示は全て整数であり、例えば90℃の溶出画分とは、89℃〜90℃で溶出した成分のことを示す。0℃でもコーティングされなかった成分および各温度で溶出したフラクションの分子量を測定し、汎用較正曲線を使用して、PE換算分子量を求めた。SEC温度は145℃であり、内標注入量は0.5mlであり、注入位置は3.0mlであり、データサンプリング時間は0.50秒である。なお、狭い温度範囲で溶出する成分が多すぎて、圧力異常が生じる場合には、試料濃度を0.1wt/vol%未満とする場合もある。データ処理は、装置付属の解析プログラム「CFCデータ処理(バージョン1.50)」で実施した。なお、クロス分別(CFC)それ自身は、測定条件を厳密に同一にすれば高い分析精度でもって結果を再現する分析法であると言われているが、測定を複数回行いその平均をとることがより好ましい。
【0113】
★重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)および分子量曲線
ウォーターズ社製GPC-150Cを用い以下のようにして測定した。分離カラムは、TSKgel GMH6-HT及びTSKgel GMH6-HTLであり、カラムサイズはそれぞれ内径7.5mm、長さ600mmであり、カラム温度は140℃とし、移動相にはo-ジクロロベンゼン(和光純薬工業)および酸化防止剤としてBHT(武田薬品)0.025重量%を用い、1.0ml/minで移動させ、試料濃度は0.1重量%とし、試料注入量は500μlとし、検出器として示差屈折計を用いた。標準ポリスチレンは、分子量がMw<1,000およびMw>4×106については東ソー社製を用い、1,000≦Mw≦4×106についてはプレッシャーケミカル社製を用いた。分子量計算は、ユニバーサル校正して、ポリエチレンに換算して求めた値である。
【0114】
★分子量曲線の分離
マイクロソフト社製エクセル(登録商標)97のビジュアル・ベーシックを用いてプログラムを作成した。分離する2つの曲線は対数正規分布として、収束計算により分子量分布曲線を分子量が異なる2つの曲線に分離した。分離した2つの曲線を再合成した曲線とGPCで実測した分子量曲線とを比較して、両者がほぼ一致するように初期値を変更しながら計算を実行する。計算はLog(分子量)を0.02間隔に分割して行う。実測した分子量曲線の面積と分離した2つの曲線を再合成した曲線の面積とが1になるように強度を規格化し、各分子量における実測の強度(高さ)と再合成した曲線の強度(高さ)との差の絶対値を実測の強度(高さ)で割った値が、分子量が10,000〜1,000,000の範囲で0.4以下、好ましくは0.2以下、より好ましくは0.1以下であり、2つに分離したピークの最大位置では0.2以下、好ましくは0.1以下となるまで曲線の分離計算を繰り返す。この際、低分子量側に分離されたピークのMw/Mnと高分子量側に分離されたピークのMw/Mnとの差が1.5以下となるようにする。計算例を図28に示した。
【0115】
★平滑度係数R
東洋精機社製毛細式流れ特性試験機キャピログラフ1Bを用い、樹脂温度200℃、50mm/min(3.6cm3/min)の速度で樹脂を押し出す。長さL=60mm、直径D=1mmのノズル、またはキャピラリーダイスの代わりにチューブ形状物を押し出すことが出来る円筒ダイス(外径4mmφ、スリット=1mm、長さ10mm)を取り付ける。重合物がペレット化されていても、気相またはスラリー相中で重合された重合粒子同士が十分に混ざり合っていないと、溶融押出物表面に肌荒れが生じる。 このようにして得られたストランドまたはチューブの外側を測定面として表面粗さを測定する。測定には東京精密社製サーフコム1400Dを用いた。測定長さ=10mm、測定速度=0.06mm/秒、サンプリング時間=0.01秒、サンプリングピッチ=0.6μm、測定針の材質はダイアモンド、測定針の先端=5μmφ、計算規格JIS B0601-1982で計算した十点平均粗さをRzとする。Rzは測定長さ10mmの平均線に対して、最高から5番目までの山頂の標高の平均値と最深から5番目までの谷底の標高の平均値との差の値である。測定は場所を変えて3回行い、その平均値を分散係数Rとする。ここで、3回測定したRzについて標準偏差を求める。標準偏差の値が、3回測定したRzの平均値であるRの値の1/2よりも大きかった場合には再測定を行う。Rが20μmを越える場合には、重合粒子が十分には混ざり合っておらず、そのためにパイプやブローボトルのような厚い成形体を成形した場合にも流動不良を生じて表面肌が平滑でなかったり、重合粒子間に応力集中が発生して機械強度が十分に発現しなかったりする。一方、Rが20μm以下であれば、重合粒子の履歴は残っていないと言える。
【0116】
★10μmを超える連続した結晶構造の測定
エチレン系重合体を神藤金属工業社製油圧式プレス成形機を用いて、190℃で融解させた後、10MPaの圧でシート形状とし、20℃に設定した冷却プレスで0.5mm厚のプレスシートを作成した。その後、ミクロトームなどを用いて0.5mm(プレスシートの厚み)×10〜20μm程度に切削する。その後、切削片にグリセリンを少量塗布してプレパラートに密着させて、その上からカバーガラスを乗せ、観察用試料とした。この試料をクロスニコルの偏光板の間にセットして75倍程度および150倍程度に拡大した光学顕微鏡で観察した。図29および図30に、視野の一部にのみ結晶構造が観察される場合で10μmを超える連続した結晶構造は存在しないとするものの例と、視野全体に結晶構造が観察される場合で10μmを超える連続した結晶構造が存在するとするものの例とを示す。なお、スケールバーは全長で0.5mmである。
【0117】
★メチル分岐数の測定
13C-NMRによりポリエチレン分子鎖中における1,0000カーボン当たりのメチル分岐数を測定した。測定は日本電子(株)社製EPC500型核磁気共鳴装置(1H;500MHz)を用いた。積算回数1万〜3万回にて測定した。なお、化学シフト基準として主鎖メチレンのピーク(29.97 ppm)を用いた。直径10mmの市販のNMR測定石英ガラス管中に、試料250〜400mgと和光純薬工業(株)社製特級o-ジクロロベンゼン:ISOTEC社製ベンゼン-d6=5:1(体積比)の混合液3mlを入れ、120℃にて加熱、均一分散させて測定した。NMRスペクトルにおける各吸収の帰属は、化学の領域増刊141号 NMR−総説と実験ガイド[I]、132頁〜133頁に準じて行った。1,000カーボン当たりのメチル分岐数は、5〜45ppmの範囲に現れる吸収の積分総和に対する、メチル分岐由来のメチル基の吸収(19.9ppm)の積分強度比より算出した。炭素数1,000個当たりのメチル分岐数が0.08個未満の場合には測定限界以下で検出されない。
【0118】
★極限粘度([η])
デカリン溶媒を用いて、135℃で測定した値である。すなわち造粒ペレット約20mgをデカリン15mlに溶解し、135℃のオイルバス中で比粘度ηspを測定する。このデカリン溶液にデカリン溶媒を5ml追加して希釈後、同様にして比粘度ηspを測定する。この希釈操作をさらに2回繰り返し、濃度(C)を0に外挿した時のηsp/Cの値を極限粘度として求める(下式参照)。
【0119】
【数4】

★密度(d)
190℃に設定した神藤金属工業社製油圧式熱プレス機を用い、100kg/cm2の圧力で0.5mm厚のシートを成形し(スペーサー形状; 240×240×0.5mm厚の板に45×45×0.5mm、9個取り)、20℃に設定した別の神藤金属工業社製油圧式熱プレス機を用い、100kg/cm2の圧力で圧縮することで冷却して測定用試料を作成した。熱板は5mm厚のSUS板を用いた。このプレスシートを120℃で1時間熱処理し、1時間かけて直線的に室温まで徐冷したのち、密度勾配管で測定した。
【0120】
★デカンに対する可溶性
溶媒に140℃に制御されたデカンを用い、試料は0.5mm厚プレスシートから切り出すか、または造粒ペレットを用い、濃度を1mg/mlとする以外は、JIS K 6796に準じてゲル含量の測定を行い、ゲル分率が1wt%以下の場合、140℃デカンに対して可溶とする。
【0121】
・ プレスシートの耐環境応力亀裂試験: ESCR(hr)
190℃に設定した神藤金属工業社製油圧式熱プレス機を用い、100kg/cm2の圧力で2mm厚のシートを成形し(スペーサー形状; 240×240×2mm厚の板に80×80×2mm、4個取り)、20℃に設定した別の神藤金属工業社製油圧式熱プレス機を用い、100kg/cm2の圧力で圧縮することで冷却して測定用試料を作成した。熱板は5mm厚のSUS板を用いた。上記の80×80×2mm厚プレスシートより、13mm×38mmの試験片オーダーンベルにより打ち抜き、評価試料に供した。
【0122】
耐環境応力破壊(ESCR)性は、ASTM D1693に準じて実施した。評価条件(ベントストリップ法)の概略を以下に示した。
サンプル形状:プレス成形 C法
スペシメン 38x13mm 厚さ2mm(HDPE)
ノッチ長さ 19mm、深さ 0.35mm
試験温度:50℃ 恒温水槽 50.0±0.5℃に制御できるもの
サンプルの保持:内寸11.75mm長さ165mmのスペシメンホルダーに専用の折り曲
げ冶具を用いてセットする
界面活性剤:ノニルフェニルポリオキシエチレンエタノール(AntaroxCO-630の商
品名で市販)を水で希釈して10%濃度で使用する。
評価法:F50破壊時間(50%破壊時間)を対数確率紙を用いて求める。
【0123】
★プレスシートの曲げ弾性率
上記ESCR性測定用の80×80×2mm厚プレスシートから幅12.7mm、長さ63.5mmの試験片を打ち抜き、ASTM-D-790に準拠し、試験温度23℃、曲げ速度5.0mm/min、曲げスパン間距離32.0mmで測定した。
【0124】
★tanδ(=損失弾性率G''/貯蔵弾性率G')
tanδの詳細は、例えば高分子刊行会、「講座・レオロジー」日本レオロジー学会編20〜23ページに記載されている。測定は、レオメトリックス社製レオメーターRS-II用い、貯蔵弾性率G'(Pa)と損失弾性率G''(Pa)の角周波数(ω(rad/sec))分散を測定した。サンプルホルダーは25mmφのパラレルプレートを用い、サンプル厚みは約2mmとした。測定温度は190℃とし、0.04≦ω≦400の範囲でG'、G''を測定した。測定点はω一桁当たり5点とした。歪み量は、測定範囲でのトルクが検出可能で、かつトルクオーバーにならないよう、2〜25%の範囲で適宜選択した。
【0125】
★ボトルの座屈強度、耐環境応力破壊(ESCR)性測定およびピンチオフ性を見るためのボトルの作成プラコー社製押出ブロー成形機(機種名:3B 50-40-40)を用いて、設定温度180℃、ダイ径23mmφ、コア径21mmφ、押出量12kg/hr、金型温度25℃、型締速度1.4秒、型締め圧 5.5t、吹き込み空気圧 5kg/cm2の条件でブロー成形を行い、内容量1,000cc、目付50gの円筒瓶を得た。
【0126】
★ボトルの座屈強度
上記のように作成したボトルをインストロン製万能試験機にてクロスヘッド速度20mm/minの条件で座屈強度を測定した。
【0127】
★ボトルの耐環境応力破壊(ESCR)性
上記のように作成したボトル中に花王製キッチンハイターを100cc充填した後、口部を樹脂でシールし、65℃のオーブン中に保持して破壊時間を観察し、対数確率紙を用いてF50破壊時間を求めた。
【0128】
★ボトルのピンチオフ性(ピンチ部肉厚比の測定)
上記のようにブロー成形して得られたボトルの底部を金型の合わせ面と直角をなす方向に切った時、ボトル中心部の厚さをa、最も肉厚の部分の厚さをbとすると、ピンチ部肉厚比は(a/b)で表される。この値が大きいほどピンチ形状は良好である(図31参照)。
【0129】
★80℃の引張疲労強度
190℃に設定した神藤金属工業社製油圧式熱プレス機を用い、100kg/cm2の圧力で2mm厚、および6mm厚のシートを成形し(スペーサー形状:240×240×2mm厚の板に80×80×2mm、4個取り、および200×200×6mm厚の板に30×60×6mm、4個取り)、20℃に設定した別の神藤金属工業社製油圧式熱プレス機を用い、100kg/cm2の圧力で圧縮することで冷却して、80℃引張疲労強度測定用の試料を作成した。30×60×6mm厚プレスシートより、タテ5〜6mm×ヨコ6mm×長さ60mmの角柱に切削し、実測定用の評価試料とした。
【0130】
引張疲労強度(試験片形状)は、島津製作所製サーボパルサーEHF-ER1KN×4−40L型を用いて、JIS K-6774に準拠。(全周ノッチ式、ノッチ深さ1mm) 評価条件の概略は以下の通り; 試験片形状(5〜6×6×60mm角柱ノッチ入り)、試験波形および試験周波数(矩形波0.5Hz)、試験温度(80℃)、実応力が10〜18MPaの範囲で数点測定し、試料が破壊したときの振動回数を疲労強度とした。なお、少なくとも実応力が異なる3点以上で測定し、破断回数で3桁以上または実応力で3MPa以上の範囲で測定し、対数近似の最小二乗法で近似式を作成して、破断回数が10,000回および100,000回のときに相当する実応力を求める。
【実施例】
【0131】
以下、実施例に基づいて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
〔合成例1〕
[固体触媒成分(α)の調製]
200℃で3時間乾燥したシリカ8.5kgを33リットルのトルエンで懸濁状にした後、メチルアルミノキサン溶液(Al=1.42モル/リットル)82.7リットルを30分かけて滴下した。次いで1.5時間かけて115℃まで昇温し、その温度で4時間反応させた。その後60℃まで降温し、上澄み液をデカンテーション法によって除去した。得られた固体触媒成分をトルエンで3回洗浄した後、トルエンで再懸濁化して固体触媒成分(α)を得た(全容積150リットル)。
【0132】
[担持触媒の調製]
充分に窒素置換した100mlの二つ口フラスコ中に、トルエン20mlに懸濁させた固体触媒成分(α)をアルミニウム換算で20.39mmol入れ、その懸濁液を攪拌しながら、室温下(23℃)でジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(2,7-ジ-t-ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロライドの濃度2mmol/リットルのトルエン溶液を45.2ml(0.09mmol)加えた後、60分攪拌した。攪拌を停止後、上澄み液をデカンテーションで取り除き、n-デカン50mlを用いて洗浄を4回行い、得られた担持触媒を100mlのn-デカンにリスラリーし触媒懸濁液として、固体触媒成分(β)を得た。
【0133】
[実施例1]
[重合]
充分に窒素置換した1000mlのオートクレーブにn-ヘプタン500mlを入れ、濃度1mol/リットルのトリイソブチルアルミニウム0.25ml(0.25mmol)、合成例1で得た固体触媒成分(β)3.85ml(Zr原子として0.003mmol相当)を投入し、水素含量2.53 vol%のエチレン・水素混合ガスで8.0kg/cm2Gに加圧し、80℃で重合を開始した。重合中は8.0kg/cm2Gに保つようにエチレン・水素混合ガスを添加し、70分間重合した。重合後、脱圧し、窒素置換を行いエチレン・水素混合ガスを除去した。
【0134】
このオートクレーブに濃度1mol/リットルのトリイソブチルアルミニウム0.25ml(0.25mmol)、1-ヘキセン2.7mlを投入し、水素含量0.10 vol%のエチレン・水素混合ガスで8.0 kg/cm2Gに加圧し、80℃で再度重合を開始した。重合中は8.0 kg/cm2Gに保つようにエチレン・水素混合ガスを添加し、20.5分間重合した。重合終了後、脱圧し、メタノールを加えて触媒を失活させた後、ポリマーを濾過、洗浄し、真空下80℃で12時間乾燥した。得られたポリマーは84.50gであった。
【0135】
この重合粒子100重量部に対して、二次抗酸化剤としてのトリ(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)フォスフェートを0.1重量部、耐熱安定剤としてのn-オクタデシル-3-(4'-ヒドロキシ-3',5'-ジ-t-ブチルフェニル)プロピネートを0.1重量部、塩酸吸収剤としてのステアリン酸カルシウムを0.05重量部配合する。しかる後に東洋精機社製ラボプラストミル(2軸バッチ式溶融混練装置)を用い、設定温度190℃で、樹脂仕込み量40g(装置バッチ容積=60cm3)、50rpm、5分間溶融混練後取り出し、20℃設定の冷却プレスでシートとし、これを適当な大きさに切断するなどして測定用試料とした。結果を表1〜3および表6に示す。CFC分別の等高線を図1に、低温側から眺めた3次元チャート(鳥瞰図)を図2に、高温側から眺めた3次元チャート(鳥瞰図)を図3に、ピーク温度(T2)(℃)における溶出成分のGPC曲線を図4に、73〜76(℃)で溶出する成分のGPC曲線を図5に、95〜96(℃)で溶出する成分のGPC曲線を図6に示す。偏光顕微鏡観察において、10μmを超える連続した結晶構造は存在していない。また、この試料は比較例で用いた試料に比べ80℃の引張疲労強度が極めて高いことが分かる(図32参照)。
【0136】
[実施例2]
[重合]
充分に窒素置換した1000mlのオートクレーブにn-ヘプタン500mlを入れ、濃度1mol/リットルのトリイソブチルアルミニウム0.25ml(0.25mmol)、合成例1で得た固体触媒成分(β)3.90ml(Zr原子として0.00304mmol相当)を投入し、水素含量2.53 vol%のエチレン・水素混合ガスで8.0kg/cm2Gに加圧し、80℃で重合を開始した。重合中は8.0kg/cm2Gに保つようにエチレン・水素混合ガスを添加し、63分間重合した。重合後、脱圧し、窒素置換を行いエチレン・水素混合ガスを除去した。
【0137】
このオートクレーブに濃度1mol/リットルのトリイソブチルアルミニウム0.25ml(0.25mmol)、1-ヘキセン2.7mlを投入し、水素含量0.15 vol%のエチレン・水素混合ガスで8.0kg/cm2Gに加圧し、80℃で再度重合を開始した。重合中は8.0kg/cm2Gに保つようにエチレン・水素混合ガスを添加し、20.5分間重合した。重合終了後、脱圧し、メタノールを加えて触媒を失活させた後、ポリマーを濾過、洗浄し、真空下80℃で12時間乾燥した。得られたポリマーは84.50gであった。
【0138】
この重合粒子100重量部に対して、実施例1で用いたのと同様の二次抗酸化剤、耐熱安定剤および塩酸吸収剤を同量部配合した。しかる後に東洋精機社製ラボプラストミルを用い、実施例1で用いたのと同様の設定温度、樹脂仕込み量、回転数および溶融時間条件で溶融混練後、取り出し20℃設定の冷却プレスでシートとし、これを適当な大きさに切断するなどして測定用試料とした。また、該試料を用いてプレスシートを作成して物性を測定した。結果を表1〜3および表6に示す。偏光顕微鏡観察において、10μmを超える連続した結晶構造は存在していない。この試料は比較例で用いた試料に比べて80℃の引張疲労強度が高いことが分かる(図32参照)。
【0139】
〔合成例2〕
[担持触媒の調製]
充分に窒素置換した反応器中に、トルエンに懸濁させた合成例1にて合成した固体触媒成分(α)をアルミニウム換算で19.60molを入れ、その懸濁液を攪拌しながら、室温下(20〜25℃)でジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(2,7-ジ-t-ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロライド37.38mmol/リットル溶液を2リットル(74.76mmol)加えた後、60分攪拌した。攪拌を停止後、上澄み液をデカンテーションで取り除き、n-ヘキサン40リットルを用いて洗浄を2回行い、得られた担持触媒をn-ヘキサンにリスラリーし25リットルの触媒懸濁液として、固体触媒成分(γ)を得た。
【0140】
[固体触媒成分(γ)の予備重合による固体触媒成分(δ)の調製]
攪拌機つき反応器に窒素雰囲気下、精製n-ヘキサン15.8リットル、および上記固体触媒成分(γ)を投入した後、トリイソブチルアルミニウム5molを加え、攪拌しながら、固体成分1g当たり4時間で3gのポリエチレンを生成相当量のエチレンで予備重合を行った。重合温度は20〜25℃に保った。重合終了後、攪拌を停止後、上澄み液をデカンテーションで取り除き、n-ヘキサン35リットルを用いて洗浄を4回行い、得られた担持触媒をn-ヘキサン20リットルにて触媒懸濁液として、固体触媒成分(δ)を得た。
【0141】
[比較例1]
[重合]
第1重合槽に、ヘキサンを50リットル/hr、合成例2で得た固体触媒成分(δ)をZr換算原子に換算して0.15mmol/hr、トリエチルアルミニウムを20mmol/hr、エチレンを5.0kg/hr、水素を65N-リットル/hrで連続的に供給し、かつ重合槽内の液レベルが一定になるように重合槽内容物を連続的に抜出しながら、重合温度85℃、反応圧8.5kg/cm2G、平均滞留時間2.5hrという条件で重合を行った。 第1重合槽から連続的に抜出された内容物は、内圧0.2kg/cm2G、65℃に保たれたフラッシュドラムで未反応エチレンおよび水素が実質的に除去された。
【0142】
その後、該内容物は、ヘキサン20リットル/hr、エチレン4.0kg/hr、水素0.2N-リットル/hr、1-ヘキセン450g/hrとともに第2重合槽へ連続的に供給され、重合温度70℃、反応圧7kg/cm2G、平均滞留時間1.5hrという条件で引き続き重合を行った。
【0143】
第2重合槽においても重合槽内の液レベルが一定になるように重合槽内容物を連続的に抜出し、該内容物中のヘキサン及び未反応モノマーを溶媒分離装置で除去、乾燥し重合体を得た。なお、本比較例1においては、後述する実施例3で行ったような、該内容物へのメタノールの供給は実施しなかった。
【0144】
次に該重合粒子100重量部に対して、実施例1で用いたのと同様の二次抗酸化剤、耐熱安定剤および塩酸吸収剤を同量部配合した。しかる後にサーモプラスチックス社製20mmφ単軸押出機(L/D=28、フルフライトスクリュー、圧縮比=3、メッシュ 60/100/60)を用い、設定温度230℃で、樹脂押出量60g/min、100rpmで造粒して測定用試料とした。また、該試料を用いてプレスシートを作成して、物性を測定した。結果を表1〜3および表6に示す。偏光顕微鏡観察において、10μmを超える連続した結晶構造は存在していない。
【0145】
CFC分別の等高線を図7に、低温側から眺めた3次元チャート(鳥瞰図)を図8に、高温側から眺めた3次元チャート(鳥瞰図)を図9に、ピーク温度(T2)(℃)における溶出成分のGPC曲線を図10に、73〜76(℃)で溶出する成分のGPC曲線を図11に、95〜96(℃)で溶出する成分のGPC曲線を図12に示す。また図13は、鳥瞰図(図8又は図9)において、Log(M)をx軸、Temp(℃)をy軸、縦軸をz軸とした場合の、溶出成分のy-z面への投影図(溶出曲線)と溶出成分量の積分値(全体を100 area%)を示す。
図32に示したように、この試料の80℃の引張疲労強度はさほど高くない。
【0146】
[比較例2]
比較例1で得た重合粒子100重量部に対して、実施例1で用いたのと同様の二次抗酸化剤、耐熱安定剤および塩酸吸収剤を同量部配合した。しかる後にプラボー社製2軸押出機BT-30(30mmφ、L/D=46、同方向回転、ニーデイングゾーン4カ所)を用い、設定温度240℃で、樹脂押出量22g/min、100rpmで造粒して測定用試料とした。また、該試料を用いてプレスシートを作成して、物性を測定した。結果を表1〜3および表6に示す。偏光顕微鏡観察において、10μmを超える連続した結晶構造は存在していない。比較例1と比べると平滑度が高く、80℃引張疲労強度も若干高いが、実施例1と比較すると、80℃引張疲労強度が低い(図32参照)。
【0147】
[比較例3]
三井化学社製ハイゼックス7700M製品ペレットを測定用試料とした。コモノマーは1-ブテンである。また、該試料を用いてプレスシートを作成して、物性を測定した。結果を表1〜3および表6に示す。100倍視野で観察した偏光顕微鏡観察において、10μmを超える連続した結晶構造は存在していない。図32に示したように、この試料は80℃引張疲労測定では実施例に比べて疲労強度が低いことが分かる。
【0148】
[比較例4]
特開2002-53615号公報記載の実施例1で使用している触媒を用いて、80℃スラリー重合により[η]=0.72dl/gのエチレン単独重合体および[η]=5.2dl/g、およびブテン-1含量=1.7mol%のエチレン・ブテン-1共重合体を得た。これらを49/51(重量比)の割合で混合し、130℃パラキシレンに10g/1000mlの濃度で溶解、3時間攪拌後1時間掛けて、20℃の3000mlのアセトンに析出させ、ガラスフィルターを用いて濾過、60℃で一昼夜真空乾燥後、ラボプラストミルを用いて溶融混練して、測定用試料とした。また、該試料を用いてプレスシートを作成して、物性を測定した。結果を表1および表6に示す。
【0149】
[比較例5]
バセル社製HDPE(商品名 ホスタレン、銘柄名 CRP100)の製品ペレットを測定用試料とした。コモノマーは1-ブテン。また、該試料を用いてプレスシートを作成して、物性を測定した。結果を表1〜3および表6に示す。CFC分別による等高線を図14に、低温側から眺めた3次元チャート(鳥瞰図)を図15に、高温側から眺めた3次元チャート(鳥瞰図)を図16に、ピーク温度(T2)(℃)における溶出成分のGPC曲線を図17に、73〜76(℃)で溶出する成分のGPC曲線を図18に、95〜96(℃)で溶出する成分のGPC曲線を図19に示す。なお、ここではT1=T2である。偏光顕微鏡観察において、10μmを超える連続した結晶構造は存在していない。図32に示したように、この試料の80℃引張疲労測定試験では実施例に比べて疲労強度が低いことが分かる。
【0150】
[実施例3]
[重合]
第1重合槽に、ヘキサンを45リットル/hr、合成例2で得た固体触媒成分(δ)をZr原子に換算して0.11mmol/hr、トリエチルアルミニウムを20mmol/hr、エチレンを5.0kg/hr、水素を57N-リットル/hrで連続的に供給し、かつ重合槽内の液レベルが一定になるように重合槽内容物を連続的に抜出しながら、重合温度85℃、反応圧8.5kg/cm2G、平均滞留時間2.5hrという条件で重合を行った。
【0151】
第1重合槽から連続的に抜出された内容物は、内圧0.2kg/cm2G、65℃に保たれたフラッシュドラムで未反応エチレンおよび水素が実質的に除去された。
その後、該内容物は、ヘキサン35リットル/hr、エチレン4.0kg/hr、水素0.2N-リットル/hr、1-ヘキセン130g/hrとともに第2重合槽へ連続的に供給され、重合温度80℃、反応圧4.5kg/cm2G、平均滞留時間1.2hrという条件で引き続き重合を行った。
【0152】
第2重合槽においても重合槽内の液レベルが一定になるように重合槽内容物を連続的に抜出した。1-ヘキセンを多量に含む重合体の生成など、意図しない重合を防止するために、第2重合槽から抜き出した内容物へメタノールを2リットル/hrで供給し重合用触媒を失活させた。その後、該内容物中のヘキサン及び未反応モノマーを溶媒分離装置で除去、乾燥し重合体を得た。
【0153】
次に該重合粒子100重量部に対して、実施例1で用いたのと同様の二次抗酸化剤、耐熱安定剤および塩酸吸収剤を同量部配合した。しかる後にプラボー社製2軸押出機BT-30を用いて比較例2と同様の設定温度、樹脂押出量および回転数の条件で造粒して測定用試料とした。また、該試料を用いてプレスシートを作成して、物性を測定した。結果を表1〜3および表6に示す。
【0154】
CFC分別の等高線を図20に、低温側から眺めた3次元チャート(鳥瞰図)を図21に、高温側から眺めた3次元チャート(鳥瞰図)を図22に、ピーク温度(T2)(℃)における溶出成分のGPC曲線を図23に、73〜76(℃)で溶出する成分のGPC曲線を図24に、95〜96(℃)で溶出する成分のGPC曲線を図25に示す。また図26は、鳥瞰図(図21又は図22)において、Log(M)をx軸、Temp(℃)をy軸、縦軸をz軸とした場合の、溶出成分のy-z面への投影図(溶出曲線)と溶出成分量の積分値(全体を100 area%)を示す。図27は、この溶出成分量積分値(全体を100 area%)のみを示したものである。なお図27中には、前記の比較例1、3および5、並びに後記する実施例12および13で得られた(又は用いた)エチレン系重合体についても併記した。
【0155】
本実施例3で得られたエチレン系重合体の偏光顕微鏡観察において、10μmを超える連続した結晶構造は存在していない。図32に示したように、この試料の80℃引張疲労測定試験では比較例で用いた重合体に比べて疲労強度が高いことが分かる。
【0156】
[実施例4]
[重合]
第1重合槽に、ヘキサンを45リットル/hr、合成例2で得た固体触媒成分(δ)をZr原子に換算して0.11mmol/hr、トリエチルアルミニウムを20mmol/hr、エチレンを7.0kg/hr、水素を125N-リットル/hrで連続的に供給し、かつ重合槽内の液レベルが一定になるように重合槽内容物を連続的に抜出しながら、重合温度85℃、反応圧8.5kg/cm2G、平均滞留時間2.5hrという条件で重合を行った。
【0157】
第1重合槽から連続的に抜出された内容物は、内圧0.2kg/cm2G、65℃に保たれたフラッシュドラムで未反応エチレンおよび水素が実質的に除去される。
その後、該内容物は、ヘキサン35リットル/hr、エチレン3.0kg/hr、水素0.07N-リットル/hr、1-ヘキセン30g/hrとともに第2重合槽へ連続的に供給され、重合温度80℃、反応圧4.5kg/cm2G、平均滞留時間0.8hrという条件で引き続き重合を行った。
【0158】
第2重合槽においても重合槽内の液レベルが一定になるように重合槽内容物を連続的に抜出した。1-ヘキセンを多量に含む重合体の生成など、意図しない重合を防止するために、第2重合槽から抜き出した内容物へメタノールを2リットル/hrで供給し重合用触媒を失活させた。その後該内容物中のヘキサン及び未反応モノマーを溶媒分離装置で除去、乾燥し重合体を得た。
【0159】
次に該重合粒子100重量部に対して、実施例1で用いたのと同様の二次抗酸化剤、耐熱安定剤および塩酸吸収剤を同量部配合した。しかる後に東洋精機社製ラボプラストミルを用い、実施例1で用いたのと同様の設定温度、樹脂仕込み量、回転数および溶融時間条件で溶融混練後、取り出し20℃設定の冷却プレスでシートとし、これを適当な大きさに切断するなどして測定用試料とした。また、該試料を用いてプレスシートを作成して物性を測定した。結果を表1〜4に示す。偏光顕微鏡観察において、10μmを超える連続した結晶構造は存在していない。
【0160】
[比較例6]
三井化学社製ハイゼックス6200B製品ペレットを測定用試料とした。コモノマーは1-ブテンである。また、該試料を用いてプレスシートを作成して、物性を測定した。結果を表1〜5に示す。偏光顕微鏡観察において、10μmを超える連続した結晶構造は存在していない。実施例4と比較すると、剛性とESCR性とのバランスに劣ることが分った。
【0161】
〔合成例3〕
[担持触媒の調製]
充分に窒素置換した反応器中に、トルエンに懸濁させた合成例1にて合成した固体触媒成分(α)をアルミニウム換算で9.50molを入れ、その懸濁液を攪拌しながら、室温下(20〜25℃)でジ(p-トリル)メチレン(シクロペンタジエニル)(オクタメチルオクタヒドロジベンゾフルオレニル)ジルコニウムジクロライド3mmol/リットル溶液を12.6ミリリットル(0.038mmol)加えた後、60分攪拌した。攪拌を停止後、上澄み液をデカンテーションで取り除き、n-ペンタン50mlを用いて洗浄を4回行い、得られた担持触媒を50mlのn-ペンタンにリスラリーし触媒懸濁液として、固体触媒成分(θ)を得た。
【0162】
[固体触媒成分(θ)の予備重合による固体触媒成分(φ)の調製]
攪拌機つき反応器に窒素雰囲気下、上記固体触媒成分(θ)を投入した後、トリイソブチルアルミニウム1.92mmolを加え、攪拌しながら、固体成分1g当たり1時間で3gのポリエチレンを生成相当量のエチレンで予備重合を行った。重合温度は25℃に保った。重合終了後、攪拌を停止後、上澄み液をデカンテーションで取り除き、n-ペンタン50ミリリットルを用いて洗浄を4回行い、得られた担持触媒をn-ペンタン100ミリリットルにて触媒懸濁液として固体触媒成分(φ)を得た。
【0163】
[実施例5]
[重合]
充分に窒素置換した1000mlのオートクレーブにn-ヘプタン500mlを入れ、濃度1mol/リットルのトリイソブチルアルミニウム0.25ml(0.25mmol)、合成例3で得た固体触媒成分(φ)6.50ml(Zr原子0.0018mmol相当)を投入し、水素含量2.50 vol%のエチレン・水素混合ガスで8.0kg/cm2Gに加圧し、80℃で重合を開始した。重合中は8.0kg/cm2Gに保つようにエチレン・水素混合ガスを添加し、70.5分間重合した。重合後、脱圧し、窒素置換を行いエチレン・水素混合ガスを除去した。
【0164】
このオートクレーブに濃度1mol/リットルのトリイソブチルアルミニウム0.25ml(0.25mmol)、1-オクテン20.0mlを投入し、水素含量0.021 vol%のエチレン・水素混合ガスで8.0kg/cm2Gに加圧し、65℃で再度重合を開始した。重合中は8.0kg/cm2Gに保つようにエチレン・水素混合ガスを添加し、19.5分間重合した。重合終了後、脱圧し、メタノールを加えて触媒を失活させた後、ポリマーを濾過、洗浄し、真空下80℃で12時間乾燥した。得られたポリマーは104.9gであった。
【0165】
この重合粒子100重量部に対して、実施例1で用いたのと同様の二次抗酸化剤、耐熱安定剤および塩酸吸収剤を同量部配合した。しかる後にしかる後に東洋精機社製ラボプラストミルを用い、実施例1で用いたのと同様の設定温度、樹脂仕込み量、回転数および溶融時間条件で溶融混練後、取り出し20℃設定の冷却プレスでシートとし、これを適当な大きさに切断するなどして測定用試料とした。また、該試料を用いてプレスシートを作成して物性を測定した。結果を表1〜3および表6に示す。偏光顕微鏡観察において、10μmを超える連続した結晶構造は存在していない。
【0166】
[実施例6]
[重合]
第1重合槽に、ヘキサンを45リットル/hr、合成例2で得た固体触媒成分(δ)をZr原子に換算して0.13mmol/hr、トリエチルアルミニウムを20mmol/hr、エチレンを5.0kg/hr、水素を57N-リットル/hrで連続的に供給し、かつ重合槽内の液レベルが一定になるように重合槽内容物を連続的に抜出しながら、重合温度85℃、反応圧8.3kg/cm2G、平均滞留時間2.6hrという条件で重合を行った。 第1重合槽から連続的に抜出された内容物は、内圧0.35kg/cm2G、60℃に保たれたフラッシュドラムで未反応エチレンおよび水素が実質的に除去される。
【0167】
その後、該内容物は、ヘキサン35リットル/hr、エチレン3.5kg/hr、水素0.5N-リットル/hr、1-ヘキセン220g/hrとともに第2重合槽へ連続的に供給され、重合温度80℃、反応圧3.8kg/cm2G、平均滞留時間1.2hrという条件で引き続き重合を行った。
【0168】
第2重合槽においても重合槽内の液レベルが一定になるように重合槽内容物を連続的に抜出した。1-ヘキセンを多量に含む重合体の生成など、意図しない重合を防止するために、第2重合槽から抜き出した内容物へメタノールを2リットル/hrで供給し重合用触媒を失活させた。その後、該内容物中のヘキサン及び未反応モノマーを溶媒分離装置で除去、乾燥し重合体を得た。
【0169】
この重合粒子100重量部に対して、実施例1で用いたのと同様の二次抗酸化剤、耐熱安定剤および塩酸吸収剤を同量部配合した。しかる後にプラコー社製単軸押出機(スクリュー径65mm、L/D=28、スクリーンメッシュ40/60/300×4/60/40)を用い、設定温度200℃、樹脂押出量25kg/hrで造粒して測定用試料とした。また、該試料を用いてプレスシートを作成して、物性を測定した。結果を表1〜3および表6に示す。偏光顕微鏡観察において、10μmを超える連続した結晶構造は存在していない。図32に示したように、この試料の80℃引張疲労測定では比較例で用いた試料に比べて疲労強度が高い。
【0170】
[実施例7]
[重合]
第1重合槽に、ヘキサンを45リットル/hr、合成例2で得た固体触媒成分(δ)をZr原子に換算して0.13mmol/hr、トリエチルアルミニウムを20mmol/hr、エチレンを5.0kg/hr、水素を55N-リットル/hrで連続的に供給し、かつ重合槽内の液レベルが一定になるように重合槽内容物を連続的に抜出しながら、重合温度85℃、反応圧8.1kg/cm2G、平均滞留時間2.6hrという条件で重合を行った。
【0171】
第1重合槽から連続的に抜出された内容物は、内圧0.35kg/cm2G、60℃に保たれたフラッシュドラムで未反応エチレンおよび水素が実質的に除去される。
その後、該内容物は、ヘキサン35リットル/hr、エチレン3.0kg/hr、水素0.5N-リットル/hr、1-ヘキセン130g/hrとともに第2重合槽へ連続的に供給され、重合温度80℃、反応圧3.9kg/cm2G、平均滞留時間1.2hrという条件で引き続き重合を行った。
【0172】
第2重合槽においても重合槽内の液レベルが一定になるように重合槽内容物を連続的に抜出した。1-ヘキセンを多量に含む重合体の生成など、意図しない重合を防止するために、第2重合槽から抜き出した内容物へメタノールを2リットル/hrで供給し重合用触媒を失活させた。その後、該内容物中のヘキサン及び未反応モノマーを溶媒分離装置で除去、乾燥し重合体を得た。
【0173】
次に該重合粒子100重量部に対して、実施例1で用いたのと同様の二次抗酸化剤、耐熱安定剤および塩酸吸収剤を同量部配合した。しかる後にプラコー社製単軸押出機を用い、実施例6と同様の設定温度および樹脂押出量で造粒して測定用試料とした。また、該試料を用いてプレスシートを作成して、物性を測定した。結果を表1〜3および表6に示す。偏光顕微鏡観察において、10μmを超える連続した結晶構造は存在していない。図32に示した80℃引張疲労測定結果からも分かるように、この試料は比較例で用いた試料に比べて疲労強度が高い。
【0174】
〔合成例4〕
[固体触媒成分の調製]
合成例4に限り、シリカとして平均粒径が3μm、比表面積が800m2/gであり、細孔容積が1.0cm3/gである旭硝子株式会社製のSiO2を用いた。
【0175】
200℃で3時間乾燥したシリカ9.0kgを60.7リットルのトルエンで懸濁状にした後、メチルアルミノキサン溶液(Alとして3.03モル/リットル)61.8リットルを30分で滴下した。次いで1.5時間かけて115℃まで昇温し、同温度で4時間反応させた。その後60℃まで降温し、上澄み液をデカンテーション法によって除去した。得られた固体触媒成分をトルエンで3回洗浄した後、トルエンで再懸濁して固体触媒成分(ε)を得た(全容積150リットル)。
【0176】
[担持触媒の調製]
充分に窒素置換した反応器中に、固体触媒成分(ε)をアルミニウム換算で9.58molを入れ、その懸濁液を攪拌しながら、室温下(20〜25℃)でジ(p-トリル)メチレン(シクロペンタジエニル)(オクタメチルオクタヒドロジベンゾフルオレニル)ジルコニウムジクロライド12.42mmol/リットル溶液を2リットル(24.84mmol)加えた後、60分攪拌した。攪拌を停止後、上澄み液をデカンテーションで取り除き、n-ヘキサン40リットルを用いて洗浄を2回行い、得られた担持触媒をn-ヘキサンにリスラリーし25リットルの触媒懸濁液として、固体触媒成分(κ)を得た。
【0177】
[固体触媒成分(κ)の予備重合による固体触媒成分(λ)の調製]
攪拌機つき反応器に窒素雰囲気下、精製n-ヘキサン21.9リットル、および上記固体触媒成分(κ)を投入した後、トリイソブチルアルミニウム1.7molを加え、攪拌しながら、固体成分1g当たり2時間で3gのポリエチレンを生成相当量のエチレンで予備重合を行った。重合温度は20〜25℃に保った。重合終了後、攪拌を停止後、上澄み液をデカンテーションで取り除き、n-ヘキサン40リットルを用いて洗浄を3回行い、得られた担持触媒をn-ヘキサン20リットルにて触媒懸濁液として、固体触媒成分(λ)を得た。
【0178】
[実施例8]
[重合]
第1重合槽に、ヘキサンを45リットル/hr、合成例4で得た固体触媒成分(λ)をZr原子に換算して0.11mmol/hr、トリエチルアルミニウムを15mmol/hr、エチレンを7.0kg/hr、水素を105N-リットル/hrで連続的に供給し、かつ重合槽内の液レベルが一定になるように重合槽内容物を連続的に抜出しながら、重合温度85℃、反応圧7.9kg/cm2G、平均滞留時間2.5hrという条件で重合を行った。
【0179】
第1重合槽から連続的に抜出された内容物は、内圧0.30kg/cm2G、60℃に保たれたフラッシュドラムで未反応エチレンおよび水素が実質的に除去される。
その後、該内容物は、ヘキサン35リットル/hr、エチレン4.0kg/hr、水素2.0N-リットル/hr、1-ヘキセン80g/hrとともに第2重合槽へ連続的に供給され、重合温度80℃、反応圧2.5kg/cm2G、平均滞留時間1.1hrという条件で引き続き重合を行った。
【0180】
第2重合槽においても重合槽内の液レベルが一定になるように重合槽内容物を連続的に抜出した。1-ヘキセンを多量に含む重合体の生成など、意図しない重合を防止するために、第2重合槽から抜き出した内容物へメタノールを2リットル/hrで供給し重合用触媒を失活させた。その後、該内容物中のヘキサン及び未反応モノマーを溶媒分離装置で除去、乾燥し重合体を得た。
【0181】
次に該重合粒子100重量部に対して、実施例1で用いたのと同様の二次抗酸化剤、耐熱安定剤および塩酸吸収剤を同量部配合した。しかる後にプラコー社製単軸押出機を用い、実施例6と同様の設定温度および樹脂押出量で造粒して測定用試料とした。また、該試料を用いてプレスシートを作成して、物性を測定した。結果を表1〜3および表6に示す。偏光顕微鏡観察において、10μmを超える連続した結晶構造は存在していない。図32に示した80℃引張疲労測定結果から分かるように、この試料は比較例の試料に比べて疲労強度が高い。
【0182】
〔合成例5〕
[担持触媒の調製]
充分に窒素置換した反応器中に、トルエンに懸濁させた合成例1にて合成した固体触媒成分(α)をアルミニウム換算で19.60mollを入れ、その懸濁液を攪拌しながら、室温下(20〜25℃)でジ(p-トリル)メチレン(シクロペンタジエニル)(オクタメチルオクタヒドロジベンゾフルオレニル)ジルコニウムジクロライド31.06mmol/リットル溶液を2リットル(62.12mmol)加えた後、60分攪拌した。攪拌を停止後、上澄み液をデカンテーションで取り除き、n-ヘキサン40リットルを用いて洗浄を2回行い、得られた担持触媒をn-ヘキサンにリスラリーし25リットルの触媒懸濁液として、固体触媒成分(τ)を得た。
【0183】
[固体触媒成分(τ)の予備重合による固体触媒成分(ω)の調製]
攪拌機つき反応器に窒素雰囲気下、精製n-ヘキサン15.8リットル、および上記固体触媒成分(τ)を投入した後、トリイソブチルアルミニウム5molを加え、攪拌しながら、固体成分1g当たり4時間で3gのポリエチレンを生成相当量のエチレンで予備重合を行った。重合温度は20〜25℃に保った。重合終了後、攪拌を停止後、上澄み液をデカンテーションで取り除き、n-ヘキサン35リットルを用いて洗浄を4回行い、得られた担持触媒をn-ヘキサン20リットルにて触媒懸濁液として、固体触媒成分(ω)を得た。
【0184】
[実施例9]
[重合]
第1重合槽に、ヘキサンを45リットル/hr、合成例5で得た固体触媒成分(ω)をZr原子に換算して0.14mmol/hr、トリエチルアルミニウムを20mmol/hr、エチレンを7.0kg/hr、水素を120N-リットル/hrで連続的に供給し、かつ重合槽内の液レベルが一定になるように重合槽内容物を連続的に抜出しながら、重合温度85℃、反応圧7.9kg/cm2G、平均滞留時間2.6hrという条件で重合を行った。
【0185】
第1重合槽から連続的に抜出された内容物は、内圧0.30kg/cm2G、60℃に保たれたフラッシュドラムで未反応エチレンおよび水素が実質的に除去される。
その後、該内容物は、ヘキサン35リットル/hr、エチレン7.0kg/hr、水素3.0N-リットル/hr、1-ヘキセン100g/hrとともに第2重合槽へ連続的に供給され、重合温度80℃、反応圧3.8kg/cm2G、平均滞留時間1.1hrという条件で引き続き重合を行った。
【0186】
第2重合槽においても重合槽内の液レベルが一定になるように重合槽内容物を連続的に抜出した。1-ヘキセンを多量に含む重合体の生成など、意図しない重合を防止するために、第2重合槽から抜き出した内容物へメタノールを2リットル/hrで供給し重合用触媒を失活させた。その後、該内容物中のヘキサン及び未反応モノマーを溶媒分離装置で除去、乾燥し重合体を得た。
【0187】
次に該重合粒子100重量部に対して、実施例1で用いたのと同様の二次抗酸化剤、耐熱安定剤および塩酸吸収剤を同量部配合した。しかる後にプラコー社製単軸押出機を用い、実施例6と同様の設定温度および樹脂押出量で造粒して測定用試料とした。また、該試料を用いてプレスシートを作成して、物性を測定した。結果を表1〜3および表6に示す。偏光顕微鏡観察において、10μmを超える連続した結晶構造は存在していない。図32に示した80℃引張疲労測定結果から分かるように、この試料は比較例の試料に比べて疲労強度が高い。
【0188】
[実施例10]
[重合]
充分に窒素置換した1000mlのオートクレーブにn-ヘプタン500mlを入れ、濃度1mol/リットルのトリイソブチルアルミニウム0.25ml(0.25mmol)、合成例1で得た固体触媒成分(β)4.87ml(Zr原子0.0038mmol相当)を投入し、水素含量2.50 vol%のエチレン・水素混合ガスで8.0kg/cm2Gに加圧し、80℃で重合を開始した。重合中は8.0kg/cm2Gに保つようにエチレン・水素混合ガスを添加し、54.5分間重合した。重合後、脱圧し、窒素置換を行いエチレン・水素混合ガスを除去した。
【0189】
このオートクレーブに濃度1mol/リットルのトリイソブチルアルミニウム0.25ml(0.25mmol)、1-ヘキセン1.0mlを投入し、水素含量0.10 vol%のエチレン・水素混合ガスで8.0kg/cm2Gに加圧し、80℃で再度重合を開始した。重合中は8.0kg/cm2Gに保つようにエチレン・水素混合ガスを添加し、15.75分間重合した。重合終了後、脱圧し、メタノールを加えて触媒を失活させた後、ポリマーを濾過、洗浄し、真空下80℃で12時間乾燥した。得られたポリマーは102.50gであった。
【0190】
この重合粒子100重量部に対して、実施例1で用いたのと同様の二次抗酸化剤、耐熱安定剤および塩酸吸収剤を同量部配合した。しかる後に東洋精機社製ラボプラストミルを用い、実施例1で用いたのと同様の設定温度、樹脂仕込み量、回転数および溶融時間条件で溶融混練後、取り出し20℃設定の冷却プレスでシートとし、これを適当な大きさに切断するなどして測定用試料とした。また、該試料を用いてプレスシートを作成して物性を測定した。結果を表1〜4に示す。偏光顕微鏡観察において、10μmを超える連続した結晶構造は存在していない。比較例に比べて剛性とESCR性に優れる。
【0191】
[実施例11]
[重合]
第1重合槽に、ヘキサンを45リットル/hr、合成例2で得た固体触媒成分(δ)をZr原子に換算して0.11mmol/hr、トリエチルアルミニウムを20mmol/hr、エチレンを6.0kg/hr、水素を100N-リットル/hrで連続的に供給し、かつ重合槽内の液レベルが一定になるように重合槽内容物を連続的に抜出しながら、重合温度85℃、反応圧8.5kg/cm2G、平均滞留時間2.5hrという条件で重合を行った。
【0192】
第1重合槽から連続的に抜出された内容物は、内圧0.2kg/cm2G、65℃に保たれたフラッシュドラムで未反応エチレンおよび水素が実質的に除去される。
その後、該内容物は、ヘキサン35リットル/hr、エチレン5.0kg/hr、水素1.5N-リットル/hr、1-ヘキセン55g/hrとともに第2重合槽へ連続的に供給され、重合温度70℃、反応圧6.5kg/cm2G、平均滞留時間1.2hrという条件で引き続き重合を行った。
【0193】
第2重合槽においても重合槽内の液レベルが一定になるように重合槽内容物を連続的に抜出した。1-ヘキセンを多量に含む重合体の生成など、意図しない重合を防止するために、第2重合槽から抜き出した内容物へメタノールを2リットル/hrで供給し重合用触媒を失活させた。その後、該内容物中のヘキサン及び未反応モノマーを溶媒分離装置で除去、乾燥し重合体を得た。
【0194】
次に重合粒子100重量部に対して、実施例1で用いたのと同様の二次抗酸化剤、耐熱安定剤および塩酸吸収剤を同量部配合した。しかる後にプラボー社製2軸押出機を用い、設定温度190℃で、樹脂押出量20g/min、100rpmで造粒して、測定用試料とした。また、該試料を用いてプレスシートを作成して、物性を測定した。結果を表1〜5に示す。偏光顕微鏡観察において、10μmを超える連続した結晶構造は存在していない。比較例に比べて剛性とESCR性に優れる。またボトル成形体の物性も比較例に比べて優れることが分った。
【0195】
[実施例12]
[重合]
第1重合槽に、ヘキサンを45リットル/hr、合成例5で得た固体触媒成分(ω)をZr原子に換算して0.08mmol/hr、トリエチルアルミニウムを20mmol/hr、エチレンを7.0kg/hr、水素を52N-リットル/hrで連続的に供給し、かつ重合槽内の液レベルが一定になるように重合槽内容物を連続的に抜出しながら、重合温度85℃、反応圧7.3kg/cm2G、平均滞留時間2.6hrという条件で重合を行った。
【0196】
第1重合槽から連続的に抜出された内容物は、内圧0.30kg/cm2G、60℃に保たれたフラッシュドラムで未反応エチレンおよび水素が実質的に除去された。
その後、該内容物は、ヘキサン43リットル/hr、エチレン3.8kg/hr、水素14.0N-リットル/hr、1-ヘキセン20g/hrとともに第2重合槽へ連続的に供給され、重合温度75℃、反応圧4.2kg/cm2G、平均滞留時間1.0hrという条件で引き続き重合を行った。
【0197】
第2重合槽においても重合槽内の液レベルが一定になるように重合槽内容物を連続的に抜出した。1-ヘキセンを多量に含む重合体の生成など、意図しない重合を防止するために、第2重合槽から抜き出した内容物へメタノールを2リットル/hrで供給し重合用触媒を失活させた。その後、該内容物中のヘキサン及び未反応モノマーを溶媒分離装置で除去、乾燥し重合体を得た。
【0198】
該重合粒子100重量部に対して、二次抗酸化剤としてのトリ(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)フォスフェートを0.20重量部、耐熱安定剤としてのn-オクタデシル-3-(4'-ヒドロキシ-3',5'-ジ-t-ブチルフェニル)プロピネートを0.20重量部、塩酸吸収剤としてのステアリン酸カルシウムを0.15重量部配合する。しかる後にプラコー社製単軸押出機を用い、実施例6と同様の設定温度および樹脂押出量で造粒して測定用試料とした。該試料を用いてプレスシートを作成して、物性を測定した。結果を表1〜4に示す。また、該試料を用いてボトル成形をして、物性を測定した結果を表5に示す。偏光顕微鏡観察において、10μmを超える連続した結晶構造は存在していない。ボトル成形体は比較例と比べて剛性に優れ、他の実施例に比べて成形性に優れる。
【0199】
[実施例13]
[重合]
第1重合槽に、ヘキサンを45リットル/hr、合成例5で得た固体触媒成分(ω)をZr原子に換算して0.13mmol/hr、トリエチルアルミニウムを20mmol/hr、エチレンを5.0kg/hr、水素を67N-リットル/hrで連続的に供給し、かつ重合槽内の液レベルが一定になるように重合槽内容物を連続的に抜出しながら、重合温度85℃、反応圧7.4kg/cm2G、平均滞留時間2.7hrという条件で重合を行った。
【0200】
第1重合槽から連続的に抜出された内容物は、内圧0.30kg/cm2G、60℃に保たれたフラッシュドラムで未反応エチレンおよび水素が実質的に除去される。
その後、該内容物は、ヘキサン43リットル/hr、エチレン3.9kg/hr、水素10.0N-リットル/hr、1-ヘキセン110g/hrとともに第2重合槽へ連続的に供給され、重合温度75℃、反応圧4.5kg/cm2G、平均滞留時間1.1hrという条件で引き続き重合を行った。
【0201】
第2重合槽においても重合槽内の液レベルが一定になるように重合槽内容物を連続的に抜出した。1-ヘキセンを多量に含む重合体の生成など、意図しない重合を防止するために、第2重合槽から抜き出した内容物へメタノールを2リットル/hrで供給し重合用触媒を失活させた。その後、該内容物中のヘキサン及び未反応モノマーを溶媒分離装置で除去、乾燥し重合体を得た。
【0202】
次に該重合粒子100重量部に対して、実施例1で用いたのと同様の二次抗酸化剤、耐熱安定剤および塩酸吸収剤を同量部配合した。しかる後にプラコー社製単軸押出機を用い、実施例6と同様の設定温度および樹脂押出量で造粒して測定用試料とした。また、該試料を用いてプレスシートを作成して、物性を測定した。結果を表1〜3および表6に示す。偏光顕微鏡観察において、10μmを超える連続した結晶構造は存在していない。図32に示した80℃引張疲労測定結果から分かるように、この試料は比較例に比べて疲労強度が高い。
【0203】
[実施例14]
第1重合槽に、ヘキサンを45リットル/hr、合成例2で得た固体触媒成分(δ)をZr原子に換算して0.24mmol/hr、トリエチルアルミニウムを20mmol/hr、エチレンを7.0kg/hr、水素を125N-リットル/hrで連続的に供給し、かつ重合槽内の液レベルが一定になるように重合槽内容物を連続的に抜出しながら、重合温度85℃、反応圧8.5kg/cm2G、平均滞留時間2.5hrという条件で重合を行った。
【0204】
第1重合槽から連続的に抜出された内容物は、内圧0.2kg/cm2G、65℃に保たれたフラッシュドラムで未反応エチレンおよび水素が実質的に除去される。
その後、該内容物は、ヘキサン35リットル/hr、エチレン4.0kg/hr、水素1.0N-リットル/hr、1-ヘキセン50g/hrとともに第2重合槽へ連続的に供給され、重合温度80℃、反応圧2.8kg/cm2G、平均滞留時間1.2hrという条件で引き続き重合を行った。
【0205】
第2重合槽においても重合槽内の液レベルが一定になるように重合槽内容物を連続的に抜出した。1-ヘキセンを多量に含む重合体の生成など、意図しない重合を防止するために、第2重合槽から抜き出した内容物へメタノールを2リットル/hrで供給し重合用触媒を失活させた。その後該内容物中のヘキサン及び未反応モノマーを溶媒分離装置で除去、乾燥し重合体を得た。
【0206】
次に粒子状のエチレン系重合体100重量部に対して、実施例1で用いたのと同様の二次抗酸化剤、耐熱安定剤および塩酸吸収剤を同量部配合した。しかる後にプラボー社製2軸押出機BT-30を用い、実施例11と同様の設定温度、樹脂押出量および回転数の条件で造粒して測定用試料とした。100倍視野で観察した偏光顕微鏡観察において、10μmを超える連続した結晶構造は存在していない。該試料を用いてプレスシートを作成して、物性を測定した。結果を表1〜4に示す。また、該試料を用いてボトル成形をして、物性を測定した結果を表5に示す。
【0207】
[実施例15]
実施例4で得た重合粒子100重量部に対して、実施例1で用いたのと同様の二次抗酸化剤、耐熱安定剤および塩酸吸収剤を同量部配合した。しかる後にプラボー社製2軸押出機BT-30を用い、実施例11と同様の設定温度、樹脂押出量および回転数の条件で造粒して測定用試料とした。また、該試料を用いてプレスシートを作成して、物性を測定した。結果を表1〜4に示す。偏光顕微鏡観察において、10μmを超える連続した結晶構造は存在していない。100倍視野で観察した偏光顕微鏡観察において、10μmを超える連続した結晶構造は存在していない。該試料を用いてプレスシートを作成して、物性を測定した。結果を表1〜4に示す。また、該試料を用いてボトル成形をして、物性を測定した結果を表5に示す。
【0208】
[実施例16]
充分に窒素置換した1000mlのオートクレーブにn-ヘプタン500mlを入れ、濃度1mol/リットルのトリイソブチルアルミニウム0.25ml(0.25mmol)、合成例1で得た固体触媒成分(β) 6.70ml(Zr原子0.0038mmolに相当)を投入し、水素含量2.50 vol%のエチレン・水素混合ガスで8.0kg/cm2Gに加圧し、80℃で重合を開始した。重合中は8.0kg/cm2Gに保つようにエチレン・水素混合ガスを添加し、65分間重合した。重合後、脱圧し、窒素置換を行いエチレン・水素混合ガスを除去した。
【0209】
このオートクレーブに濃度1mol/リットルのトリイソブチルアルミニウム0.25ml(0.25mmol)、1-ヘキセン1.5mlを投入し、水素含量0.10 vol%のエチレン・水素混合ガスで8.0kg/cm2Gに加圧し、80℃で再度重合を開始した。重合中は8.0kg/cm2Gに保つようにエチレン・水素混合ガスを添加し、10.5分間重合した。重合終了後、脱圧し、メタノールを加えて触媒を失活させた後、ポリマーを濾過、洗浄し、真空下80℃で12時間乾燥した。得られたポリマーは97.80gであった。
【0210】
この重合粒子100重量部に対して、実施例1で用いたのと同様の二次抗酸化剤、耐熱安定剤および塩酸吸収剤を同量部配合した。しかる後に東洋精機社製ラボプラストミルを用い、実施例1で用いたのと同様の設定温度、樹脂仕込み量、回転数および溶融時間条件で溶融混練後、取り出し20℃設定の冷却プレスでシートとし、これを適当な大きさに切断するなどして測定用試料とした。偏光顕微鏡観察において、10μmを超える連続した結晶構造は存在していない。140℃デカンに可溶である。また、該試料を用いてプレスシートを作成して、物性を測定した。結果を表1〜4に示す。比較例に比べて剛性とESCR性に優れる。
【0211】
[実施例17]
実施例14で得た重合粒子100重量部に対して、実施例1で用いたのと同様の二次抗酸化剤、耐熱安定剤および塩酸吸収剤を同量部配合した。しかる後に東洋精機社製ラボプラストミルを用い、実施例1で用いたのと同様の設定温度、樹脂仕込み量、回転数および溶融時間条件で溶融混練後、取り出し20℃設定の冷却プレスでシートとし、これを適当な大きさに切断するなどして測定用試料とした。偏光顕微鏡観察において、10μmを超える連続した結晶構造は存在していない。140℃デカンに可溶である。また、該試料を用いてプレスシートを作成して、物性を測定した。結果を表1〜4に示す。比較例に比べて剛性、ESCR性に優れる。
【0212】
[比較例7]
三井化学社製ハイゼックス3000B製品ペレットを用いてプレスシートを作成して、物性を測定した。結果を表1〜4に示す。実施例に比べて剛性に劣り、ESCR性もさほど良くない。
【0213】
[実施例18]
充分に窒素置換した1000mlのオートクレーブにn-ヘプタン500mlを入れ、濃度1mol/リットルのトリイソブチルアルミニウム0.25(0.25mmol)、合成例1で得た固体触媒成分(β) 8.00mlの(Zr原子0.0045mmol相当)を投入し、水素含量2.53 vol%のエチレン・水素混合ガスで8.0kg/cm2Gに加圧し、80℃で重合を開始した。重合中は8.0kg/cm2Gに保つようにエチレン・水素混合ガスを添加し、80分間重合した。重合後、脱圧し、窒素置換を行いエチレン・水素混合ガスを除去した。
【0214】
このオートクレーブに濃度1mol/リットルのトリイソブチルアルミニウム0.25ml(0.25mmol)、1-ヘキセン0.4mlを投入し、水素含量0.10 vol%のエチレン・水素混合ガスで8.0kg/cm2Gに加圧し、80℃で再度重合を開始した。重合中は8.0kg/cm2Gに保つようにエチレン・水素混合ガスを添加し、12.75分間重合した。重合終了後、脱圧し、メタノールを加えて触媒を失活させた後、ポリマーを濾過、洗浄し、真空下80℃で12時間乾燥した。得られたポリマーは110.70gであった。
【0215】
次に該重合粒子100重量部に対して、実施例1で用いたのと同様の二次抗酸化剤、耐熱安定剤および塩酸吸収剤を同量部配合した。しかる後に東洋精機社製ラボプラストミルを用い、実施例1で用いたのと同様の設定温度、樹脂仕込み量、回転数および溶融時間条件で溶融混練後、取り出し20℃設定の冷却プレスでシートとし、これを適当な大きさに切断するなどして測定用試料とした。偏光顕微鏡観察において、10μmを超える連続した結晶構造は存在していない。140℃デカンに可溶である。また、該試料を用いてプレスシートを作成して、物性を測定した。結果を表1〜4に示す。比較例に比べて、剛性に優れる。
【0216】
[実施例19]
実施例4で得た重合粒子100重量部に対して、実施例1で用いたのと同様の二次抗酸化剤、耐熱安定剤および塩酸吸収剤を同量部配合した。しかる後にサーモプラスチックス社製20mmφ単軸押出機を用い、設定温度190℃で、樹脂押出量60g/min、100rpmで造粒して測定用試料とした。偏光顕微鏡観察において、10μmを超える連続した結晶構造は存在していない。140℃デカンに可溶である。また、該試料を用いてプレスシートを作成して、物性を測定した。結果を表1〜4に示す。実施例4に比べて平滑性が低いため、ESCR性も低い。
【0217】
[比較例8]
日本ポリエチレン社製ノバテックHD HB332R製品ペレットを用いてプレスシートを作成して、物性を測定した。結果を表1〜4に示す。実施例に比べて、剛性とESCR性に劣る。
【0218】
[比較例9]
実施例3で得た重合粒子100重量部に対して、実施例1で用いたのと同様の二次抗酸化剤、耐熱安定剤および塩酸吸収剤を同量部配合した。しかる後にサーモプラスチックス社製20mmφ単軸押出機を用い、比較例1と同様の設定温度、樹脂押出量および回転数の条件で造粒して測定用試料とした。偏光顕微鏡観察において、10μmを超える連続した結晶構造は存在していない。140℃デカンに可溶である。また、該試料を用いてプレスシートを作成して、物性を測定した。結果を表1〜3および表6に示す。実施例3に比べて平滑性が低く、図32に示した80℃引張疲労測定結果からは比較例に比べて疲労強度が低いことが分かる。なお、引張疲労測定後の試料の破断面はほとんど伸びずに破断した。
【0219】
〔合成例6〕
[固体触媒成分(β)の予備重合による固体触媒成分(π)の調製]
200mlの攪拌機つき三口ガラス反応器に窒素雰囲気下精製ヘキサン28ml、トリイソブチルアルミニウム2ml(2mmol)、および上記合成例1にて合成した固体触媒成分(β)(Zr原子0.03mmol相当)を投入した後、固体成分1g当たり1時間で3gのポリエチレンを生成相当量のエチレンで予備重合を行った。重合温度は20℃に保った。重合終了後、反応器を窒素で置換し、充分に窒素置換されたガラス製フィルターで窒素雰囲気下予備重合触媒をろ過し、精製ヘキサンで3回洗浄後、約100mlの精製デカンで懸濁して触媒瓶に全液移液して固体触媒成分(π)を得た。
【0220】
[比較例10]
[重合]
充分に窒素置換した1000mlのオートクレーブにn-ヘプタン100mlを入れ、濃度1mol/リットルのトリイソブチルアルミニウム0.5ml(0.5mmol)、合成例6で得た固体触媒成分(π) 3.5ml(Zr原子0.003mmol相当)、第一工業製薬(株)製エパン720(100mg)を、トルエン25mlとヘキサン25mlを加えて調整した2mg/ml溶液を1ml(第一工業製薬(株)製エパン720; 2mg相当)を投入し、水素で1.6kg/cm2Gに加圧し次いでエチレンで8.0kg/cm2Gに加圧して80℃で重合を開始した。重合中は8.0kg/cm2Gに保つようにエチレンを添加し、40分間重合した。重合後、脱圧し窒素置換を行い、エチレン、水素を除去した。
【0221】
このオートクレーブに濃度1.0mol/リットルのトリイソブチルアルミニウム0.25ml(0.25mmol)、1-ヘキセン1.5mlを投入し,水素含量0.0990 vol%のエチレン・水素混合ガスで8.0kg/cm2Gに加圧し、80℃で再度重合を開始した。重合中は8.0kg/cm2Gに保つようにエチレン・混合ガスを添加し、50分間重合した。重合終了後,脱暑し、メタノールを加えて触媒を失活させた後、ポリマーを濾過,洗浄し,真空下80℃で12時間乾燥した。得られたポリマーは150.2gであった。
【0222】
この重合粒子100重量部に対して、実施例1で用いたのと同様の二次抗酸化剤、耐熱安定剤および塩酸吸収剤を同量部配合した。しかる後に東洋精機社製ラボプラストミルを用い、実施例1で用いたのと同様の設定温度、樹脂仕込み量、回転数および溶融時間条件で溶融混練後、取り出し20℃設定の冷却プレスでシートとし、これを適当な大きさに切断するなどして測定用試料とした。偏光顕微鏡観察において、10μmを超える連続した結晶構造は存在していない。140℃デカンに可溶である。また、該試料を用いてプレスシートを作成して、物性を測定した。結果を表1〜3および表6に示す。図32に示した80℃引張疲労測定結果から分かるように、この重合体は実施例記載の重合体に比べて疲労強度が低い。なお、引張疲労測定後の試料の破断面はほとんど伸びずに破断した。
【0223】
[実施例20]
[重合]
充分に窒素置換した1000mlのオートクレーブにn-ヘプタン500mlを入れ、濃度1mol/リットルのトリイソブチルアルミニウム0.5ml(0.5mmol)、合成例6で得た固体触媒成分(π) 5.0ml(Zr原子0.00214mmol相当)、比較例10で使用した第一工業製薬(株)製エパン720(100mg)を、トルエン25mlとヘキサン25mlを加えて調整した2mg/ml溶液を1ml(2mg相当)を投入し、水素で1.6kg/cm2Gに加圧し次いでエチレンで8.0kg/cm2Gに加圧して80℃で重合を開始した。重合中は8.0kg/cm2Gに保つようにエチレンを添加し、50分間重合した。重合後、脱圧し窒素置換を行い、エチレン、水素を除去した。
【0224】
このオートクレーブに濃度1.0mol/リットルのトリイソブチルアルミニウム0.25ml(0.25mmol)、1-ヘキセン2.7mlを投入し,水素含量0.0994 vol%のエチレン・水素混合ガスで8.0kg/cm2Gに加圧し、80℃で再度重合を開始した。重合中は8.0kg/cm2Gに保つようにエチレン・混合ガスを添加し、70分間重合した。重合終了後,脱暑し、メタノールを加えて触媒を失活させた後、ポリマーを濾過,洗浄し,真空下80℃で12時間乾燥した。得られたポリマーは90.2gであった。
【0225】
この重合粒子100重量部に対して、実施例1で用いたのと同様の二次抗酸化剤、耐熱安定剤および塩酸吸収剤を同量部配合した。しかる後に東洋精機社製ラボプラストミルを用い、実施例1で用いたのと同様の設定温度、樹脂仕込み量、回転数および溶融時間条件で溶融混練後、取り出し20℃設定の冷却プレスでシートとし、これを適当な大きさに切断するなどして測定用試料とした。偏光顕微鏡観察において、10μmを超える連続した結晶構造は存在していない。140℃デカンに可溶である。また、該試料を用いてプレスシートを作成して、物性を測定した。結果を表1〜3および表6に示す。図32に示した80℃引張疲労測定から明らかなように、この試料は比較例記載の試料に比べて疲労強度が高い。なお、引張疲労測定後の試料の破断面はほとんど伸びずに破断した。
【0226】
[実施例21]
充分に乾燥し、窒素置換された重合器にヘキサン1200リットルを入れ、トリイソブチルアルミニウムを650mmol、第一工業製薬(株)製エパン720を1.3g導入した後、重合器内の窒素を除去するためにエチレンにて加圧、脱圧を3回繰り返しおこなった。重合器内の温度を70℃になるまで加温したところで、エチレンにて0.50MPaまで加圧し、さらに水素にて気相部の水素濃度が29mol%になるように加圧した。合成例5で得た固体触媒成分(ω)をZr原子に換算して1.6mmolを投入すると同時に、エチレンを30Nm3/hr、水素を0.2Nm3/hrの速度でフィードし、80℃で重合を開始した。エチレンを連続的に供給し始めてからのエチレン供給積算量が52Nm3に達した後、エチレン、水素の供給を停止するとともに、脱圧し、窒素にてエチレン、水素を除去しながら系内の温度が55℃まで降温した。系内のエチレン、水素を除去したのち、再び系内を70℃まで加温し、1-ヘキセンを1.95リットルを加えた後、エチレンにて0.35MPaまで加圧した。エチレンを24Nm3/hr、水素を1.0N-リットル/hrの速度でフィードし、80℃で重合を再開した。エチレンを連続的に供給し始めてからのエチレン供給積算量が28Nm3に達した後、エチレン、水素の供給を停止するとともに、速やかに別の容器に重合スラリーを移送して、脱圧し、窒素にてエチレン、水素を除去しながらメタノールを20N-リットル/hrにて1時間フィードすることで触媒を失活させた。このとき、系内の温度は60℃に保った。
【0227】
ポリマーは濾過によりヘキサンと分離し、過剰のヘキサンにて洗浄した後、3時間乾燥した。得られたポリマーは102.5kgであった。
次に該重合粒子100重量部に対して、実施例1で用いたのと同様の二次抗酸化剤、耐熱安定剤および塩酸吸収剤を同量部配合した。しかる後にプラコー社製単軸押出機(スクリュー径65mm、L/D=28、スクリーンメッシュ♯300×4枚)を用い、設定温度200℃、樹脂押出量25kg/hrで造粒して測定用試料とした。偏光顕微鏡観察において、10μmを超える連続した結晶構造は存在していない。140℃デカンに可溶である。また、該試料を用いてプレスシートを作成して、物性を測定した。結果を表1〜3に示す。
【0228】
[実施例22]
充分に乾燥し、窒素置換された重合器にヘキサン1200リットルを入れ、トリイソブチルアルミニウムを650mmol、第一工業製薬(株)製エパン720を1.3g導入した後、重合器内の窒素を除去するためにエチレンにて加圧、脱圧を3回繰り返しおこなった。重合器内の温度を70℃になるまで加温したところで、エチレンにて0.50MPaまで加圧し、さらに水素にて気相部の水素濃度が28mol%になるように加圧した。合成例5で得た固体触媒成分(ω)をZr原子に換算して1.6mmolを投入すると同時に、エチレンを32Nm3/hr、水素を0.2Nm3/hrの速度でフィードし、80℃で重合を開始した。エチレンを連続的に供給し始めてからのエチレン供給積算量が52Nm3に達した後、エチレン、水素の供給を停止するとともに、脱圧し、窒素にてエチレン、水素を除去しながら系内の温度が55℃まで降温した。系内のエチレン、水素を除去したのち、再び系内を70℃まで加温し、1-ヘキセンを1.95リットルを加えた後、エチレンにて0.35MPaまで加圧した。エチレンを26Nm3/hr、水素を1.1N-リットル/hrの速度でフィードし、80℃で重合を再開した。エチレンを連続的に供給し始めてからのエチレン供給積算量が23Nm3に達した後、エチレン、水素の供給を停止するとともに、速やかに別の容器に重合スラリーを移送して、脱圧し、窒素にてエチレン、水素を除去しながらメタノールを20N-リットル/hrにて1時間フィードすることで触媒を失活させた。このとき、系内の温度は60℃に保った。
【0229】
ポリマーは濾過によりヘキサンと分離し、過剰のヘキサンにて洗浄した後、3時間乾燥した。得られたポリマーは99.5kgであった。
次に該重合粒子100重量部に対して、実施例1で用いたのと同様の二次抗酸化剤、耐熱安定剤および塩酸吸収剤を同量部配合した。しかる後にプラコー社製単軸押出機(スクリュー径65mm、L/D=28、スクリーンメッシュ♯300×4枚)を用い、設定温度200℃、樹脂押出量25kg/hrで造粒して測定用試料とした。偏光顕微鏡観察において、10μmを超える連続した結晶構造は存在していない。140℃デカンに可溶である。また、該試料を用いてプレスシートを作成して、物性を測定した。結果を表1〜3に示す。
【0230】
[実施例23]
充分に乾燥し、窒素置換された重合器にヘキサン1200リットルを入れ、トリイソブチルアルミニウムを650mmol、第一工業製薬(株)製エパン720を1.3g導入した後、重合器内の窒素を除去するためにエチレンにて加圧、脱圧を3回繰り返しおこなった。重合器内の温度を70℃になるまで加温したところで、エチレンにて0.50MPaまで加圧し、さらに水素にて気相部の水素濃度が29mol%になるように加圧した。合成例5で得た固体触媒成分(ω)をZr原子に換算して1.6mmolを投入すると同時に、エチレンを32Nm3/hr、水素を0.1Nm3/hrの速度でフィードし、80℃で重合を開始した。エチレンを連続的に供給し始めてからのエチレン供給積算量が40Nm3に達した後、エチレン、水素の供給を停止するとともに、脱圧し、窒素にてエチレン、水素を除去しながら系内の温度が55℃まで降温した。系内のエチレン、水素を除去したのち、再び系内を70℃まで加温し、1-ヘキセンを1.39リットルを加えた後、エチレンにて0.35MPaまで加圧した。エチレンを26Nm3/hr、水素を3.2N-リットル/hrの速度でフィードし、80℃で重合を再開した。エチレンを連続的に供給し始めてからのエチレン供給積算量が33Nm3に達した後、エチレン、水素の供給を停止するとともに、速やかに別の容器に重合スラリーを移送して、脱圧し、窒素にてエチレン、水素を除去しながらメタノールを20N-リットル/hrにて1時間フィードすることで触媒を失活させた。このとき、系内の温度は60℃に保った。
【0231】
ポリマーは濾過によりヘキサンと分離し、過剰のヘキサンにて洗浄した後、3時間乾燥した。得られたポリマーは91.0kgであった。
次に該重合粒子100重量部に対して、実施例1で用いたのと同様の二次抗酸化剤、耐熱安定剤および塩酸吸収剤を同量部配合した。しかる後にプラコー社製単軸押出機(スクリュー径65mm、L/D=28、スクリーンメッシュ♯300×4枚)を用い、設定温度200℃、樹脂押出量25kg/hrで造粒して測定用試料とした。偏光顕微鏡観察において、10μmを超える連続した結晶構造は存在していない。140℃デカンに可溶である。また、該試料を用いてプレスシートを作成して、物性を測定した。結果を表1〜3に示す。
【0232】
〔合成例7〕
[担持触媒の調製]
グローブボックス内にて、1リットルの四つ口フラスコにジ(p-トリル)メチレン(シクロペンタジエニル)(オクタメチルオクタヒドロジベンゾフルオレニル)ジルコニウムジクロリドを0.18g秤量した。フラスコをグローブボックスから取り出し、トルエン46mlとMAO/SiO2のトルエンスラリー140ml(固体量8.82g)を窒素下で加え、30分間攪拌し担持を行った。得られたジ(p-トリル)メチレン(シクロペンタジエニル)(オクタメチルオクタヒドロジベンゾフルオレニル)ジルコニウムジクロリド/MAO/SiO2/トルエンスラリーはn-ヘプタンにて99%置換を行い、最終的なスラリー量を450mlとし、固体触媒成分(σ)を調製した。なお、この操作は室温で行った。
【0233】
[実施例24]
[エチレン重合]
内容量200リットルの攪拌機付きオートクレーブに、ヘプタン86.5リットル、トリイソブチルアルミニウム90mmol、前記で調製した固体触媒成分(σ) 9gを装入した。内温を80℃に保ち、エチレンと水素を装入し、内圧を0.6MPa/Gに保ち、重合を行った。装入したエチレン量は、13.7kgであった。
【0234】
引き続いて、重合槽内圧力を0 MPa/Gまで脱圧し、窒素にて置換を行い、重合槽内の水素を除去した。
次いで、1-ヘキセン340mlを装入した。内温を65℃に保ち、エチレンと水素を装入し、内圧を0.5MPa/Gに保ち、重合を行った。装入したエチレン量は、9.0kgであった。
【0235】
得られたポリエチレンスラリーを内容量500リットルの攪拌機付きオートクレーブに全量移液し、メタノールを10.7ml装入し、触媒の脱活を行った。このスラリーを攪拌機付きろ過乾燥機に移液し、ろ過を行った後、85℃、6時間真空乾燥し、ポリエチレンパウダーを得た。
【0236】
次にこの重合粒子100重量部に対して、実施例1で用いたのと同様の二次抗酸化剤、耐熱安定剤および塩酸吸収剤を同量部配合した。しかる後に東洋精機社製ラボプラストミルを用い、実施例1で用いたのと同様の設定温度、樹脂仕込み量、回転数および溶融時間条件で溶融混練後、取り出し20℃設定の冷却プレスでシートとし、これを適当な大きさに切断するなどして測定用試料とした。偏光顕微鏡観察において、10μmを超える連続した結晶構造は存在していない。140℃デカンに可溶であった。また、該試料を用いてプレスシートを作成して、物性を測定した。結果を表1〜3に示す。
【0237】
[実施例25]
[エチレン重合]
内容量200リットルの攪拌機付きオートクレーブに、ヘプタン86.5リットル、トリイソブチルアルミニウム90mmol、合成例7で調製した固体触媒成分(σ) 9gを装入した。内温を80℃に保ち、エチレンと水素を装入し、内圧を0.6MPa/Gに保ち、重合を行った。装入したエチレン量は、13.7kgであった。
【0238】
引き続いて、重合槽内圧力を0MPa/Gまで脱圧し、窒素にて置換を行い、重合槽内の水素を除去した。
次いで、1-ヘキセン473mlを装入した。内温を65℃に保ち、エチレンと水素を装入し、内圧を0.5MPa/Gに保ち、重合を行った。装入したエチレン量は、9.0kgであった。
【0239】
得られたポリエチレンスラリーを内容量500リットルの攪拌機付きオートクレーブに全量移液し、メタノールを10.7ml装入し、触媒の脱活を行った。このスラリーを攪拌機付きろ過乾燥機に移液し、ろ過を行った後、85℃、6時間真空乾燥し、ポリエチレンパウダーを得た。
【0240】
次にこの重合粒子100重量部に対して、実施例1で用いたのと同様の二次抗酸化剤、耐熱安定剤および塩酸吸収剤を同量部配合した。しかる後に東洋精機社製ラボプラストミルを用い、実施例1で用いたのと同様の設定温度、樹脂仕込み量、回転数および溶融時間条件で溶融混練後、取り出し20℃設定の冷却プレスでシートとし、これを適当な大きさに切断するなどして測定用試料とした。偏光顕微鏡観察において、10μmを超える連続した結晶構造は存在していない。140℃デカンに可溶である。また、該試料を用いてプレスシートを作成して、物性を測定した。結果を表1〜3に示す。
【0241】
【表1】

【0242】
【表2】

【0243】
【表3】

【0244】
【表4】

【0245】
【表5】

【0246】
【表6】

【産業上の利用可能性】
【0247】
本発明のエチレン系重合体は成形性に優れ、機械的強度に優れた外観に優れた成形体を提供する。本発明に係るエチレン系重合体ブロー成形体およびパイプや異形などの押出成形体に用いると優れた特性を与える。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素原子数6〜10のα-オレフィンから導かれる構成単位を0.01〜1.20mol%含むエチレン系重合体であって、クロス分別(CFC)において、下記の(1)または(2)のいずれか一つ以上を満たすエチレン系重合体。
(1) 73〜76℃で溶出する成分の重量平均分子量(Mw)が4,000を超えない。
(2)下記の関係式(Eq-1)を満たす。
【数1】

(Eq-1中、Sxは70〜85℃で溶出する成分に基づく全ピークの面積合計値であり、Stotalは0〜145℃で溶出する成分に基づく全ピークの面積合計値である。)
【請求項2】
下記要件(1')〜(7')を同時に満たす請求項1に記載のエチレン系重合体。
(1') 炭素原子数6〜10のα-オレフィンから導かれる構成単位を0.02〜1.0mol%含む。
(2') 密度(d)が945〜970kg/m3の範囲にある。
(3') 135℃、デカリン中で測定した極限粘度([η])が1.6〜4.1(dl/g)の範囲にある。
(4') GPCで測定した重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)が5 〜70の範囲にある。
(5') クロス分別(CFC)において分子量が100,000未満で最も強いピークの頂点の溶出温度をT1(℃)、分子量が100,000以上で最も強いピークの頂点の溶出温度をT2(℃)とした場合、(T1−T2)(℃)が0〜11℃の範囲にある。
(6') クロス分別(CFC)において[(T2−1)〜T2](℃)で溶出した画分のGPC曲線の中で、分子量が100,000以上で最も強いピークの頂点の分子量が200,000〜800,000の範囲にある。
(7') クロス分別(CFC)において95〜96℃で溶出する成分のGPC曲線のうち分子量が100,000以下の領域において最も強いピークの頂点の分子量が28,000を超えない。
【請求項3】
13C-NMRで測定したメチル分岐が炭素原子1000個当たり0.1個未満であることを特徴とする請求項2に記載のエチレン系重合体。
【請求項4】
(1''') GPC曲線を2つの対数正規分布曲線に分離した時に、各々の曲線の重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)が1.5〜3.5、高分子量側に分離された曲線の重量平均分子量(Mw2)が200,000〜800,000であり、
(2''') 押出ストランドの表面粗さから求められる平滑度係数Rが20μmを越えないことを特徴とする請求項3に記載のエチレン系重合体。
【請求項5】
下記要件(1B)〜(3B)を同時に満たす、ブロー成形体に好適に用いられる請求項1から4のいずれかに記載のエチレン系重合体。
(1B) 炭素原子数6〜10のα-オレフィンから導かれる構成単位を0.02〜0.20mol%含む。
(2B) GPCで測定した重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)が 5 〜30の範囲にある。
(3B) クロス分別(CFC)においてピーク頂点の分子量が100,000未満で最も強いピークの頂点の溶出温度をT1(℃)、分子量が100,000以上で最も強いピークの頂点の溶出温度をT2(℃)とした場合、(T1−T2)(℃)が0〜5℃の範囲にある。
【請求項6】
(1B') ASTM-D-790に準拠して、23℃で測定した曲げ弾性率が1,500〜1,800MPaの範囲にあり、(2B') ASTM-D-1693に準拠して測定した50℃における耐環境応力破壊性ESCR(hr)が10時間以上で非破壊であることを特徴とするブロー成形体に好適に用いられる請求項5に記載のエチレン系重合体。
【請求項7】
動的粘弾性装置を用いて測定した190℃、角周波数100 rad/secにおけるtanδ(=損失弾性率G''/貯蔵弾性率G')が0.7〜0.9である、請求項6に記載のブロー成形体に好適に用いられるエチレン系重合体。
【請求項8】
下記要件(1P)を満たす、パイプに好適に用いられる請求項1から4のいずれかに記載のエチレン系重合体。
(1P) 炭素原子数6〜10のα-オレフィンから導かれる構成単位を0.10〜1.0 mol%含む。
(2P) GPCで測定した重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)が11 〜70の範囲にある。
【請求項9】
下記要件(1P')を満たすパイプに好適に用いられる請求の範囲第8項に記載のエチレン系重合体。
(1P') JIS K-6744に準拠し、80℃で測定した引張疲労特性で破断に至る回数が10,000回のときの実応力が13MPa〜17MPa、破断に至る回数が100,000回のときの実応力が12〜16MPaである。
【請求項10】
請求項6または7に記載のエチレン系重合体からなるブロー成形体。
【請求項11】
成形体が、ガソリンタンク、工業薬品缶またはボトル容器であることを特徴とする請求項10に記載のブロー成形体。
【請求項12】
請求項9に記載のエチレン系重合体からなるパイプ又はパイプ継ぎ手。
【請求項13】
水道等の液体輸送用に用いられる請求項12に記載のパイプまたはパイプ継ぎ手。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate

【図22】
image rotate

【図23】
image rotate

【図24】
image rotate

【図25】
image rotate

【図26】
image rotate

【図27】
image rotate

【図28】
image rotate

【図29】
image rotate

【図30】
image rotate

【図31】
image rotate

【図32】
image rotate


【公開番号】特開2011−132531(P2011−132531A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−25858(P2011−25858)
【出願日】平成23年2月9日(2011.2.9)
【分割の表示】特願2004−38862(P2004−38862)の分割
【原出願日】平成16年2月16日(2004.2.16)
【出願人】(000005887)三井化学株式会社 (2,318)
【Fターム(参考)】