説明

エチレン/エステルコポリマーナノフィラー組成物

ナノフィラーならびに、エチレンおよび、少なくとも2つのカルボン酸基を有するC4〜C8不飽和酸のモノエステル、少なくとも2つのカルボン酸基を有するC4〜C8不飽和酸のジエステル、およびそれらの2つ以上の混合物から選択されるコモノマーの共重合単位を有するエチレン/エステルコポリマーを含むナノフィラーマスターバッチ;およびポリオレフィンおよびナノフィラーマスターバッチを含むナノコンポジット;を開示する。ナノフィラーマスターバッチおよびナノコンポジットを調製する方法も開示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エチレン/エステルコポリマーナノフィラー組成物、およびポリオレフィン類中でのナノフィラーの分散助剤としてのそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
1つまたは複数のポリマー物理的性質を改良するために、様々な添加物をマトリックスポリマーとブレンドすることは、プラスチック工業ではよくあることである。最近では、極めて効果的なナノ粒子が開発されており、従来のミネラルフィラーの代わりに、ポリマーマトリックス中の添加物として使用されている。たとえば、米国特許第7,270,862号明細書には、改良された遮断性をポリアミド組成物に付与する、ナノフィラー類とポリオレフィン類との組み合わせが開示されている。ポリマーマトリックス中に分散されたナノフィラーを含むこのような組成物は、ナノコンポジットと呼ばれる。
【0003】
ナノコンポジットの分野では、コンポジットの均一性、すなわち、ポリマーマトリックス内の粒子分散度が、目標性能の達成に不可欠である。現在、ナノフィラーをポリマー中に分散させるために、3つの方法がよく使用される。第1は、(a)時には界面活性剤の助けを借りて、水を包含する選択された溶媒中に、ナノフィラーを分散させること;(b)当該ポリマーを同じ溶媒系に溶解すること;および(c)溶媒を除去すること、から成る溶媒プロセスである。このプロセスは、工業的用途に合わせて容易に改変できないため、概して、基礎研究用および高価少量用途、たとえば医学分野などに、限定される。第2の方法は、インシチュ重合を含み、またナノフィラーとモノマーとの混合に続く重合から成る。このプロセスは一般に、たとえばポリアミド類、ポリエステル類およびエポキシ類等の、縮重合によって調製することができるポリマー類中にナノフィラーを分散させるために使用される。第3の方法は配合であり、多くの場合、たとえば押出機内で、ナノフィラーをポリマーメルトに直接溶融配合することにより実行されるプロセスである。3法のうち配合が最も実用的である、すなわちほとんどの熱可塑性ポリマー、特にポリオレフィン類に好ましい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ポリオレフィン樹脂は低極性であるため、ポリオレフィンナノコンポジットの調製は、多くの場合、ポリマーマトリックス内のナノフィラーの良好な分散を達成するために相溶化剤の存在を必要とする。ポリオレフィン類と、たとえばモンモリロナイト等のクレイとの間の混和性を改良するために、たとえば、無水マレイン酸グラフト化ポリオレフィン類が使用されてきた(たとえば、米国特許第6,632,868号明細書を参照)。このような場合、無水マレイン酸部分が存在することにより、ポリマーマトリックスとクレイとの間の強い相互作用が増進し、その結果、クレイ小板の剥離および分散の増強を招く。このような相溶化剤の使用と関連した制約は、ポリオレフィン類にグラフト化することができる無水マレイン酸の量が限られており、したがってグラフト化ポリマーの有効性も限られていることである。さらに、より高いメルトフローレート(MFR)(ASTM D1238に準拠して、190℃および2.16kgで測定するとき、たとえば50g/10分またはそれ以上)を有する無水マレイン酸グラフト化ポリオレフィン類は調製が難しく、したがって市販されていないため、ナノコンポジット製造に合った配合物最適化をも制限する。先行技術の方法を使用して実行できていた量より大量に、ナノフィラーの分散を効率よく増進する材料が、依然として必要のままである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、(a)エチレンとC4〜C8不飽和酸のエステルの共重合単位を含むエチレン/エステルコポリマー、(b)ナノフィラー、および場合により(c)エチレンとC4〜C8不飽和酸のエステルの共重合単位を含むエチレン/エステルコポリマー以外の第1のポリオレフィンを含み、(i)エチレン/エステルコポリマーは、高圧ランダム共重合により製造され、また、コポリマーの総重量を基準にして約4〜約20重量%の、少なくとも2つのカルボン酸を有するC4〜C8不飽和酸のモノエステル類、少なくとも2つのカルボン酸基を有するC4〜C8不飽和酸のジエステル類、およびそれらの2つまたはそれ以上の混合物からなる群より選択されるC4〜C8不飽和酸のエステルの共重合単位を含み、(ii)第1のポリオレフィンは、エチレンポリマー類、プロピレンポリマー類およびそれらの2つ以上のブレンドからなる群より選択される、組成物に関する。組成物は、(d)組成物の総重量を基準にして、約50〜約90重量%のレベルのポリマーをさらに含んでもよく、ポリマーは、ポリオレフィン類、ポリアミド類、ポリエステル類、ポリカーボネート類、ポリスチレン類、ポリ(アクリロニトリル−コ−ブタジン−コ−スチレン)(ABS)、および熱可塑性ポリウレタンからなる群から選択されてもよい。
【0006】
本発明はさらに、
(A)(i)エチレンとC4〜C8不飽和酸のエステルの、共重合単位を含むエチレン/エステルコポリマー、(ii)ナノフィラー、および場合により(iii)エチレンとC4〜C8不飽和酸のエステルの共重合単位を含むエチレン/エステルコポリマー以外の第1のポリオレフィンを含む混合物であって、エチレン/エステルコポリマーは、高圧ランダム共重合により製造され、またコポリマーの総重量を基準にして約4〜約20重量%の、少なくとも2つのカルボン酸基を有するC4〜C8不飽和酸のモノエステル類、少なくとも2つのカルボン酸基を有するC4〜C8不飽和酸のジエステル類、およびそれらの2つ以上の混合物からなる群より選択されるエステルの共重合単位を含み、第1のポリオレフィンは、エチレンポリマー類、プロピレンポリマー類およびそれらの2つ以上のブレンドからなる群より選択される混合物を、生成するステップ;
(B)混合物を溶融配合して、均質のナノフィラーマスターバッチ組成物を生成するステップ;および
(C)均質のナノフィラーマスターバッチ組成物を回収するステップ;
を含む、均質のナノフィラーマスターバッチ組成物を調製する方法に関する。
【0007】
本発明はさらにまた、
(A)(i)上に記載した方法により得られるナノフィラーマスターバッチ組成物、および(ii)ポリアミドまたは第2のポリオレフィンより選択されるポリマーを含む混合物であって、第2のポリオレフィンは、エチレンとC4〜C8不飽和酸のエステルの共重合単位を含むエチレン/エステルコポリマー以外であり、またエチレンポリマー類、プロピレンポリマー類およびそれらのブレンドからなる群より選択される混合物を、生成するステップ;
(B)混合物を溶融配合して、均質のナノコンポジット組成物を生成するステップ;および
(C)均質のナノコンポジット組成物を回収するステップ;
を含む、
均質のナノコンポジット組成物を調製する方法に関する。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明は、(a)エチレンおよびエステルコモノマーの、たとえばブテン二酸モノエステルまたはジエステル等の、共重合から得られるエチレン/エステルコポリマー(b)ナノフィラー、および場合により(c)本発明の組成物の成分(a)以外のポリオレフィンを含む、高濃度のナノフィラーマスターバッチ組成物を提供する。マスターバッチ組成物は一般に、マスターバッチ組成物の総重量を基準にして、約10〜約95重量%、または約20〜約90重量%、または約30〜約90重量%、または約40〜約75重量%、または約50〜約60重量%の、エチレン/エステルコポリマー、および約5〜約70重量%、または約10〜約70重量%、または約20〜約70重量%、または約25〜約60重量%、または約30〜約50重量%の、ナノフィラーを含む。成分(c)が存在するとき、成分(c)はマスターバッチ組成物の総重量を基準にして最高80重量%まで、または約10〜約70重量%、または約20〜約50重量%のレベルで存在してもよい。
【0009】
マスターバッチ組成物の第1成分(a)は、エチレンと、少なくとも2つのカルボン酸基を有するC4〜C8不飽和酸のモノエステル類、少なくとも2つのカルボン酸基を有するC4〜C8不飽和酸のジエステル類、およびそれらの2つ以上の混合物からなる群から選択されるコモノマーの、共重合により得ることが可能な、エチレン/エステルコポリマーである。すなわち、ポリマーは、エチレンとエステルコモノマーの共重合単位を含む。好適なコモノマーの例としては、ブテン二酸類(たとえばマレイン酸、フマル酸、イタコン酸およびシトラコン酸)のC1〜C20アルキルモノエステル、たとえばマレイン酸水素メチル、マレイン酸水素エチル、フマル酸水素プロピル、およびフマル酸水素2−エチルヘキシルならびにブテン二酸のC1〜C20アルキルジエステル、たとえばマレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、シトラコン酸ジブチル、マレイン酸ジオクチル、およびフマル酸ジ(2−エチルヘキシル)等があげられる。一実施態様では、エステルコモノマーは、マレイン酸水素メチルまたはマレイン酸水素エチルである。さらなる実施態様では、エステルコモノマーは、マレイン酸水素エチルである。
【0010】
エチレン/エステルコポリマーは、ダイポリマーまたはより高次のコポリマー、たとえばターポリマー等であってもよい。たとえば、エチレン/エステルターポリマーの生成に際して、好適な第3のコモノマーは、酢酸ビニル、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸の誘導体およびメタクリル酸の誘導体からなる群から選択することが可能である。アクリル酸およびメタクリル酸の好適な誘導体としては、塩類、エステル類、または化学技術分野の当業者に周知の他の酸誘導体などが挙げられる。アクリル酸の好適な誘導体としては、たとえばアクリル酸アルキル類、たとえばアクリル酸メチルおよびアクリル酸ブチルなどが挙げられる。メタクリル酸の好適な誘導体としては、メタクリル酸アルキル、たとえばメタクリル酸メチルおよびメタクリル酸n−ブチルなどが挙げられる。
【0011】
マスターバッチ組成物の第1成分として使用されるエチレン/エステルコポリマーの具体例としては、エチレン/マレイン酸モノエステルダイポリマー(たとえばエチレン/マレイン酸水素エチルダイポリマー)、エチレン/マレイン酸モノエステル/(メタ)アクリル酸n−ブチルターポリマー、エチレン/マレイン酸モノエステル/アクリル酸メチルターポリマー、エチレン/マレイン酸モノエステル/メタクリル酸メチルターポリマー、エチレン/マレイン酸モノエステル/メタクリル酸エチルターポリマーおよびエチレン/マレイン酸モノエステル/アクリル酸エチルターポリマーなどが挙げられる。
【0012】
一実施態様では、エチレン/エステルコポリマーは、コポリマーの重量を基準にして約4〜約20重量%の、コモノマーまたはエチレン以外のコモノマー類の共重合単位を含む。さらなる実施態様では、エチレン以外のコモノマー(類)の共重合単位のレベルは、コポリマーの総重量を基準にして約4〜約15重量%、または約6〜約15重量%、または約8〜約15重量%、または約8〜約12.5重量%の範囲内である。加えて、エチレン/エステルコポリマーがターポリマーであるとき、第3のコモノマーの共重合単位は、ターポリマーの総重量を基準にして約10重量%未満、または約5重量%未満のレベルで存在してもよい。
【0013】
エチレン/エステルコポリマーは、高圧フリーラジカルプロセスで、一般にオートクレーブプロセスで、エチレンと特定のコモノマー(類)のランダム共重合により合成することが可能である。このようなプロセスは、米国特許第4,351,931号明細書に記述されている。この種のエチレン/エステルコポリマーの数例が、米国特許出願公開第2005/0187315号明細書に記述されている。
【0014】
マスターバッチ組成物の第2成分としての使用に好適なナノフィラーまたはナノ材料は一般に、約0.9〜約200nm、または約0.9〜約150nm、または約0.9〜約100nm、または約0.9〜約30nmの範囲の粒径を有する。ナノフィラーの形状およびアスペクト比は、様々であってもよい。好適なナノフィラーは、板状または層状のナノフィラーを包含する。一実施態様では、ナノフィラーは、ナノサイズのシリカ、ナノクレイ、およびカーボンナノファイバーから選択される。典型的なナノサイズのシリカとしては、ヒュームドシリカ、コロイド状シリカ、溶融石英、およびシリケート類などが挙げられるが、その限りではない。典型的なナノクレイとしては、スメクタイト(たとえば、ケイ酸アルミニウムスメクタイト)、ヘクトライト、モンモリロナイト(たとえば、ナトリウムモンモリロナイト、マグネシウムモンモリロナイト、およびカルシウムモンモリロナイト)、ベントナイト、バイデライト、サポナイト、ステベンサイト、ソーコナイト、ノントロナイト、およびイライトなどが挙げられるが、その限りではない。本明細書で使用されるカーボンナノファイバーは、単層ナノチューブ(SWNT)であってもよく、多層ナノチューブ(MWNT)であってもよい。好適なカーボンナノファイバーは市販されており、たとえばApplied Sciences,Inc.(Cedarville,OH)によりPyrograf(登録商標)という商標名で製造されているもの等である。
【0015】
ナノフィラーは、天然材料であってもよく、合成材料であってもよい。加えて、ナノフィラーは、その疎水性を高めるために表面修飾することが可能であり、たとえば米国特許第6,228,903号明細書;米国特許第6,225,394号明細書;米国特許第5,877,248号明細書;米国特許第5,849,830号明細書;米国特許第5,844,032号明細書;米国特許第5,760,121号明細書;米国特許第5,698,624号明細書;米国特許第5,578,672号明細書;および米国特許第5,552,469号明細書を参照されたい。
【0016】
本明細書に開示されているナノフィラーマスターバッチ組成物の任意選択の第3成分(c)は、エチレンポリマー類、プロピレンポリマー類およびそれらのブレンドからなる群から選択されるポリオレフィンであってもよい。エチレンポリマーは、エチレンホモポリマー類、エチレンコポリマー類およびそれらのブレンドを包含する。同様に、プロピレンポリマーは、プロピレンホモポリマー類、プロピレンコポリマー類およびそれらのブレンドを包含する。
【0017】
好適なポリエチレンの密度は、約0.86〜約0.96g/cm3、または約0.87〜約0.955g/cm3の範囲内であってもよい。
【0018】
ポリエチレン類は、高圧プロセスで製造しても低圧プロセスで製造してもよい。概して、高圧プロセスは一般に約1000〜約3000barの圧力で実施されるフリーラジカル開始重合であり、低圧プロセスは一般に約100bar未満の圧力で、触媒の助けを借りて実施される。
【0019】
これらのポリエチレン類を調製するための代表的な触媒系としては、マグネシウム/チタン系触媒系、バナジウム系触媒系、クロム系触媒系、メタロセン触媒系および束縛幾何構造および他の遷移金属触媒系などが挙げられる。有用な触媒系としては、シリカ−アルミナ支持体上のクロムまたは酸化モリブデンを含む触媒などが挙げられる。
【0020】
本明細書に開示されているマスターバッチ組成物の任意選択の第3成分(c)として有用なポリエチレンの具体例としては、高圧プロセスにより作られる低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、極低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレンおよびメタロセン触媒ポリエチレンなどが挙げられる。
【0021】
直鎖状低密度ポリエチレンは、やはり直鎖状であるが、概して、約0.916〜約0.925g/cm3の範囲内の密度を有する、超低密度ポリエチレン、極低密度ポリエチレン、および中密度ポリエチレン型を包含してもよい。
【0022】
超低密度ポリエチレンまたは極低密度ポリエチレンの密度は、約0.870〜約0.915g/cm3の範囲内であってもよい。
【0023】
多くの好適なポリエチレンは市販されており、たとえば、The Dow Chemical Company(Midland,MI)から販売されているDOWLEXTMポリエチレン樹脂などがある。
【0024】
本明細書に開示されているマスターバッチ組成物の任意選択の第3成分(c)として使用することが可能なエチレンコポリマーは、エチレンと、半量未満の、3〜12個の炭素原子または3〜8個の炭素原子を有するα−オレフィンのコポリマーであってもよい。半量未満は、コポリマー鎖中に存在するエチレン以外のコモノマーの共重合モノマー単位の重量パーセンテージが、コポリマーの総重量を基準にして約50重量%未満であることを意味する。好適なα−オレフィン類の例は、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、および1−オクテンである。エチレンコポリマーはまた、エチレンと、たとえばアクリル酸等の不飽和酸のコポリマーであってもよい。エチレンコポリマーはまた、エチレンと、C4〜C8不飽和酸のエステル以外の不飽和エステルの、共重合単位を含んでもよい。すなわち、エチレンコポリマーは、本発明の組成物の成分a)を構成するエチレンコポリマーとは異なるコポリマーとなる。任意選択のエチレンコポリマーの不飽和エステルは、アクリル酸アルキル類、メタクリル酸アルキル類、またはビニルカルボキシレート類であってもよい。アルキル基は、1〜8個の炭素原子または1〜4個の炭素原子を有してもよい。カルボキシレート基は、2〜8個の炭素原子または2〜5個の炭素原子を有してもよい。好適なアクリレートコモノマーおよびメタクリレートコモノマーの例としては、アクリル酸エチル、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸n−ブチル、メタクリル酸n−ブチル、およびアクリル酸2−エチルヘキシルなどが挙げられる。好適なビニルカルボキシレートの例としては、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、および酪酸ビニルなどが挙げられる。エチレン/不飽和エステルコポリマーのMFRは、ASTM D1238(190℃、2.16kg)に準拠して測定するとき、約0.5〜約50g/10分または約2〜約25g/10分の範囲内であってもよい。
【0025】
エチレンコポリマーは、ダイポリマーであってもよく、またより高次のコポリマー、たとえばターポリマーであってもよい。α−オレフィン類およびジエン類、たとえばエチリデンノルボルネン、ブタジエン、1,4−ヘキサジエン、またはジシクロペンタジエンは、より高次のエチレンコポリマーの生成における補足的コモノマー(類)として有用である。
【0026】
エチレンコポリマーはまた、たとえばEPDMエラストマー等の、エチレン/プロピレンコポリマーであってもよい。このようなEPDMポリマーは多くの場合、テトラポリマー、たとえばエチレン、プロピレンおよび2つのジエンモノマーのコポリマーであり、ジエンコモノマーの総重量パーセンテージは、ポリマー総重量を基準にして、約1〜約15重量%、または約1〜約10重量%であってもよい。
【0027】
あらゆるポリプロピレンが、本明細書に開示されているマスターバッチ組成物中に存在してもよい任意選択の第3成分(c)としての使用に適する。例としては、プロピレンのホモポリマー、プロピレンと他のオレフィン類とのコポリマー、およびプロピレン、エチレンおよびジエン類のターポリマー(たとえば、ノルボルナジエンおよびデカジエン)などが挙げられる。好適なポリプロピレンの例は、Polypropylene Handbook:Polymerization,Characterization,Properties,Processing,Applications 3−14,113−176(E.Moore,Jr.編、1996年)に記述されている。
【0028】
上で開示したナノフィラーマスターバッチ組成物に加えて第4成分(d)ポリマーをさらに含むナノコンポジット組成物を、本明細書でさらに提供する。ナノコンポジット組成物の第4成分(d)は、たとえばポリオレフィン類、ポリアミド類、ポリエステル類(たとえば、ポリエチレンテレフタレートおよびポリブチレンテレフタレート)、ポリカーボネート類、ポリスチレン類、ポリ(アクリロニトリル−コ−ブタジン−コ−スチレン)(ABS)、および熱可塑性ポリウレタン等の、いかなる好適な熱可塑性または架橋したポリマー材料であってもよい。一実施態様において、ナノコンポジット組成物の第4成分(d)は、上述されておりかつナノフィラーマスターバッチ組成物の任意選択の第3成分(c)として有用なもの等の、ポリオレフィンである。ナノフィラーマスターバッチ組成物中に任意選択の第3成分(c)が存在する、こうした実施態様において、ナノコンポジット組成物の第4成分(d)として使用されるポリオレフィンは、ナノフィラーマスターバッチの任意選択の第3成分(c)として使用されるポリオレフィンと同じであってもよく、異なってもよい。第4成分(d)は、ナノコンポジット組成物の総重量を基準にして、最高約95重量%まで、または約50〜約90重量%、または約70〜約90重量%、または約80〜約90重量%のレベルで、ナノコンポジット組成物中に存在してもよい。
【0029】
本発明のマスターバッチおよびナノコンポジット組成物は、他の添加物、たとえば難燃性添加物(たとえば、金属水酸化物、ハロゲン化配合、および三水和アルミニウム)、酸化防止剤、安定剤、発泡剤、カーボンブラック、顔料、加工助剤、過酸化物、および硬化ブースター等を、さらに含んでもよい。さらに、ナノコンポジット組成物は、熱可塑性であってもよく、架橋ポリマーであってもよい。
【0030】
本発明のマスターバッチおよびナノコンポジット組成物は、組成物の全成分を混ぜ合わせ、約130℃〜約230℃、または約170℃〜約210℃の温度で、混合物を溶融配合して、一様な、均質のブレンドを生成することを含む、溶融プロセスを使用して調製することが可能である。本プロセスは、撹拌器、Banbury(登録商標)型ミキサー、Brabender(登録商標)型ミキサー、または押出機を使用して実施することが可能である。
【0031】
たとえば、本発明のナノコンポジットは、成分を混ぜ合わせる第1ステップで本発明のマスターバッチを用いる溶融配合プロセスを使用して調製することが可能である。すなわち、第1ステップは、押出機または他の混合装置内で、本発明のマスターバッチおよびポリオレフィンまたはポリアミドから混合物を生成することにより実施される。あるいは、本発明のナノコンポジットは、マスターバッチを用いないプロセスで生成することも可能である。その代わりに、混合物の生成は、ナノフィラー、エチレンとC4〜C8不飽和酸のエステルおよびポリオレフィンまたはポリアミドの共重合単位を含むエチレン/エステルコポリマーを、別々の成分として、混ぜ合わせることを含む。ポリオレフィンを使用するとき、それはエチレンとC4〜C8不飽和酸のエステルのコポリマー以外の材料であってもよい。いずれのプロセスでも、混合物が生成されるステップは、溶融配合が起こる装置の内部で実施してもよく、外部で実施してもよい。加えて、混合物が生成されるステップは、環境温度で実施してもよく、溶融配合に好適な温度で実施してもよい。溶融配合により製造される均質のナノコンポジットの回収方法は、使用される溶融配合器具の個々の構成部分によって異なり、当業者は決定することが可能である。たとえば、溶融配合ステップが押出機内で行われるのであれば、均質のナノコンポジットは、押出機ダイから出た後で回収される。
【0032】
これまでは、ポリオレフィン類中でのナノフィラーの分散を助けるために、無水マレイン酸グラフト化ポリオレフィン類が相溶化剤として使用されてきた(たとえば、米国特許出願公開第2006/269771号明細書参照)。しかし、ポリオレフィン類にグラフト化することができる無水マレイン酸の量は、僅か数重量パーセントまたは2重量%未満に限られている。本発明の組成物の成分であるエチレン/エステルコポリマーの調製に使用されるランダム共重合プロセスは、無水マレイン酸グラフト化ポリオレフィン類より、高水準の不飽和エステルコモノマーの獲得における高い自由度およびより低分子量(高メルト・フロー・インデックスに関連している)を有するエチレン/エステルコポリマーの合成を可能にし、したがってエチレン/エステルコポリマーに、より容易に得られるグラフト化ポリオレフィン類より高度のナノフィラー分散力および活性を与える。さらに、エチレン/エステルコポリマーは幅広いメルトフローを有する傾向がある。たとえば、約500g/10分(ASTM D1238に準拠して、190℃、2.16kgで測定するとき)までのMFRを有するエチレン/エステルコポリマーは、共重合不飽和エステルコモノマー単位の含有率が高いエチレン/エステルコポリマーを合成することにより調製することができる。エチレン/エステルコポリマーの高MFRが示す通り、粘度が低いため、ナノフィラーマスターバッチの加工に適切な粘度を維持しながら、エチレン/エステルコポリマー中に多量のナノフィラーを分散させることが可能である。さらに、ナノフィラーおよびポリオレフィンポリマーの両者に対してエチレン/エステルコポリマーのアフィニティが高いため、ポリオレフィンポリマーマトリックス中に、極めて一様な、均質のナノフィラーの分散を生じる。
【0033】
分散は、X線回折で示すことができる。たとえばX線回折(XRD)は、シリケート含有ナノコンポジット中のシリケート層の層間隔(d間隔)の測定によく使用される。X線がシリケート小板から散乱するとき、クレイ構造に応じて散乱強度のピークが観察される。Braggの法則に基づいて、層間隔、すなわち2つの隣接したクレイ小板の距離を、XRDパターンのピーク位置から決定することができる。ナノクレイとポリマーマトリックスとの相互作用が発生するとき、層間隔は増大し、XRDパターンの反射ピークは、下方2Θ位置に移動する。このような条件で、ナノクレイは、改良された分散を示す、インターカレーション状態にあると考えられる。概して、ナノクレイは熱的に安定でないため、クレイ粒子は溶融加工条件で崩壊して分散不良を招く可能性がある。したがって、ナノコンポジットを調製するとき、多くの場合、有効な相溶化剤が必要である。
【0034】
本発明の組成物、特に第3成分(c)として、エチレン/エステル成分以外のポリオレフィンも含むナノコンポジット組成物またはナノフィラーマスターバッチ組成物は、従来のプロセスで、シート、フィルム、パネル、または他の形状の物品へと、さらに形成することが可能である。これらの物品は、有用な性質および幅広い用途を有する。たとえば、このようなナノコンポジットを含むシートまたはパネルは、たとえば、木材、ガラス、セラミック、織物、金属、または他のプラスチック用の、コーティング材として使用することが可能である。一実施態様では、このような組成物を使用して、ワイヤーまたはケーブル用のコーティングを形成することができる。シート、フィルム、およびパネルはまた、他のプラスチックフィルム、シートまたはパネルに積層することもできる。
【実施例】
【0035】
材料
以下の材料を実施例で使用した:
・EVA−1 コポリマーの総重量を基準にして25重量%の、酢酸ビニルの共重合単位を含み、ASTM D1238に準拠して190℃および2.16kgで測定するとき2g/10分のメルトフローレート(MFR)を有する、エチレン/酢酸ビニルコポリマー;
・EVA−2 コポリマーの総重量を基準にして28重量%の、酢酸ビニルの共重合単位を含み、3g/10分(190℃および2.16kg)のMFRを有する、エチレン/酢酸ビニルコポリマー;
・EVA−3 コポリマーの総重量を基準にして28重量%の、酢酸ビニルの共重合単位、および1重量%の、メタクリル酸の共重合単位を含み、6g/10分(190℃および2.16kg)のMFRを有する、エチレン/酢酸ビニルコポリマー;
・MAH−g−PE 0.93g/ccの密度および1.5g/10分(190℃、2.16kg)のMFRを有し、E.I.du Pont de Nemours and Company(DuPont)(Wilmington,DE)から、Fusabond(登録商標)226という商品名で入手できる、無水マレイン酸グラフト化直鎖低密度ポリエチレン(LLDPE);
・E/MAME−1 コポリマーの総重量を基準にして9.5重量%の、マレイン酸のモノエチルエステルの共重合単位を含み、30g/10分(190℃、2.16kg)のMFRを有する、エチレン/マレイン酸モノエチルコポリマー;
・E/MAME−2 コポリマーの総重量を基準にして15重量%の、マレイン酸のモノエチルエステルの共重合単位を含み、200g/10分(190℃、2.16kg)のメルトフローレートを有する、エチレン/マレイン酸モノエチルコポリマー;
・E/MAME−3 コポリマーの総重量を基準にして6重量%の、マレイン酸のモノエチルエステルの共重合単位を含み、5g/10分(190℃、2.16kg)のメルトフローレートを有する、エチレン/マレイン酸モノエチルコポリマー;
・E/MAME−4 コポリマーの総重量を基準にして10重量%の、マレイン酸のモノエチルエステルの共重合単位を含み、10g/10分(190℃、2.16kg)のメルトフローレートを有する、エチレン/マレイン酸モノエチルコポリマー;
・LLDPE 0.92g/ccの密度および200g/10分(190℃,2.16kg)のMFRを有し、Dow Chemical Company(Midland,MI)から入手できる、直鎖低密度ポリエチレン(LLDPE);
・Cloisite(登録商標)20A Southern Clay Products(Gonzales,Texas)から入手できる、26オングストローム(Å)のd間隔を有する、第4級アミン修飾ナノクレイ;
・Aerosil(登録商標)200 Degussa(Germany)から入手できる、表面処理していない親水性ヒュームドシリカ;
・ATH Albemarle Corporation(Baton Rouge,LA)からMartinal(登録商標)OL 104 LEOの商品名で入手できる、三水和アルミニウム粉末;および
・Irganox(登録商標)1010 Ciba(Tarrytown,NY)から入手できる、酸化防止剤。
【0036】
試験方法
d間隔
以下の実施例において、ナノクレイの層間隔またはd間隔は、PANalytical X’Pert MPD回折装置を使用して、XRDにより評価した。使用した入射光波長は、1.54Åであった。試験中、試料を1/8インチのプラークに圧縮成形し、1度/分の率で1度から10度までの2Θの範囲でスキャンした。Cloisite(登録商標)20Aは26オングストローム(Å)のd間隔を有するため、26Åより大きいd間隔値を有する実施例は、ポリマーマトリックス中で少なくとも部分的にインターカレートしていると考えられる。
【0037】
燃焼性能
燃焼を持続するための最低酸素濃度(限界酸素指数、LOI)は、ASTM D2863に準拠して測定した。
【0038】
試験した様々な組成物の可燃性を測定するために、UL−94試験を用いた。概して、試験の間中、試験品を垂直に保ち、試験品の下縁付近に置かれたブンゼンバーナーに暴露した。材料を3つのカテゴリー、V−0、V−1、およびV−2に分類し、V−0は最小可燃性である。カテゴリーは、バーナーの炎に数回暴露した後の、燃焼の持続、およびこのように処理された試験品の燃焼液滴が原綿を燃やすかどうかを示す。
【0039】
水分増加
ナノコンポジット組成物の水分増加は、試験品を70℃で162時間、水浴中に浸漬することにより測定した。浸水前後のパーセント重量増加を、水分増加として各試料について報告した。
【0040】
溶融粘度
溶融粘度は、Dynisco LCR 7001 Capillary Rheometerを使用して、190℃で測定した。使用したダイの寸法は、30mm/1mm(L/D)であった。
【0041】
比較例CE1〜CE3および実施例E1〜E8
以下の例の各々において、ブレンドまたはナノフィラーマスターバッチは、30mm二軸押出機(Coperion Inc.(Ramsey,NJ))を使用して配合することにより調製した。ポリマー樹脂(類)を、押出機の後方供給口(バレル1)から加え、次いでナノフィラーを、サイドスタッファーおよびウェイトロスフィーダーを備えたバレル5(9バレルのうち)に供給した。バレル温度は180℃に設定した。実施例E1〜E8の各々で、E/MAME成分を、押出しの前に60℃の真空炉内で一晩乾燥させた。物性試験の結果を表1に示す。
【0042】
例の各々における、マスターバッチ中のナノフィラーのd間隔ならびにマスターバッチのMFRおよび溶融粘度を、表1に報告する。CE2によって証明される通り、2.5重量%のCloisite(登録商標)をMAH−g−PEにブレンドしたとき、マスターバッチのMFRは約80%(すなわち、1.5g/10分から0.29g/10分に)低下した。しかるにE2〜4では、2.5重量%のCloisite(登録商標)をE/MAMEにブレンドしたとき、マスターバッチのMFRは、64%未満の低下であった。また、CE3により証明される通り、Cloisite(登録商標)をMAH−g−PEにブレンドするとき、20重量%のCloisite(登録商標)を加えることにより、マスターバッチのMFRは0.04g/10分に低下し、溶融粘度は1/10秒で1.6E+4Pa*Sに、または1/100秒で2780Pa*Sに、上昇した。したがって、20重量%を超えるCloisite(登録商標)をMAH−g−PE中に加えると、加工には高すぎる粘度を有する材料となるであろう。対照的に、20重量%のCloisite(登録商標)をE/MAME中に加えた試料E5は、1.6g/10分のMFRおよび1/10秒で5.9E+3Pa*Sまたは1/100秒で1096Pa*Sの溶融粘度を有し、40重量%のCloisite(登録商標)をE/MAME中に加えた試料E6は、0.07g/10分のMFRおよび1/10秒で1.2E+4Pa*Sまたは1/100秒で1950Pa*Sの溶融粘度を有し、50重量%のCloisite(登録商標)をE/MAME中に加えた試料E7は、0.1g/10分のMFRを有していた。
【0043】
【表1】

【0044】
実施例E9〜E12
試料E9〜E12の各々において、ポリマー樹脂およびナノフィラーマスターバッチの両者を押出機の後方供給口から供給したこと以外はE1の調製に使用したのと同じプロセスで、ブレンドまたはナノコンポジットを調製した。
【0045】
ナノコンポジット中のナノフィラーのd間隔およびナノコンポジットのMFRを、表2に示す。
【0046】
【表2】

【0047】
比較例CE4〜CE7および実施例E13〜16
CE4〜CE7およびE13〜E16の各々におけるブレンドまたはナノコンポジットは、(a)押出機の第1バレル温度を100℃の温度に設定し、ダイを含む、残りの全ての温度制御押出機部品を145℃の温度に設定したこと;(b)全てのポリマー樹脂およびナノフィラーマスターバッチは、押出機の後方供給口(バレル1)から加えたこと;および(c)全てのフィラー成分、すなわちATH、Cloisite(登録商標)、および/またはIrganox(登録商標)は、サイドスタッファーおよびウェイトロスフィーダーを備えたバレル8(9バレルのうちの)にて押出機に供給したこと;以外は試料E1の調製に使用したものに類似したプロセスにより調製した。
【0048】
表3に示す通り、E14ナノコンポジット(5重量%のCloisite(登録商標)および2重量%のE/MAME−1を含有する)は、CE4ナノコンポジット(5重量%のCloisite(登録商標)を含有するがE/MAMEを含有しない)のそれに比べて、高いMFRおよび低い水分増加を有する。
【0049】
表4に示す通り、CE7でMAH−g−PEの代わりにE/MAMEを加えることにより、CE6のそれに比べて低い水分増加を有するEVA/ATH組成物を生じることになる。加えて、E6またはE7で調製したナノクレイマスターバッチを使用してCloisite(登録商標)を加えたE15およびE16の各々で、ナノコンポジットは、CE6またはCE7のそれに比べて、匹敵する高いLOIレベル(それぞれ、31.2%および35.7%)を維持した。さらに、E15およびE16の各々は、CE6に比べて、優れたUL−94評点(V−0)および低い水分増加(それぞれ、7.4重量%および8.6重量%)を有する。
【0050】
【表3】

【0051】
【表4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)エチレンとC4〜C8不飽和酸のエステルの共重合単位を含むエチレン/エステルコポリマー及び(b)ナノフィラーを含み、(c)エチレンとC4〜C8不飽和酸のエステルの共重合単位を含む、エチレン/エステルコポリマー以外の第1のポリオレフィンをさらに含んでいてもよい組成物であって、(i)前記エチレン/エステルコポリマーは、高圧ランダム共重合により製造され、また前記コポリマーの総重量を基準にして約4重量%〜約20重量%の、少なくとも2つのカルボン酸基を有するC4〜C8不飽和酸のモノエステル類、少なくとも2つのカルボン酸基を有するC4〜C8不飽和酸のジエステル類、およびそれらの2つ以上の混合物からなる群から選択されるC4〜C8不飽和酸のエステルの共重合単位を含み、(ii)第1のポリオレフィンは、エチレンポリマー類、プロピレンポリマー類およびそれらの2つ以上のブレンドからなる群から選択される、組成物。
【請求項2】
第1成分(a)エチレン/エステルコポリマーは、前記組成物の総重量を基準にして約10〜約95重量%のレベルで存在し、第2成分(b)ナノフィラーは、前記組成物の総重量を基準にして約0.5〜約70重量%のレベルで存在する、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記第1成分(a)エチレン/エステルコポリマーは、前記組成物の総重量を基準にして約30〜約90重量%のレベルで存在する、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記第2成分(b)ナノフィラーは、前記組成物の総重量を基準にして約20〜約70重量%のレベルで存在する、請求項2に記載の組成物。
【請求項5】
前記エチレン/エステルコポリマーは、前記エチレン/エステルコポリマーの総重量を基準にして最高約10重量%までの、酢酸ビニル、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸の誘導体、メタクリル酸の誘導体からなる群から選択される第3のコモノマーの共重合単位をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記アクリル酸の誘導体は、アクリル酸アルキルである、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
前記メタクリル酸の誘導体は、メタクリル酸アルキルである、請求項5に記載の組成物。
【請求項8】
前記C4〜C8不飽和酸のエステルは、少なくとも2つのカルボン酸基を有するC4〜C8不飽和酸のモノエステルである、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
前記モノエステルは、マレイン酸水素エチルである、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
前記エチレン/エステルコポリマーは、エチレン/マレイン酸モノエステルダイポリマー、エチレン/マレイン酸モノエステル/アクリル酸n−ブチルターポリマー、エチレン/マレイン酸モノエステル/メタクリル酸n−ブチルターポリマー、エチレン/マレイン酸モノエステル/アクリル酸メチルターポリマー、エチレン/マレイン酸モノエステル/メタクリル酸メチルターポリマー、エチレン/マレイン酸モノエステル/アクリル酸エチルターポリマーおよびエチレン/マレイン酸モノエステル/メタクリル酸エチルターポリマーからなる群から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
前記ナノフィラーは、約0.9〜約200nmの粒径を有し、ナノサイズのシリカ、ナノクレイ、およびカーボンナノファイバーからなる群から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
前記ナノフィラーは、ヒュームドシリカ、コロイド状シリカ、溶融石英、シリケート、およびそれらの2つ以上の混合物からなる群から選択されるナノサイズのシリカである、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
前記ナノフィラーは、スメクタイト、ヘクトライト、モンモリロナイト、ベントナイト、バイデライト、サポナイト、ステベンサイト、ソーコナイト、ノントロナイト、イライト、およびそれらの2つ以上の混合物から成る群から選択されるナノクレイである、請求項11に記載の組成物。
【請求項14】
前記第3成分(c)第1のポリオレフィンは、前記組成物の総重量を基準にして最高約80重量%のレベルで存在する、請求項1に記載の組成物。
【請求項15】
前記組成物の総重量を基準にして約50〜約90重量%のレベルの、(d)ポリマーをさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項16】
前記成分(d)ポリマーは、ポリオレフィン類、ポリアミド類、ポリエステル類、ポリカーボネート類、ポリスチレン類、ポリ(アクリロニトリル−コ−ブタジン−コ−スチレン)、および熱可塑性ポリウレタンからなる群から選択される、請求項15に記載の組成物。
【請求項17】
前記成分(d)ポリマーは、エチレンとC4〜C8不飽和酸のエステルの共重合単位を含むエチレン/エステルコポリマー以外の第2のポリオレフィンであり、エチレンポリマー類、プロピレンポリマー類およびそれらの2つ以上のブレンドからなる群より選択される、請求項16に記載の組成物。
【請求項18】
請求項1に記載の組成物を含む、造形品。
【請求項19】
請求項15に記載の組成物を含む、造形品。
【請求項20】
前記造形品は、シート類、フィルム類、パネル類、およびワイヤーコーティングまたはケーブルコーティングからなる群から選択される、請求項19に記載の造形品。
【請求項21】
前記造形品はワイヤーコーティングまたはケーブルコーティングであり、請求項15に記載の組成物は難燃剤をさらに含む、請求項20に記載の造形品。
【請求項22】
(A)(i)エチレンとC4〜C8不飽和酸のエステルの共重合単位を含む、エチレン/エステルコポリマー及び(ii)ナノフィラーを含み、(iii)エチレンとC4〜C8不飽和酸のエステルの共重合単位を含む、エチレン/エステルコポリマー以外の第1のポリオレフィンをさらに含んでいてもよい混合物であって、前記エチレン/エステルコポリマーは、高圧ランダム共重合により製造され、かつコポリマーの総重量を基準にして約4〜約20重量%の、少なくとも2つのカルボン酸基を有するC4〜C8不飽和酸のモノエステル、少なくとも2つのカルボン酸基を有するC4〜C8不飽和酸のジエステル、およびそれらの2つ以上の混合物からなる群から選択されるC4〜C8不飽和酸のエステルの共重合単位を含み、第1のポリオレフィンは、エチレンポリマー類、プロピレンポリマー類およびそれらの2つ以上のブレンドからなる群から選択される、混合物を生成するステップ;
(B)前記混合物を溶融配合して、均質のナノフィラーマスターバッチ組成物を生成するステップ;および
(C)前記均質のナノフィラーマスターバッチ組成物を回収するステップ;
を含む、均質のナノフィラーマスターバッチ組成物を調製する方法。
【請求項23】
前記ナノフィラーは、前記混合物の総重量を基準にして約20〜約70重量%のレベルで前記混合物中に存在する、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
(A)(i)請求項22に記載の方法により得られるナノフィラーマスターバッチ組成物、および(ii)ポリアミドまたは第2のポリオレフィンから選択されるポリマーを含む混合物であって、前記第2のポリオレフィンは、エチレンとC4〜C8不飽和酸のエステルの共重合単位を含む、エチレン/エステルコポリマー以外であり、またエチレンポリマー類、プロピレンポリマー類およびそれらのブレンドからなる群から選択される、混合物を生成するステップ;
(B)前記混合物を溶融配合して、均質のナノコンポジット組成物を生成するステップ;および
(C)前記均質のナノコンポジット組成物を回収するステップ;
を含む、均質のナノコンポジット組成物を調製する方法。

【公表番号】特表2011−518229(P2011−518229A)
【公表日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−539698(P2010−539698)
【出願日】平成20年12月16日(2008.12.16)
【国際出願番号】PCT/US2008/086964
【国際公開番号】WO2009/079495
【国際公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】