説明

エッジ抽出方法及びエッジ抽出装置

【課題】曲部分に対しても高精度にエッジを抽出することができるエッジ抽出方法を提供する。
【解決手段】 画像データに対して平滑化を行うとともに、画素精度のエッジ点を抽出するエッジ点抽出ステップと、抽出した各エッジ点に基づいて、サブピクセルエッジ位置を取得するサブピクセルエッジ位置取得ステップと、前記エッジ点抽出ステップにおいて抽出した各エッジ点、又は前記サブピクセルエッジ位置取得ステップで取得した各サブピクセルエッジ位置における曲率を算出する曲率算出ステップと、前記サブピクセルエッジ位置取得ステップにおいて取得したサブピクセルエッジ位置の座標に対して、前記曲率と前記エッジ点抽出ステップで行った平滑化のスケールの2乗に比例する誤差量の関係式を補正量として用いて、前記サブピクセルエッジ位置を補正するサブピクセルエッジ位置補正ステップと、を含むエッジ抽出方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像装置等から入力された画像データに含まれるオブジェクトのエッジを抽出するためのエッジ抽出方法及びエッジ抽出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来からエッジ抽出は様々な処理で必要とされている。画像処理分野とコンピュータビジョン分野における認識技術や医療画像に適用するための画像セグメント分割等、パターン認識のための重要な形状特徴を得るために、エッジ情報は重要である。デジタル画像において、エッジは強い輝度値変化が生じる場所に位置すると定義されている。これまで、エッジ抽出のために様々なアルゴリズムが提案されてきており、代表的なものとしてcannyフィルタやsobelフィルタ等のオペレータを用いたもの等がある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
しかしながら、従来のcannyフィルタやsobelフィルタ等のオペレータを用いた手法は、画像を構成する各画素に対してエッジ点か否かを判断するものであり、得られるエッジ点の精度は画素単位である。通常、エッジ位置は、画素間に存在することが多くあり、画素の中心がエッジ点である場合は少ない。そのため、必ずしも精度良くエッジ抽出が行えるものではない。
【0004】
そこで、より精度良くエッジ抽出を行うために、サブピクセル精度でエッジを抽出する方法が提案されており、例えば、高解像度におけるゼロ交差点をみつけるために、ガウス関数の2次微分が畳込まれた画像に対して1次関数をフィッティングすることによってサブピクセルエッジ位置を求める手法等が提案されている(例えば、非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−097310号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Huerta,and G. Medioni, 「Detection of Intensity Changes withSubpixel Accuracy Using Laplacian-Gaussian Masks」、IEEETrans. PAMI Vol8,no.5, pp.651-664, Sept.1986.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来のサブピクセル精度でエッジを抽出する方法は、直線エッジに対しては画素精度でのエッジ抽出よりも高い精度でエッジ抽出を行うことができるが、曲部分においては必ずしも良い精度ではなく、誤差が存在するという問題がある。
【0008】
本発明は、上記のような種々の課題に鑑みてなされたものであって、曲部分に対しても高精度にエッジを抽出することができるエッジ抽出方法及びエッジ抽出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、請求項1記載のエッジ抽出方法は、画像データに対して平滑化を行うとともに、画素精度のエッジ点を抽出するエッジ点抽出ステップと、抽出した前記各エッジ点に基づいて、サブピクセルエッジ位置を取得するサブピクセルエッジ位置取得ステップと、前記エッジ点抽出ステップにおいて抽出した画素精度の各エッジ点、又は前記サブピクセルエッジ位置取得ステップで取得した各サブピクセルエッジ位置における曲率を算出する曲率算出ステップと、前記サブピクセルエッジ位置取得ステップにおいて取得したサブピクセルエッジ位置の座標に対して、前記曲率算出ステップで算出した曲率と前記エッジ点抽出ステップで行った平滑化のスケールの2乗に比例する誤差量の関係式を補正量として用いて、前記サブピクセルエッジ位置を補正するサブピクセルエッジ位置補正ステップと、を含むことを特徴としている。
【0010】
請求項2記載のエッジ抽出方法は、前記サブピクセルエッジ位置取得ステップが、前記エッジ点抽出ステップで抽出した各エッジ点に対して3次テーラー展開を用いることにより、3次の連続曲面関数を算出し、該連続曲面関数上における勾配方向上の輝度値の2次微分が零になる点を求めることにより、サブピクセルエッジ位置を取得することを特徴としている。
【0011】
請求項3記載のエッジ抽出方法は、前記誤差量の関係式が、予め曲率の異なる円のシミュレーション画像を生成し、該シミュレーション画像における各エッジ座標の理論値と前記シミュレーション画像に対して異なるスケールを用いて、それぞれ平滑化を行うとともに、画素精度のエッジ点を抽出し、抽出した各エッジ点に基づいて取得した各サブピクセルエッジ位置の座標の残差の自乗平均に基づいて、算出されることを特徴としている。
【0012】
請求項4記載のエッジ抽出装置は、画像データに対して平滑化を行うとともに、画素精度のエッジ点を抽出するエッジ点抽出手段と、抽出した前記各エッジ点に基づいて、サブピクセルエッジ位置を取得するサブピクセルエッジ位置取得手段と、前記エッジ点抽出手段において抽出した画素精度の各エッジ点、又は前記サブピクセルエッジ位置取得手段で取得した各サブピクセルエッジ位置における曲率を算出する曲率算出手段と、前記サブピクセルエッジ位置取得手段において取得したサブピクセルエッジ位置の座標に対して、前記曲率算出手段で算出した曲率と前記エッジ点抽出手段で行った平滑化のスケールの2乗に比例する誤差量の関係式を補正量として用いて、前記サブピクセルエッジ位置を補正するサブピクセルエッジ位置補正手段と、を含むことを特徴としている。
【0013】
請求項5記載のエッジ抽出装置は、前記サブピクセルエッジ位置取得手段が、前記エッジ点抽出手段で抽出した各エッジ点に対して3次テーラー展開を用いることにより、3次の連続曲面関数を算出し、該連続曲面関数上における勾配方向上の輝度値の2次微分が零になる点を求めることにより、サブピクセルエッジ位置を取得することを特徴としている。
【0014】
請求項6記載のエッジ抽出装置は、予め曲率の異なる円のシミュレーション画像を生成し、該シミュレーション画像における各エッジ座標の理論値と前記シミュレーション画像に対して異なるスケールを用いて、それぞれ平滑化を行うとともに、画素精度のエッジ点を抽出し、抽出した各エッジ点に基づいて取得した各サブピクセルエッジ位置の座標の残差の自乗平均に基づいて、曲率と平滑化のスケールの2乗に比例する前記誤差量の関係式を算出する誤差量関係式算出手段を備えることを特徴としている。
【発明の効果】
【0015】
請求項1及び4記載の発明によれば、曲率と平滑化のスケールの2乗に比例する誤差量の関係式を補正量として用いて、取得したサブピクセルエッジ位置を補正するので、平滑化の影響で発生する誤差が補正され、曲部分に対しても高精度なエッジ抽出を行うことができる。
【0016】
請求項2及び5に記載の発明によれば、抽出した画素精度のエッジ点において3次の曲面フィッティングを行い、勾配方向で2次微分が零となる点を求めることにより、画素精度のエッジよりも細かいサブピクセル精度でのエッジを得ることができる。これにより、精度の高いエッジ抽出を行うことができる。
【0017】
請求項3及び6記載の発明によれば、予め曲率の異なる円のシミュレーション画像を生成して、該シミュレーション画像における各エッジ座標の理論値と前記シミュレーション画像から取得した各サブピクセルエッジ位置の座標の残差の自乗平均に基づいて、曲率と平滑化のスケールに対する誤差量の関係式を算出することにより、この関係式を補正量として用いて取得したサブピクセルエッジ位置を補正することができる。これにより、平滑化の影響で発生する誤差と曲面連続関数フィッティング時に発生する近似誤差による曲部分の誤差を補正することができるので、曲部分に対しても高精度なエッジ抽出を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係るエッジ抽出装置の構成の一例を示す概略ブロック図である。
【図2】本発明に係るエッジ抽出処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【図3】勾配方向について説明するための概略説明図である。
【図4】直線エッジにおいて抽出されたサブピクセルエッジ位置を説明するための概略説明図である。
【図5】曲部分におけるサブピクセルエッジ位置を説明するための概略説明図であって、(a)は、曲線エッジとサブピクセルエッジ位置の関係を示しており、(b)は内接円とエッジ点の関係を示している。
【図6】異なる平滑化のスケールσ毎の曲率κと誤差εの関係を示すグラフである。
【図7】平滑化のスケールσの2乗と比例定数Aの関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に本発明に係るエッジ抽出装置1について、図面を参照しつつ説明する。図1に示すエッジ抽出装置1は、本発明に係るエッジ抽出方法を実行するためのものであって、通常のコンピュータ等から構成されており、画像メモリ2と、ハードディスク3と、RAM(Random Access Memory)4と、CPU(Central Proceessing Unit)5と、操作部6と、表示部7と、インターフェース8等を備えている。これら各部は、図1に示すように、互いにシステムバス9に接続され、このシステムバス9を介して種々のデータ等が入出力されて、CPU5の制御の下、種々の処理が実行される。
【0020】
画像メモリ2は、撮像装置10により撮像された画像データ等を記憶しておくものである。ハードディスク3は、画像メモリ2に記憶された画像データからエッジ抽出を行うための処理プログラム等を格納している。尚、本実施形態では、エッジ抽出を行うための処理プログラムをハードディスク3に格納している例を示しているが、これに代えて、コンピュータ読み取り可能な記憶媒体(不図示)に格納しておき、この記録媒体から処理プログラムを読み出すように構成することも可能である。
【0021】
RAM4は、ハードディスク3から読み出された処理プログラムを一時的に記憶したり、CPU5の作業領域として用いられるものである。CPU5は、この処理プログラムに従って画像データからエッジの抽出処理等を行うものである。
【0022】
操作部6は、マウスやキーボード等で構成されており、操作者が種々のデータ及び操作指令等の入力を行うために使用されるものである。表示部7は、液晶ディスプレイやCRT(Cathode Ray Tube)等から構成されるものであって、画像メモリ7に記憶された画像データやCPU5によるエッジ抽出の結果等を表示するものである。撮像装置10は、CCDやCMOSといった撮像素子を備えるものであって、インターフェース8を介してエッジ抽出装置1に接続されている。
【0023】
以下、エッジ抽出装置1による処理の流れについて図1及び図2のフローチャートを用いながら説明する。尚、図2に示す処理は、ハードディスク3に格納された処理プログラムに従ってCPU5により実行されるものである。
【0024】
図2に示すように、まずエッジ抽出装置1では、エッジ点抽出部(エッジ点抽出手段)11により、撮像装置10からインターフェース8を介して画像メモリ2に記憶された画像データに対して画素精度でのエッジ抽出を行う(S101)。ここでのエッジ抽出には、例えば、Cannyオペレータを用いる。このCannyオペレータにより画像データに対してガウス平滑化を行うとともに、画素精度のエッジ点の抽出を行う。その結果、画像データを構成する各画素における勾配(I,I)が算出される。尚、本実施形態ではCannyオペレータを用いて、画素精度でのエッジの抽出を行う例を示しているが、画素精度のエッジの抽出には、Sobelオペレータ等、他の公知の手法を用いても良い。
【0025】
画素精度のエッジ点が抽出された後、より細かなサブピクセル精度でのエッジ位置を抽出するために、サブピクセルエッジ位置取得部(サブピクセルエッジ位置取得手段)12では、S101で抽出した画素精度の各エッジ点に対して3次曲面フィッティングを行う(S102)。具体的には、抽出した各エッジ点に対して3次テーラー展開を行うことにより、3次の連続曲面関数を算出する。この3次テーラー展開によって得られる連続曲面関数I(x,y)は数式(1)のように表される。
【数1】

【0026】
この連続曲面関数I(x,y)における各係数は、画像とガウス平滑化関数、微分関数の畳み込みを用いて計算された各方向における偏微分値I、I(勾配)を組み合わせることにより近似することができ、Ixx,Iyy,Ixy,Ixxx,Iyyy,Ixxy,Ixyyは、数式(2)によって計算することができる。
【数2】

【0027】
次に、サブピクセルエッジ位置取得部12では、この算出された連続曲面関数上における勾配方向上の輝度値の2次微分が零になる点であるサブピクセルエッジ位置を算出する(S103)。図3は、勾配方向の例を示している。サブピクセルエッジ位置は、数式(3)に示すように、勾配方向を示すベクトルに勾配方向に沿ってどれだけ動くかを表す量を示す係数tを乗じたもので表される。
【数3】

【0028】
従って、以下の数式(4)を解いて、勾配方向に沿ってどれだけ動くかを表す量を示すtを求めて、数式(3)に代入することにより、サブピクセルエッジ位置の座標(x,y)を取得することができる。この数式(4)を解くと、tは数式(5)のように導かれる。尚、本実施形態では、このようにS102、S103の処理によりサブピクセルエッジ位置を取得しているが、サブピクセルエッジ位置の取得方法は、これに限定されるものではなく、従来公知の方法を適用しても良い。
【数4】

【数5】

【0029】
このS102、S103の処理により、取得したサブピクセルエッジ位置は、直線エッジを抽出する場合は良い精度の結果を得ることができるが、曲部分においては、誤差を有する。これは、曲部分が、ガウス平滑化の影響を受けてエッジ位置が移動してしまうために発生する誤差と連続曲面関数のフィッティング時の近似誤差によるものである。従って、上記の処理により取得したサブピクセルエッジ位置を補正する必要がある。
【0030】
ここでは、この取得したサブピクセルエッジ位置の誤差のふるまいについて図4及び図5を用いて説明する。図4は、直線エッジにおいて抽出されたサブピクセルエッジ位置を示している。エッジ抽出フィルタ中の斜線領域D1の面積と白領域D2の面積が等しくなる位置がエッジの位置になる。曲線エッジの場合は、円内部の面積と円外部の面積が等しくなる位置が、エッジの位置になる。図5の(a)に示すように、円外部の粗い斜線部Sと細かい斜線部S1を足し合わせた面積と円内部の面積S2が、図4における斜線領域D1の面積と白領域D2の面積とそれぞれ等しい場合、エッジ位置は、図4と同じ位置になる。つまり、円の場合は実際のエッジ位置より若干円の内側に移動しているということになる。
【0031】
従って、図5の(b)に示すように、実際のエッジ点から復元された誤差がない理論上の内接円と抽出されたエッジ点Pの関係を表した場合、ずれ量(誤差)εは、図5の(a)の粗い斜線領域の面積Sとガウス平滑化の範囲Lを用いて数式(6)のように表される。
【数6】

【0032】
また、実際のエッジ点の座標を原点(0,0)とすると、内接円Cの方程式は、数式(7)のように表される。また、粗い斜線領域の面積Sは、数式(8)にように表される。
【数7】

【数8】

【0033】
従って、数式(7)をx=0においてテーラー展開し、yの近似式として表した数式(9)を数式(8)のyに代入すると、面積Sは、数式(10)のように表される。
【数9】

【数10】

【0034】
この数式(10)で表されたSを数式(6)に代入すると、誤差εは、数式(11)のように表される。但し、κ=1/Rは曲率である。この数式(11)は、誤差εが内接円の半径Rの逆数である曲率κとガウス平滑化の範囲Lの2乗に比例していることを示している。また、ガウス平滑化の範囲Lは、ガウス平滑化のスケールσに比例する。従って、数式(11)は、係数aを用いて数式(12)のように表される。
【数11】

【数12】

【0035】
つまり、数式(12)より、S103までの処理で取得したサブピクセルエッジ位置の座標と実際のエッジ位置の座標との誤差εは、曲率κと比例し、ガウス平滑化のスケールσの2乗に比例していることが示されている。また、数式(3)において誤差をε(κ(x,y),σ)と表して、これを考慮すると、数式(3)は、数式(13)のように表される。
【数13】

【0036】
従って、曲率κと数式(12)における係数aがわかれば、S103の処理で取得したサブピクセル位置を補正することができる。そこで、曲率算出部13では、S101の処理で抽出した各エッジ点における曲率κを算出する(S104)。具体的には、ZH(Zuniga‐Haralick)オペレータを用いて数式(14)のように輝度値の1次偏微分、2次偏微分を項として含み、求められる。この数式(14)によって求められる曲率は、輝度値のコントラストに依存しない。尚、本実施形態では、S101の処理で抽出した各エッジ点における曲率κを算出する例を示しているが、S103の処理により取得した各サブピクセルエッジ位置おける曲率を算出して利用することも可能である。
【数14】

【0037】
また、エッジ抽出装置1では、誤差量関係式算出部15により、予めガウス平滑化のスケールσの2乗に比例する係数aが具体的にどのような値をとるのかを求め、誤差ε(κ(x,y),σ)を推定して、誤差量の関係式を算出しておく。そのために、予め円のシミュレーション画像を作成し、数式(15)に示すように、各エッジ点(1〜N)におけるエッジ座標の理論値とこのシミュレーション画像に対してS101〜S103までと同様の処理、つまり、シミュレーション画像に対して平滑化を行うとともに、画素精度のエッジ点を抽出し、抽出した各エッジ点の輝度値に対して3次テーラー展開を用いることにより、3次の連続曲面関数を算出し、該連続曲面関数上における勾配方向上の輝度値の2次微分が零になる点を求めることにより取得したサブピクセルエッジ位置の座標の残差の自乗平均を算出する。この誤差ε(κ,σ)は、異なる曲率κの円、異なる平滑化のスケールσ毎に算出する。尚、本実施形態では、シミュレーション画像に対するサブピクセルエッジ位置をS101〜S103の処理を用いて取得する例について示しているが、シミュレーション画像に対してのサブピクセルエッジ位置の取得方法は、これに限定されるものではなく、従来公知の方法を用いることも可能である。
【数15】

【0038】
まず、曲率κと誤差εの関係を求めるために、ここでは、平滑化のスケールσ=1.5,1.4,1.2,1.0,0.8,0.6のそれぞれの値で固定し、曲率κを変えながら数式(15)を用いて誤差εを算出する。その結果、図6のグラフに示すように、曲率κと誤差εは比例関係式y=Ax+Bの形で表される。但し、yは誤差ε、Aは比例定数、xは曲率κ、Bは切片を示している。具体的には、図6に示すように、曲率κと誤差εの関係は、平滑化のスケールσ=0.6の場合には、y=0.354x+0.0026、σ=0.8の場合には、y=0.701x+0.0017、σ=1.0の場合には、y=1.0756x+0.0018、σ=1.2の場合には、y=1.4977x+0.0023、σ=1.4の場合には、y=1.9757x+0.0034、σ=1.5の場合には、y=2.2298x+0.0042という関係になり、切片Bは、ほぼ0を示し、比例係数Aは、ほぼ平滑化のスケールσの2乗に等しい値になる。
【0039】
そして、図6で示されている平滑化σの2乗と比例定数Aの関係を示すと、図7のように、A=0.9849σ^2+0.0414という比例関係式で表される。この図7のグラフ化した結果から、数式(12)における係数aは、a=0.9849というように決定することができる。尚、本実施形態では、係数a=0.9849に決定しているが、この係数aの値は、実装の仕方により変化するものであり、必ずしも係数a=0.9849になるとは限らないものである。
【0040】
このようにして求められた係数aの値を数式(12)に代入すると、誤差量εの関係式は、数式(16)のように表される。
【数16】

【0041】
従って、サブピクセル位置補正部14では、この数式(16)の誤差量εを示す式を補正量として用いて、サブピクセルエッジ位置の補正を行う(S105)。具体的には、数式(16)を数式(13)に代入して数式(17)の補正式を得て、この補正式にS104で算出した各エッジの曲率κと、S101の処理で用いたガウス平滑化のスケールσを当てはめることにより、S103の処理で取得したサブピクセルエッジ位置の補正を行う(S105)。これにより、曲部分の誤差が補正されるので、曲部分に対してもより高精度なエッジの抽出を行うことができる。
【数17】

【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明に係るエッジ抽出方法及びエッジ抽出装置は、撮像装置等から入力された画像データに含まれるオブジェクトのエッジを抽出するための技術として有効に利用することができる。
【符号の説明】
【0043】
1 エッジ抽出装置
11 エッジ点抽出部(エッジ点抽出手段)
12 サブピクセルエッジ位置取得部(サブピクセルエッジ位置取得手段)
13 曲率算出部(曲率算出手段)
14 サブピクセルエッジ位置補正部(サブピクセルエッジ位置補正手段)
15 誤差量関係式算出部(誤差量関係式算出手段)
C 内接円

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像データに対して平滑化を行うとともに、画素精度のエッジ点を抽出するエッジ点抽出ステップと、
抽出した前記各エッジ点に基づいて、サブピクセルエッジ位置を取得するサブピクセルエッジ位置取得ステップと、
前記エッジ点抽出ステップにおいて抽出した画素精度の各エッジ点、又は前記サブピクセルエッジ位置取得ステップで取得した各サブピクセルエッジ位置における曲率を算出する曲率算出ステップと、
前記サブピクセルエッジ位置取得ステップにおいて取得したサブピクセルエッジ位置の座標に対して、前記曲率算出ステップで算出した曲率と前記エッジ点抽出ステップで行った平滑化のスケールの2乗に比例する誤差量の関係式を補正量として用いて、前記サブピクセルエッジ位置を補正するサブピクセルエッジ位置補正ステップと、を含むことを特徴とするエッジ抽出方法。
【請求項2】
前記サブピクセルエッジ位置取得ステップは、前記エッジ点抽出ステップで抽出した各エッジ点に対して3次テーラー展開を用いることにより、3次の連続曲面関数を算出し、該連続曲面関数上における勾配方向上の輝度値の2次微分が零になる点を求めることにより、サブピクセルエッジ位置を取得することを特徴とする請求項1記載のエッジ抽出方法。
【請求項3】
前記誤差量の関係式は、予め曲率の異なる円のシミュレーション画像を生成し、該シミュレーション画像における各エッジ座標の理論値と前記シミュレーション画像に対して異なるスケールを用いて、それぞれ平滑化を行うとともに、画素精度のエッジ点を抽出し、抽出した各エッジ点に基づいて取得した各サブピクセルエッジ位置の座標の残差の自乗平均に基づいて、算出されることを特徴とする請求項1又は2記載のエッジ抽出方法。
【請求項4】
画像データに対して平滑化を行うとともに、画素精度のエッジ点を抽出するエッジ点抽出手段と、
抽出した前記各エッジ点に基づいて、サブピクセルエッジ位置を取得するサブピクセルエッジ位置取得手段と、
前記エッジ点抽出手段において抽出した画素精度の各エッジ点、又は前記サブピクセルエッジ位置取得手段で取得した各サブピクセルエッジ位置における曲率を算出する曲率算出手段と、
前記サブピクセルエッジ位置取得手段において取得したサブピクセルエッジ位置の座標に対して、前記曲率算出手段で算出した曲率と前記エッジ点抽出手段で行った平滑化のスケールの2乗に比例する誤差量の関係式を補正量として用いて、前記サブピクセルエッジ位置を補正するサブピクセルエッジ位置補正手段と、を含むことを特徴とするエッジ抽出装置。
【請求項5】
前記サブピクセルエッジ位置取得手段では、前記エッジ点抽出手段で抽出した各エッジ点に対して3次テーラー展開を用いることにより、3次の連続曲面関数を算出し、該連続曲面関数上における勾配方向上の輝度値の2次微分が零になる点を求めることにより、サブピクセルエッジ位置を取得することを特徴とする請求項4記載のエッジ抽出装置。
【請求項6】
予め曲率の異なる円のシミュレーション画像を生成し、該シミュレーション画像における各エッジ座標の理論値と前記シミュレーション画像に対して異なるスケールを用いて、それぞれ平滑化を行うとともに、画素精度のエッジ点を抽出し、抽出した各エッジ点に基づいて取得した各サブピクセルエッジ位置の座標の残差の自乗平均に基づいて、曲率と平滑化のスケールの2乗に比例する前記誤差量の関係式を算出する誤差量関係式算出手段を備えることを特徴とする請求項5記載のエッジ抽出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−133954(P2011−133954A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−290455(P2009−290455)
【出願日】平成21年12月22日(2009.12.22)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 〔発行者名〕 社団法人精密工学会 〔刊行物名〕 ViEW2009 ビジョン技術の実利用 ワークショップ講演論文集 〔発行年月日〕 平成21年12月 3日
【出願人】(301021658)株式会社三次元メディア (15)
【Fターム(参考)】