説明

エッジ点抽出装置、車線検出装置、およびプログラム

【課題】 低い処理負荷で車線を良好に検出できるエッジ点抽出装置、車線検出装置およびプログラムを提供する。
【解決手段】 画像処理ECU32は、カメラ30から取得した路面画像から画素グループを選択する(S2)。次に、画素グループの各画素の色成分ごとに平均輝度値を算出する(S3)。平均輝度値が第1閾値以上の色成分があれば、その中で最大のものを除いて残りの色成分に基づき輝度値変換し(S4,S5)、平均輝度値が第2閾値以下の色成分があれば、その中で最小のものを除いて残りの色成分に基づき輝度値変換し(S6,S7),または全ての色成分を用いて輝度値変換する(S8)。S5,S7,S8で変換した輝度値パラメータからエッジ点を抽出し(S9)、エッジ点に基づきエッジ線の抽出を行い(S11)、エッジ線から車線位置を算出する(S12)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両前方の路面を撮影した路面画像に基づいて車線を検出する車線検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両前方の路面を撮影した路面画像を画像処理して車線を検出する車線検出装置が提案されている。ここでいう車線とは、実線や破線からなる白線や有色線等のペイント、または車両の走行方向に沿って間欠的に配置される道路鋲などによって構成される線である。
【0003】
車線検出装置としては、撮影した路面画像からペイントや道路鋲などによって輝度値が変化した点であるエッジ点を抽出し、抽出された複数のエッジ点に基づいて車線を検出するものがある。車線検出装置によって検出された車線は、車両の進行方向や速度、操舵角などの挙動情報と組み合わせて、車両が車線を逸脱するか否かの予測に利用されたり、自動操舵角制御に用いる情報の一つとして利用されたりする。
【0004】
ところで、ペイントの色や周囲の明るさによっては、路面画像において車線と道路とのコントラストの差が小さくなり、精度良くエッジ点が抽出されず、車線の認識が困難になる場合がある。
【0005】
そこで、従来、撮影した路面の画像を三色のカラー信号として独立して取り込み、路面と車線とが最大のコントラストとなるカラー信号の組み合わせを得て、その組み合わせを用いて車線の認識処理を行う車載用画像処理カメラ装置が提案されている(特許文献1参照)。この装置は、例えば三色のカラー信号のうち、赤成分と緑成分から合成した黄色の画像を用いることで、黄線からなる車線の検出精度を向上させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−32669号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1の技術では、最適なカラー信号の組み合わせを見つけるために、複数のカラー信号の組み合わせそれぞれについて画像を合成し、コントラスト比が最大となるカラー信号の組み合わせを判定していた。このような処理を行うことによって装置の処理負荷が高くなるため、処理の遅延が発生しやすかったり、高性能の処理装置が必要となってコストアップに繋がりやすいという問題があった。
【0008】
本発明の目的は、処理負荷の増加を抑制しエッジ点を良好に抽出できるエッジ点抽出装置、および車線検出装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した問題を解決するためになされた請求項1に記載のエッジ点抽出装置は、車両前方の路面を撮影した画像であって、複数の色成分を個別に抽出可能な路面画像を取得して、その路面画像面上にて一列に並んだ複数の画素からなる画素グループを抽出し、当該画素グループにおいて、路面画像から抽出可能な複数の色成分のうち、輝度値の平均値が最も高く、かつ当該平均値が所定値の閾値以上である色成分を選択する。ここでいう輝度値とは、各画素の色成分ごとに与えられる色の濃淡の階調を示すパラメータである。
【0010】
そして、複数の色成分のうち、選択された色成分を除く色成分を用いて、画素グループにおけるエッジ点を抽出する。具体的には、輝度値の変化が大きい、即ちコントラストが大きい領域をエッジ点と判断して抽出する。
【0011】
このように構成されたエッジ点抽出装置においては、エッジ点を抽出する際に、輝度値が上限に達してコントラストが低くなってしまった可能性の高い色成分が除かれることとなり、それ以外の色成分を用いて精度良くエッジ点を抽出することができる。
【0012】
またこのエッジ点抽出装置は、エッジ点の抽出精度の低下を招く可能性のある色成分を除くことができるため、特許文献1のように複数の色成分の組み合わせについてそれぞれコントラストを算出してコントラストが最大のものを求める処理を行う必要がなくなるため、処理負荷の増加を抑制できる。また、このようにエッジ点の抽出精度が高まることで、車線の検出精度も向上できる。
【0013】
なお、上述した所定の閾値は、輝度値の上限値付近(例えば上限の85%)に設定しておくとよい。
輝度値が上限に達してコントラストが低くなる理由について説明する。従来の装置では、ある色成分Aにおいて輝度値が上限値に達すると、輝度値がそれ以上の値をとらなくなる(飽和する)ため、その色成分Aにおいて輝度値の変化は小さくなる。その結果、色成分Aを含む複数の色成分を用いて輝度値の変化を測定すると、色成分Aの輝度値の変化が小さいことの影響を受けて全体としても輝度値の変化が小さくなってしまい、エッジ点の測定精度が低下してしまう。
【0014】
請求項2に記載のエッジ点抽出装置は、車両前方の路面を撮影した画像であって、複数の色成分を個別に抽出可能な路面画像を取得して、その路面画像面上にて一列に並んだ複数の画素からなる画素グループを抽出し、当該画素グループにおいて、路面画像から抽出可能な複数の色成分のうち、所定の閾値を超えた画素の数が所定数以上かつ最も多い色成分を選択する。そして、複数の色成分のうち、選択された色成分を除く色成分を用いて、エッジ点を抽出する。
【0015】
このように構成されたエッジ点抽出装置は、請求項1に記載のエッジ点抽出装置と同様に、精度良くエッジ点を抽出することができ、処理負荷の増加を抑制できる。また、エッジ点の抽出精度が高まることで、車線の検出精度も向上できる。
【0016】
なお、上述した所定の閾値は、輝度値の上限値付近(例えば上限の95%)に設定しておくとよい。
請求項3に記載のエッジ点抽出装置は、車両前方の路面を撮影した画像であって、複数の色成分を個別に抽出可能な路面画像を取得して、その路面画像面上にて一列に並んだ複数の画素からなる画素グループを抽出し、当該画素グループにおいて、路面画像から抽出可能な複数の色成分のうち、輝度値の平均値が最も低く、かつ当該平均値が所定値の閾値以下である色成分を選択する。そして、複数の色成分のうち、選択された色成分を除く色成分を用いて、画素グループにおけるエッジ点を抽出する。
【0017】
このように構成されたエッジ点抽出装置においては、エッジ点を抽出する際に、輝度値が全体的に低く、コントラストを充分に示さなくなってしまった可能性の高い色成分が除かれることとなり、それ以外の高いコントラストを有する色成分を用いて精度良くエッジ点を抽出することができる。また、このようにエッジ点の抽出精度が高まることで、車線の検出精度も向上できる。
【0018】
なお、所定の閾値は、輝度値の下限値付近に設定しておくとよい。
請求項4に記載のエッジ点抽出装置は、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のエッジ点抽出装置において、画素グループが、路面画像において、略水平方向かつ、車両前方の所定の領域を境界とした左側の範囲および右側の範囲のうちの少なくともいずれか一方に設定されることを特徴とする。
【0019】
一般的なカメラシステムには、撮影画像の明るさに応じて露出を制御する機能がある。そして撮影画像の一部が暗く一部が明るい場合、いずれかを基準として露出を制御すると、明るくなりすぎる部分や暗くなりすぎる部分が発生する可能性がある。上記請求項4に記載のエッジ点抽出装置であれば、路面画像の左右を別々にしてエッジ点抽出のための輝度値を判断するため、例えば路面画像の右側は明るく左側は暗いといったように、左右全体を平均した輝度は普通であるが左右の一方は輝度が高く他方は輝度が低い場合にも、エッジ抽出に用いる色成分を左右それぞれで適切に選択できる。
【0020】
なお、画素グループは、路面画像の左右のいずれか以外に設定される構成であってもよい。例えば、路面画像を左右方向に3箇所以上に分割し、その分割された領域のいずれかに画素グループが設定される構成であってもよい。
【0021】
また、路面画像の複数の色成分は、請求項5に記載のように、赤,緑,青の三色(光の三原色)としてもよい。
請求項6に記載の車線検出装置は、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のエッジ点抽出装置を構成要素として含み、さらに、抽出されたエッジ点に基づいて、路面上の車線を検出する手段を備えることを特徴とする車線検出装置である。
【0022】
エッジ点から車線を検出する具体的な手法は特に限定されないが、例えばハフ変換を用いて線分を決定し、その線分に基づいて車線を決定することが考えられる。
また、請求項7に記載のプログラムは、コンピュータシステムに、請求項6に記載の車線検出装置を構成する各手段としての機能を実現させるためのプログラムである。
【0023】
このようなプログラムにより制御されるコンピュータシステムは、請求項6に記載の車線検出装置の一部を構成することができる。
なお、上述したプログラムは、コンピュータシステムによる処理に適した命令の順番付けられた列からなるものであって、車線検出装置の備える記憶装置に予め記憶しておくことや、各種記録媒体や通信回線を介して車線検出装置やこれを利用するユーザに提供されるものである。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】実施例の車線逸脱警報システムの構成を示すブロック図である。
【図2】画像処理ECUによる逸脱警報処理の処理手順を示すフローチャートである。
【図3】撮影された路面画像の一例を示す図である。
【図4】3色の色成分に基づき輝度値変換した輝度値グラフを示す図(A)と、2色の色成分に基づき輝度値変換した輝度値グラフを示す図(B)である。
【図5】撮影された路面画像の一例を示す図である。
【図6】輝度値グラフの一部を拡大した拡大図(A),(B)である。
【図7】3色の色成分に基づき輝度値変換した輝度値グラフを示す図(A)と、2色の色成分に基づき輝度値変換した輝度値グラフを示す図(B)である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下に本発明の実施形態を図面と共に説明する。
[実施例]
(1)車線逸脱警報システムの構成
車線逸脱警報システム1は、自動車等の車両に搭載されて用いられるシステムであって、図1に示すように、CANによる車内ネットワーク10と、画像センサ12と、ブザー14と、を有している。
【0026】
車内ネットワーク10は、車両の旋回方向への角速度(即ち、ヨーレート)を検出するヨーセンサ20と、車両の走行速度(車速)を検出する車速センサ22と、を有している。
【0027】
画像センサ12は、カメラ30と、カメラ30が撮影した画像を処理し、ブザー14にブザー要求の制御信号を出力する画像処理ECU32と、を備える。また画像処理ECU32は、撮影画像の明るさに応じてカメラ30の露出制御を行う。なお、この画像処理ECU32が本発明におけるエッジ点抽出装置および車線検出装置に相当する。
【0028】
カメラ30は、車両の例えば中央前方側に装着されて、車両前方の路面を含む風景を所定の時間間隔(本実施例では1/15s)で撮影して、その撮影された路面画像のデータ(以降、当該データを路面画像という場合がある)を画像処理ECU32に出力するものである。
【0029】
本実施例のカメラ30は、路面画像を光の三原色R(赤),G(緑),B(青)の色成分の組み合わせで撮影するように構成されており、路面画像の各画素はR,G,Bの各色についてそれぞれ256段階の階調を組み合わせることで色や明るさを表現している。よって、路面画像は各色成分を個別に抽出することができる。なおカメラ30としては、例えば公知のCCDイメージセンサ、あるいはCMOSイメージセンサを用いることができる。
【0030】
画像処理ECU32は、図示しないCPU,ROM,RAM,入出力インターフェース,およびこれらの構成を接続するバスライン等からなる周知のマイクロコンピュータを中心に構成されている。
【0031】
画像処理ECU32は、ROMから読み込んだアプリケーションプログラムやRAMに格納された各種データに従って、後述する逸脱警報処理などを実行する。また、逸脱警報処理においては、カメラ30から路面画像を受信する毎に、RAMにそのデータを格納し、そのデータに基づいて車線の検出を実行する。
【0032】
また画像処理ECU32は車内ネットワーク10と接続しており、ヨーセンサ20,および車速センサ22と通信して各センサの出力値を取得する。
また画像処理ECU32はブザー14と接続しており、後述する逸脱警報処理において警報を行うべきと判断された際に、ブザー14にブザー要求の制御信号を出力する。
【0033】
ブザー14は、画像処理ECU32より上記制御信号を受信すると、車両内部に警報音を発報させる。
(2)画像処理ECU32による処理
以下に、画像処理ECU32により実行される逸脱警報処理の処理手順を、図2に基づいて説明する。この逸脱警報処理は、車両のアクセサリスイッチがオンにされることで画像センサ12に電源が投入されると起動され、アクセサリスイッチがオフにされて電源が遮断されるまで繰り返し実行される。
【0034】
この逸脱警報処理では、まず、路面画像のデータをカメラ30から取得する(S1)。
次に、路面画像面上における一列の画素の集合である検査ラインを設定し、その設定された検査ラインにおける画素グループを選択する(S2)。図3に、撮影された路面画像40の一例を示す。検査ライン42は、車両の進行方向(図中、矢印44の方向)と交差する方向かつ水平方向に対応する路面画像40面上の方向(路面画像40における左右方向)に、路面画像40の上下に並ぶように複数設定されている。
【0035】
また、路面画像40には上下方向に基準線46が設定されている。この基準線46は、車両が直進した場合に車両の中心が通過する位置に対応する線である。この基準線46を基準として、路面画像40において車両前方の左側と右側の領域が分けられる。そして、検査ライン42における基準線46の左側と右側のそれぞれが、画素グループ42L,42Rとなる。
【0036】
なお、図3においては、路面画像40に、1つの検査ライン42の各画素に対応する色成分Rの輝度値を示すグラフ48R,色成分Gの輝度値を示すグラフ48G,色成分Bの輝度値を示すグラフ48Bを重畳して記載している。
【0037】
本逸脱警報処理では、路面画像40に設定された多数の検査ライン42の画素グループ42R,42Lそれぞれについて、例えば路面と車線との境界点のように画素の輝度値が大きく変化する点、つまりコントラストの大きい点をエッジ点として抽出する。
【0038】
検査ライン42は、上述したように路面画像40において上下に並ぶように複数設定されているので、それら検査ライン42に対応する多数の画素グループからエッジ点を検出することで、路面画像40の広い範囲からエッジ点を抽出し、その抽出されたエッジ点に基づいて車線の位置を検出する。なお図3においては、上下に並ぶ多数の検査ライン42(画素グループ42L,42R)の一部のみを示している。
【0039】
それぞれの画素グループに対するエッジ点を抽出する処理を後述するS3〜S9にて行う。S2では、路面画像40における画素グループのいずれか1つであって、当該路面画像40において未だ選択されていない(S3〜S9の処理が行われていない)画素グループを、エッジ点を抽出する処理対象として選択する。
【0040】
次に、S2にて設定した画素グループに関して、色成分ごとに平均輝度値を算出する(S3)。ここでは、画素グループの全ての画素を対象として、各画素の輝度値の平均値を、R,G,Bそれぞれの色成分ごとに算出する。
【0041】
次に、S3にて算出した平均輝度値が所定の第1閾値以上である色成分があるか否かを判断する(S4)。平均輝度値が第1閾値以上の色成分があれば(S4:YES)、さらにその中で平均輝度値が最大の色成分を除いた残りの色成分に基づく輝度値変換を行う(S5)。例えば、R,G,Bの色成分のうち、Rの平均輝度値のみが第1閾値以上であった場合には、画素グループの画素ごとにG,Bの色成分の輝度値の平均値を算出した輝度値データを取得する。
【0042】
なお以下の記載において、輝度値変換とは、上述したように、画素グループにおいて画素ごとに各色成分の輝度値の平均値を算出してなるデータである輝度値データを取得する処理を指すものとする。
【0043】
このS4,S5の処理について説明する。なお以下の説明では、画素グループ42L,42Rを同時に処理した図を用いて説明する。図3に示す検査ライン42において、基準線46よりも左側の領域の一部は道路脇に植えられた植物およびその影の部分にあたるため、グラフ48R,48G,48Bはいずれも低い輝度値となっている。
【0044】
一方、基準線46よりも右側の領域は、基準線46よりも左側の影の部分に応じてカメラ30の露出が調整されたことにより、全般に高い輝度値を示している。そして、Gのグラフ48Gが他の色のグラフよりも高い輝度値を示しており、広い範囲で飽和(階調の最大値に到達)している。
【0045】
そのため、基準線46より右側の画素グループ42Rにおける、路面の白線を示す領域50に対応するグラフの領域52において、グラフ48Gは輝度値の変化が生じていない。
【0046】
輝度値変換を行った後の輝度値のグラフを図4(A),(B)に示す。R,G,Bの3つの色成分に基づいて輝度値変換すると、図4(A)に示すように、変化のないグラフ48Gの影響を受けて領域52のコントラストが小さくなる。一方、Gの色成分を除き、R,Bの2つの色成分に基づいて輝度値変換すると、図4(B)に示すように、図4(A)と比べて領域52のコントラストが大きくなる。
【0047】
このように、S4,S5の処理を行うことによって、路面画像40の画素グループ42L,42Rから大きなコントラストを示す輝度値データを取得することができる。
上記S4において、平均輝度値が第1閾値以上の色成分がなければ(S4:NO)、処理がS6に移行する。
【0048】
続いて、S3にて算出した平均輝度値が所定の第2閾値以下の色成分があるか否かを判断する(S6)。平均輝度値が第2閾値以下の色成分があれば(S6:YES)、さらにその中で平均輝度値が最小の色成分を除いた残りの色成分に基づく輝度値変換を行う(S7)。
【0049】
このS6,S7の処理について説明する。図5に、図3とは異なる運転状況で撮影した路面画像40を示す。なお、図3と同じ対象については、図3と同じ符号を用いている。図5は夜間走行中の路面画像40を示しており、左側の画素グループ42Lにおける白線を示す領域54に対応するグラフの領域56,および,右側の画素グループ42Rにおける白線を示す領域58に対応するグラフの領域60において、グラフ48R,48Gはいずれも高いコントラストを示している。
【0050】
領域56を拡大した図を図6(A)に示す。また、領域60を拡大した図を図6(B)に示す。図6(A),(B)においては、いずれもグラフ48Bが低い輝度値を示している。
【0051】
これは、路面の白線が車両のヘッドライトの光を受けた結果、路面画像においてRの色成分が強く表れるようになり、また、Gの色成分はもともと強めに表れることから、相対的にBの色成分の輝度値が低くなるためである。
【0052】
図5に示すグラフ48R,48G,48Bを輝度値変換したときの右側の輝度値のグラフを図7(A),(B)に示す。R,G,Bの3つの色成分に基づいて輝度値変換すると、図7(A)に示すように、グラフ48Bの影響を受けて、領域56,60のコントラストが小さくなる。一方、Bを除き、R,Gの2つの色成分に基づいて輝度値変換すると、図7(B)に示すように、図7(A)と比べて領域56,60のコントラストが大きくなる。
【0053】
このように、S6,S7の処理を行うことによって、路面画像40の画素グループ42L,42Rから大きなコントラストを示す輝度値グラフを抽出することができる。
上記S6において、平均輝度値が所定値以上の色成分がなければ(S6:NO)、処理がS8に移行する。S8に移行した場合、3つの色成分はいずれも第1閾値以上とならず、かつ第2閾値以下とならなかったので、いずれも色成分も除外せず、3色の色成分全てを用いて輝度値変換を行う(S8)。
【0054】
次に、S5,S7,およびS8で輝度値変換した輝度値データを微分して、微分値が極大,極小になる点をエッジ点として抽出する(S9)。抽出したエッジ点は、S2にて設定された画素グループに対応付けてRAMに記憶される。
【0055】
そして、全ての画素グループに対してエッジ点を抽出するまでの処理(S3〜S9)が終了したか否かを判定し(S10)、終了していなければ(S10:NO)、処理がS2に戻る。終了していれば(S10:YES)、処理がS11に移行する。
【0056】
続いて、エッジ線の抽出を行う(S11)。ここでは、S9にて抽出され、RAMに記憶された全てのエッジ点、即ちS1にて取得された路面画像40に基づく全てのエッジ点をハフ変換して、一番多くエッジ点を通るエッジ線を抽出する。
【0057】
次に、車線位置の算出を行う(S12)。ここでは、S11にて抽出したエッジ線を含む、直近に撮影された所定数の路面画像(例えば直近の3コマ分の路面画像)から抽出したエッジ線に基づいて、車線の位置を算出する。なお、路面画像を複数用いる目的は複数の時刻において検出されたエッジ線を用いることで車線の検出精度を高める目的であるため、処理負荷を低減するために1コマ分の路面画像から車線の位置を算出しても良い。
【0058】
また、算出した車線の位置に基づき車両から車線までの距離を算出する。
次に、車線の逸脱判定を行う(S13)。ここでは、まず、ヨーセンサ20から取得したヨーレートおよび車速センサ22から取得した車両速度に基づいて、車両の走行軌跡を予測する。続いて、S12にて算出した車線の位置、車両から車線までの距離、および予測した走行軌跡に基づいて、車両が車線を逸脱するまでに要する時間を算出する。
【0059】
そして、算出した車線を逸脱するまでの時間が所定の閾値(本実施例では1秒)以上であれば、逸脱しないと判定し(S13:NO)、処理がS1に戻る。一方、閾値未満であれば、逸脱の危険ありと判定し(S13:YES)、ブザー14に対してブザー要求の制御信号を出力する(S14)。その後、処理がS1に戻る。
【0060】
(3)発明の効果
本実施例の車線逸脱警報システム1であれば、エッジ点を抽出する際に、輝度値が上限に達してコントラストが低くなってしまった可能性の高い色成分と、輝度値が全体的に低く、コントラストを充分に示さなくなってしまった可能性の高い色成分が除かれることとなり、それ以外の高いコントラストを有する色成分を用いて精度良くエッジ点を抽出することができる。
【0061】
また本実施例の車線逸脱警報システム1であれば、色成分を組み合わせて輝度値変換する際に、エッジ点の抽出精度の低下を招く可能性のある色成分を除いて輝度値変換することができる。そのため、色成分を適宜組み合わせて輝度値変換し、コントラストが最大となった組み合わせを採用する、といった処理を行う必要がなくなるため、処理負荷の増加を抑制できる。
【0062】
また、このようにエッジ点の抽出精度が高まることで、車線の検出精度も向上できる。
(4)対応関係
画像処理ECU32により実行されるS1の処理が、本発明の画像取得手段による処理に相当し、S2,S3,S4,および,S5において色成分を選択する処理が高輝度成分選択手段による処理に相当し、S2,S3,S6,および,S7において色成分を選択する処理が低輝度成分選択手段による処理に相当し、S6,7にて輝度値変換する処理およびS9の処理がエッジ抽出手段による処理に相当し、S11,S12の処理が車線検出手段による処理に相当する。
【0063】
[変形例]
以上、本発明の実施例について説明したが、本発明は、上記実施例に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の形態をとり得ることはいうまでもない。
【0064】
例えば、上記実施例においては、検査ライン42を1つの基準線46で分割して2つの画素グループ42L,42Rを配する構成を例示したが、基準線を2つ以上設定し、1つの検査ライン上に3つ以上の画素グループが配されるように構成してもよい。また、基準線を設けず、1つの検査ライン上に1つの画素グループが配されるように構成してもよい。
【0065】
また、上記実施例においては、画素グループにおける各色成分の平均輝度値に基づいてエッジ線を抽出する際に除外される色成分を決定する構成を例示したが、所定の条件を満たした場合に除外される色成分が予め決まっている構成であってもよい。
【0066】
例えば、昼間などの路面画像の輝度が高い状態でG(緑)の色成分が飽和しやすいカメラシステムを用いる場合において、画素グループにおいてR(赤),G,B(青)を合せた平均輝度値が所定の閾値以上となった場合に、Gの色成分を除外する構成とすることが考えられる。このように、予め飽和しやすい色成分が判明している場合は、それ以外の色成分について個別に輝度値の平均値などを算出する必要がなくなり、処理負荷を低減させることができる。
【0067】
同様に、車両のヘッドライトに照らされた際に、他の色成分よりも輝度値が上がり難い色成分が除外されるように構成してもよい。例えば、路面画像におけるヘッドライトにより照らされた領域において、Bの色成分の輝度値が高くなる特性を有するヘッドライトを用いている場合、RおよびGのいずれか一方の色成分を除外することが考えられる。つまり、ヘッドライトの特性と、カメラシステムの特性から予め輝度値が相対的に低くなる色成分が判明している場合には、その色成分を除外するように構成することで、処理負荷を増加させずにエッジ点の抽出精度を高めることができる。
【0068】
なおその場合には、輝度値が上がり難い色成分の平均輝度値が所定の閾値を下回った場合や、3つの色成分の平均輝度値が所定の閾値を下回った場合に該当する色成分を除外するように構成しても良いし、車両に設けられた照度センサや時計により夜間であることを判定した場合、またはヘッドライトを照射している場合に、該当する色成分を除外するように構成しても良い。
【0069】
また、上記実施例においては、各色成分の平均輝度値に基づいて除外する色成分を決定する構成を例示したが、図2のS3の処理に替えて、画素グループにおいて輝度値が所定値の閾値を超えた画素の数をカウントし、S4に替えて、その数が所定の閾値以上の色成分があるか否かを判断し、そのような色成分が存在する場合には、S5に替えて、輝度値が所定値の閾値を超えた画素の数が最も多い色成分を除外して輝度値変換するように構成してもよい。このとき、S6,7の処理は行わない。
【0070】
このように構成することで、エッジ点を抽出する際に、輝度値が上限に達してコントラストが低くなってしまった可能性の高い色成分が除かれることとなり、高いコントラストを維持して精度良くエッジ点を抽出することができる。この場合には、S2,S3と、S4に替える処理、およびS5に替える処理において色成分を選択する処理が飽和成分選択手段による処理に相当する。
【0071】
また上記実施例においては、カメラ30がR,G,Bの三原色から構成される路面画像を撮影し、それらの色成分を組み合わせてなるカラー情報を用いる構成を例示したが、三原色RGBと等価変換できる輝度信号と色差信号の組み合わせで表現された信号形式を用いてもよい。
【符号の説明】
【0072】
1…車線逸脱警報システム、10…車内ネットワーク、12…画像センサ、14…ブザー、20…ヨーセンサ、22…車速センサ、30…カメラ、40…路面画像、42…検査ライン、42L,42R…画素グループ、44…矢印、46…基準線、48R,48B,48G…グラフ、50,52,54,56,58,60…領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両前方の路面を撮影した画像であって、複数の色成分を個別に抽出可能な路面画像を取得する画像取得手段と、
前記路面画像面上にて一列に並んだ複数の画素からなる画素グループを抽出し、当該画素グループにおいて、前記複数の色成分のうち、輝度値の平均値が最も高く、かつ当該平均値が所定値の閾値以上である色成分を選択する高輝度成分選択手段と、
前記複数の色成分のうち、前記高輝度成分選択手段により選択された色成分を除く色成分を用いて、前記画素グループにおけるエッジ点を抽出するエッジ抽出手段と、を備える
ことを特徴とするエッジ点抽出装置。
【請求項2】
車両前方の路面を撮影した画像であって、複数の色成分を個別に抽出可能な路面画像を取得する画像取得手段と、
前記路面画像面上にて一列に並んだ複数の画素からなる画素グループを抽出し、当該画素グループにおいて、前記複数の色成分のうち、所定の閾値を超えた画素の数が所定数以上かつ最も多い色成分を選択する飽和成分選択手段と、
前記複数の色成分のうち、前記飽和成分選択手段により選択された色成分を除く色成分を用いて、エッジ点を抽出するエッジ抽出手段と、を備える
ことを特徴とするエッジ点抽出装置。
【請求項3】
車両前方の路面を撮影した画像であって、複数の色成分を個別に抽出可能な路面画像を取得する画像取得手段と、
前記路面画像面上にて一列に並んだ複数の画素からなる画素グループを抽出し、当該画素グループにおいて、前記複数の色成分のうち、輝度値の平均値が最も低く、かつ当該平均値が所定値の閾値以下である色成分を選択する低輝度成分選択手段と、
前記複数の色成分のうち、前記低輝度成分選択手段により選択された色成分を除く色成分を用いて、前記画素グループにおけるエッジ点を抽出するエッジ抽出手段と、を備える
ことを特徴とするエッジ点抽出装置。
【請求項4】
前記画素グループは、前記画像取得手段により取得された前記路面画像において、略水平方向、かつ、前記車両前方の所定の領域を境界とした左側の範囲および右側の範囲のうちの少なくともいずれか一方に設定される
ことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のエッジ点抽出装置。
【請求項5】
前記複数の色成分とは、赤,緑,青の3色の色成分である
ことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のエッジ点抽出装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のエッジ点抽出装置と、
前記エッジ抽出手段により抽出されたエッジ点に基づいて、前記路面上の車線を検出する車線検出手段と、
を備えることを特徴とする車線検出装置。
【請求項7】
コンピュータシステムに、請求項6に記載の車線検出装置を構成する各手段としての機能を実現させるためのプログラム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2012−190258(P2012−190258A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−53143(P2011−53143)
【出願日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【出願人】(000004695)株式会社日本自動車部品総合研究所 (1,981)
【Fターム(参考)】