説明

エッチング廃液の再生方法及び再生装置

【課題】より低コストで且つより効率的に、リン酸を含むエッチング廃液中のMo成分及びAl成分を除去して再生するエッチング廃液再生装置などを提供する。
【解決手段】エッチング廃液再生装置1は、エッチング廃液を貯留する廃液貯留槽4と、廃液貯留槽4内のエッチング廃液をそのpHが0〜1.0となるように希釈する希釈部5と、リン酸基がH型であるアミノリン酸型キレート樹脂が装填された吸着塔14,15と、廃液貯留槽4内のエッチング廃液を吸着塔14,15に供給する廃液供給部8と、吸着塔14,15から流出する希釈エッチング廃液から水分を除去して濃縮する濃縮部20とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくともリン酸を含むエッチング廃液中のMo成分及びAl成分を除去して、該エッチング廃液をエッチング液として再使用可能な状態に再生する再生方法及び再生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、TFT基板のエッチングには、リン酸や酢酸などを含む混酸液がエッチング液として使用される。このエッチング液は繰り返して使用されるが、エッチング作用によって、エッチング液中にAl(アルミニウム)やMo(モリブデン)といった金属成分が溶け込んで蓄積され、その酸濃度が低下するため、エッチング液としての能力(エッチング能力)が低下することになる。このため、当該エッチング液は、通常、所定時間繰り返し使用した後に老廃液として廃棄し、新たなエッチング液と交換する必要がある。
【0003】
ところが、エッチング廃液(所定時間繰り返して使用され、エッチング能力が低下したエッチング液)には、上記のように、金属成分が溶け込んでおり、これを単純には廃棄することができないため、また、廃棄するには相当のコストが嵩むため、従来、エッチング廃液中の金属成分を除去して、当該エッチング廃液を再生し、これを再使用する試みがなされている。
【0004】
その一例として、特開平2−270973号公報に開示された再生方法を挙げることができる。この再生方法は、塩化第二鉄と少なくとも塩化ニッケルを含有する強酸性鉄液をpH1.0以上に水で希釈した後、フィルタを用いて懸濁物質を除去し、しかる後、キレート樹脂で鉄とニッケルの一部を吸着・分離し、分離後の液を濃縮するというものである。
【0005】
【特許文献1】特開平2−270973号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、上述した従来の再生方法は、処理対象のエッチング液が強酸性鉄液であって、リン酸を含む混酸液ではなく、また、除去対象の金属成分も塩化第二鉄と塩化ニッケルであって、AlやMoではない。
【0007】
したがって、上記従来法をそのまま使用しても、リン酸を含む混酸液(エッチング液)からAlやMoの金属成分を除去することはできなかった。
【0008】
一方、本願出願人は、リン酸を含むエッチング廃液からAlやMoの金属成分を除去して、該エッチング廃液をエッチング液として再使用可能な状態に再生する方法を提案している(特願2006−284743号)。
【0009】
この再生方法は、エッチング廃液を、そのpHが0.5〜0.9となるように水で希釈する希釈工程と、前記希釈エッチング廃液を、官能末端基がH基であるポーラス型の強酸性陽イオン交換樹脂と接触させ、該強酸性陽イオン交換樹脂にAl成分を吸着させて、該希釈エッチング廃液からAl成分を除去するAl成分除去工程と、前記希釈エッチング廃液を、官能末端基がOH基であるポーラス型の強塩基性陰イオン交換樹脂と接触させ、該強塩基性陰イオン交換樹脂にMo成分を吸着させて、該希釈エッチング廃液からMo成分を除去するMo成分除去工程と、Al成分及びMo成分を除去した後の希釈エッチング廃液から水分を除去して濃縮する濃縮工程とを備えたものである。
【0010】
しかしながら、この、本願出願人の提案に係る再生方法においても、不十分な点が存在していた。具体的には、エッチング廃液中のAl成分を吸着させるための強酸性陽イオン交換樹脂と、エッチング廃液中のMo成分を吸着させるための強塩基性陰イオン交換樹脂とがそれぞれ必要であるために、処理コストが高くなるという点や、強酸性陽イオン交換樹脂によりエッチング廃液中のAl成分を吸着させるAl成分除去工程と、強塩基性陰イオン交換樹脂によりエッチング廃液中のMo成分を吸着させるMo成分除去工程とを行う必要があるために、処理効率が低くなるという点である。
【0011】
そこで、このような点を無くすべく、本発明者等が種々の実験を重ねた結果、本発明を成すに至ったものであり、本発明は、少なくともリン酸を含むエッチング廃液中のMo成分及びAl成分を除去して、該エッチング廃液をエッチング液として再使用可能な状態に再生するに当たり、これを、より低コストで且つより効率的に行うことができる再生方法及び再生装置の提供をその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するための本発明は、
少なくともリン酸を含むエッチング廃液からMo成分及びAl成分を除去して、該エッチング廃液を再生する方法であって、
前記エッチング廃液を、そのpHが0〜1.0となるように水で希釈する希釈工程と、
前記希釈エッチング廃液を、リン酸基がH型であるアミノリン酸型キレート樹脂と接触させ、該アミノリン酸型キレート樹脂にMo成分及びAl成分を吸着させて、該希釈エッチング廃液からMo成分及びAl成分を除去する除去工程と、
Mo成分及びAl成分を除去した後の希釈エッチング廃液から水分を除去して濃縮する濃縮工程とを備えてなることを特徴とするエッチング廃液の再生方法に係る。
【0013】
尚、本発明において、リン酸基がH型であるアミノリン酸型キレート樹脂は、下記構造式で表される。また、リン酸基がH型であるとは、リン酸基にHが結合していることを言う。このようなアミノリン酸型キレート樹脂としては、例えば、ユニチカ製のUR−3300S(商品名)を挙げることができる。
【0014】
【化3】

【0015】
本発明によれば、まず、エッチング廃液を、そのpHが0〜1.0となるように水で希釈する。そして、希釈後のエッチング廃液を、リン酸基がH型であるアミノリン酸型キレート樹脂と接触させて、Mo成分及びAl成分を吸着,除去する。しかる後、このエッチング廃液から水分を除去して濃縮することによって、再使用可能なエッチング液が得られる。
【0016】
本発明者等は、種々の実験を重ねた結果、リン酸を含むエッチング廃液中のMo成分及びAl成分のどちらも、リン酸基がH型であるアミノリン酸型キレート樹脂によって良好に吸着されるとの知見を得るに至った。本発明は、かかる知見に基づいてなされたものである。尚、かかるキレート樹脂にMo成分及びAl成分の両方とも吸着されるのは、MoがNとOとに配位結合し、Al3+がリン酸基のHと置換するためと思われる。
【0017】
斯くして、本発明によれば、リン酸基がH型であるアミノリン酸型キレート樹脂のみで(1つの除去工程のみで)エッチング廃液中のMo成分及びAl成分の両方を除去することができるので、Al成分除去工程でAl成分を強酸性陽イオン交換樹脂に、Mo成分除去工程で強塩基性陰イオン交換樹脂にMo成分を吸着させる方法に比べ、より低コストで且つより効率的にエッチング廃液を再生することができる。
【0018】
また、前記エッチング廃液を、そのpHが0〜1.0となるように水で希釈した後、上記アミノリン酸型キレート樹脂で処理しているのは、pHが1.0を超えるように希釈すると、処理後のエッチング廃液を濃縮する際に、膨大なエネルギを必要とし、その処理コストが嵩み、また、かかる処理をするための装置が過大となって、却って問題を生じるからである。
【0019】
また、金属成分除去後のエッチング廃液を濃縮する方法としては、一例として、これを加熱して水分を除去することによって、濃縮する方法を挙げることができる。
【0020】
また、Mo成分及びAl成分を吸着させた前記アミノリン酸型キレート樹脂は、次のようにして再生することができる。即ち、まず、前記アミノリン酸型キレート樹脂をNaOH水溶液又はKOH水溶液と接触させ、これにより、Mo成分及びAl成分を溶離させる。これは、配位結合していたMoがpHの変化(エッチング廃液が酸性であるのに対してNaOH水溶液又はKOH水溶液はアルカリ性である)に伴う配位結合の分解によってアミノリン酸型キレート樹脂から溶離するとともに、リン酸基に結合していたAl3+とNa又はKが置換することによってアミノリン酸型キレート樹脂からAlが溶離するためと思われる。
【0021】
そして、前記アミノリン酸型キレート樹脂は、リン酸基にNa又はKが結合している状態、言い換えれば、リン酸基がNa型又はK型に変化する。尚、このときのアミノリン酸型キレート樹脂を、リン酸基がNa型又はK型のアミノリン酸型キレート樹脂と言う。
【0022】
この後、前記アミノリン酸型キレート樹脂をHSO水溶液,HCl水溶液又はHPO水溶液と接触させ、これにより、アミノリン酸型キレート樹脂のリン酸基をH型にする。これは、リン酸基に結合しているNa又はKとHが置換するためと思われる。こうして、アミノリン酸型キレート樹脂が再生される。
【0023】
このようにして、アミノリン酸型キレート樹脂を再生すれば、当該アミノリン酸型キレート樹脂を繰り返し使用することができ、好都合である。尚、かかる再生処理は、例えば、前記除去工程を予め定めた時間実施した後、又は予め定めた量の希釈エッチング廃液に対して前記除去工程を実施した後に行うと良い。また、KOH水溶液よりも安価であるNaOH水溶液を使用する方が好ましい。
【0024】
上記の再生方法は、
前記エッチング廃液を貯留する廃液貯留槽と、
前記廃液貯留槽に水を供給して、該廃液貯留槽内のエッチング廃液をそのpHが0〜1.0となるように希釈する希釈手段と、
密閉された容器体からなり、該容器体内に前記アミノリン酸型キレート樹脂が装填されてなる吸着塔と、
前記廃液貯留槽に貯留されたエッチング廃液を前記吸着塔に供給する廃液供給手段と、
前記吸着塔に接続し、該吸着塔から流出する希釈エッチング廃液を受容し、受容した希釈エッチング廃液から水分を除去して濃縮する濃縮手段とを備えた再生装置によって、これを好適に実施することができる。
【0025】
尚、上記再生装置に、前記吸着塔にNaOH水溶液又はKOH水溶液を供給して、該吸着塔内を通液させる第1樹脂再生手段と、前記吸着塔にHSO水溶液,HCl水溶液又はHPO水溶液を供給して、該吸着塔内を通液させる第2樹脂再生手段とを設け、これらの樹脂再生手段によって、Mo成分及びAl成分を吸着したアミノリン酸型キレート樹脂を再生するようにしても良い。
【発明の効果】
【0026】
以上のように、本発明によれば、リン酸基がH型のアミノリン酸型キレート樹脂によってエッチング廃液中のMo成分及びAl成分を除去することで、より低コスト、より効率的にエッチング廃液を再生することができる。
【0027】
また、リン酸を含むエッチング廃液からAl成分及びMo成分を除去して当該エッチング廃液を再生し、エッチング液として再使用することで、エッチング液を有効、且つ効率的に使用することができ、従来要していた廃液の処理費用を削減することができる。また、廃液自体を減少させることができるので、環境維持に貢献することができる。更に、希釈するエッチング廃液の希釈倍率を極力抑えているので、装置が過大になるのを防止することができ、また、処理に要するエネルギの消費を抑えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、本発明の具体的な実施形態について説明する。図1は、本発明の一実施形態に係るエッチング廃液再生装置(以下、「再生装置」という)の概略構成を示した説明図である。
【0029】
図1に示すように、本例の再生装置1は、適宜エッチング装置(図示せず)にエッチング液を供給するエッチング液供給装置100に接続されている。
【0030】
このエッチング液供給装置100は、少なくともリン酸を含む混酸液からなるエッチング液を貯留するエッチング液循環槽101と、一端が前記エッチング装置(図示せず)に接続され、他端がエッチング液循環槽101に接続された送液管102と、この送液管102の中間部に設けられた送液ポンプ103と、一端がエッチング装置(図示せず)に接続され、他端がエッチング液循環槽101に接続された回収管104とから構成される。
【0031】
このエッチング液供給装置100では、エッチング液循環槽101内に貯留されたエッチング液が、送液管102及び送液ポンプ103によってエッチング装置(図示せず)に供給され、エッチングの用に供されたエッチング液が、回収管104を介してエッチング液循環槽101に回収される。
【0032】
このようにして、エッチング装置(図示せず)に対してエッチング液が循環供給される。
【0033】
前記再生装置1は、同図1に示すように、エッチング廃液を貯留する廃液貯留槽4と、この廃液貯留槽4に純水を供給してエッチング廃液を希釈する希釈部5と、キレート樹脂によってMo成分及びAl成分を吸着する2つの吸着塔14,15と、廃液貯留槽4から吸着塔14,15にエッチング廃液を供給する廃液供給部8と、吸着塔14,15に接続し、これらから流出するエッチング廃液を受容して濃縮する濃縮部20と、吸着塔14,15のキレート樹脂を再生するキレート樹脂再生部35などから構成される。
【0034】
廃液貯留槽4には、一端がエッチング液循環槽101に接続された送液管2の他端が接続されており、この送液管2及び送液管2の中間部に設けられた送液ポンプ3によって、前記エッチング液循環槽101からエッチング廃液が供給され、貯留される。
【0035】
そして、廃液貯留槽4に貯留されたエッチング廃液は、希釈部5によってそのpHが0〜1.0となるように希釈される。この希釈部5は、純水供給源(図示せず)と、一端がこの純水供給源(図示せず)に接続され、他端が廃液貯留槽4に接続された給水管6と、給水管6の中間部に設けられた電磁弁7とからなり、給水管6及び電磁弁7を介して、純水供給源(図示せず)から廃液貯留槽4に純水を供給して、廃液貯留槽4内のエッチング廃液を希釈する。
【0036】
尚、希釈の態様としては、エッチング廃液のpHをpH測定器により測定しながら純水を供給し、pHが所定の値となったとき、電磁弁7を閉じて給水を停止するようにすれば良い。或いは、所定量のエッチング廃液を所定のpH値にするために加えるべき純水量を予め経験的に知得しておき、前記送液管2に流量測定器を設けて、廃液貯留槽4に流入するエッチング廃液の量をこの流量測定器によって測定するとともに、同様に給水管6に流量測定器を設けて、廃液貯留槽4に供給される純水の供給量をこの流量測定器によって測定し、測定された純水供給量が、エッチング廃液を所定のpH値にするために加えられるべき純水供給量となったとき、純水の供給を停止するようにしても良い。
【0037】
前記吸着塔14,15は、それぞれ密閉された中空の容器体から構成され、各容器体内には、前記キレート樹脂として、下記構造式で表される、リン酸基がH型であるアミノリン酸型キレート樹脂が装填されている。このようなアミノリン酸型キレート樹脂としては、例えば、ユニチカ製のUR−3300S(商品名)を挙げることができる。尚、リン酸基がH型であるとは、リン酸基にHが結合していることを言う。
【0038】
【化4】

【0039】
また、前記廃液供給部8は、一端が前記廃液貯留槽4に接続され、他端が吸着塔15の一方端部に接続された送液管9と、この送液管9に設けられた送液ポンプ11と、この送液ポンプ11,吸着塔15間の送液管9に設けられた電磁弁13と、この電磁弁13,送液ポンプ11間の送液管9に一端が接続され、他端が吸着塔14の一方端部に接続された送液管10と、この送液管10に設けられた電磁弁12とからなる。
【0040】
この廃液供給部8では、廃液貯留槽4内のエッチング廃液が、送液ポンプ11により送液管9,10を介して吸着塔14,15に供給され、電磁弁12,13の切換により、吸着塔14,15に対して選択的にエッチング廃液が供給される。
【0041】
前記濃縮部20は、再生液貯留槽25と、濃縮機構28と、送液管21,22,26,29と、送液ポンプ27,30と、電磁弁23,24とからなる。
【0042】
前記送液管21には前記電磁弁24が設けられており、その一端が前記吸着塔15の他方端部に接続され、他端が前記再生液貯留槽25に接続されている。また、送液管22には電磁弁23が設けられており、その一端が前記吸着塔14の他方端部に接続され、他端が前記再生液貯留槽25と電磁弁24との間の送液管21に接続されている。
【0043】
また、送液管26には、前記送液ポンプ27が設けられており、その一端が前記再生液貯留槽25に接続され、他端が前記濃縮機構28に接続されている。更に、送液管29には、送液ポンプ30が設けられ、その一端が前記濃縮機構28に接続され、他端が前記エッチング液循環槽101に接続されている。
【0044】
斯くして、送液管26及び送液ポンプ27によって、再生液貯留槽25から濃縮機構28に希釈再生液が送液され、送液管29及び送液ポンプ30によって、濃縮機構28からエッチング液循環槽101に濃縮された再生エッチング液が送液される。
【0045】
尚、濃縮機構28としては、希釈再生液を加熱して、その水分を除去し、濃縮する機構のものであれば、どのようなものであっても良い。
【0046】
前記キレート樹脂再生部35は、第1の再生液供給源(図示せず)と、第2の再生液供給源(図示せず)と、一端が前記吸着塔14の他方端部に接続され、他端が前記希釈部5の純水供給源(図示せず)に接続され、中間部に電磁弁40,46が設けられた送液管36と、一端が電磁弁40と電磁弁46との間の送液管36に接続され、他端が前記第1の再生液供給源(図示せず)に接続され、中間部に電磁弁47が設けられた送液管45と、一端が電磁弁40と電磁弁46との間の送液管36に接続され、他端が前記第2の再生液供給源(図示せず)に接続され、中間部に電磁弁48が設けられた送液管44と、一端が前記吸着塔15の他方端部に接続され、他端が電磁弁40と送液管44との間の送液管36に接続され、中間部に電磁弁41が設けられた送液管37と、一端が前記吸着塔14の一方端部に接続され、他端が回収槽(図示せず)に接続され、中間部に電磁弁42,49が設けられた送液管38と、一端が前記吸着塔15の一方端部に接続され、他端が電磁弁42と電磁弁49との間の送液管38に接続され、中間部に電磁弁43が設けられた送液管39とから構成される。
【0047】
前記第1の再生液供給源(図示せず)は、NaOH(水酸化ナトリウム)の水溶液又はKOH(水酸化カリウム)の水溶液を供給するもので、この第1の再生液供給源(図示せず)から、加圧されたNaOH水溶液が送液管45,36に供給される。尚、KOH水溶液よりも安価であるNaOH水溶液を使用する方が好ましい。
【0048】
前記第2の再生液供給源(図示せず)は、HSO(硫酸)の水溶液,HCl(塩酸)の水溶液又はHPO(リン酸)の水溶液を供給するもので、この第2の再生液供給源(図示せず)から、加圧されたHSO水溶液,HCl水溶液又はHPO水溶液が送液管44,36に供給される。
【0049】
尚、特に図示しないが、各前記送液ポンプ3,11,27,30、及び各電磁弁7,12,13,23,24,40,41,42,43,46,47,48,49はそれぞれ適宜制御装置によってその作動が制御される。
【0050】
次に、以上の構成を備える本例の再生装置1を用いた再生処理について説明する。
【0051】
A.エッチング廃液希釈工程
まず、前記制御装置(図示せず)による制御の下で送液ポンプ3が駆動され、エッチング液循環槽101から廃液貯留槽4に、送液管2を介してエッチング廃液が送液され、この廃液貯留槽4にエッチング廃液が貯留される。
【0052】
前述のように、前記エッチング液供給装置100では、エッチング液循環槽101内に貯留されたエッチング液が、送液管102及び送液ポンプ103によってエッチング装置(図示せず)に供給され、エッチングの用に供されたエッチング液が、回収管104を介してエッチング液循環槽101に回収される。
【0053】
繰り返しエッチングの用に供されるエッチング液は、エッチング作用によって、その液中にAl(アルミニウム)やMo(モリブデン)といった金属成分が溶け込んで蓄積され、その酸濃度が低下するため、使用時間が所定時間を越えると、エッチング液としての能力(エッチング能力)が低下することになる。
【0054】
斯くして、このようにしてエッチング能力の低下したエッチング液(エッチング廃液)が、エッチング液循環槽101から廃液貯留槽4に送液され、貯留される。
【0055】
尚、エッチング液のエッチング能力が低下したどうかの判断は、液中の金属成分を測定して、これが限界値に達したかどうかで判断するようにしても良く、或いは、エッチング液の使用時間を計測し、計測した使用時間が、エッチング能力が低下したと経験的に認められる使用時間に達したとき、エッチング能力が低下したと判断するようにしても良い。
【0056】
廃液貯留槽4にエッチング廃液が貯留されると、次に、電磁弁7が開かれ、給水管6を介して前記純水供給源(図示せず)から廃液貯留槽4に純水が供給され、供給された純水によって、廃液貯留槽4内のエッチング廃液が希釈される。そして、予定した希釈が完了すると、電磁弁7を閉じて純水の供給を停止する。
【0057】
尚、希釈の程度は、エッチング廃液のpHが0〜1.0となる程度とする。pHが1.0を超えるように希釈すると、処理後にエッチング廃液を濃縮する際に、膨大なエネルギを必要とし、その処理コストが嵩むからであり、また、廃液貯留槽4及び再生液貯留槽25の容積を希釈倍率に応じて大きくする必要があるため、装置が過大になるからである。
【0058】
B.金属成分吸着工程
前述したエッチング廃液希釈工程が終了すると、次に、送液ポンプ11が駆動され、希釈したエッチング廃液(希釈廃液)が廃液貯留槽4から吸着塔14又は15に選択的に送液される。即ち、吸着塔14に希釈廃液が供給される場合には、電磁弁12,23が開かれ、電磁弁13,24は閉じられる。逆に、吸着塔15に希釈廃液が供給される場合には、電磁弁13,24は開かれ、電磁弁12,23は閉じられる。
【0059】
尚、吸着塔14に希釈廃液が供給される場合には、キレート樹脂再生部35の電磁弁40,42が閉じられ、吸着塔15に希釈廃液が供給される場合には、キレート樹脂再生部35の電磁弁41,43が閉じられる。
【0060】
斯くして、例えば、送液管9,10を介して吸着塔14に希釈廃液が供給されると、供給された希釈廃液は、吸着塔14内を流通して送液管22に流出し、この後、送液管22,21を介して再生液貯留槽25に流入,貯留される。
【0061】
そして、吸着塔14内を流通する際に、希釈廃液は、この吸着塔14内に収納された、リン酸基がH型のアミノリン酸型キレート樹脂と接触する。この、リン酸基がH型のアミノリン酸型キレート樹脂は、希釈廃液中にMo成分及びAl成分が存在する場合、このMo成分及びAl成分を吸着する。したがって、希釈廃液が吸着塔14内を流通するとき、当該希釈廃液中に含有されるMo成分及びAl成分がかかるキレート樹脂に吸着されて、当該希釈廃液から除去される。
【0062】
本発明者等が種々の実験を重ねた結果、リン酸を含むエッチング廃液中のMo成分及びAl成分のどちらも、リン酸基がH型であるアミノリン酸型キレート樹脂によって良好に吸着されることが判明した。これは、MoがNとOとに配位結合し、Al3+がリン酸基のHと置換するためと思われる(図2参照)。そこで、本例では、希釈廃液中のMo成分及びAl成分をリン酸基がH型であるアミノリン酸型キレート樹脂によって吸着,除去するようにしている。
【0063】
このように、希釈廃液が吸着塔14内を流通することで、当該希釈廃液中に含まれるMo成分及びAl成分が当該希釈廃液から除去され、これらの金属成分が除去された希釈廃液が再生液貯留槽25に貯留される。
【0064】
希釈廃液が吸着塔15に供給される場合も上記と同様であり、供給された希釈廃液は、吸着塔15内を流通する際に、この吸着塔15内に収納された、リン酸基がH型のアミノリン酸型キレート樹脂と接触し、希釈廃液中に含まれるMo成分及びAl成分が当該キレート樹脂に吸着されて、当該希釈廃液から除去される。そして、このようにして金属成分が除去された希釈廃液が再生液貯留槽25に貯留される。
【0065】
尚、前記吸着塔14への希釈廃液の供給と、前記吸着塔15への希釈廃液の供給とは順次交番的に行われる。
【0066】
C.キレート樹脂再生工程
このキレート樹脂再生工程は、休止状態にある吸着塔14,15に対して実施される。即ち、吸着塔14に希釈廃液が供給されている場合には、吸着塔15内のアミノリン酸型キレート樹脂が再生され、吸着塔15に希釈廃液が供給されている場合には、吸着塔14内のアミノリン酸型キレート樹脂が再生される。
【0067】
吸着塔15の場合を例に、キレート樹脂再生の具体的な工程を説明すると、まず、キレート樹脂再生部35の電磁弁40,41,42,43,44,46,47,48,49を閉じた状態で、電磁弁46,41,43,49を開いて、前記純水供給源(図示せず)から吸着塔15に純水を供給する。これにより、吸着塔15内を純水が流通し、純水によってアミノリン酸型キレート樹脂が洗浄され、浄化される。
【0068】
そして、吸着塔15を通過した水は、送液管39,38を介して前記回収槽(図示せず)に回収される。このようにして、所定時間だけ吸着塔15を洗浄した後、電磁弁46を閉じて、純水の供給を停止する。
【0069】
この後、電磁弁47を開いて、前記第1の再生液供給源(図示せず)から吸着塔15にNaOH水溶液又はKOH水溶液を供給する。これにより、NaOH水溶液又はKOH水溶液とアミノリン酸型キレート樹脂とが接触し、アミノリン酸型キレート樹脂に吸着されたMo成分及びAl成分が当該キレート樹脂から溶離してNaOH水溶液又はKOH水溶液中に溶出する。これは、配位結合していたMoがpHの変化(希釈廃液が酸性であるのに対してNaOH水溶液又はKOH水溶液はアルカリ性である)に伴う配位結合の分解によってアミノリン酸型キレート樹脂から溶離するとともに、リン酸基に結合していたAl3+とNa又はKが置換することによってアミノリン酸型キレート樹脂からAlが溶離するためと思われる(図3参照)。
【0070】
また、このとき、前記アミノリン酸型キレート樹脂は、リン酸基にNa又はKが結合している状態に変化する。尚、リン酸基にNaが結合したものをリン酸基がNa型であるアミノリン酸型キレート樹脂と言い、リン酸基にKが結合したものをリン酸基がK型であるアミノリン酸型キレート樹脂と言う。
【0071】
そして、吸着塔15内を流通し、Mo成分及びAl成分を含んだNaOH水溶液又はKOH水溶液は、送液管39,38を介して前記回収槽(図示せず)に回収される。このようにして、所定時間だけNaOH水溶液又はKOH水溶液を流通させて、アミノリン酸型キレート樹脂からMo成分及びAl成分を溶離させた後、電磁弁47を閉じてNaOH水溶液又はKOH水溶液の供給を停止する。
【0072】
ついで、電磁弁46を再び開き、前記純水供給源(図示せず)から吸着塔15に純水を供給する。これにより、純水によってアミノリン酸型キレート樹脂が洗浄され、浄化される。尚、吸着塔15を通過した水は、送液管39,38を介して前記回収槽(図示せず)に回収される。また、所定時間だけ吸着塔15を洗浄すると、電磁弁46を閉じて、純水の供給を停止する。
【0073】
次に、電磁弁48を開いて、前記第2の再生液供給源(図示せず)から吸着塔15にHSO水溶液,HCl水溶液又はHPO水溶液を供給する。これにより、HSO水溶液,HCl水溶液又はHPO水溶液とアミノリン酸型キレート樹脂とが接触し、リン酸基がNa型又はK型となっていたアミノリン酸型キレート樹脂はリン酸基がH型に戻る。これは、リン酸基に結合しているNa又はKとHが置換するためと思われる(図4参照)。そして、吸着塔15内を流通したHSO水溶液,HCl水溶液又はHPO水溶液は、送液管39,38を介して前記回収槽(図示せず)に回収される。
【0074】
このようにして、所定時間だけHSO水溶液,HCl水溶液又はHPO水溶液を流通させて、アミノリン酸型キレート樹脂のリン酸基をNa型又はK型からH型に戻した後、電磁弁48を閉じてHSO水溶液,HCl水溶液又はHPO水溶液の供給を停止する。
【0075】
この後、電磁弁46を再び開き、前記純水供給源(図示せず)から吸着塔15に純水を供給する。これにより、純水によってアミノリン酸型キレート樹脂が洗浄され、浄化される。尚、吸着塔15を通過した水は、送液管39,38を介して前記回収槽(図示せず)に回収される。また、所定時間だけ吸着塔15を洗浄すると、電磁弁46を閉じて、純水の供給を停止する。
【0076】
以上のことは、吸着塔14についても同様であり、電磁弁40,41,42,43,44,46,47,48,49を閉じた状態から、まず、電磁弁46,40,42,49を開いて、前記純水供給源(図示せず)から吸着塔14に純水を供給し、純水によってアミノリン酸型キレート樹脂を洗浄,浄化する。
【0077】
この後、電磁弁46を閉じて純水の供給を停止した後、電磁弁47を開いて、前記第1の再生液供給源(図示せず)から吸着塔14にNaOH水溶液又はKOH水溶液を供給し、アミノリン酸型キレート樹脂からMo成分及びAl成分を溶離させる。そして、電磁弁47を閉じてNaOH水溶液又はKOH水溶液の供給を停止すると、電磁弁46を再び開き、前記純水供給源(図示せず)から吸着塔14に純水を供給し、純水によってアミノリン酸型キレート樹脂を洗浄,浄化する。
【0078】
ついで、電磁弁46を閉じて純水の供給を停止すると、電磁弁48を開いて、前記第2の再生液供給源(図示せず)から吸着塔14にHSO水溶液,HCl水溶液又はHPO水溶液を供給し、アミノリン酸型キレート樹脂のリン酸基をNa型又はK型からH型に戻す。そして、電磁弁48を閉じてHSO水溶液,HCl水溶液又はHPO水溶液の供給を停止すると、電磁弁46を再び開き、前記純水供給源(図示せず)から吸着塔14に純水を供給し、純水によってアミノリン酸型キレート樹脂を洗浄,浄化した後、電磁弁46を閉じて純水の供給を停止する。
【0079】
D.濃縮工程
吸着塔14又は吸着塔15を流通して送出された、金属成分除去後の希釈廃液(これを、希釈再生液という)は、送液管23,21又は送液管21を介して、再生液貯留槽25に送液され、貯留される。
【0080】
この再生液貯留槽25に貯留された希釈再生液は、まず、送液ポンプ27によって、濃縮機構28に供給される。
【0081】
そして、濃縮機構28に供給された希釈再生液は、この濃縮機構28によって加熱され、その水分が除去されて、リン酸を含む酸の濃度が、所定の濃度となるように濃縮される。しかる後、希釈再生液を濃縮した液(再生エッチング液)が、送液ポンプ30によって、当該濃縮機構28からエッチング液循環槽101に送液される。
【0082】
尚、希釈再生液の濃縮時に水分以外の成分も変化するようなときには、例えば、当該変化する成分を補給するなどして、その成分濃度を調整することが好ましい。
【0083】
以上説明したように、本例の再生装置1によれば、まず、エッチング廃液がエッチング液循環槽101から廃液貯留槽4に送液され、貯留される。
【0084】
そして、給水管6を介して廃液貯留槽4に純水が供給され、当該廃液貯留槽4内に貯留されたエッチング廃液が、そのpHが0〜1.0となる程度に希釈される。
【0085】
次に、希釈したエッチング廃液、即ち、希釈廃液は、廃液供給部8によって吸着塔14又は吸着塔15に選択的に供給され、吸着塔14,15に装填された、リン酸基がH型のアミノリン酸型キレート樹脂によって液中のMo成分及びAl成分が吸着,除去される。
【0086】
そして、このようにして金属成分の除去された希釈再生液が、濃縮機構28によってその濃度が濃縮され、その酸濃度が、所定の濃度となるように調整された後、エッチング液循環槽101に送液(還流)される。
【0087】
一方、Mo成分及びAl成分を吸着したアミノリン酸型キレート樹脂は、吸着塔14,15にNaOH水溶液又はKOH水溶液が供給されることによってMo成分及びAl成分が溶離し、吸着塔14,15にHSO水溶液,HCl水溶液又はHPO水溶液が供給されることによってリン酸基がH型に戻され、これにより、アミノリン酸型キレート樹脂が再生される。
【0088】
斯くして、本例の再生装置1によれば、リン酸基がH型であるアミノリン酸型キレート樹脂のみで(1つの除去工程のみで)エッチング廃液中のMo成分及びAl成分の両方を除去することができるので、Al成分除去工程でAl成分を強酸性陽イオン交換樹脂に、Mo成分除去工程で強塩基性陰イオン交換樹脂にMo成分を吸着させる方法に比べ、より低コストで且つより効率的にエッチング廃液を再生することができる。
【0089】
また、リン酸を含むエッチング廃液からAl成分及びMo成分を除去して当該エッチング廃液を再生し、エッチング液として再使用することで、エッチング液を有効、且つ効率的に使用することができ、従来要していた廃液の処理費用を削減することができる。また、廃液自体を減少させることができるので、環境維持に貢献することができる。更に、希釈するエッチング廃液の希釈倍率を極力抑えているので、装置が過大になるのを防止することができ、また、処理に要するエネルギの消費を抑えることができる。
【0090】
また、一つの処理ラインではなく、二つの処理ライン(吸着塔14と、吸着塔15)を設けて、各処理ラインに交番的に希釈廃液を供給して、再生処理を行うようにしているので、一つの処理ラインのアミノリン酸型キレート樹脂の吸着性能が低下したとしても、処理ラインを切り替えて他の処理ラインを使用することで、連続的にエッチング廃液を再生することができる。
【0091】
また、希釈廃液が供給されていない処理ライン、即ち、休止状態にある処理ラインに対してキレート樹脂再生工程を実施して、アミノリン酸型キレート樹脂の吸着性能を再生するようにしているので、アミノリン酸型キレート樹脂を効果的に使用することができる。
【0092】
因みに、上述した、リン酸基がH型であるアミノリン酸型キレート樹脂を用いてMo成分及びAl成分の吸着実験を行ったので、その結果について説明する。
【0093】
直径が7mmのカラムを用意し、このカラム内に体積が30mLの前記アミノリン酸型キレート樹脂を充填した後、Mo成分及びAl成分を含む6倍希釈廃液を前記カラムの一方端側から他方端側に向けて、60mL/h(SV=2(1/Hr))の流速で所定量通液させ、カラム通液前(入口側)とカラム通液後(出口側)におけるMo及びAlの含有濃度をそれぞれ測定した。そして、Mo及びAlについて、入口側濃度に対する出口側濃度の比と通液量との関係をそれぞれ求めたところ、図5に示すような結果が得られた。また、前記6倍希釈廃液のpHについても、同様に測定したところ、カラム通液前、カラム通液後とも、0.3〜0.4であった。尚、図5おいて、通液量(L/(L−R))とは、(カラムに通液した6倍希釈廃液の総量)/(前記キレート樹脂の体積)のことである。したがって、横軸は前記キレート樹脂の体積1L当たりに換算して表した通液量(L)を示す。
【0094】
この図5から、希釈廃液中に含まれるMo成分及びAl成分のどちらも、リン酸基がH型であるアミノリン酸型キレート樹脂によって効果的に除去可能であることが分かる。
【0095】
また、陰イオン交換樹脂を内部に充填したカラムを用意し、Mo成分及びAl成分を含む6倍希釈廃液を一定条件下で前記カラムの一方端側から他方端側に向けて通液させ、カラム通液前(入口側)とカラム通液後(出口側)におけるMoの含有濃度をそれぞれ測定した。そして、入口側濃度に対する出口側濃度の比と通液量との関係を求めたところ、図6に示すような結果が得られた。また、図6では、上記のようにして求めた、アミノリン酸型キレート樹脂のMoについての結果を併せて示している。尚、図6における通液量(L/(L−R))は、図5と同様である。
【0096】
また、陽イオン交換樹脂を内部に充填したカラムを用意し、Mo成分及びAl成分を含む6倍希釈廃液を一定条件下で前記カラムの一方端側から他方端側に向けて通液させ、カラム通液前(入口側)とカラム通液後(出口側)におけるAlの含有濃度をそれぞれ測定した。そして、入口側濃度に対する出口側濃度の比と通液量との関係を求めたところ、図7に示すような結果が得られた。また、図7では、上記のようにして求めた、アミノリン酸型キレート樹脂のAlについての結果を併せて示している。尚、図7における通液量(L/(L−R))は、図5と同様である。
【0097】
図6から明らかなように、陰イオン交換樹脂では、通液量が多くなると、カラム通液後の6倍希釈廃液に含まれるMo成分の濃度が高くなっているのに対し、アミノリン酸型キレート樹脂は、通液量が多くなっても、希釈廃液中のMo成分をほぼ100%除去している。また、図7から明らかなように、アミノリン酸型キレート樹脂は、陽イオン交換樹脂に比べ、通液量が多くなっても、カラム通液後の6倍希釈廃液に含まれるAl成分の濃度が低い。よって、これら図6及び図7から、アミノリン酸型キレート樹脂は、希釈廃液中に含まれるMo成分の除去性能が陰イオン交換樹脂よりも、希釈廃液中に含まれるAl成分の除去性能が陽イオン交換樹脂よりも格段に優れていると言える。
【0098】
更に、上記と同じカラム及びアミノリン酸型キレート樹脂を用い、上記と同じ6倍希釈廃液を上記と同じ流速でカラムに所定量通液させ、アミノリン酸型キレート樹脂にMo成分及びAl成分を吸着させた後、このカラムの一方端側から他方端側に向けて、60mL/h(SV=2(1/Hr))の流速で、純水を2(L/(L−R))、2規定のNaOH水溶液(2N−NaOH)を1.5(L/(L−R))、純水を5(L/(L−R))、4規定のHSO水溶液(4N−HSO)を1.5(L/(L−R))、純水を3(L/(L−R))の量ずつ順次通液させた。そして、これを繰り返し行い、各回数におけるMo及びAlの溶離率を求めたところ、図8に示すような結果が得られた。ここで、溶離率とは、アミノリン酸型キレート樹脂に吸着されたMo成分及びAl成分が当該アミノリン酸型キレート樹脂から溶離した割合をそれぞれ示すものであって、溶離量/吸着量で求められる。また、溶離量は、NaOH水溶液に溶出したMo及びAlの量から求めることができ、吸着量は、6倍希釈廃液のカラム通液前のMo及びAlの含有量から6倍希釈廃液のカラム通液後のMo及びAlの含有量を減算することで求めることができる。尚、前記通液量(L/(L−R))は図5のところで説明したものと同様である。
【0099】
この図8から、リン酸基がH型であるアミノリン酸型キレート樹脂を繰り返し使用しても、溶離率は低下することもなければ、大きく変動することもないことが明らかであり、かかるアミノリン酸型キレート樹脂は、回数に関係なく再生可能であることが分かる。
【0100】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明の採り得る具体的な態様は、何らこれに限定されるものではない。
【0101】
上例では、前記エッチング廃液再生装置1に前記キレート樹脂再生部35を設けて構成したが、これに限られるものではなく、当該キレート樹脂再生部35を省略して構成しても良い。この場合、前記キレート樹脂再生部35と同様の構成を備えたキレート樹脂再生装置を前記エッチング廃液再生装置1とは別に設けるとともに、前記吸着塔14,15の一方端部を送液管9,10に対して、前記吸着塔14,15の他方端部を送液管21,22に対して着脱可能に且つ可搬可能に構成する。
【0102】
そして、休止状態にある吸着塔14,15を送液管9,10,21,22から取り外した後、適宜搬送してキレート樹脂再生装置に取り付け、上記と同様にして、吸着塔14,15内のアミノリン酸型キレート樹脂を再生する。尚、アミノリン酸型キレート樹脂が再生された吸着塔14,15は、エッチング廃液再生装置1の休止状態にある吸着塔14,15と交換される。また、エッチング廃液の再生とアミノリン酸型キレート樹脂の再生とは、例えば、同じ工場の敷地内で行うようにしても、別の工場の敷地内で行うようにしても良い。
【0103】
また、上例では、前記エッチング廃液再生装置1を適宜エッチング装置(図示せず)に接続したが、エッチング装置(図示せず)に接続しないで構成しても良い。この場合には、例えば、1台又は複数台のエッチング装置(図示せず)からエッチング廃液を廃液貯留槽4内に回収して、この廃液貯留槽4内のエッチング廃液を再生した後、再生エッチング液を適宜タンク内に一時的に貯留して、このタンク内の再生エッチング液を前記1台又は複数台のエッチング装置(図示せず)に戻すようにする。
【産業上の利用可能性】
【0104】
以上説明したように、本発明は、少なくともリン酸を含むエッチング廃液中のMo成分及びAl成分を除去して、該エッチング廃液をエッチング液として再使用可能な状態に再生する再生方法及び再生装置として、好適である。
【図面の簡単な説明】
【0105】
【図1】本発明の一実施形態に係るエッチング廃液再生装置の概略構成を示した説明図である。
【図2】リン酸基がH型であるアミノリン酸型キレート樹脂によるMo及びAlの吸着について説明するための説明図である。
【図3】リン酸基がH型であるアミノリン酸型キレート樹脂の再生について説明するための説明図である。
【図4】リン酸基がH型であるアミノリン酸型キレート樹脂の再生について説明するための説明図である。
【図5】リン酸基がH型であるアミノリン酸型キレート樹脂のMo、Al除去性能を示したグラフである。
【図6】リン酸基がH型であるアミノリン酸型キレート樹脂と陰イオン交換樹脂のMo除去性能を示したグラフである。
【図7】リン酸基がH型であるアミノリン酸型キレート樹脂と陽イオン交換樹脂のAl除去性能を示したグラフである。
【図8】リン酸基がH型であるアミノリン酸型キレート樹脂の再生回数とMo、Alの溶離率との関係を示したグラフである。
【符号の説明】
【0106】
1 再生装置
4 廃液貯留槽
5 希釈部
8 廃液供給部
14,15 吸着塔
20 濃縮部
35 キレート樹脂再生部
100 エッチング液供給装置
101 エッチング液循環槽

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともリン酸を含むエッチング廃液からMo成分及びAl成分を除去して、該エッチング廃液を再生する方法であって、
前記エッチング廃液を、そのpHが0〜1.0となるように水で希釈する希釈工程と、
前記希釈エッチング廃液を、下記構造式で表される、リン酸基がH型であるアミノリン酸型キレート樹脂と接触させ、該アミノリン酸型キレート樹脂にMo成分及びAl成分を吸着させて、該希釈エッチング廃液からMo成分及びAl成分を除去する除去工程と、
Mo成分及びAl成分を除去した後の希釈エッチング廃液から水分を除去して濃縮する濃縮工程とを備えてなることを特徴とするエッチング廃液の再生方法。
【化1】

【請求項2】
前記請求項1に記載のエッチング廃液の再生方法において、
前記除去工程を予め定めた時間実施した後、又は予め定めた量の前記希釈エッチング廃液に対して前記除去工程を実施した後、
Mo成分及びAl成分を吸着した前記アミノリン酸型キレート樹脂とNaOH水溶液又はKOH水溶液とを接触させて、前記アミノリン酸型キレート樹脂からMo成分及びAl成分を溶離させ、ついで、前記アミノリン酸型キレート樹脂とHSO水溶液,HCl水溶液又はHPO水溶液とを接触させて、前記アミノリン酸型キレート樹脂のリン酸基をH型にして、該アミノリン酸型キレート樹脂を再生するようにしたことを特徴とするエッチング廃液の再生方法。
【請求項3】
少なくともリン酸を含むエッチング廃液からMo成分及びAl成分を除去して、該エッチング廃液を再生する装置であって、
前記エッチング廃液を貯留する廃液貯留槽と、
前記廃液貯留槽に水を供給して、該廃液貯留槽内のエッチング廃液をそのpHが0〜1.0となるように希釈する希釈手段と、
密閉された容器体からなり、該容器体内に、下記構造式で表される、リン酸基がH型であるアミノリン酸型キレート樹脂が装填されてなる吸着塔と、
前記廃液貯留槽に貯留されたエッチング廃液を前記吸着塔に供給する廃液供給手段と、
前記吸着塔に接続し、該吸着塔から流出する希釈エッチング廃液を受容し、受容した希釈エッチング廃液から水分を除去して濃縮する濃縮手段とを備えてなることを特徴とするエッチング廃液の再生装置。
【化2】

【請求項4】
前記請求項3記載のエッチング廃液の再生装置において、
前記吸着塔にNaOH水溶液又はKOH水溶液を供給して、該吸着塔内を通液させる第1樹脂再生手段と、
前記吸着塔にHSO水溶液,HCl水溶液又はHPO水溶液を供給して、該吸着塔内を通液させる第2樹脂再生手段とを更に備えてなることを特徴とするエッチング廃液の再生装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2009−61414(P2009−61414A)
【公開日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−232787(P2007−232787)
【出願日】平成19年9月7日(2007.9.7)
【出願人】(000183369)住友精密工業株式会社 (336)
【Fターム(参考)】