説明

エネルギー線硬化型インクジェットインク組成物

【課題】保存安定性に優れたエネルギー線硬化型インクジェットインク組成物を提供する。
【解決手段】フタロシアニン系顔料、高分子化合物、及び有機溶媒を少なくとも含むエネルギー線硬化型インクジェットインク組成物であって、エネルギー線硬化型インクジェットインク組成物中のイオンを純水に転相したとき、水相中の1価の陽イオンの合計濃度を20ppm以下とする。上記エネルギー線硬化型インクジェットインク組成物は、長期保存後でも析出物の発生が少なく、優れた保存安定性を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フタロシアニン系顔料、重合性化合物を少なくとも含むエネルギー線硬化型インクジェットインク組成物に関し、特にインクジェット記録方式に好適に用いられるエネルギー線硬化型インクジェットインク組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録方式は、圧力、熱、電界などを駆動源として用いることにより、液状のインクをノズルから記録媒体に向けて吐出させて印刷する記録方式である。このような記録方式は、ランニングコストが低く、高画質化が可能であり、また用途に合わせて各種のインクを印字できることから、近年、市場を拡大している。
【0003】
従来、インクジェット記録方式に適用されるインク組成物としては、色材として染料・顔料を溶媒として水を主成分とする水性インクや有機溶剤を主成分とする油性インクが用いられてきた。
【0004】
例えば、顔料と、水及びエタノールに対する溶解度が25℃で3質量%未満である高分子化合物と、有機溶媒として、(ポリ)アルキレングリコール誘導体を30〜90質量%及び含窒素複素環化合物を1〜30質量%含有する油性顔料インク組成物を用いることにより、耐候性や定着性を向上した油性顔料インクが提案されている(例えば、特許文献1)。また、上記のような油性顔料インクは水性染料インクと異なり、インク中で顔料が溶解していないため、吐出不良が生じやすい。そのため、有機溶媒中での顔料の分散安定性を改善することを目的として、顔料と、バインダー樹脂と、顔料分散剤と、グリコールエーテルアセテートの少なくとも1種、並びにシクロヘキサノン及びイソホロンからなる群から選ばれる少なくとも1種からなる有機溶媒とを含有する油性顔料インクが提案されている(例えば、特許文献2)。
さらに、近年、揮発性の有機溶剤を少なくすることができ、環境対応型のインクとしてエネルギー線(例えば、紫外線)の照射によりインクを硬化させるエネルギー線硬化型インクジェットインク組成物が注目されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−60716号公報
【特許文献2】特開2006−56991号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記のようなエネルギー線硬化型インクジェットインクに用いられる顔料は酸化チタンなどの無機顔料と、カーボンブラック、アゾ系、アゾメチン系、フタロシアニン系などの有機顔料とに大別される。インクジェット用インクとしてエネルギー線硬化型インクジェットインクを使用する場合、これらの顔料の中から所望の特性に応じてシアン、マゼンダ、イエロー、白色、及び黒色の各色相を呈する顔料を選定し、各顔料を用いて調製されたエネルギー線硬化型インクジェットインクを充填したインクタンクを組み合わせたインクセットの形態でインクジェット印刷に用いられている。
【0007】
しかしながら、上記のようなエネルギー線硬化型インクジェットインクの顔料としてフタロシアニン系顔料を使用した場合、インクを長期保存するとノズル目詰まりが頻発し、インクジェットプリンタによる吐出が困難になるという問題が明らかとなった。
【0008】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、本発明の目的は、色材としてフタロシアニン系顔料を有するエネルギー線硬化型インクジェットインク組成物において、長期保存後でもインクジェットプリンタでのノズル目詰まりが少なく、安定なインクジェット印刷を行うことができるエネルギー線硬化型インクジェットインク組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、フタロシアニン系顔料、重合性化合物を少なくとも含むエネルギー線硬化型インクジェットインク組成物であって、エネルギー線硬化型インクジェットインク組成物中のイオンを純水に転相したとき、水相中の1価の陽イオンの合計濃度が20ppm以下であることを特徴とする。
【0010】
上記エネルギー線硬化型インクジェットインク組成物によれば、インク組成物中のイオンを純水に転相したときに、水相中の1価の陽イオンの合計濃度が20ppm以下であるため、長期保存後でもフタロシアニン系顔料に由来する析出物の発生を抑えることができる。特に、1価の陽イオンの中でも、ナトリウムイオンやカリウムイオンは析出物を形成しやすいことから、これらの合計濃度が20ppm以下であることが好ましい。
【0011】
また、上記水相の比伝導度は50μS/cm以下であることが好ましい。比伝導度が低いことは、インク組成物中のイオンを純水に転相したときに、転相されるイオン量が少ないことを意味する。従って、比伝導度が50μS/cm以下であれば、1価の陽イオンだけでなく、陰イオンなどの他のイオン性不純物の含有量が少ない。このため、さらに析出物の発生を抑えることができる。
【発明の効果】
【0012】
以上のように、本発明によれば、フタロシアニン系顔料に由来する析出物の発生の少ないエネルギー線硬化型インクジェットインク組成物を提供することができる。これにより、インクを長期保存した場合でも、ノズル目詰まりが少なく、安定な吐出が可能なインクジェット用インクを得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
まず本実施の形態のエネルギー線硬化型インクジェットインク組成物の開発経緯について説明すると、フタロシアニン系顔料を含有するエネルギー線硬化型インクジェットインクを長期保存した場合に、他の顔料を含有するエネルギー線硬化型インクジェットインクと比べてノズル目詰まりが頻発した原因について調査したところ、インクジェットプリンタのインクタンクとノズルとを繋ぐ供給管に設けられているフィルタにフタロシアニン系顔料自体とは異なる固形の析出物が付着しており、それによって目詰まりを起こしていることが確認された。インク調製時にはインク中に析出物は生じていなかったことから、この析出物はインクを長期保存することにより発生したものと考えられた。
【0014】
このため、インク組成物中で析出物を形成しうる成分について検討した結果、フタロシアニン系顔料中に含まれるイオン性不純物が長期保存によってインク中に溶出し、塩を生成することが析出物の原因であると推測された。すなわち、フタロシアニン系顔料の製造工程においては、まず粗製フタロシアニン系顔料が合成されるが、この合成時に原料由来あるいは副生成物由来の塩素イオン、硝酸イオンなどの陰イオンが粗製フタロシアニン系顔料に不可避的に混入する。また、合成された粗製フタロシアニン系顔料は一般に塊状物であり、顔料として用いるのに適さない結晶として生成される。このため、粗製フタロシアニン系顔料を更に処理加工して粒子径、結晶構造、色相等を整える顔料化が行われている。この顔料化の工業的方法としては、粗製フタロシアニン系顔料を無機塩とともに粉砕し、次いで生成したフタロシアニン系顔料を酸抽出するソルトミリング法が一般に行われている。従って、ソルトミリング法により製造されたフタロシアニン系顔料には、ナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属の塩やカルシウム、バリウムなどのアルカリ土類金属の塩などのイオン性不純物が含まれている。
【0015】
このようなイオン性不純物を含有するフタロシアニン系顔料を有機溶媒中に分散させたインクを長期保存すると、重合性化合物などインクの構成成分に含まれていた微量の水分もしくは製造工程において空気中から取り込まれた水分により上記のようなイオン性不純物がインク中に溶解して塩を形成し、それによって析出物が発生したものと考えられる。
【0016】
さらに、析出物中の金属成分について詳細に分析した結果、析出物はカルシウムなどの2価のアルカリ土類金属よりも、ナトリウムやカリウムなどの1価のアルカリ金属を主たる金属成分として含んでいたことから、長期保存時に析出物を生成するのは上記の顔料化の際に混入する無機塩中の1価の陽イオンが主であると考えられた。従って、このような析出物を生成する主要因となる1価の陽イオン、及び陰イオンの少なくともいずれか一方を低減したインク組成物であれば、析出物の発生が抑えられると期待できる。
【0017】
以上の知見に基づき、本発明者等は、インク組成物中の1価の陽イオン量に着目し、該イオン量を低減するための検討を行ったが、エネルギー線硬化型インクジェットインク組成物は分散溶媒に有機溶媒を用いていることから、直接インク組成物中の陽イオン量を検出することが困難である。このため、さらに検討を進めた結果、インク組成物中のイオンをイオン成分を含有しない純水に転相させ、その水相中の1価の陽イオンの合計濃度が一定値以下であれば、該陽イオン濃度に依存して、長期保存後でも析出物の発生の少ないインクが得られることを見出した。すなわち、エネルギー線硬化型インクジェットインク組成物中のイオンを純水に転相させたとき、水相中の1価の陽イオンの合計濃度が20ppm以下、好ましくは10ppm以下であれば、インクを長期保存した後でも析出物の発生が抑えられ、保存安定性に優れるインクが得られる。
なお、重合性化合物が水溶性の重合性化合物を含有しており、油性顔料インク組成物を純水と接触させたときに水溶性有機溶媒も水相中に転相されてくる場合には、その水溶性有機溶媒を含む水相中の1価の陽イオンの合計濃度を測定することにより、インク組成物中の1価の陽イオン量を求めることができる。
【0018】
また、本発明者等は上記のようにしてエネルギー線硬化型インクジェットインク組成物中のイオンを純水に転相したとき、水相の比伝導度が一定値以下であれば、さらに析出物の生成が少ないことも見出した。すなわち、析出物は1価の陽イオンを含む塩であると考えられることから、その析出量は陰イオンの量にも影響される。また、上記したようにカルシウムなどの2価の陽イオンを含む析出物は少ないが、析出物中にある程度カルシウムなどのアルカリ土類金属の塩も含まれている。従って、析出物の発生を抑えるためには陰イオンやカルシウムなどの2価の陽イオンも低減することが好ましい。このため、インク組成物全体におけるイオン性不純物の含有量を低下させれば、析出物の発生がさらに抑えられると期待できるが、インク中のこれらのイオン性物質のイオン量は比伝導度に影響する。上記観点から検討した結果、水相の比伝導度が好ましくは50μS/m以下、より好ましくは25μS/m以下であれば、析出物の発生が極めて少ないことも見出された。
【0019】
本実施の形態のエネルギー線硬化型インクジェットインク組成物において、インク組成物中のイオンを純水に転相したときの水相中の1価の陽イオンの合計濃度、及び水相の比伝導度を上記範囲に調整するにあたっては、析出物発生の主たる原因と考えられるフタロシアニン系顔料にイオン性不純物の少ないものを使用することが好ましい。特に、インクジェット用インクとして使用する場合のフタロシアニン系顔料の含有量の範囲においては、比伝導度が50μS/m以下、より好ましくは25μS/m以下のフタロシアニン系顔料を使用することにより析出物の発生が抑えられる。このような低比伝導度のフタロシアニン系顔料を得る方法としては、例えば市販のフタロシアニン系顔料を蒸留水やイオン交換水で洗浄する方法が挙げられる。なお、フタロシアニン系顔料の含有量が多い場合、水相中の1価の陽イオンの合計濃度、及び水相の比伝導度が増加するため、可能な限り比伝導度の低いフタロシアニン系顔料を使用することが好ましい。
【0020】
次に、本実施の形態のエネルギー線硬化型インクジェットインク組成物に用いられる各成分について具体的に説明する。
【0021】
本実施の形態で用いられるフタロシアニン系顔料としては、具体的には、例えば、C.I.ピグメントブルー15、C.I.ピグメントブルー15:1、C.I.ピグメントブルー15:2、C.I.ピグメントブルー15:3、C.I.ピグメントブルー15:4、C.I.ピグメントブルー15:5、C.I.ピグメントブルー15:6などが挙げられる。これらは単独でも複数混合して使用してもよい。
【0022】
インク組成物中のフタロシアニン系顔料の含有量としては、特に限定されるものではないが、インクジェットプリンタ用のインクとして使用する場合、インク組成物全体に対して、0.1〜10質量部が好ましく、1.5〜7質量部がより好ましい。
【0023】
重合性化合物には、その反応機構によりラジカル重合型とカチオン重合型があるが、それぞれの特徴と利用目的によって適宜、使い分ける事ができる。特にエチレン性二重結合を有する化合物が好ましい。
【0024】
ラジカル重合型のエネルギー線硬化性化合物に使用できる単官能(メタ) アクリレートとして例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、アミル、2 − エチルヘキシル、オクチル、ノニル、ドデシル、ヘキサデシル、オクタデシル、シクロヘキシル、ベンジル、メトキシエチル、ブトキシエチル、フェノキシエチル、ノニルフェノキシエチル、グリシジル、ジメチルアミノエチル、ジエチルアミノエチル、イソボルニル、ジシクロペンタニル、ジシクロペンテニル、ジシクロペンテニロキシエチルなどの置換基を有する(メタ) アクリレートなどが挙げられる。
【0025】
また、多官能(メタ) アクリレートとしては例えば、1.3−ブチレングリコール、1.4−ブタンジオール、1.5−ペンタンジオール、3−メチル−1.5−ペンタンジオール、1.6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1.8−オクタンジオール、1.9−ノナンジオール、トリシクロデカンジメタノール、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール等のジ(メタ) アクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートのジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコール1モルに4モル以上のエチレンオキサイドもしくはプロピレンオキサイドを付加して得たジオールのジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールA 1モルに2モルのエチレンオキサイドもしくはプロピレンオキサイドを付加して得たジオールのジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパン1モルに3 モル以上のエチレンオキサイドもしくはプロピレンオキサイドを付加して得たトリオールのジまたはトリ(メタ)アクリレート、ビスフェノールA 1モルに4モル以上のエチレンオキサイドもしくはプロピレンオキサイドを付加して得たジオールのジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールのポリ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性リン酸(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性アルキルリン酸(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0026】
本発明のインク組成物に優れた硬化性を付与するためには、重合性化合物としてポリウレタン(メタ)アクリレートを含有させることが好ましい。ポリウレタン(メタ)アクリレートを含有する重合性化合物が良好な硬化性を示す理由は、一般的な(メタ)アクリレートの末端二重結合に比べて、ポリウレタン(メタ)アクリレートの末端二重結合は近傍にウレタン結合が在るために開裂しやすいためであると考えられる。また、ポリウレタンの特性に由来して耐摩耗性が良好となる。
【0027】
インクジェット用として使用するポリウレタン(メタ)アクリレートは、低粘度であるか、又は結晶性などでポリウレタン(メタ)アクリレート自体の粘度は高くとも、(メタ)アクリレートや有機溶剤で希釈されることによって容易に低粘度化することが必要である。このためには、長鎖ポリエーテル、ポリエステルなどのポリオールを使用せず、ポリイソシアネートとモノヒドロキシ(メタ)アクリレートを反応させたポリウレタン(メタ)アクリレートを用いることが望ましい。
【0028】
ポリウレタン(メタ)アクリレートは、本発明のジェットインク組成物の粘度、硬化性の点から、重合性化合物の総量に対して、2〜40%の範囲で用いることが好ましい。
【0029】
本発明に使用するラジカル重合性ジェットインク用光重合開始剤は、用いる重合性化合物を硬化できる公知慣用のものがいずれも使用できるが、特に好適に使用することができる開始剤として、分子開裂型または水素引き抜き型の光重合開始剤がある。
【0030】
本発明に使用する光重合開始剤として、ベンゾインイソブチルエーテル、2.4−ジエチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、ベンジル、2.4.6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキシド、6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキシド、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル) −ブタン−1−オン、ビス(2 、6−ジメトキシベンゾイル)−2.4.4−トリメチルペンチルフォスフィンオキシドなどが好適に用いられ、さらにこれら以外の分子開裂型のものとして、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ベンゾインエチルエーテル、ベンジルジメチルケタール、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1− オン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オンおよび2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1− オンなどを併用しても良いし、更に水素引き抜き型光重合開始剤である、ベンゾフェノン、4−フェニルベンゾフェノン、イソフタルフェノン、4−ベンゾイル−4'−メチル−ジフェニルスルフィドなども併用できる。
【0031】
また上記光重合開始剤に対し、増感剤として例えば、トリメチルアミン、メチルジメタノールアミン、トリエタノールアミン、p−ジエチルアミノアセトフェノン、p−ジメチルアミノ安息香酸エチル、p−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、N.N−ジメチルベンジルアミンおよび4.4'−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノンなどの、前述重合性成分と付加反応を起こさないアミン類を併用することもできる。もちろん、上記光重合開始剤や増感剤は、重合性化合物あるいはこれらよりなる組成物への溶解性に優れ、紫外線透過性を阻害しないものを選択して用いることが好ましい。 光重合開始剤と増感剤は重合性化合物総量に対して0.1〜20質量% 、好ましくは、7〜14質量%の範囲で用いる。
【0032】
本発明に使用するカチオン重合性化合物としては、各種公知のカチオン重合性のモノマーを使用することができる。例えば、エポキシ化合物、ビニルエーテル化合物、オキセタン化合物などが挙げられる。
【0033】
芳香族エポキシドとして好ましいものは、例えばビスフェノールA あるいはそのアルキレンオキサイド付加体のジまたはポリグリシジルエーテル、水素添加ビスフェノールA あるいはそのアルキレンオキサイド付加体のジまたはポリグリシジルエーテル、ならびにノボラック型エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0034】
脂肪族エポキシドとしては、例えばエチレングリコールのジグリシジルエーテル、プロピレングリコールのジグリシジルエーテルまたは1 , 6−ヘキサンジオールのジグリシジルエーテル等のアルキレングリコールのジグリシジルエーテル、グリセリンあるいはそのアルキレンオキサイド付加体のジまたはトリグリシジルエーテル等の多価アルコールのポリグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールあるいはそのアルキレンオキサイド付加体のジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールあるいはそのアルキレンオキサイド付加体のジグリシジルエーテル等のポリアルキレングリコールのジグリシジルエーテル等が挙げられる。ここでアルキレンオキサイドとしては、エチレンオキサイドおよびプロピレンオキサイド等が挙げられる。
【0035】
ビニルエーテル化合物としては、例えばエチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、プロピレングリコールジビニルエーテル、ジプロピレングリコールジビニルエーテル、ブタンジオールジビニルエーテル、ヘキサンジオールジビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル等のジ又はトリビニルエーテル化合物、エチルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、オクタデシルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールモノビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、イソプロペニルエーテル−O−プロピレンカーボネート、ドデシルビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、オクタデシルビニルエーテル等のモノビニルエーテル化合物等が挙げられる。
【0036】
オキセタン化合物としては、例えばオキセタン環を有する化合物のことであり、3−ヒドロキシメチル−3−メチルオキセタン、3−ヒドロキシメチル−3−エチルオキセタン、3−ヒドロキシメチル−3−プロピルオキセタン、3−ヒドロキシメチル−3−ノルマルブチルオキセタン、3−ヒドロキシメチル−3−フェニルオキセタン、3−ヒドロキシメチル−3−ベンジルオキセタン、3−ヒドロキシエチル−3−メチルオキセタン、3−ヒドロキシエチル−3−エチルオキセタン、3−ヒドロキシエチル−3−プロピルオキセタン、3−ヒドロキシエチル−3−フェニルオキセタン、3−ヒドロキシプロピル−3−メチルオキセタン、3−ヒドロキシプロピル−3−エチルオキセタン、3−ヒドロキシプロピル−3−プロピルオキセタン、3−ヒドロキシプロピル−3−フェニルオキセタン、3−ヒドロキシブチル−3−メチルオキセタンなどを挙げることができる。
【0037】
本発明において、反応性や、塗膜の収縮、粘度調整の観点から、光重合性化合物として少なくとも1 種のオキセタン化合物と、エポキシ化合物及びビニルエーテル化合物から選ばれる少なくとも1 種の化合物とを含有することが好ましい。
【0038】
本発明に使用できる光カチオン重合開始剤としては、従来より知られている化合物であれば特に限定することなく使用できるが、例えば芳香族ヨードニウム錯塩や芳香族スルホニウム錯塩などを挙げることができ、これらの1種を単独で使用してもよいが、2 種以上を適宜組み合わせて使用してもよい。またその添加量は、エネルギー線硬化性カチオンモノマーの総重量に対して例えば0.01〜20重量% 、特に0.1〜10重量%の範囲で使用するのが好ましい。
【0039】
芳香族ヨードニウムの具体例としては、ジフェニルヨードニウム、4−メトキシジフェニルヨードニウム、ビス( 4−メチルフェニル) ヨードニウム、ビス( 4−t e r t−ブチルフェニル)ヨードニウム、ビス( ドデシルフェニル)ヨードニウム等が挙げられる。また、芳香族スルホニウムの具体例としては、トリフェニルスルホニウム、ジフェニル−4−チオフェノキシフェニルスルホニウム、ビス[ 4−(ジフェニルスルフォニオ)−フェニル] スルフィド、ビス[ 4−(ジ(4−(2−ヒドロキシエチル)フェニル)スルホニオ)−フェニル]スルフィド、η5−2,4−(シクロペンタジェニル)[1,2,3,4,5,6−η]−(メチルエチル)−ベンゼン]−鉄(1+)等が挙げられる。
【0040】
錯塩を形成するカウンタアニオンの具体例としては、テトラフルオロボレート(BF4-)、ヘキサフルオロホスフェート(PF6-)、ヘキサフルオロアンチモネート(SbF6-) 、ヘキサフルオロアルセネート(AsF6-)、ヘキサクロロアンチモネート(SbCl6-)などが挙げられる。
(ゲル化防止剤)
本発明のインク組成物は、ゲル化防止剤の少なくとも一種を含有することができる。
【0041】
前記ゲル化防止剤としては、フェノール系水酸基含有化合物、およびキノン類、N −オキシド化合物類、ピペリジン−1−オキシルフリーラジカル化合物類、ピロリジン−1−オキシルフリーラジカル化合物類、N−ニトロソフェニルヒドロキシルアミン類、およびカチオン染料類からなる群より選択される化合物が好適に挙げられる。
【0042】
具体的には、ハロイドキノン、p−メトキシフェノール、ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ピロガロール、レゾルシノール、カテコール、t − ブチルカテコール、ハイドロキノンモノアルキルエーテル( 例えば、ハイドロキノンモノメチルエーテル、ハイドロキノンモノブチルエーテル等) 、ベンゾキノン、4,4−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール) 、2,2'−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2,6,6−テトラメチルピペリジンおよびその誘導体、ジ−t−ブチルニトロキシド、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシドおよびその誘導体等、ピペリジン 1−オキシルフリーラジカル、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン− オキシルフリーラジカル、4−オキソ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン 1−オキシルフリーラジカル、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン 1−オキシルフリーラジカル、4−アセトアミド−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン 1−オキシルフリーラジカル、4−マレイミド−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン 1−オキシルフリーラジカル、4−ホスホノキシ− 2,2,6,6−テトラメチルピペリジン 1−オキシルフリーラジカル、3−カルボキシ−2,2,5,5−テトラメチルピロリジン 1−オキシルフリーラジカル、N− ニトロソフェニルヒドロキシルアミン第一セリウム塩、N−ニトロソフェニルヒドロキシルアミンアルミニウム塩、クリスタルバイオレット、メチルバイオレット、エチルバイオレット、およびビクトリアピュアブルーBOH 等が挙げられる。
【0043】
また、本実施の形態において、インク組成物は、ゲル化防止剤として、2,2,6,6−テトラメチルピペリジニル基を有するヒンダードアミン系化合物を含有する。高硬化感度の重合性化合物及び光重合開始剤とともに、上記ヒンダードアミン系化合物をゲル化防止剤として使用すれば、インク組成物の硬化感度を低下させることなく、保存安定性に優れたインク組成物を得ることができる。上記ゲル化防止剤としては、具体的には、例えば、ビス(1−オキシル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジニ−4−イル)セバケート、デカン二酸ビス(2,2,6,6-テトラメチル−1−(オクチルオキシ)−4−ピペリジニル)エステルなどが挙げられ、これらの中でも、1−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジニル基を有するビス(1−オキシル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジニ−4−イル)セバケートが好ましい。市場で入手可能なゲル化防止剤としては、チバ社製のIRGASTAB UV−10、TINUVIN 123などが挙げられる。
【0044】
インク組成物中の上記ゲル化防止剤の量は、特に限定されるものではないが、組成物全体に対して、0.01〜3質量%が好ましく、0.05〜2質量%がより好ましい。ゲル化防止剤の量が0.01質量%未満では、保存時に発生するラジカルを十分に捕捉することができず、保存安定性が低下する傾向がある。一方、ゲル化防止剤の量が3質量%より多い場合、ラジカルを捕捉する効果が飽和するとともに、エネルギー線照射時の重合反応が阻害される傾向がある。
【0045】
エネルギー線硬化型インク組成物は、他のヒンダードアミン系安定化剤や、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、ハイドロキノンモノアルキルエーテルなどの従来公知のゲル化防止剤をさらに含有してもよい。このようなゲル化防止剤としては、具体的には、例えば、ハイドロキノンモノメチルエーテル、ハイドロキノン、t−ブチルカテコール、ピロガロール、チバ社製のTINUVIN 111 FDL、TINUVIN 144、TINUVIN 292、TINUVIN XP40、TINUVIN XP60などが挙げられる。インク組成物中のこれらゲル化防止剤の量は、特に限定されるものではないが、組成物全体に対して、0.1〜4質量%が好ましい。
【0046】
顔料分散剤としては、イオン性または非イオン性の界面活性剤や、アニオン性、カチオン性またはノニオン性の高分子化合物が好ましく用いられる。これらの中でも、分散安定性、耐水性、耐搾過性などの観点から、カチオン性基またはアニオン性基を有する高分子化合物がより好ましい。上記のような顔料分散剤としては、具体的には、例えば、ルーブリゾール社製のSOLSPERSE、ビックケミー社製のDISPERBYK、エフカアディティブズ社製のEFKAなどが挙げられる。
【0047】
本実施の形態のエネルギー線硬化型インクジェットインク組成物は、フタロシアニン系顔料、重合性化合物のほかに、必要により、任意成分として、有機溶媒、顔料分散剤、定着性樹脂、界面活性剤、表面調整剤、レベリング剤、消泡剤、酸化防止剤、pH調整剤、電荷付与剤、殺菌剤、防腐剤、防臭剤、電荷調整剤、湿潤剤、皮はり防止剤、紫外線吸収剤、香料、顔料誘導体など、公知の添加剤を配合してもよい。
【0048】
本実施の形態のエネルギー線硬化型インクジェットインク組成物を調製する方法としては、従来公知の方法を使用することができる。好ましい調製方法としては、以下の調製方法が挙げられる。
(UVインクの調整方法)
まず、フタロシアニン系顔料と、高分子化合物(顔料分散剤)と、重合性化合物・重合性禁止剤の一部と、必要により他の任意成分とを、分散して顔料分散体を調製する。分散機としては、ボールミル、遠心ミル、遊星ボールミル、ペイントシェイカーなどの容器駆動媒体ミル;サンドミルなどの高速回転ミル;撹拌槽型ミルなどの媒体撹拌ミル;ディスパーなどが挙げられる。
【0049】
次に、得られた顔料分散体に、さらに残りの重合性化合物・重合性禁止剤・重合性開始剤とを添加し、撹拌機を用いて均一に混合する。撹拌機としては、具体的には、例えば、スリーワンモーター、マグネチックスターラー、ディスパー、ホモジナイザーなどが挙げられる。また、ラインミキサーなどの混合機を用いてもよい。さらに、インク組成物中の粒子をより微細化する目的で、ビーズミルや高圧噴射ミルなどの分散機を用いてもよい。
【0050】
このようにして調製されるエネルギー線硬化型インクジェットインク組成物は、20〜40mN/m(25℃)の表面張力を有することが好ましく、また5〜40mPa・s(25℃)の粘度を有することが好ましい。表面張力及び粘度を上記範囲内に設定すると、インクジェット用インクとして用いた場合、ジェット曲がりなどが少ない優れた噴射性が得られるとともに、普通紙、マット紙などの基材に印字した際の滲みを抑えることができる。また、エネルギー線硬化型インクジェットインク組成物中のフタロシアニン系顔料の分散平均粒子径は20〜250nmが好ましく、100〜200nmがより好ましい。分散平均粒子径が20nm未満となると、粒子が細かいために、印字物の耐光性が低下する場合がある。一方、分散平均粒子径が 250nmを超えると、印字物の精細さが低下する場合がある。さらに、目詰まりを防止するため、最大分散粒子径は、1,000nm以下が好ましい。なお、上記した表面張力、粘度、分散平均粒子径、及び最大分散粒子径は、各成分の種類及び含有量を変更することにより容易に調整することができる。
【0051】
以下実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものでない。以下において、「部」とあるのは「質量部」を意味する。なお、下記実施例で使用した器具は、イオン性物質の影響を除外するため全て純水により予め洗浄したものを用いた。
【実施例】
【0052】
<フタロシアニン系顔料の調製>
市販のフタロシアニン系顔料(a)(クラリアント社製,銅フタロシアニン顔料,HOSTAPERM BLUE P-BFS)を準備した。このフタロシアニン系顔料(a)100部と、純水(イオン濃度:0ppm,比伝導度:0μS/m)500部とを1,000ccのプラスチック製ディスポカップに投入し、これをディスパーにより室温(25℃)で10分間撹拌し、混合液をろ紙(孔径:1μm)を用いて吸引ろ過する洗浄工程を繰り返し、洗浄回数の異なるフタロシアニン系顔料(a)〜(e)を調製した。
【0053】
上記のようにして得られた各フタロシアニン系顔料の比伝導度を以下により測定した。表1はこの結果を示す。
【0054】
〔フタロシアニン系顔料の比伝導度〕
フタロシアニン系顔料3部と、純水(イオン濃度:0ppm,比伝導度:0μS/m)60部とを200ccのビーカに投入し、これをオイルバス(理工科学産業社製,MH−5H)により加熱して5分間煮沸させた。自然冷却後、溶液をシリンジフィルタ(ミリポア社製,孔径5μm,0.45μm,及び0.2μmのフィルタが順に設けられたシリンジフィルタ)を用いてろ過した。ろ液をコンパクト導電率計(HORIBA社製,B−173形)により測定し、得られた比伝導度をフタロシアニン系顔料の比伝導度とした。
【0055】
【表1】

【0056】
<インクの調製>
(実施例1)
250ccのプラスチック製ビンに、下記表2に示す配合量で各成分を計り取り、これにジルコニアビーズ(直径:0.3mmφ)100部を加えてペイントコンディショナー(東洋精機社製)により、1時間分散して顔料分散体(A)を調製した。
【0057】
【表2】

【0058】
次に、100ccのプラスチック製ビンに、下記表3に示す配合量で各成分を計り取り、溶液をマグネチックスターラーにより30分間撹拌した後、グラスフィルタ(桐山製作所製)を用いて吸引ろ過を行い、インクを調製した。
【0059】
【表3】

【0060】
(実施例2)
実施例1において、顔料としてフタロシアニン系顔料(d)を用いた以外は、実施例1と同様にして顔料分散体(II)を調製した。この顔料分散体(II)を用いた以外は、実施例1と同様にしてインクを調製した。
【0061】
(実施例3)
実施例1において、顔料としてフタロシアニン系顔料(c)を用いた以外は、実施例1と同様にして顔料分散体(III)を調製した。この顔料分散体(III)を用いた以外は、実施例1と同様にしてインクを調製した。
【0062】
(比較例1)
実施例1において、顔料としてフタロシアニン系顔料(a)を用いた以外は、実施例1と同様にして顔料分散体(VI)を調製した。この顔料分散体(VI)を用いた以外は、実施例1と同様にしてインクを調製した。
【0063】
(比較例2)
実施例1において、顔料としてフタロシアニン系顔料(b)を用いた以外は、実施例1と同様にして顔料分散体(VII)を調製した。この顔料分散体(VII)を用いた以外は、実施例1と同様にしてインクを調製した。
【0064】
以上のようにして調製した実施例及び比較例の各インクについて以下の評価を行った。
【0065】
〔1価の陽イオン濃度、及び比伝導度〕
マグネチックスターラーにより純水(イオン濃度:0ppm,比伝導度:0μS/m)34部を撹拌しながら、純水中にインク6部をゆっくり滴下し、さらに室温(25℃)で30分間撹拌した。溶液をメンブランフィルタ(孔径:0.65μm)を用いてろ過した後、得られたろ液(水相)中のナトリウムイオンの濃度をコンパクトナトリウムイオンメータ(HORIBA社製,C−122形)により、カリウムイオンの濃度をコンパクトカリウムイオンメータ(HORIBA社製,C−131形)によりそれぞれ測定し、各測定値を溶液中のインク濃度(0.15)で除してインク100部に換算したときの各陽イオン濃度を求めた。 また、ろ液(水相)の比伝導度をコンパクト導電率計(HORIBA社製,B−173形)により測定し、測定値を溶液中のインク濃度(0.15)で除してインク100部に換算したときの比伝導度を求めた。
【0066】
〔保存安定性〕
インクを30ccのガラスビンに充填し、これを70℃の恒温槽に1週間保存する保存加速試験を行った。保存後、インク中の析出物の発生の有無を目視により観察し、析出物の沈殿が生じていないものを○、析出物の沈殿が発生しているものを×として評価した。
【0067】
〔フィルタ透過性〕
上記保存安定性で評価した保存後のインクをフィルタ(孔径:10μm)に透過させ、以下の基準によりフィルタ透過性を評価した。
【0068】
○:フィルタ目詰まりなし
×:フィルタが目詰まりし、インクが透過せず
表6に各実施例及び比較例で使用したフタロシアニン系顔料の種類と、評価結果を併せて示す。
【0069】
【表4】

【0070】
上記表に示すように、インク中のイオンを純水に転相したとき、水相中のナトリウムイオン及びカリウムイオンの合計濃度が20ppm以下であり、水相の比伝導度が50μS/m以下のインクは、析出物の生成がなく、保存後でも安定して吐出可能なインクであることが分かる。これは、インク中に析出物を発生させる1価の陽イオンであるナトリウムイオン及びカリウムイオンが少なく、またインク全体におけるイオン性物質の量が少ないためと考えられる。
【0071】
これに対して、ナトリウムイオン及びカリウムイオンを高濃度で含有する比較例のインクは、析出物が発生し、保存安定性に劣ることが分かる。このため、これらのインクは保存後に大孔径のフィルタに対しても目詰まりが生じることが分かる。また、フタロシアニン系顔料の洗浄を行い、インク中のナトリウムイオン及びカリウムイオンの濃度を低下させても、これらの合計濃度が20ppmを超える場合、析出物が発生することが分かる。なお、従来の保存安定性を改善したインクでも、ナトリウムイオン及びカリウムイオンの合計濃度が高い場合、同様に析出物が発生し、保存安定性に劣ることが分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フタロシアニン系顔料、重合性化合物、分散剤、重合開始剤を少なくとも含むエネルギー線硬化型インクジェットインク組成物であって、エネルギー線硬化型インクジェットインク組成物中のイオンを純水に転相したとき、水相中の1価の陽イオンの合計濃度が20ppm以下であるエネルギー線硬化型インクジェットインク組成物。
【請求項2】
前記水相は、前記1価の陽イオンとして、ナトリウムイオン、カリウムイオンのいずれかまたは両方を含む請求項1に記載のエネルギー線硬化型インクジェットインク組成物。
【請求項3】
前記水相の比伝導度が50μS/cm以下である請求項1または2に記載のエネルギー線硬化型インクジェットインク組成物。

【公開番号】特開2011−16890(P2011−16890A)
【公開日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−161714(P2009−161714)
【出願日】平成21年7月8日(2009.7.8)
【出願人】(000005810)日立マクセル株式会社 (2,366)
【Fターム(参考)】