エネルギ管理システム
【課題】消費エネルギの予測精度を大幅に向上できると共に、省エネの観点から最適な製造パラメータを決定することが可能なエネルギ管理システムを提供することである
【解決手段】エネルギ管理システム10は、製造パラメータモニタリング装置12と、消費エネルギモニタリング装置13と、消費エネルギ算出式を有し、消費エネルギを算出する消費エネルギ算出手段14と、予測消費エネルギ及び実消費エネルギの差が所定の値を超えた場合には、消費エネルギ算出式に差分を解消するための補正を加える消費エネルギ算出式更新手段15と、を備える。さらに、目標消費エネルギ設定手段21と、設定された目標消費エネルギに基いて消費エネルギ算出式から逆算される所定の製造パラメータであり、設定又はモニタリングされた所定の実製造パラメータに基く変化率が最小となる新製造パラメータを算出する製造パラメータ最適化手段22を有する。
【解決手段】エネルギ管理システム10は、製造パラメータモニタリング装置12と、消費エネルギモニタリング装置13と、消費エネルギ算出式を有し、消費エネルギを算出する消費エネルギ算出手段14と、予測消費エネルギ及び実消費エネルギの差が所定の値を超えた場合には、消費エネルギ算出式に差分を解消するための補正を加える消費エネルギ算出式更新手段15と、を備える。さらに、目標消費エネルギ設定手段21と、設定された目標消費エネルギに基いて消費エネルギ算出式から逆算される所定の製造パラメータであり、設定又はモニタリングされた所定の実製造パラメータに基く変化率が最小となる新製造パラメータを算出する製造パラメータ最適化手段22を有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エネルギ管理システムに係り、特に複数の製造パラメータを含む工程を実行する製造システムに組み込まれるエネルギ管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
様々なプラントや工場等において、プロセスコストや環境負荷の軽減の観点から適切なエネルギ消費(省エネ)を実現すべく、エネルギ管理の重要性が増加している。従って、工場やプラント単位、或いは製造工程(製造設備)単位でエネルギ消費量を予測して、効率良くエネルギを使用することが要求されている。しかしながら、多くの製造システムは、複数の製造設備から構成され、複数の製造条件(製造パラメータ)を含む複雑なものであって、エネルギ消費量に影響する因子が多数存在するために、製造パラメータとエネルギ消費量との関係を正確に特定してエネルギ消費量を予測することは容易ではない。このような状況に鑑みて幾つかのシステムが開発されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、各工程別のエネルギ原単位に応じた情報を求めるエネルギ情報解析手段と、工程情報を記憶する工程情報記憶手段と、加工およびスケジュールの条件に応じて、エネルギ情報解析手段によって得られた情報、及び工程情報記憶手段に記憶された情報、例えば、工程原単位、工程段取情報、生産条件、その他制約条件(納期、工場モデルなど)からエネルギ需要予測情報を指標に含む複数の生産スケジュールを生成するスケジューラを備えたスケジューリングシステムが開示されている。なお、特許文献1の他にも、消費エネルギ実績値等に基いてエネルギ消費量を予測する手段を備えたシステムが幾つか開発されている(例えば、特許文献2、3)。
【0004】
また、特許文献4には、エネルギ管理単位期間内における気候変化などによるエネルギ負荷の変化を反映した予測消費エネルギを得ることにより、的確なエネルギ消費の把握、警報出力、制御出力などにより、エネルギ消費抑制効果を発揮できるシステムが開示されている。具体的には、実際の消費エネルギ(実消費エネルギ)を収集する実績エネルギ量収集手段と、エネルギ管理単位期間を複数に分割し、その分割時点毎に実消費エネルギを記憶する実績エネルギ量記憶手段と、分割時点毎の個別の目標エネルギ量を設定する目標エネルギ量設定手段と、目標エネルギ量を記憶する目標エネルギ量記憶手段と、実績エネルギ量記憶手段で記憶した分割時点毎の実消費エネルギと目標エネルギ量記憶手段に記憶した分割時点毎の目標エネルギから今後の分割時点毎の消費エネルギを予測するエネルギ量予測手段とを備えたシステムである。
【0005】
また、特許文献5に開示されたシステムは、実プロセスデータを用いて、実消費エネルギの監視と併行してリアルタイムにシミュレーションを実行する手段を備えるので、エネルギの使用状況、改善方法、改善した場合の効果予測を迅速に把握することができる。さらに、特許文献5には、エネルギ監視システムは、シミュレーションデータと実プロセス
データとの差分を計算する手段と、差分結果に基いて任意に設定される運転条件、即ち製造パラメータを製造システムに反映させてその制御を行う手段とを有することが開示されている。
【特許文献1】特開2005−92827号公報
【特許文献2】特開2007−148726号公報
【特許文献3】特開2004−280172号公報
【特許文献4】特開2005−234746号公報
【特許文献5】特開2002−259508号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1〜3に開示されたシステムによれば、蓄積された消費エネルギ実測値等に基いて消費エネルギを予測できるが、予測消費エネルギと実消費エネルギとのズレを判定する具体的な手段がなく、製造設備部品の劣化や季節の移り変わりによる気候変動等によって製造パラメータのブレが発生した場合には、実際の製造システムに適合した精度の高い消費エネルギの予測が困難になるという課題がある。
【0007】
また、特許文献4、5に開示されたシステムは、目標消費エネルギ(省エネ目標)を設定できるが、特許文献4のシステムでは、目標消費エネルギを達成するための製造パラメータを得ることができず、特許文献5のシステムでは、シミュレーション条件となるパラメータが任意に設定されるため、目標消費エネルギを達成するために製造パラメータが大幅に変更される等によって、製品のロットブレが大きくなる、或いは製品規格から外れた不良品ができるといった課題がある。
【0008】
本発明の目的は、消費エネルギの予測精度を大幅に向上できると共に、省エネの観点から最適な製造パラメータを決定することが可能なエネルギ管理システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係るエネルギ管理システムは、複数の製造パラメータを含む工程を実行する製造システムに組み込まれ、工程実行中の製造パラメータをモニタリングして記憶する製造パラメータ記憶手段と、消費エネルギをモニタリングして記憶する消費エネルギ記憶手段と、製造パラメータから消費エネルギを算出する消費エネルギ算出式を有し、消費エネルギ算出式に製造パラメータを入力して消費エネルギを算出する消費エネルギ算出手段と、を備え、算出された予測消費エネルギ及びモニタリングされた実消費エネルギの差が所定の値を超えた場合には、製造パラメータ及び消費エネルギのデータに基いて、消費エネルギ算出式に差分を解消するための補正を加える消費エネルギ算出式更新手段を有することを特徴とする。
【0010】
また、本発明に係るエネルギ管理システムは、複数の製造パラメータを含む工程を実行する製造システムに組み込まれ、工程実行中の製造パラメータをモニタリングして記憶する製造パラメータ記憶手段と、目標消費エネルギを設定する目標消費エネルギ設定手段と、を備え、設定された目標消費エネルギに基いて算出される所定の製造パラメータであり、設定又はモニタリングされた所定の実製造パラメータに基く変化率が最小となる新製造パラメータを算出する製造パラメータ最適化手段を有することを特徴とする。
【0011】
また、消費エネルギをモニタリングして記憶する消費エネルギ記憶手段と、製造パラメータから消費エネルギを算出する消費エネルギ算出式を有し、消費エネルギ算出式に製造パラメータを入力して消費エネルギを算出する消費エネルギ算出手段と、算出された予測消費エネルギ及びモニタリングされた実消費エネルギの差が所定の値を超えた場合には、製造パラメータ及び消費エネルギのデータに基いて、消費エネルギ算出式に差分を解消するための補正を加える消費エネルギ算出式更新手段と、を備え、製造パラメータ最適化手段は、設定された目標消費エネルギに基いて消費エネルギ算出式から逆算される所定の製造パラメータであり、設定又はモニタリングされた所定の実製造パラメータに基く変化率が最小となる新製造パラメータを算出することが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係るエネルギ管理システムは、工程実行中の製造パラメータをモニタリングして記憶する製造パラメータ記憶手段と、消費エネルギをモニタリングして記憶する消費エネルギ記憶手段とを備えるので、実績値を考慮した精度の高いエネルギ管理システムを構築することができる。
【0013】
また、製造パラメータから消費エネルギを算出する消費エネルギ算出式を有し、消費エネルギ算出式に製造パラメータを入力して消費エネルギを算出する消費エネルギ算出手段と、算出された予測消費エネルギ及びモニタリングされた実消費エネルギの差が所定の値を超えた場合には、製造パラメータ及び消費エネルギのデータに基いて、消費エネルギ算出式に差分を解消するための補正を加える消費エネルギ算出式更新手段とを備えるので、予測消費エネルギと実消費エネルギとのズレを判定することができ、且つ所定のズレが発生した場合にはそのズレを解消することが可能になる。例えば、製造設備部品の劣化や季節の移り変わりによる気候変動等によって製造パラメータのブレが発生した場合においても、そのブレを反映した精度の高い消費エネルギ予測を実行することができる。
【0014】
また、工程実行中の製造パラメータをモニタリングして記憶する製造パラメータ記憶手段と、目標消費エネルギを設定する目標消費エネルギ設定手段と、設定された目標消費エネルギに基いて算出される所定の製造パラメータであり、設定又はモニタリングされた所定の実製造パラメータに基く変化率が最小となる新製造パラメータを算出する製造パラメータ最適化手段とを備えた構成とすれば、省エネ目標を達成するための新製造パラメータを容易に得ることができる。さらに、新製造パラメータが現在設定されている製造パラメータから大幅に変動することを防止でき、製品規格の確保、ロットブレの抑制を可能にする。
【0015】
また、製造パラメータから消費エネルギを算出する消費エネルギ算出式を有し、消費エネルギ算出式に製造パラメータを入力して消費エネルギを算出する消費エネルギ算出手段と、算出された予測消費エネルギ及びモニタリングされた実消費エネルギの差が所定の値を超えた場合には、製造パラメータ及び消費エネルギのデータに基いて、消費エネルギ算出式に差分を解消するための補正を加える消費エネルギ算出式更新手段とを備え、製造パラメータ最適化手段は、設定された目標消費エネルギに基いて消費エネルギ算出式から逆算される所定の製造パラメータであり、設定又はモニタリングされた所定の実製造パラメータに基く変化率が最小となる新製造パラメータを算出する構成とすれば、例えば、製造設備部品の劣化や季節の移り変わりによる気候変動等によって製造パラメータのブレが発生した場合においても、そのブレを反映した精度の高い消費エネルギ算出式を準備することができ、省エネ目標を達成するための新製造パラメータの算出精度がさらに向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
図面を用いて本発明に係る実施の形態につき以下詳細に説明する。図1は、消費エネルギ算出式更新手段を有するエネルギ管理システムの構成を示すブロック図である。図2は、消費エネルギ算出式更新手段を有するエネルギ管理システムを複数の工程を含む製造システムに適用した場合の構成を示すブロック図である。
【0017】
エネルギ管理システム10は、複数の製造パラメータを含む工程を実行する製造システムに組み込まれ、使用(消費)されるエネルギを管理するシステムである。エネルギ管理システム10が適用(組み込まれる)される製造システムとしては、各種大型機械(車両等)、精密機械、機械部品、電化製品、電子部品、医薬品、化学品など様々な製品を製造する工場、プラント、生産ライン、及び製造設備を挙げることができ、エネルギ管理システム10は、プラント或いは生産ライン単位で適用されることが好ましい。図1では、3つの製造設備を有し、各製造装置による3つの製造工程を含む製造システム11(生産ライン11)に適用されたエネルギ管理システム10の構成を示している。
【0018】
図2に示すように、エネルギ管理システム10の基本的な構成は、製造パラメータモニタリング装置12、消費エネルギのモニタリング装置13、及び予測消費エネルギを算出するための理論計算式である消費エネルギ算出式に基いて予測消費エネルギを算出する消費エネルギ算出手段14を備えるものである。さらに、エネルギ管理システム10は、消費エネルギ算出式を実際の製造工程に適合するように補正する消費エネルギ算出式更新手段15を備えている。また、エネルギ管理システム10は、製造システム11のエネルギ管理を行う上で重要な構成要素、例えば、製造システム11を動作させるための条件である製造パラメータの設定手段(製造パラメータ設定手段16)、キーボードやテンキー等であって製造パラメータ等を入力する外部入力装置17、及びモニタ等であってモニタリングデータや予測消費エネルギを表示する出力装置18を備えることもできる。なお、本明細書において製造パラメータ(制御パラメータ)とは、製造システム11を動作、制御するためのパラメータを広く含むものとして説明する。
【0019】
上記のように、製造システム11は、3つの製造設備ABCを有し、それら設備を統一的に制御するための製造システム制御盤(プラント制御盤)19を備える。製造システム制御盤19は、CPUと、製造パラメータ等の入力に用いられるキーボード等の外部入力装置17と、製造パラメータや製造プログラム等を記憶する記録装置と、モニタ等の出力装置18と、入出力ポートなどを備える装置であって、専用の制御装置或いはコンピュータによって構成することができる。エネルギ管理システム10や製造システム11の各装置や各手段の機能は、例えば、ソフトウェアを実行することで実現することができ、具体的には、記憶装置に記憶されたエネルギ管理プログラムや製造システム11の製造手順を規定する製造プログラムを実行することにより実現できる。
【0020】
製造システム11を含むプラントには、一般的に、監視室(計器室や制御室とも称される)が設けられ、製造システム11を含む複数の製造設備を監視するための計器やコンピュータが設置されている。上述の消費エネルギ算出手段14や消費エネルギ算出式更新手段15等の演算手段は、製造システム制御盤19或いは図1に示すように監視室コンピュータ20の一部として構成されることが好ましい。
【0021】
図1に示すように、製造システム制御盤19には、製造システム11を動作させる条件である製造パラメータを設定する製造パラメータ設定手段16が備えられ、例えば、キーボードやテンキーである外部入力装置17によってオペレータが入力した製造パラメータが製造パラメータ設定手段16の機能により設定されて製造システム11が所定の工程を実行する。後述の製造パラメータ等を含む製造システム11の動作情報は、製造システム制御盤19や監視室コンピュータ20の出力装置18のモニタに表示される。
【0022】
外部入力装置17や出力装置18は、上記のように、エネルギ管理を実行する上で重要な要素であり、製造システム11に設置されていない場合には、新たに設けることが好ましい。一般的には、外部入力装置17や出力装置18は、製造システム11に設置されているため、既設の装置を共用することができる。なお、図1に示すように、エネルギ管理システム10は、製造システム11と電気的手段又は機械的手段或いはその両方によって接続されており、既存の製造システム11に、エネルギ管理システム10を容易に後付けすることが可能である。
【0023】
上記の製造パラメータ設定手段16によって設定される製造パラメータとしては、各製造システム或いは各製造工程に共通する項目と、各製造システム或いは各製造工程によって異なる項目とが存在する。図5(a)(b)に、共通の製造パラメータ項目と工程別の製造パラメータ項目を示している。図5(a)(b)に示すように、共通の製造パラメータの項目としては、日時、気温、湿度、生産ライン、生産品種、タクトタイム、稼働率などが挙げられる。工程に特有の製造パラメータの項目としては、例えば、熱間鍛造工程では、材質、材料径、材料長さ、加熱電圧、加熱電流、加熱送り速度、プレス荷重等が挙げられ、アーク溶接工程では、板厚、継手形状、溶接姿勢、シールドガス種類、パルス周波数、溶接電流、溶接電圧等が挙げられる。
【0024】
エネルギ管理システム10の主要構成要素である製造パラメータモニタリング装置12とは、上記のように、外部入力装置17によって入力され製造パラメータ設定手段16によって設定された製造パラメータ、或いは気温や湿度等の一般的には設定できない製造パラメータをモニタリングすると共に、モニタリングした製造パラメータを電子データとして記憶装置に記憶する機能を有する。即ち、製造パラメータモニタリング装置12は、工程実行中の製造パラメータをモニタリングして記憶する製造パラメータ記憶手段であり、製造パラメータモニタリング装置12は、製造システム11の各種計測機器やセンサ等から情報を取得する機能を備える。また、記憶装置を有し、その記憶装置にモニタリングした製造パラメータを電子データとして記憶させる機能を備える。ここで、製造パラメータモニタリング装置12に設けられる記憶装置としては、公知の記憶装置(不揮発性記憶装置)を使用することができ、製造システム11の既設の記憶装置を共有することもできる。
【0025】
製造パラメータモニタリング装置12によって、モニタリングされて記憶される製造パラメータとしては、上記のようなパラメータ(図5(a)(b)参照)が挙げられ、特にエネルギ消費への影響が大きなパラメータであることが好ましい。例えば、熱間鍛造工程では、加熱電圧、加熱電流、プレス荷重、金型温度等が挙げられる。工程実行中の製造パラメータを記憶することにより、後述する消費エネルギ算出式の補正精度が向上して、消費エネルギ予測精度の向上が可能になる。
【0026】
消費エネルギのモニタリング装置13とは、種々の消費エネルギをモニタリングすると共に、モニタリングした消費エネルギを電子データとして記憶する機能を有する。即ち、消費エネルギモニタリング装置13は、消費エネルギをモニタリングして記憶する消費エネルギ記憶手段であり、製造パラメータモニタリング装置12と同様に、製造システム11の各種計測機器やセンサ等から情報を取得する機能を備える。また、記憶装置を有し、その記憶装置にモニタリングした製造パラメータを電子データとして記憶させる機能を備える。
【0027】
モニタリングされ記憶される消費エネルギの項目としては、図5(a)(b)に示すような項目が挙げられ、特に製造システム11全体のエネルギ消費量への影響が大きな項目であることが好ましい。消費されるエネルギの種類としては、主に電力、ガス、蒸気、重油、灯油などであり、風力、太陽光、波力、地熱、バイオマス、廃熱利用等も含まれる。具体的には、例えば、熱間鍛造工程では、材料供給装置電力、加熱装置電力、プレス電力、潤滑用エアー消費量、潤滑回収装置電力、制御冷却電力等が挙げられ、浸炭焼入工程では、材料供給装置電力、浸炭炉ガス消費量、搬送ロボット電力、パレット交換装置電力等が挙げられる。実消費エネルギを記憶することにより、後述する消費エネルギ算出式の補正精度が向上して、消費エネルギ予測精度の向上が可能になる。
【0028】
各モニタリング装置12、13によるモニタリング間隔や記憶間隔は、記憶装置等の負荷や予測消費エネルギの算出精度等を考慮して、任意に設定することができる。なお、各データのモニタリングは、製造装置或いは製造工程ごとに実行されることが好ましく、また、消費エネルギは製造パラメータと関連付けて記憶されることが好ましい。
【0029】
消費エネルギ算出手段14は、予測消費エネルギを算出するための消費エネルギ算出式を有し、その算出式に製造パラメータを入力して予測消費エネルギを算出する機能を有する。消費エネルギ算出式としては、製造パラメータ及び消費エネルギの実績値に基いて重回帰分析等の解析を行って得られた解析式、実験等に基いて経験的に得られた経験式、物理的法則から理論的に得られた理論式などが挙げられるが、予測精度の向上や予測時間の短縮等の観点から、物理的法則から理論的に得られた理論式であることが好ましい。
【0030】
消費エネルギ算出式として理論式を適用すると、例えば、後述する消費エネルギ算出式更新手段15による補正を行う際に、補正するパラメータ(補正係数が係るパラメータ)として、摩擦抵抗やモータ効率など、物理現象の変化に直結するパラメータを補正することができるので、補正後の予測精度が高いという特徴を有する。また、解析式や経験式の場合は、設備や生産ラインの仕様が変わると解析や実験をやり直すことが必要になるが、理論式を適用した場合には、そのような手間が発生することなく、異分野の工程に応用し易い等の利点がある。
【0031】
物理的法則から導き出される理論式は、製造装置或いは製造工程ごとに備えられることが好ましく、また、製造工程を構成する小工程(例えば、図1に示す製造工程A中の工程、熱間鍛造工程の加熱過程や成形過程など)ごとに備えることもできる。具体的には、クランクシャフト等の熱間鍛造工程では、5〜10個程度の理論式を備えることが好ましい。理論式の一例として、クランクシャフトの熱間鍛造工程における加熱過程及び成形過程に適用される理論式(式1)(式2)を示す。
【0032】
【数1】
【0033】
ここで、W;消費エネルギ、m;材料重量、c;鉄の比熱、T;加熱温度、T0;常温、F;送りローラ駆動力、L;材料長、e1;コイル損失、e2;インバータ等損失、e3;焼き冷し損失、t;サイクルタイム、を意味する。
【0034】
【数2】
【0035】
ここで、W;消費エネルギ、I;フライホイール慣性モーメント、ω1;成形直前のフライホイール角速度、ω2;成形直後のフライホイール角速度、t;サイクルタイム、ε;可動率、z;時間あたりの平均停止回数、Ts;金型・スライダ・連結部等の回転トルク、F;金型・スライダの摩擦力、L;金型・スライダの下降距離、η;モータ効率、を意味する。
【0036】
消費エネルギ算出式更新手段15は、算出された予測消費エネルギ及びモニタリングされた実消費エネルギの差が所定の値を超えた場合には、各モニタリング装置12、13によって記憶された製造パラメータ及び消費エネルギのデータに基いて、消費エネルギ算出式にその差分を解消するための補正を加える機能を有する。さらに具体的には、消費エネルギ算出式更新手段15は、例えば、複数の製造パラメータのうち、どのパラメータが原因で所定値を超えた差が発生したのかを解析する機能を備え、記憶された製造パラメータ及び消費エネルギのデータに基いて解析が実行される。解析手法としては、本発明の構成上特に限定されるものではなく、実験計画法、ニューラルネット法、ファジー制御法、多変量解析(主成分分析、重回帰分析、因子分析、判別分析等)の公知の解析手法(アルゴリズム)を適用することができる。
【0037】
差分の解析結果が得られると、消費エネルギ算出式更新手段15は、その解析結果に基いて、差分を解消するための補正を消費エネルギ算出式に加える機能を有する。例えば、差分発生の主要因である製造パラメータに対して所定の補正係数を加える等によって補正が実行される。このように消費エネルギ算出式が補正されると、製造設備部品の劣化や季節の移り変わりによる気候変動等によって製造パラメータのブレが発生した場合においても、そのブレを反映した精度の高い消費エネルギ予測を実行することができる。
【0038】
図3に示すように、エネルギ管理システム10は、目標消費エネルギ、所謂省エネ目標を設定して、その省エネ目標を達成するための製造パラメータを決定する機能を備えることができる。図3に示すエネルギ管理システム10は、目標消費エネルギ設定手段21及び設定された目標消費エネルギを実現するための新たな製造パラメータを算出する製造パラメータ最適化手段22を主要構成要素として備えている。
【0039】
目標消費エネルギ設定手段21は、製造システム11の1つの製造パラメータとして、目標消費エネルギを設定する機能を有する。監視室コンピュータ20の外部入力装置17によってオペレータが入力した目標消費エネルギが目標エネルギ設定手段21の機能により設定されると、後述する製造パラメータ最適化手段22によって所定の製造パラメータの演算が実行される。なお、目標消費エネルギ設定手段21は、例えば、任意の間隔或いは生産品目が変更されるときなどに自動的に設定する機能を備えることもできる。
【0040】
図3に示すエネルギ管理システム10においても、外部入力装置17や出力装置18は、エネルギ管理を実行する上で重要な要素であり、製造システム11に設置されていない場合には、新たに設けることが好ましい。
【0041】
目標エネルギ設定手段21によって設定される目標消費エネルギとしては、オペレータが外部入力装置17から入力した数値、或いは任意の間隔或いは生産品目が変更されるときなどに自動的に設定された数値などを挙げることができる。なお、目標消費エネルギとは、上記のように、プロセスコストや環境負荷の低減の観点から、エネルギ消費を抑制するために設定される目標値(省エネ目標)である。
【0042】
製造パラメータ最適化手段22は、設定された目標消費エネルギに基いて算出される所定の製造パラメータを算出する機能を有する。さらに、製造システム11或いはエネルギ管理システム10の製造パラメータ設定手段16にアクセスして、現在設定されている製造パラメータを目標消費エネルギを達成するための新製造パラメータに更新させる機能を有することが好ましい。
【0043】
製造パラメータ最適化手段22によって算出される製造パラメータとしては、そのパラメータの変動によって、製品規格への影響が小さく、且つ消費エネルギへの影響が大きなパラメータであることが好ましい。従って、製造パラメータ最適化手段22によって算出される製造パラメータは、予め定められた所定のパラメータであって、オペレータ或いは自動的に設定することができる。算出される新製造パラメータ数としては、1〜10個であることが好ましく、さらに好ましくは2〜7個、特に好ましくは3〜5個である。算出される新製造パラメータが複数存在する場合には、多数の解が存在することになる。従って、製造パラメータ最適化手段22は、算出値から特定の解を選択するため、さらに、製品規格の確保、製品のロットブレの抑制のために、パラメータの変更制限機能を有することが必要である。例えば、解を特定する観点から、新製造パラメータは、設定又はモニタリングされた所定の実製造パラメータに基く変化率が最小であること、各パラメータの規格中央値(平均値)からの偏差の合計が最小であることなどの第1の制限を設けることができる。さらに、設定又はモニタリングされた所定の実製造パラメータに基く変化率が所定値の範囲内(例えば、±5〜20%といったように任意に設定でき、また、パラメータごとに個別設定できる。以下同様。)であること、各パラメータの規格中央値(平均値)からの偏差の合計が所定値の範囲内であることなどの第2の制限を設けることができる。これら第2の制限は、例えば、設備等のスペックや過去の経験則(又は実験結果)を基準としてその範囲を決定することができる。
【0044】
製造パラメータ最適化手段22による新製造パラメータの算出手法としては、記憶された制御パラメータ及び消費エネルギに基いて多変量解析等を実行する手法、上記の消費エネルギ算出式を逆算する手法が挙げられる。なお、詳しくは後述するように、製造パラメータ最適化手段22は、算出精度の向上及び算出時間の短縮等の観点から、消費エネルギ算出式を逆算する手法を適用することが好ましい。
【0045】
図4に示すように、エネルギ管理システム10は、消費エネルギ算出手段14及び製造パラメータ最適化手段22を備えることができる。製造パラメータ最適化手段22は、消費エネルギ算出手段14とリンクしており、予測消費エネルギ算出する際に使用する消費エネルギ算出式を使用して新製造パラメータを算出することができる。上述のように、消費エネルギ算出式は、消費エネルギ算出式更新手段15によって更新されており、実際の製造工程に即した精度の高い新製造パラメータを算出することができる。
【0046】
具体的には、消費エネルギ算出式に目標消費エネルギが入力されて、その式を逆算することによって特定の新製造パラメータが算出される。新製造パラメータの算出には、上記のように、パラメータの変更制限が加えられ、例えば、設定又はモニタリングされた所定の実製造パラメータに基く変化率が最小となる新製造パラメータが算出される。さらに、その変化率が所定値の範囲内であることという制限も加えられる。従って、これらの変更制限をクリアしない場合には、製造パラメータの最適化演算が繰り返され、算出不可能である場合には、目標消費エネルギを達成できないとのエラー表示を出力装置18に表示することができる。このような変更制限を設けることにより、新製造パラメータが現在設定されている製造パラメータから大幅に変動することを防止でき、製品規格の確保、ロットブレの抑制を可能にする。
【0047】
図1、図3、及び図4に示すエネルギ管理システム10は、3つの製造工程を含む製造システム11に組み込まれたものであるが、図5(a)に示すような粉末冶金、鋳造、板金プレス、図5(b)に示すようなアーク溶接、浸炭焼入、高周波焼入などの製造工程(製造システム)にも適用することができる。図5(a)(b)に示すように、適用される製造工程が異なると、モニタリングして記憶される製造パラメータや消費エネルギ計測項目が大きく異なる。
【0048】
出力装置18に出力表示される製造パラメータ及び消費エネルギのモニタリング状況、予測消費エネルギ結果、及び新製造パラメータの算出結果を、それぞれ図6、図7、及び図8に示している。オペレータは、出力装置18のモニタを見ることによって、モニタリングデータ、予測消費エネルギ、新製造パラメータを確認することができ、必要に応じて、外部入力装置17等によって所定の指令を与えることができる。
【0049】
図8に示すように、オペレータが入力設定した目標消費エネルギは、下線付きで示され、その目標賞エネルギを実現するための新製造パラメータが算出されて、現行設定されている製造パラメータが変更される部分が同じく下線付きで示される。このように表示されると、製造パラメータ最適化手段22によるパラメータ変更制限機能が正常に機能していることをオペレータが確認することができる。
【0050】
上記構成のエネルギ管理システム10によるエネルギ管理プロセスについて、図9及び10を加えて以下詳細に説明する。図9は、消費エネルギ予測及び消費エネルギ算出式更新の手順を示すフローチャートであり、例えば、図1又は図4に示すエネルギ管理システム10によって、その手順を実行することができる。図10は、製造パラメータの最適化手順を示すフローチャートであり、例えば、図3又は図4に示すエネルギ管理システム10によって、その手順を実行することができる。
【0051】
図9に示すように、まず、製造システム11の工程が実行中の場合には、製造パラメータ及び消費エネルギが各モニタリング装置12、13によってモニタリングされ、出力装置18のモニタに出力表示される(図6参照)。モニタリングされた製造パラメータ及び消費エネルギは、各モニタリング装置12、13の記憶装置に電子データとして保存される(S10)。
【0052】
任意の間隔、或いは製造パラメータを変更するときなどに、予測消費エネルギを算出する場合には、その演算操作に先立って、消費エネルギ算出式の更新が必要であるか否かを判定する(S11)。具体的には、現行設定された又はモニタリングされている製造パラメータを入力して予測消費エネルギを算出させる。
【0053】
算出された予測消費エネルギと、現在設定又はモニタリングされている実消費エネルギとを比較して、2つの値の差が所定値を超えていないかを判定する(S12)。所定値としては、任意に設定することができ、例えば、±5%とすることができる。
【0054】
S12において、予測消費エネルギと実消費エネルギとの差が所定値を超えているときには、製造設備部品の劣化や季節変化による気候変動等によって、消費エネルギ算出式が実際の製造工程に適合しない状態、即ちズレを確認することができ、その差分を解消するために消費エネルギ算出式の補正が実行される(S13)。消費エネルギ算出式の補正は、消費エネルギ算出式更新手段15の機能によって実行され、例えば、複数の製造パラメータのうち、どのパラメータが原因で所定値を超えた差が発生したのかを解析する。具体的には、記憶された製造パラメータ及び消費エネルギのデータに基いて、実験計画法、ニューラルネット法、ファジー制御法、多変量解析等の解析が実行され、その解析結果に基いて、差分を解消するための補正、例えば、差分発生の主要因である製造パラメータに対して所定の補正係数を加える等によって補正が実行される。
【0055】
S13において、消費エネルギ算出式が更新されると、予測消費エネルギを算出したい条件である新たな製造パラメータが入力されて(S14)、更新された消費エネルギ算出式を使用して予測消費エネルギの算出が実行される(S15)。
【0056】
一方、図3又は図4に示すエネルギ管理システム10によれば、図10に示す手順に従って目標消費エネルギを実現するための新製造パラメータを自動的に決定することができる。
【0057】
図10に示すように、まず、目標消費エネルギを設定する(S16)。目標消費エネルギとしては、オペレータが外部入力装置17から入力した数値、或いは任意の間隔或いは生産品目が変更されるときなどに自動的に設定された数値などを挙げることができる。
【0058】
設定された目標消費エネルギに基いて所定の新製造パラメータが算出される(S17)。新製造パラメータの算出は、製造パラメータ最適化手段22の機能によって実行され、算出される所定の製造パラメータは、例えば、設定又はモニタリングされた所定の実製造パラメータに基く変化率が最小となる新製造パラメータである。なお、算出される新製造パラメータは、予め定められた所定のパラメータであって、オペレータによる手動設定、或いは自動的に設定することができる。
【0059】
S17により算出される所定の製造パラメータは、設定又はモニタリングされた所定の実製造パラメータに基く変化率が最小となる新製造パラメータであり、変化率が所定値を超えていないかどうかを判定する(S18)。即ち、製品規格の確保、製品のロットブレの抑制等の観点から、パラメータの変更制限を有することが必要であり、製造パラメータ最適化手段22は、パラメータ変更制限機能(第1の制限、第2の制限)を備えている。
【0060】
S18において、設定又はモニタリングされた所定の実製造パラメータに基く変化率が所定値を超えていないと判定された場合には、算出された新製造パラメータが製造パラメータ設定手段16の機能によって設定される(S19)。
【0061】
以上のように、エネルギ管理システム10によれば、製造パラメータ記憶手段である製造パラメータモニタリング装置12と、消費エネルギ記憶手段である消費エネルギモニタリング装置13と、消費エネルギ算出手段14と、消費エネルギ算出式更新手段15とを備えるので、予測消費エネルギと実消費エネルギとのズレを判定することができ、且つ所定のズレが発生した場合にはそのズレを解消することが可能になる。
【0062】
また、エネルギ管理システム10は、さらに目標消費エネルギ設定手段21と、製造パラメータ最適化手段22とを備えることができるので、省エネ目標を達成するための新製造パラメータを容易に得ることができる。さらに、新製造パラメータが現在設定されている製造パラメータから大幅に変動することを防止でき、製品規格の確保、ロットブレの抑制を可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】消費エネルギ算出式更新手段を有するエネルギ管理システムの構成を示すブロック図である。
【図2】消費エネルギ算出式更新手段を有するエネルギ管理システムを複数の工程を含む製造システムに適用した場合の構成を示すブロック図である。
【図3】製造パラメータ最適化手段を有するエネルギ管理システムを複数の工程を含む製造システムに適用した場合の構成を示すブロック図である。
【図4】消費エネルギ算出式更新手段及び製造パラメータ最適化手段を有するエネルギ管理システムを複数の工程を含む製造システムに適用した場合の構成を示すブロック図である。
【図5(a)】各工程(熱間鍛造、粉末冶金、鋳造、板金プレス)における製造パラメータ及び消費エネルギ計測項目を示す図である。
【図5(b)】各工程(アーク溶接、浸炭焼入、高周波焼入)における製造パラメータ及び消費エネルギ計測項目を示す図である。
【図6】製造パラメータ及び消費エネルギのモニタリング画面を示す図である。
【図7】消費エネルギ予測の出力画面を示す図である。
【図8】製造パラメータ最適化の出力画面を示す図である。
【図9】消費エネルギ予測及び消費エネルギ算出式更新の手順を示すフローチャートである。
【図10】製造パラメータの最適化手順を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0064】
10 エネルギ管理システム、11 製造システム、12 製造パラメータモニタリング装置、13 消費エネルギモニタリング装置、14 消費エネルギ算出手段、15 消費エネルギ算出式更新手段、16 製造パラメータ設定手段、17 外部入力装置、18 出力装置、19 製造システム制御盤(プラント制御盤;PLC)、20 監視室コンピュータ、21 目標エネルギ設定手段、22 制御パラメータ最適化手段。
【技術分野】
【0001】
本発明は、エネルギ管理システムに係り、特に複数の製造パラメータを含む工程を実行する製造システムに組み込まれるエネルギ管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
様々なプラントや工場等において、プロセスコストや環境負荷の軽減の観点から適切なエネルギ消費(省エネ)を実現すべく、エネルギ管理の重要性が増加している。従って、工場やプラント単位、或いは製造工程(製造設備)単位でエネルギ消費量を予測して、効率良くエネルギを使用することが要求されている。しかしながら、多くの製造システムは、複数の製造設備から構成され、複数の製造条件(製造パラメータ)を含む複雑なものであって、エネルギ消費量に影響する因子が多数存在するために、製造パラメータとエネルギ消費量との関係を正確に特定してエネルギ消費量を予測することは容易ではない。このような状況に鑑みて幾つかのシステムが開発されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、各工程別のエネルギ原単位に応じた情報を求めるエネルギ情報解析手段と、工程情報を記憶する工程情報記憶手段と、加工およびスケジュールの条件に応じて、エネルギ情報解析手段によって得られた情報、及び工程情報記憶手段に記憶された情報、例えば、工程原単位、工程段取情報、生産条件、その他制約条件(納期、工場モデルなど)からエネルギ需要予測情報を指標に含む複数の生産スケジュールを生成するスケジューラを備えたスケジューリングシステムが開示されている。なお、特許文献1の他にも、消費エネルギ実績値等に基いてエネルギ消費量を予測する手段を備えたシステムが幾つか開発されている(例えば、特許文献2、3)。
【0004】
また、特許文献4には、エネルギ管理単位期間内における気候変化などによるエネルギ負荷の変化を反映した予測消費エネルギを得ることにより、的確なエネルギ消費の把握、警報出力、制御出力などにより、エネルギ消費抑制効果を発揮できるシステムが開示されている。具体的には、実際の消費エネルギ(実消費エネルギ)を収集する実績エネルギ量収集手段と、エネルギ管理単位期間を複数に分割し、その分割時点毎に実消費エネルギを記憶する実績エネルギ量記憶手段と、分割時点毎の個別の目標エネルギ量を設定する目標エネルギ量設定手段と、目標エネルギ量を記憶する目標エネルギ量記憶手段と、実績エネルギ量記憶手段で記憶した分割時点毎の実消費エネルギと目標エネルギ量記憶手段に記憶した分割時点毎の目標エネルギから今後の分割時点毎の消費エネルギを予測するエネルギ量予測手段とを備えたシステムである。
【0005】
また、特許文献5に開示されたシステムは、実プロセスデータを用いて、実消費エネルギの監視と併行してリアルタイムにシミュレーションを実行する手段を備えるので、エネルギの使用状況、改善方法、改善した場合の効果予測を迅速に把握することができる。さらに、特許文献5には、エネルギ監視システムは、シミュレーションデータと実プロセス
データとの差分を計算する手段と、差分結果に基いて任意に設定される運転条件、即ち製造パラメータを製造システムに反映させてその制御を行う手段とを有することが開示されている。
【特許文献1】特開2005−92827号公報
【特許文献2】特開2007−148726号公報
【特許文献3】特開2004−280172号公報
【特許文献4】特開2005−234746号公報
【特許文献5】特開2002−259508号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1〜3に開示されたシステムによれば、蓄積された消費エネルギ実測値等に基いて消費エネルギを予測できるが、予測消費エネルギと実消費エネルギとのズレを判定する具体的な手段がなく、製造設備部品の劣化や季節の移り変わりによる気候変動等によって製造パラメータのブレが発生した場合には、実際の製造システムに適合した精度の高い消費エネルギの予測が困難になるという課題がある。
【0007】
また、特許文献4、5に開示されたシステムは、目標消費エネルギ(省エネ目標)を設定できるが、特許文献4のシステムでは、目標消費エネルギを達成するための製造パラメータを得ることができず、特許文献5のシステムでは、シミュレーション条件となるパラメータが任意に設定されるため、目標消費エネルギを達成するために製造パラメータが大幅に変更される等によって、製品のロットブレが大きくなる、或いは製品規格から外れた不良品ができるといった課題がある。
【0008】
本発明の目的は、消費エネルギの予測精度を大幅に向上できると共に、省エネの観点から最適な製造パラメータを決定することが可能なエネルギ管理システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係るエネルギ管理システムは、複数の製造パラメータを含む工程を実行する製造システムに組み込まれ、工程実行中の製造パラメータをモニタリングして記憶する製造パラメータ記憶手段と、消費エネルギをモニタリングして記憶する消費エネルギ記憶手段と、製造パラメータから消費エネルギを算出する消費エネルギ算出式を有し、消費エネルギ算出式に製造パラメータを入力して消費エネルギを算出する消費エネルギ算出手段と、を備え、算出された予測消費エネルギ及びモニタリングされた実消費エネルギの差が所定の値を超えた場合には、製造パラメータ及び消費エネルギのデータに基いて、消費エネルギ算出式に差分を解消するための補正を加える消費エネルギ算出式更新手段を有することを特徴とする。
【0010】
また、本発明に係るエネルギ管理システムは、複数の製造パラメータを含む工程を実行する製造システムに組み込まれ、工程実行中の製造パラメータをモニタリングして記憶する製造パラメータ記憶手段と、目標消費エネルギを設定する目標消費エネルギ設定手段と、を備え、設定された目標消費エネルギに基いて算出される所定の製造パラメータであり、設定又はモニタリングされた所定の実製造パラメータに基く変化率が最小となる新製造パラメータを算出する製造パラメータ最適化手段を有することを特徴とする。
【0011】
また、消費エネルギをモニタリングして記憶する消費エネルギ記憶手段と、製造パラメータから消費エネルギを算出する消費エネルギ算出式を有し、消費エネルギ算出式に製造パラメータを入力して消費エネルギを算出する消費エネルギ算出手段と、算出された予測消費エネルギ及びモニタリングされた実消費エネルギの差が所定の値を超えた場合には、製造パラメータ及び消費エネルギのデータに基いて、消費エネルギ算出式に差分を解消するための補正を加える消費エネルギ算出式更新手段と、を備え、製造パラメータ最適化手段は、設定された目標消費エネルギに基いて消費エネルギ算出式から逆算される所定の製造パラメータであり、設定又はモニタリングされた所定の実製造パラメータに基く変化率が最小となる新製造パラメータを算出することが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係るエネルギ管理システムは、工程実行中の製造パラメータをモニタリングして記憶する製造パラメータ記憶手段と、消費エネルギをモニタリングして記憶する消費エネルギ記憶手段とを備えるので、実績値を考慮した精度の高いエネルギ管理システムを構築することができる。
【0013】
また、製造パラメータから消費エネルギを算出する消費エネルギ算出式を有し、消費エネルギ算出式に製造パラメータを入力して消費エネルギを算出する消費エネルギ算出手段と、算出された予測消費エネルギ及びモニタリングされた実消費エネルギの差が所定の値を超えた場合には、製造パラメータ及び消費エネルギのデータに基いて、消費エネルギ算出式に差分を解消するための補正を加える消費エネルギ算出式更新手段とを備えるので、予測消費エネルギと実消費エネルギとのズレを判定することができ、且つ所定のズレが発生した場合にはそのズレを解消することが可能になる。例えば、製造設備部品の劣化や季節の移り変わりによる気候変動等によって製造パラメータのブレが発生した場合においても、そのブレを反映した精度の高い消費エネルギ予測を実行することができる。
【0014】
また、工程実行中の製造パラメータをモニタリングして記憶する製造パラメータ記憶手段と、目標消費エネルギを設定する目標消費エネルギ設定手段と、設定された目標消費エネルギに基いて算出される所定の製造パラメータであり、設定又はモニタリングされた所定の実製造パラメータに基く変化率が最小となる新製造パラメータを算出する製造パラメータ最適化手段とを備えた構成とすれば、省エネ目標を達成するための新製造パラメータを容易に得ることができる。さらに、新製造パラメータが現在設定されている製造パラメータから大幅に変動することを防止でき、製品規格の確保、ロットブレの抑制を可能にする。
【0015】
また、製造パラメータから消費エネルギを算出する消費エネルギ算出式を有し、消費エネルギ算出式に製造パラメータを入力して消費エネルギを算出する消費エネルギ算出手段と、算出された予測消費エネルギ及びモニタリングされた実消費エネルギの差が所定の値を超えた場合には、製造パラメータ及び消費エネルギのデータに基いて、消費エネルギ算出式に差分を解消するための補正を加える消費エネルギ算出式更新手段とを備え、製造パラメータ最適化手段は、設定された目標消費エネルギに基いて消費エネルギ算出式から逆算される所定の製造パラメータであり、設定又はモニタリングされた所定の実製造パラメータに基く変化率が最小となる新製造パラメータを算出する構成とすれば、例えば、製造設備部品の劣化や季節の移り変わりによる気候変動等によって製造パラメータのブレが発生した場合においても、そのブレを反映した精度の高い消費エネルギ算出式を準備することができ、省エネ目標を達成するための新製造パラメータの算出精度がさらに向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
図面を用いて本発明に係る実施の形態につき以下詳細に説明する。図1は、消費エネルギ算出式更新手段を有するエネルギ管理システムの構成を示すブロック図である。図2は、消費エネルギ算出式更新手段を有するエネルギ管理システムを複数の工程を含む製造システムに適用した場合の構成を示すブロック図である。
【0017】
エネルギ管理システム10は、複数の製造パラメータを含む工程を実行する製造システムに組み込まれ、使用(消費)されるエネルギを管理するシステムである。エネルギ管理システム10が適用(組み込まれる)される製造システムとしては、各種大型機械(車両等)、精密機械、機械部品、電化製品、電子部品、医薬品、化学品など様々な製品を製造する工場、プラント、生産ライン、及び製造設備を挙げることができ、エネルギ管理システム10は、プラント或いは生産ライン単位で適用されることが好ましい。図1では、3つの製造設備を有し、各製造装置による3つの製造工程を含む製造システム11(生産ライン11)に適用されたエネルギ管理システム10の構成を示している。
【0018】
図2に示すように、エネルギ管理システム10の基本的な構成は、製造パラメータモニタリング装置12、消費エネルギのモニタリング装置13、及び予測消費エネルギを算出するための理論計算式である消費エネルギ算出式に基いて予測消費エネルギを算出する消費エネルギ算出手段14を備えるものである。さらに、エネルギ管理システム10は、消費エネルギ算出式を実際の製造工程に適合するように補正する消費エネルギ算出式更新手段15を備えている。また、エネルギ管理システム10は、製造システム11のエネルギ管理を行う上で重要な構成要素、例えば、製造システム11を動作させるための条件である製造パラメータの設定手段(製造パラメータ設定手段16)、キーボードやテンキー等であって製造パラメータ等を入力する外部入力装置17、及びモニタ等であってモニタリングデータや予測消費エネルギを表示する出力装置18を備えることもできる。なお、本明細書において製造パラメータ(制御パラメータ)とは、製造システム11を動作、制御するためのパラメータを広く含むものとして説明する。
【0019】
上記のように、製造システム11は、3つの製造設備ABCを有し、それら設備を統一的に制御するための製造システム制御盤(プラント制御盤)19を備える。製造システム制御盤19は、CPUと、製造パラメータ等の入力に用いられるキーボード等の外部入力装置17と、製造パラメータや製造プログラム等を記憶する記録装置と、モニタ等の出力装置18と、入出力ポートなどを備える装置であって、専用の制御装置或いはコンピュータによって構成することができる。エネルギ管理システム10や製造システム11の各装置や各手段の機能は、例えば、ソフトウェアを実行することで実現することができ、具体的には、記憶装置に記憶されたエネルギ管理プログラムや製造システム11の製造手順を規定する製造プログラムを実行することにより実現できる。
【0020】
製造システム11を含むプラントには、一般的に、監視室(計器室や制御室とも称される)が設けられ、製造システム11を含む複数の製造設備を監視するための計器やコンピュータが設置されている。上述の消費エネルギ算出手段14や消費エネルギ算出式更新手段15等の演算手段は、製造システム制御盤19或いは図1に示すように監視室コンピュータ20の一部として構成されることが好ましい。
【0021】
図1に示すように、製造システム制御盤19には、製造システム11を動作させる条件である製造パラメータを設定する製造パラメータ設定手段16が備えられ、例えば、キーボードやテンキーである外部入力装置17によってオペレータが入力した製造パラメータが製造パラメータ設定手段16の機能により設定されて製造システム11が所定の工程を実行する。後述の製造パラメータ等を含む製造システム11の動作情報は、製造システム制御盤19や監視室コンピュータ20の出力装置18のモニタに表示される。
【0022】
外部入力装置17や出力装置18は、上記のように、エネルギ管理を実行する上で重要な要素であり、製造システム11に設置されていない場合には、新たに設けることが好ましい。一般的には、外部入力装置17や出力装置18は、製造システム11に設置されているため、既設の装置を共用することができる。なお、図1に示すように、エネルギ管理システム10は、製造システム11と電気的手段又は機械的手段或いはその両方によって接続されており、既存の製造システム11に、エネルギ管理システム10を容易に後付けすることが可能である。
【0023】
上記の製造パラメータ設定手段16によって設定される製造パラメータとしては、各製造システム或いは各製造工程に共通する項目と、各製造システム或いは各製造工程によって異なる項目とが存在する。図5(a)(b)に、共通の製造パラメータ項目と工程別の製造パラメータ項目を示している。図5(a)(b)に示すように、共通の製造パラメータの項目としては、日時、気温、湿度、生産ライン、生産品種、タクトタイム、稼働率などが挙げられる。工程に特有の製造パラメータの項目としては、例えば、熱間鍛造工程では、材質、材料径、材料長さ、加熱電圧、加熱電流、加熱送り速度、プレス荷重等が挙げられ、アーク溶接工程では、板厚、継手形状、溶接姿勢、シールドガス種類、パルス周波数、溶接電流、溶接電圧等が挙げられる。
【0024】
エネルギ管理システム10の主要構成要素である製造パラメータモニタリング装置12とは、上記のように、外部入力装置17によって入力され製造パラメータ設定手段16によって設定された製造パラメータ、或いは気温や湿度等の一般的には設定できない製造パラメータをモニタリングすると共に、モニタリングした製造パラメータを電子データとして記憶装置に記憶する機能を有する。即ち、製造パラメータモニタリング装置12は、工程実行中の製造パラメータをモニタリングして記憶する製造パラメータ記憶手段であり、製造パラメータモニタリング装置12は、製造システム11の各種計測機器やセンサ等から情報を取得する機能を備える。また、記憶装置を有し、その記憶装置にモニタリングした製造パラメータを電子データとして記憶させる機能を備える。ここで、製造パラメータモニタリング装置12に設けられる記憶装置としては、公知の記憶装置(不揮発性記憶装置)を使用することができ、製造システム11の既設の記憶装置を共有することもできる。
【0025】
製造パラメータモニタリング装置12によって、モニタリングされて記憶される製造パラメータとしては、上記のようなパラメータ(図5(a)(b)参照)が挙げられ、特にエネルギ消費への影響が大きなパラメータであることが好ましい。例えば、熱間鍛造工程では、加熱電圧、加熱電流、プレス荷重、金型温度等が挙げられる。工程実行中の製造パラメータを記憶することにより、後述する消費エネルギ算出式の補正精度が向上して、消費エネルギ予測精度の向上が可能になる。
【0026】
消費エネルギのモニタリング装置13とは、種々の消費エネルギをモニタリングすると共に、モニタリングした消費エネルギを電子データとして記憶する機能を有する。即ち、消費エネルギモニタリング装置13は、消費エネルギをモニタリングして記憶する消費エネルギ記憶手段であり、製造パラメータモニタリング装置12と同様に、製造システム11の各種計測機器やセンサ等から情報を取得する機能を備える。また、記憶装置を有し、その記憶装置にモニタリングした製造パラメータを電子データとして記憶させる機能を備える。
【0027】
モニタリングされ記憶される消費エネルギの項目としては、図5(a)(b)に示すような項目が挙げられ、特に製造システム11全体のエネルギ消費量への影響が大きな項目であることが好ましい。消費されるエネルギの種類としては、主に電力、ガス、蒸気、重油、灯油などであり、風力、太陽光、波力、地熱、バイオマス、廃熱利用等も含まれる。具体的には、例えば、熱間鍛造工程では、材料供給装置電力、加熱装置電力、プレス電力、潤滑用エアー消費量、潤滑回収装置電力、制御冷却電力等が挙げられ、浸炭焼入工程では、材料供給装置電力、浸炭炉ガス消費量、搬送ロボット電力、パレット交換装置電力等が挙げられる。実消費エネルギを記憶することにより、後述する消費エネルギ算出式の補正精度が向上して、消費エネルギ予測精度の向上が可能になる。
【0028】
各モニタリング装置12、13によるモニタリング間隔や記憶間隔は、記憶装置等の負荷や予測消費エネルギの算出精度等を考慮して、任意に設定することができる。なお、各データのモニタリングは、製造装置或いは製造工程ごとに実行されることが好ましく、また、消費エネルギは製造パラメータと関連付けて記憶されることが好ましい。
【0029】
消費エネルギ算出手段14は、予測消費エネルギを算出するための消費エネルギ算出式を有し、その算出式に製造パラメータを入力して予測消費エネルギを算出する機能を有する。消費エネルギ算出式としては、製造パラメータ及び消費エネルギの実績値に基いて重回帰分析等の解析を行って得られた解析式、実験等に基いて経験的に得られた経験式、物理的法則から理論的に得られた理論式などが挙げられるが、予測精度の向上や予測時間の短縮等の観点から、物理的法則から理論的に得られた理論式であることが好ましい。
【0030】
消費エネルギ算出式として理論式を適用すると、例えば、後述する消費エネルギ算出式更新手段15による補正を行う際に、補正するパラメータ(補正係数が係るパラメータ)として、摩擦抵抗やモータ効率など、物理現象の変化に直結するパラメータを補正することができるので、補正後の予測精度が高いという特徴を有する。また、解析式や経験式の場合は、設備や生産ラインの仕様が変わると解析や実験をやり直すことが必要になるが、理論式を適用した場合には、そのような手間が発生することなく、異分野の工程に応用し易い等の利点がある。
【0031】
物理的法則から導き出される理論式は、製造装置或いは製造工程ごとに備えられることが好ましく、また、製造工程を構成する小工程(例えば、図1に示す製造工程A中の工程、熱間鍛造工程の加熱過程や成形過程など)ごとに備えることもできる。具体的には、クランクシャフト等の熱間鍛造工程では、5〜10個程度の理論式を備えることが好ましい。理論式の一例として、クランクシャフトの熱間鍛造工程における加熱過程及び成形過程に適用される理論式(式1)(式2)を示す。
【0032】
【数1】
【0033】
ここで、W;消費エネルギ、m;材料重量、c;鉄の比熱、T;加熱温度、T0;常温、F;送りローラ駆動力、L;材料長、e1;コイル損失、e2;インバータ等損失、e3;焼き冷し損失、t;サイクルタイム、を意味する。
【0034】
【数2】
【0035】
ここで、W;消費エネルギ、I;フライホイール慣性モーメント、ω1;成形直前のフライホイール角速度、ω2;成形直後のフライホイール角速度、t;サイクルタイム、ε;可動率、z;時間あたりの平均停止回数、Ts;金型・スライダ・連結部等の回転トルク、F;金型・スライダの摩擦力、L;金型・スライダの下降距離、η;モータ効率、を意味する。
【0036】
消費エネルギ算出式更新手段15は、算出された予測消費エネルギ及びモニタリングされた実消費エネルギの差が所定の値を超えた場合には、各モニタリング装置12、13によって記憶された製造パラメータ及び消費エネルギのデータに基いて、消費エネルギ算出式にその差分を解消するための補正を加える機能を有する。さらに具体的には、消費エネルギ算出式更新手段15は、例えば、複数の製造パラメータのうち、どのパラメータが原因で所定値を超えた差が発生したのかを解析する機能を備え、記憶された製造パラメータ及び消費エネルギのデータに基いて解析が実行される。解析手法としては、本発明の構成上特に限定されるものではなく、実験計画法、ニューラルネット法、ファジー制御法、多変量解析(主成分分析、重回帰分析、因子分析、判別分析等)の公知の解析手法(アルゴリズム)を適用することができる。
【0037】
差分の解析結果が得られると、消費エネルギ算出式更新手段15は、その解析結果に基いて、差分を解消するための補正を消費エネルギ算出式に加える機能を有する。例えば、差分発生の主要因である製造パラメータに対して所定の補正係数を加える等によって補正が実行される。このように消費エネルギ算出式が補正されると、製造設備部品の劣化や季節の移り変わりによる気候変動等によって製造パラメータのブレが発生した場合においても、そのブレを反映した精度の高い消費エネルギ予測を実行することができる。
【0038】
図3に示すように、エネルギ管理システム10は、目標消費エネルギ、所謂省エネ目標を設定して、その省エネ目標を達成するための製造パラメータを決定する機能を備えることができる。図3に示すエネルギ管理システム10は、目標消費エネルギ設定手段21及び設定された目標消費エネルギを実現するための新たな製造パラメータを算出する製造パラメータ最適化手段22を主要構成要素として備えている。
【0039】
目標消費エネルギ設定手段21は、製造システム11の1つの製造パラメータとして、目標消費エネルギを設定する機能を有する。監視室コンピュータ20の外部入力装置17によってオペレータが入力した目標消費エネルギが目標エネルギ設定手段21の機能により設定されると、後述する製造パラメータ最適化手段22によって所定の製造パラメータの演算が実行される。なお、目標消費エネルギ設定手段21は、例えば、任意の間隔或いは生産品目が変更されるときなどに自動的に設定する機能を備えることもできる。
【0040】
図3に示すエネルギ管理システム10においても、外部入力装置17や出力装置18は、エネルギ管理を実行する上で重要な要素であり、製造システム11に設置されていない場合には、新たに設けることが好ましい。
【0041】
目標エネルギ設定手段21によって設定される目標消費エネルギとしては、オペレータが外部入力装置17から入力した数値、或いは任意の間隔或いは生産品目が変更されるときなどに自動的に設定された数値などを挙げることができる。なお、目標消費エネルギとは、上記のように、プロセスコストや環境負荷の低減の観点から、エネルギ消費を抑制するために設定される目標値(省エネ目標)である。
【0042】
製造パラメータ最適化手段22は、設定された目標消費エネルギに基いて算出される所定の製造パラメータを算出する機能を有する。さらに、製造システム11或いはエネルギ管理システム10の製造パラメータ設定手段16にアクセスして、現在設定されている製造パラメータを目標消費エネルギを達成するための新製造パラメータに更新させる機能を有することが好ましい。
【0043】
製造パラメータ最適化手段22によって算出される製造パラメータとしては、そのパラメータの変動によって、製品規格への影響が小さく、且つ消費エネルギへの影響が大きなパラメータであることが好ましい。従って、製造パラメータ最適化手段22によって算出される製造パラメータは、予め定められた所定のパラメータであって、オペレータ或いは自動的に設定することができる。算出される新製造パラメータ数としては、1〜10個であることが好ましく、さらに好ましくは2〜7個、特に好ましくは3〜5個である。算出される新製造パラメータが複数存在する場合には、多数の解が存在することになる。従って、製造パラメータ最適化手段22は、算出値から特定の解を選択するため、さらに、製品規格の確保、製品のロットブレの抑制のために、パラメータの変更制限機能を有することが必要である。例えば、解を特定する観点から、新製造パラメータは、設定又はモニタリングされた所定の実製造パラメータに基く変化率が最小であること、各パラメータの規格中央値(平均値)からの偏差の合計が最小であることなどの第1の制限を設けることができる。さらに、設定又はモニタリングされた所定の実製造パラメータに基く変化率が所定値の範囲内(例えば、±5〜20%といったように任意に設定でき、また、パラメータごとに個別設定できる。以下同様。)であること、各パラメータの規格中央値(平均値)からの偏差の合計が所定値の範囲内であることなどの第2の制限を設けることができる。これら第2の制限は、例えば、設備等のスペックや過去の経験則(又は実験結果)を基準としてその範囲を決定することができる。
【0044】
製造パラメータ最適化手段22による新製造パラメータの算出手法としては、記憶された制御パラメータ及び消費エネルギに基いて多変量解析等を実行する手法、上記の消費エネルギ算出式を逆算する手法が挙げられる。なお、詳しくは後述するように、製造パラメータ最適化手段22は、算出精度の向上及び算出時間の短縮等の観点から、消費エネルギ算出式を逆算する手法を適用することが好ましい。
【0045】
図4に示すように、エネルギ管理システム10は、消費エネルギ算出手段14及び製造パラメータ最適化手段22を備えることができる。製造パラメータ最適化手段22は、消費エネルギ算出手段14とリンクしており、予測消費エネルギ算出する際に使用する消費エネルギ算出式を使用して新製造パラメータを算出することができる。上述のように、消費エネルギ算出式は、消費エネルギ算出式更新手段15によって更新されており、実際の製造工程に即した精度の高い新製造パラメータを算出することができる。
【0046】
具体的には、消費エネルギ算出式に目標消費エネルギが入力されて、その式を逆算することによって特定の新製造パラメータが算出される。新製造パラメータの算出には、上記のように、パラメータの変更制限が加えられ、例えば、設定又はモニタリングされた所定の実製造パラメータに基く変化率が最小となる新製造パラメータが算出される。さらに、その変化率が所定値の範囲内であることという制限も加えられる。従って、これらの変更制限をクリアしない場合には、製造パラメータの最適化演算が繰り返され、算出不可能である場合には、目標消費エネルギを達成できないとのエラー表示を出力装置18に表示することができる。このような変更制限を設けることにより、新製造パラメータが現在設定されている製造パラメータから大幅に変動することを防止でき、製品規格の確保、ロットブレの抑制を可能にする。
【0047】
図1、図3、及び図4に示すエネルギ管理システム10は、3つの製造工程を含む製造システム11に組み込まれたものであるが、図5(a)に示すような粉末冶金、鋳造、板金プレス、図5(b)に示すようなアーク溶接、浸炭焼入、高周波焼入などの製造工程(製造システム)にも適用することができる。図5(a)(b)に示すように、適用される製造工程が異なると、モニタリングして記憶される製造パラメータや消費エネルギ計測項目が大きく異なる。
【0048】
出力装置18に出力表示される製造パラメータ及び消費エネルギのモニタリング状況、予測消費エネルギ結果、及び新製造パラメータの算出結果を、それぞれ図6、図7、及び図8に示している。オペレータは、出力装置18のモニタを見ることによって、モニタリングデータ、予測消費エネルギ、新製造パラメータを確認することができ、必要に応じて、外部入力装置17等によって所定の指令を与えることができる。
【0049】
図8に示すように、オペレータが入力設定した目標消費エネルギは、下線付きで示され、その目標賞エネルギを実現するための新製造パラメータが算出されて、現行設定されている製造パラメータが変更される部分が同じく下線付きで示される。このように表示されると、製造パラメータ最適化手段22によるパラメータ変更制限機能が正常に機能していることをオペレータが確認することができる。
【0050】
上記構成のエネルギ管理システム10によるエネルギ管理プロセスについて、図9及び10を加えて以下詳細に説明する。図9は、消費エネルギ予測及び消費エネルギ算出式更新の手順を示すフローチャートであり、例えば、図1又は図4に示すエネルギ管理システム10によって、その手順を実行することができる。図10は、製造パラメータの最適化手順を示すフローチャートであり、例えば、図3又は図4に示すエネルギ管理システム10によって、その手順を実行することができる。
【0051】
図9に示すように、まず、製造システム11の工程が実行中の場合には、製造パラメータ及び消費エネルギが各モニタリング装置12、13によってモニタリングされ、出力装置18のモニタに出力表示される(図6参照)。モニタリングされた製造パラメータ及び消費エネルギは、各モニタリング装置12、13の記憶装置に電子データとして保存される(S10)。
【0052】
任意の間隔、或いは製造パラメータを変更するときなどに、予測消費エネルギを算出する場合には、その演算操作に先立って、消費エネルギ算出式の更新が必要であるか否かを判定する(S11)。具体的には、現行設定された又はモニタリングされている製造パラメータを入力して予測消費エネルギを算出させる。
【0053】
算出された予測消費エネルギと、現在設定又はモニタリングされている実消費エネルギとを比較して、2つの値の差が所定値を超えていないかを判定する(S12)。所定値としては、任意に設定することができ、例えば、±5%とすることができる。
【0054】
S12において、予測消費エネルギと実消費エネルギとの差が所定値を超えているときには、製造設備部品の劣化や季節変化による気候変動等によって、消費エネルギ算出式が実際の製造工程に適合しない状態、即ちズレを確認することができ、その差分を解消するために消費エネルギ算出式の補正が実行される(S13)。消費エネルギ算出式の補正は、消費エネルギ算出式更新手段15の機能によって実行され、例えば、複数の製造パラメータのうち、どのパラメータが原因で所定値を超えた差が発生したのかを解析する。具体的には、記憶された製造パラメータ及び消費エネルギのデータに基いて、実験計画法、ニューラルネット法、ファジー制御法、多変量解析等の解析が実行され、その解析結果に基いて、差分を解消するための補正、例えば、差分発生の主要因である製造パラメータに対して所定の補正係数を加える等によって補正が実行される。
【0055】
S13において、消費エネルギ算出式が更新されると、予測消費エネルギを算出したい条件である新たな製造パラメータが入力されて(S14)、更新された消費エネルギ算出式を使用して予測消費エネルギの算出が実行される(S15)。
【0056】
一方、図3又は図4に示すエネルギ管理システム10によれば、図10に示す手順に従って目標消費エネルギを実現するための新製造パラメータを自動的に決定することができる。
【0057】
図10に示すように、まず、目標消費エネルギを設定する(S16)。目標消費エネルギとしては、オペレータが外部入力装置17から入力した数値、或いは任意の間隔或いは生産品目が変更されるときなどに自動的に設定された数値などを挙げることができる。
【0058】
設定された目標消費エネルギに基いて所定の新製造パラメータが算出される(S17)。新製造パラメータの算出は、製造パラメータ最適化手段22の機能によって実行され、算出される所定の製造パラメータは、例えば、設定又はモニタリングされた所定の実製造パラメータに基く変化率が最小となる新製造パラメータである。なお、算出される新製造パラメータは、予め定められた所定のパラメータであって、オペレータによる手動設定、或いは自動的に設定することができる。
【0059】
S17により算出される所定の製造パラメータは、設定又はモニタリングされた所定の実製造パラメータに基く変化率が最小となる新製造パラメータであり、変化率が所定値を超えていないかどうかを判定する(S18)。即ち、製品規格の確保、製品のロットブレの抑制等の観点から、パラメータの変更制限を有することが必要であり、製造パラメータ最適化手段22は、パラメータ変更制限機能(第1の制限、第2の制限)を備えている。
【0060】
S18において、設定又はモニタリングされた所定の実製造パラメータに基く変化率が所定値を超えていないと判定された場合には、算出された新製造パラメータが製造パラメータ設定手段16の機能によって設定される(S19)。
【0061】
以上のように、エネルギ管理システム10によれば、製造パラメータ記憶手段である製造パラメータモニタリング装置12と、消費エネルギ記憶手段である消費エネルギモニタリング装置13と、消費エネルギ算出手段14と、消費エネルギ算出式更新手段15とを備えるので、予測消費エネルギと実消費エネルギとのズレを判定することができ、且つ所定のズレが発生した場合にはそのズレを解消することが可能になる。
【0062】
また、エネルギ管理システム10は、さらに目標消費エネルギ設定手段21と、製造パラメータ最適化手段22とを備えることができるので、省エネ目標を達成するための新製造パラメータを容易に得ることができる。さらに、新製造パラメータが現在設定されている製造パラメータから大幅に変動することを防止でき、製品規格の確保、ロットブレの抑制を可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】消費エネルギ算出式更新手段を有するエネルギ管理システムの構成を示すブロック図である。
【図2】消費エネルギ算出式更新手段を有するエネルギ管理システムを複数の工程を含む製造システムに適用した場合の構成を示すブロック図である。
【図3】製造パラメータ最適化手段を有するエネルギ管理システムを複数の工程を含む製造システムに適用した場合の構成を示すブロック図である。
【図4】消費エネルギ算出式更新手段及び製造パラメータ最適化手段を有するエネルギ管理システムを複数の工程を含む製造システムに適用した場合の構成を示すブロック図である。
【図5(a)】各工程(熱間鍛造、粉末冶金、鋳造、板金プレス)における製造パラメータ及び消費エネルギ計測項目を示す図である。
【図5(b)】各工程(アーク溶接、浸炭焼入、高周波焼入)における製造パラメータ及び消費エネルギ計測項目を示す図である。
【図6】製造パラメータ及び消費エネルギのモニタリング画面を示す図である。
【図7】消費エネルギ予測の出力画面を示す図である。
【図8】製造パラメータ最適化の出力画面を示す図である。
【図9】消費エネルギ予測及び消費エネルギ算出式更新の手順を示すフローチャートである。
【図10】製造パラメータの最適化手順を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0064】
10 エネルギ管理システム、11 製造システム、12 製造パラメータモニタリング装置、13 消費エネルギモニタリング装置、14 消費エネルギ算出手段、15 消費エネルギ算出式更新手段、16 製造パラメータ設定手段、17 外部入力装置、18 出力装置、19 製造システム制御盤(プラント制御盤;PLC)、20 監視室コンピュータ、21 目標エネルギ設定手段、22 制御パラメータ最適化手段。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の製造パラメータを含む工程を実行する製造システムに組み込まれ、
工程実行中の製造パラメータをモニタリングして記憶する製造パラメータ記憶手段と、
消費エネルギをモニタリングして記憶する消費エネルギ記憶手段と、
製造パラメータから消費エネルギを算出する消費エネルギ算出式を有し、消費エネルギ算出式に製造パラメータを入力して消費エネルギを算出する消費エネルギ算出手段と、
を備え、
算出された予測消費エネルギ及びモニタリングされた実消費エネルギの差が所定の値を超えた場合には、製造パラメータ及び消費エネルギのデータに基いて、消費エネルギ算出式に差分を解消するための補正を加える消費エネルギ算出式更新手段を有することを特徴とするエネルギ管理システム。
【請求項2】
複数の製造パラメータを含む工程を実行する製造システムに組み込まれ、
工程実行中の製造パラメータをモニタリングして記憶する製造パラメータ記憶手段と、
目標消費エネルギを設定する目標消費エネルギ設定手段と、
を備え、
設定された目標消費エネルギに基いて算出される所定の製造パラメータであり、設定又はモニタリングされた所定の実製造パラメータに基く変化率が最小となる新製造パラメータを算出する製造パラメータ最適化手段を有することを特徴とするエネルギ管理システム。
【請求項3】
請求項2に記載のエネルギ管理システムにおいて、
消費エネルギをモニタリングして記憶する消費エネルギ記憶手段と、
製造パラメータから消費エネルギを算出する消費エネルギ算出式を有し、消費エネルギ算出式に製造パラメータを入力して消費エネルギを算出する消費エネルギ算出手段と、
算出された予測消費エネルギ及びモニタリングされた実消費エネルギの差が所定の値を超えた場合には、製造パラメータ及び消費エネルギのデータに基いて、消費エネルギ算出式に差分を解消するための補正を加える消費エネルギ算出式更新手段と、
を備え、
製造パラメータ最適化手段は、設定された目標消費エネルギに基いて消費エネルギ算出式から逆算される所定の製造パラメータであり、設定又はモニタリングされた所定の実製造パラメータに基く変化率が最小となる新製造パラメータを算出すること特徴とするエネルギ管理システム。
【請求項1】
複数の製造パラメータを含む工程を実行する製造システムに組み込まれ、
工程実行中の製造パラメータをモニタリングして記憶する製造パラメータ記憶手段と、
消費エネルギをモニタリングして記憶する消費エネルギ記憶手段と、
製造パラメータから消費エネルギを算出する消費エネルギ算出式を有し、消費エネルギ算出式に製造パラメータを入力して消費エネルギを算出する消費エネルギ算出手段と、
を備え、
算出された予測消費エネルギ及びモニタリングされた実消費エネルギの差が所定の値を超えた場合には、製造パラメータ及び消費エネルギのデータに基いて、消費エネルギ算出式に差分を解消するための補正を加える消費エネルギ算出式更新手段を有することを特徴とするエネルギ管理システム。
【請求項2】
複数の製造パラメータを含む工程を実行する製造システムに組み込まれ、
工程実行中の製造パラメータをモニタリングして記憶する製造パラメータ記憶手段と、
目標消費エネルギを設定する目標消費エネルギ設定手段と、
を備え、
設定された目標消費エネルギに基いて算出される所定の製造パラメータであり、設定又はモニタリングされた所定の実製造パラメータに基く変化率が最小となる新製造パラメータを算出する製造パラメータ最適化手段を有することを特徴とするエネルギ管理システム。
【請求項3】
請求項2に記載のエネルギ管理システムにおいて、
消費エネルギをモニタリングして記憶する消費エネルギ記憶手段と、
製造パラメータから消費エネルギを算出する消費エネルギ算出式を有し、消費エネルギ算出式に製造パラメータを入力して消費エネルギを算出する消費エネルギ算出手段と、
算出された予測消費エネルギ及びモニタリングされた実消費エネルギの差が所定の値を超えた場合には、製造パラメータ及び消費エネルギのデータに基いて、消費エネルギ算出式に差分を解消するための補正を加える消費エネルギ算出式更新手段と、
を備え、
製造パラメータ最適化手段は、設定された目標消費エネルギに基いて消費エネルギ算出式から逆算される所定の製造パラメータであり、設定又はモニタリングされた所定の実製造パラメータに基く変化率が最小となる新製造パラメータを算出すること特徴とするエネルギ管理システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5(a)】
【図5(b)】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5(a)】
【図5(b)】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【公開番号】特開2010−15207(P2010−15207A)
【公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−171931(P2008−171931)
【出願日】平成20年7月1日(2008.7.1)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年7月1日(2008.7.1)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
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