説明

エピタキシャルウェーハの製造方法およびエピタキシャルウェーハ

【課題】エピタキシャル膜形成後にエピタキシャルウェーハの表裏面を研磨することなく、高い裏面の平坦度を得ることが可能なエピタキシャルウェーハの製造方法を提供する。
【解決手段】本発明のエピタキシャルウェーハ100の製造方法は、端部に面取り部11が形成され、両面12a,12bに該面取り部11との境界であるエッジ13a,13bを有する半導体ウェーハ10の、片面12b側のエッジ13b位置の内方所定位置Pからウェーハ外方に向かう該片面12bの外周部14をロールオフ加工して、該外周部14をロールオフ領域とする工程と、前記片面12bとは反対の他面12a上に第1エピタキシャル膜20を形成する工程と、を有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エピタキシャルウェーハの製造方法およびエピタキシャルウェーハに関し、特に、エピタキシャル膜形成後にエピタキシャルウェーハの表裏面などを研磨することなく、高い裏面の平坦度を得ることが可能なエピタキシャルウェーハの製造方法およびこれにより得られるエピタキシャルウェーハに関する。
【背景技術】
【0002】
エピタキシャルウェーハは、例えばシリコン基板上に、厚さ数μmの単結晶シリコン層(エピタキシャル膜)を、主として気相成長させることによって形成させた高品質ウェーハである。エピタキシャルシリコンウェーハは、デバイスメーカーの要請等に応じて、高濃度のボロン(B)やリン(P)といったドーパントを添加したウェーハを製造できる点で有効である。
【0003】
従来の一般的なエピタキシャルウェーハの製造方法を、図8を用いて説明する。図8(a)は、端部に面取り部41が形成された半導体ウェーハ40の端部付近を示す。この半導体ウェーハ40の表面42a上に、エピタキシャル膜50を形成させ(図8(b))、エピタキシャルウェーハ200とする。近年のエピタキシャル成長技術により、半導体ウェーハ40の表面42aに関しては、その全面に厚みが均一なエピタキシャル膜50を形成することが可能になってきた。
【0004】
ところが、半導体ウェーハ40の裏面42bに関しては、エピタキシャル成長を行う際、エピタキシャル膜を形成するために用いられる反応ガスが、裏面42bに回り込むことによって、半導体ウェーハ裏面42bの外周部44にもエピタキシャル膜60が付着してしまう。このため、エピタキシャル膜50自体の厚みは均一であっても、半導体ウェーハ40までも含めたエピタキシャルウェーハ200のウェーハ径方向の厚み分布は、外周部44に付着したエピタキシャル膜60の厚みが加算された厚み分布となり、その結果、エピタキシャルウェーハ全体の平坦度が悪化するという問題があった。特に、形成するエピタキシャル膜50の厚みが増加するほど、裏面42bの外周部44に付着するエピタキシャル膜60の厚みも増大するため、より平坦度が悪化する。なお、本明細書においては、上記の通り、半導体ウェーハのうち、主のエピタキシャル膜を成長させる面を半導体ウェーハの「表面」、その反対側の面を半導体ウェーハの「裏面」という。
【0005】
近年の半導体デバイスの高集積化に伴うデザイン・ルールの縮小に伴い、かかるエピタキシャルシリコンウェーハに要求される平坦度もますます厳しくなっている。また、1枚のウェーハから極力多くのデバイスを得ることが望まれ、ウェーハの大口径化と共に、ウェーハの全面、特にエッジ部(ウェーハ端部)まで平坦な形状が要求されるようになってきている。ウェーハ面のフラットネス(平坦度)の測定除外範囲(Edge Exclusion)は、従来、ウェーハエッジから3mmであったものが、現状では、2mmへと進んでおり、さらには1mmまでの縮小化も要求されつつある。
【0006】
このような状況下、エピタキシャルウェーハの平坦度を向上させるべく、特許文献1には、エピタキシャル膜の形成後のエピタキシャルウェーハの表面または両面を鏡面研磨する製造方法が記載されている。また、特許文献2,3にも、エピタキシャル膜の形成後に、エピタキシャル膜表面を鏡面研磨する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平4−122023号公報
【特許文献2】特開2005−209862号公報
【特許文献3】特開2006−190703号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
確かに、特許文献1〜3に記載された発明は、エピタキシャルウェーハの表面または表裏面を機械的に研磨加工するものであるため、エピタキシャルウェーハの平坦度を向上させることができる。特に、特許文献1に記載されているように、エピタキシャル膜の形成後のエピタキシャルウェーハの両面を鏡面研磨すれば、図8(b)に示したエピタキシャル膜60を除去することができ、表面および裏面において高い平坦度を有するエピタキシャルウェーハを得ることができる。
【0009】
しかしながら、エピタキシャル膜表面は非常に活性であるため、エピタキシャル膜表面を研磨処理すると、エピタキシャル膜表面に加工起因の欠陥であるPID(Polishing Induced Defect)やスクラッチ等が発生するおそれがある。また、エピタキシャルウェーハを研磨する処理工程により、生産コストの上昇を招く。また、エピタキシャルウェーハの裏面を鏡面研磨するには、真空吸着部材などを用いてエピタキシャル膜表面を吸着保持してエピタキシャルウェーハ裏面側を研磨処理する必要がある。このため、エピタキシャル膜表面に傷や接触痕を発生させてしまい、エピタキシャル膜の品質低下を招くおそれがある。そのため、エピタキシャル膜形成後にエピタキシャルウェーハの両面、特に裏面を研磨せずとも、裏面において外周部まで含めて高い平坦度を実現する方法が望まれていた。
【0010】
そこで本発明は、上記課題に鑑み、エピタキシャル膜形成後にエピタキシャルエピタキシャルウェーハの表裏面を研磨することなく、高い裏面の平坦度を得ることが可能なエピタキシャルウェーハの製造方法およびこれにより得られるエピタキシャルウェーハを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らが鋭意検討した結果、エピタキシャル膜形成後に、半導体ウェーハ裏面の外周部に付着したエピタキシャル膜を除去するのではなく、発想を正反対に転換して、エピタキシャル膜形成前に予め半導体ウェーハ裏面の外周部を意図的にロールオフさせておき、その後エピタキシャル膜を形成すれば、所期の目的を達成することができることに思い至り、本発明を完成するに至った。
【0012】
本発明は、上記の知見および検討に基づくものであり、その要旨構成は以下の通りである。
(1)端部に面取り部が形成され、両面に該面取り部との境界であるエッジを有する半導体ウェーハの、片面側のエッジ位置の内方所定位置からウェーハ外方に向かう該片面の外周部をロールオフ加工して、該外周部をロールオフ領域とする工程と、
前記片面とは反対の他面上に第1エピタキシャル膜を形成する工程と、
を有することを特徴とするエピタキシャルウェーハの製造方法。
【0013】
(2)前記他面に第1エピタキシャル膜を形成する際に前記片面の外周部に付着する第2エピタキシャル膜の膜厚に基づいて、前記外周部のロールオフ量を設定する上記(1)に記載のエピタキシャルウェーハの製造方法。
【0014】
(3)前記ロールオフ加工が、研磨加工である上記(1)または(2)に記載のエピタキシャルウェーハの製造方法。
【0015】
(4)前記半導体ウェーハの前記片面および他面の少なくとも一方に対して粗研磨を行う工程を有し、
該粗研磨工程後に前記外周部の研磨加工を行う上記(3)に記載のエピタキシャルウェーハの製造方法。
【0016】
(5)前記第1エピタキシャル膜を形成する工程の前に、前記半導体ウェーハの少なくとも前記他面に対して仕上げ研磨を行う工程を有し、
該仕上げ研磨工程前に前記外周部の研磨加工を行う上記(3)または(4)に記載のエピタキシャルウェーハの製造方法。
【0017】
(6)前記外周部の研磨加工は、前記片面の外周部に対応するサイズをもつリング状の研磨布を用いて行う上記(3)乃至(5)のいずれか1項に記載のエピタキシャルウェーハの製造方法。
【0018】
(7)前記半導体ウェーハの前記片面および他面の少なくとも一方に対して粗研磨を行う工程と、
前記第1エピタキシャル膜を形成する工程の前に、前記半導体ウェーハの前記片面および他面の少なくとも一方に対して仕上げ研磨を行う工程と、
を有し、
前記粗研磨工程と前記仕上げ研磨工程との間に、前記面取り部の鏡面研磨と前記外周部の研磨加工を並行して行う上記(3)に記載のエピタキシャルウェーハの製造方法。
【0019】
(8)端部に面取り部が形成され、両面に該面取り部との境界であるエッジを有する半導体ウェーハと、
該半導体ウェーハの片面上に形成された厚さ3μm以上の第1エピタキシャル膜と、
前記片面とは反対の他面のうち、外周部に形成された第2エピタキシャル膜と、を具え、
前記他面上の第2エピタキシャル膜表面を少なくとも含む面の平坦度であるESFQRmeanが、100nm以下であることを特徴とするエピタキシャルウェーハ。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、エピタキシャル膜形成前に予め半導体ウェーハ裏面の外周部を意図的にロールオフ加工して、その後エピタキシャル膜を形成したため、エピタキシャル膜形成後にウェーハの表裏面を研磨することなく、高い裏面の平坦度を有するエピタキシャルウェーハおよびその製造方法を提供することができた。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明に従う代表的なエピタキシャルウェーハの製造方法を説明する摸式断面図である。
【図2】本発明に従うエピタキシャルウェーハの製造方法におけるウェーハ裏面外周部の研磨方法の一例で、リング状の研磨布を用いて研磨を行う場合を説明する摸式断面図である。
【図3】本発明に従うエピタキシャルウェーハの製造方法におけるウェーハ裏面外周部の研磨方法の別の一例で、面取り部の鏡面研磨と裏面外周部の研磨加工を並行して行う場合を説明する図であり、(a)はウェーハ外周部付近の模式断面図、(b)はウェーハと研磨パッドの模式上面図である。
【図4】(a)は、本発明に従う代表的なエピタキシャルウェーハを示す模式断面図である。(b)は、ESFQRを説明するための図である。
【図5】エピタキシャルウェーハの裏面外周部付近の高さプロファイルを示すグラフであり、(a)は実験例1(比較例)により得られたエピタキシャルウェーハ、(b)は実験例3(実施例)により得られたエピタキシャルウェーハによるものである。
【図6】実験例2により、半導体ウェーハの表面に形成する第1エピタキシャル膜の膜厚と、裏面外周部に付着する第2エピタキシャル膜の膜厚との関係を示すグラフである。
【図7】実験例4により、半導体ウェーハの表面に形成する第1エピタキシャル膜の膜厚を2μm,3μm,4μm,5μm(実験例1)としたとき(比較例)の裏面外周部のESFQRと、本発明のロールオフ加工を行った後、同様に2μm,3μm,4μm,5μmの第1エピタキシャル膜を形成したとき(実施例)の裏面外周部のESFQRを示すグラフである。
【図8】従来のエピタキシャルウェーハの製造方法を説明する摸式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照しつつ本発明をより詳細に説明する。なお、同一の構成要素には原則として同一の参照番号を付して、説明を省略する。
【0023】
(エピタキシャルウェーハの製造方法)
図1は、本発明に従う代表的なエピタキシャルウェーハの製造方法を説明する摸式断面図であり、ウェーハ端部付近のみを図示するものである。まず、半導体ウェーハ10を用意する(図1(a))。半導体ウェーハ10としては、例えば、シリコン単結晶インゴットを、ワイヤーソー等を用いてスライスし、ラッピングや研削などの平坦化加工処理を経たシリコンウェーハが挙げられる。この半導体ウェーハ10は、端部に面取り部11が形成され、両面12a,12bにこの面取り部11との境界であるエッジ13a,13bを有している。端部の面取りを行った後、半導体ウェーハ10に対して粗研磨を行うことができる。
【0024】
粗研磨は、半導体ウェーハの両面12a,12bの少なくとも一方、好ましくは両面に対して行うことができる。粗研磨は、ラッピングや研削処理により導入された加工歪層の除去や、表面形状(平坦度)を調整することを目的に実施する鏡面研磨処理である。例えば、半導体ウェーハを収容するキャリアと、該キャリアを挟みポリウレタンなどの硬質の研磨布を貼設された上定盤および下定盤を備えた両面研磨装置を用いて、被研磨面に平均粒径30〜100nmの遊離砥粒(コロイダルシリカ、ダイヤモンド砥粒、アルミナ砥粒など)を含む研磨スラリーを供給しながらウェーハの両面を平坦に鏡面研磨する。粗研磨工程は、研磨布の種類や粗研磨液に含まれる遊離砥粒のサイズを変更し、シリコンウェーハの被研磨面の研磨量を、例えば2段階または3段階に分けて研磨してもよい。
【0025】
その後、面取り部11の鏡面研磨を行うことができる。なお、面取り部11の鏡面研磨は、粗研磨工程の前でもよい。エッチング工程を経たウェーハは、ウェーハを回転させるとともに研磨液を供給しながら、ウェーハ端部を研磨布に押し付けて鏡面に研磨する。研磨布の種類は限定されない。例えば、単層式の研磨布でもよいし、研磨布層の裏面にスポンジ層が形成された2層式の研磨布でもよい。単層式における研磨布および2層式における研磨布層としては、例えば、ウレタンフォームなどの合成樹脂発泡体からなる研磨布、ポリエステル繊維製の不織布にウレタン樹脂を含浸させた硬質なベロアタイプの研磨布、不織布の基布の上にウレタン樹脂を発泡させたスエードパッドなどを採用することができる。研磨布に供給される砥液(研磨剤)としては、例えばアルカリ溶液中に焼成シリカまたはコロイダルシリカなどの遊離砥粒を分散させたものを採用することができる。
【0026】
次に、半導体ウェーハ10の片面である裏面12bの外周部14をロールオフ加工して、この外周部14をロールオフ領域とする(図1(b))。裏面12bの外周部14は、図1(a)に示すように、裏面12b側のエッジ13b位置の内方所定位置Pからウェーハ外方に向かう領域である。ロールオフ領域とする外周部14の広さおよびロールオフ量については、後述する。なお、本明細書において「ロールオフ量」とは、図1(b)に示すように、ロールオフ後のウェーハ裏面12bのエッジ13cの位置と、ロールオフがなかった場合の平坦な裏面12bエッジ13bの位置(図1(a)参照)との厚さ方向の乖離の大きさtを意味する。
【0027】
その後、第1エピタキシャル膜20を形成する工程の前に、このロールオフ加工された半導体ウェーハ10の表面側の面粗さを改善することを目的に、仕上げ研磨を実施する。仕上げ研磨は、粗研磨のようなシリコンウェーハの平坦度を調整する研磨とは異なり、ウェーハ表面の微小なうねりやヘイズレベルの改善を目的として実施するものである。仕上げ研磨は、被研磨面に対して研磨スラリーを供給しながら、回転する軟質の研磨布に半導体ウェーハ10の被研磨面を押し当てることにより鏡面研磨処理を行うものである。例えば、枚葉式の研磨装置を使用しても、複数枚のシリコンウェーハを同時に研磨するバッチ式の研磨装置を使用してもよい。また、半導体ウェーハ表面12aのみに対する片面研磨でも、表面12aおよび裏面12bを同時に研磨する両面研磨でもよい。また、仕上げ研磨処理は、使用する研磨布や研磨スラリー組成などを変えて複数段に分けて実施するようにしてもよい。仕上げ研磨において、遊離砥粒を含むアルカリ性水溶液を仕上げ研磨液とすることができる。例えば、アルカリ性水溶液中に、コロイダルシリカ(砥粒)、ダイヤモンド砥粒、アルミナ砥粒などの遊離砥粒が混入されたものを採用することができる。これにより、シリコンウェーハの被研磨面は、主に遊離砥粒によるメカニカルな研削作用と、アルカリによるケミカル作用により研磨される。仕上げ研磨液用のアルカリ性水溶液に添加される遊離砥粒の平均粒径は、砥粒が凝集しない粒径範囲で選定すればよく、平均粒径が10〜50nmのものを使用することが望ましい。仕上げ研磨用の研磨布としては、粗研磨用のポリウレタンなどの硬質の研磨布とは異なり、軟質の研磨布が適している。具体的には、ベロアタイプやスエードタイプのものを採用することができる。ベロアタイプの研磨布は、単層構造のいわゆる不織布であり、立体的な構造の多孔質シート状材料である。スエードタイプの研磨布は、いわば工業材料用の人工皮革で、合成繊維および特殊合成ゴムにより形成した立体構造の不織布からなる基体層と、耐摩耗性に優れたポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリカーボ樹脂等の高分子樹脂に多数の微細なポア(孔)を形成した表面層とから構成したものである。
【0028】
そして、裏面12bとは反対の他面である表面12a上に、第1エピタキシャル膜20を形成する(図1(c))。エピタキシャル成長時には、シリコンウェーハをサセプタ内に、ウェーハ表裏面を水平にして横置きする。次に、シリコンウェーハの表面の自然酸化膜やパーティクルの除去を目的として、チャンバ内に水素ガスを供給し、1150℃の温度で60秒間の水素ベークを行う。その後、キャリアガス(Hガス)、ソースガス(4塩化けい素、モノシラン(SiH)、トリクロロシラン(SiHCl)、ジクロルシラン(SiHCl)など)、ドーパントガス(ジボラン(B)、フォスフィン(PH)など)をチャンバ内に供給し、1000℃〜1150℃で加熱したシリコンウェーハの表面に2〜100μmのエピタキシャル膜を成長させる。
【0029】
このとき、第1エピタキシャル膜20を形成するために用いられる反応ガスが、半導体ウェーハ10の裏面12bに回り込むことによって、ロールオフ領域とした半導体ウェーハ裏面12bの外周部14に、第2エピタキシャル膜30が付着する。ここで従来は、図8(b)に示すように、裏面外周部44にエピタキシャル膜60が形成されると、エピタキシャルウェーハ200の裏面平坦度が悪化していた。しかし、本発明の製造方法では、第1エピタキシャル膜20の形成前に予め半導体ウェーハ裏面12bの外周部14のみを意図的にロールオフ加工して、その後第1エピタキシャル膜20を形成した。このため、第2エピタキシャル膜30がロールオフ領域である外周部14に付着することで、第1エピタキシャル膜20形成後にウェーハの裏面12bを研磨することなく、エピタキシャルウェーハ100の裏面に高い平坦度をもたらすことができる。このように、エピタキシャルウェーハ100の表面および裏面を研磨せずとも外周部まで均一な厚み分布を有する、すなわち、高い平坦度を有するエピタキシャルウェーハ100を得ることができる。
【0030】
外周部14のロールオフ量tは、半導体ウェーハ10の表面12aに第1エピタキシャル膜20を形成する際に、裏面12bの外周部14に付着する第2エピタキシャル膜の膜厚に基づいて設定することが好ましい。これにより、第2エピタキシャル膜30の表面31が、より半導体ウェーハの裏面12bと面一になり、エピタキシャルウェーハ200の裏面の平坦度をより高くすることができる。
【0031】
具体例を以下に説明する。図8(b)に示すように、裏面外周部をロールオフせずにエピタキシャル膜を形成した場合に、裏面外周部44に付着するエピタキシャル膜60の最大膜厚をsとする。反応ガスは半導体ウェーハの表面から回り込むため、裏面外周部44に付着するエピタキシャル膜の最大膜厚sは、裏面外周部44のうちウェーハのエッジ位置にて観測される。そこで、ロールオフ量tをこの最大膜厚sと等しく設定する。すなわち、エピタキシャルウェーハの製造時の第1エピタキシャル膜20のエピタキシャル条件で、上記最大膜厚sを事前に実験的に求め、これと等しいロールオフ量となるように、裏面12bの外周部14をロールオフ加工する。なお、符号43a,43bは、半導体ウェーハ40の両面42a,42bのエッジを示し、Qは、エピタキシャル膜60が付着する外周部の最内端位置を示す。
【0032】
この具体例をより詳細に説明すると、半導体ウェーハ10の表面12aに形成する第1エピタキシャル膜20の膜厚と、その際裏面12bの外周部14に付着する第2エピタキシャル膜30の最大膜厚sとは、正の相関関係を有する。そのため、この関係を事前に求め、テーブル化しておけば、エピタキシャルウェーハ100の製造時に、形成する第1エピタキシャル膜20の膜厚に対応して、適切なロールオフ量を選択することができる。
【0033】
また、エピタキシャル膜60が付着する外周部の最内端位置Qは、エピタキシャル成長条件にもよるが、概ね裏面側のエッジ13bから5mm以内の領域となる。このため、ロールオフ領域とする外周部14は、裏面側のエッジ13bから5mm以内の領域とすることができる。すなわち、図1(a)における裏面12bの内方所定位置Pが、裏面側のエッジ13bから5mm以内となる。一般的なエピタキシャル条件であれば、第2エピタキシャル膜30が付着する領域は、裏面側のエッジ13bから5mm以内の領域内であり、第2エピタキシャル膜30が付着しない領域までロールオフ加工すると、裏面12bの平坦度が悪化し、デバイスに悪影響を及ぼすおそれがあるからである。なお、必ずしも必要なことではないが、より厳密な平坦度が要求される場合には、ロールオフ量と同様に、所定装置でのエピタキシャル条件でQがどの位置となるか事前に把握し、その位置をPとするようにロールオフしても良いことは勿論である。
【0034】
なお、ロールオフ領域は、半導体ウェーハの裏面12b上に、面取り部11と隣接して形成される。ここで、面取り部11は、ウェーハの直径方向および厚さ方向に数百μmのオーダーを有する。これに対し、ロールオフ領域は、直径方向の幅が上記の通り5mm以内という数mmのオーダーに対して、厚さ方向(ロールオフ量)が、約50〜500nmのオーダーである。したがって、ウェーハの直径方向に対する傾きは、面取り部11の方がロールオフ領域である外周部14よりも実際には遥かに大きい。このため、図1以下全ての断面図においては、外周部14のウェーハ直径方向に対する傾きを視認可能に図示するため、ウェーハの厚み方向を大幅に拡大して示しており、このため面取り部11は半導体ウェーハの厚さ方向に略垂直に描いている。面取り部11はデバイス作製には用いられない領域のため、図1以下全ての図面において、面取り部11に付着したエピタキシャル膜は省略している。
【0035】
(ロールオフ加工方法)
ロールオフ加工は、外周部の研磨加工とすることが好ましい。これにより、半導体ウェーハ10の裏面12bに加工ダメージなどを発生させることなく、上記のようなnmオーダーのロールオフ量でロールオフ領域を形成することができる。ロールオフ加工に用いる研磨布は、上記面取り部の鏡面研磨に用いた研磨布と同じとすることができる。
【0036】
例えば、半導体ウェーハ10を該ウェーハの中心を回転中心として回転するステージに載置し、半導体ウェーハ10を回転させながら裏面12bの外周部14に研磨部材を押し当てることにより、外周部のみの研磨を行う。半導体ウェーハ10を回転させることによって、ウェーハの外周全体を均一な幅で均等に研磨することができる。さらに、ロールオフ量tは、研磨部材を半導体ウェーハに押し当てる際の加圧力、および、研磨時間により制御することができる。また、ロールオフ領域の幅は、これらに加えて半導体ウェーハ10に対する研磨部材の当接角度によっても制御することができる。
【0037】
本発明では、すでに説明した工程順のとおり、半導体ウェーハ10の両面12a,12bの少なくとも一方、好ましくは両面に対して行う粗研磨工程の後に、ロールオフ加工である外周部14の研磨加工を行うことが好ましい。ロールオフ量が約50〜500nm程度であるのに対し、粗研磨の削り量は5〜30μm程度と非常に多いため、上記順序とすることにより、ロールオフ領域が粗研磨により除去されることがないからである。
【0038】
また、すでに説明した工程順のとおり、第1エピタキシャル膜20を形成する工程(図1(c))の前に、半導体ウェーハ10の少なくとも表面12a、あるいは表面12aおよび裏面12bに対して行う最終の仕上げ研磨工程の前に、ロールオフ加工である外周部14の研磨加工を行うことが好ましい。上記順序とすれば、ロールオフ加工する際に、研磨スラリーが最終仕上げ研磨されたウェーハ表面(エピタキシャル成長処理される側の面)に飛散して品質低下を招くおそれがないからである。ただし、スラリー飛散防止板を取り付けるなどの工夫を施して、半導体ウェーハ表面を最終仕上げ研磨した後、裏面外周部をロールオフ加工するようにしてもよい。
【0039】
以下、裏面外周部14の研磨加工方法の具体例を2つ示す。
【0040】
図2は、本発明に従うエピタキシャルウェーハの製造方法におけるウェーハ裏面外周部の研磨方法の一例を説明する摸式断面図である。図2に示す装置は、半導体ウェーハ10の外周部14の研磨のために、半導体ウェーハ10を載置して中心軸周りに回転させる回転ステージ2と、外周部14に対応するサイズをもつリング状の研磨布1とを備える。リング状研磨布1は、ウェーハ10のエッジから2mm〜5mm程度の部分のみを研磨する。リング状研磨布5は、ウェーハ1と反対方向に回転する。リング状研磨布5を用いることによって、ウェーハ外周部にリング状研磨布5を均等に押し付けることができ、ウェーハ1の一部に応力が集中することを避けることができる。
【0041】
図3は、本発明に従うエピタキシャルウェーハの製造方法におけるウェーハ裏面外周部の研磨方法の別の一例を説明するための図である。これまで説明した方法では、面取り部11の鏡面研磨は、半導体ウェーハの粗研磨工程の前または後に、本発明のロールオフ加工とは別途行っていた。図3に示す装置を用いる方法では、半導体ウェーハの粗研磨工程と仕上げ研磨工程との間に、面取り部11の鏡面研磨とロールオフ加工である外周部14の研磨加工を並行して行う。
【0042】
図3(a)および図3(b)は、この方法を模式的に現した図である。研磨パッド3が、裏面12bの外周部14を研磨加工(ロールオフ加工)するための研磨パッドであり、研磨パッド4,5,6が、面取り部11の鏡面研磨のための研磨パッドである。研磨パッド4は、半導体ウェーハ10の上面研磨用、研磨パッド6は、半導体ウェーハ10の下面研磨用、研磨パッド5は、半導体ウェーハ10の最端部(Apex)研磨用である。図3(a)では、それぞれの研磨パッドの半導体ウェーハに対する当接角度を把握しやすいように図示したが、これら4つの研磨パッドが外周部14の異なる円周位置、例えば図3(b)に示すように、半導体ウェーハの外周を4分割したそれぞれの領域において、4つの研磨パッド3,4,5,6が半導体ウェーハ10の裏面外周部14と当接するように配置する。これにより、回転ステージで半導体ウェーハ10を回転させることによって、面取り部11の加工と面取り部11の鏡面研磨と裏面外周部14の研磨加工を並行して行うことができる。また、このような装置は、既存のウェーハ面取り部11の鏡面研磨装置の小規模な改造で済む点でも好ましい。
【0043】
(エピタキシャルウェーハ)
これまで説明した製造方法により得られるエピタキシャルウェーハ100を、図4を用いて説明する。エピタキシャルウェーハ100は、端部に面取り部11が形成され、両面12a,12bに該面取り部11との境界であるエッジ13a,13bを有する半導体ウェーハ10と、この半導体ウェーハ10の片面である表面12a上に形成された厚さ3μm以上の第1エピタキシャル膜20と、表面12aとは反対の他面である裏面12bのうち、外周部14のみに形成された第2エピタキシャル膜30と、を具える。このエピタキシャルウェーハ100は、裏面12bに第2エピタキシャル膜30が付着しているにも関わらず、外周部14がロールオフ領域となっているため、裏面12b上の第2エピタキシャル膜表面31を少なくとも含む面の平坦度であるESFQRmeanが、100nm以下であることを特徴とする。
【0044】
ここで、表面12aに形成する第1エピタキシャル膜20の膜厚が非常に薄い場合には、裏面外周部14に付着する第2エピタキシャル膜もわずかであるため、本発明の製造方法を適用しなくても比較的平坦な裏面を得ることができる。しかし、エピタキシャルウェーハ100は、第1エピタキシャル膜20が厚さ3μm以上形成されているにも関わらず、ESFQRmeanが100nm以下である点が特徴的構成である。
【0045】
ここで、ESFQR(Edge flatness metric, Sector based, Front surface referenced, least sQuares fit reference plane, Range of the data within sector)とは、ウェーハ全周の外周部域に形成した扇型の領域(セクター)内のSFQRを測定したものであり、ESFQRmaxとは、ウェーハ上の全セクターのESFQRの中の最大値を示し、ESFQRmeanは、全セクターのESFQRの平均値を示すものである。本発明で規定する、ESFQRは、平坦度測定器(KLA-Tencor社製:Wafer Sight)を用い、測定除外範囲(Edge Exclusion)を1mmとして(図4(a)参照)、ウェーハ全周を5°間隔で72分割し、セクターを構成する径方向の一辺のセクター長さを30mmとしたセクター(サイトサイズ)内を測定した値である。図4(b)は、ESFQRの算出の基礎となる領域の形状を示す平面図である。外周部の扇型の領域がESFQRの測定領域となる。ESFQRmeanは、半導体ウェーハの面取り部11を除く外周部の平坦度を表す指標である。
【0046】
なお、SFQR(Site Front Least Squares Range)とは、設定されたサイト内でデータを最小二乗法にて算出したサイト内平面を基準平面とし、この平面からの+側(すなわち、ウェーハの主表面を上に向け水平に置いた場合の上側)、−側(同下側)の各々の最大変位量の絶対値の和で表したサイト毎に評価された値のことである。
【0047】
以上、本発明を説明したが、これらは代表的な実施形態の例を示したものであって、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨の範囲内で種々の変更が可能である。
【実施例】
【0048】
(実験例1:比較例)
本実験例では、エピタキシャル成長処理によってウェーハ裏面の平坦度が悪化程度を調べるため、以下の実験を行った。まず、表裏面および面取り部が鏡面研磨された、直径300mmのシリコンウェーハ(結晶方位(100)、p型)を用意した。具体的には、両面研磨装置を用いてシリコンウェーハ表裏面を鏡面研磨(粗研磨)した後、片面研磨装置を用いてシリコンウェーハ表面側を0.5μm除去する仕上げ研磨を行ったものである。
【0049】
このシリコンウェーハを枚葉式エピタキシャル装置内のサセプタ上に載置し、チャンバ内に水素ガスを供給して、1150℃の温度で60秒間の水素ベークを行った後、キャリアガスである水素ガスと共に成長ソースガス(トリクロロシラン)およびドーパントガス(ジボラン)を炉内に供給して、1150℃の温度でエピタキシャル成長を行い、シリコンウェーハ表面に厚さ5μmの第1エピタキシャル膜を形成し、エピタキシャルシリコンウェーハとした。
【0050】
次に、平坦度測定器(KLA-Tencor社製:WaferSight)を用いて、作製したエピタキシャルシリコンウェーハ裏面の平坦度を測定した結果を図5(a)に示す。ウェーハ裏面中心から半径方向に139mm〜143mm間の位置における基板高さを基準面とした。図5(a)に示すとおり、エピタキシャルウェーハ裏面の外周部(145mm以降の部分)において、平坦度が悪化していることが分かる。
【0051】
(実験例2)
次に、本実験例では、半導体ウェーハの表面に形成する第1エピタキシャル膜の膜厚と、その際に裏面外周部に付着する第2エピタキシャル膜の膜厚との関係を調べた。実験例1ではシリコンウェーハ表面に厚さ5μmのエピタキシャル膜を形成したが、本実験例では、エピタキシャル膜の製膜時間を制御することで、形成する第1エピタキシャル膜の膜厚を種々変更したエピタキシャルウェーハを作製した。その際、製膜時間以外のエピタキシャル条件は実験例1と同様とした。
【0052】
それぞれのエピタキシャルウェーハの裏面外周部に付着した第2エピタキシャル膜の膜厚を、裏面のエッジ位置からそれぞれ1mmおよび2mmだけウェーハ内方の位置において、測定した。このようにして得られた、半導体ウェーハの表面に形成する第1エピタキシャル膜の膜厚と、裏面外周部に付着する第2エピタキシャル膜の膜厚との関係を図6に示す。図6のとおり、裏面外周部に付着する第2エピタキシャル膜の膜厚は、半導体ウェーハの表面に形成する第1エピタキシャル膜の膜厚と正の相関関係を有することがわかる。
【0053】
なお、裏面外周部に付着する第2エピタキシャル膜の厚みは数十〜数百nm程度なので、これをFT−IR(Fourier Transform Infrared)方式の膜厚測定器を用いて測定することが困難である。そこで、本実験例では、以下の手順により測定を行った。まず、FT−IR方式の膜厚測定器(ナノメトリクス社製:QS−3300EG)を用いて、シリコンウェーハの表面側に成長させた第1エピタキシャル膜の膜厚分布を測定し、これをイニシャルの値とする。その後、エピタキシャルウェーハを反転して、シリコンウェーハの裏面側にも第1エピタキシャル膜の成長条件と同じ条件でエピタキシャル膜の形成を行う。これにより、シリコンウェーハの表面側に成長させた第1エピタキシャル膜の外周部上にも、第2エピタキシャル膜が形成される。このシリコンウェーハの表面側に成長させた第1エピタキシャル膜および第2エピタキシャル膜を含めたエピタキシャル膜厚みを測定し、イニシャル値との差分をとることで、第2エピタキシャル膜30の厚みを算出することができる。
【0054】
(実験例3:実施例)
本実験例では、本発明のロールオフ加工による平坦度の改善効果を確認するため、以下の実験を行った。まず、実験例2の測定結果から、実験例1と同条件でエピタキシャル成長を行った場合に、裏面のエッジ位置に成長する第2エピタキシャル膜の膜厚(図8(b)に示す最大膜厚s)を求め、ロールオフ量(図1(b)に示したロールオフ量t)が上記sと等しくなる研磨条件にて、裏面外周部をのみをロールオフ加工する研磨処理を実施した。
【0055】
具体的には、図3(a),(b)に示すような面取り部鏡面研磨装置でシリコンウェーハの裏面を吸着保持し、ウェーハを所定の速度で回転させると共に、コロイダルシリカを含むアルカリ水溶液からなる研磨剤を供給し、研磨布が展張された研磨ヘッドの角度を調整しながら、シリコンウェーハ裏面の外周部領域に押し付けるようにして、鏡面研磨処理を施した。このときの研磨条件は、シリコンウェーハの裏面のエッジ位置から5mmまでの領域に、ウェーハ水平面に対して傾斜角度15°に設定した研磨布を当接させて鏡面研磨する処理を2分間実施した。
【0056】
次に、ロールオフ加工したシリコンウェーハの表面を仕上げ鏡面研磨し、洗浄処理(RCA洗浄)した後、実験例1と同条件のエピタキシャル成長処理を行い、シリコンウェーハ表面に厚さ5μmのエピタキシャル膜を形成した。実験例1と同様にして行った平坦度測定の結果を図5(b)に示す。このように、実験例3(実施例)により製造されたエピタキシャルシリコンウェーハは、実験例1(比較例)により製造されたエピタキシャルシリコンウェーハよりも裏面が高平坦化されていることがわかる。しかも、この製法はエピタキシャル膜表面および裏面に研磨加工処理を行わないものであるから、裏面に研磨加工起因であるPID欠陥が発生することもなく、表面に傷や吸着痕が残ることもない、高品位なエピタキシャルシリコンウェーハの提供が可能である。
【0057】
(実験例4)
本実験例では、第1エピタキシャル膜の厚みの違いによって、本発明のロールオフ加工処理の有無で、ウェーハ裏面外周部の平坦度にどの程度の差が生じるのかを検証するため、以下の実験を行った。
【0058】
まず比較例として、実験例1(比較例)で使用したシリコンウェーハと同じ仕様のシリコンウェーハに対し、エピタキシャル膜の製膜時間を制御することで、形成する第1エピタキシャル膜の膜厚を種々変更したエピタキシャルウェーハを作製した。その際、製膜時間以外のエピタキシャル条件は実験例1と同様とした。具体的には、第1エピタキシャル膜の膜厚を2μm,3μm,4μm,5μmの4水準として、それぞれ25枚ずつのエピタキシャルシリコンウェーハを作製した。
【0059】
次に実施例として、第1エピタキシャル膜の膜厚を2μm,3μm,4μm,5μmとする場合のロールオフ量を実験例2で得た相関関係に基づいて求め、実験例3と同様の手順で、各膜厚25枚ずつのシリコンウェーハに対して裏面のロールオフ加工を行った。その後、上記比較例と同様に第1エピタキシャル膜を形成し、エピタキシャルシリコンウェーハを作製した。
【0060】
比較例および実施例で得られた各100枚ずつのエピタキシャルウェーハについて、既述の方法で裏面外周部のESFQRを測定した。その結果を図7に示す。図7から明らかなように、実施例により得られたエピタキシャルシリコンウェーハは、第1エピタキシャル膜の膜厚に関係なく、いずれもESFQRmean値で100nm以下を達成できることがわかる。一方、比較例で得られたエピタキシャルシリコンウェーハは、第1エピタキシャル膜の膜厚に大きく影響を受け、厚さ2μmのエピタキシャル成長処理では、ESFQRmean値で100nm以下を達成できる場合があるものの、厚さ3μm以上のエピタキシャル成長処理では、ESFQRmean値で100nm以下を達成できないことがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明によれば、エピタキシャル膜形成前に予め半導体ウェーハ裏面の外周部を意図的にロールオフ加工して、その後エピタキシャル膜を形成したため、エピタキシャル膜形成後にウェーハの表裏面を研磨することなく、高い裏面の平坦度を有するエピタキシャルウェーハおよびその製造方法を提供することができた。
【符号の説明】
【0062】
1 リング状研磨布
2 回転ステージ
3 研磨パッド(外周部の研磨加工用)
4,5,6 研磨パッド(面取り部の鏡面研磨用)
10 半導体ウェーハ
11 面取り部
12a 半導体ウェーハの表面
12b 半導体ウェーハの裏面
13a 表面側のエッジ
13b 裏面側のエッジ(ロールオフ前)
13c 裏面側のエッジ(ロールオフ後)
14 外周部
20 第1エピタキシャル膜
20a 第1エピタキシャル膜の表面
30 第2エピタキシャル膜
31 第2エピタキシャル膜の表面
100 エピタキシャルウェーハ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
端部に面取り部が形成され、両面に該面取り部との境界であるエッジを有する半導体ウェーハの、片面側のエッジ位置の内方所定位置からウェーハ外方に向かう該片面の外周部をロールオフ加工して、該外周部をロールオフ領域とする工程と、
前記片面とは反対の他面上に第1エピタキシャル膜を形成する工程と、
を有することを特徴とするエピタキシャルウェーハの製造方法。
【請求項2】
前記他面に第1エピタキシャル膜を形成する際に前記片面の外周部に付着する第2エピタキシャル膜の膜厚に基づいて、前記外周部のロールオフ量を設定する請求項1に記載のエピタキシャルウェーハの製造方法。
【請求項3】
前記ロールオフ加工が、前記外周部の研磨加工である請求項1または2に記載のエピタキシャルウェーハの製造方法。
【請求項4】
前記半導体ウェーハの前記片面および他面の少なくとも一方に対して粗研磨を行う工程を有し、
該粗研磨工程後に前記外周部の研磨加工を行う請求項3に記載のエピタキシャルウェーハの製造方法。
【請求項5】
前記第1エピタキシャル膜を形成する工程の前に、前記半導体ウェーハの少なくとも前記他面に対して仕上げ研磨を行う工程を有し、
該仕上げ研磨工程前に前記外周部の研磨加工を行う請求項3または4に記載のエピタキシャルウェーハの製造方法。
【請求項6】
前記外周部の研磨加工は、前記片面の外周部に対応するサイズをもつリング状の研磨布を用いて行う請求項3乃至5のいずれか1項に記載のエピタキシャルウェーハの製造方法。
【請求項7】
前記半導体ウェーハの前記片面および他面の少なくとも一方に対して粗研磨を行う工程と、
前記第1エピタキシャル膜を形成する工程の前に、前記半導体ウェーハの前記片面および他面の少なくとも一方に対して仕上げ研磨を行う工程と、
を有し、
前記粗研磨工程と前記仕上げ研磨工程との間に、前記面取り部の鏡面研磨と前記外周部の研磨加工を並行して行う請求項3に記載のエピタキシャルウェーハの製造方法。
【請求項8】
端部に面取り部が形成され、両面に該面取り部との境界であるエッジを有する半導体ウェーハと、
該半導体ウェーハの片面上に形成された厚さ3μm以上の第1エピタキシャル膜と、
前記片面とは反対の他面のうち、外周部に形成された第2エピタキシャル膜と、を具え、
前記他面上の第2エピタキシャル膜表面を少なくとも含む面の平坦度であるESFQRmeanが、100nm以下であることを特徴とするエピタキシャルウェーハ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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