説明

エポキシ変性ポリフェニレンエーテルの製造法

【課題】エポキシ樹脂とポリフェニレンエーテルの反応において、反応制御がより容易になり、ケトン系溶剤に対する溶解性がより優れたエポキシ変性ポリフェニレンエーテルの製造方法を提供する。
【解決手段】数平均分子量1万未満のポリフェニレンエーテル(A)とクレゾールノボラックがたエポキシ樹脂(B)を混合反応させる製造方法において、成分(A)の含有するアミン成分(C)の窒素原子が(A)全量に対して10〜1000ppmであることを特徴とするエポキシ変性ポリフェニレンエーテルの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリント基板や絶縁封止材等の電気電子材料に適したポリフェニレンエーテル樹脂の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、プリント基板、絶縁封止材等の電子材料としてはエポキシ樹脂が最も汎用的に用いられてきたが、近年、携帯電話やパソコン等の情報処理機器では演算処理すべき情報の大容量化とともに処理速度の高速化が求められており、より高耐熱、低誘電の材料特性が要求されている。また、回路誤作動を防ぐための信頼性確保の観点から、低吸水性も重要な要求特性の一つである。エポキシ樹脂を高耐熱化、低誘電化、吸水率を低減させるために、エポキシ樹脂とポリフェニレンエーテル樹脂を含有する組成物が提案された(例えば、特許文献1、特許文献2参照。)。さらに、ポリフェニレンエーテルは種々の溶剤への溶解性が低く、高濃度で均一に溶解できる溶剤はトルエンやクロロホルム等に限定されているが、従来からのエポキシ樹脂のプリント基板製造工程で用いられていたメチルエチルケトン(MEK)、アセトンにも容易に溶解し、従来の工程にそのまま適応できることを求めるニーズも存在した。そのニーズに応えるために、ポリフェニレンエーテルをエポキシ樹脂をはじめとする多官能エポキシ化合物で変成することにより、ケトン系溶剤、特にMEK,アセトンに対する溶解性を改善する方法があるが、(例えば、特許文献3、特許文献4、特許文献5参照。)、更なる溶解性の向上を求める市場ニーズも存在する。
【0003】
【特許文献1】欧州特許出願公開第592145号明細書
【特許文献2】欧州特許出願公開第921158号明細書
【特許文献3】特許第2667625号公報
【特許文献4】特許第3300426号公報
【特許文献5】米国特許出願公開第5834565号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、エポキシ樹脂とポリフェニレンエーテルを反応させてエポキシ変性ポリフェニレンエーテルを製造する方法において、反応の制御をより容易にし、ケトン系溶剤に対する溶解性をさらに改善することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は前記課題を解決するためエポキシ樹脂とポリフェニレンエーテルの反応に関して鋭意検討を進めた結果、数平均分子量1万未満のポリフェニレンエーテル(A)とクレゾール−ノボラック型エポキシ樹脂(B)、を混合反応させる製造方法において、(A)が含有するアミン成分(C)の窒素原子が(A)全量に対して10〜1000ppmであるとポリフェニレンエーテル(A)とクレゾール−ノボラック型エポキシ樹脂(B)の反応制御が容易になりケトン系溶剤に対する溶解性がより優れたエポキシ変性ポリフェニレンエーテルが得られることを見出し本発明に至った。
即ち、本発明は、
数平均分子量1万未満のポリフェニレンエーテル(A)とクレゾール−ノボラック型エポキシ樹脂(B)を混合反応させる製造方法において、成分(A)の含有するアミン成分(C)の窒素原子が、(A)全量に対して10〜1000ppmであることを特徴とするエポキシ変性ポリフェニレンエーテルの製造方法、
である。
【発明の効果】
【0006】
本発明の製造方法により、ケトン系溶剤に対する溶解性がより優れたエポキシ変性ポリフェニレンエーテルが得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明について、以下具体的に説明する。
本発明の、数平均分子量1万未満のポリフェニレンエーテル(A)は、下記式の繰り返しユニットから構成される重合体、または共重合体である。
【0008】
【化1】

【0009】
本発明で用いるポリフェニレンエーテル重合体の具体例は、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)、ポリ(2−メチル−6−フェニル−1,4−フェニレンエーテル)、ポリ(2−メチル−6−フェニル−1,4−フェニレンエーテル)、ポリ(2,6−ジクロロ−1,4−フェニレンエーテル)等である。
本発明のポリフェニレンエーテル共重合体の具体例は、2,6−ジメチルフェノールと他のフェノール類(例えば2,3,6−トリメチルフェノールや2−メチル−6−メチルブチルフェノール)、テトラメチルビスフェノールA、テトラメチルビフェノールAとの共重合体のようなポリフェニレンエーテル共重合体などが挙げられる。
【0010】
中でもポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)、2,6−ジメチルフェノールと2,3,6−トリメチルフェノールとの共重合体、2,6−ジメチルフェノールとテトラメチルビスフェノールAとの共重合体が好ましく使用できる。
本発明の、数平均分子量1万未満のポリフェニレンエーテル(A)を製造する手法としては、重合時に分子量を制御する方法や分子量1万以上のポリフェニレンエーテルをフェノール性化合物、過酸化物等を混合し、加熱、反応させる方法を用いることができる。
数平均分子量が1万未満では、よりケトン系溶剤に対する溶解性の優れたエポキシ変性ポリフェニレンエーテルが得られ、さらに数平均分子量が5千以下ではエポキシ変性ポリフェニレンエーテルのケトン系溶剤に対する溶解性はさらに改善される。
【0011】
本発明の数平均分子量1万未満のポリフェニレンエーテル(A)は分子鎖末端にフェノール性水酸基を有し、その位置は片末端でも両末端でもよいが、電子材料用途においては硬化物の硬化性、架橋性の観点から両末端であることが好ましい。
本発明の数平均分子量1万未満のポリフェニレンエーテル(A)が分子鎖末端に有するフェノール性水酸基の個数は1分子鎖あたり平均1.3個以上、4.0個以下であり、好ましくは1.5個以上、3.0個以下、さらに好ましくは1.8個以上、2.0個以下である。
本発明の数平均分子量1万未満のポリフェニレンエーテル(A)は分子鎖中に官能基を含んでも良い。官能基としてはビニル基、アリル基、エポキシ基、カルボキシル基、酸無水基、エステル基、水酸基、アミノ基、アミド基、イミド基から選ばれる1つ、または2つ以上を含むこともある。
【0012】
本発明の数平均分子量1万未満のポリフェニレンエーテル(A)は窒素原子として10〜1000ppmのアミン成分(C)を有するものが好ましい。より好ましくは10〜800ppm、さらに好ましくは10〜500ppm、特に好ましくは100〜400ppmである。アミン成分が10〜1000ppmの範囲にあると、ポリフェニレンエーテル(A)とクレゾール−ノボラック型エポキシ樹脂との反応コントロールがより容易となり、目的とするケトン溶剤に対する溶解性がより改善されたエポキシ変性ポリフェニレンエーテル(C)をより容易に得ることができる。
【0013】
本発明のアミン成分(C)は数平均分子量1万未満のポリフェニレンエーテル(A)の製造過程で使用するあらゆる成分を含むことができる。例えば、ピリジン、アニリン、N−エチルアニリン、N−ブチルアニリン、ジメチルアミン、ジプロピルアミン、ジ−n−ブチルアミン、ジメチル−n−ブチルアミン、エチルメチルアミン、N,N’−t−ブチルエチレンジアミン、N,N‘−t−ブチルプロパンジアミン、N,N,N’−トリメチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルプロパンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルブタンジアミン等のを含むことができる。
本発明のアミン成分は一部、または全量が第4級アンモニウム塩であってもよい。
本発明のクレゾール−ノボラック型エポキシ樹脂(B)は下記式(2)で示される。
【0014】
【化2】

【0015】
本発明のエポキシ変性ポリフェニレンエーテルはそのまま溶融混合、成形することもできる。
本発明の製造方法におけるクレゾール−ノボラック型エポキシ樹脂(B)は5〜70重量%が好ましく、より好ましくは10〜60重量%、さらに好ましくは20〜50重量%である。
本発明のエポキシ変性ポリフェニレンエーテルは適当な溶剤に溶解させワニスとして使うことができる。溶剤としてはトルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、クロロホルム、塩化メチレン等のハロゲン化炭化水素、メチルエチルケトン、アセトン等のケトン系溶剤等を使用することができるが、メチルエチルケトンが好ましく用いられる。このワニスにガラスクロス等の無機繊維、アラミド繊維等の有機繊維を含浸、乾燥させプリプレグを作成し、このプリプレグを銅箔等の基材と組み合わせることにより積層板を作成することができる。
【0016】
本発明の製造方法では数平均分子量1万未満のポリフェニレンエーテル(A)、エポキシ樹脂(B)の他に熱可塑性樹脂、硬化性樹脂を加えることができる。熱可塑性樹脂としては、エチレン、プロピレン、ブタジエン、イソプレン、スチレン、メタクリル酸、アクリル酸、メタクリル酸エステル、アクリル酸エステル、塩化ビニル、アクリロニトリル、無水マレイン酸、酢酸ビニル等のビニル化合物の単独重合体や2種以上のビニル化合物の共重合体、あるいは、ポリアミド、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリアセタール、ポリフェニレンスルフィド、ポリエチレングリコール等を例としてあげることができるが、これらに限定されるものではない。硬化性樹脂としては、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、アルキド樹脂、ポリエステル樹脂、シアネートエステル樹脂、ビスマレイミド樹脂、ビニル樹脂、ベンゾシクロブテン樹脂を使用することができる。上記熱可塑性樹脂や硬化性樹脂は官能化化合物で変成されたものでもよい。
【0017】
本発明の製造方法では数平均分子量1万未満のポリフェニレンエーテル(A)、エポキシ樹脂(B)の他に目的に応じ適当な添加剤を添加しても良い。添加剤としては、熱安定剤、酸化防止剤、UV吸収剤、界面活性剤、滑剤、充填剤、ポリマー添加剤、ジアルキルパーオキサイド、パーオキシ、パーオキシカーボネート、ヒドロパーオキサイド、パーオキシケタール等が挙げられる。
本発明のエポキシ変性ポリフェニレンエーテルはエポキシ樹脂用硬化剤または硬化促進剤、硬化触媒と反応することで電子材料として有用な硬化物を形成する。
【実施例】
【0018】
特公昭60−34571号公報に従ってポリフェニレンエーテルの重合反応を実施し、重合直後の溶液を大過剰のメタノールと混合し、ポリフェニレンエーテルの沈殿物が得られた。この沈殿物を純粋なメタノールと混合、攪拌後、ろ別する操作を5回実施した結果、数平均分子量2800、窒素原子含有量230ppm、PPE1分子あたりのOH末端数1.6個のポリフェニレンエーテル(B−5)が得られた。成分(B−5)300gとクレゾール−ノボラック型エポキシ樹脂(大日本インキ化学株式会社製、N−660)700gを室温でヘンシェルミキサー(三井鉱山株式会社製)を用いて混合し、160℃で連続式ニーダーを用いて溶融混練した。混練操作中のモーター負荷電流値はほとんど変動せず、ニーダーから溶融ポリマーを排出することができた。この排出ポリマー20gとメチルエチルケトン80gを室温で混合した結果、均一に溶解し、その後沈殿は生じなかった。
【産業上の利用可能性】
【0019】
本発明の製造方法は、プリント配線板や半導体封止材等の電気電子材料の分野で好適に利用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
数平均分子量1万未満のポリフェニレンエーテル(A)とクレゾール−ノボラック型エポキシ樹脂(B)を混合反応させてエポキシ変性ポリフェニレンエーテルを得る製造方法において、成分(A)の含有するアミン成分(C)の窒素原子が、成分(A)全量に対して10〜1000ppmであることを特徴とするエポキシ変性ポリフェニレンエーテルの製造方法。
【請求項2】
アミン成分(C)が、ジアミンを含むことを特徴とする請求項1に記載のエポキシ変性ポリフェニレンエーテルの製造方法。
【請求項3】
成分(A)の数平均分子量が、5,000以下であることを特徴とする請求項1または2のいずれかに記載のエポキシ変性ポリフェニレンエーテルの製造方法。
【請求項4】
成分(A)の分子鎖末端に有するフェノール性水酸基の数が、1分子鎖辺り平均1.3個以上4.0個以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のエポキシ変性ポリフェニレンエーテルの製造方法。

【公開番号】特開2006−225436(P2006−225436A)
【公開日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−37862(P2005−37862)
【出願日】平成17年2月15日(2005.2.15)
【出願人】(303046314)旭化成ケミカルズ株式会社 (2,513)
【Fターム(参考)】