説明

エポキシ樹脂用硬化剤組成物の製造方法、及び熱硬化性成形材料の製造方法

【課題】ナフトールの含有量の少ないエポキシ樹脂用硬化剤組成物を製造する方法、及び熱硬化性成形材料の製造方法を提供する。
【解決手段】ナフトールと、一般式(1)で表される縮合剤の1種以上とを反応させる工程(i)と、工程(i)で得られた反応生成物と、一般式(2)で表されるフェノール類の1種以上とを反応させる工程(ii)とを有し、工程(i)におけるナフトールと縮合剤との混合割合が、モル比で、縮合剤/ナフトール=1〜10であるエポキシ樹脂用硬化剤組成物の製造方法。一般式中、Y及びYは水酸基、メトキシ基又は塩素原子であり、相互に同じであっても異なっていてもよい。Xは化学式(3)又は化学式(4)で表される2価の連結基である。Rは水素原子又はメチル基である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エポキシ樹脂用硬化剤組成物の製造方法、及び熱硬化性成形材料の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子材料の分野においては、半導体チップや接続部材を種々の外部環境(温度、湿度、応力など)から保護するため、エポキシ樹脂、硬化剤等を含有する封止材料(熱硬化性成形材料)が用いられている。
近年、半導体の高集積化、高性能化等が進み、熱硬化性成形材料に対する要求特性が厳しくなっている。一方、環境面から鉛フリー半田への転換が求められており、半田リフロー温度が高くなってきている。また、難燃剤フリーの要求も増している。そのため、従来のパラキシリレン変性フェノール樹脂を含有する熱硬化性成形材料に比べて耐半田リフロー性、難燃性に優れる熱硬化性成形材料が求められている。
これらの要求を満足させるため、従来、ナフトールと、フェノール類と、縮合剤とを同時に仕込み、これらを反応させて得られるナフトール系アラルキル樹脂を含有する硬化剤組成物を用いてエポキシ樹脂を硬化させる方法が提案されている(たとえば、特許文献1、2参照)。
また、難燃性を得るため、フェノール類と、縮合剤としてビス(メトキシメチル)ビフェニル等のビフェニル化合物とを反応させて得られるビフェニルアラルキル樹脂を用いる方法が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平04−161419号公報
【特許文献2】特開平06−128361号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1、2に記載された技術においては、硬化剤にナフトール骨格を導入することで、熱硬化性成形材料の耐熱性と耐半田リフロー性の向上を図ることが可能である。
しかしながら、ナフトールは昇華性を有するため、半導体等の封止を行う場合、ナフトール系アラルキル樹脂を含有する硬化剤組成物中に未反応のナフトールが残存しているほど、そのナフトールが硬化時にガス化して臭気が強くなり、作業環境に悪影響を生じる、又は、ガス化したナフトールで成形機を汚染してしまうおそれがあった。
そのため、特許文献1、2に記載された方法においては、反応系内に残存する未反応のナフトールを除去する操作を要する。しかし、ナフトールは沸点が高いため、除去しにくい問題があった。
【0005】
さらに、ナフトール類とフェノール類と縮合剤とを同時に仕込む従来の硬化剤組成物の製造方法において、未反応のナフトールを極力減らすためには、縮合剤との反応性がナフトール類よりも大きく劣るフェノール類しか使用できない。そのため、該フェノール類としては、オルソクレゾールを使用せざるを得ず、オルソクレゾールを使用した場合、得られる熱硬化性成形材料の耐半田リフロー性は良好であるものの、エポキシ樹脂と硬化剤組成物との反応性が悪く、充分に硬化しにくいという問題があった。
【0006】
本発明は、上記事情を鑑みてなされたもので、使用する原料に制限がなく、未反応のナフトールの除去を目的とした操作を行わなくてもナフトールの含有量の少ないエポキシ樹脂用硬化剤組成物を製造する方法、及び熱硬化性成形材料の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、本発明は以下の構成を採用した。
すなわち、本発明のエポキシ樹脂用硬化剤組成物の製造方法は、ナフトールと、下記一般式(1)で表される縮合剤の1種以上とを反応させる工程(i)と、前記工程(i)で得られた反応生成物と、下記一般式(2)で表されるフェノール類の1種以上とを反応させる工程(ii)とを有し、前記工程(i)におけるナフトールと前記縮合剤との混合割合が、モル比で、縮合剤/ナフトール=1〜10であることを特徴とする。
【0008】
【化1】

[式中、Y及びYは、それぞれ水酸基、メトキシ基又は塩素原子であり、相互に同じであっても異なっていてもよい。Xは下記の化学式(3)又は化学式(4)で表される2価の連結基である。Rは水素原子又はメチル基である。]
【0009】
【化2】

【0010】
本発明のエポキシ樹脂用硬化剤組成物の製造方法においては、前記工程(ii)における前記フェノール類の使用量が、前記工程(i)におけるナフトールの使用量に対し、モル比で5〜20倍であることが好ましい。
【0011】
また、本発明の熱硬化性成形材料の製造方法は、前記本発明のエポキシ樹脂用硬化剤組成物の製造方法により製造されたエポキシ樹脂用硬化剤組成物と、エポキシ樹脂とを混合することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、使用する原料に制限がなく、未反応のナフトールの除去を目的とした操作を行わなくてもナフトールの含有量の少ないエポキシ樹脂用硬化剤組成物を製造する方法、及び熱硬化性成形材料の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<エポキシ樹脂用硬化剤組成物の製造方法>
本発明のエポキシ樹脂用硬化剤組成物の製造方法は、ナフトールと、一般式(1)で表される縮合剤の1種以上とを反応させる工程(i)と、前記工程(i)で得られた反応生成物と、一般式(2)で表されるフェノール類の1種以上とを反応させる工程(ii)とを有する方法である。
【0014】
[工程(i)]
工程(i)では、ナフトールと、一般式(1)で表される縮合剤の1種以上とを反応させる。
【0015】
(ナフトール)
ナフトールとしては、1−ナフトール、2−ナフトール又はこれらの混合物が用いられる。
【0016】
(縮合剤)
工程(i)では、下記一般式(1)で表される縮合剤の1種以上が用いられる。
【0017】
【化3】

[式中、Y及びYは、それぞれ水酸基、メトキシ基又は塩素原子であり、相互に同じであっても異なっていてもよい。Xは下記の化学式(3)又は化学式(4)で表される2価の連結基である。]
【0018】
【化4】

【0019】
前記式(1)中、Y及びYは、ナフトールとの反応性とその反応の制御のしやすさの観点から、相互に同じであることが好ましい。
前記式(1)で表される縮合剤のなかで好適なものとしては、下記の化学式で表されるものが挙げられる。
【0020】
【化5】

【0021】
上記のなかでも、ナフトールとの反応性がより良好で、その反応を制御しやすいことから、Y及びYがいずれもメトキシ基であるもの、すなわち化学式(1−31)で表されるもの(パラキシレングリコールジメチルエーテル)、化学式(1−41)で表されるもの(4,4’−ビス(メトキシメチル)ビフェニル)が好ましい。
【0022】
また、該縮合剤としては、パラキシレングリコールジメチルエーテルと4,4’−ビス(メトキシメチル)ビフェニルとの混合物を用いることも好ましい。該混合物を用いることにより、耐熱性成形材料(硬化後)とした際、耐熱性が高まる。また、難燃性も向上する。
該混合物においては、該混合物中の4,4’−ビス(メトキシメチル)ビフェニルの含有割合が高くなるほど、耐熱性と難燃性が高まる。
【0023】
(ナフトールと縮合剤との反応)
ナフトールと前記式(1)で表される縮合剤とを反応させる際、ナフトールと該縮合剤との混合割合は、モル比で、縮合剤/ナフトール=1〜10であり、1〜5であることが好ましい。
このモル比が下限値以上であれば、未反応のナフトールがほとんど残存しなくなり、一方、このモル比が上限値以下であれば、未反応の縮合剤が過剰に残存しにくい。
ここでの「モル比」とは、工程(i)で反応に用いるナフトールと縮合剤のそれぞれの使用量(仕込み量)をモル換算した比率を意味する。
【0024】
ナフトールと前記式(1)で表される縮合剤とを反応させる際の反応温度は、60〜170℃であることが好ましく、90〜130℃であることがより好ましい。反応温度を好ましい下限値以上にすることで、反応がスムーズに、充分に進行する。一方、反応温度を好ましい上限値以下にすることで、反応を容易に制御することができる。
反応時間は0.5〜6時間であることが好ましく、1〜3時間であることがより好ましい。反応時間が好ましい下限値以上であれば、反応が充分に進行する。一方、反応時間を好ましい上限値以下にすることで、生産性の低下を抑制できる。
【0025】
ナフトールと前記式(1)で表される縮合剤との反応は、酸性触媒の存在下で行うことが好ましい。
酸性触媒としては、塩酸、硫酸、リン酸、蟻酸、酢酸、蓚酸、酪酸、乳酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、硼酸、又は塩化亜鉛もしくは酢酸亜鉛などの金属との塩等が挙げられる。前記酸性触媒は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を併用してもよい。
【0026】
ナフトールと前記式(1)で表される縮合剤との反応においては、副生成物として水、メタノール又は塩素ガスが生成する。これらの副生成物は、工程(i)における反応を真空下で行うことによって、反応系外へ除去することが好ましい。水、メタノールを除去することにより、工程(i)での反応が促進する。塩素ガスを除去することにより、硬化剤組成物中の残留塩素量の増加が抑制される。
工程(i)における反応を行う際の圧力は、−87.8〜−61.3kPaに制御することが好ましい。
【0027】
[工程(ii)]
工程(ii)では、前記工程(i)で得られた反応生成物と、一般式(2)で表されるフェノール類の1種以上とを反応させる。
【0028】
(フェノール類)
工程(ii)では、下記一般式(2)で表されるフェノール類の1種以上が用いられる。
【0029】
【化6】

[式中、Rは水素原子又はメチル基である。]
【0030】
前記式(2)において、Rがメチル基の場合、その結合位置はオルト位、メタ位、又はパラ位のいずれでもよい。
なかでも、前記式(2)で表されるフェノール類としては、安価であり、反応性と難燃性に優れ、大量に使用しても容易にリサイクル可能であることから、フェノール(Rが水素原子であるもの)が最も好ましい。
【0031】
(工程(i)の反応生成物とフェノール類との反応)
前記式(2)で表されるフェノール類の使用量は、工程(i)におけるナフトールの使用量(仕込み量)を基準として、モル比で、フェノール類/ナフトール=5〜20であることが好ましく、6〜10であることがより好ましい。
このモル比が好ましい下限値以上であれば、工程(i)で得られた反応生成物と、フェノール類との反応が充分に進行し、硬化剤組成物の構造中に含まれるナフトールの割合が高くなりすぎず、硬化剤組成物の高分子量化が抑制される。これにより、分散度の小さい硬化剤組成物が得られやすくなるとともに、硬化剤組成物の軟化点と溶融粘度がより低減する。また、熱硬化性成形材料(硬化前)とした際、流動性が向上する。一方、このモル比が好ましい上限値以下であれば、余剰のフェノール類が少なく、生産性の低下を抑制できる。
ここでの「モル比」とは、工程(ii)で用いるフェノール類と、工程(i)で用いるナフトールのそれぞれの使用量(仕込み量)をモル換算した比率を意味する。
【0032】
工程(i)で得られた反応生成物と、フェノール類とを反応させる際の反応温度は、80〜200℃であることが好ましく、130〜170℃であることがより好ましい。反応温度を好ましい下限値以上にすることで、反応がスムーズに、充分に進行する。一方、反応温度を好ましい上限値以下にすることで、反応を容易に制御することができる。
反応時間は0.5〜6時間であることが好ましく、1〜3時間であることがより好ましい。反応時間が好ましい下限値以上であれば、反応が充分に進行する。一方、反応時間を好ましい上限値以下にすることで、生産性の低下を抑制できる。
【0033】
工程(i)で得られた反応生成物と、フェノール類との反応は、酸性触媒の存在下で行うことが好ましい。酸性触媒としては、工程(i)についての説明のなかで例示した酸性触媒と同様のものが挙げられる。
【0034】
工程(i)で得られた反応生成物と、フェノール類との反応においては、副生成物として水、メタノール又は塩素ガスが生成する。これらの副生成物は、工程(ii)における反応を常圧下で行うことによって、反応系外へ除去することが好ましい。水、メタノールを除去することにより、工程(ii)での反応が促進する。塩素ガスを除去することにより、硬化剤組成物中の残留塩素量の増加が抑制される。
【0035】
所定の反応温度、反応時間でフェノール類を反応させた後、95℃以下まで冷却して中和を行うことが好ましい。該中和により、反応に用いた酸性触媒の塩が形成されて、酸性触媒を反応系から除去するのが容易となる。
また、フェノール類を反応させて、中和を行った後、必要に応じて、未反応のフェノール類等を除去し、水洗を行い、又は濃縮等を行うことにより、最終的に硬化剤組成物を得てもよい。
未反応のフェノール類等を除去する際の圧力は、−98.6〜−93.3kPaに制御することが好ましく、未反応のフェノール類等を除去する際の温度は、170〜190℃に制御することが好ましく、未反応のフェノール類等の除去を行う時間は、30〜120分間とすることが好ましい。
【0036】
(エポキシ樹脂用硬化剤組成物)
本発明のエポキシ樹脂用硬化剤組成物の製造方法においては、分散度(Mw/Mn)の小さい硬化剤組成物が製造される。具体的には、分散度(Mw/Mn)が1.25〜1.55の範囲である硬化剤組成物が容易に得られる。
また、本発明のエポキシ樹脂用硬化剤組成物の製造方法においては、未反応のナフトールの除去を目的とした操作を行わなくても、未反応のナフトール含有量の少ない硬化剤組成物が製造される。具体的には、未反応のナフトール含有量が1質量%以下の範囲である硬化剤組成物が容易に得られる。
ここで「分散度(Mw/Mn)」と「未反応のナフトール含有量」は、標準物質をポリスチレンとしたGPC法により測定される値をそれぞれ示す。なお、Mwは質量平均分子量、Mnは数平均分子量をそれぞれ意味する。
【0037】
また、本発明のエポキシ樹脂用硬化剤組成物の製造方法においては、軟化点又は溶融粘度が従来のものと同程度又はそれ以上に低い硬化剤組成物が製造される。
具体的には、軟化点が60〜90℃の範囲、好ましくは65〜90℃の範囲である硬化剤組成物が容易に得られる。また、溶融粘度が50〜300mPa・sの範囲である硬化剤組成物が容易に得られる。
ここで「軟化点」は、JIS K 6910に準拠した方法により測定される値を示す。
「溶融粘度」は、粘度計(ブルックフィールド社製のCAP2000 VISCOMETER)を使用し、温度条件を150℃に設定することにより測定される値を示す。
【0038】
本発明のエポキシ樹脂用硬化剤組成物の製造方法により製造される、エポキシ樹脂用硬化剤組成物の構造中に含まれるナフトールとフェノールとの割合は、モル比で、ナフトール/フェノール=1/9〜4/6であることが好ましく、2/8〜3/7であることがより好ましい。
該モル比において、ナフトールの占める割合が好ましい下限値以上であると、熱硬化性成形材料(硬化後)とした際、耐熱性、耐湿性が向上する。一方、ナフトールの占める割合が好ましい上限値以下であると、硬化剤組成物の軟化点と溶融粘度がより低減する。また、熱硬化性成形材料(硬化前)とした際、流動性が向上する。
ここで「硬化剤組成物の構造中に含まれるナフトールとフェノールとの混合割合」は、13C−NMRを使用して測定される、ナフトール/フェノールのモル比率を示す。
【0039】
<熱硬化性成形材料の製造方法>
本発明の熱硬化性成形材料の製造方法は、前記本発明のエポキシ樹脂用硬化剤組成物の製造方法により製造されたエポキシ樹脂用硬化剤組成物と、エポキシ樹脂とを混合することにより熱硬化性成形材料を製造する方法である。
【0040】
(エポキシ樹脂)
エポキシ樹脂としては、フェノールノボラック型、クレゾールノボラック型、ビスフェノールA型、ビフェニル型等の従来公知のものが挙げられる。
【0041】
(熱硬化性成形材料)
エポキシ樹脂とエポキシ樹脂用硬化剤組成物との混合割合は、要求される特性(耐熱性、耐湿性、流動性、耐半田リフロー性など)に優れることから、エポキシ樹脂中のエポキシ基当量と、硬化剤組成物中の水酸基当量とが、当量比で、水酸基/エポキシ基=0.8〜1.2であることが好ましく、0.9〜1であることがより好ましい。
【0042】
熱硬化性成形材料は、エポキシ樹脂とエポキシ樹脂用硬化剤組成物以外に、その他成分を含有してもよい。
その他成分としては、充填剤(フィラー)、硬化促進剤、離型剤、表面処理剤、着色剤、可撓性付与剤などが挙げられる。
【0043】
充填剤(フィラー)としては、結晶性シリカ粉、溶融性シリカ粉、石英ガラス粉、タルク、ケイ酸カルシウム粉、ケイ酸ジルコニウム粉、アルミナ粉、炭酸カルシウム粉等が挙げられ、結晶性シリカ粉、溶融性シリカ粉が好ましい。
熱硬化性成形材料中の充填剤の含有割合は75〜95質量%であることが好ましく、80〜90質量%であることがより好ましい。充填剤の含有割合が好ましい下限値以上であれば、硬化の際、熱膨張の発生が抑制される。一方、充填剤の含有割合が好ましい上限値以下であれば、充分な流動性が得られ、成形性が向上する。本発明の硬化剤組成物を用いると、従来よりも多量の充填剤を安定に配合することができる。
【0044】
硬化促進剤としては、トリフェニルホスフィン、トリス−2,6−ジメトキシフェニルホスフィン、トリ−p−トリルホスフィン、亜リン酸トリフェニルなどのリン化合物;2−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾールなどのイミダゾール類;2−ジメチルアミノメチルフェノール、ベンジルジメチルアミン、α−メチルベンジルメチルアミンなどの三級アミン類;1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7の有機酸塩類などが挙げられる。
離型剤としては、たとえばカルナバワックス等の各種ワックス類などが挙げられる。
表面処理剤としては公知のシランカップリング剤など、着色剤としてはカーボンブラックなど、可撓性付与剤としてはシリコーン樹脂、ブタジエン−アクリロニトリルゴムなど、がそれぞれ挙げられる。
【0045】
熱硬化性成形材料の硬化は、温度を100〜200℃に制御して行うことが好ましい。
硬化操作の一例として、いったん前記の好適な温度で30秒間以上、1時間以下の硬化を行った後、前記の好適な温度で1〜20時間の後硬化を行う方法が挙げられる。
【0046】
本発明のエポキシ樹脂用硬化剤組成物の製造方法においては、以下に示す合成経路で、下記の化学式(Z1)で表される構成単位と、化学式(Z2)で表される構成単位とがランダムに重合した重合体を含有する硬化剤組成物が製造されていると考えられる。
なお、該合成経路では、主成分のみを示している。以下、本明細書においては、式(1)で表される化合物を「化合物(1)」と呼ぶものとし、他の化学式で表される化合物についても同様に呼ぶものとする。また、化学式(Z1)で表される構成単位を「構成単位(Z1)」と呼ぶものとし、他の化学式で表される構成単位についても同様に呼ぶものとする。
【0047】
【化7】

[式中、Y、Y、X、Rは、それぞれ上記式(1)、(2)におけるものと同じである。Q及びQは、それぞれ下記の化学式(5)又は化学式(6)で表される1価の基であり、相互に同じであっても異なっていてもよい。mは構成単位(Z1)の繰返し数、nは構成単位(Z2)の繰返し数をそれぞれ示す。ただし、構成単位(Z1)と構成単位(Z2)とはランダムに重合している。]
【0048】
【化8】

【0049】
まず、工程(i)においては、ナフトールと、縮合剤として化合物(1)とが反応することにより、化合物(Z0)が主に得られる。化合物(Z0)以外にも、縮合剤の両末端(Y,Y)にナフトールが置換したもの、[−(ナフトール)−CH−X−CH−]単位の繰返し構造を有するもの等が得られる(以下工程(i)で得られるものをまとめて「化合物(Z0)等」という)。最初の工程(i)で、ナフトールと縮合剤とが所定の混合割合で反応することにより、ナフトールのほとんど全てが消費される。そのため、本発明においては、未反応のナフトールの除去を目的とした操作(水蒸気蒸留等)を行う必要がない。
次いで、工程(ii)において、化合物(Z0)等と、フェノール類として化合物(2)とが反応することにより、構成単位(Z1)と構成単位(Z2)とがランダムに重合した重合体を含有する硬化剤組成物が製造される。このように、ナフトールと縮合剤とを反応させた後で、フェノール類を配合して反応が行われるため、縮合剤に対する反応性の高いフェノールを用いた場合であっても、工程(ii)での反応によって未反応のナフトールが残存することはない。
したがって、本発明のエポキシ樹脂用硬化剤組成物の製造方法によれば、使用する原料に制限がなく、未反応のナフトールの除去を目的とした操作を行わなくてもナフトールの含有量の少ないエポキシ樹脂用硬化剤組成物を製造することができる。
かかる製造方法で得られたエポキシ樹脂用硬化剤組成物とエポキシ樹脂とを混合して調製される熱硬化性成形材料は、半導体等の封止の際、臭気が強まることはなく、作業環境に悪影響を生じたり、成形機を汚染したりするおそれがない。また、パッケージにクラックを生じにくい。
【0050】
さらに、本発明の製造方法で得られたエポキシ樹脂用硬化剤組成物を用いてエポキシ樹脂を硬化させることによって、耐熱性、耐湿性、流動性及び耐半田リフロー性がいずれも良好な熱硬化性成形材料を調製できる。
【実施例】
【0051】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
<評価>
本実施例において、硬化剤組成物についての分散度(Mw/Mn)、軟化点、溶融粘度、未反応のナフトール含有量、及び構造中のナフトール/フェノールのモル比率は、以下の方法によりそれぞれ測定した。また、熱硬化性成形材料についての流動性(スパイラルフロー)、ガラス転移温度、吸水率、熱時貯蔵弾性率、耐半田リフロー性及び難燃性は、以下の方法によりそれぞれ測定した。
【0052】
[分散度(Mw/Mn)]
硬化剤組成物の分散度(Mw/Mn)は、下記のGPC測定装置とカラムを使用し、標準物質をポリスチレンとして測定した。
GPC測定装置:東ソー社製のHLC8120GPC。
カラム:TSKgel G3000H+G2000H+G2000H。
【0053】
[軟化点]
硬化剤組成物の軟化点(℃)は、JIS K 6910に準拠した方法により測定した。
【0054】
[溶融粘度]
硬化剤組成物の溶融粘度(mPa・s)は、粘度計(ブルックフィールド社製のCAP2000 VISCOMETER)を使用し、温度条件を150℃に設定することにより測定した。
【0055】
[未反応のナフトール含有量]
硬化剤組成物に含まれる未反応のナフトール含有量(質量%)は、GPC測定装置(東ソー社製のHLC8120GPC)を使用し、標準物質をポリスチレンとして測定した。
【0056】
[構造中のナフトール/フェノールのモル比率]
硬化剤組成物の構造中に含まれるナフトールとフェノールとの割合を、13C−NMRを使用して、ナフトール/フェノールのモル比率として測定した。
【0057】
[流動性(スパイラルフロー)]
熱硬化性成形材料の流動性(スパイラルフロー)は、JIS K 6910に準拠した方法により測定した。
この流動性は、熱硬化性成形材料(硬化前)が溶融してから硬化するまでに流れた流動長さ(cm)を指標としていることから、該流動長さが長いほど流動性が高く、成形しやすいことを意味する。
【0058】
[ガラス転移温度]
熱硬化性成形材料(硬化後)のガラス転移温度(℃)は、熱硬化性成形材料(硬化前)をトランスファー成形(175℃−120秒間)することによって作製した試験片(幅2mm×長さ30mm×厚さ1mm)を180℃−5時間で後硬化させたものについて、粘弾性スペクトロメーター(セイコーインスツルーメンツ製のDMS110)を使用し、10℃/分の昇温速度で30〜300℃の範囲を測定することにより求めた。
このガラス転移温度が高いほど、耐熱性に優れていることを意味する。
【0059】
[吸水率]
熱硬化性成形材料(硬化後)の吸水率(%)は、熱硬化性成形材料(硬化前)をトランスファー成形(175℃−120秒間)することによって作製した吸水率評価用の試験片(直径50mm、厚さ3mm)を180℃−5時間で後硬化させたものについて、一定量の純水を入れたプレッシャークッカーを使用し、121℃の条件下で20時間経過前後の質量変化を測定することにより算出した。
この吸水率が小さいほど、耐湿性に優れていることを意味する。
【0060】
[熱時貯蔵弾性率]
熱硬化性成形材料(硬化後)の熱時貯蔵弾性率(GPa)は、熱硬化性成形材料(硬化前)をトランスファー成形(175℃−120秒間)することによって作製した試験片(幅2mm×長さ30mm×厚さ1mm)を180℃−5時間で後硬化させたものについて、粘度スペクトロメーター(セイコーインスツルーメンツ製のDMS110)を使用し、10℃/分の昇温速度で30〜300℃の範囲を測定することにより、ガラス転移温度後の弾性率を求めた。
この弾性率が低いほど、耐半田リフロー性に優れていることを意味する。
【0061】
[耐半田リフロー性]
耐半田リフロー性試験用にタブレット化した熱硬化性成形材料(硬化後)を使用し、4,2アロイフレーム上に2mm×2mm×1mmのシリコンチップを搭載した模擬素子を用いて、トランスファー成形、注型することにより模擬素子を封止した。
この封止された模擬素子を、260℃の半田浴に10秒間2回浸漬した後、超音波顕微鏡を用いて、シリコンチップと熱硬化性成形材料との界面の剥離又はクラックの状態について観察した。
前記の浸漬前後で変化しないものを○、浸漬前後で剥離又はクラックの発生が認められたものを×として評価した。
【0062】
[難燃性]
熱硬化性成形材料(硬化後)の難燃性は、熱硬化性成形材料(硬化前)をトランスファー成形(175℃−120秒間)することによって作製した難燃性評価用の試験片(幅13mm×長さ125mm×厚さ3.2mm)を180℃−5時間で後硬化させたものに対して、UL94に規定された20mm炎垂直燃焼試験を行い、UL94 V−0規格の判定基準に従って評価した。
【0063】
<硬化剤組成物の製造例>。
(実施例1)
[工程(i)]
温度計、撹拌機及び冷却管を備えた内容量1Lのガラス製フラスコに、1−ナフトール72g(0.5mol)と、パラキシレングリコールジメチルエーテル(PXDM)166g(1.0mol)とを入れ、この溶液にパラトルエンスルホン酸0.6gを添加し、110℃で保持しながら2時間反応させた。このとき発生するメタノールは、反応を行いながら系外へ真空下(−74.6kPa)で除去した。
[工程(ii)]
次に、フェノール338.4g(3.6mol)を添加し、さらに150℃にて1.5時間反応させた。このとき発生するメタノールは、常圧下で該反応を行いながら系外へ除去した。
反応終了後95℃まで冷却し、48質量%KOH水溶液で中和した。その後、185℃、真空下(−94.6kPa)で未反応のフェノール等を除去し、水洗、濃縮を行うことにより硬化剤組成物(A)を得た。
【0064】
(実施例2)
1−ナフトールを2−ナフトールに変更した以外は実施例1と同様の操作を行い、硬化剤組成物(B)を得た。
【0065】
(実施例3)
[工程(i)]
温度計、撹拌機及び冷却管を備えた内容量1Lのガラス製フラスコに、2−ナフトール72g(0.5mol)と、PXDM41.5g(0.25mol)と、4,4’−ビス(メトキシメチル)ビフェニル(BMMB)181.5g(0.75mol)とを入れ、この溶液にパラトルエンスルホン酸0.6gを添加し、110℃で保持しながら2時間反応させた。このとき発生するメタノールは、反応を行いながら系外へ真空下(−74.6kPa)で除去した。
[工程(ii)]
次に、フェノール338.4g(3.6mol)を添加し、さらに150℃にて1.5時間反応させた。このとき発生するメタノールは、常圧下で該反応を行いながら系外へ除去した。
反応終了後95℃まで冷却し、48質量%KOH水溶液で中和した。その後、185℃、真空下(−94.6kPa)で未反応のフェノール等を除去し、水洗、濃縮を行うことにより硬化剤組成物(C)を得た。
【0066】
(実施例4)
[工程(i)]
温度計、撹拌機及び冷却管を備えた内容量1Lのガラス製フラスコに、2−ナフトール72g(0.5mol)と、PXDM83g(0.5mol)と、BMMB121g(0.5mol)とを入れ、この溶液にパラトルエンスルホン酸0.6gを添加し、110℃で保持しながら2時間反応させた。このとき発生するメタノールは、反応を行いながら系外へ真空下(−74.6kPa)で除去した。
[工程(ii)]
次に、フェノール338.4g(3.6mol)を添加し、さらに150℃にて1.5時間反応させた。このとき発生するメタノールは、常圧下で該反応を行いながら系外へ除去した。
反応終了後95℃まで冷却し、48質量%KOH水溶液で中和した。その後、185℃、真空下(−94.6kPa)で未反応のフェノール等を除去し、水洗、濃縮を行うことにより硬化剤組成物(D)を得た。
【0067】
(実施例5)
[工程(i)]
温度計、撹拌機及び冷却管を備えた内容量1Lのガラス製フラスコに、2−ナフトール72g(0.5mol)と、PXDM124.5g(0.75mol)と、BMMB60.5g(0.25mol)とを入れ、この溶液にパラトルエンスルホン酸0.6gを添加し、110℃で保持しながら2時間反応させた。このとき発生するメタノールは、反応を行いながら系外へ真空下(−74.6kPa)で除去した。
[工程(ii)]
次に、フェノール338.4g(3.6mol)を添加し、さらに150℃にて1.5時間反応させた。このとき発生するメタノールは、常圧下で該反応を行いながら系外へ除去した。
反応終了後95℃まで冷却し、48質量%KOH水溶液で中和した。その後、185℃、真空下(−94.6kPa)で未反応のフェノール等を除去し、水洗、濃縮を行うことにより硬化剤組成物(E)を得た。
【0068】
(実施例6)
[工程(i)]
温度計、撹拌機及び冷却管を備えた内容量1Lのガラス製フラスコに、2−ナフトール115g(0.8mol)と、PXDM166g(1.0mol)とを入れ、この溶液にパラトルエンスルホン酸0.5gを添加し、110℃で保持しながら2時間反応させた。このとき発生するメタノールは、反応を行いながら系外へ真空下(−74.6kPa)で除去した。
[工程(ii)]
次に、フェノール112.8g(1.2mol)を添加し、さらに150℃にて1.5時間反応させた。このとき発生するメタノールは、常圧下で該反応を行いながら系外へ除去した。
反応終了後100℃まで冷却し、48質量%KOH水溶液で中和した。その後、185℃、真空下(−94.6kPa)で未反応のフェノール等を除去し、水洗、濃縮を行うことにより硬化剤組成物(F)を得た。
【0069】
(比較例1)
温度計、撹拌機及び冷却管を備えた内容量1Lのガラス製フラスコに、フェノール235g(2.5mol)と、PXDM166g(1.0mol)とを入れ、この溶液にパラトルエンスルホン酸0.4gを添加し、150℃にて3時間反応させた。このとき発生するメタノールは、常圧下で該反応を行いながら系外へ除去した。
反応終了後95℃まで冷却し、48質量%KOH水溶液で中和した。その後、185℃、真空下(−94.6kPa)で未反応の原料等を除去し、水洗、濃縮を行うことにより硬化剤組成物(G)を得た。
【0070】
(比較例2)
温度計、撹拌機及び冷却管を備えた内容量1Lのガラス製フラスコに、2−ナフトール108g(0.6mol)と、フェノール244.4g(2.6mol)と、PXDM166g(1mol)とを入れ、この溶液にパラトルエンスルホン酸0.5gを添加し、110℃で保持しながら2時間反応させ、続けて、さらに150℃にて1.5時間反応させた。このとき発生するメタノールは、反応を行いながら系外へ真空下(−74.6kPa)で除去した。
反応終了後95℃まで冷却し、48質量%KOH水溶液で中和した。その後、185℃、真空下(−94.6kPa)で未反応のフェノール等を除去し、水洗、濃縮を行うことにより硬化剤組成物(H)を得た。
【0071】
各例で得られた硬化剤組成物について、分散度(Mw/Mn)、軟化点、溶融粘度、未反応のナフトール含有量、構造中のナフトール/フェノールのモル比率をそれぞれ測定した結果を表1に示す。
【0072】
【表1】

【0073】
表1の結果から、実施例1〜6で得られた硬化剤組成物(A)〜(F)は、いずれも未反応のナフトール含有量が1質量%未満であり、比較例2で得られた硬化剤組成物(H)に比べて非常に少ないことが確認できた。
また、実施例1〜6では、未反応のナフトールの除去を目的とした操作(水蒸気蒸留等)を行うことなく、簡便な方法で、ナフトールの含有量の少ない硬化剤組成物が得られている。
なお、実施例6で得られた硬化剤組成物(F)は分散度が大きく、高分子量体が他の例に比べて多く含まれていると考えられる。高分子量体になるほど、未反応のナフトールの除去が困難になるところ、実施例6においては、未反応のナフトールの除去を行うことなく、硬化剤組成物を得ることができた。
【0074】
また、実施例1〜2で得られた硬化剤組成物(A)、(B)は、比較例1で得られた硬化剤組成物(G)に比べて、分散度が小さく、溶融粘度も低く、軟化点は同程度であった。
【0075】
実施例1〜5と実施例6との対比から、フェノールの使用量を、ナフトールの使用量に対し、モル比で5〜20倍の範囲とすることにより、分散度の小さい硬化剤組成物が得られるとともに、硬化剤組成物の軟化点と溶融粘度の低減が図られることが分かる。これは、実施例1〜5は、実施例6に比べて、硬化剤組成物の構造中に含まれるナフトールの割合が少ないため、と考えられる。
【0076】
<熱硬化性成形材料の製造例>
(実施例7〜12、比較例3〜4)
表2に示す組成に従い、各原料を混合して熱硬化性成形材料を調製した。
エポキシ樹脂及び硬化剤組成物は、エポキシ樹脂中のエポキシ基当量と、硬化剤組成物中の水酸基当量との当量比が1となるように配合量を設定した。
使用した原料を以下に示す。
エポキシ樹脂:オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、日本化薬製の商品名「EOCN1020」。
球状シリカ:充填剤、龍森製の商品名「MSR−2212」。
トリフェニルホスフィン:硬化促進剤、試薬。
カルナバワックス:離型剤、日本ワックス製。
【0077】
[臭気の発生]
実施例7〜12で得られた熱硬化性成形材料(硬化後)においては、臭気の発生は認められず、比較例4で得られた熱硬化性成形材料(硬化後)においては、臭気の発生が認められた。
【0078】
各例で得られた熱硬化性成形材料について、流動性(スパイラルフロー)、ガラス転移温度、吸水率、熱時貯蔵弾性率、耐半田リフロー性、難燃性をそれぞれ測定した結果を表2に示す。
【0079】
【表2】

【0080】
表2の結果から、実施例8で得られた熱硬化性成形材料は、比較例4で得られた熱硬化性成形材料に比べて、流動性が良好であり、成形を容易に行うことができることが分かる。
また、実施例7、8で得られた熱硬化性成形材料は、比較例3で得られた熱硬化性成形材料に比べて、耐半田リフロー性が良好であり、難燃性も良好であることが分かる。
実施例8と実施例12との対比から、軟化点又は溶融粘度の低い、硬化剤組成物を用いた方が、得られる熱硬化性成形材料の流動性が高くなることが分かる。これは、実施例8では、高分子量化が抑制された硬化剤組成物が用いられているため、と考えられる。
【0081】
実施例7〜12で得られた熱硬化性成形材料は、比較例4で得られた熱硬化性成形材料と、ガラス転移温度が同程度又はそれよりも高い値を示していることから、耐熱性が良好であることが分かる。そのなかでも、実施例9〜11で得られた熱硬化性成形材料(ビフェニル構造を有する化合物を含む2種類の縮合剤を含有する硬化剤組成物を用いて得られたもの)は、特に耐熱性が良好であることが分かる。
また、実施例7〜12で得られた熱硬化性成形材料は、比較例4で得られた熱硬化性成形材料と、吸水率が同程度の値を示していることから、耐湿性が良好であることが分かる。
【0082】
実施例7〜8で得られた熱硬化性成形材料は、実施例9〜11で得られた熱硬化性成形材料に比べて流動性に優れ、耐湿性と耐半田リフロー性について同程度に良好であることが分かる。また、実施例7〜8で得られた熱硬化性成形材料は、比較例3で得られた熱硬化性成形材料に比べて、難燃性に優れていることが分かる。
このように、本発明の製造方法によれば、汎用のオルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂を用いて、耐半田リフロー性、難燃性等に優れた熱硬化性成形材料を得ることができる。また、要求される特性に応じて、縮合剤としてビフェニル化合物を用いる必要がなく、コストダウンも図れる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナフトールと、下記一般式(1)で表される縮合剤の1種以上とを反応させる工程(i)と、
前記工程(i)で得られた反応生成物と、下記一般式(2)で表されるフェノール類の1種以上とを反応させる工程(ii)とを有し、
前記工程(i)におけるナフトールと前記縮合剤との混合割合が、モル比で、
縮合剤/ナフトール=1〜10
であることを特徴とするエポキシ樹脂用硬化剤組成物の製造方法。
【化1】

[式中、Y及びYは、それぞれ水酸基、メトキシ基又は塩素原子であり、相互に同じであっても異なっていてもよい。Xは下記の化学式(3)又は化学式(4)で表される2価の連結基である。Rは水素原子又はメチル基である。]
【化2】

【請求項2】
前記工程(ii)における前記フェノール類の使用量が、前記工程(i)におけるナフトールの使用量に対し、モル比で5〜20倍である請求項1記載のエポキシ樹脂用硬化剤組成物の製造方法。
【請求項3】
請求項1記載のエポキシ樹脂用硬化剤組成物の製造方法により製造されたエポキシ樹脂用硬化剤組成物と、
エポキシ樹脂とを混合することを特徴とする熱硬化性成形材料の製造方法。

【公開番号】特開2012−97230(P2012−97230A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−247715(P2010−247715)
【出願日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【出願人】(000165000)群栄化学工業株式会社 (108)
【Fターム(参考)】