説明

エポキシ樹脂組成物及びその硬化物

【課題】ガラス転移点(Tg)が約200℃以上のエポキシ樹脂を提供する。
【解決手段】Pd型ベンゾオキサジン誘導体と芳香環を主鎖に含むエポキシ樹脂を、ベンゾオキサジン環に対するエポキシ基のモル比が0.3〜0.7となるように組み合わせることにより、ガラス転移点(Tg)が約200℃以上のエポキシ樹脂を提供することができ、さらに、高いガラス転移点(Tg)をもたらす架橋構造を構築するために有効な硬化促進剤。(a)下式


(式中、Xは−CH−、−C(CH−又は−SO−を表す。)で表されるベンゾオキサジン誘導体と(b)芳香環を主鎖に含むエポキシ樹脂とから成り、該ベンゾオキサジン誘導体が有するベンゾオキサジン環に対する、該エポキシ樹脂が有するエポキシ基のモル比が0.3〜0.7であるエポキシ樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ベンゾオキサジン誘導体とエポキシ樹脂とから成るエポキシ樹脂組成物及びこの組成物を加熱硬化してなるエポキシ樹脂硬化物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、プリント配線板用銅張積層板、多層配線板用接着剤、半導体用封止材料、半導体実装用接着剤、半導体搭載用モジュール、あるいは自動車用、航空機用、建築部材等に用いられる部品などに用いられる硬化性材料において、高温・高湿下での安定性や信頼性に優れた耐熱性材料が求められている。更に、エネルギー分野において、燃料電池や各種二次電池などの研究開発が進展し、耐熱性材料が必要となってきている。
特に、ハイブリッドや電気自動車、分散電源では、インバーターを中心にパワーデバイスが多用され、かつそのパワー密度も飛躍的に大きくなっている。したがって、200℃以上の高温で動作するシリコンカーバイト(SiC)デバイスの出現も予想されている。また、通常の半導体チップを使用するエレクトロニクスコントロールユニット(ECU)も社室内から環境の厳しいエンジンルーム内へと搭載されるため、やはり過酷な条件に耐えうる耐熱性が要求される。
このような要求に対して、ベンゾオキサジン環構造含有化合物をエポキシ樹脂と反応させた耐熱性樹脂が検討されている(特許文献1、2、非特許文献1など)。
また、ベンゾオキサジン環構造含有化合物とDGEBAなどのエポキシ樹脂とを化学量論量で反応させた場合には未反応物が残存して、理想的な架橋構造を構成することを阻害するので、化学量論量よりもエポキシ樹脂をリッチにすることにより、硬化後の樹脂が高いガラス転移点(Tg)を与えることが報告されている(非特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−147165
【特許文献2】特開2008−94961
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】成形加工, 第19巻, 第10号, 634-640 (2007)
【非特許文献2】J. Appl. Polym. Sci., Vol.61, p1595 (1996)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、以上のように報告されているベンゾオキサジン環構造含有化合物とエポキシ樹脂とから成る組成物の硬化物は、高い耐熱性を目的としているにも関わらず、ガラス転移点(Tg)が約200℃以上のエポキシ樹脂が提供されていないのが現状である。
そこで、本発明者らは、ガラス転移点(Tg)が約200℃以上のエポキシ樹脂を提供することを目的とした。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、約200℃以上のガラス転移点(Tg)を有するエポキシ樹脂硬化物を達成するための手段として、ベンゾオキサジン環構造含有化合物とエポキシ樹脂との共重合体の架橋構造について研究を重ねた結果、特定構造のベンゾオキサジン誘導体と芳香環を主鎖に含むエポキシ樹脂を、ベンゾオキサジン環に対するエポキシ基のモル比が0.3〜0.7となるように組み合わせることにより、ガラス転移点(Tg)が約200℃以上のエポキシ樹脂硬化物を提供することができることを見出し、さらに、高いガラス転移点(Tg)をもたらす架橋構造を構築するために有効な硬化促進剤を選択することに成功した。
すなわち、本発明は、(a)下式
【化1】

(式中、Xは−CH−、−C(CH−又は−SO−を表す。)で表されるベンゾオキサジン誘導体と(b)芳香環を主鎖に含むエポキシ樹脂とから成り、該ベンゾオキサジン誘導体が有するベンゾオキサジン環に対する、該エポキシ樹脂が有するエポキシ基のモル比が0.3〜0.7であるエポキシ樹脂組成物である。
【0007】
また本発明は、このエポキシ樹脂組成物が、更に、下式
BF:HNR
(式中、式中、R及びRは、ぞれぞれ独立して、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、アリール基又はアラルキル基を表す。ただし、R及びRの両方が水素原子の場合を除く。また、R及びRは、結合する窒素原子と共同して、脂肪族の5又は6員環を形成してもよい。)で表される硬化促進剤を含むエポキシ樹脂組成物である。
また本発明は、このエポキシ樹脂組成物を加熱硬化することにより得られたエポキシ樹脂硬化物である。
【発明の効果】
【0008】
本発明のエポキシ樹脂組成物を硬化させた硬化物は、耐熱性、低熱膨張率、難燃性に優れ、硬化反応時に揮発性副生成物をほとんど生じない。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】ベンゾオキサジン誘導体とエポキシ樹脂の共重合体の硬化構造を示す図である。(1)はPd型ベンゾオキサジンとエポキシ樹脂の共重合体(PPd硬化構造)、(2)はFa型ベンゾオキサジンとエポキシ樹脂の共重合体(PFa硬化構造)を示す。
【図2】触媒を変えて硬化させたエポキシ樹脂組成物の示差走査熱分析チャートを示す図である。(1)硬化促進剤(BF3・NH2Et)を用いて、Pd型ベンゾオキサジンとDGEBA(エポキシ樹脂)のモル比を1/0(A)、1/1(B)、0/1(C)とした。(2)イミダゾール型硬化促進剤(2E4MZ-CN)を用いて、Pd型ベンゾオキサジンとNC3000(エポキシ樹脂)のモル比を1/0(D)、1/1(E)、0/1(F)とした。縦軸は吸熱、発熱エネルギーを示す。上凸が反応を表しピークが立ち上がったところから硬化反応が開始していることを示す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、ベンゾオキサジン誘導体とエポキシ樹脂とを含む。
本発明で用いるベンゾオキサジン誘導体は、分子中に2個のベンゾオキサジン環を含み、下式で表わされる(以下「Pd型ベンゾオキサジン」という場合がある。)。
【化1】

式中、Xは−CH−、−C(CH−又は−SO−、好ましくは−CH−を表す。
ベンゾオキサジンの硬化構造を図1に示す。Pd型ポリベンゾオキサジン(図1(1))は剛直な構造により架橋され、自由体積の小さい構造となっているために優れた熱的・機械的特性が得られると考えられる。一方、Fa型ベンゾオキサジン構造を有するポリベンゾオキサジン(図1(2))では、アリール基(図1において「a」で示す)が立体障害となり、Pd型ポリベンゾオキサジンよりも熱的・機械的特性が劣ると考えられる。
【0011】
本発明で用いられるエポキシ樹脂は、芳香環を主鎖に含む。この芳香環は、主鎖が、ビフェニル、ターフェニル、ナフタレン、アントラセンのような多環芳香族骨格を有するものが好ましい。
このようなエポキシ樹脂として、下記のようなエポキシ樹脂を例示できる。
(1)下式で表わされるエポキシ樹脂:
【化2】

【0012】
(2)下式で表わされるエポキシ樹脂:
【化3】

(式中、mは3〜10の整数を表す。)
【0013】
(3)下式で表わされるエポキシ樹脂:
【化4】

【0014】
(4)下式で表わされるエポキシ樹脂:
【化5】

(式中、nは0〜2を表す。)
【0015】
本発明のエポキシ樹脂組成物において、ベンゾオキサジン誘導体が有するベンゾオキサジン環に対する、エポキシ樹脂が有するエポキシ基のモル比は0.2〜0.7、好ましくは0.3〜0.6である。
ベンゾオキサジン誘導体の単独重合物はTg以上で軟化する問題がある。この比が0.2よりも小さい場合には、このような問題が起きやすく好ましくない。一方、この比が0.7よりも大きい場合には、未反応物が残存して、理想的な架橋構造を構成することを阻害し、その結果高い耐熱性を示すことができないので、好ましくない。
【0016】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、硬化物に低熱膨張率、高熱伝導性、高耐熱性などの特性を付与するために、無機系充填剤を含んでもよい。このような無機系充填剤として、例えば、シリカ、アルミナ、チッ化ケイ素、チッ化ホウ素、シリコンカーバイト、チッ化アルミニウム各種粉末状フィラーを挙げることができる。これらは1種あるいは2種以上を混合して用いてもよい。
【0017】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、さらに下式の硬化促進剤を含有することが好ましい。
BF:HNR
式中、R及びRは、ぞれぞれ独立して、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、アリール基又はアラルキル基を表す。ただし、R及びRの両方が水素原子の場合を除く。また、R及びRは、結合する窒素原子と共同して、脂肪族の5又は6員環を形成してもよい。アルキル基としては、炭素数が1〜4の直鎖又は分岐のアルキル基が好ましい。アリール基としては、フェニル基又はα若しくはβ−ナフチル基が好ましく、フェニル基がより好ましい。アラルキル基は、炭素数が1〜4の直鎖のアルキル基に、フェニル基又はα若しくはβ−ナフチル基、好ましくはフェニル基が結合したものが好ましい。置換基としては、ハロゲン原子が挙げられる。
このような化合物として、例えば、3フッ化ホウ素モノエチルアミン錯体、3フッ化ホウ素ジエチルアミン錯体、3フッ化ホウ素イソプロピルアミン錯体、3フッ化ホウ素クロロフェニルアミン錯体、3フッ化ホウ素ベンジルアミン錯体、3フッ化ホウ素アニリン錯体、またはこれらの混合物が挙げられる。
【0018】
後記の実施例17に示すように、本発明のエポキシ樹脂組成物をこの硬化促進剤を含有させて加熱硬化させると、ベンゾオキサジン誘導体の開環が優先的に起こり、生成するフェノール基がエポキシ基と反応して、架橋密度が高くなり、高い耐熱性を与えることになると考えられる。しかし、他の触媒、例えば、ベンゾオキサジン誘導体のみの重合に通常用いられているパラトルエンスルホン酸(TSA)やイミダゾール系等の硬化促進剤を用いた場合には、エポキシ樹脂の反応を優先的に触媒することになり、ベンゾオキサジン誘導体の開環が起こる前に、エポキシ樹脂が反応して、ベンゾオキサジン誘導体とエポキシ樹脂との共重合体が生成にくいと考えられ、その結果、高い耐熱性を得ることはできないと考えられる。
このような触媒を使う更なる利点として、硬化温度を低くしても、例えば、200℃から180℃に低減しても、適正な架橋構造を得ることができる。
【0019】
本発明のエポキシ樹脂組成物における、上記硬化促進剤の含有量は、通常0.5〜5.0phrである。
本発明のエポキシ樹脂組成物の硬化条件は、硬化促進剤を使用しない場合は200〜240℃、2〜5時間、硬化促進剤を使用する場合は170〜190℃、2〜5時間である。
【実施例】
【0020】
以下、実施例にて本発明を例証するが本発明を限定することを意図するものではない。
実施例および比較例において、以下の試料を用いた。
ベンゾオキサジン:
Pd型ベンゾオキサジン(下式6(1))(四国化成製)、Fa型ベンゾオキサジン(下式6(2))(四国化成製)
【化6】

【0021】
エポキシ樹脂:
ビスフェノールAジグリシジルエーテル(DGEBA)(ジャパンエポキシレジン製JER(r) 828、化2)、液晶性エポキシ樹脂(日本化薬製NC-3000、化3(n=2〜4))、ナフタレン型エポキシ樹脂(大日本インキ化学製EPICLON(r) HP-4032D、化4)、アントラセンジヒドリド型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン製JER(r) YX8800、化5(n=0.15))
【0022】
硬化促進剤:
三フッ化ホウ素モノエチルアミン錯体(以下「BF3・NH2Et」という。化7(1)、和光純薬工業製)、三フッ化ホウ素モノペンチルアミン錯体(以下「BF3・NH2C5H10」という。化7(2)、和光純薬工業製)、パラトルエンスルホン酸−水和物(以下「TSA」という。化7(3)、東京化成製)、1-シアノメチル-2-エチル-4-メチルイミダゾール(以下「2E4MZ-CN」という。化7(4)、四国化成製)、テトラフェニルホウホニウムテトラキス(4-メチルフェニル)ボレート(以下「TPP-MK」という。化7(5)、北興化学製TPP-MK)
【化7】

【0023】
実施例1〜8
Pd型ベンゾオキサジンと各種エポキシ樹脂(DGEBA, NC-3000, HP-4032D, YX8800)をそれぞれ表1に記載の配合割合で溶融混合し、溶融混合物を100℃に予備加熱しておいたシリコン注型板に注型し、100℃/30分脱気した。その後、200℃/4時間の加熱条件で硬化させ、室温まで自然冷却させた。物性測定用の試料は、得られた板状の硬化物をダイヤモンドカッターにより切り出し、サンドペーパー(#240、#800、#2000)で表面を研磨することにより作製した。
【0024】
実施例9〜16
本実施例では硬化促進剤を使用した。Pd型ベンゾオキサジンと各種エポキシ樹脂(DGEBA, HP-4032D, YX8800)を表1に記載の割合で溶融混合し、硬化促進剤(TSA又はBF3・NH2Et)をベンゾオキサジンに対して3.0phr添加した。溶融混合物を100℃に予備加熱しておいたシリコン注型板に注型し、100℃/30分脱気した。その後、180℃/4時間の加熱条件で硬化させ、室温まで自然冷却させた。物性測定用の試料は、得られた板状の硬化物をダイヤモンドカッターにより切り出し、サンドペーパー(#240、#800、#2000)で表面を研磨することにより作製した。
【0025】
比較例1〜2
Fa型ベンゾオキサジンと各種エポキシ樹脂(DGEBA, NC-3000)を表1に記載の割合で溶融混合し、溶融混合物を120℃に予備加熱しておいたシリコン注型板に注型し、120℃/30分脱気した。その後、200℃/4時間の加熱条件でそれぞれ単独で硬化させ、室温まで自然冷却させた。物性測定用の試料は、得られた板状の硬化物をダイヤモンドカッターにより切り出し、サンドペーパー(#240、#800、#2000)で表面を研磨することにより作製した。
【0026】
上記実施例1〜16と比較例1〜2で得られた硬化物の物性を表1に示す。
各物性は以下の方法で測定した:
動的粘弾性試験は、昇温速度5℃/min、周波数1Hz、空気中あるいは窒素冷却下で、試験片は4mm(縦)×10mm(横)×2mm(厚さ)に研磨したものを粘弾性測定装置(SIIテクノロジー社製DMS6100)を用いて測定した。tanδのα分散ピークにおける温度よりTgを求めた。
熱膨張率は、熱機械分析装置(島津製作所社製TMA-60)を用い、昇温速度5℃/min、圧縮法、荷重5g、窒素20ml/分の条件で、5mm(縦)×5mm(横)×10mm(厚さ)に研磨した試験片をファーストランでひずみを取り、その後セカンドランで熱膨張量を測定し、50〜100℃における熱膨張率を算出した。
曲げ試験は、JISK7203に基づき、3点曲げ試験片を用いて測定した。試験片の寸法は40〜41mm(長さ)×10mm(幅)×2mm(高さ)を用いた。オートグラフ装置(島津製作所社製AGS-5008)を用いてクロスヘッドのテストスピードは2mm/分で測定した。このS/Sカーブより、曲げ強度、曲げ弾性率、伸びを求めた。
【0027】
【表1】

表1に示すように、本願発明のエポキシ樹脂組成物の硬化物のTgは約200℃以上であり、優れた耐熱性を示しており、その他の物性も適正な範囲を示している。
【0028】
実施例17
本実施例では、ベンゾオキサジンとエポキシ樹脂の共重合に対する硬化促進剤の影響を調べた。
Pd型ベンゾオキサジンとエポキシ樹脂(DGEBA)をモル比1/0(図2(1)A)、1/1(図2(1)B)、0/1(図2(1)C)の配合割合で溶融混合し、硬化促進剤(BF3・NH2Et)をベンゾオキサジン及びエポキシ樹脂の合計に対して3.0phr添加した。このようにして作製した試料A〜Cについて、島津製作所製差動熱量測定装置DSC-60を用いて、昇温速度:5℃/分、窒素雰囲気下で加熱時の熱的挙動を調べた。
次に、Pd型ベンゾオキサジンとエポキシ樹脂(NC3000)をモル比1/0(図2(2)D)、1/1(図2(2)E)、0/1(図2(2)F)の配合割合で溶融混合し、硬化促進剤(2E4MZ-CN)をベンゾオキサジン及びエポキシ樹脂の合計に対して3.0phr添加し、上記と同様に試料D〜Fを作製し、DSC特性を測定した。
【0029】
硬化促進剤(BF3・NH2Et)を用いた場合には、図2(1)に示すように、エポキシ樹脂(DGEBA)単独の場合には(図2(1)C)、エポキシの反応が確認され、エポキシのカチオン重合が起こっていることが示唆された。しかし、ベンゾオキサジンが共存すると、エポキシのカチオン重合が確認されなくなり、ベンゾオキサジンの開環が起こってからベンゾオキサジンのフェノール性水酸基とエポキシが反応していると考えられる(図2(1)B)。これは、三フッ化ホウ素モノエチルアミン錯体のホウ素原子がベンゾオキサジンのN原子に吸着し、エポキシのカチオン重合に用いられなくなったと考えられる。
一方、イミダゾール型硬化促進剤(2E4MZ-CN)を用いた場合には、図2(2)に示すように、Pd型ベンゾオキサジンとエポキシ樹脂(NC3000)とを共重合させた場合(図2(1)E)、エポキシ樹脂(NC3000)を単独で硬化させた場合(図2(2)F)の140℃付近の発熱ピークが確認され、イミダゾール型硬化促進剤(2E4MZ-CN)がエポキシの重合のみの硬化を促進したものと考えられる。また、Pdの開環と思われる発熱が高温側で確認され、反応温度は低下しなかった。更に、Pd型ベンゾオキサジン単独で重合させた場合(図2(2)D)に比べて、開始温度、発熱ピーク共に10〜20℃下がっている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)下式
【化1】

(式中、Xは−CH−、−C(CH−又は−SO−を表す。)で表されるベンゾオキサジン誘導体と(b)芳香環を主鎖に含むエポキシ樹脂とから成り、該ベンゾオキサジン誘導体が有するベンゾオキサジン環に対する、該エポキシ樹脂が有するエポキシ基のモル比が0.3〜0.7であるエポキシ樹脂組成物。
【請求項2】
前記Xが−CH−を表す請求項1に記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項3】
前記芳香環を主鎖に含むエポキシ樹脂が下式
【化2】

、下式
【化3】

(式中、mは3〜10の整数を表す。)、下式
【化4】

又は下式
【化5】

(式中、nは0〜2を表す。)のいずれかで表わされる請求項1又は2に記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項4】
更に、下式
BF:HNR
(式中、R及びRは、ぞれぞれ独立して、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、アリール基又はアラルキル基を表す。ただし、R及びRの両方が水素原子の場合を除く。また、R及びRは、結合する窒素原子と共同して、脂肪族の5又は6員環を形成してもよい。)で表される硬化促進剤を含む請求項1〜3のいずれか一項に記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載のエポキシ樹脂組成物を加熱硬化することにより得られたエポキシ樹脂硬化物。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2010−254895(P2010−254895A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−109209(P2009−109209)
【出願日】平成21年4月28日(2009.4.28)
【出願人】(504182255)国立大学法人横浜国立大学 (429)
【出願人】(591243103)財団法人神奈川科学技術アカデミー (271)
【Fターム(参考)】