説明

エラストマー物品用バリヤー層

【課題】エラストマー物品中に気体バリヤー層、例えば圧力下に気体、空気を入れた膨張可能な物品中に組込まれるバリヤー層を形成するのに適した組成物。バリヤー層はタイヤに組み込まれて、酸素、その他のガス成分がタイヤを通ってマイグレートするのを防止する。
【解決手段】バリヤー層はエラストマーと、透過性を減らす粒子、例えばシリカと、ガラス遷移温度が比較的にテルペン炭化水素樹脂とから成る。テルペン炭化水素樹脂は組成物の加工性を改善し、バリヤー層の透過特性を改善するのにも役立つ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はエラストマー物品用バリヤー層に関するものである。
【背景技術】
【0002】
圧力下に気体、例えば空気を気密に保持する物品は種々作られている。そうした物品の例としてはタイヤ、バスケットボール、フットボール、その他の運動用ボール、膨張式ボート、エアマットレス等がある。これらの物品は一般に弾性の有る重合物質で作られている。例えばタイヤの場合には弾性ゴム材料、例えばスチレンブタジエン重合体で作られている。
【0003】
膨張可能な物品を作るのに用いる多くのエラストマー材料はある種の状況下で酸素のような気体に対してわずかに透過性を示す。従って、膨張可能な物品はそのままほっておくと通気性によって物品の性能を下げ、物品は時間とともにしぼんでいく。さらに、酸素が物品を通過してエラストマーと酸化反応し、エラストマーの特性に有害な効果を与える。例えばエラストマーが硬くなり、グレードが低下する傾向がある。
【0004】
そのため、膨張可能物品、例えばタイヤは一般に通気性を減らし、酸素が物品を通るのを抑制するためのインナーライナを有している。従来のインナーライナは例えばブチルゴムを含む組成物で作られている。しかし、生の状態のブチルゴムには気体に対する透過性がある程度残っている。従って、ブチルゴムを他の材料と組み合わせて、透過性をさらに減らすための多くの試みが成されている。例えばゴム材料に充填剤を加えてブチルゴムの通気性を改善する試みがある。
【0005】
しかし、材料の通気性を改善するためには多量の充填剤をブチルゴムに加える必要があるが、充填剤を多量に加えると、今度はゴムの機械特性に悪影響が及ぶ。例えばゴム材料が脆くなり、可撓性を失い、凝集力(コヘション)が低下する傾向にある。上記の効果はライナー材料の性能に悪影響を与えるだけでなく、材料の処理を難しくする。
ブチルゴムと充填剤との混合物の機械特性を改善するために、可塑剤を加える試みも行なわれている。しかし、オイルやワックスのような可塑剤を加えると一般にゴム組成の透水特性には対して充填剤も加えた効果を悪くする。
【0006】
従って、膨張可能な物品、例えばチューブのバリヤー層として働く組成物を改良するというニーズが存在する。特に、単に気体に対する透過性が比較的に低いというだけでなく、モジュラスおよび粘度が比較的に低く、加工が簡単にできるバリヤー層として使用可能なゴム組成物組成に対するニーズが存在する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は一般にエラストマーの物品の気体バリヤー層を形成することに適した組成物を提供する。本発明の一つの実施例ではエラストマー物品は膨張した物品、例えば、バリヤー層を含むタイヤである。例えば膨張した物品の内側ライニングを形成するバリヤー層は物品の壁を通って流入する気体、例えば酸素を抑制する。通気性を下げると物品の性能が改善し、物品を酸化反応から保護することもできる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一つの実施例では、組成物は例えば少なくとも一種のエラストマーと、透過性を減らす粒子と、ガラス遷移温度が比較的高いテルペン樹脂との混合物から成る。透過性を減らす粒子はエラストマーのマトリックス全体に分散させることができる。テルペン樹脂は約50℃以上のガラス遷移温度と約170℃以下の軟化点とを有する。テルペン樹脂は変性しない状態で組成物中に加えることができる。本発明で使用可能なテルペン樹脂の例はポリリモネン、ポリ(αまたはβ)ピネン)またはこれらの混合物である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明ではテルペン樹脂は組成物の加工性を増加させるのに十分な量だけ加えられる。特に、テルペン樹脂は組成物のモジュラスおよび粘度を下げて、エラストマー物品でバリヤー層として使用するフィルムを容易に成形できるようにする。別の実施例では、バリヤー層を形成した時にテルペン樹脂は組成物の通気性、例えば酸素透過性を減らす役目もする。
【0010】
テルペン炭化水素樹脂は脂肪族、環式または芳香族の樹脂にすることができる。テルペン樹脂は組成物中に約1〜約50phrの量で存在することができる。一つの実施例では、例えばテルペン樹脂は約5〜約20phrの量で組成物中に存在できる。
【0011】
テルペン炭化水素樹脂と組み合わる一種または複数のエラストマーはエラストマー物品中に組込んだ時に透過性を下げることができる任意のエラストマーまたはエラストマー混合物にすることができる。例えば、このエラストマーは天然ゴム、イソプレンゴムまたはジエンゴム、例えばスチレンブタジエンゴムにすることができる。さらに、エラストマーはブチレンポリマーまたはコポリマー単独か、ジエンゴムとの組合せにすることができる。一つの実施例では、エラストマーは例えばハロゲン化されたブチレンポリマーまたはコポリマーから成る。この実施例ではエラストマーは例えば臭素化されたポリイソブチレンか、臭素化されたイソブチレンメチルスチレンコポリマーから成ることができる。
【0012】
既に述べたように、本発明組成物はエラストマーおよび炭化水素樹脂に加えて、エラストマーのマトリックス全体に分散した透過性を減らす粒子を含む。組成物中に存在するこの粒子は通気性を減らすのに十分な寸法を有する。例えば、透過性を減らす粒子は無機をベースにした充填材、例えばフィロシリケート(phyllosilicate)にすることができる。本発明の一つの実施例では例えばこの粒子は有機で変性されたフィロシリケート、例えば界面活性剤で変性されたフィロシリケートにすることができる。本発明の一つの実施例では例えばこの粒子は四級アンモニウム界面活性剤と化学反応したフィロシリケートから成る。本発明の別の実施例では、フィロシリケートをシランで変性できる。
【0013】
透過性を減らす粒子は各用途に応じた種々の異なる量で組成物中に存在できる。例えば、本発明の一つの実施例では粒子は約1〜約25phr、例えば約5〜約20phrの量で組成物中に存在することができる。本発明の別の実施例では粒子は約3〜約15phrの量で組成物中に存在できる。
【0014】
上記組成物はエラストマー物品のバリヤー層を作るためにフィルムに形成することができる。本発明の実施例ではエラストマー物品はタイヤから成る。このタイヤは外側表面と内側表面と規定するカーカスを有している。このカーカスは一般にU字形の横断面を有する。
【0015】
本発明ではカーカスにバリヤー層が組合される。このバリヤー層はエラストマーと、透過性を減らす粒子と、上記炭化水素樹脂とからなる。バリヤー層はカーカスの内側表面に隣接した内側ライニング層を形成する。しかし、他の実施例ではバリヤー層がカーカス内に含まれる中間層からなる。タイヤ中に存在する場合、バリヤー層の厚さは製造する各タイヤに応じて変えることができる。
【0016】
本発明の上記以外の特徴および態様は以下で詳細に説明する。
【0017】
以下、添付図面も参照して、当業者に対する最良の形態を含めた本発明の完全かつ充分な開示を行う。
【0018】
以下の説明は典型的な実施例の説明であって、本発明が下記実施例に制限されるものではないということは当業者には理解できよう。
【0019】
一般に、本発明はエラストマー物品、例えば空気のような気体の加圧状態を維持するための膨張可能な物品のバリヤー層を形成するのに適した組成物に関するものである。本発明によるバリヤー層は例えばタイヤ、スポーツ用ボール等のスポーツ用具や内部圧を維持する必要があるその他の物品に組み込むことができる。
【0020】
本発明のバリヤー層はエラストマー物品の壁に組込むことで気体、蒸気および/または化学物質の物品への透過性を減らすことができる。本発明のバリヤー層を膨張可能な物品に組込むと、物品からの気体の漏れを抑制して物品の作動性能を改善できるだけでなく、例えば、酸素のマイグレーションに起因する酸化反応から物品を保護することができる。本明細書で透過性を減らすとは物品から気体、蒸気および/または化学薬品の漏れ速度を低下させることを意味する。
【0021】
一般に、本発明のバリヤー層を形成する組成物はエラストマーまたはエラストマー混合物と、のシリケートのような透過性を減らす粒子と、ガラス遷移温度が比較的に高いテルペン炭化水素樹脂とを組合せたものである。エラストマー内に分散される粒子は材料の通気性を減らすために存在する。それに対してガラス遷移温度が比較的に高いテルペン炭化水素樹脂が存在する理由は種々ある。例えば、本発明の一つの実施例ではテルペン樹脂は透過性を減らす粒子の分散性を改善する。また、テルペン樹脂は組成物のモジュラスおよび粘度を下げての加工性を改善する。従って、本発明組成物はハンドリングが容易にでき、フィルムに加工することができる。全く予想外なことであるが、本発明者はいくつかの実施例でテルペン樹脂が材料の通気性を減らす役目もあるということも見いだしている。
【0022】
テルペン樹脂は未変性なものでも変性されたものでもよく、例えばポリリモネン、ポリαピネン、ポリβピネンまたはこれらの混合物を含むことができる。テルペン樹脂は比較的に低い分子量、例えば約2000以下の分子量を有することができる。本発明で用いるテルペン炭化水素樹脂は一般に比較的に高いガラス遷移温度を有する。テルペン炭化水素樹脂のガラス遷移温度は約50℃以上で、約60℃以上、さらには約70℃以上である。さらに、テルペン樹脂は組成物に含まれる他の材料との加工時の相溶性を有する軟化点を有していなければならない。例えば、バリヤー層を形成する場合にはテルペン樹脂は組成物の他の成分と混合され、加熱され、相溶する。従って、テルペン樹脂は組成物中の他の成分、例えばエラストマーが劣化、分解を始める温度以下の軟化点を有していなければならない。テルペン樹脂と組み合わせるエラストマーが例えばブチルゴムの場合、テルペン樹脂の軟化点は約17O℃以下、例えば約14O℃以下にするのが有利である。しかし、他の用途ではテルペン樹脂の軟化点は上記温、が例えばASTM E-28に記載の方法で決定される。
【0023】
本発明で使用可能な市販のテルペン樹脂にはウィルミントンDEのヘラクレス社から樹脂(Resin)R2495の名称で市販のポリαピネン樹脂がある。このResin R2495の分子量は約932で、軟化点は約135℃、ガラス遷移温度は約91℃である。
本発明で使用可能な他の市販のテルペン樹脂にはピッツバーグPAのネヴィルChemical社からDERCOLYTE L120の名称で市販のポリリモネン樹脂がある。このポリリモネン樹脂DERCOLYTE L120は分子量が約877で、軟化点が約119℃で、ガラス遷移温度が約73℃である。
本発明で使用可能なさらに他の市販のテルペン樹脂にはジャクソンビルFLのアリゾナChemical社からSYLVARES 7125の名称で市販のポリリモネン樹脂がある。このポリリモネン樹脂SYLVARES 7125は分子量が約102で、軟化点が約125℃で、ガラス遷移温度で約73℃である。
【0024】
組成物中のテルペン樹脂の量は各状況と所望結果に応じて異なるが、一般には約1〜約50phr、例えば約1〜約35phrである。例えば、本発明の一つの実施例では組成物中に存在するテルペン樹脂の量は約5〜約20phrである。
【0025】
テルペン樹脂と組合せることができるエラストマーは所望の透過性を有する任意の適切なゴム材料にすることができ、このエラストマーは例えば天然ゴム、ブチルゴムまたはジエンゴム、例えばイソプレンゴムにすることができる。他の実施例ではエラストマーの混合物、例えばジエンゴムおよびブチルゴムを使うことができる。
【0026】
本発明の実施例ではエラストマーは例えばビニルポリマーをベースにしたポリマーから成ることができ、例えば、エラストマーは下記一般式で表されるポリマーにすることができる:
[CH2−C(R1)(R2)]n
(ここで、R1およびR2はそれぞれ水素、アルキル基、アリール基またはアリル基であり、R1とR2は互いに同一でも、異なっていてもよい)
【0027】
ポリマーを形成するモノマーにはエチレン、プロピレン、ブタジエン、イソプレン、クロロプレン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニル、ビニリデンフルオリド、スチレンおよびα−メチルスチレンが含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0028】
本発明の一つの実施例では、エラストマーは極性官能性を有することができ、例えばエラストマーはハロゲン化でき、ハロゲン官能基、例えば臭素、塩素またはフッ素を含むことができる。
【0029】
用途によってはエラストマーはジエンゴムから成る。「ジエン」エラストマーまたはゴムとは公知のとおり、少なくとも一部がジエンモノマ(共役または非共役の2つの炭素−炭素ダブルボンドを有するモノマー)から得られるエラストマー(ホモポリマーまたはコポリマー)を意味する。
【0030】
一般に、「実質的に不飽和」のジエンエラストマーとは少なくとも一部が共役ジエンモノマーから得られるジエンエラストマーを意味し、ジエン(共役ジエン)起源のメンバーまたは単位の含有量は15%(モル%)以上である。
【0031】
従って、例えばブチルゴムまたはジエン類やEPDM型のα−オレフィンのコポリマー等のジエンエラストマー、特に、「実質的に飽和」のジエン・エラストマー(ジエン起源のメンバーまたは単位の含有量が低く、常に15%以下)は上記定義に入らない。
【0032】
「本質的に不飽和」のジエンエラストマーのカテゴリに入るものの中で「非常に不飽和」なジエンエラストマーとはジエン(共役ジエン)起源の単位の含有量が50%以上のジエンエラストマーを意味する。
【0033】
上記定義の基で、本発明組成物で使用可能なジエンエラストマーとして下記のものを特に挙げることができる:
【0034】
(1) 4〜12の炭素原子を有する共役ジエンモノマーの重合で得られるホモポリマー
【0035】
(2)一種以上のジエン類の共重合または8〜20の炭素原子を有する一種以上のビニル芳香族化合物との共重合で得られるコポリマー
【0036】
(3)エチレン、3〜6の炭素原子を有するα−オレフィン、6〜12の炭素原子を有する非共役ジエンモノマーの共重合によって得られる3元共重合体、例えばエチレン、プロピレンと上記非共役ジエンモノマー、例えば、1,4-ヘキサジエン、エチリデンノルボルネンまたはジシクロペンタジエンとからのエラストマー
【0037】
(4)イソブテンとイソプレンのコポリマー(ブチルゴム)およびそのハロゲン化物、特にこのコポリマーの塩素化または臭素化物
【0038】
特に適した共役ジエンは1,3-ブタジエン、2-メチル-1,3-ブタジエン、2,3-ジ(C1−C5アルキル)-1,3-ブタジエン、例えば2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、2,3-ジエチル-1,3-ブタジエン、2-メチル-3-エチル-1,3-ブタジエン、2-メチル-3-イソプロピル-1,3-ブタジエン、アリール-1,3-ブタジエン、1,3-ペンタジエンおよび2,4-ヘキサジエンである。適したビニル芳香族化合物は例えばスチレン、オルト-、メタ-およびパラ-メチルスチレン、商用混合物「メチルスチレン」、パラ-tert.-ブチルスチレン、メトキシスチレン、クロロスチレン、ビニルメスチレン、ジビニールベンゼンおよびビニルナフタレンである。
【0039】
コポリマーは20〜99重量%のジエン単位と、1〜80重量%の芳香族ビニル単位とを含むことができる。エラストマーは任意のミクロ構造を有することができ、それは使用する重合条件の関数であり、特に、改質剤および/またはランダム化剤の有無および/または改質剤またはランダム化剤の使用量によって変わる。エラストマーは例えばブロック、ランダム、シーケンシャルまたはマクロシーケンシャル(microsequential)なエラストマーでよく、溶液重合または懸濁重合で製造でき、カップリング剤および/または星型化材または官能化剤とカップリングおよび/または星型化または官能化することもできる。
【0040】
ポリブタジエン(BR)、特に 1,2-単位の含有量が4%〜80%のものか、cis-1,4の含有量が80%以上のもの、ポリイソプレン、ポリブタジエン-スチレン共重合体、特にスチレン含有量が5〜50重量%、特に20〜40重量%で、ブタジエン部分の1,2-結合の含有量が4〜65%で、trans-14-結合の含有量が20〜80%のもの、ブタジエン-イソプレン共重合体、特に、イソプレン含有量が5〜90重量%で、ガラス遷移温度(「tg」、ASTM D3418-82に従って測定)が−40℃〜−80℃のもの、イソプレン-スチレン共重合体、特にスチレン含有量が5〜50重量%で、Tgが−25℃〜−50℃のものが適している。
【0041】
ブタジエン−スチレン−イソプレンコポリマーで適したものはスチレン含有量が5〜50重量%、特に10〜40重量%で、イソプレン含有量が15〜60重量%、特に20〜50重量%で、ブタジエン含有量が5〜50重量%、特に20〜40重量%で、ブタジエン部分の1,2-単位の含有量が4〜85重量で、ブタジエン部分のtrans-1,4-単位の含有量が6〜80重量%で、イソプレン部分の1,2-単位に3,4-単位を加えたものの含有量が5〜70重量%で、イソプレン部分のtrans-1,4-単位の含有量が10〜50重量%のものであり、一般的にはTgが-10℃〜-70℃の任意のブタジエン−スチレン−イソプレンコポリマーである。
【0042】
要約すると、ジエンエラストマーはポリブタジエン(BR)、ポリイソプレン(IR)、天然ゴム(NR)、ブタジエンコポリマー、イソプレンコポリマーおよびこれらのエラストマーの混合物から成る不飽和度の高いジエンエラストマーの中から選択することができる。
【0043】
このコポリマーは、スチレン−ブタジエンコポリマー(SBR)、ブタジエン−イソプレンコポリマー(BIR)、イソプレン−スチレンコポリマ(SIR)およびイソプレン−ポリブタジエン−スチレン(SBIR)から成る群の中から選択できる。
【0044】
本発明の一つの実施例ではエラストマーはスチレン-ブタジエンゴム(SBR)から成り、このSBRのビニル含有量は約11〜約63重量%である。SBRエラストマーのガラス遷移温度は約−10℃〜約−70℃である。
【0045】
本発明の他の実施例では、エラストマーはブチルゴム単独か、ジエンゴムと組合される。ブチルゴムはブチレンポリマーまたはコポリマーにすることができ、例えばイソブチレンとイソプレン(HR)のコポリマーにすることができる。ブチルゴムは上記のようにハロゲン化されていてもよい。ブチルゴムは例えば臭素化または塩素化されていてもよい。本発明で使うことができるブチルゴムの例としては臭素化されたポリイソブチレン・イソプレン・コポリマー(BIIR)または臭素化されたイソブチレン・メチルスチレン・コポリマー(BIMS)が挙げられる。本発明で使用可能な一つの市販のBIMSエラストマーはエクソン社から入手可能なEXXPROである。他の市販のブチルゴムはBayer Chemical Corporationから入手可能である。
【0046】
エラストマーおよびテルペン炭化水素樹脂と組み合わされる透過性を減らす粒子は組成物から作られるフィルムまたは層の通気性を減らすことができる任意の無機ベースの充填剤で構成できる。この充填剤はその形状、寸法または形状係数(一般には「プラティ充填剤」(すなわち、プレート、小板、層、積層まれたその他の形をしている)とよばれる)によって通気性を減らすことができる。バリヤー層の通気性を減らすために使用可能な充填剤の例はシリケート、例えばフィロシリケートである。この材料は例えばセメクタイト(smectite)粘土鉱物およびその他の各種クレーを含む。例としてはカオリン、ナトリウムモンモリロナイト、マグネシウムモンモリロナイトおよびカルシウムモンモリロナイトのようなモンモリロナイト、ノントロナイト(nontronite)、ベイデライト(beidellite)、ボルコンスコイト(volkonskoite)、ヘクトライト(hectorite)、ラポナイト(laponite)、サウコナイト(sauconite)、ソボカイト(sobockite)、ステベンサイト(stevensite)、スビンフォルダイト(svinfordite)、バーミキュライト、マイカ、ベントナイト、セペオライト(sepeolite)、サポナイト等である。使用可能なその他の材料はミカセアス(micaceous)ミネラル、例えばイライトや積層イライト/セメクタイト(smectite)ミネラル混合物、例えばレディカイト(ledikite)およびイライトと上記粘土鉱物の混合物である。
【0047】
本発明の実施例では有機変性された充填剤を使用できる。例えば、本発明組成物中に有機変性したフィロシリケートを組み込むことができる。本発明の一つの実施例では充填剤と組合せることができる有機構造物は界面活性剤である。この界面活性剤は例えば下記の式で表すことができる:
−M+123
(ここで、Mは窒素、硫黄、燐またはピリジウム(pyridinium)を表し、R1、R2およびR3はそれぞれ水素原子、アルキル基、アリール基またはアリル基を表し、互いに同一でも異なっていてもよい)
【0048】
本発明の一つの実施例では例えば有機変性されたモンモリロナイトベースのクレーが使用される。すなわち、モンモリロナイトクレーを界面活性剤、例えばジメチル−二水素化獣脂(タロウ)−第四アンモニウム塩で有機的に変性できる。上記のように有機変性されたモンモリロナイトベースのクレーはSouthern Clay Products社から商品名CLOISITE 6A、15A、20Aで市販されている。CLOISITE 6A1はジメチル二水素化獣脂第四アンモニウム塩のクレーを例えば140meq/100g含む。他の実施例では、クレーをジメチル−二水素化獣脂-第四アンモニウム塩の外にオクタデシルアミンまたはメチル-獣脂-ビス-2-ヒドロキシエチル第四アンモニウム塩でさらに有機変性できる。粒子の変性に使用可能な他の界面活性剤としてはジメチルジタロウアンモニウム基、ジポリオキシエチレンアルキルメチルアンモニウム、トリオキシメチルアンモニウム、ポリオキシプロピレンメチルジエチルアンモニウム、ジメチルベンジル水素化獣脂第四アンモニウム、ジメチル水素化獣脂2-エチルヘキシル第四アンモニウム、メチル二水素化獣脂アンモニウム等がある。界面活性剤による変性に加えてモンモリロナイトクレーのエッジをシランで変性することもできる。例えば、透過性を減らす粒子のエッジをシランで処理したものはアーリントンハイツ、イリノイのNanocor社から商品名Nanomer 1.31PSで入手できる。
【0049】
透過性を減らす粒子はモンモリロナイトベースのクレーに加えて合成マイカ(合成または自然)、バーミキュライトおよびベントナイトベースのクレーから成ることができる。合成マイカはCo-Op Chemical社から商品名SOMASIFで市販されている。ベントナイトベースのクレーはElementis Specialties/Rheox社から商品名BENTONEで市販されている。
【0050】
組成物中に存在する透過性を減らす粒子の量は一般に混合される各粒子および材料に依存する。一般に、透過性を減らす粒子は約5〜約20phr、例えば約1〜約25phrの量で組成物中に存在することができる。本発明の別の実施例では、粒子は組成物中に約3〜約15phrの量で存在する。
【0051】
本発明の組成物はエラストマー、透過性を減らす粒子およびテルペン樹脂に加えて他の各種材料、例えば抗酸化剤、促進剤、加工助剤等を含むことができる。さらに、他の各種充填剤、例えばカーボンブラックまたはシリカを組成物に組み入れることができる。
【0052】
既に述べたように配合中に加えるテルペン樹脂は種々の利点と効果を有する。例えば、テルペン樹脂は層またはフィルムにした時に組成物の通気性を低くし、また、同じ組成物の加工性を改善する。これらの利点は従来の可塑剤、例えば鉱油ベースのオイルを配合中に添加しなくても実現できるという利点がある。従来はエラストマー材料の加工性を改善するためにこの種の可塑剤が使われていたが、この種の可塑剤は層の透過性に対して悪影響を与える。
【0053】
上記組成物をバリヤー層に形成するために各成分を標準の攪拌機、例えばAnsonia、CTファレル株式会社から市販のBrabender攪拌機やニュージャージーのCW Brabender Instruments社から市販のバンバリミキサで一体混合できる。この混合過程で透過性を減らす粒子はエラストマーとテルペン炭化水素樹脂との混合物中にインターカレーションされ、および/または、剥離(exfoliate)される。この剥離プロセスによって粒子は高い縦横比で良く分散する。
【0054】
混合後に押出しプロセス等によって配合物を層またはフィルムにすることができる。形成されたフィルムまたは層をカレンダー加工して剥離した粒子をゴム中に配向させることができる。例えばプレート状の粒子の場合にはカレンダー加工によって小板が気体のマイグレーションの方向に対して垂直に配向し、層の透過性を改善できる。
【0055】
フィルムまたは層にした後またはフィルムまたは層の作成中に組成物を硬化してゴムを加硫することができる。本発明の実施例では硬化中に組成物を約30分間、約16バール圧力下で約150〜160℃に加熱する。最適硬化はMDRレオメータで決定する。
【0056】
本発明に従って作られたバリヤー層は多くの物品に組み込むことができる。例えば、本発明実施例では本発明のバリヤー層が気体で膨張されるエラストマー物品に組み込まれる。この用途ではバリヤー層は物品の壁を介した気体流を抑制する。本発明のバリヤー層を組み込むことができる物品の例はスポーツ用ボール、例えばフットボール、バスケットボールや、マットレス、浮き装置、例えば膨張式ボート等である。
【0057】
本発明の一つの実施例では、本発明に従って作られるバリヤー層がタイヤに組み込まれる。[図1]にはタイヤが一般に10で示されている。このタイヤ10はトレッド14を規定するカーカス12を含む。このカーカス12はゴム材料から作られ、一般にU字形の横断面を有する。カーカス12は第1サイドウオル16と第2サイドウオル18とを含む。サイドウオル16、18の一端はトレッド14に接続され、両端で第1ビード20および第2ビード22を形成する。ビード20、22はリム24に装着される。
【0058】
タイヤ10を補強するためにカーカス12は第1ビード20中に埋め込まれた第1ビードワイヤ26と、第2ビード22中に埋め込まれた第2ビードワイヤ28とをさらに含む。ビードワイヤ26、28は金属ワイヤまたはケーブルで作ることができる。ビードワイヤ26、28には補強用ラジアルカーカ30が巻付けられ、アンカーされている。タイヤ10はクラウン補強材32をさらに含む。このクラウン補強材32は例えばトレッド14の下に位置した複数のベルトから成る。このクラウン補強材32は少なくとも2つのプライから成り、各プライ中には金属ワイヤまたはケーブルが互いに平行になっている。
【0059】
本発明ではタイヤ10がさらにバリヤー層50を含む。図示した例ではバリヤー層50はタイヤ内側表面にクンナーライナーを形成している。このバリヤー層50は加圧気体がタイヤの壁を介してマイグレートするのを抑制する役目をする。本発明ではこのバリヤー層50がエラストマーと、ガラス遷移温度が相対的に高いテルペン炭化水素樹脂と、透過性を減らす粒子との混合物で作られている。[図1]に示すように、タイヤに組込んだ時のバリヤー層50の厚さはタイヤの用途およびタイプによって変化する。例えば、ある種の用途ではバリヤー層の厚さは3mm以下にすることができる。
【0060】
バリヤー層は例えば約0.1mm〜約3mm、例えば約0.25mm〜約1.5mmの厚さを有することができる。他の実施例ではバリヤー層の厚さは約3mm以上にすることができるということを理解しなければならない。
【0061】
[図1]に示す実施例では、バリヤー層50はタイヤ10の内部表面上に配置されているが、他の実施例ではバリヤー層は他の位置に配置できるということを理解しなければならない。例えば、バリヤー層をタイヤ10のカーカスの中心に組込むこともできる。
【0062】
[図1]に示すタイヤ10は従来公知のプロセスで形成することができる。一般に、タイヤ10のカーカス12は高剪断混合機、例えばバンバリミキサ中でエラストマー、例えばスチレンポリブタジエンゴムを各種添加剤と一緒に混練して作られる。例えば一実施例では75〜125重量部のゴムに少なくとも一種の補強材、例えばカーボンブラックおよび/またはシリカをと組合せる。他の実施例ではゴムに例えば約50〜約70部のカーボンブラックおよびシリカを組合せる。
【0063】
配合物には充填剤の外に元素硫黄と可塑剤を添加することができる。硫黄は例えば約1〜約15重量部の量で存在できる。可塑剤は炭化水素油にすることができ、その量は約1〜約20重量部にすることができる。
【0064】
さらに他の多様なマイナー成分を配合物に添加することもできる。例えば、一般的なゴム配合物には加硫促進剤、抗酸化剤、少なくとも一種のタック付与樹脂がさらに含まれる。
【0065】
上記成分を混合した後、組成物をシートに押出し、カレンダー加工する。得られたシートは金型内でタイヤを形成する各種補強要素の周りに配置される。
【0066】
本発明は下記の本発明実施例からより良く理解できよう。
【実施例】
【0067】
本発明で作られたバリヤー層の利点と効果を証明するために以下のテストを実施した。
【0068】
以下の実施例では下記試験法でデータを得た。
テスト法
ムーニー可塑性(ML1+4):
ムーニー可塑性(Plasticity)はASTM規格D1646-04で測定した。一般に、未硬化状態の組成物を円筒形容器で成形し、100℃に加熱する。1分間の予熱後、テストサンプル中でローターを2rpmで回転し、4回転後にこの運動を維持するのに使用したトルクを測定する。ムーニー可塑性は「ムーニー単位」(MU:1MU=0.83ニュートン-メートル)で表示する。
10%モジュラス
10%伸びでの縦弾性係数(ASTM D412-98a)
100%モジュラス
100%伸びでの縦弾性係数(ASTM D412-98a)
張力(Tensile):
破断時の伸び率%(ASTM D412-98a)
透過性
酸素透過値はMOCON OX-TRAN 2/60透過度テスターを使用して40℃で測定した。厚さ(薬0.8〜1.0mm)を測定してある硬化したサンプル円板を機器に載置し、バキューム油脂でシールする。サンプル円板の片側に10psiの窒素圧を維持し、反対側に10psiの酸素圧を維持する。窒素側面上の酸素濃度の増加をCoulox酸素検出器を使用してモニターし、窒素側面側の酸素濃度が一定値に達するまで、記録し、酸素透過性を決定した。
成分
【0069】
以下の実施例では下記成分を使用した。下記の表中でTg値は標準のDSC法を使用して求めた。分子量は標準のGPC法を使用して求めた。
【0070】
【表1】

【表2】

【表3】

【表4】

【0071】
実施例1
この実施例では以下の成分を組み合わせてフィルムを形成した。一つの実験ではテルペン樹脂R2495を加えた。対照ではテルペン樹脂R2495は加えなかった。以下に示すように、この実施例で使用したエラストマーはExxonMobil Chemical Companyの臭素化ポリイソブチレンであった。
エラストマー(BIIR) 100(phr)
カーボンブラック(N772) 51
タック樹脂 2.5
硬化剤 5.7
Organoclay(Cloisite 6A) 4
樹脂R2495 10
各成分は2リットルのバンバリミキサで混合した。70℃で40rpmでエラストマーをorganoclayでマスチック化した後、ローター速度を60rpmに増加し、カーボンブラック、化学薬品および樹脂を加えた。最後に混合物を攪拌機から14O℃で取り出した。ブロモブチル硬化パッケージをコールドローラで加えた。得られたプレートを硬化し、MDRレオメータで150℃で最適加硫条件を決定し、機械特性を測定した。
樹脂R2495は相対的に高い軟化点(135℃)を有する。従って、インナーライナ混合物の製造に使用する最低ドロップ温度≧135℃を使用して樹脂 R2495の取込み(分散)が良好にできた。
【0072】
樹脂 R2495を10phr添加することで配合物の粘度を約11.9MUポイント(21.3%)低下させることができ、配合物の10%伸び硬化モジュラスは0.6Mpa(19%の減少)に減少させることができた。樹脂 R2495を含む配合物は100%の高応力モジュラスも約24%低下した。張力(破断伸び%)特性も樹脂R2495を含まない混合物に対して158%改良された。この可塑化効果の予想外の結果は酸素透過性が劣化しないことである。事実、透過性は5.7%改善している。
【0073】
[表5]は物性の要約を示す。
【表5】

【0074】
実施例2
実施例1の手順を実質的に繰り返したが、この実施例で使用したエラストマーはBIMSエラストマーである。このエラストマーはエクソン社か商品名「EXXPRO」で市販されている。テルペン樹脂を含む配合物は下記組成を有する。
エラストマー(BIMS) 100(phr)
カーボンブラック(N772) 51
タック樹脂 2.5
硬化剤 5.7
Organoclay(Cloisite 6A) 4
樹脂R2495 10
【0075】
この配合物(樹脂R2495を含む配合物と、樹脂R2495を含まない対照サンプル)を実施例1に記載の手順で混合した。
【0076】
BIMSエラストマー配合物の場合、樹脂 R2495の10phrの添加で粘度は約15.3MU(22%)低下し、10%伸び硬化モジュラスは0.6 Mpa(21%)に低下した。さらに、樹脂添加の結果として100%高応力モジュラスも約32%低下した。破断伸びは181%増加した。ここでも、可塑化効果の予想外の結果がみられ、酸素透過性は劣化せず、透過性は4.5%改善されている。
【0077】
[表6]に物性をまとめて示してある。
【表6】

【0078】
実施例3
実施例1の手順を再び繰り返したが、この実施例ではスチレンブタジエンゴムエラストマーを使用した。この実施例手も2つの組成物を作った。対照配合物は炭化水素樹脂を含まず、一つの配合物は下記テルペン樹脂Sylvares 7215を含んでいる。
エラストマー(SBR) 100(phr)
カーボンブラック(N772) 51
硬化剤 3.5
Organoclay(Cloisite6A) 5
樹脂Svlvares 7215 10
【0079】
組成物を2リットルのバンバリミキサで混合した。エラストマーを1分間、40rpmでorganoclayでマスチック化した後、ローター速度を60rpmに増やし、カーボンブラック、化学薬品および樹脂を加えた。最後に混合物を165℃の最高温度で取り出した。硬化パッケージを冷たいロールで加えた。得られたプレートはMDRレオメータを使用して150℃で最適加硫条件を決定し、機械特性をテストした。
【0080】
高Tg樹脂Sylvares 7125の10phrの添加でSBR配合物の粘度は11.6MU(16.1%)減らした。つた、樹脂Sylvares 7125の添加でも、10%伸びモジュラスも1.0 MPa(24%)に減少した。100%高応力モジュラスも30%低下した。樹脂添加の結果で破断伸びは127%増加した。ここでも可塑化樹脂の予想外な結果は透過性が7.6%改良したことである。
【0081】
[表7]は物性をまとめたものである。
【表7】

【0082】
実施例4〜10
以下の実施例では異なる可塑剤を含むエラストマーフィルムを作った。一つの配合物では可塑剤を含まず、3つの配合物は本発明のテルペン樹脂を含み(実施例4〜6)、4つの配合物は従来の可塑剤を含む(実施例7〜10)。得られたフィルムの特性を比較した。各実施例で使用した配合物は以下の通り。
エラストマー(BIMS) 100(phr)
カーボンブラック(N772) 51
タック樹脂 2.5
硬化剤 5.7
Organoclay(Cloisite 6A) 5
可塑剤 10
【0083】
各配合物を実施例1に記載の手順で混合した。[表8]は可塑剤を含間内配合物および従来の可塑剤を含む配合物の特性と比較した、BIMS配合物中に各種炭化水素ベースの樹脂を含む配合物の可塑化効果を示している。本発明に従って作られた実施例4〜6はテルペン樹脂、特にポリαピネン樹脂、ポリリモネン樹脂、その他のポリリモネン樹脂をそれぞれ含んでいる。従来の可塑剤を含む実施例7〜10は脂肪族炭化水素樹脂(実施例7、8)、液体ポリイソブチレン(実施例9)およびパラフィンオイル(実施例10)を含んでいる。
【0084】
[表8]に示すように、本発明のテルペン樹脂は未硬化の粘度を下げ、硬化モジュラスを減少させることで強い可塑化効果を有している。さらに、テルペン樹脂はフィルムの透過性も改善した。これに対して、他の可塑剤を使用した実施例7〜10ではフィルムの透過性は対照サンプルと比較より悪くなっている。
【表8】

【0085】
当業者は本発明の精神および特許請求の範囲に定義の範囲から逸脱することなしに本発明を種々変更、改良することができる。さらに、上記の各実施例は全体またはその一部を相互に交換することができるということも理解されなければならない。また、上記の説明は単に例示にすぎず、特許請求の範囲に定義の本発明を制限するものではないということを当業者は理解できよう。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】本発明に従って作られたバリヤー層を有するタイヤの一実施例の断面図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(a)〜(c)から成る気体バリヤー層を形成するのに適した組成物:
(a)少なくとも一つのエラストマー、
(b)上記エラストマー中に分散させた透過性を減らす粒子、
(c)約5O℃以上のガラス遷移温度と約17O℃以下の軟化点とを有するテルペン樹脂。
【請求項2】
エラストマーがジエンゴムから成る請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
エラストマーがスチレン・ブタジエンゴムから成る請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
エラストマーがブチレンポリマーまたはそのコポリマーから成る請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
エラストマーがハロゲン化されたブチレンポリマーまたはそのコポリマーから成る請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
エラストマーが臭素化されたポリイソブチレンまたは臭素化されたイソブチレン・メチルスチレン・コポリマーから成る請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
エラストマーがジエンゴムとブチレンポリマーまたはそのコポリマーとの混合物から成る請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
エラストマーがジエンゴム、ブチレンポリマーまたはそのコポリマーから選択されるエラストマーの混合物から成る請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
テルペン樹脂のガラス遷移温度が約7O℃以上である請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
テルペン樹脂の軟化点が約140℃以下である請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
テルペン樹脂がポリリモネン、ポリ(αまたはβ)ピネンまたはこれらの混合物である請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
テルペン樹脂が約1〜約50phrの量で組成物中に存在する請求項1に記載の組成物。
【請求項13】
透過性を減らす粒子が無機ベースの充填剤から成る請求項1に記載の組成物。
【請求項14】
透過性を減らす粒子がフィロシリケート(phyllosilicate)から成る請求項1に記載の組成物。
【請求項15】
透過性を減らす粒子が有機変性フィロシリケートから成る請求項1に記載の組成物。
【請求項16】
界面活性剤で改質したフィロシリケートから成る請求項15に記載の組成物。
【請求項17】
フィロシリケートがナトリウム・モンモリロナイトから成り、界面活性剤が第四アンモニウム界面活性剤から成る請求項16に記載の組成物。
【請求項18】
透過性を減らす粒子が約5〜約20phrの量で組成物中に存在する請求項1に記載の組成物。
【請求項19】
透過性を減らす粒子が約5〜約25phrの量で組成物中に存在する請求項1に記載の組成物。
【請求項20】
透過性を減らす粒子が約3〜約15phrの量で組成物中に存在する請求項1に記載の組成物。
【請求項21】
組成物がカーボンブラック、タック樹脂および少なくとも一種の硬化剤をさらに含む請求項1に記載の組成物。
【請求項22】
少なくとも一種のエラストマーから成るフィルムを有し、このフィルムはエラストマー中に分散した透過性を減らす粒子を含み、このフィルムはさらにガラス遷移温度が約50℃以上で、軟化点が約170℃以下であるテルペン樹脂を含む、膨張した物品を通る酸素流を抑制するのに適した気体バリヤー層。
【請求項23】
エラストマーがジエンゴムから成る請求項22に記載のバリヤー層。
【請求項24】
エラストマーがスチレン・ブタジエンゴムから成る請求項22に記載のバリヤー層。
【請求項25】
エラストマーがブチレン・ポリマーまたはそのコポリマーから成る請求項22に記載のバリヤー層。
【請求項26】
エラストマーがハロゲン化されたブチレンポリマーまたはそのコポリマーから成る請求項22に記載のバリヤー層。
【請求項27】
エラストマーが臭素化されたポリイソブチレンまたは臭素化されたイソブチレン・メチルスチレン・コポリマーから成る請求項22に記載のバリヤー層。
【請求項28】
上記フィルムがジエンゴムおよびブチレン・ポリマーまたはそのコポリマーから選択されるエラストマーの混合物を含む請求項22に記載のバリヤー層。
【請求項29】
テルペン樹脂が約70℃以上のガラス遷移温度を有する請求項22に記載のバリヤー層。
【請求項30】
テルペン樹脂が約140℃以下の軟化点を有する請求項22に記載のバリヤー層。
【請求項31】
テルペン樹脂がポリリモネン、ポリ(αまたはβ)ピネンまたはこれらの混合物である請求項22に記載のバリヤー層。
【請求項32】
テルペン樹脂が約5〜約50phrの量で組成物中に存在する請求項22に記載のバリヤー層
【請求項33】
透過性を減らす粒子が無機ベースの充填剤から成る請求項22に記載のバリヤー層。
【請求項34】
透過性を減らす粒子がフィロシリケートから成る請求項22に記載のバリヤー層。
【請求項35】
透過性を減らす粒子が有機変性フィロシリケートから成る請求項22に記載のバリヤー層。
【請求項36】
界面活性剤で改質したフィロシリケートから成る請求項22に記載のバリヤー層。
【請求項37】
透過性を減らす粒子が約1〜約25phrの量で組成物中に存在する請求項22に記載のバリヤー層。
【請求項38】
透過性を減らす粒子が約5〜約20phrの量で組成物中に存在する請求項22に記載のバリヤー層。
【請求項39】
透過性を減らす粒子が約3〜約15phrの量で組成物中に存在する請求項22に記載のバリヤー層。
【請求項40】
エラストマーがブチレン・ポリマーまたはそのコポリマーから成り、テルペン樹脂が約70℃以上のガラス遷移温度と約140℃以下の軟化点とを有するし、テルペン樹脂が約1〜約50phrの量でフィルム中に存在する請求項22に記載のバリヤー層。
【請求項41】
横断面が一般にU字形をした外側表面と内側表面とを規定するカーカスと、このカーカスと組合されたバリヤー層とを有し、このバリヤー層はエラストマーと、このエラストマー中に分散した透過性を減らす粒子と、約50℃以上のガラス遷移温度と約170℃以下の軟化点とを有するテルペン樹脂とから成るタイヤ。
【請求項42】
エラストマーが下記一般式を有する材料から成る請求項41に記載のタイヤ:
−[CH2−C(R1)(R2)]n
(ここで、R1およびR2はそれぞれ水素、アルキル基、アリール基またはアリル基であり、R1とR2は互いに同一でも、異なっていてもよい)
【請求項43】
エラストマーがスチレンブタジエンゴムから成る請求項41に記載のタイヤ。
【請求項44】
エラストマーがブチレンポリマーまたはそのコポリマーから成る請求項41に記載のタイヤ。
【請求項45】
エラストマーがハロゲン化されたブチレンポリマーまたはそのコポリマーから成る請求項41に記載のタイヤ。
【請求項46】
バリヤー層がエラストマーの混合物から成り、エラストマーがジエンゴムおよびブチレンポリマーまたはそのコポリマーから成る群の中から選択される請求項41に記載のタイヤ。
【請求項47】
エラストマーは臭素化されたポリイソブチレンまたは臭素化されたイソブチレン・メチルスチレン・コポリマーから成る請求項41に記載のタイヤ。
【請求項48】
バリヤー層がカーカスの内側表面上に塗布されたコーテングを有する請求項41に記載のタイヤ。
【請求項49】
透過性を減らす粒子が無機ベースの充填剤から成る請求項41に記載のタイヤ。
【請求項50】
透過性を減らす粒子がフィロシリケート(phyllosilicate)から成る請求項41に記載のタイヤ。
【請求項51】
透過性を減らす粒子が有機変性フィロシリケートから成る請求項41に記載のタイヤ。
【請求項52】
透過性を減らす粒子が界面活性剤と反応したフィロシリケートの粒子から成る請求項41に記載のタイヤ。
【請求項53】
透過性を減らす粒子がバリヤー層中に約1〜約25phrの量で存在する請求項41に記載のタイヤ。
【請求項54】
テルペン樹脂は約170℃以下の軟化点を有する請求項41に記載のタイヤ。
【請求項55】
テルペン樹脂は約140℃以下の軟化点を有する請求項41に記載のタイヤ。
【請求項56】
テルペン樹脂がポリリモネン、ポリ(αまたはβ)ピネンまたはその混合物から成る請求項41に記載のタイヤ。
【請求項57】
テルペン樹脂が約5〜約50phrの量でバリヤー層中に存在する請求項41に記載のタイヤ。

【図1】
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【公表番号】特表2008−518060(P2008−518060A)
【公表日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−538166(P2007−538166)
【出願日】平成17年10月24日(2005.10.24)
【国際出願番号】PCT/US2005/038351
【国際公開番号】WO2006/047509
【国際公開日】平成18年5月4日(2006.5.4)
【出願人】(599140471)ソシエテ ドゥ テクノロジー ミシュラン (96)
【出願人】(597011441)ミシュラン ルシェルシェ エ テクニク ソシエテ アノニム (94)
【Fターム(参考)】