説明

エラストマー用水性接着剤

【課題】エラストマー用水性接着剤組成物を提供する。
【解決手段】(a)1以上の臭素置換オレフィンポリマー、
(b)1以上のハロスルホン化オレフィンポリマー、
(c)エポキシ樹脂、フェノール樹脂、塩素化ポリオレフィン、およびその混合物からなる群から選択される1以上の相溶化剤を含む水性接着剤組成物が提供される。かかる接着剤組成物を用いて基体を接着する方法およびかかる基体の接着法により形成される物品も提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ある有用な種類の物質は、エラストマー結合組成物(すなわち、エラストマー基体と結合できる組成物)である。
【背景技術】
【0002】
いくつかの場合において、水性であるエラストマー結合組成物を見出すことが有用である。様々なポリマーが、エラストマー基体と結合できる1以上の特定の配合物において有用であることが知られている。例えば、米国特許出願公開第2003/0158338号は、エラストマーを他の基体と接着させるために有用である水性組成物を記載し、ハロゲン置換オレフィンポリマーおよびスルホニルハライド置換オレフィンポリマーをはじめとする、かかる組成物中に含めることができる様々なポリマーを記載している。
【特許文献1】米国特許出願公開第2003/0158338号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
2以上の異なるポリマーの混合物を含有するエラストマー結合組成物を製造することが望ましい。いくつかの場合において、単独で使用される場合、各ポリマーはエラストマー結合組成物に対してある特定の利点をもたらすので、2以上の異なるポリマーの混合物が望ましい。しかしながら、かかる混合物のいくつかが製造される場合、結果として得られる組成物は不十分な保存安定性を有することが判明している。例えば、臭素置換オレフィンポリマーおよびハロスルホン化オレフィンポリマーは、不十分な保存安定性を有する場合があることが予想される。例えば、混合ハロゲン置換オレフィンポリマーおよびハロスルホン化オレフィンポリマーの混合物である溶媒ベースの接着剤は、不十分な保存安定性を有する場合があることが知られている。同様に、混合ハロゲン置換オレフィンポリマーおよびハロスルホン化オレフィンポリマーの水性混合物は不十分な保存安定性を有する場合があることが判明している。臭素置換オレフィンポリマーおよびハロスルホン化オレフィンポリマーの両方を含有し、改善された保存安定性を有する水性組成物を提供することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の一つの態様において、
(a)1種以上の臭素置換オレフィンポリマー、
(b)1種以上のハロスルホン化オレフィンポリマー、
(c)エポキシ樹脂、フェノール樹脂、塩素化ポリオレフィン、およびその混合物からなる群から選択される1種以上の相溶化剤:を含む水性接着剤組成物が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0005】
水性組成物は、水および他の成分を含有する組成物である。水性組成物において、水以外の成分は、水中に溶解しているか、または水中に分散しているか、またはその組み合わせである。水以外のある特定の成分は、水中に溶解しているか、または水中に分散しているか、またはその組み合わせでありうる。水以外の2以上の成分が存在する場合、溶解した成分または分散した成分またはその組み合わせの任意の組み合わせが存在してもよい。例えば、水以外の2つの成分が考えられる場合、水以外の両成分は分散していてもよいし;あるいは一方の水以外の成分は溶解することができ、他方の水以外の成分は分散していてもよく;あるいは一方の水以外の成分が溶解および分散の両方であって良く、他方の水以外の成分が溶解または分散していてもよく、または溶解および分散の両方であっても良い。
水中に分散している成分は、水全体にわたって分散した、別々の粒子の形態である。水中の粒子の分布は、任意の形態、例えば、分散液、懸濁液、エマルジョン、ラテックス、またはその組み合わせであってよい。別々の粒子は、固体、液体、またはその組み合わせであってよい。独立して、別々の粒子は、コロイドまたは他の分布形態を形成してもよい。
【0006】
いくつかの実施形態において、本発明の実施は、接着剤組成物の層をエラストマー基体と接触させることを含む。本発明の実施において用いられるエラストマー基体は、様々なエラストマー材料の任意のものであってよい。エラストマーは当該分野において周知である。1つの説明は、Textbook of Polymer Science、第2版、F.W.Billmeyer Jr.著、Wiley−Interscience、1971年において見出すことができる。Billmeyerにより記載されているように、エラストマーは、一般に、張力を受けて、そのもとの長さの少なくとも1.1倍の新しい長さまで伸長し、そのもとの長さの数倍にもなり得る物質であり、これらは伸長された場合に、比較的高い強度および剛性を示し、変形後、比較的迅速にそのもとの形状を回復する傾向があり、残留する恒久的変形は比較的少ない。本発明の目的に関して、これらの特性のほとんどまたは全部を示す物質は「エラストマー」と見なされる。エラストマーは、様々な物質、例えば、天然ゴムおよび合成ゴムから製造することができる。合成ゴムとしては、例えば、ポリブタジエン、ネオプレン、ブチルゴム、ポリイソプレン、ニトリルゴム、スチレンブタジエンゴム(SBRとも呼ばれる)、エチレンプロピレンジエン系ゴム(そのいくつかはEPDMと呼ばれる)などが挙げられる。エラストマーは、熱可塑性エラストマー(弾塑性材(弾性プラスチック;elastoplastics)または溶融加工可能なゴムとも呼ばれる)および架橋(加硫とも呼ばれる)エラストマーの両方を包含する。本発明は、任意のエラストマーを接着させるために実施することができる。好ましいエラストマーは、架橋合成あるいは天然ゴムであり、さらに好ましくは、天然ゴムを用いて製造された架橋エラストマーである。
【0007】
本発明の接着剤組成物は、様々な有用な物質、例えば、他のエラストマー、エラストマーでないが、柔軟性の物質、例えば、織物またはフィルム、硬質物質、例えば、プラスチック、エンジニアリングプラスチック、木材、および金属にエラストマーを結合させるために用いることができる。本発明のいくつかの組成物は、エラストマーを金属に結合させるのに有効である。
【0008】
本発明の実施は、オレフィンポリマーの使用を含む。オレフィンポリマーは、ポリオレフィンとも呼ばれ、1分子あたり1つの二重結合を含有する不飽和脂肪族炭化水素であるモノマー分子に基づくポリマーを含む。かかるオレフィンポリマーの例は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイソブテン、ポリブト−1−エン、ポリ−4−メチルペント−1−エン、およびその様々なコポリマーである。天然ゴムベースのポリマーおよび合成ゴムベースのポリマー、例えば、ポリイソプレン、ポリブタジエン、ブタジエンおよび環状共役ジエンの付加物のポリマー、ブタジエンおよびスチレンのコポリマー、エチレン、プロピレン、およびジエンのコポリマー、アクリロニトリルおよびブタジエンのコポリマー、ならびにその様々なコポリマーもオレフィンポリマーの種類に含まれる。架橋をもたらすために1種以上の多官能性モノマーも含む前記ポリマーもオレフィンポリマーの種類に含まれる。
【0009】
ハロゲン化オレフィンポリマーは、ハロゲン原子が1以上の水素原子と置換する以外はポリオレフィンと同じ構造を有する。ハロゲンは、塩素、臭素、フッ素、またはその混合物でありうる。好ましいハロゲンは、塩素、臭素、およびその混合物である。ハロゲンの量は決定的ではないようであり、ポリマーの3〜70重量%の範囲であり得る。
【0010】
臭素置換オレフィンポリマーは、少なくとも1つのハロゲンが臭素であるハロゲン化オレフィンポリマーである。臭素置換オレフィンポリマーは、臭素以外のハロゲンの原子を含有しても、しなくてもよい。臭素置換オレフィンポリマーは、本明細書において「ポリマー(a)」と呼ばれる。
【0011】
いくつかの実施態様において、混合ハロゲン置換オレフィンポリマーである臭素置換オレフィンポリマーが使用される。混合ハロゲン置換オレフィンポリマーは、臭素原子(単数または複数)に加えて、臭素でない少なくとも1つのハロゲン原子を含有する臭素置換オレフィンポリマーである。
【0012】
いくつかの実施態様において、塩素および臭素を有するポリマー(a)が使用される。独立して、いくつかの実施態様において、置換ポリジエンポリマー(すなわち、2以上の異なる種類のハロゲン原子が水素原子と置換するポリジエンポリマーの構造を有するポリマー)であるポリマー(a)が使用される。いくつかの実施態様において、全てのポリマー(a)は、置換ポリジエンポリマーである。好適なポリジエンポリマーは、例えば、ポリブタジエン、ポリイソプレン、およびその混合物を含む。いくつかの好適なポリジエンポリマーは、ジエン分子の残基でないモノマー単位を有さない。いくつかの実施態様において、全てのポリマー(a)は、ジエン分子の残基でないモノマー単位がない置換ポリジエンポリマーである。一つの好適な混合ハロゲン置換オレフィンポリマーは、例えば、臭素化ポリジクロロブタジエン(BPDCD)である。
【0013】
いくつかの実施態様において、ポリオレフィン上に、ニトリル、カルボキシル、カルボン酸エステル、エーテル、パーオキシエステル、またはその組み合わせから選択される置換基を有さない、少なくとも1種のポリマー(a)が使用される。いくつかの実施態様において、全てのポリマー(a)は、ポリオレフィン上に、ニトリル、カルボキシル、カルボン酸エステル、エーテル、パーオキシエステル、またはその組み合わせから選択される置換基を有さない。いくつかの実施態様において、ポリオレフィン上にハロゲン以外の置換基を有さない少なくとも1種のポリマー(a)が使用される。いくつかの実施態様において、全てのポリマー(a)は、ポリオレフィン上にハロゲン以外の置換基を有さない。
【0014】
ハロスルホン化オレフィンポリマーは、いくつかの水素原子がハロゲン原子により置換され、および他の水素原子が、化学式SOX(式中、Xはハロゲン原子である)を有するスルホニルハライド基により置換されているオレフィンポリマーの構造を有するポリマーである。ハロスルホン化オレフィンポリマーは本明細書において「ポリマー(b)」と呼ばれる。スルホニルハライド基中のハロゲンは、塩素、臭素、フッ素、またはその混合物でありうる。いくつかの実施態様において、スルホニルハライド基中のハロゲンは、塩素、臭素、またはその混合物である。いくつかの実施態様において、スルホニルハライド基中のハロゲンは塩素である。いくつかの実施態様において、全てのポリマー(b)の全てのスルホニルハライド基中のすべてのハロゲンは、塩素または臭素のいずれかである。いくつかの実施態様において、全てのポリマー(b)の全てのスルホニルハライド基中のすべてのハロゲンは塩素である。
【0015】
独立して、いくつかの実施態様において、置換EPポリマー(すなわち、スルホニルハライド基がいくつかの水素原子の代わりに置換されているEPポリマーの構造を有するポリマー)であるポリマー(b)が使用される。EPポリマーは、エチレンまたはプロピレンまたはその混合物から選択されるそのモノマー単位を50モル%以上有するポリマーである。いくつかの実施態様において、全てのポリマー(b)は置換EPポリマーである。いくつかの好適なEPポリマーは、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレンおよびプロピレンのコポリマー、エチレンおよびプロピレンおよび1以上のジエンモノマーのコポリマー、およびその混合物である。いくつかの好適なハロスルホン化オレフィンポリマーは、例えば、クロロスルホン化ポリエチレン(CSPE)、クロロスルホン化ポリプロピレン、ブロモスルホン化ポリエチレン、ブロモスルホン化ポリプロピレン、およびその混合物を含む。いくつかの実施態様において、全てのポリマー(b)は、(CSPE)、クロロスルホン化ポリプロピレン、ブロモスルホン化ポリエチレン、ブロモスルホン化ポリプロピレン、およびその混合物から選択される。いくつかの実施態様において、すべてのポリマー(b)はCSPEである。
【0016】
いくつかの実施態様において、ニトリル、カルボキシル、カルボン酸エステル、エーテル、ペルオキシエステル、またはその組み合わせから選択される、ポリオレフィン上の置換基を有さない、少なくとも1種のポリマー(b)が使用される。いくつかの実施態様において、全てのポリマー(b)は、ポリオレフィン上にニトリル、カルボキシル、カルボン酸エステル、エーテル、ペルオキシエステル、またはその組み合わせから選択される置換基を有さない。いくつかの実施態様において、ポリオレフィン上にハロゲンおよびハロスルホニル基以外の置換基を有さない少なくとも1種のポリマー(b)が使用される。いくつかの実施態様において、すべてのポリマー(b)はポリオレフィン上にハロゲンおよびハロスルホニル基以外の置換基を有さない。
【0017】
いくつかの実施態様において、有意な量の、ポリマー(a)でもポリマー(b)でもない任意のハロゲン化ポリオレフィンは存在しない。いくつかの実施態様において、ポリマー(a)でもポリマー(b)でもないハロゲン化ポリオレフィンは存在しない。
【0018】
本明細書において用いられる場合、成分の「有意な量」とは、組成物の性能に影響を及ぼす量である。いくつかの実施態様において、ポリマーまたは樹脂である成分は、前記成分の乾燥重量の、ポリマー(a)およびポリマー(b)の乾燥重量の合計に対する比が0.005以下であるならば、有意な量で存在すると考えられる。
【0019】
各ポリマー(a)および各ポリマー(b)は、互いに独立して、任意の方法により製造できる。様々な方法が当該分野において公知である。例えば、ハロゲン原子および/またはスルホニルハライド基は重合前のモノマー上に存在してもよいし、これらは重合後のポリマー上に付けられてもよいし、あるいはどちらの方法も使用できる。
【0020】
本発明の実施において、ポリマー(a)およびポリマー(b)は互いに独立して、当該分野において公知の様々な方法により製造することができる。製造法は、本発明にとって決定的ではない。ポリマー(a)またはポリマー(b)は水性形態において製造できるか、そうでなければ、ある都合のよい形態に製造され、その後に水性形態に変換できるかのいずれかである。いくつかの実施態様において、ポリマー(a)またはポリマー(b)は1以上のエチレン性不飽和モノマーの水性乳化重合により製造され、結果として得られるポリマーは、例えば、ポリビニルアルコールで、1以上の非ポリマー性界面活性剤で、またはその組み合わせで安定化することができる。
【0021】
いくつかの実施態様において、ポリマー(a)またはポリマー(b)の一方または両方は、有機溶媒中溶液として製造される。このような実施態様において、ポリマー(a)またはポリマー(b)の一方または両方は溶液重合により製造することができ、この溶液において、任意にさらに希釈して使用されるか、または任意の方法で製造され、単離され、次いで所望により有機溶媒中に溶解させることができる。ポリマー(a)またはポリマー(b)の一方または両方が有機溶媒中溶液の形態である実施態様において、かかる溶液は、所望により、その後水性ラテックスに変換できる。ポリマーの有機溶液をラテックスに変換する一方法は、界面活性剤および水を溶液に高剪断下で添加して、ポリマーを乳化させ、次いで溶媒をストリップ除去することである。
【0022】
いくつかの実施態様において、少なくとも1種のポリマー(a)は水性乳化重合以外の方法により重合される。いくつかの実施態様において、接着剤組成物中に存在する全てのポリマー(a)は水性乳化重合以外の方法により重合される。独立して、いくつかの実施態様において、少なくとも1種のポリマー(b)は水性乳化重合以外の方法により重合される。いくつかの実施態様において、接着剤組成物中に存在する全てのポリマー(b)は水性乳化重合以外の方法により重合される。
【0023】
いくつかの実施態様において、水性組成物は、水中に分散された別々のポリマー粒子を含有し、かかる粒子の少なくともいくつかは、ポリマー(a)およびポリマー(b)のどちらも含有する。いくつかの実施態様において、ポリマー(a)およびポリマー(b)の両方を含有する粒子中に含まれるポリマー(a)の量は、ポリマー(a)の合計乾燥重量基準で、10%(乾燥重量)以上、または20%以上、または50%以上である。
【0024】
いくつかの実施態様において、水性組成物は、水中に分散された別々のポリマー粒子を含有し、かかる粒子の少なくともいくらかは、ポリマー(a)、ポリマー(b)、および相溶化剤(compatibilizer)の3つ全てを含有する。
【0025】
いくつかの実施態様において、ポリマー(a)の乾燥重量のポリマー(b)の乾燥重量に対する比は、0.5以上、または1以上、または2以上、または3以上である。独立して、いくつかの実施態様において、ポリマー(a)の乾燥重量のポリマー(b)の乾燥重量に対する比は、10以下、または8以下、または6以下、または5以下である。
【0026】
本発明の実施は、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、塩素化ポリオレフィン、およびその混合物から選択される相溶化剤の使用を含む。いくつかの実施態様において、水中に不溶性である1以上の相溶化剤が使用される。1グラム未満の化合物が25℃で水100グラム中に溶解するならば、この化合物は水中に不溶性である。いくつかの実施態様において、25℃で、100グラムの水中、0.3グラム以下、または0.1グラム以下、または0.03グラム以下の溶解度を有する、少なくとも1種の相溶化剤が使用される。いくつかの実施態様において、使用される全ての相溶化剤は水中に不溶性である。
【0027】
本明細書において用いられる場合、塩素化ポリオレフィンは、ハロゲン化ポリオレフィンであって、全てのハロゲンが塩素であるものである。好適な塩素化ポリオレフィンは、例えば、塩素化ポリエチレン(CPE)である。
【0028】
独立して、いくつかの実施態様において、ポリマー(a)およびポリマー(b)の一方または両方と「溶媒相溶性」である、少なくとも1種の相溶化剤が使用される。少なくとも1種の溶媒中で、これら2つの物質のそれぞれが25℃で溶媒100グラムあたり1グラム以上の量で溶解するような、当該少なくとも1種の溶媒が見出されるならば、本明細書において、2つの物質は互いに「溶媒相溶性」であると言われる。いくつかの実施態様において、ポリマー(a)およびポリマー(b)の両方と溶媒相溶性である少なくとも1種の相溶化剤が使用される。いくつかの実施態様において、ポリマー(a)、ポリマー(b)、および相溶化剤のそれぞれが、個々に、25℃で溶媒中に、溶媒100グラムあたり物質1グラム以上の量で可溶性である溶媒が使用される。
【0029】
いくつかの実施態様において、相溶化剤の乾燥重量の、ポリマー(a)およびポリマー(b)の乾燥重量の合計に対する比は、0.01以上、または0.03以上、または0.1以上、または0.15以上、または0.2以上である。独立して、いくつかの実施態様において、相溶化剤の乾燥重量の、ポリマー(a)およびポリマー(b)の乾燥重量の合計に対する比は、0.5以下、または0.4以下、または0.3以下である。
【0030】
いくつかの実施態様において、相溶化剤は、少なくとも1種のエポキシ樹脂を含む。いくつかの実施態様において、本発明の組成物は、任意の有意な量(本明細書において前記定義のとおり)のフェノール樹脂を含まない。いくつかの実施態様において、組成物はフェノール樹脂を含まない。独立して、いくつかの実施態様において、本発明の組成物は、任意の有意な量の塩素化ポリオレフィンを含まない。いくつかの実施態様において、本発明の組成物は、塩素化ポリオレフィンを含まない。
【0031】
相溶化剤が少なくとも1種のフェノール樹脂を含む実施態様において、好適なフェノール樹脂は、例えば、レゾルシノールタイプのフェノール樹脂、ノボラックタイプのフェノール樹脂、およびその混合物を含む。
【0032】
相溶化剤が少なくとも1種のエポキシ樹脂を含む実施態様において、好適なエポキシ樹脂組成物は、例えば、エポキシフェノール−ノボラック、エポキシクレゾール−ノボラック、ビスフェノールAのジグリシジルエーテル類、トリグリシジルイソシアヌレート樹脂、N,N,N,N−テトラグリシジル−4,4−ジアミノジフェニルメタン、類似の樹脂、およびその混合物を包含する。いくつかの実施態様において、相溶化剤は、1種以上のエポキシクレゾール−ノボラック樹脂を含む。
【0033】
相溶化剤が少なくとも1種のエポキシ樹脂を含む実施態様において、エポキシ樹脂組成物の種類と独立して、エポキシ樹脂は、その分子量により有用に特徴づけることができる。いくつかの好適なエポキシ樹脂は、例えば、200以上、または500以上、または750以上、または1000以上の分子量を有する。独立して、いくつかの好適なエポキシ樹脂は、例えば、5000以下、または2500以下、または2000以下、または1500以下の分子量を有する。
【0034】
相溶化剤が少なくとも1種のエポキシ樹脂を含む実施態様において、エポキシ樹脂の種類と独立して、エポキシ樹脂は、そのエポキシ価により有用に特徴づけることができる。いくつかの好適なエポキシ樹脂は、例えば、1キログラムあたりの当量で、1以上、または2以上、または3以上、または4以上のエポキシ価を有する。独立して、好適なエポキシ樹脂は、例えば、1キログラムあたりの当量で、8以下、または7以下、または6以下のエポキシ価を有する。
【0035】
いくつかの実施態様において、本発明の組成物は、1以上の追加の成分を含有する。それぞれのこのような成分の量は、PHR(本明細書においては、成分の乾燥重量の、ポリマー(a)、ポリマー(b)、および相溶化剤の乾燥重量の合計に対する比の100倍として定義される)により特徴づけられる。
【0036】
いくつかの実施態様において、本発明の組成物は、1種以上のポリマー系界面活性剤を含有する。一つの好適なポリマー系界面活性剤は、例えば、ポリビニルアルコール(PVOH)である。ポリマー系界面活性剤が使用される実施態様において、ポリマー系界面活性剤の好適な量のいくつかは、例えば、1PHR以上、または2PHR以上である。独立して、ポリマー系界面活性剤が使用されるいくつかの実施態様において、ポリマー系界面活性剤の好適な量のいくつかは、例えば、10PHR以下、または8PHR以下、または6PHR以下、または5PHR以下である。
【0037】
いくつかの実施態様において、本発明の組成物は、1種以上のコロイド安定剤を含有する。いくつかの好適なコロイド安定剤は、例えば、セルロース化合物、例えば、ヒドロキシエチルセルロースである。コロイド安定剤が使用される実施態様において、コロイド安定剤の好適な量のいくつかは、例えば、0.1PHR以上、または0.2PHR以上、または0.3PHR以上である。独立して、コロイド安定剤が使用される実施態様において、コロイド安定剤の好適な量のいくつかは、例えば、1PHR以下、または0.8PHR以下、または0.6PHR以下である。
【0038】
いくつかの実施態様において、本発明の組成物は、1以上の非イオン性界面活性剤を含有する。いくつかの好適な非イオン性界面活性剤は、例えば、アルコキシレート、エチレンオキシドおよびプロピレンオキシドのコポリマー、およびその混合物である。好適なアルコキシレートの例には、例えば、構造、
R−O−(−CHCHO−)−H
(式中、Rは脂肪族基、芳香族基、脂肪族置換芳香族基、および芳香族置換脂肪族基、またはその混合物であり、xは5〜200である)を有するエトキシレートが含まれる。いくつかの実施態様において、Rはアルキル置換ベンゼンであり、構造R1−R2−(式中、R1は直鎖アルキル基であり、R2は芳香族環である)を有するものである。一つの好適な非イオン性界面活性剤はノニルフェノールエトキシレートである。
【0039】
非イオン性界面活性剤が使用される実施態様において、非イオン性界面活性剤の好適な量のいくつかは、3PHR以上、または5PHR以上、または8PHR以上である。独立して、非イオン性界面活性剤が使用される実施態様において、非イオン性界面活性剤の好適な量のいくつかは、30PHR以下、または20PHR以下、または15PHR以下である。
【0040】
いくつかの実施態様において、本発明の組成物は1以上のアニオン性界面活性剤を含有する。アニオン性界面活性剤が使用される実施態様において、アニオン性界面活性剤の好適な量のいくつかは、例えば、3PHR以上、または5PHR以上、または8PHR以上である。独立して、アニオン性界面活性剤が使用される実施態様において、アニオン性界面活性剤の好適な量のいくつかは、例えば、30PHR以下、または20PHR以下、または15PHR以下である。
【0041】
いくつかの実施態様において、本発明の組成物中のアニオン性界面活性剤の量は、0.1PHR以下、または0.01PHR以下である。いくつかの実施態様において、アニオン性界面活性剤は存在しない。
【0042】
いくつかの実施態様において、本発明の組成物は、1種以上のポリニトロソ化合物またはポリニトロソ前駆体またはその混合物を含有する。ポリニトロソ化合物は、隣接しない核炭素原子と直接結合した少なくとも2つのニトロソ基を含有する芳香族炭化水素である。本発明者らは、「核」炭素原子により、芳香族環の部分である炭素原子を意味する。好適な芳香族化合物は、縮合芳香核を包含する、1から3個の芳香核を有し得る。好適なポリニトロソ化合物は、隣接しない核炭素原子と直接結合した2〜6のニトロソ基を有し得る。核炭素原子と結合した1以上の水素原子が、例えば、アルキル、アルコキシ、シクロアルキル、アリール、アルアルキル、アルカリール、アリールアミン、アリールニトロソ、アミノ、およびハロゲンなどの有機または無機置換基により置換されている、置換ポリニトロソ化合物も、ポリニトロソ化合物の種類に含まれる。いくつかの実施態様において、本発明の組成物は、2個のニトロソ基を有する1種以上のポリニトロソ化合物を含有する。
【0043】
いくつかの実施態様において、化学式R−Ar−(NO)(式中、Arはフェニレンまたはナフタレンであり、Rは1〜20個の炭素原子を有する1価有機基、アミノ基、またはハロゲンであり、mは0、1、2、3、または4である)を有する1以上のポリニトロソ化合物が使用される。mが1より大きいならば、mR基は互いに同一であるか、または異なってもよい。Rは、いくつかの実施態様において、1〜20個の炭素原子を有するアルキル、シクロアルキル、アリール、アルアルキル、アルカリール、アリールアミン、またはアルコキシ基であるか、あるいはRは、いくつかの実施態様において、1〜8個の炭素原子を有するアルキル基である。独立して、いくつかの実施態様において、mの値は0である。
【0044】
好適なポリニトロソ化合物の数例は、m−ジニトロソベンゼン、p−ジニトロソベンゼン、m−ジニトロソナフタレン、p−ジニトロソナフタレン、2,5−ジニトロソ−p−シメン、2−メチル−1,4−ジニトロソベンゼン、2−メチル−5−クロロ−1,4−ジニトロソベンゼン、2−フルオロ−1,4−ジニトロソベンゼン、2−メトキシ−1,3−ジニトロソベンゼン、2−ベンジル−1,4−ジニトロソベンゼン、2−シクロヘキシル−1,4−ジニトロソベンゼン、およびその混合物である。いくつかの実施態様において、ジニトロソベンゼン類、置換ジニトロソベンゼン類、ジニトロソナフタレン類、置換ジニトロソナフタレン類、およびその混合物から選択される1種以上のポリニトロソ化合物が使用される。
【0045】
ポリニトロソ化合物の種類には、前記のような、ポリマー形態において存在する化合物(本明細書において、「ポリマー系ポリニトロソ化合物」と呼ばれる)、Czerwinski、米国特許第4,308,365号において記載されている化合物、およびHargisら、米国特許第5,478,654号に記載されている化合物が含まれる。いくつかの実施態様において、p−ジニトロソベンゼンのポリマー形態、1,4−ジニトロソナフタレンのポリマー形態、およびその混合物から選択される1種以上のポリニトロソ化合物が使用される。いくつかの実施態様において、1,4−ジニトロソベンゼンのポリマー形態が使用される。
【0046】
ポリニトロソ前駆体は、その少なくとも1つの生成物がポリニトロソ化合物である化学反応が可能な化合物である。いくつかの好適なポリニトロソ前駆体は、例えば、本明細書において前述のポリニトロソ化合物のいずれかの還元により製造できる化合物の構造を有する化合物である。いくつかの好適な前駆体は、例えば、置換p−キノンジオキシム類、p−キノンジオキシム、およびその混合物である。
【0047】
本発明の組成物がポリニトロソ化合物、ポリニトロソ前駆体、またはその混合物を含有するいくつかの実施態様において、ポリニトロソ化合物、ポリニトロソ前駆体、またはその混合物の量は、例えば、0.5PHR以上、または1PHR以上、または1.5PHR以上でありうる。独立して、いくつかの実施態様において、ポリニトロソ化合物、ポリニトロソ前駆体、またはその混合物の量は、たとえば、40PHR以下、または15PHR以下、または10PHR以下、または5PHR以下、または2.5PHR以下でありうる。
【0048】
いくつかの実施態様において、本発明の組成物は1種以上の防食顔料を含有する。いくつかの好適な防食顔料は、例えば、酸化鉛、酸化亜鉛、モリブデン酸塩で修飾された酸化亜鉛、他の顔料、およびその混合物である。いくつかの実施態様において、防食顔料は使用されない。防食顔料が存在するいくつかの実施態様において、防食顔料の量は、例えば、2PHR以上、または5PHR以上、または8PHR以上でありうる。独立して、防食顔料が存在するいくつかの実施態様において、防食顔料の量は、例えば、20PHR以下、または15PHR以下、または12PHR以下でありうる。
【0049】
いくつかの実施態様において、本発明の組成物は粘土を含有する。いくつかの実施態様において、粘土は使用されない。粘土が存在するいくつかの実施態様において、粘土の量は、例えば、2PHR以上、または5PHR以上、または8PHR以上でありうる。独立して、粘土が存在する実施態様において、粘土の量は、例えば、20PHR以下、または15PHR以下、または12PHR以下でありうる。
【0050】
いくつかの実施態様において、本発明の組成物は、カーボンブラックを含有する。いくつかの実施態様において、カーボンブラックは使用されない。カーボンブラックが存在する実施態様において、カーボンブラックの量は、例えば、2PHR以上、または5PHR以上、または8PHR以上でありうる。独立して、カーボンブラックが存在する実施態様において、カーボンブラックの量は、例えば、20PHR以下、または15PHR以下、または12PHR以下でありうる。
【0051】
いくつかの実施態様において、本発明の組成物は、二酸化マンガンを含有する。いくつかの実施態様において、二酸化マンガンは使用されない。二酸化マンガンが存在する実施態様において、二酸化マンガンの量は、例えば、5PHR以上、または10PHR以上、20PHR以上でありうる。独立して、二酸化マンガンが存在する実施態様において、二酸化マンガンの量は、例えば、60PHR以下、または30PHR以下でありうる。
【0052】
いくつかの実施態様において、本発明の組成物は、1種以上の分散剤を含有する。分散剤は、本明細書において用いられる場合、例えば、ポリマー系界面活性剤、ポリマー系コロイド安定剤、無機顔料の分散に通常用いられる分散剤、アニオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、およびその混合物を包含する。いくつかの実施態様において、分散剤は使用されない。1種以上の分散剤が使用されるいくつかの実施態様において、分散剤の量は、例えば、0.5PHR以上、または1.0PHR以上、または1.5PHR以上でありうる。独立して、1以上の分散剤が使用されるいくつかの実施態様において、分散剤の量は、例えば、10PHR以下、または5PHR以下、または2.5PHR以下でありうる。
【0053】
いくつかの実施態様において、本発明の組成物は、1種以上のアミンを含有する。1種以上のアミンが使用されるいくつかの実施態様において、アミンの量は、例えば、0.1PHR以上、または0.2PHR以上、または0.5PHR以上でありうる。独立して、1以上のアミンが使用されるいくつかの実施態様において、アミンの量は、例えば、4PHR以下、または3PHR以下、または2PHR以下でありうる。
【0054】
本発明の水性接着剤組成物は、任意の方法により製造できる。いくつかの好適な方法は、例えば、有機溶媒中溶液の使用を含む。すなわち、少なくとも1種のポリマー(a)、少なくとも1種のポリマー(b)、および少なくとも1種の相溶化剤のうちのいずれか1つ、いずれか2つ、または3つ全てを含有する、有機溶媒中溶液を製造できる。いくつかの実施態様において、有機溶媒は、水と混和性でない。独立して、いくつかの実施態様において、100℃未満の沸点を有する溶媒が使用される。いくつかの好適な有機溶媒は、例えば、アルキル芳香族化合物、例えば、ベンゼン、トルエン、またはキシレンをはじめとする、25℃で液体である芳香族および置換芳香族化合物である。
【0055】
ポリマー(a)、ポリマー(b)、および相溶化剤の1以上の有機溶媒中溶液を使用するいくつかの実施態様において、かかる溶液は、乳化のプロセスによりラテックスに変換される。このようなプロセスにおいて、例えば、以下の1以上を溶液に、通常、高剪断速度を維持しつつ添加することができる:少なくとも1種のポリマー系界面活性剤、少なくとも1種のコロイド安定剤、少なくとも1種の非イオン性界面活性剤、少なくとも1種のアニオン性界面活性剤、またはその任意の組み合わせ。いくつかの乳化プロセスにおいて、例えば、通常、高剪断速度を維持しつつ、水を次に添加することができる。いくつかのプロセスにおいて、例えば、高剪断速度を維持しつつ、水をゆっくりと添加し、少量の水で、溶液は油中水エマルジョンになり、これは十分高い水含量で水中油エマルジョンに転化する。水中油エマルジョンについては、例えば、次に有機溶媒を例えば真空ストリッピングにより除去される。有機溶媒がこのように除去される場合、いくつかの実施態様において、残存する溶媒の量は、エマルジョンの合計重量に基づいた溶媒の重量で、2%以下、または1%以下、または0.5%以下である。このようなプロセスの結果、水中に別々の粒子が分散され、これらの粒子のいくつかはポリマー(a)、ポリマー(b)、相溶化剤、またはその混合物の1以上を含有する。水中に分散された少なくとも1つのポリマーの別々の粒子を含有する分散液は本明細書においてラテックスと呼ばれる。
【0056】
高剪断は、通常の混合装置により付与されるよりも高い剪断を付与する装置を用いることにより、通常、組成物に付与される。高剪断を付与する装置は、通常、例えば、乳化機またはホモジナイザーとして知られている。このような装置の数例は、Ross Mixer Emulsifier unit、Cowles Disperser、任意のインラインローターステーターシステム、および水/溶媒系に高剪断速度を機械的にインプットするために設計された任意の他の装置である。
【0057】
有機溶媒がラテックスから除去される場合、任意の除去法を使用できる。かかる除去を行うために使用できる装置の数例は、破泡ユニットを有するストリッピング容器、薄膜エバポレーター、または仕上げ処理されたエマルジョンから溶媒を抽出するために設計される任意の他の装置を含む。
【0058】
いくつかの実施態様において、例えば、本明細書における前述の方法を用いて、ラテックスを提供することにより、水性接着剤組成物が製造される。例えば、かかるラテックスは「ABCラテックス」であることができ、これは本明細書において、少なくとも1種のポリマー(a)、少なくとも1種のポリマー(b)、および少なくとも1種の相溶化剤を含有するラテックスとして定義される。
【0059】
ABCラテックスを含むいくつかの実施態様において、例えばABCラテックスは、ABCラテックスを形成するプロセスの間にABCラテックスにすでに添加された任意の分散促進化合物に加えて、1種以上の分散促進化合物(本明細書において、ポリマー系界面活性剤、コロイド安定剤、非イオン性界面活性剤、およびアニオン性界面活性剤として定義される)と混合することができる。ABCラテックスの形成後に、1種以上の分散促進化合物がABCラテックスに添加される実施態様において、ABCラテックスの形成後にABCラテックスに添加される全ての分散促進化合物の乾燥重量の、ABCラテックスの形成の間にABCラテックスに添加された全ての分散促進化合物の乾燥重量に対する比は、例えば0、または0.02以上、または0.05以上、または0.2以上、または0.1以上でありうる。独立して、ABCラテックスの形成後にABCラテックスに添加される全ての分散促進化合物の乾燥重量の、ABCラテックスの形成の間にABCラテックスに添加された全ての分散促進化合物の乾燥重量に対する比は、例えば2以下、または1以下、または0.5以下、または0.25以下でありうる。
【0060】
独立して、本発明の組成物の形成は、例えば、ABCラテックスを次のものの1以上と混合することを含む:1種以上のポリニトロソ化合物、1種以上の防食顔料、粘土、カーボンブラック、二酸化マンガン、アミン、または前記のもののいくつかまたは全部の混合物。
【0061】
いくつかの実施態様において、本発明の組成物は、有意な量(前記定義のとおりである)のポリイソシアネートを含有しない。ポリイソシアネートは、2以上のイソシアネート基を有する化合物である。いくつかの実施態様において、本発明の組成物は、有意な量のイソシアネート化合物を含有しない。いくつかの実施態様において、本発明の組成物はポリイソシアネートを含有しない。いくつかの実施態様において、本発明の組成物はイソシアネート化合物を含有しない。
【0062】
いくつかの実施態様において、本発明の水性接着剤組成物は、2以上の基体を一緒に接着させるために使用される。例えば、水性接着剤組成物の層を第一基体に適用することができる。いくつかの実施態様において、接着剤組成物の層は、場合によって、接着剤組成物の層を任意の追加の基体と接触させる前に乾燥してもよい。いくつかの実施態様において、少なくとも1つの追加の基体を接着剤組成物の層と接触させる。
【0063】
いくつかの実施態様において、金属である第一基体が使用される。一つの好適な金属はスチールである。このような実施態様のいくつかにおいて、水性接着剤組成物の層を金属に適用し、次いで、随意に25℃よりも高い温度で乾燥する。いくつかの実施態様において、未硬化ゴム配合物(グリーンゴム、架橋化学物質、および随意に、他の成分を含む)の層を次いで(随意に乾燥された)接着剤組成物の層に適用する。こうして形成された物品を、いくつかの実施態様において、125℃よりも高く加熱して、ゴム配合物を硬化させる。
【0064】
いくつかの実施態様において、水性接着剤組成物の層を金属基体に適用し、乾燥させる。かかる実施態様において、プライマーは金属に適用させてもさせなくともよく乾燥させてもさせなくともよく、適用させる場合は、次いで本発明の水性接着剤の層をプライマーの層に適用することもできる。プライマーが使用されるかどうかに関わらず、金属基体を含むいくつかの実施態様において、金属基体および乾燥された接着剤組成物をプリベーク(すなわち、特定のゴム配合物の硬化に適切な温度に加熱)する。次いで、金属基体および乾燥された接着剤組成物を前記温度に一定時間保持した後、特定の未硬化ゴム配合物の層を乾燥された接着剤配合物の層に適用し、ゴム配合物を硬化させるために十分な時間、温度に、こうして形成された物品を保持する。
【0065】
本明細書および特許請求の範囲の目的上、ここで言及されている範囲および比の限度は組み合わせられ得ることを理解すべきである。例えば、ある特定のパラメーターに対して60から120まで、および80から110までの範囲が言及されている場合には、60から110まで、および80から120までの範囲も意図されている。さらに別の例として、ある特定のパラメーターに対して1、2および3の好適な最小値が言及されており、また、このパラメーターに対して9および10の好適な最大値が言及されている場合には、以下の範囲もすべて意図されているものと理解される:1から9まで、1から10まで、2から9まで、2から10まで、3から9まで、および3から10まで。
【実施例】
【0066】
実施例1:ラテックス
ラテックスの製造において使用された成分。
【表1】

【0067】
ポリマーラテックスは次のようにして製造した。
a.エマルジョンを製造するために使用される容器中にBPDCD(キシレン中40重量%溶液)を入れ、アジテーターを開始させた。
b.撹拌しながら、固体CSMポリマーおよび相溶化ポリマー(固体または液体形態、溶液でない)を添加し、全てのポリマーが溶解するまで室温で混合した。
c.使用される装置の最大まで撹拌を増大させた(Cowlesミキサーが使用された場合には、撹拌は3500rpmを超えた;混合乳化機またはローターステーターが使用された場合には、撹拌は5000rpmを超えた;異なる装置を使用することによる効果の差は観察されなかった)。界面活性剤およびコロイド安定化物質(前記リストの最初の4つの成分)をポリマー溶液に添加し、次の物質に取りかかる前に固体界面活性剤を溶解させた。
d.全ての界面活性剤を入れた時点で、溶液は均質であり、60〜70分かかるように水をゆっくりと添加した。反転点(inversion point)に達したら、水の添加速度を増大させた。反転点は、エマルジョンの粘度が濃厚なペーストと同程度の最大値に達する点であり、追加の水を急速に添加すると、粘度が低下する。これは、エマルジョンが油中水エマルジョンから水中油エマルジョンに移行する点である。
e.水が全て添加されたら、バッチをストリッピング容器に移し、バッチを次に70〜80℃に加熱した。
f.バッチが所望の温度に達したら、容器中の圧力を低下させて、溶媒を除去した。
注:エマルジョン1B−Cに関して、CSMおよびCPEを溶媒に添加し、溶解させ、プロセスは前記のように進行させた。
【0068】
実施例2:接着剤組成物
【表2】

【0069】
実施例3:接着剤配合物の試験
引っ張りボタン試験(本明細書においては「ボタン」)(ASTM D−429A)、90°剥離試験(本明細書において「剥離」)(ASTM D−429B)、およびプリベーク試験(ASTM D−429B)を用いて接着剤配合物を試験した。90°剥離試験および引っ張りボタン試験に関して、スチールバーを清浄化し、グリットブラストし、次いでRobond(商標)TR−100(Rohm and Haas Co.)で下塗りし、次いで0.0102mmから0.0152mm(0.0004インチから0.0006インチ)の厚さにスプレーすることにより、接着剤配合物でコートした。接着剤層を70℃で10分間乾燥した。次いで、ゴム層を適用し、次のようにして硬化させた。
【0070】
【表3】

【0071】
試験結果は次の通りであった。
【表4】

【0072】
サンプル2Aおよび比較サンプル2C−Cは、比較サンプル2C−Cが現在公知の水性接着剤において見られる典型的なCSMおよびCPEエマルジョンを使用する以外は類似している。これらの2つのサンプルはどちらも二酸化マンガンを含有していた。これらの2つのサンプルを比較した場合、2Aは常により良好な剥離およびボタン結果を有し、2Aは通常、より良好なプリベーク結果を有する。サンプル2Aを、ポリマー(a)、ポリマー(b)を含有し、相溶化剤を含有しない仮想サンプルと比較しなかった。理由は、かかる仮想サンプルはその不十分な保存安定性のために通常の使用において実行可能でないからである。従って、サンプル2Aを、水性接着剤において用いられることが知られている、典型的なCSMおよびCPEエマルジョンを含有するサンプル2C−Cと比較した。サンプル2C−Cは、通常の使用において実行可能な、従来から公知の組成物の中で、サンプル2Aに最もよく類似した接着剤組成物を示すものであると考えられる。結果は、サンプル2Aが改善された性能をもたらし、このことは、ポリマー(a)およびポリマー(b)を組み合わせて、以下により詳細に記載するように、保存安定性を失うことなく、両者の利点を得ることができることを示す。
【0073】
同様に、サンプル2Bおよび比較サンプル2D−Cは、比較サンプル2D−Cが、水性接着剤における使用に関して公知である典型的なCSMおよびCPEエマルジョンを含有する以外は類似している。これらのサンプルはどちらも二酸化マンガンなしで製造された。サンプル2Bおよびサンプル2D−C間の比較は、前述のような、サンプル2Aおよび2C−C間で行われたのと同じ種類の比較である。これらの2つのサンプルを比較した場合、2Bは常により良好な剥離およびボタン結果を有し、2Bは通常、より良好なプリベーク結果を有していた。
【0074】
実施例4:保存性試験
安定性試験サンプル4Aおよび比較4B−Cは次の成分を用いて製造された。物質は実施例1において記載されたものと同じであった。
【0075】
【表5】

【0076】
実施例1の手順を使用してラテックスを製造するために、各サンプルを使用した。溶媒を除去した後、各ラテックスを濾過し、フィルター上の凝固物の量を、ラテックスの合計重量(または固形分重量?)に基づいた重量%として記載した。凝固物の量は次の通りであった。
ラテックス4A:5%未満
比較ラテックス4B−C:5〜10%
【0077】
両ラテックスを室温(20℃〜25℃)で保存した。各ラテックスを、サンプルが製造された時点、次にその後の様々な時点で試験した。エマルジョンは長時間にわたって2相を形成するので、ラテックスを視覚的に検査して、混合後にラテックスが連続のままであるか(すなわち、凝固物が形成されたか)どうかを究明した。また、各ラテックスを検査中に、直径3.81cm(1.5インチ)の軸流インペラーを用いて、120回転/分で機械的混合に付し、ミキサー上に凝固物が堆積するかどうかを記録した。ミキサー上に凝固物が堆積せず、ラテックスが均一であるならば、ラテックスは「ok」と見なされた。
結果は次の通りであった。
【0078】
【表6】

【0079】
ラテックス4Aは連続のままであり、試験期間全体にわたって混合の間安定であった。比較ラテックス4B−Cは30および60日で混合に際して凝固物を示した。90日で、比較ラテックス4B−Cは使用不能になり、さらに試験できなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)1種以上の臭素置換オレフィンポリマー、
(b)1種以上のハロスルホン化オレフィンポリマー、
(c)エポキシ樹脂、フェノール樹脂、塩素化ポリオレフィン、およびその混合物からなる群から選択される1種以上の相溶化剤、
を含む水性接着剤組成物。
【請求項2】
前記相溶化剤が1種以上のエポキシ樹脂を含む請求項1記載の接着剤組成物。
【請求項3】
前記組成物が有効量のイソシアネートを含有しない請求項1記載の接着剤組成物。
【請求項4】
前記組成物中の前記のあらゆる臭素置換オレフィンポリマーが、ジエン分子の残基でないモノマー単位が存在しない置換ジエンポリマーである請求項1記載の接着剤組成物。
【請求項5】
前記臭素置換オレフィンポリマーが、少なくとも1種の混合ハロゲン置換オレフィンポリマーを含む請求項1記載の接着剤組成物。
【請求項6】
前記ハロスルホン化オレフィンポリマーがクロロスルホン化ポリエチレンを含む請求項1記載の接着剤組成物。
【請求項7】
基体を接着する方法であって、
(i)請求項1記載の接着剤組成物の1以上の層を第一基体に、場合によって前記第一基体にプライマーを適用した後に適用し、
(ii)前記接着剤組成物の前記層を乾燥し、および
(iii)少なくとも1つの追加の基体を前記接着剤組成物の前記層と接触させることを含み、
前記第一基体および前記追加の基体:の一方または両方がエラストマーである方法。
【請求項8】
前記第一基体が金属であり、および少なくとも1つの前記追加の基体がエラストマーである請求項7記載の方法。
【請求項9】
請求項7記載の方法により形成される物品。
【請求項10】
前記第一基体が金属であり、および少なくとも1つの前記追加の基体がエラストマーである請求項9記載の物品。

【公開番号】特開2008−121016(P2008−121016A)
【公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2007−294646(P2007−294646)
【出願日】平成19年11月13日(2007.11.13)
【出願人】(590002035)ローム アンド ハース カンパニー (524)
【氏名又は名称原語表記】ROHM AND HAAS COMPANY
【Fターム(参考)】