説明

エリアセンサの位置調整方法

【課題】エリアセンサから得られる画像データの四隅の欠け部のばらつきを目立たなくすることができるエリアセンサの位置調整方法を提供する。
【解決手段】撮像装置において結像レンズの出射側には、中心を結像レンズの光軸に合わせてエリアセンサが配置されている。このエリアセンサの位置調整方法は、エリアセンサから得られた画像データ22の四隅の欠け部221〜224の水平方向及び垂直方向のずれ量を算出し、このずれ量が0になるようにエリアセンサの位置を調整する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、監視用カメラや車載カメラ等の撮像装置に設けられるエリアセンサの位置調整方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、結像レンズとエリアセンサを組み合わせた監視用カメラや車載カメラが実用化されてきている。これらに使われる結像レンズは、広い撮像範囲を撮像できる事が好ましく、撮像する範囲を決める画角が広いレンズ(広角レンズ)であることが求められる。
【0003】
広角レンズでは一般的に射影方式と呼ばれる特性がある。この射影方式には、中心射影、立体射影、等立体角射影、正射影がある。この中で中心射影は撮像物の歪みが少なく、正射影は撮像物の中心部を拡大表示できる特徴があり、用途に応じて選択する。
【0004】
エリアセンサは結像レンズの出射側に配置される。このエリアセンサは、一般的に、表示するディスプレイに合わせて矩形(正方形または長方形)のものを用いることが多い。また、監視カメラや車載カメラでは、撮像する映像の垂直方向の情報よりも水平方向の情報の方が重要視される事が多い。このため、エリアセンサの長手方向を水平方向とし、広角レンズの画角を水平画角として規定することが既に知られている。
【0005】
ここで、中心射影のレンズと正射影のレンズとで同一のエリアセンサを用いて同じ水平画角のカメラを構成した場合、垂直画角と対角画角で差が出てくる。例えば、有効領域が3.84×2.88(mm)のエリアセンサを用いて水平画角を65°とすると、垂直画角は中心投射レンズ>正射影レンズとなり、対角画角は中心投射レンズ<正射影レンズとなる。
【0006】
このときに正射影の対角画角は90度以上になる。このため、エリアセンサから得られる矩形状の画像データには、結像レンズを固定しているレンズ押さえやカメラの筺体などが映り込んで画像の四隅(対角)が欠けてしまう。いわゆるケラレが発生する。
【0007】
実際のカメラでは、結像レンズの光軸に対してエリアセンサの中心がずれないように調整されている。これによりレンズ押さえや筺体は光軸に対して点対称に構成されるので、画像データの四隅の欠け部は同時に発生する。
【0008】
しかし、レンズ押さえや筺体の部品の公差、組付けずれにより、レンズ押さえの中心や筐体の中心とエリアセンサの中心とにずれが生じる。このため、結像レンズによって形成されるイメージサークルの中心とエリアセンサの中心とがずれてしまい、四隅の欠け部が上下左右にばらついて目立つという問題がある。
【0009】
そこで、上記の問題を解決するためにレンズの外側にレンズ押さえ(プリズム保持枠)を配置し、画像データの四隅に欠け部が生じないようにしている構成が開示されている(特許文献1参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献1では、レンズ押さえを配置する際にレンズ押さえや筺体の部品の公差、組付けずれの全てを考慮しなければならない。そのため、高い配置精度が要求され、配置作業が煩雑となる。そこで作業が煩雑とならないようにするため、欠け部が発生する事を前提として、欠け部のばらつきが目立たなくなるようにしてエリアセンサの位置を調整する方法が要求されている。
【0011】
本発明は、このような従来の課題に鑑みてなされたものであり、エリアセンサから得られる画像データの四隅の欠け部のばらつきを目立たなくすることができるエリアセンサの位置調整方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者等は、鋭意研究の結果、前記課題を解決するために以下のようなエリアセンサの位置調整方法を採用した。
【0013】
本発明のエリアセンサの位置調整方法は、
結像レンズの出射側に中心を当該結像レンズの光軸に合わせて配置されたエリアセンサの位置調整方法において、
前記エリアセンサから得られる矩形状の画像データの四隅の欠け部の水平方向と垂直方向のずれ量が0になるように前記エリアセンサの位置を調整することを特徴としている。
【発明の効果】
【0014】
本発明のエリアセンサの位置調整方法では、画像データの四隅の欠け部の水平方向と垂直方向のずれ量が0になるようにエリアセンサの位置を調整するようにした。これにより、四隅の欠け部は対称に配置される。よって、欠け部のばらつきを目立たなくすることができる。またこれにより、画像データの重要な情報の欠落を最小限に抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施の形態の撮像装置と位置ずれ算出装置を示す模式図である。
【図2】同実施の形態のイメージサークルと画像データとの関係を示す概念図である。
【図3】同実施の形態で画像データの四隅に欠け部が発生しているときの模式図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を図にしたがって説明する。
【0017】
図1は本発明の一実施の形態の撮像装置1と位置ずれ算出装置101(例えばPC)を示す模式図である。撮像装置1は、一列に配置された複数の結像レンズ(広角レンズ)2〜6と、結像レンズ2〜6の出射側に配置されたエリアセンサ7とを備えている。エリアセンサ7は矩形状に形成されており、中心を結像レンズ2〜6の光軸Oに合わせて配置されている。
【0018】
さらに撮像装置1は、結像レンズ2〜6の出射側にセンサ基板8が配置されている。このセンサ基板8上には前記エリアセンサ7が設けられている。センサ基板8にはハーネス(図示せず)の一端が接続されている。
【0019】
ハーネスの他端は電源(図示せず)に接続しており、電源からの電力をセンサ基板8を介してエリアセンサ7に供給している。さらにハーネスの他端は、位置ずれ算出装置101に接続しており、エリアセンサ7から出力された信号(出力信号)をセンサ基板8を介して位置ずれ算出装置101に伝達している。
【0020】
また、撮像装置1は、結像レンズ2〜6、エリアセンサ7、センサ基板8を覆う筺体9(一部のみ図示)を備えている。この筺体9は、結像レンズ2〜6やエリアセンサ7の位置固定、センサ基板8の防水と保護をしている。結像レンズ2〜6と筺体9との間にはレンズ押さえ10(一部のみ図示)が配置されている。このレンズ押さえ10は、結像レンズ2〜6を筺体9に押付けて固定している。
【0021】
位置ずれ算出装置101は前述したようにハーネスの他端に接続しており、本発明のエリアセンサ位置調整方法に使用される。この位置ずれ算出装置101は、画像解析手段102、画像解析手段102に接続したずれ量演算手段103、ずれ量演算手段103に接続したずれ量表示手段104(ディスプレイ等)とを備えている。以下に、位置ずれ算出装置101を用いたエリアセンサ位置調整方法について説明する。
【0022】
撮像対象物からの光(一点鎖線で図示)は結像レンズ2〜6を介してエリアセンサ7で結像される。エリアセンサ7で結像された対象物の像は光電変換されて信号(出力信号)として出力される。エリアセンサ7からの出力信号は、位置ずれ算出装置101の画像解析手段102に入力される。
【0023】
画像解析手段102では、エリアセンサ7からの出力信号を矩形状の画像データに変換するとともに、画像データの輝度情報から四隅の欠け部の情報を数値化する。数値化された四隅の欠け部は、ずれ量演算手段103によりエリアセンサ7の水平方向及び垂直方向のずれ量が算出される。このずれ量はずれ量表示手段104により表示されて使用者に認識される。使用者は、ずれ量表示手段104で表示された四隅の欠け部のずれ量が0になるようにエリアセンサ7の位置を光軸Oに対して垂直な面内で調整する。
【0024】
ここで、図2を用いて、結像レンズ2〜6によって形成されるイメージサークル21とエリアセンサ7から得られる画像データ22との関係について説明する。
【0025】
図2の(a)に示すように中心投射の場合は、イメージサークル21が画像データ22よりも大きくなるので画像データ22に欠け部は生じない。ところが、図2の(b)に示すように正射影の場合は、同じエリアセンサ7を用いて水平画角が同じレンズを用いた場合、画像データ22の四隅に欠け部(黒色の領域)が生じる。
【0026】
具体的に説明すると、結像レンズ2〜6の光軸Oとエリアセンサ7の中心とが合うようにエリアセンサ7を調整した場合、レンズ押さえ10や筺体9の公差、組付けずれによってイメージサークル21の中心位置(レンズ押え10や筺体9の中心位置)がエリアセンサ7の中心位置に対してずれる。これにより欠け部が非対称に発生してしまい、欠け部が目立つだけでなく、重要な情報が欠落してしまうことがある。
【0027】
本実施の形態では、イメージサークル21の中心とエリアセンサ7の中心とのずれを定量化し、つまり四隅の欠け部の水平方向及び垂直方向のずれ量を算出し、図2の(c)に示すように欠け部のばらつきが均等になるように画像データ22の位置(エリアセンサ7の位置)を調整する。
【0028】
四隅の欠け部の水平方向及び垂直方向のずれ量の算出方法は、例えば次の2つの方法が挙げられる。
(1)四隅の欠け部の面積からずれ量を算出する方法。
(2)四隅の欠け部の水平方向の長さ及び垂直方向の長さからずれ量を算出する方法。
各方法について以下に図3を用いて具体的に説明する。
【0029】
(1)四隅の欠け部の面積からずれ量を算出する方法。
この方法では、四隅の欠け部221〜224の面積を数値化し、左上の欠け部221の面積をs1、右上の欠け部222の面積をs2、左下の欠け部223の面積をs3、右下の欠け部224の面積をs4とする。
【0030】
この場合に四隅の欠け部221〜224の水平方向のずれ量φhor1は下記の式(1)から算出する。また、四隅の欠け部221〜224の垂直方向のずれ量φver1は下記の式(2)から算出する。
φhor1=(s1+s3)−(s2+s4)・・・(式1)
φver1=(s1+s2)−(s3+s4)・・・(式2)
【0031】
式(1)において左側の欠け部221、223の面積s1、s3が大きい場合は、水平方向のずれ量φhor1が0よりも大きくなる。また、右側の欠け部222、224の面積s2、s4が大きい場合は、水平方向のずれ量φhor1が0よりも小さくなる。このため、欠け部221〜224のばらつきが目立つことになる。
【0032】
式(2)において上側の欠け部221、222の面積s1、s2が大きい場合は、垂直方向のずれ量φver1が0よりも大きくなる。また、下側の欠け部223、224の面積s3、s4が大きい場合は、垂直方向のずれ量φver1が0よりも小さくなる。このため、欠け部221〜224のばらつきが目立つことになる。
【0033】
したがって水平方向のずれ量φhor1と垂直方向のずれ量φver1とが0になるように画像データ22の位置(エリアセンサ7の位置)を調整すれば四隅の欠け部221〜224の面積s1〜s4は等しくなり、対称に配置される。よって、本実施の形態のエリアセンサ7の位置調整方法は、エリアセンサ7から得られる画像データ22の四隅の欠け部221〜224のばらつきを目立たなくすることができる。またこれにより、画像データ22の重要な情報の欠落を最小限に抑えることができる。
【0034】
(2)四隅の欠け部の水平方向の長さ及び垂直方向の長さからずれ量を算出する方法。
図3に示すように各欠け部221〜224の形状は直角三角形に近似している。このことから、各欠け部221〜224の短い2辺の長さ(水平方向の長さ及び垂直方向の長さ)を数値化してずれ量を算出する。
【0035】
具体的に説明すると、左上の欠け部221の水平方向の長さをh1、垂直方向の長さをp1、右上の欠け部222の水平方向の長さをh2、垂直方向の長さをp2、左下の欠け部223の水平方向の長さをh3、垂直方向の長さをp3、右下の欠け部224の水平方向の長さをh4、垂直方向の長さをp4とする。
【0036】
この場合に四隅の欠け部221〜224の水平方向のずれ量φhor2は下記の式(3)から算出する。また、四隅の欠け部221〜224の垂直方向のずれ量φver2は下記の式(4)から算出する。
φhor2=(h1+h3)−(h2+h4)・・・(式3)
φver2=(p1+p2)−(p3+p4)・・・(式4)
【0037】
式(3)において左側の欠け部221、223の水平方向の長さh1、h3が大きい場合は、水平方向のずれ量φhor2が0よりも大きくなる。また、右側の欠け部222、224の水平方向の長さh2、h4が大きい場合は、水平方向のずれ量φhor2が0よりも小さくなる。このため、欠け部221〜224のばらつきが目立つことになる。
【0038】
式(4)において上側の欠け部221、222の垂直方向の長さp1、p2が大きい場合には垂直方向のずれ量φver2が0よりも大きくなる。また、下側の欠け部223、224の垂直方向の長さp3、p4が大きい場合には垂直方向のずれ量φver2が0よりも小さくなる。このため、欠け部221〜224のばらつきが目立つことになる。
【0039】
したがって、水平方向のずれ量φhor2と垂直方向のずれ量φver2とが0になるように画像データ22の位置(エリアセンサ7の位置)を調整すれば、四隅の欠け部221〜224の水平方向の長さh1〜h4と垂直方向の長さp1〜p4は等しくなり、四隅の欠け部221〜224は対称に配置される。よって、本実施の形態のエリアセンサ7の位置調整方法は、エリアセンサ7から得られる画像データ22の四隅の欠け部221〜224のばらつきを目立たなくすることができ、重要な情報の欠落を最小限に抑えることができる。
【0040】
以上、本発明に係る実施例を例示したが、この実施例は本発明の内容を限定するものではない。また、本発明の請求項の範囲を逸脱しない範囲であれば、各種の変更等は可能である。
【符号の説明】
【0041】
2〜6 結像レンズ
7 エリアセンサ
22 画像データ
221〜224 画像データの四隅の欠け部
s1〜s4 四隅の欠け部の面積
h1〜h4 四隅の欠け部の水平方向の長さ
p1〜p4 四隅の欠け部の垂直方向の長さ
φhor1 四隅の欠け部の水平方向のずれ量
φver1 四隅の欠け部の垂直方向のずれ量
φhor2 四隅の欠け部の水平方向のずれ量
φver2 四隅の欠け部の垂直方向のずれ量
【先行技術文献】
【特許文献】
【0042】
【特許文献1】特開2009−180805号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
結像レンズの出射側に中心を当該結像レンズの光軸に合わせて配置されたエリアセンサの位置調整方法において、
前記エリアセンサから得られる矩形状の画像データの四隅の欠け部の水平方向と垂直方向のずれ量が0になるように前記エリアセンサの位置を調整することを特徴とするエリアセンサの位置調整方法。
【請求項2】
請求項1に記載のエリアセンサの位置調整方法において、
前記画像データの四隅の欠け部の面積を数値化し、左上の欠け部の面積をs1、右上の欠け部の面積をs2、左下の欠け部の面積をs3、右下の欠け部の面積をs4とした場合に、下記の式1で算出される前記四隅の欠け部の水平方向のずれ量φhor1と下記の式2で算出される前記四隅の欠け部の垂直方向のずれ量φver1とが0になるように前記エリアセンサの位置を調整することを特徴とするエリアセンサの位置調整方法。
φhor1=(s1+s3)−(s2+s4)・・・(式1)
φver1=(s1+s2)−(s3+s4)・・・(式2)
【請求項3】
請求項1に記載のエリアセンサの位置調整方法において、
前記画像データの四隅の欠け部の水平方向の長さ及び垂直方向の長さを数値化し、
左上の欠け部の水平方向の長さをh1、垂直方向の長さをp1、
右上の欠け部の水平方向の長さをh2、垂直方向の長さをp2、
左下の欠け部の水平方向の長さをh3、垂直方向の長さをp3、
右下の欠け部の水平方向の長さをh4、垂直方向の長さをp4とした場合に、
下記の式3で算出される前記四隅の欠け部の水平方向のずれ量φhor2と下記の式4で算出される前記四隅の欠け部の垂直方向のずれ量φver2とが0になるように前記エリアセンサの位置を調整することを特徴とするエリアセンサの位置調整方法。
φhor2=(h1+h3)−(h2+h4)・・・(式3)
φver2=(p1+p2)−(p3+p4)・・・(式4)


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−38620(P2013−38620A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−173538(P2011−173538)
【出願日】平成23年8月9日(2011.8.9)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】