説明

エレクトロクロミック表示デバイス

【課題】表示・消去を繰り返すことによる表示性能の劣化及び経時保存による表示性能の劣化を解消することができるとともに、高速で駆動しても十分な表示濃度を得ることができる、ロイコ染料を用いたエレクトロクロミック表示デバイスを提供する。
【解決手段】第1基板10、第1電極20…、第2基板30、第2電極40…、エレクトロクロミック組成物層50を備え、第1電極20…と第2電極40…との間の通電によって表示を実施するとともに、第1電極20…と第2電極40…との間に表示のための通電とは逆方向の通電によって表示の消去を実施するエレクトロクロミック表示デバイス100において、エレクトロクロミック組成物層50にロイコ染料52a、支持電解質、極性溶剤を含むエレクトロクロミック組成物52を備え、エレクトロクロミック組成物52にハイドロキノン類の化合物、コハク酸イミド類の化合物及びピリジニウム塩類の化合物を添加した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレクトロクロミック表示デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
電子情報ネットワークの普及に伴い、従来の印刷技術による書籍に代わり、電子書籍の形での出版、すなわち電子出版が盛んに行われるようになってきた。こうしたネットワークで配信される電子情報を表示させる装置として、例えば、CRT(Cathode Ray Tube)ディスプレイやバックライト型液晶ディスプレイが一般的に用いられている。しかしながら、これらのディスプレイを用いた表示は、紙に印刷した慣用の表示に比べ、読む場所が制限され、取り扱いの面においても重量、大きさ、形状、携帯性の点で劣る。また、これらのディスプレイは消費電力が大きいため、電池による駆動であれば表示時間にも制限が生じてしまう。さらに、これらのディスプレイは、何れも発光型のディスプレイであり、長時間凝視すると高度の疲労を招くことがあるという問題もある。
【0003】
したがって、上記のような問題を解決できる表示デバイス、さらには、書き換え可能な表示デバイスが望まれている。このような表示デバイスとして、ペーパーライクディスプレイ或いは電子ペーパーと称するものが提案されている。具体的には、例えば、反射型液晶方式の表示デバイス、電気泳動方式の表示デバイス、二色性の粒子を電場で回転させる方式の表示デバイス、エレクトロクロミック方式の表示デバイス(例えば、特許文献1〜5参照)、などがこれまでに提案されている。
【0004】
ところで、エレクトロクロミック方式の表示デバイス(エレクトロクロミック表示デバイス)においては、表示材料として、例えば、電極の表面で発色するロイコ染料などの染料前駆体を必須成分とするエレクトロクロミック組成物が用いられている。ロイコ染料は、感熱記録などの記録材料として汎用であるため入手・調達が容易であり、また、各色を表示できる可能性があることから、エレクトロクロミック材料として優れた素材である。しかしながら、ロイコ染料を用いたエレクトロクロミック表示デバイスは、例えば、表示・消去を繰り返すと、次第に表示性能が劣化して、表示の背景が着色してきたり、表示濃度が薄くなってきたりするといった不安定要因を抱えている。
【0005】
また、ロイコ染料を用いたエレクトロクロミック表示デバイスは、長期間保存したり、高温環境下で放置したりすると、表示の背景色が着色してきたり、表示濃度が薄くなってきたりするといった、経時保存による表示性能の劣化が生じ、ロイコ染料を用いたエレクトロクロミック表示デバイスの製品化の障害となっている。
【0006】
また、ロイコ染料を用いたエレクトロクロミック表示デバイスは、TFT(Thin Film Transistor)などの高価な材料を用いずに駆動できるパッシブマトリックス駆動による表示デバイスとして用いた場合、高速で駆動すると十分な表示濃度を得ることができず、十分な発色濃度を得るためにはラインあたり数100ミリ秒の書き込み速度を要する。すなわち、例えば、ロイコ染料を用いたエレクトロクロミック表示デバイスを電子ブックとして応用した場合、解像度を比較的粗いQVGA(Quarter Video Graphics Array)とした場合であっても、書き込み速度をラインあたり100ミリ秒として計算すると、1ページ分を表示するためには32秒程度要することになる。そのため、ロイコ染料を用いたエレクトロクロミック表示デバイスを電子ブックとして応用するためには、高価なTFTを用いるアクティブマトリックス駆動を採用せざるを得ず、コスト高となり、ロイコ染料を用いたエレクトロクロミック表示デバイスの商品展開の障害の1つとなっている。
【特許文献1】特開2005−338356号公報
【特許文献2】特公平07−037611号公報
【特許文献3】特開2007−052236号公報
【特許文献4】特開2003−302659号公報
【特許文献5】特開2007−010975号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1〜5記載の技術であっても、ロイコ染料を用いたエレクトロクロミック表示デバイスにおいて、表示・消去を繰り返すことによる表示性能の劣化を解消すること、経時保存による表示性能の劣化を解消すること、及び、高速で駆動しても十分な表示濃度を得ることを同時に実現することができない。
【0008】
本発明の課題は、表示・消去を繰り返すことによる表示性能の劣化及び経時保存による表示性能の劣化を解消することができるとともに、高速で駆動しても十分な表示濃度を得ることができる、ロイコ染料を用いたエレクトロクロミック表示デバイスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、
第1基板と、前記第1基板の上面に設けられた第1電極と、前記第1基板の上方に当該第1基板に対向して設けられ、透明な材料により形成された第2基板と、前記第2基板の下面に設けられ、少なくとも一部が透明な電極材料により形成された第2電極と、前記第1基板と前記第2基板との間に設けられたエレクトロクロミック組成物層と、を備えるエレクトロクロミック表示デバイスにおいて、
前記エレクトロクロミック組成物層は、ロイコ染料と、支持電解質と、極性溶剤と、を含むエレクトロクロミック組成物を備え、
前記エレクトロクロミック組成物には、下記の一般式(1)で表される化合物及び/又は下記の一般式(2)で表される化合物、下記の一般式(3)で表される化合物及び/又は下記の一般式(4)で表される化合物、並びに、下記の一般式(5)で表される化合物が添加されていることを特徴とする。
【化1】

(式中R1、R2、R3、R4は、水素原子、アルキル基、アリル基、アルコキシ基、水酸基、ニトロ基、アルキルカルボニル基、ホルミル基、カルボキシル基又はアルコキシカルボニル基を表す。或いは、式中R1とR2及び/又は式中R3とR4は、互いに縮合して形成された5員又は6員の縮合環を表す。ただし、式中R1、R2、R3、R4のすべてが水素原子であることは無い。)
【化2】

(式中R5、R6、R7、R8は、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アリル基、水酸基、ニトロ基、アルキルカルボニル基、ホルミル基、カルボキシル基又はアルコキシカルボニル基を表す。或いは、式中R5とR6、式中R6とR7及び/又は式中R7とR8は、互いに縮合して形成された5員又は6員の縮合環を表す。ただし、式中R5、R6、R7、R8のすべてが水素原子であることは無い。)
【化3】

(式中R9、R10、R11、R12は、水素原子を表す。或いは、式中R9とR11、式中R9とR12、式中R10とR11又は式中R10とR12は、互いに結合して形成された二重結合を表す。)
【化4】

(式中Z及び点線は、環を形成している状態を表し、当該環が脂肪族の環の場合は、置換若しくは無置換のシクロヘキシル基を表し、当該環が芳香族の環の場合は、置換若しくは無置換のフェニル基又は置換若しくは無置換のナフチル基を表す。)
【化5】

(式中R13は、炭素数1から16の直鎖又は分岐したアルキル基、ハロゲン原子を表す。式中R14、R15、R16は、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アルキルカルボニル基、アルコキシ基、カルボニルアルコキシ基又はジアルキルアミノ基を表す。式中Xは、ハロゲン原子、BF基、PF基、CHSO基、CFSO基、p−トルエンスルホン酸基を表す。ただし、式中R13とXとが同時にハロゲン原子であることは無い。)
【0010】
請求項2に記載の発明は、
請求項1に記載のエレクトロクロミック表示デバイスにおいて、
前記極性溶剤は、前記支持電解質を用い通電性を示す有機溶媒の少なくとも1種であることを特徴とする。
【0011】
請求項3に記載の発明は、
請求項1又は2に記載のエレクトロクロミック表示デバイスにおいて、
前記支持電解質は、下記の一般式(6)で表される化合物及び/又は下記の一般式(7)で表される化合物であることを特徴とする。
【化6】

(式中Mは、Li、Na、K、Rb、Cs又はNHを表す。式中Xは、ClO、BF、CFSO又はPFを表す。)
【化7】

(式中R17は、アルキル基又はアリール基を表す。式中R18は、アルキル基を表す。式中Nは、窒素原子を表す。式中Xは、Cl、Br、I、ClO、BF、CFSO又はPFを表す。式中nは、0、1又は2を表し、式中mは、4−nを表す。)
【0012】
請求項4に記載の発明は、
請求項1〜3の何れか一項に記載のエレクトロクロミック表示デバイスにおいて、
前記エレクトロクロミック組成物には、ポリマー化合物が添加されていることを特徴とするエレクトロクロミック表示デバイス。
【0013】
請求項5に記載の発明は、
請求項1〜4の何れか一項に記載のエレクトロクロミック表示デバイスにおいて、
前記第1電極は、並行して延びる複数の電極であり、
前記第2電極は、前記第1電極と直交する方向に並行して延びる複数の透明電極によりなる透明表示電極であり、
前記第1電極と前記第2電極とが立体交差する領域に画素が形成されることを特徴とするエレクトロクロミック表示デバイス。
【0014】
請求項6に記載の発明は、
請求項1〜5の何れか一項に記載のエレクトロクロミック表示デバイスにおいて、
前記エレクトロクロミック組成物層は、前記第1基板及び前記第2基板に対して略垂直方向に貫通する細孔を有する多孔質体を備え、
前記エレクトロクロミック組成物は、前記多孔質体の細孔内に導入されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、第1基板と、第1基板の上面に設けられた第1電極と、第1基板の上方に当該第1基板に対向して設けられ、透明な材料により形成された第2基板と、第2基板の下面に設けられ、少なくとも一部が透明な電極材料により形成された第2電極と、第1基板と第2基板との間に設けられたエレクトロクロミック組成物層と、を備えるエレクトロクロミック表示デバイスにおいて、エレクトロクロミック組成物層は、ロイコ染料と、支持電解質と、極性溶剤と、を含むエレクトロクロミック組成物を備え、エレクトロクロミック組成物には、上記の一般式(1)で表される化合物及び/又は上記の一般式(2)で表される化合物、上記の一般式(3)で表される化合物及び/又は上記の一般式(4)で表される化合物、並びに、上記の一般式(5)で表される化合物が添加されている。
すなわち、エレクトロクロミック組成物には、ハイドロキノン類の化合物(上記の一般式(1)で表される化合物や上記の一般式(2)で表される化合物)、コハク酸イミド類の化合物(上記の一般式(3)で表される化合物や上記の一般式(4)で表される化合物)、並びに、ピリジニウム塩類の化合物(上記の一般式(5)で表される化合物)添加されている。
したがって、ロイコ染料を用いたエレクトロクロミック表示デバイスにおいて、ハイドロキノン類の化合物及びコハク酸イミド類を添加しているため、表示・消去を繰り返すことによる表示性能の劣化を解消することができ、コハク酸イミド類の化合物を添加しているため、経時保存による表示性能の劣化を解消することができる。さらに、ピリジニウム塩類の化合物を添加しているため、高速で駆動しても十分な表示濃度を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、図を参照して、本発明にかかるエレクトロクロミック表示デバイスの最良の形態を詳細に説明する。なお、発明の範囲は、図示例に限定されない。
【0017】
<エレクトロクロミック表示デバイスの構成>
図1は、本発明のエレクトロクロミック表示デバイス100を模式的に示す平面図(a)及び断面図(b)である。
本発明のエレクトロクロミック表示デバイス100は、例えば、第1基板10と、第1基板10の上面に設けられた第1電極20…と、第1基板10の上方に第1基板10に対向して設けられた第2基板30と、第2基板30の下面に設けられた第2電極40…と、第1基板10と第2基板20との間に設けられたエレクトロクロミック組成物層50と、を備えて構成される。
エレクトロクロミック表示デバイス100は、第1電極20…と第2電極40…との間の通電によって表示を実施するようになっている。また、当該表示のための通電とは逆方向の通電によって、或いは、当該表示のための通電を遮断することによって、当該表示の消去を実施するようになっている。
第1電極20…は、例えば、並行して延びる複数の電極である。第2電極40…は、例えば、第1電極20…と直交する方向に並行して延びる複数の透明電極によりなる透明表示電極である。そして、第1電極20…と第2電極40…とが立体交差する領域に画素60…が形成されている。
【0018】
第1基板10は、例えば、平面状に形成されており、エレクトロクロミック表示デバイス100の基体としての機能を有する。
【0019】
第1基板10の材質は、電気的に絶縁性であれば、特に限定されるものではなく、例えば、ガラスやプラスチックを用いることができる。ガラスとしては、例えば、ソーダライム系ガラス、低アルカリ・ホウケイ酸ガラス、無アルカリ・ホウケイ酸ガラス、無アルカリ・アミノケイ酸ガラス、石英ガラスなどが挙げられる。また、プラスチックとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステル類、ポリアミド類、ポリカーボネート類、ポリフッ化ビニリデンなどのフッ素ポリマー類、ポリエーテル類、ポリスチレン、ポリエチレンなどのポリオレフィン類、ポリイミド類などが挙げられる。
【0020】
第1基板10は、白色に見えるのが好ましい。したがって、第1基板10の材質をガラスやプラスチックとした場合、例えば、二酸化チタン、硫酸バリウム、カオリンなどの白色顔料を配合することによって、白色に見える第1基板10を形成することができる。また、透明基板の下面に、前記白色顔料を塗布したり、白色紙や白色PETシートなどの白色シートを配置したりすることによって、白色に見える第1基板10を形成することができる。
【0021】
第1電極20…は、例えば、幅を有するライン状に形成されており、互いに平行な等間隔の縞状に設けられている。
第1電極20…は、エレクトロクロミック組成物層50に接するように、且つ、第2電極40…に対向してエレクトロクロミック組成物層50を挟むように、第1基板10の上面に設けられている。
第1電極20…は、第2電極40…と対になり、エレクトロクロミック組成物層50に通電する機能を有する。
第1電極20…は、第2電極40…と立体交差、すなわち、間隔を有して交差し、その交点の領域に画素60を形成している。
【0022】
第1電極20…の材質は、特に限定されるものではなく、金属電極を構成する材料や透明電極を構成する材料を用いることができる。
金属電極を構成する材質としては、例えば、金、白金、銀、クロム、アルミニウム、コバルト、パラジウム、銅、ニッケル、それらの合金などが挙げられる。
透明電極を構成する材質としては、例えば、ITO膜やSnO又はInOをコーティングした薄膜などが挙げられる。また、ITO膜やSnO又はInOをコーティングした薄膜などにSnやSbなどをドーピングしたものであっても良く、MgO、ZnO、FTOなどであっても良い。さらに、第1電極20…は、例えば、その材質が金や白金などであっても薄膜であれば、その機能を果たすことができる。
【0023】
なお、第1電極20は、例えば、図2に示すエレクトロクロミック表示デバイス100Aの第1電極20Aのように、ライン状に形成された金属電極部21Aと、幅を有するライン状に形成された金属電極部21Aを覆う透明電極部22Aと、により構成されていても良い。また、図3に示すエレクトロクロミック表示デバイス100Bの第1電極20Bのように、第1基板10の一方の面全体を覆う透明電極から構成されていてもよい。
金属電極部21A…の材質は、特に限定されるものではなく、金属電極を構成する材料を用いることができる。金属電極を構成する材質としては、例えば、金、白金、銀、クロム、アルミニウム、コバルト、パラジウム、銅、ニッケル、それらの合金などが挙げられる。
透明電極部22A…や第1電極20Bの材質は、特に限定されるものではなく、透明電極を構成する材料を用いることができる。透明電極を構成する材質としては、例えば、ITO膜やSnO又はInOをコーティングした薄膜などが挙げられる。また、ITO膜やSnO又はInOをコーティングした薄膜などにSnやSbなどをドーピングしたものであっても良く、MgO、ZnO、FTOなどであっても良い。さらに、透明電極22A…は、例えば、その材質が金や白金などであっても薄膜であれば、その機能を果たすことができる。
【0024】
第2基板30は、例えば、平面状に形成された透明基板であり、第2電極40…の支持体としての機能を有する。
【0025】
第2基板30の材質は、電気的に絶縁性の透明基板であれば、特に限定されるものではなく、例えば、ガラスやプラスチックを用いることができる。ガラスとしては、例えば、ソーダライム系ガラス、低アルカリ・ホウケイ酸ガラス、無アルカリ・ホウケイ酸ガラス、無アルカリ・アミノケイ酸ガラス、石英ガラスなどが挙げられる。また、プラスチックとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステル類、ポリアミド類、ポリカーボネート類、ポリフッ化ビニリデンなどのフッ素ポリマー類、ポリエーテル類、ポリスチレン、ポリエチレンなどのポリオレフィン類、ポリイミド類などが挙げられる。
【0026】
第2電極40…は、例えば、幅を有するライン状に形成された透明電極であり、互いに平行な等間隔の縞状に設けられている。
第2電極40…は、エレクトロクロミック組成物層50に接するように、且つ、第1電極20…に対向してエレクトロクロミック組成物層50を挟むように、第2基板30の下面に設けられている。
第2電極40…は、第1電極20…と対になり、エレクトロクロミック組成物層50に通電する機能を有する。
第2電極40…は、第1電極20…と立体交差、すなわち、間隔を有して交差し、その交点の領域に画素60を形成している。
【0027】
第2電極40…の材質は、透明電極を構成可能な材質であれば、特に限定されるものではない。透明電極を構成可能な材質としては、例えば、ITO膜やSnO又はInOをコーティングした薄膜などが挙げられる。また、ITO膜やSnO又はInOをコーティングした薄膜などにSnやSbなどをドーピングしたものであっても良く、MgO、ZnO、FTOなどであっても良い。さらに、第2電極40…は、例えば、その材質が金や白金などであっても薄膜であれば、その機能を果たすことができる。
【0028】
なお、第2電極40は、例えば、図3に示すエレクトロクロミック表示デバイス100Bの第2電極40Bのように、第2基板30の一方の面全体を覆う透明電極から構成されていてもよい。
【0029】
エレクトロクロミック組成物層50は、例えば、第1基板10及び第2基板30に対して略垂直方向に貫通する細孔51a…を有する多孔質体51と、多孔質体51の細孔51a…内に導入されたエレクトロクロミック組成物52と、などを備えて構成される。
【0030】
多孔質体51は、第1基板10と第2基板30との間に、一定の体積で、エレクトロクロミック組成物52を保持する役割を有する。すなわち、多孔質体51は、エレクトロクロミック組成物52を含むことによって、エレクトロクロミック組成物52を第1基板10と第2基板30との間で支えるとともに、多孔質体51の厚みによって、エレクトロクロミック組成物52の量を均一に制御するスペーサの役割を有する。
【0031】
多孔質体51の厚みは、特に限定されるものではないが、好ましくは10μm〜500μm、より好ましくは30μm〜200μmに設定することによって、エレクトクロミック組成物52の表示機能を効果的に発現させることができる。
【0032】
多孔質体51の細孔51aのサイズは、特に限定されるものではないが、例えば、図4に示すように、画素60のサイズよりも小さいのが好ましい。すなわち、例えば、図4に示すように、細孔51aの形状が円形であるとともに、画素60の形状(図4においては一点鎖線で示す)が正方形である場合は、多孔質体51の細孔51aの直径(孔径)は、画素60の幅(すなわち、第1電極20の幅や第2電極40の幅)よりも小さいのが好ましい。
無論、細孔51aの形状は、円形に限ることはなく、矩形などの多角形であっても良い。また、画素60の形状は正方形に限ることはなく、その他の多角形であっても良いし、円形であっても良い。
【0033】
例えば、多孔質体51の細孔51aのサイズが大きい場合(具体的には、例えば、孔径が画素60の幅の1/5以上である場合)、或いは、例えば、多孔質体51の細孔51a,51a同士の間の距離が短い場合(具体的には、例えば、開孔率が50%以上である場合)、エレクトロクロミック表示デバイス100による表示画像は、高濃度で、コントラストが高い画像となる。一方、多孔質体51の細孔51aのサイズが小さい場合(具体的には、例えば、孔径が画素60の幅の1/50以下である場合)、或いは、例えば、多孔質体51の細孔51a,51a同士の間の距離が長い場合(具体的には、例えば、開孔率が20%以下である場合)、エレクトロクロミック表示デバイス100による表示画像は、解像力の高い、鮮鋭度に優れたクリアな画像となる。
【0034】
多孔質体51の材質は、上述した厚みや形状を有するものとすることができるのであれば、特に限定されるものではない。
好ましい材質としては、例えば、電気的に絶縁性の無機材料としてアルミナ(特に陽極酸化アルミナ)、シリカ、酸化ジルコニウム、SiC、ガラス等、電気的に絶縁性の有機材料及び高分子物質としてテフロン(米国デュポン社の登録商標)、ナイロン、ポリエステル、ポリイミド、ポリカーボネート等、半導体を含む金属酸化物材料としてTiO、SrTiO、ZnO、SnO、InSnO、Nb、WO、CuO、CoO、MnO、V等、化合物半導体を含む金属カルコゲナイド及び他元素複合化合物としてCdS、ZnS、GaP、GaAs、InP、FeS、PbS、CuInS、CuInSe等に代表される化合物半導体、ペロブスカイト構造を有する化合物や複合化合物等、金属及び半金属材料として金、白金、銀、銅、クロム、亜鉛、錫、チタン、タングステン、アルミニウム、ニッケル、鉄、シリコン、ゲルマニウム等、炭素材料としてグラファイト、グラシーカーボン、ダイヤモンド等、などが挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0035】
多孔質体51は、単一の材料から構成されていても良く、複数の材料から構成されていても良い。複数の材料から構成される場合は、細孔51a…の壁部分とその他の部分、細孔51a…の上部と下部、といったように部分毎に材料を変えて構成しても良い。
多孔質体51の細孔51a…の内部の少なくとも一部(多孔質体51の細孔51a…の壁)を構成している材料は、絶縁体材料又は半導体材料が好ましい。具体的には、金属のカルコゲナイド(例えば、酸化物、硫化物、セレン化物など)、シリコンが好ましく、金属酸化物がより好ましく、アルミニウム、アルミナ、所定の繊維(例えば、テフロン、ナイロン(米国デュポン社の登録商標)、ポリエステルなど)が最も好ましい。
【0036】
多孔質体51の作成方法は、上述した厚みや形状を有するものとすることができるのであれば、特に限定されるものではない。
【0037】
好ましい作成方法の一例として、例えば、量産のために、広い面積にわたって細孔ピッチを制御しながら作成する方法、具体的には、例えば、化学反応において、イオンや分子の拡散及び輸送が関わる自己組織化反応を制御することで多孔質体51を作成する方法などが挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0038】
また、好ましい作成方法の一例として、例えば、スクリーン印刷法やホトリソグラフィー法を用いて、適宜、格子状などに形成された多孔質体51を作成する方法が挙げられる。
【0039】
スクリーン印刷法による場合は、細孔51a,51a同士の間の距離に制限(およそ30μm以上)があるとともに、開孔率に制限があるが、上述した厚みや形状を有する多孔質体51を作成することができる。
好ましい材料としては、エレクトロクロミック組成物52は極性溶剤を構成成分としていることから、その極性溶剤に対して耐性のあるものが良く、例えば、ガラスペーストや極性溶剤耐性のある熱硬化性樹脂などを用いることができる。ガラスペーストとしては、例えば、旭硝子株式会社製AP誘電体ペーストAP5346G,AP5695BD、日本電気硝子株式会社製ガラスペーストPLS−3124、日本電気硝子株式会社製粉末ガラスLS−0241などが挙げられるが、これに限定されるものではない。極性溶剤耐性のある熱硬化性樹脂としては、例えば、1液性のエポキシ樹脂(具体的には、例えば、株式会社スリーボンド製スリーボンド2200シリーズのうち、2217,2217B,2219Dなど)などが挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0040】
ホトリソグラフィー法による場合は、微細な構造を有する多孔質体51を作製することができる。
好ましい材料としては、上述のとおり極性溶剤に対して耐性のあるものが良く、具体的には、例えば、アスペクト比の高い多孔質体51を1回露光で得ることができる、東京応化工業株式会社製MEMS用永久レジストTMMRS−2000などが挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0041】
また、多孔質体51は、上述した厚みや形状を有するものであれば、市販のものであっても良い。市販の多孔質体51としては、例えば、Whatman社製アノディスクメンブレンフィルタとして入手できる酸化アルミニウムによるメンブレンフィルタ(厚み:60μm、孔径:0.2μm,0.1μm,0.02μm)、ミリポア社製オム二ポアメンブレン(厚み:80μm,100μm、孔径:0.1μm,0.2μm,0.45μm,1.0μm,5μm,10μm)、ミリポア社製ナイロンネットフィルタ(厚み:55μm、目開き(糸と糸との間の隙間の大きさ):11μm,20μm,41μm,60μm,80μm)、ミリポア社製アイソポアメンブレン(厚み:10μm、孔径:0.05μm,0.1μm,0.22μm,0.4μm,0.6μm,0.8μm,1.2μm,2μm,3μm,5μm,8μm,10μm,12μm)、日東電工株式会社製超高分子量ポリエチレン多孔質フィルムサンマップ(厚み:100μm,200μm、孔径:17μm)、Sefar Inc.製NYTAL(ナイロンメッシュクロス)NY−20HC(厚み55μm、目開き:20μm),21T−53(厚み100μm、目開き:53μm),ASTM270−53(厚み60μm、目開き:53μm),NY5−HC(厚み100μm、目開き:5μm),NY1−HD(厚み75μm、目開き:1μm)、Sefa Inc製PETEX(ポリエステルメッシュクロス)PET51HC(厚み60μm、目開き:51μm),PET24(厚み70μm、目開き:24μm),PET11HC(厚み60μm、目開き:11μm)などが挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0042】
なお、エレクトロクロミック組成物層50は、例えば、図3に示すエレクトロクロミック表示デバイス100Bのエレクトロクロミック組成物層50Bのように、エレクトロクロミック組成物52を保持できるのであれば、多孔質体51を備えていなくても良い。
【0043】
エレクトロクロミック組成物52は、ロイコ染料52aと、支持電解質と、極性溶剤と、を含んでいる。
そして、エレクトロクロミック組成物52には、例えば、化合物53(一般式が上記の式(1)で表される化合物及び/又は上記の式(2)で表される化合物、上記の式(3)で表される化合物及び/又は上記の式(4)で表される化合物、並びに、一般式が上記の式(5)で表される化合物)が添加されている。
また、エレクトロクロミック組成物52には、例えば、エレクトロクロミック組成物52の物性(例えば、粘性など)を調整するためのポリマー化合物54なども添加されている。
【0044】
エレクトロクロミック組成物52は、エレクトロクロミック表示デバイス100の表示にかかる発色及び消色の機能を有する。
具体的には、エレクトロクロミック組成物52は、第1電極20…と第2電極40…との間の通電によって発色し、発色のための通電とは逆方向の通電によって、又は、発色のための通電を遮断することによって消色する。
エレクトロクロミック組成物52は、流動性があれば良く、例えば、低粘度の液体状であっても良いし、高粘度のペースト状であっても良いし、流動性の小さいゲル状であっても良い。
【0045】
エレクトロクロミック組成物52の構成成分であるロイコ染料52aは、無色又は淡色の電子供与性染料前駆体であり、フェノール性化合物などの顕色剤、酸性物質、電子受容性物質によって発色する化合物である。
ロイコ染料52aとしては、例えば、部分骨格にラクトン、ラクタム、スルトン、スピロピラン、エステル又はアミド構造を有する実用上無色となりうる化合物などが挙げられる。具体的には、例えば、トリアリルメタン化合物、ビスフェニルメタン化合物、キサンテン化合物、フルオラン化合物、チアジン化合物、スピロピラン化合物などが挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0046】
ロイコ染料52aは、前記化合物の中から適宜選択することによって、各種カラーの発色を行うことができる。したがって、ロイコ染料52aを用いたエレクトロクロミック表示デバイス100の表示色は、ロイコ染料52aによって適宜選択することができる。具体的には、例えば、ブラックに発色するロイコ染料52aを用いる場合は、白黒及びグレー表示が可能となる。
【0047】
ロイコ染料52aの配合量は、ロイコ染料52aの溶解度に依存するため、一概に表すことは難しいが、ロイコ染料52aは、発色のために充分な量が配合されている必要がある。溶解度が小さいロイコ染料52aの場合は、必要な量が含まれるように、例えば、各画素60に対応するエレクトロクロミック組成物層50(多孔質体51)の体積を大きくするなどして、ロイコ染料52aの配合量を調節すると良い。
例えば、ロイコ染料52aが下記の式(18)で表される化合物、下記の式(19)で表される化合物及び下記の式(21)で表される化合物であれば、配合量は、エレクトロクロミック組成物52全体に対して3〜40重量%とすることができる。
【0048】
以下に、ロイコ染料52aの例を、その発色によって分類して示すが、これらは例示であるため、ロイコ染料52aを限定するものではない。
【0049】
下記の式(8)及び式(9)は、イエローに発色するロイコ染料52aである。
【化8】

【0050】
下記の式(10)〜式(12)は、マゼンダに発色するロイコ染料52aである。
【化9】

【0051】
下記の式(13)〜式(16)は、シアンに発色するロイコ染料52aである。
【化10】

【0052】
下記の式(17)及び式(18)は、レッドに発色するロイコ染料52aである。
【化11】

【0053】
下記の式(19)は、ブルーに発色するロイコ染料52aである。
【化12】

【0054】
下記の式(20)及び式(21)は、ブラックに発色するロイコ染料52aである。
【化13】

【0055】
エレクトロクロミック組成物52の構成成分である支持電解質は、エレクトロクロミック組成物52内を電流が流れ易くするための機能を有する。支持電解質は、一般に溶融塩と称する化合物を含む。支持電解質は、各化合物を単独で用いても良いし、適宜2種類以上の化合物を組み合わせて用いても良い。
支持電解質は、エレクトロクロミック組成物52全体の重量に対して、0.01〜2重量%となるように添加することが好ましく、前記機能の十分な発現のためには、0.1〜2重量%となるように添加することがより好ましい。
【0056】
具体的には、支持電解質は、前記機能を有する化合物であれば、特に限定されるものではなく、例えば、一般式が上記の式(6)で表される化合物及び/又は上記の式(7)で表される化合物が挙げられる。
【0057】
以下に、一般式が上記の式(6)で表される化合物と、上記の式(7)で表される化合物と、の例を示すが、これらは例示であり、支持電解質を限定するものではない。
一般式が上記の式(6)で表される化合物の具体例としては、例えば、NaClO、LiClO、KClO、RbClO、CsClO、NHClO、LiBF、LiPFなどが挙げられる。
また、一般式が上記の式(7)で表される化合物の具体例としては、例えば、(CHNClO、(CNClO、(n−CNClO、(CHNBF、(CNBF、(n−CNBF、(CHNCl、(CNCl、(CHNBr、(CNBr、(n−CNBr、(n−CNI、C(CHNClO、C(CNClO、C17(CHNClO、(CNPF、(n−CNPF、(CHNCFSO、(CNCFSOなどが挙げられる。
【0058】
エレクトロクロミック組成物52の構成成分である極性溶剤は、支持電解質を用い通電性を示す有機溶媒の少なくとも1種であり、ロイコ染料52aの発色、消色を電圧及び/又は電流の遮断によって行うことができるよう、通電を促進する機能を有する。また、極性溶剤は、エレクトロクロミック組成物52にポリマー化合物54を添加する場合に、そのポリマー化合物54の溶剤としての機能も果たす。極性溶剤は、各種を単独で用いても良いし、適宜2種類以上を組み合わせて用いても良い。
【0059】
以下に、好適な極性溶剤の例を示すが、これらは例示であり、極性溶剤を限定するものではない。
極性溶剤の具体例としては、例えば、N−メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジエチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、プロピレンカーボネート、ジメチルスルフォキシド、γ-ブチロラクトン、アセトニトリル、プロピオニトリル、ブチロニトリルなどが挙げられる。例示した極性溶剤は、何れもエレクトロクロミック組成物52の構成成分として用いる極性溶剤として好ましいものであるが、特に好ましいものとしてはN,N−ジメチルアセトアミドが挙げられる。
【0060】
エレクトロクロミック組成物52に添加される化合物53のうち、一般式が上記の式(1)で表される化合物及び/又は一般式が上記の式(2)で表される化合物、並びに、一般式が上記の式(3)で表される化合物及び/又は一般式が上記の式(4)で表される化合物は、ロイコ染料52aの発色、消色の繰り返し動作に伴うエレクトロクロミック表示デバイス100の表示品質の劣化をさらに抑制する機能を有する。
また、エレクトロクロミック組成物52に添加される化合物53のうち、上記の式(3)で表される化合物及び/又は一般式が上記の式(4)で表される化合物は、エレクトロクロミック表示デバイス100の経時保存安定性を向上させる機能を有する。
一般式が上記の式(1)〜(4)で表される化合物の添加量は、ロイコ染料52aの含有量に対して、1〜20重量%となるように添加することが好ましく、前記機能の十分な発現のためには、5〜20重量%となるように添加することが好ましい。
【0061】
また、エレクトロクロミック組成物52に添加される化合物53のうち、一般式が上記の式(5)で表される化合物は、ロイコ染料52aの発色性を高め、高速での表示を可能とする機能を有する。
一般式が上記の式(5)で表される化合物の添加量は、ロイコ染料52aの含有量に対して、3〜50重量%となるように添加することが好ましく、前記機能の十分な発現のためには、20〜40重量%となるように添加することが好ましい。
【0062】
以下に、これらの化合物の例を示すが、これらは例示であり、これらの化合物を限定するものではない。
【0063】
下記の式(22)〜式(36)は、一般式が上記の式(1)で表される化合物の例である。一般式が上記の式(1)で表される化合物は、各種を単独で用いても良いし、適宜2種類以上を組み合わせて用いても良い。
【化14−1】

【化14−2】

【化14−3】

【0064】
下記の式(37)〜式(52)は、一般式が上記の式(2)で表される化合物の例である。一般式が上記の式(2)で表される化合物は、各種を単独で用いても良いし、適宜2種類以上を組み合わせて用いても良い。
【化15−1】

【化15−2】

【化15−3】

【0065】
下記の式(53)及び式(54)は、一般式が上記の式(3)で表される化合物の例である。一般式が上記の式(3)で表される化合物は、各種を単独で用いても良いし、適宜2種類以上を組み合わせて用いても良い。
【化16】

【0066】
下記の式(55)〜式(57)は、一般式が上記の式(4)で表される化合物の例である。一般式が上記の式(4)で表される化合物は、各種を単独で用いても良いし、適宜2種類以上を組み合わせて用いても良い。
【化17】

【0067】
下記の式(58)〜式(83)は、一般式が上記の式(5)で表される化合物の例である。一般式が上記の式(5)で表される化合物は、各種を単独で用いても良いし、適宜2種類以上を組み合わせて用いても良い。
【化18−1】

【化18−2】

【化18−3】

【化18−4】

【0068】
エレクトロクロミック組成物52に添加されるポリマー化合物54は、エレクトロクロミック組成物52の粘度を高め、その取り扱いを容易にする機能を有する。ポリマー化合物54は各種を単独で用いても良いし、適宜2種類以上を組み合わせて用いても良い。
ポリマー化合物54は、エレクトロクロミック組成物52の粘度を高めるために用いるが、この場合のエレクトロクロミック組成物52の性状は、低粘度の液体状、高粘度のペースト状、流動性の小さいゲル状、とすることができる。
ポリマー化合物54の好ましい配合量は、エレクトロクロミック組成物52全体の重量に対して、0.1〜80重量%とすることが好ましい。
【0069】
以下に、好適なポリマー化合物54の例を示すが、これらは例示であり、ポリマー化合物54を限定するものではない。
ポリマー化合物54の具体例としては、例えば、ポリフッ化ビニリデン、ポリ塩化ビニリデン、ポリエチレンオキサイド等のポリアルキレンオキサイド、又は、ポリアルキレンイミン、ポリアルキレンスルフィドの繰返し単位を有する高分子、ポリメチルメタクリレート、ポリアクリロニトリル、ポリカーボネート、ポリビニルブチラールのごときポリビニルホルマールなどが挙げられる。特に好ましいものとしては、ポリビニルブチラール、ポリフッ化ビニリデンが挙げられる。
【0070】
以上に説明したエレクトロクロミック組成物52は、一例であり、その他にも電気化学的な発色が可能な組成物であれば、これを多孔質体51に含ませたものをエレクトロクロミック組成物層50として用いることが可能である。
【0071】
<エレクトロクロミック表示デバイスの製造方法>
エレクトロクロミック表示デバイス100の製造方法は、以下の[1]〜[6]の工程を含む。
【0072】
[1]第1基板準備工程
第1基板準備工程は、第1基板10を準備する工程である。
【0073】
[2]第1の蒸着工程
第1の蒸着工程は、第1基板10の片方の面に第1電極20…を設ける工程である。第1電極20…は、公知の蒸着法、メッキ法、スパッタ法などによって成膜され、次いで、フォトリソグラフィー法によってパターニングされ、次いで、エッチング法によって縞状等に形成される。
【0074】
[3]第2基板準備工程
第2基板準備工程は、第2基板30を準備する工程である。
【0075】
[4]第2の蒸着工程
第2の蒸着工程は、第2基板30の片方の面に第2電極40…を設ける工程である。第2電極40…は、公知の蒸着法、メッキ法、スパッタ法などによって成膜され、次いで、フォトリソグラフィー法によってパターニングされ、次いで、エッチング法によって縞状等に形成される。
【0076】
[5]多孔質体設置工程
多孔質体設置工程は、第1電極20…が形成された第1基板10と、第2電極40…が形成された第2基板30と、の間に多孔質体51を設置する工程である。
具体的には、例えば、第1電極20…が形成された第1基板10と、第2基板40…が形成された第2基板20と、の間に、前述の材料(例えば、ミリポア社製ナイロンネットフィルタ(厚み:55μm、目開き:11μm))を挟みこむことによって、多孔質体51を形成する。
或いは、例えば、第1電極20…が形成された第1基板10及び/又は第2電極40…が形成された第2基板30における電極が形成された面に、ガラスペースト(例えば、日本電気硝子株式会社製ガラスペーストPLS−3124)などをスクリーン印刷することによって、多孔質体51を設置する。
或いは、例えば、第1電極20…が形成された第1基板10及び/又は第2電極40…が形成された第2基板30における電極が形成された面に、例えば、東京応化工業株式会社製MEMS用永久レジストTMMRS−2000をスピナーなどによって付与し、次いで、所定のマスクを用いて、ホトリソグラフィー法によりパターン状に立体成形することによって多孔質体51を形成して設置する。
【0077】
[6]貼りあわせ工程
貼りあわせ工程は、第1電極20…が形成された第1基板10と、第2電極40…が形成された第2基板30とを、電極を内側にして貼りあわせ、所定の添加剤(化合物53、ポリマー化合物54など)が添加されたエレクトロクロミック組成物52を封入する工程である。
具体的には、例えば、所定の添加剤が添加されたエレクトロクロミック組成物52を多孔質体51に浸み込ませてエレクトロクロミック組成物層50を形成させ、このエレクトロクロミック組成物層50の両面に、第1電極20…が形成された第1基板10と、第2電極40…が形成された第2基板30と、貼りあわせる。
或いは、例えば、一方の基板(例えば、第1電極20…が形成された第1基板10)に設置された多孔質体51に所定の添加剤が添加されたエレクトロクロミック組成物52を浸み込ませてエレクトロクロミック組成物層50を形成させ、このエレクトロクロミック組成物層50に他方の基板(例えば、第2電極40…が形成された第2基板30)を貼りあわせる。
或いは、例えば、第1電極20…が形成された第1基板10と、第2電極40…が形成された第2基板30と、を多孔質体51が設置された状態で貼りあわせ、多孔質体51が設置された2枚の基板間の空隙に、所定の添加剤が添加されたエレクトロクロミック組成物52を、ピペット等を用いて注入する。
或いは、例えば、第1電極20…が形成された第1基板10と、第2電極40…が形成された第2基板30と、を多孔質体51が設置された状態で貼りあわせ、多孔質体51が設置された2枚の基板間の間隙に、ガラスキャピラリなどを別途あらかじめ形成しておき、所定の添加剤が添加されたエレクトロクロミック組成物52を、そのガラスキャピラリなどを用いて多孔質体51内へと吸引することによって封入する。
【0078】
<エレクトロクロミック表示デバイスの駆動方法>
エレクトロクロミック表示デバイス100は、例えば、パッシブマトリックス駆動によって、以下のように駆動される。
【0079】
エレクトロクロミック表示デバイス100の各画素60は、第1電極20…と、第2電極40…とによって挟まれたエレクトロクロミック組成物層50によって構成される。
エレクトロクロミック表示デバイス100の発色は、第1電極20…と第2電極40…との間に通電することによってエレクトロクロミック組成物52に通電すると、エレクトロクロミック組成物層50と第2電極40…との界面にてエレクトロクロミック組成物52が電気化学的な変化を起こすことによって行われる。また、エレクトロクロミック表示デバイス100の消色は、発色のための通電とは逆方向の通電によって、或いは、発色のための通電を遮断して放置することによって行われるが、発色のための通電とは逆方向の通電の方が、速やかに消去動作を実施することができる。
エレクトロクロミック表示デバイス100の発色濃度は、通電する電気量(通電量)によって任意に調節することができる。さらに、通電は、電流の連続的な供給によっても、電流の間歇的な供給によっても可能である。電流の間歇的な供給とは、例えば、パルスによる駆動を指す。一方、エレクトロクロミック表示デバイス100の発色は、通電の遮断によっても消色するが、電子ペーパーとして利用する場合には、発色を維持する必要がある。エレクトロクロミック表示デバイス100の発色の維持は、例えば、表示のために供給した電流よりも小さい電流の供給によって行うことができる。例えば、連続的な電流の供給であれば、発色の維持は、電圧又は電流を発色時の半分以下にして行うことができる。また、間歇的な電流の供給、すなわち、パルス駆動であれば、発色の維持は、例えば、通電期間を発色時よりも短くしたり、パルスの強度、幅、又は間隔を発色時よりも小さくしたりして行うことができる。
【0080】
ここで、エレクトロクロミック組成物52を多孔質体51の細孔51a…に導入すると、表示デバイスは、画素60,60間のクロストークによる表示性能の低下が抑制されるとともに、表示のメモリ性を有することになる。
具体的には、エレクトロクロミック組成物52を多孔質体51に含浸して、多孔質体51の細孔51a…内にエレクトロクロミック組成物52を導入した場合、エレクトロクロミック組成物52中のロイコ染料52aは、例えば、図5に示すように、通電することによって、多孔質体51の細孔51a…内からエレクトロクロミック組成物層50と第2電極40との界面の表示領域へと移動して発色し、通電を遮断することによって又は発色のための通電とは逆方向に通電することによって、エレクトロクロミック組成物層50と第2電極40との界面から多孔質体51の細孔51a…内へと移動して消色する。したがって、本発明においては、ロイコ染料52aによる第2電極40の表面からの離脱は、ロイコ染料52aが多孔質体51の細孔51a…内へと移動しないと達成できないため、本発明におけるロイコ染料52aは、多孔質体51を利用しない表示デバイスのロイコ染料52aと比較して、第2電極40の表面からの離脱に時間がかかる。これにより、本発明のエレクトロクロミック表示デバイス100においては、表示後、通電遮断後も、ロイコ染料52aは、一定期間、第2電極40の表面に留まることとなって、一定期間、表示された画像の表示が維持されることになる。
【0081】
したがって、本発明においては、長期間にわたって表示の維持を行いたい場合にのみ、表示維持のための通電を行えば良く、また、通電の遮断後、直ちに表示の消去を行いたい場合は、表示のための通電とは逆方向の通電を行うことにより達成できる。
なお、メモリ性をさらに向上させるためには、多孔質体51の細孔51a…の孔径を小さくする手法が有効であるが、多孔質体51の仕様は、上述したように表示される画像のコントラストや解像力などの目的とする表示性能に応じて、また、表示維持のための通電の必要度に応じて決定するのが好ましい。
【0082】
<実施例>
以下に、具体的な実施例によって本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0083】
<実施例1>
(エレクトロクロミック表示デバイスの作製)
まず、エレクトロクロミック表示デバイス100A(図2参照)を作成した。
【0084】
具体的には、第1基板10として、0.7mm厚の矩形状の無アルカリガラス基板を用いた。そして、その第1基板10の一方の面(上面)に、クロムを10nmの厚みで蒸着して、そのクロム上に金を120nmの厚みで蒸着して、その金の上にクロムを10nmの厚みで蒸着することによって、金属膜を形成した。形成された金を含む金属膜を、フォトリソグラフィー法により、ストライプ幅0.025mm、ピッチ0.45mmで、ストライプ状にパターン形成することによって、第1電極20A…の金属電極部21A…を形成した。次に、形成されたストライプパターン状の金属電極部21A…上に、膜厚150nmのITOをスパッタ形成した。スパッタ形成されたITO膜を、フォトリソグラフィー法を用いて、ストライプ幅0.42mm、ピッチ0.45mmで、金属電極部21A…を覆うように、ストライプ状にパターン形成することによって、第1電極20A…の透明電極部22A…を形成した。
【0085】
第2基板30として、0.7mm厚の矩形状の無アルカリガラス基板を用いた。そして、その第2基板30上に、膜厚200nmのITOをスパッタ形成した。スパッタ形成されたITO膜を、フォトリソグラフィー法を用いて、ストライプ幅0.42mm、ピッチ0.45mmで、ストライプ状にパターン形成することによって、第2電極40…を形成した。
形成された第1電極20A及び第2電極40のライン数はそれぞれ128本であった。
【0086】
次いで、第1電極20A…と第2電極40…との間に多孔質体51として、矩形状のSefar Inc.製PETEX(ポリエステルメッシュクロス)PET51HCを挟み、第1電極20A…が第2電極40…に対して直交する形で、第1基板10と第2基板30とを重ね合わせた。そして、第1電極20A…と第2電極40…の直交部が画素60…となるように調整し、4つの側面(厚さ方向に平行する面)のうちの3つを接着剤(例えば、熱硬化性のエポキシ)で接着封止した。
【0087】
次いで、接着剤未接着部分から、ピペットを用いて所定の添加剤が添加されたエレクトロクロミック組成物52(以下、「エレクトロクロミック組成物[A]」と呼ぶ。)を注入し、4つの側面(厚さ方向に平行する面)のうちの接着剤未接着部分を接着剤で接着封止した。そして、第1基板10の下面に200μm厚のホワイトペットを貼り付け、エレクトロクロミック表示デバイス100A(以下、「表示デバイス[A−1]」と呼ぶ。)を作成した。
【0088】
比較のために、エレクトロクロミック組成物[B]〜[D]を用意し、それぞれを用いて、表示デバイス[A−1]と同様にして、エレクトロクロミック表示デバイスを作成した。
【0089】
エレクトロクロミック組成物[B]は、所定の添加剤のうち、一般式が上記の式(5)で表される化合物が添加されていないエレクトロクロミック組成物52である。
以下、エレクトロクロミック組成物[B]を備えるエレクトロクロミック表示デバイスを「表示デバイス[B]」と呼ぶ。
【0090】
エレクトロクロミック組成物[C]は、所定の添加剤のうち、一般式が上記の式(3)で表される化合物及び/又は上記の式(4)で表される化合物、並びに、一般式が上記の式(5)で表される化合物が添加されておらず、一般式が上記の式(1)で表される化合物及び/又は上記の式(2)で表される化合物の代わりにベンゾキノン誘導体が添加されるとともに、表示・消去を繰り返すことによる表示性能の劣化を抑えるためにトリフェニルアンチモンが添加されたエレクトロクロミック組成物52である。
以下、エレクトロクロミック組成物[C]を備えるエレクトロクロミック表示デバイスを「表示デバイス[C]」と呼ぶ。
【0091】
エレクトロクロミック組成物[D]は、所定の添加剤のうちポリマー化合物54のみが添加されたエレクトロクロミック組成物52である。
以下、エレクトロクロミック組成物[D]を備えるエレクトロクロミック表示デバイスを「表示デバイス[D]」と呼ぶ。
【0092】
エレクトロクロミック組成物[A]の組成は、
[1]ロイコ染料52a(上記の式(21)) 400mg、
[2]一般式が上記の式(1)で表される化合物及び/又は上記の式(2)で表される化合物(上記の式(22);2,5−ジターシャリーアミルハイドロキノン) 40mg、
[3]一般式が上記の式(3)で表される化合物及び/又は上記の式(4)で表される化合物(上記の式(53);コハク酸イミド) 40mg、
[4]一般式が上記の式(5)で表される化合物(上記の式(63);1−ブチルピリジニウムヘキサフロロホスフェイト) 110mg、
[5]支持電解質((n−CNBF;テトラnブチルアンモニウムテトラフルオロボレート) 40mg、
[6]極性溶剤(N,N−ジメチルアセトアミド) 1.0g、
[7]ポリマー化合物54(ポリビニルブチラール;積水化学工業株式会社製エスレックBH3) 50mg、
である。
【0093】
エレクトロクロミック組成物[B]の組成は、
[1]ロイコ染料52a(上記の式(21)) 400mg、
[2]一般式が上記の式(1)で表される化合物及び/又は上記の式(2)で表される化合物(上記の式(22);2,5−ジターシャリーアミルハイドロキノン) 40mg、
[3]一般式が上記の式(3)で表される化合物及び/又は上記の式(4)で表される化合物(上記の式(53);コハク酸イミド) 40mg、
[4]支持電解質((n−CNBF;テトラnブチルアンモニウムテトラフルオロボレート) 40mg、
[5]極性溶剤(N,N−ジメチルアセトアミド) 1.0g、
[6]ポリマー化合物54(ポリビニルブチラール;積水化学工業株式会社製エスレックBH3) 50mg、
である。
【0094】
エレクトロクロミック組成物[C]の組成は、
[1]ロイコ染料52a(上記の式(21)) 400mg、
[2]ベンゾキノン誘導体(2,5−ジターシャリーアミルキノン) 40mg
[3]トリフェニルアンチモン 70mg
[4]支持電解質((n−CNBF;テトラnブチルアンモニウムテトラフルオロボレート) 40mg、
[5]極性溶剤(N,N−ジメチルアセトアミド) 1.0g、
[6]ポリマー化合物54(ポリビニルブチラール;積水化学工業株式会社製エスレックBH3) 50mg、
である。
【0095】
エレクトロクロミック組成物[D]の組成は、
[1]ロイコ染料52a(上記の式(21)) 400mg、
[2]一般式が上記の式(6)で表される化合物及び/又は上記の式(7)で表される化合物((n−CNBF;テトラnブチルアンモニウムテトラフルオロボレート) 40mg、
[3]極性溶剤(N,N−ジメチルアセトアミド) 1.0g、
[4]ポリマー化合物54(ポリビニルブチラール;積水化学工業株式会社製エスレックBH3) 50mg、
である。
【0096】
(繰り返し安定性の評価)
まず、表示動作を行った。具体的には、表示デバイス[A−1]、表示デバイス[B]、表示デバイス[C]、表示デバイス[D]のそれぞれにパターン作製回路を接続した。次いで、作動電圧2.0V、作動スピード100ms/ラインで電圧印加(通電)を行い、パッシブマトリックス駆動表示によって、2値の表示パターンを形成した。
この表示動作によって、第1電極20Aと第2電極40の交差する部分(画素60)の第2電極40の表面部分を中心として、ブラック色素が生成され、ブラックのパターンが得られた。
【0097】
次に、消去動作を行った。具体的には、例えば、ブラックのパターンが表示された表示デバイス[A−1]、表示デバイス[B]、表示デバイス[C]、表示デバイス[D]のそれぞれについて、電圧印加(通電)を止め、作動電圧1.5V、作動スピード100ms/ラインで表示のための電圧印加とは逆方向に電圧を印加し、そのまま1分間放置した。
この消去動作によって、表示デバイス[A−1]、表示デバイス[B]、表示デバイス[C]、表示デバイス[D]に表示されたブラックのパターンを消去することができた。
そして、引き続き前記表示動作及び前記消去動作を繰り返し行った。
【0098】
表示デバイス[A−1]、表示デバイス[B]及び表示デバイス[C]は、前記表示動作及び前記消去動作の繰り返しを1000回行っても、地色が全く変色せず、表示濃度の劣化もなく、繰り返し回数1回目のときと略同様の表示性能を維持した。さらに、前記表示動作及び前記消去動作の繰り返しを10000回行ったが、表示デバイス[A−1]、表示デバイス[B]、表示デバイス[C]はともに、地色の変色、及び、表示濃度の劣化は見られなかった。
一方、表示デバイス[D]は、50回以上の前記表示動作及び前記消去動作の繰り返しによって、次第に地色の黄色変色が進行し、さらに表示濃度が次第に劣化し、結果として100回以上の繰り返しで、著しいコントラストレシオの劣化を生じることが分かった。
以上の結果から、ハイドロキノン類の化合物(一般式が上記の式(1)で表される化合物及び/又は上記の式(2)で表される化合物)及びコハク酸イミド類の化合物(一般式が上記の式(3)で表される化合物及び/又は上記の式(4)で表される化合物)を添加することにより、表示・消去を繰り返すことによる表示性能の劣化を解消できることが分かった。
【0099】
また、表示デバイス[A−1]、表示デバイス[B]においては、エレクトロクロミック組成物層50が無色透明であるため、地色(非表示部)は第1基板10の裏側に貼った200μm厚のホワイトペットの白さを反映した高反射率の白色であり、結果として、白地に黒の高いコントラストレシオをとることができた。
しかしながら、表示デバイス[C]はエレクトロクロミック組成物層50が黄色に着色しているため、地色(非表示部)は淡黄色であり、結果として、表示デバイス[A−1]や表示デバイス[B]ほどの高いコントラスト比を得られなかった。
以上の結果から、ベンゾキノン誘導体に代えて、ハイドロキノン類の化合物(一般式が上記の式(1)で表される化合物及び/又は上記の式(2)で表される化合物)を添加することにより、地色がほとんど無色透明の表示デバイスを得ることができることが分かった。
【0100】
(高速表示の評価)
まず、表示動作を行った。具体的には、表示デバイス[A−1]、表示デバイス[B]のそれぞれにパターン作製回路を接続した。次いで、作動電圧2.0V、作動スピード100ms/ライン、及び、作動電圧3.5V、作動スピード10ms/ラインで、電圧を印加し、パッシブマトリックス駆動表示によって、2値の表示パターンを形成した。
この表示動作によって、第1電極20Aと第2電極40の交差する部分(画素60)の第2電極40の表面部分を中心として、ブラック色素が生成され、ブラックのパターンが得られた。
【0101】
次に、表示デバイス[A−1]、表示デバイス[B]のそれぞれに表示されたブラックのパターンを、デジタルカメラを用いて撮影し、得られた撮影データをレーザープリンターを用いてプリントアウトした。そして、マクベス濃度計を用いて、プリントアウトしたパターンの光学反射濃度を測定した。その結果を図6に示す。
【0102】
図6に示すように、表示デバイス[A−1](本発明のエレクトロクロミック表示デバイス100A)は、100ms/ラインで最大表示濃度が1.33、10ms/ラインで最大表示濃度が0.93であり、10ms/ラインのような高速表示においても最大表示濃度が100ms/ラインでの最大表示濃度の約70%であった。
一方、表示デバイス[B]は、100ms/ラインで最大表示濃度が1.20、10ms/ラインで最大表示濃度が0.37であり、10ms/ラインのような高速表示においては最大表示濃度が100ms/ラインでの最大表示濃度の約30%であった。
以上の結果から、ピリジニウム塩類の化合物(一般式が上記の式(5)で表される化合物)を添加することにより、高速で駆動しても十分な表示濃度を得ることができることが分かった。
【0103】
<実施例2>
(エレクトロクロミック表示デバイスの作製)
まず、エレクトロクロミック表示デバイス100B(図3参照)を作成した。
【0104】
具体的には、第1基板10として、0.7mm厚の矩形状の無アルカリガラス基板を用いた。そして、その第1基板10の一方の面(上面)に、膜厚200nmのITOをスパッタ形成することによって、第1電極20B…を形成した。
【0105】
第2基板30として、0.7mm厚の矩形状の無アルカリガラス基板を用いた。そして、その第2基板30上に、膜厚200nmのITOをスパッタ形成することによって、第2電極40Bを形成した。
【0106】
次いで、第1電極20Bと第2電極40Bとの間における第1電極20B及び第2電極40Bの端部にペットフィルムなどの保持体51Bを挟み、第1基板10と第2基板30とを重ね合わせた。そして、4つの側面(厚さ方向に平行する面)のうちの3つを接着剤(例えば、熱硬化性のエポキシ)で接着封止した。
【0107】
次いで、接着剤未接着部分から、ピペットを用いて上述のエレクトロクロミック組成物[A]を注入し、その4つの側面(厚さ方向に平行する面)のうちの接着剤未接着部分を接着剤で接着封止した。そして、第1基板10の下面に200μm厚のホワイトペットを貼り付け、エレクトロクロミック表示デバイス100B(以下、「表示デバイスA−2」と呼ぶ。)を作成した。
【0108】
比較のために、エレクトロクロミック組成物[E]を用意し、表示デバイス[A−2]と同様にして、エレクトロクロミック表示デバイス(以下、「表示デバイス[E]」と呼ぶ。)を作成した。
さらに、エレクトロクロミック組成物[A]をガラス管に封入して、熱封止し、60℃のオーブン内で10日間放置したものを用意し、表示デバイス[A−2]と同様にして、エレクトロクロミック表示デバイス(以下、表示デバイス[A−2−10]と呼ぶ。)を作成するとともに、エレクトロクロミック組成物[E]をガラス管に封入して、熱封止し、60℃のオーブン内で10日間放置したものを用意し、表示デバイス[A−2]と同様にして、エレクトロクロミック表示デバイス(以下、表示デバイス[E−10]と呼ぶ。)を作成した。
【0109】
エレクトロクロミック組成物[E]は、所定の添加剤のうち、一般式が上記の式(3)で表される化合物及び/又は一般式が上記の式(4)で表される化合物が添加されていないエレクトロクロミック組成物52である。
【0110】
エレクトロクロミック組成物[E]の組成は、
[1]ロイコ染料52a(上記の式(21)) 400mg、
[2]一般式が上記の式(1)で表される化合物及び/又は上記の式(2)で表される化合物(上記の式(22);2,5−ジターシャリーアミルハイドロキノン) 40mg、
[3]一般式が上記の式(5)で表される化合物(上記の式(63);1−ブチルピリジニウムヘキサフロロホスフェイト) 110mg、
[4]支持電解質((n−CNBF;テトラnブチルアンモニウムテトラフルオロボレート) 40mg、
[5]極性溶剤(N,N−ジメチルアセトアミド) 1.0g、
[6]ポリマー化合物54(ポリビニルブチラール;積水化学工業株式会社製エスレックBH3) 50mg、
である。
【0111】
(経時安定性の評価)
表示デバイス[A−2]、表示デバイス[A−2−10]、表示デバイス[E]、表示デバイス[E−10]のそれぞれに直流電源を接続した。次いで、電極(第1電極20B、第2電極40B)を通して、電流量を3mAで、通電時間を10秒、15秒、20秒の順で変化させて通電し、第2電極40B上に発色表示させ、その間の発色状態(吸光度)を、分光光度計(株式会社日立製作所製U−3310)を用いて測定した。その結果を図7及び図8に示す。
【0112】
図7及び図8において横軸は時間、縦軸は波長585nmにおいて検出された吸光度である。また、図7の実線は表示デバイス[A−2]の結果、破線は表示デバイス[A−2−10]の結果であり、図8の実線は表示デバイス[E]の結果、破線は表示デバイス[E−10]の結果である。
図7に示すように、表示デバイス[A−2−10]は、吸光度の値が、通電時間が増加しても表示デバイス[A−2]と略同一であった。これにより、表示デバイス[A−2]及び[A−2−10](本発明のエレクトロクロミック表示デバイス100B)は、60℃で10日間保存した後であっても、発色特性は変化しないことが分かった。
一方、表示デバイス[E−10]は、吸光度の値が、通電時間が増加するにつれて、表示デバイス[E]よりも小さくなっていった。さらに、表示デバイス[E]が通電を遮断した後に発色前の状態の無色の状態に戻ったのに対し、表示デバイス[E−10]は、通電を遮断しても、発色前の状態の無色の状態に戻らず、その結果、地色が着色し、コントラストレシオが低下することが分かった。これにより、表示デバイス[E]及び[E−10]は、60℃で10日間保存すると、発色特性が変化し、保存前の表示性能を維持できないことが分かった。
以上の結果から、コハク酸イミド類の化合物(一般式が上記の式(3)で表される化合物及び上記の式(4)で表される化合物)を添加することにより、経時保存による表示性能の劣化を解消できることが分かった。
【0113】
以上説明した本発明のエレクトロクロミック表示デバイス100,100A,100Bによれば、第1基板10と、第1基板10の上面に設けられた第1電極20…,20A…,20Bと、第1基板10の上方に第1基板10に対向して設けられ、透明な材料により形成された第2基板30と、第2基板30の下面に設けられ、少なくとも一部が透明な電極材料により形成された第2電極40…,40Bと、第1基板10と第2基板30との間に設けられたエレクトロクロミック組成物層50と、を備え、エレクトロクロミック組成物層50は、ロイコ染料52aと、支持電解質と、極性溶剤と、を含むエレクトロクロミック組成物52を備え、エレクトロクロミック組成物52には、化合物53(上記の一般式(1)で表される化合物及び/又は上記の一般式(2)で表される化合物、上記の一般式(3)で表される化合物及び/又は上記の一般式(4)で表される化合物、並びに、上記の一般式(5)で表される化合物)が添加されていることを特徴とする。
すなわち、エレクトロクロミック組成物には、上記の一般式(1)で表される化合物や上記の一般式(2)で表される化合物といったハイドロキノン類の化合物、上記の一般式(3)で表される化合物や上記の一般式(4)で表される化合物といったコハク酸イミド類の化合物、並びに、上記の一般式(5)で表される化合物といったピリジニウム塩類の化合物が添加されている。
したがって、ロイコ染料52aを用いたエレクトロクロミック表示デバイス100,100A,100Bにおいて、ハイドロキノン類の化合物及びコハク酸イミド類を添加しているため、表示・消去を繰り返すことによる表示性能の劣化を解消することができ、コハク酸イミド類の化合物を添加しているため、経時保存による表示性能の劣化を解消することができる。さらに、ピリジニウム塩類の化合物を添加しているため、高速で駆動しても十分な表示濃度を得ることができる。
【0114】
また、本発明のエレクトロクロミック表示デバイス100,100A,100Bによれば、極性溶剤は、支持電解質を用い通電性を示す有機溶媒の少なくとも1種である。すなわち、エレクトロクロミック組成物52は、ロイコ染料52aの発色、消色を電圧及び/又は電流の遮断によって行うことができるよう、通電を促進する機能を有する化合物を含んでいるため、好適である。
【0115】
また、本発明のエレクトロクロミック表示デバイス100,100A,100Bによれば、支持電解質は、上記の一般式(6)で表される化合物及び/又は上記の一般式(7)で表される化合物である。すなわち、エレクトロクロミック組成物52は、エレクトロクロミック組成物52内を電流が流れ易くするための機能を有する化合物を含んでいるため、好適である。
【0116】
また、本発明のエレクトロクロミック表示デバイス100,100A,100Bによれば、エレクトロクロミック組成物52には、ポリマー化合物54が添加されている。すなわち、エレクトロクロミック組成物52には、エレクトロクロミック組成物52の粘度を高め、その取り扱いを容易にする機能を有する化合物が添加されているため、好適である。
【0117】
また、本発明のエレクトロクロミック表示デバイス100,100Aによれば、第1電極20…,20A…は、並行して延びる複数の電極であり、第2電極40…は、第1電極20…,20A…と直交する方向に並行して延びる複数の透明電極によりなる透明表示電極であり、第1電極20…,20A…と第2電極40…とが立体交差する領域に画素60が形成され、エレクトロクロミック組成物層50は、第1基板20…及び第2基板40…に対して略垂直方向に貫通する細孔を有する多孔質体51を備え、所定の添加剤(化合物53、ポリマー化合物54など)が添加されたエレクトロクロミック組成物52は、多孔質体51の細孔内に導入されている。
すなわち、エレクトロクロミック組成物52を多孔質体51の細孔51a…内に導入するだけで、緻密で煩雑な工程を経て形成される隔壁を備えなくても、画素60,60間のクロストークを抑えることができる。さらに、多孔質体51に形成された細孔51a…は、第1基板10及び第2基板30に対して略垂直方向に貫通しているため、細孔がランダムに形成された多孔質体を使用する場合と比較して、解像力やコントラストが高くなり、簡易な構成で、高い表示性能を有することができる。
【0118】
また、本発明のエレクトロクロミック表示デバイス100,100Aによれば、パッシブマトリックス駆動によって表示のための駆動をするようになっている。したがって、構造がシンプルなものとなって好適である。
【0119】
なお、本発明は、上記した実施の形態のものに限るものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0120】
(変形例1)
本発明のエレクトロクロミック表示デバイス100,100A,100Bは、第1電極20…,20A…,20Bと第2電極40…,40Bとの間に通電することによって、所定の添加物が添加されたエレクトロクロミック組成物52に通電することができれば良く、例えば、図9に示す、エレクトロクロミック表示デバイス100Cのように、多孔質体51の細孔51a…の底部を閉じる導電性部材55Cを備えていても良い。
【0121】
具体的には、エレクトロクロミック表示デバイス100Cは、例えば、第1基板10と、第1電極20…と、第2基板30と、第2電極40…と、第1基板10と第2基板30との間に設けられたエレクトロクロミック組成物層50Cと、を備えて構成される。
【0122】
エレクトロクロミック組成物層50Cは、例えば、多孔質体51と、多孔質体51の細孔51a内に導入された、所定の添加剤(化合物53やポリマー化合物54など)が添加されたエレクトロクロミック組成物52と、多孔質体51の細孔51aの底部を閉じる導電性部材55Cと、を備えて構成される。
【0123】
導電性部材55Cは、例えば、平面状に形成されており、導電性部材55Cの上面には多孔質体51が積層されている。
【0124】
導電性部材55Cの材質は、特に限定されるものではなく、例えば、導電性の金属や炭素材料などを用いることができる。また、導電性部材55Cは、例えば、単独の材料からなる1つの層により構成されていても良いし、互いに異なる材料からなる2つ以上の層により構成されていても良い。
【0125】
無論、エレクトロクロミック表示デバイス100A,100Bに導電性部材55Cを備えて、エレクトロクロミック表示デバイス100Cを構成しても良い。
【0126】
(変形例2)
本発明のエレクトロクロミック表示デバイス100は、第1電極20…と第2電極40…との間に通電することによって、所定の添加物が添加されたエレクトロクロミック組成物52に通電することができれば良く、第1電極20…と第2電極40…は、例えば、図10に示す、エレクトロクロミック表示デバイス100Dの第1電極20D…と第2電極40D…であっても良い。
【0127】
具体的には、エレクトロクロミック表示デバイス100Dは、例えば、第1基板10と、第1電極20D…と、第2基板30と、第2電極40D…と、第1基板10と第2基板30との間に設けられたエレクトロクロミック組成物層50と、を備えて構成される。
【0128】
第1電極20D…は、例えば、ライン状に形成されており、互いに平行な等間隔の縞状に設けられている。
第1電極20D…は、エレクトロクロミック組成物層50に接するように、且つ、第2電極40D…に対向してエレクトロクロミック組成物層50を挟むように、第1基板10の上面に設けられている。
第1電極20D…は、第2電極40D…と対になり、エレクトロクロミック組成物層50に通電する機能を有する。
第1電極20D…は、第2電極40D…の透明表示電極部41Bと立体交差、すなわち、間隔を有して交差し、その交点の領域に画素60を形成している。
【0129】
第1電極20D…の材質は、特に限定されるものではなく、金属電極を構成する材質や透明電極を構成する材質を用いることができる。金属電極を構成する材質としては、例えば、金、白金、銀、クロム、アルミニウム、コバルト、パラジウム、銅、ニッケル、これらの合金などが挙げられる。また、透明電極を構成する材質としては、例えば、ITO、ZnO、FTOなどが挙げられる。
【0130】
第2電極40D…は、例えば、画素60…に対応する位置に設けられた透明表示電極部41D…と、ライン状に形成されており、互いに平行な等間隔の縞状に設けられたライン状電極部42D…と、などを備えて構成される。透明表示電極部41D…は、ライン状電極部42Dと接続されている。
第2電極40D…は、エレクトロクロミック組成物層50に接するように、且つ、第1電極20D…に対向してエレクトロクロミック組成物層50を挟むように、第2基板30の下面に設けられている。
第2電極40D…は、第1電極20D…と対になり、エレクトロクロミック組成物層50に通電する機能を有する。
第2電極40D…の透明表示電極41D…は、第1電極20D…と立体交差、すなわち、間隔を有して交差し、その交点の領域に画素60を形成している。
【0131】
透明表示電極部41D…の材質は、透明電極を構成可能な材質であれば、特に限定されるものではない。透明電極を構成可能な材質としては、例えば、ITO膜やSnO又はInOをコーティングした薄膜などが挙げられる。また、ITO膜やSnO又はInOをコーティングした薄膜などにSnやSbなどをドーピングしたものであっても良く、MgO、ZnO、FTOなどであっても良い。さらに、透明表示電極部41D…は、その材質が金又は白金などであっても薄膜であれば機能を果たすことができる。
【0132】
ライン状電極部42D…の材質は、特に限定されるものではなく、金属電極を構成する材質や透明電極を構成する材質を用いることができる。金属電極を構成する材質としては、例えば、金、白金、銀、クロム、アルミニウム、コバルト、パラジウム、銅、ニッケル、これらの合金などが挙げられる。また、透明電極を構成する材質としては、例えば、ITO、ZnO、FTOなどが挙げられる。
【0133】
なお、第2電極40D…は、上述した[4]第2の蒸着工程(第2基板30の片方の面に第2電極40D…を設ける工程)において、公知の蒸着法、メッキ法、スパッタ法によって成膜され、次いで、フォトリソグラフ法によってパターニングされ、次いで、エッチング法によって形成されるが、透明表示電極部41D…とライン状電極部42D…とは、1回の蒸着法、メッキ法、スパッタ法による成膜によって同時に形成しても良いし、2回の蒸着法、メッキ法、スパッタ法による成膜によって別個に形成しても良い。
【0134】
変形例2のエレクトロクロミック表示デバイス100Dによれば、第1電極20D…は、並行して延びる複数のライン状電極であり、第2電極40D…は、透明表示電極部41D…と、透明表示電極部41D…に接続されたライン状電極部42D…とにより構成されている。したがって、第2電極40D…(透明表示電極部41D…)を薄くすることができるため、発色の度合いを向上させることができるとともに、エレクトロクロミック表示デバイスの表示の明るさを向上させることができる。また、ライン状の電極(第1電極20D…と第2電極40D…のライン状電極部42D…)に通電することによって、エレクトロクロミック組成物52に通電することができるため、画素60,60間の電位差が小さくなり、省電力化を図ることができる。
【0135】
なお、変形例2においては、第1電極20D…も、透明表示電極部と、透明表示電極部に接続されたライン状電極部とにより構成されていても良い。この場合、第1電極20D…の透明表示電極部と第2電極40D…の透明表示電極部41D…とが相対して立体交差する領域に画素が形成されることになる。
【0136】
上記した実施の形態及び変形例1及び2において、エレクトロクロミック組成物52を構成する染料は、ロイコ染料52aに限ることはなく、電子供与性染料前駆体であれば任意である。
【0137】
上記した実施の形態のエレクトロクロミック表示デバイス100Bは、保持体51Bに代えて、多孔質体51を備えていても良い。
【図面の簡単な説明】
【0138】
【図1】本発明のエレクトロクロミック表示デバイス(第1例)を模式的に示す図である。
【図2】本発明のエレクトロクロミック表示デバイス(第2例)を模式的に示す図である。
【図3】本発明のエレクトロクロミック表示デバイス(第3例)を模式的に示す図である。
【図4】画素のサイズと、多孔質体の細孔のサイズと、の関係を説明するための図である。
【図5】エレクトロクロミック組成物の発色を説明するための図である。
【図6】本発明のエレクトロクロミック表示デバイス(表示デバイス[A−1])と、比較のためのエレクトロクロミック表示デバイス(表示デバイス[B])と、の高速表示の評価結果を示す図である。
【図7】本発明のエレクトロクロミック表示デバイス(表示デバイス[A−2]、[A−2−10])の経時安定性の評価結果を示す図である。
【図8】比較のためのエレクトロクロミック表示デバイス(表示デバイス[E]、[E−10])の経時安定性の評価結果を示す図である。
【図9】変形例1のエレクトロクロミック表示デバイスを模式的に示す図である。
【図10】変形例2のエレクトロクロミック表示デバイスを模式的に示す図である。
【符号の説明】
【0139】
10 第1基板
20,20A,20B,20D 第1電極
30 第2基板
40,40B,40D 第2電極
50,50B,50C エレクトロクロミック組成物層
51 多孔質体
51a 細孔
52 エレクトロクロミック組成物
52a ロイコ染料(染料)
53 化合物(一般式(1)で表される化合物及び/又は一般式(2)で表される化合物、一般式(3)で表される化合物及び/又は一般式(4)で表される化合物、並びに、一般式(5)で表される化合物)
54 ポリマー化合物
60 画素
100,100A,100B,100C,100D エレクトロクロミック表示デバイス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1基板と、前記第1基板の上面に設けられた第1電極と、前記第1基板の上方に当該第1基板に対向して設けられ、透明な材料により形成された第2基板と、前記第2基板の下面に設けられ、少なくとも一部が透明な電極材料により形成された第2電極と、前記第1基板と前記第2基板との間に設けられたエレクトロクロミック組成物層と、を備えるエレクトロクロミック表示デバイスにおいて、
前記エレクトロクロミック組成物層は、ロイコ染料と、支持電解質と、極性溶剤と、を含むエレクトロクロミック組成物を備え、
前記エレクトロクロミック組成物には、下記の一般式(1)で表される化合物及び/又は下記の一般式(2)で表される化合物、下記の一般式(3)で表される化合物及び/又は下記の一般式(4)で表される化合物、並びに、下記の一般式(5)で表される化合物が添加されていることを特徴とするエレクトロクロミック表示デバイス。
【化1】

(式中R1、R2、R3、R4は、水素原子、アルキル基、アリル基、アルコキシ基、水酸基、ニトロ基、アルキルカルボニル基、ホルミル基、カルボキシル基又はアルコキシカルボニル基を表す。或いは、式中R1とR2及び/又は式中R3とR4は、互いに縮合して形成された5員又は6員の縮合環を表す。ただし、式中R1、R2、R3、R4のすべてが水素原子であることは無い。)
【化2】

(式中R5、R6、R7、R8は、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アリル基、水酸基、ニトロ基、アルキルカルボニル基、ホルミル基、カルボキシル基又はアルコキシカルボニル基を表す。或いは、式中R5とR6、式中R6とR7及び/又は式中R7とR8は、互いに縮合して形成された5員又は6員の縮合環を表す。ただし、式中R5、R6、R7、R8のすべてが水素原子であることは無い。)
【化3】

(式中R9、R10、R11、R12は、水素原子を表す。或いは、式中R9とR11、式中R9とR12、式中R10とR11又は式中R10とR12は、互いに結合して形成された二重結合を表す。)
【化4】

(式中Z及び点線は、環を形成している状態を表し、当該環が脂肪族の環の場合は、置換若しくは無置換のシクロヘキシル基を表し、当該環が芳香族の環の場合は、置換若しくは無置換のフェニル基又は置換若しくは無置換のナフチル基を表す。)
【化5】

(式中R13は、炭素数1から16の直鎖又は分岐したアルキル基、ハロゲン原子を表す。式中R14、R15、R16は、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アルキルカルボニル基、アルコキシ基、カルボニルアルコキシ基又はジアルキルアミノ基を表す。式中Xは、ハロゲン原子、BF基、PF基、CHSO基、CFSO基、p−トルエンスルホン酸基を表す。ただし、式中R13とXとが同時にハロゲン原子であることは無い。)
【請求項2】
請求項1に記載のエレクトロクロミック表示デバイスにおいて、
前記極性溶剤は、前記支持電解質を用い通電性を示す有機溶媒の少なくとも1種であることを特徴とするエレクトロクロミック表示デバイス。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のエレクトロクロミック表示デバイスにおいて、
前記支持電解質は、下記の一般式(6)で表される化合物及び/又は下記の一般式(7)で表される化合物であることを特徴とするエレクトロクロミック表示デバイス。
【化6】

(式中Mは、Li、Na、K、Rb、Cs又はNHを表す。式中Xは、ClO、BF、CFSO又はPFを表す。)
【化7】

(式中R17は、アルキル基又はアリール基を表す。式中R18は、アルキル基を表す。式中Nは、窒素原子を表す。式中Xは、Cl、Br、I、ClO、BF、CFSO又はPFを表す。式中nは、0、1又は2を表し、式中mは、4−nを表す。)
【請求項4】
請求項1〜3の何れか一項に記載のエレクトロクロミック表示デバイスにおいて、
前記エレクトロクロミック組成物には、ポリマー化合物が添加されていることを特徴とするエレクトロクロミック表示デバイス。
【請求項5】
請求項1〜4の何れか一項に記載のエレクトロクロミック表示デバイスにおいて、
前記第1電極は、並行して延びる複数の電極であり、
前記第2電極は、前記第1電極と直交する方向に並行して延びる複数の透明電極によりなる透明表示電極であり、
前記第1電極と前記第2電極とが立体交差する領域に画素が形成されることを特徴とするエレクトロクロミック表示デバイス。
【請求項6】
請求項1〜5の何れか一項に記載のエレクトロクロミック表示デバイスにおいて、
前記エレクトロクロミック組成物層は、前記第1基板及び前記第2基板に対して略垂直方向に貫通する細孔を有する多孔質体を備え、
前記エレクトロクロミック組成物は、前記多孔質体の細孔内に導入されていることを特徴とするエレクトロクロミック表示デバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−128818(P2009−128818A)
【公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−306218(P2007−306218)
【出願日】平成19年11月27日(2007.11.27)
【出願人】(505303059)株式会社船井電機新応用技術研究所 (108)
【出願人】(000201113)船井電機株式会社 (7,855)
【Fターム(参考)】