説明

エレクトロクロミック表示デバイス

【課題】パッシブマトリクス駆動のエレクトロクロミック表示デバイスにおいて、隔壁を備えることなく、高品質な画像の高速表示及び高速消去を実現する。
【解決手段】パッシブマトリクス駆動のエレクトロクロミック表示デバイス100において、第1電極20は、並行して延びる複数の電極であり、第2電極40は、第1電極20と直交する方向に並行して延びる複数の透明表示電極であり、第1電極20と第2電極40とが立体交差する領域に画素60が形成され、表示を実施する際、選択された画素60を形成する第1電極20を負電極、当該選択された画素60を形成する第2電極40を正電極として、電極間に第1電位差の電圧を印加し、その直後に、当該第1電極20を正電極、当該第2電極40を負電極として、電極間に第1電位差と同等又はそれ以上の第2電位差の電圧を印加することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレクトロクロミック表示デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
電子情報ネットワークの普及に伴い、従来の印刷技術による書籍に代わり、電子書籍の形での出版、すなわち電子出版が盛んに行われるようになってきた。こうしたネットワークで配信される電子情報を表示する装置として、例えば、CRT(Cathode Ray Tube)ディスプレイやバックライト型液晶ディスプレイが用いられている。しかしながら、これらのディスプレイを用いた表示は、紙に印刷した慣用の表示に比べ、読む場所が制限され、取り扱いの面においても重量、大きさ、形状、携帯性の点で劣る。また、これらのディスプレイは消費電力が大きいため、電池による駆動であれば表示時間にも制限が生じてしまう。さらに、これらのディスプレイは、何れも発光型のディスプレイであり、長時間凝視すると高度の疲労を招くことがあるという問題もある。
【0003】
したがって、上記のような問題を解決できる表示デバイス、さらには、書き換え可能な表示デバイスが望まれている。このような表示デバイスとして、ペーパーライクディスプレイ或いは電子ペーパーと称するものが提案されている。具体的には、例えば、反射型液晶方式の表示デバイス、電気泳動方式の表示デバイス、二色性の粒子を電場で回転させる方式の表示デバイス、エレクトロクロミック方式の表示デバイス(例えば、特許文献1及び2参照)等がこれまでに提案されている。
【0004】
ところで、エレクトロクロミック方式の表示デバイス(エレクトロクロミック表示デバイス)においては、例えば、図11に示すように、画像の表示は、選択された画素(選択画素)を発色させるための通電(具体的には、選択画素を形成するライン電極(第1電極)に負電圧、当該選択画素を形成するデータ電極(第2電極)に正電圧を印加すること)によって実施され、表示した画像の消去は、選択画素を発色させるための通電とは逆方向の通電(具体的には、当該第1電極に正電圧、当該第2電極に負電圧を印加すること)によって実施されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−270671号公報
【特許文献2】特開2008−032911号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、電極間は電解質溶液で満たされているため、選択画素を発色させるための通電によって、当該選択画素を形成する電極間は、分極して、電解コンデンサや電池のような状態となる。すなわち、選択画素を発色させるための通電の後は、当該選択画素を形成する電極間に電荷が残存する。この電荷は、電解質溶液を介して周辺へと移動し、非選択画素を形成する電極間へも移動する。したがって、例えば、高速スキャンを行って、一の画像を繰り返し表示すると、残存する電荷が消滅する前に次の通電が行われるため、非選択画素を形成する電極間に電荷が蓄積して、当該非選択画素が発色してしまい、選択画素が滲んだような不鮮明な画像が表示されてしまうという問題がある。そこで、残存する電荷の移動を防止するために、画素同士の間に画素間を分離するための隔壁を形成することが考えられるが、隔壁の形成には、位置合わせ等の正確性や緻密性が要求され、作製にかかる負担が大きい。
また、高速スキャンを行って、残存する電荷が消滅する前に、表示した画像の消去を行うと、残存する電荷の影響で消去に時間がかかるという問題もある。
【0007】
本発明の課題は、パッシブマトリクス駆動のエレクトロクロミック表示デバイスにおいて、隔壁を備えることなく、高品質な画像の高速表示及び高速消去を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、
第1基板と、前記第1基板の上面に設けられた第1電極と、前記第1基板の上方に当該第1基板に対向して設けられ、透明な材料により形成された第2基板と、前記第2基板の下面に設けられ、少なくとも一部が透明な電極材料により形成された第2電極と、前記第1基板と前記第2基板との間に設けられたエレクトロクロミック組成物層と、を備え、前記第1電極と前記第2電極との間の通電によって表示を実施するとともに、前記第1電極と前記第2電極との間の当該表示のための通電とは逆方向の通電によって当該表示の消去を実施するパッシブマトリクス駆動のエレクトロクロミック表示デバイスにおいて、
前記第1電極は、並行して延びる複数の電極であり、
前記第2電極は、前記第1電極と直交する方向に並行して延びる複数の透明表示電極であり、
前記第1電極と前記第2電極とが立体交差する領域に画素が形成され、
前記表示を実施する際、選択された画素を形成する前記第1電極を負電極、当該選択された画素を形成する前記第2電極を正電極として、電極間に第1電位差の電圧を印加し、その直後に、当該第1電極を正電極、当該第2電極を負電極として、電極間に前記第1電位差と同等又はそれ以上の第2電位差の電圧を印加する印加処理を行うことを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載の発明は、
第1基板と、前記第1基板の上面に設けられた第1電極と、前記第1基板の上方に当該第1基板に対向して設けられ、透明な材料により形成された第2基板と、前記第2基板の下面に設けられ、少なくとも一部が透明な電極材料により形成された第2電極と、前記第1基板と前記第2基板との間に設けられたエレクトロクロミック組成物層と、を備え、前記第1電極と前記第2電極との間の通電によって表示を実施するとともに、前記第1電極と前記第2電極との間の当該表示のための通電とは逆方向の通電によって当該表示の消去を実施するパッシブマトリクス駆動のエレクトロクロミック表示デバイスにおいて、
前記第1電極は、並行して延びる複数の電極であり、
前記第2電極は、前記第1電極と直交する方向に並行して延びる複数の透明表示電極であり、
前記第1電極と前記第2電極とが立体交差する領域に画素が形成され、
前記表示を実施する際、選択された画素を形成する前記第1電極を正電極、当該選択された画素を形成する前記第2電極を負電極として、電極間に第1電位差の電圧を印加し、その直後に、当該第1電極を負電極、当該第2電極を正電極として、電極間に前記第1電位差と同等又はそれ以上の第2電位差の電圧を印加する印加処理を行うことを特徴とする。
【0010】
請求項3に記載の発明は、
第1基板と、前記第1基板の上面に設けられた第1電極と、前記第1基板の上方に当該第1基板に対向して設けられ、透明な材料により形成された第2基板と、前記第2基板の下面に設けられ、少なくとも一部が透明な電極材料により形成された第2電極と、前記第1基板と前記第2基板との間に設けられたエレクトロクロミック組成物層と、を備え、前記第1電極と前記第2電極との間の通電によって表示を実施するとともに、前記第1電極と前記第2電極との間の当該表示のための通電とは逆方向の通電によって当該表示の消去を実施するパッシブマトリクス駆動のエレクトロクロミック表示デバイスにおいて、
前記第1電極は、並行して延びる複数の電極であり、
前記第2電極は、前記第1電極と直交する方向に並行して延びる複数の透明表示電極であり、
前記第1電極と前記第2電極とが立体交差する領域に画素が形成され、
前記表示を実施する際、選択された画素を形成する前記第1電極を負電極、当該選択された画素を形成する前記第2電極を正電極として、電極間に第1電位差の電圧を印加し、その直後に、当該第1電極を正電極、当該第2電極を負電極として、電極間に前記第1電位差と同等又はそれ以上の第2電位差の電圧を印加する第1印加処理と、選択された画素を形成する前記第1電極を正電極、当該選択された画素を形成する前記第2電極を負電極として、電極間に第1電位差の電圧を印加し、その直後に、当該第1電極を負電極、当該第2電極を正電極として、電極間に前記第1電位差と同等又はそれ以上の第2電位差の電圧を印加する第2印加処理と、を交互に行うことを特徴とする。
【0011】
請求項4に記載の発明は、
請求項1〜3の何れか一項に記載のエレクトロクロミック表示デバイスにおいて、
前記第2電位差の電圧の印加時間は、前記第1電位差の電圧の印加時間の0.25〜0.5であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、パッシブマトリクス駆動のエレクトロクロミック表示デバイスにおいて、表示を実施する際、選択された画素を形成する第1電極を負電極、当該選択された画素を形成する第2電極を正電極として、電極間に第1電位差の電圧を印加し、その直後に、当該第1電極を正電極、当該第2電極を負電極として、電極間に第1電位差と同等又はそれ以上の第2電位差の電圧を印加する印加処理(第1印加処理)と、選択された画素を形成する第1電極を正電極、当該選択された画素を形成する第2電極を負電極として、電極間に第1電位差の電圧を印加し、その直後に、当該第1電極を負電極、当該第2電極を正電極として、電極間に第1電位差と同等又はそれ以上の第2電位差の電圧を印加する印加処理(第2印加処理)と、の何れか一方を、或いは、第1印加処理と第2印加処理とを交互に行うようになっている。
すなわち、選択された画素(選択画素)を発色させるための通電の直後に、当該通電とは逆方向の通電を行い、当該選択画素を形成する電極間に発生した電荷を解消することによって、電荷が残存しないようにしている。そのため、残存する電荷の影響で非選択画素が発色してしまうことがなく、また、残存する電荷の影響で表示した画像の消去に時間がかかってしまうこともない。したがって、隔壁を備えることなく、高品質な画像の高速表示及び高速消去を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明のエレクトロクロミック表示デバイスを備える表示装置の機能的構成の一例を示すブロック図である。
【図2】本発明のエレクトロクロミック表示デバイスの一例を模式的に示す平面図(a)、断面図(b)である。
【図3】本発明のエレクトロクロミック表示デバイスを備える表示装置が有する第1電圧切替部の回路構成の一例を示す図である。
【図4】本発明のエレクトロクロミック表示デバイスを備える表示装置が有する第2電圧切替部の回路構成の一例を示す図である。
【図5】本発明のエレクトロクロミック表示デバイスに対する電圧印加の仕方の一例を説明するための図である。
【図6】少なくとも表面が酸化されている電極間の電流電圧特性について説明するための図である。
【図7】実施例1−1の結果を示す図である。
【図8】実施例1−2の結果を示す図である。
【図9】比較例1−1の結果を示す図である。
【図10】比較例1−2の結果を示す図である。
【図11】従来のエレクトロクロミック表示デバイスに対する電圧印加の仕方を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図を参照して、本発明の実施の形態を詳細に説明する。ただし、発明の範囲は、図示例に限定されない。
【0015】
(表示装置)
表示装置1000は、エレクトロクロミック表示デバイス100を備え、外部から入力された画像データに従って所与の表示処理を行う装置である。
具体的には、表示装置1000は、例えば、図1に示すように、エレクトロクロミック表示デバイス100と、第1電圧切替部200…と、第1電極選択部300と、第2電圧切替部400…と、第2電極選択部500と、制御部600と、等を備えて構成される。
【0016】
(エレクトロクロミック表示デバイス)
エレクトロクロミック表示デバイス100は、例えば、図2に示すように、第1基板10と、第1基板10の上面に設けられた第1電極20…と、第1基板10の上方に第1基板10に対向して設けられた第2基板30と、第2基板30の下面に設けられた第2電極40…と、第1基板10と第2基板30との間に設けられたエレクトロクロミック組成物層50と、を備えて構成されるパッシブマトリクス駆動の表示素子である。
エレクトロクロミック表示デバイス100は、第1電極20…と第2電極40…との間の通電によって表示を実施するとともに、第1電極20…と第2電極40…との間の当該表示のための通電とは逆方向の通電によって当該表示の消去を実施するようになっている。
第1電極20…は、例えば、互いに並行して延びる複数の電極である。第2電極40…は、例えば、第1電極20…と直交する方向に互いに並行して延びる複数の透明電極によりなる透明表示電極である。そして、第1電極20…と第2電極40…とが立体交差する領域に画素60…が形成されている。
【0017】
第1基板10は、例えば、平面状に形成されており、エレクトロクロミック表示デバイス100の基体としての機能を有する。
【0018】
第1基板10の材質は、電気的に絶縁性であれば、特に限定されるものではなく、例えば、ガラスやプラスチックを用いることができる。ガラスとしては、例えば、ソーダライム系ガラス、低アルカリ・ホウケイ酸ガラス、無アルカリ・ホウケイ酸ガラス、無アルカリ・アミノケイ酸ガラス、石英ガラス等が挙げられる。また、プラスチックとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステル類、ポリアミド類、ポリカーボネート類、ポリフッ化ビニリデンなどのフッ素ポリマー類、ポリエーテル類、ポリスチレン、ポリエチレンなどのポリオレフィン類、ポリイミド類等が挙げられる。
【0019】
第1基板10は、白色に見えるのが好ましい。したがって、第1基板10の材質をガラスやプラスチックとした場合、例えば、二酸化チタン、硫酸バリウム、カオリン等の白色顔料を配合することによって、白色に見える第1基板10を形成することができる。また、透明基板の下面に、前記白色顔料を塗布したり、白色紙や白色PETシートなどの白色シートを配置したりすることによって、白色に見える第1基板10を形成することができる。
【0020】
第1電極20…は、例えば、幅を有するライン状に形成されており、互いに平行な等間隔の縞状に設けられている。
第1電極20…は、エレクトロクロミック組成物層50に接するように、且つ、第2電極40…に対向してエレクトロクロミック組成物層50を挟むように、第1基板10の上面に設けられている。
第1電極20…は、第2電極40…と対になり、エレクトロクロミック組成物層50に通電する機能を有する。
第1電極20…は、第2電極40…と立体交差、すなわち、間隔を有して交差し、その交点の領域に画素60を形成している。
【0021】
第1電極20は、少なくとも表面が酸化されているのであれば、透明電極であっても、不透明電極であってもよく、特に限定されるものではない。具体的には、第1電極20としては、例えば、ITO薄膜、SnOやInOなどの酸化被膜をコーティングした薄膜、ITO薄膜にSnやSbをドーピングしたもの、SnOやInOなどの酸化被膜をコーティングした薄膜にSnやSbをドーピングしたもの、酸化亜鉛薄膜、酸化マグネシウム薄膜、酸化アルミニウム薄膜、酸化クロム薄膜、酸化ニッケル薄膜、酸化チタン薄膜等を挙げることができる。また、ITOや酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化クロム、酸化ニッケル、酸化チタンなどの酸化被膜をコーティングした薄膜等であっても良い。
【0022】
第2基板30は、例えば、平面状に形成された透明基板であり、第2電極40…の支持体としての機能を有する。
【0023】
第2基板30の材質は、電気的に絶縁性の透明基板であれば、特に限定されるものではなく、例えば、ガラスやプラスチックを用いることができる。ガラスとしては、例えば、ソーダライム系ガラス、低アルカリ・ホウケイ酸ガラス、無アルカリ・ホウケイ酸ガラス、無アルカリ・アミノケイ酸ガラス、石英ガラス等が挙げられる。また、プラスチックとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステル類、ポリアミド類、ポリカーボネート類、ポリフッ化ビニリデンなどのフッ素ポリマー類、ポリエーテル類、ポリスチレン、ポリエチレンなどのポリオレフィン類、ポリイミド類等が挙げられる。
【0024】
第2電極40…は、例えば、幅を有するライン状に形成された透明電極であり、互いに平行な等間隔の縞状に設けられている。
第2電極40…は、エレクトロクロミック組成物層50に接するように、且つ、第1電極20…に対向してエレクトロクロミック組成物層50を挟むように、第2基板30の下面に設けられている。
第2電極40…は、第1電極20…と対になり、エレクトロクロミック組成物層50に通電する機能を有する。
第2電極40…は、第1電極20…と立体交差、すなわち、間隔を有して交差し、その交点の領域に画素60を形成している。
【0025】
第2電極40は、少なくとも表面が酸化された透明電極であれば、特に限定されるものではない。具体的には、第2電極40としては、例えば、ITO薄膜、SnOやInOなどの酸化被膜をコーティングした薄膜、ITO薄膜にSnやSbをドーピングしたもの、SnOやInOなどの酸化被膜をコーティングした薄膜にSnやSbをドーピングしたもの、酸化亜鉛薄膜、酸化マグネシウム薄膜等を挙げることができる。また、ITOや酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化クロム、酸化ニッケル、酸化チタンなどの酸化被膜をコーティングした薄膜等であっても良い。
【0026】
エレクトロクロミック組成物層50は、例えば、スペーサ51と、スペーサ51に保持されたエレクトロクロミック組成物52と、等を備えて構成される。
エレクトロクロミック組成物層50の厚みは、特に限定されるものではないが、好ましくは10μm〜500μm、より好ましくは30μm〜200μmに設定することによって、エレクトロクロミック組成物52の表示機能を効果的に発現させることができる。
【0027】
スペーサ51は、第1基板10と第2基板30との間に、一定の体積で、エレクトロクロミック組成物52を保持する役割を有する。すなわち、スペーサ51は、エレクトロクロミック組成物52を含むことによって、エレクトロクロミック組成物52を第1基板10と第2基板30との間で支えるとともに、スペーサ51の厚みによって、エレクトロクロミック組成物52の量を均一に制御する役割を有する。
【0028】
スペーサ51としては、上述した役割を果たすものであれば任意であり、例えば、多孔性の板状体やシート状体、粒状体(多孔性であっても非多孔性であっても良い)等が挙げられる。
【0029】
スペーサ51が多孔性の板状体やシート状体である場合、例えば、スペーサ51の細孔内にエレクトロクロミック組成物52を導入することによって、エレクトロクロミック組成物層50を形成する。この場合、第1電極20…(第1電極20…が設置された第1基板10)と第2電極40…(第2電極40…が設置された第2基板30)とでスペーサ51を挟んだ後に、当該スペーサ51の細孔内にエレクトロクロミック組成物52を導入してエレクトロクロミック組成物層50を形成しても良いし、スペーサ51の細孔内にエレクトロクロミック組成物52を導入してエレクトロクロミック組成物層50を形成した後に、当該エレクトロクロミック組成物層50を、第1電極20…と第2電極40…とで挟んでも良い。
ここで、多孔性の板状体やシート状体としては、エレクトロクロミック表示デバイス100の表示性能向上等の観点から、第1基板10及び第2基板30に対して略垂直方向に貫通する細孔を有するものが好ましく、具体的には、例えば、陽極酸化アルミナやメッシュ(ネット)状シート材などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0030】
また、スペーサ51が粒状体である場合、例えば、スペーサ51とエレクトロクロミック組成物52とを混ぜてペースト状にしたものを、第1電極20…と第2電極40…とで挟むことによって、エレクトロクロミック組成物層50を形成する。
【0031】
エレクトロクロミック組成物52は、支持電解質と、極性溶剤と、ロイコ染料と、を含んでいる。
そして、エレクトロクロミック組成物52には、エレクトロクロミック表示デバイス100の表示品質の劣化を抑制するための表示品質劣化抑制剤(ハイドロキノン誘導体及び/又はカテコール誘導体、フェロセン誘導体並びにカルボニル基を有する化合物)と、第1電極20…と第2電極40…との間の消去のための通電時にロイコ染料を吸着する吸着剤53と、が添加されている。
また、エレクトロクロミック組成物52に添加可能な成分としては、例えば、エレクトロクロミック組成物52の物性(例えば、増粘など)を調整するためのポリマー化合物等が挙げられる。
【0032】
エレクトロクロミック組成物52は、エレクトロクロミック表示デバイス100の表示にかかる発色及び消色の機能を有する。
具体的には、エレクトロクロミック組成物52は、第1電極20…と第2電極40…との間の通電によって発色し、発色のための通電とは逆方向の通電によって、或いは、発色のための通電を遮断することによって消色する。
エレクトロクロミック組成物52は、流動性があれば良く、例えば、低粘度の液体状であっても良いし、高粘度のペースト状であっても良いし、流動性の小さいゲル状であっても良い。
【0033】
エレクトロクロミック組成物52の構成成分である支持電解質は、エレクトロクロミック組成物52内を電流が流れ易くするための機能を有する。支持電解質は、一般に溶融塩と称する化合物を含む。支持電解質は、各化合物を単独で用いても良いし、複数を混合して用いても良い。
支持電解質は、エレクトロクロミック組成物52全体の重量に対して、0.01〜20重量%となるように添加することが好ましく、前記機能の十分な発現のためには、0.1〜20重量%となるように添加することがより好ましい。
【0034】
具体的には、支持電解質は、前記機能を有する化合物であれば、特に限定されるものではなく、例えば、第1の支持電解化合物及び/又は第2の支持電解化合物が挙げられる。
第1の支持電解化合物としては、例えば、NaClO、LiClO、KClO、RbClO、CsClO、NHClO、LiBF、LiPF等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
また、第2の支持電解化合物としては、例えば、(CHNClO、(CNClO、(n−CNClO、(CHNBF、(CNBF、(n−CNBF、(CHNCl、(CNCl、(CHNBr、(CNBr、(n−CNBr、(n−CNI、C(CHNClO、C(CNClO、C17(CHNClO、(CNPF、(n−CNPF、(CHNCFSO、(CNCFSO等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0035】
エレクトロクロミック組成物52の構成成分である極性溶剤は、支持電解質を用い通電性を示す有機溶媒の少なくとも1種であり、ロイコ染料の消色を電圧及び/又は電流の遮断により促進する機能を有する。また、極性溶剤は、エレクトロクロミック組成物52にポリマー化合物を添加する場合に、そのポリマー化合物の溶剤としての機能も果たす。極性溶剤は、各種を単独で用いても良いし、適宜2種類以上を組み合わせて用いても良い。
【0036】
以下に、好適な極性溶剤の例を示すが、これらは例示であり、極性溶剤を限定するものではない。
極性溶剤の具体例としては、例えば、N−メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジエチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、プロピレンカーボネート、ジメチルスルフォキシド、γ-ブチロラクトン、アセトニトリル、プロピオニトリル、ブチロニトリル等が挙げられる。例示した極性溶剤は、何れもエレクトロクロミック組成物52の構成成分として用いる極性溶剤として好ましいものであるが、特に好ましいものとしてはN,N−ジメチルアセトアミドが挙げられる。
【0037】
エレクトロクロミック組成物52の構成成分であるロイコ染料は、無色又は淡色の電子供与性染料前駆体であり、フェノール性化合物などの顕色剤、酸性物質、電子受容性物質によって発色する化合物である。
ロイコ染料としては、例えば、部分骨格にラクトン、ラクタム、スルトン、スピロピラン、エステル又はアミド構造を有する実用上無色となりうる化合物等が挙げられる。具体的には、例えば、トリアリルメタン化合物、ビスフェニルメタン化合物、キサンテン化合物、フルオラン化合物、チアジン化合物、スピロピラン化合物等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0038】
ロイコ染料は、前記化合物の中から適宜選択することによって、各種カラーの発色を行うことができる。したがって、ロイコ染料を用いたエレクトロクロミック表示デバイス100の表示色は、ロイコ染料によって適宜選択することができる。具体的には、例えば、ブラックに発色するロイコ染料を用いる場合は、白黒及びグレー表示が可能となる。
【0039】
ロイコ染料の配合量は、ロイコ染料の溶解度に依存するため、一概に表すことは難しいが、ロイコ染料は、発色のために充分な量が配合されている必要がある。溶解度が小さいロイコ染料の場合は、必要な量が含まれるように、例えば、各画素60に対応するエレクトロクロミック組成物層50の体積(スペーサ51の厚み)を大きくする等して、ロイコ染料の配合量を調節すると良い。
【0040】
エレクトロクロミック組成物52に添加される表示品質劣化抑制剤は、ロイコ染料の発色、消色の繰り返し動作に伴うエレクトロクロミック表示デバイス100の表示品質の劣化を抑制する機能を有する化合物である。
表示品質劣化抑制剤の添加量は、ロイコ染料の含有量に対して、1〜20重量%となるように添加することが好ましく、前記機能の十分な発現のためには、5〜20重量%となるように添加することが好ましい。
【0041】
表示品質劣化抑制剤は、第1の表示品質劣化抑制化合物(ハイドロキノン誘導体及び/又はカテコール誘導体)と、第2の表示品質劣化抑制化合物(フェロセン誘導体)と、第3の表示品質劣化抑制化合物(カルボニル基を有する化合物(アセトフェノン誘導体及び/又はジベンゾイル誘導体))と、の混合物である。
【0042】
エレクトロクロミック組成物52に添加される吸着剤53は、例えば、酸化アルミニウム及び/又は水酸化アルミニウムである。
吸着剤53(酸化アルミニウム及び/又は水酸化アルミニウム)の添加の態様は、特に限定されるものではないが、エレクトロクロミック組成物52中に粉末で添加し、超音波やボールミル、ホモミキサーなどのホモジナイザーを用いて均一に分散し、エレクトロクロミック組成物52溶液の分散液として用いることが好ましい。
【0043】
吸着剤53の添加量は、用いる酸化アルミニウム及び/又は水酸化アルミニウムの活性度、粒径等により異なる。
αアルミナのように表面積の小さい酸化アルミニウム、10μm以上の粒径を有する大きな酸化アルミニウム、表面積の小さい水酸化アルミニウム、10μm以上の粒径を有する水酸化アルミニウムは、ロイコ染料の吸着効果が小さく、十分な吸着動作を発現するためには、1グラムのロイコ染料に対して、0.5グラム〜5グラム、好ましくは1グラム〜3グラムの添加が好ましい。
また、γアルミナのように表面積の大きい酸化アルミニウム、1μm以下の粒径を有する小さい酸化アルミニウム、表面積の大きい水酸化アルミニウム、1μm以下の粒径を有する小さい酸化アルミニウムは、ロイコ染料の吸着効果が大きいため、1グラムのロイコ染料に対して、0.1グラム〜0.5グラムの添加で、十分な吸着動作を発現する。
また、薄層クロマトグラフィなどに用いられる活性アルミナの類は、数10μmの粒径を有する大粒子であっても、1グラムのロイコ染料に対して、0.1グラム〜0.5グラムの添加で、十分な吸着動作を発現する。
【0044】
ロイコ染料を吸着する吸着剤53は、化成品にて容易に入手できる。
以下に、好適な市販の吸着剤53の例を示すが、これらは例示であり、吸着剤53を限定するものではない。
市販の吸着剤53の具体例としては、例えば、メルク社製薄層クロマト用酸化アルミニウム60GNeutral(粒径4μm〜50μm)、日本軽金属製ローソーダアルミナLS235(粒径0.47μm),活性アルミナC200(粒径4.4μm),水酸化アルミニウムB1403(粒径1.5μm)、住友化学製γアルミナKC501(粒径1μm)等が挙げられる。
【0045】
エレクトロクロミック組成物52に添加されるポリマー化合物は、エレクトロクロミック組成物52の粘度を高め、その取り扱いを容易にする機能を有する。ポリマー化合物は各種を単独で用いても良いし、適宜2種類以上を組み合わせて用いても良い。
ポリマー化合物は、エレクトロクロミック組成物52の粘度を高めるために用いるが、この場合のエレクトロクロミック組成物52の性状は、低粘度の液体状、高粘度のペースト状、流動性の小さいゲル状、とすることができる。
ポリマー化合物の好ましい配合量は、エレクトロクロミック組成物52全体の重量に対して、0.1〜80重量%とすることが好ましい。
【0046】
以下に、好適なポリマー化合物の例を示すが、これらは例示であり、ポリマー化合物を限定するものではない。
ポリマー化合物の具体例としては、例えば、ポリフッ化ビニリデン、ポリ塩化ビニリデン、ポリエチレンオキサイドなどのポリアルキレンオキサイド、又は、ポリアルキレンイミン、ポリアルキレンスルフィドの繰返し単位を有する高分子、ポリメチルメタクリレート、ポリアクリロニトリル、ポリカーボネート、ポリビニルブチラールのごときポリビニルホルマール等が挙げられる。特に好ましいものとしては、ポリビニルブチラール、ポリフッ化ビニリデンが挙げられる。
【0047】
以上に説明したエレクトロクロミック組成物52は、一例であり、その他にも電気化学的な発色が可能な組成物であれば、これをスペーサ51により保持したものをエレクトロクロミック組成物層50として用いることが可能である。
【0048】
(第1電圧切替部)
表示装置1000は、例えば、図1に示すように、複数(例えば、エレクトロクロミック表示デバイス100が備える第1電極20の本数と同数)の第1電圧切替部200を備えている。
第1電圧切替部200は、例えば、当該第1電圧切替部200と接続する第1電極20に印加する電圧を正電圧と負電圧とに切り替える。
具体的には、第1電圧切替部200は、例えば、図3に示すように、正電圧を出力する第1正電圧電源201と、スイッチとして機能する第1Pチャンネルトランジスタ202と、負電圧を出力する第1負電圧電源203と、スイッチとして機能する第1Nチャンネルトランジスタ204と、等を備えて構成される。
【0049】
第1正電圧電源201は、例えば、第1電極選択部300によりON/OFFされるようになっている。第1正電圧電源201がONされると、第1Pチャンネルトランジスタ202の一端(ソース)に正電圧が印加される。
第1Pチャンネルトランジスタ202は、例えば、ゲートがゲート端子200aに接続され、一端(ソース)が第1正電圧電源201に接続され、他端(ドレイン)がエレクトロクロミック表示デバイス100の第1電極20と接続する出力端子200bに接続されている。
【0050】
第1負電圧電源203は、例えば、第1電極選択部300によりON/OFFされるようになっている。第1負電圧電源203がONされると、第1Nチャンネルトランジスタ204の一端(ソース)の負電圧が印加される。
第1Nチャンネルトランジスタ204は、例えば、ゲートがゲート端子200aに接続され、一端(ソース)が第1負電圧電源203に接続され、他端(ドレイン)がエレクトロクロミック表示デバイス100の第1電極20と接続する出力端子200bに接続されている。
【0051】
(第1電極選択部)
第1電極選択部300は、例えば、制御部600から入力される制御信号に従って、第1電圧切替部200を制御することにより、第1電極20(ライン電極)に正電圧や負電圧を印加する。
【0052】
具体的には、第1電極選択部300は、例えば、所定の正電圧を第1電圧切替部200のゲート端子200aに印加するとともに、第1正電圧電源201をONする。これにより、第1Pチャンネルトランジスタ202のゲートに当該所定の正電圧が印加されるとともに、第1Pチャンネルトランジスタ202の一端(ソース)に第1正電圧電源201からの正電圧が印加されるため、第1Pチャンネルトランジスタ202がONされて、出力端子200bを介して第1電極20に正電圧が印加される。
一方、第1電極選択部300は、例えば、所定の負電圧を第1電圧切替部200のゲート端子200aに印加するとともに、第1負電圧電源203をONする。これにより、第1Nチャンネルトランジスタ204のゲートに当該所定の負電圧が印加されるとともに、第1Nチャンネルトランジスタ204の一端(ソース)に第1負電圧電源203からの負電圧が印加されるため、第1Nチャンネルトランジスタ204がONされて、出力端子200bを介して第1電極20に負電圧が印加される。
以下、第1電極20に印加する正電圧を「第2正電圧」といい、第1電極20に印加する負電圧を「第1負電圧」という。
【0053】
(第2電圧切替部)
表示装置1000は、例えば、図1に示すように、複数(例えば、エレクトロクロミック表示デバイス100が備える第2電極40の本数と同数)の第2電圧切替部400を備えている。
第2電圧切替部400は、例えば、当該第2電圧切替部400と接続する第2電極40に印加する電圧を正電圧と負電圧とに切り替える。
具体的には、第2電圧切替部400は、例えば、図4に示すように、正電圧を出力する第2正電圧電源401と、スイッチとして機能する第2Pチャンネルトランジスタ402と、負電圧を出力する第2負電圧電源403と、スイッチとして機能する第2Nチャンネルトランジスタ404と、等を備えて構成される。
【0054】
第2正電圧電源401は、例えば、第2電極選択部500によりON/OFFされるようになっている。第2正電圧電源401がONされると、第2Pチャンネルトランジスタ402の一端(ソース)に正電圧が印加される。
第2Pチャンネルトランジスタ402は、例えば、ゲートがゲート端子400aに接続され、一端(ソース)が第2正電圧電源401に接続され、他端(ドレイン)がエレクトロクロミック表示デバイス100の第2電極40と接続する出力端子400bに接続されている。
【0055】
第2負電圧電源403は、例えば、第2電極選択部500によりON/OFFされるようになっている。第2負電圧電源403がONされると、第2Nチャンネルトランジスタ404の一端(ソース)の負電圧が印加される。
第2Nチャンネルトランジスタ404は、例えば、ゲートがゲート端子400aに接続され、一端(ソース)が第2負電圧電源403に接続され、他端(ドレイン)がエレクトロクロミック表示デバイス100の第2電極40と接続する出力端子400bに接続されている。
【0056】
(第2電極選択部)
第2電極選択部500は、例えば、制御部600から入力される制御信号に従って、第2電圧切替部400を制御することにより、第2電極40(データ電極)に正電圧や負電圧を印加する。
【0057】
具体的には、第2電極選択部500は、例えば、所定の正電圧を第2電圧切替部400のゲート端子400aに印加するとともに、第2正電圧電源401をONする。これにより、第2Pチャンネルトランジスタ402のゲートに当該所定の正電圧が印加されるとともに、第2Pチャンネルトランジスタ402の一端(ソース)に第2正電圧電源401からの正電圧が印加されるため、第2Pチャンネルトランジスタ402がONされて、出力端子400bを介して第2電極40に正電圧が印加される。
一方、第2電極選択部500は、例えば、所定の負電圧を第2電圧切替部400のゲート端子400aに印加するとともに、第2負電圧電源403をONする。これにより、第2Nチャンネルトランジスタ404のゲートに当該所定の負電圧が印加されるとともに、第2Nチャンネルトランジスタ404の一端(ソース)に第2負電圧電源403からの負電圧が印加されるため、第2Nチャンネルトランジスタ404がONされて、出力端子400bを介して第2電極40に負電圧が印加される。
以下、第2電極40に印加する正電圧を「第1正電圧」といい、第2電極40に印加する負電圧を「第2負電圧」という。
【0058】
(制御部)
制御部600は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等を備えて構成され、表示装置1000を構成する各部の動作を集中制御する。
【0059】
(表示動作)
制御部600は、例えば、外部から入力された画像データに基づいて、第1電極選択部300及び第2電極選択部500を制御して、第1電圧切替部200及び第2電圧切替部400を介して、パッシブマトリクス駆動によりエレクトロクロミック表示デバイス100に当該画像データに基づく画像を表示させる。
具体的には、制御部600は、表示を実施する際、発色させる画素を選択し、選択した画素(選択画素)を形成する第1電極20を負電極、当該選択画素を形成する第2電極40を正電極として、電極間に第1電位差の電圧を印加し、その直後に、当該選択画素を形成する第1電極20を正電極、当該選択画素を形成する第2電極40を負電極として、電極間に第2電位差(第1電位差と同等又はそれ以上の電位差)の電圧を印加することにより、各選択画素を発色させることによって、エレクトロクロミック表示デバイス100に画像を表示させる。
【0060】
より具体的には、第1電極選択部300は、制御部600から入力される制御信号に従って、1行目(例えば、図1における一番上の第1電極20)→2行目→3行目→…の順に第1電極20を選択して、例えば、図5に示すように、当該選択した第1電極20に第1負電圧を印加し、その直後に、第2正電圧を印加する。なお、同時に複数の第1電極20は選択されないようになっている。
また、第2電極選択部500は、制御部600から入力される制御信号に従って、第1電極選択部300による第1電極20の選択と同期して、第2電極40を選択する。すなわち、第1電極選択部300により1行目の第1電極20が選択されている際、第2電極選択部500は、1行目の発色すべき画素60を形成する第2電極40を選択して、例えば、図5に示すように、当該選択した第2電極40に第1正電圧を印加し、その直後に、第2負電圧を印加する。
すなわち、第1電極20に第1負電圧、第2電極40に第1正電圧を印加することによって、電極間に第1電位差の電圧を印加し、第1電極20に第2正電圧、第2電極40に第2負電圧を印加することによって、電極間に第2電位差の電圧を印加する。
【0061】
ここで、図5においては、電圧が印加されていない期間を仮想線(二点鎖線)で示している。これは、電圧が印加されていない期間における第1電極20及び第2電極40の電圧は、電極に自然に残った電圧であり、実際には「0(ゼロ)」ではないため、仮想線で示している。
【0062】
第1電位差は、画素を発色させることができる電極間電圧であれば任意であるが、第1電位差の電圧印加によって発色した画素は、第2電位差の電圧印加によって退色するため、退色後の色が所望の色になるような電極間電圧であることが好ましい。具体的な第1電位差は、第1電極20及び第2電極40の材質等に依存するため、一概に表すことは難しいが、例えば、5V≦第1電位差≦8Vである。
また、第2電位差は、第1電位差の電圧印加によって電極間に発生した電荷を解消可能な電極間電圧であれば任意であり、具体的には、例えば、第1電位差との比で、第1電位差:第2電位差=1:1〜1.5が好ましい。
また、第1電位差の電圧の印加時間(印加期間)と第2電位差の電圧の印加時間(印加期間)との和は、スキャン速度(すなわち、垂直走査周波数)に応じて決定される。したがって、第1電位差の電圧の印加時間と第2電位差の電圧の印加時間とは、スキャン速度に応じて適宜任意に変更されるが、第1電位差の電圧印加によって電極間に発生した電荷を、第2電位差の電圧印加によって確実に解消する等の観点から、第1電位差の電圧の印加時間と第2電位差の電圧の印加時間との比は、第1電位差の電圧の印加時間:第2電位差の電圧の印加時間=1:0.25〜0.5が好ましい。
【0063】
第1電極20及び第2電極40は、少なくとも表面が酸化されているため、電極間の電流電圧特性が、例えば、図6に示すような非線形となる。すなわち、電極間に第1閾値よりも大きい電圧又は第2閾値よりも小さい電圧を印加した場合は、電極間に電流が流れるが、電極間に第1閾値以下で第2閾値以上の電圧を印加した場合は、電極間に電流が流れないという特性を有している。
したがって、第1電位差及び第2電位差を、電極間に電流が流れる電圧として、選択画素を形成する電極間に電流が流れるようにし、その一方で、非選択画素を形成する電極間には電圧を印加しないで、非選択画素を形成する電極間に電流が流れないようにすると、選択画素の周りの非選択画素を形成する電極間に、当該選択画素からの影響によって電位差が生じても、通電が抑制されるため、当該非選択画素は発色せず、選択画素のみが発色することになって、解像度の高い画像を表示させることができる。
【0064】
しかしながら、エレクトロクロミック表示デバイス100を高速で駆動すると、電極間の電流電圧特性の非線形性が崩れ、漏れ電流(残存する電荷の移動)により非選択画素も発色してしまうようになる。
そこで、本発明では、選択画素を形成する電極間に、画素を発色させるための通電(第1電位差の電圧印加)を行い、その直後に、当該通電とは逆方向の通電(第2電位差の電圧印加)を行って、画素を発色させるための通電により発生した電荷を解消して、漏れ電流が発生しないようにしている。
【0065】
エレクトロクロミック表示デバイス100に画像を表示させる表示動作の一例について、より具体的に説明する。
まず、制御部600は、1行目のライン(1行目の第1電極20)に第1負電圧(例えば、−4.0V≦第1負電圧≦−2.5V)を印加させるとともに、1行目のライン上の画素のうちの選択画素を形成する第2電極40に第1正電圧(例えば、+2.5V≦第1正電圧≦+4.0V)を印加させて、これらの電極間に第1電位差の電圧を印加する。その直後に、当該第1電極20に第2正電圧(例えば、+2.5V≦第2正電圧≦+6.0V)を印加させるとともに、当該第2電極40に第2負電圧(例えば、−6.0V≦第2負電圧≦−2.5V)を印加させて、これらの電極間に第2電位差の電圧を印加する。
第1電位差の電圧が印加されている画素60においては、エレクトロクロミック組成物52を介して第2電極40から第1電極20へと電流が流れ、エレクトロクロミック組成物層50と第2電極40との界面(第2電極40の表面)にてエレクトロクロミック組成物52が電気化学的な変化を起こすため、1行目のライン上の選択画素は発色する。また、当該画素60を形成する電極間においては、第1電位差の電圧の印加に伴って、電荷が発生するが、その直後に第2電位差の電圧が印加されることによって、当該電荷は解消される。
【0066】
次いで、制御部600は、2行目のライン(2行目の第1電極20)に第1負電圧を印加させるとともに、2行目のライン上の画素のうちの選択画素を形成する第2電極40に第1正電圧を印加させて、これらの電極間に第1電位差の電圧を印加することにより、2行目のライン上の選択画素を発色させる。その直後に、当該第1電極20に第2正電圧を印加させるとともに、当該第2電極40に第2負電圧を印加させて、これらの電極間に第2電位差の電圧を印加することにより、第1電位差の電圧の印加に伴ってこれらの電極間に発生した電荷を解消する。
そして、制御部600は、3行目のライン、4行目のライン、5行目のライン、…について上記と同様の処理を行うことにより、1フレーム(1ページ)分の画像をエレクトロクロミック表示デバイス100に表示させる。
【0067】
(消去動作)
また、制御部600は、例えば、第1電極選択部300及び第2電極選択部500を制御して、第1電圧切替部200及び第2電圧切替部400を介して、表示(発色)のための通電とは逆方向に通電することによって、すなわち、第1電極20から第2電極40へと電流を流すことによって、エレクトロクロミック表示デバイス100に表示された画像を消去する。
【0068】
具体的には、制御部600は、選択画素を形成する第1電極20を正電極、当該選択画素を形成する第2電極40を負電極として、電極間に第3電位差の電圧を印加することにより、当該選択画素の発色を消去することによって、エレクトロクロミック表示デバイス100に表示された画像を消去する。
より具体的には、第1電極選択部300は、制御部600から入力される制御信号に従って、1行目→2行目→3行目→…の順に第1電極20を選択して、例えば、図5に示すように、当該選択した第1電極20に所定の正電圧(以下「第3正電圧」という)を印加する。なお、同時に複数の第1電極20は選択されないようになっている。
また、第2電極選択部500は、制御部600から入力される制御信号に従って、第1電極選択部300による第1電極20の選択と同期して、第2電極40を選択する。すなわち、第1電極選択部300により1行目の第1電極20が選択されている際、第2電極選択部500は、1行目の消色すべき画素60(発色している画素60)を形成する第2電極40を選択して、例えば、図5に示すように、当該選択した第2電極40に所定の負電圧(以下「第3負電圧」という)を印加する。
すなわち、第1電極20に第3正電圧を印加して、第2電極40に第3負電圧を印加することによって、電極間に第3電位差の電圧を印加する。
第3電位差は、発色している画素60を消色させることができる電極間電圧であれば任意である。具体的な第3電位差は、第1電極20及び第2電極40の材質等に依存するため、一概に表すことは難しいが、例えば、2.0V≦第3電位差≦5.0Vである。
また、第3電位差の電圧の印加時間(印加期間)は、スキャン速度に応じて決定される。
【0069】
なお、エレクトロクロミック表示デバイス100に表示された画像の消去は、表示のための通電とは逆方向の通電だけでなく、表示のための通電を遮断して放置することによっても行うことはできるが、表示のための通電とは逆方向の通電の方が、速やかに消去動作を実施することができる。
【0070】
ここで、吸着剤53(酸化アルミニウム及び/又は水酸化アルミニウム)が添加されていないエレクトロクロミック組成物52を使用する表示デバイスでは、消去のための通電の通電量を厳密に制御する必要があった。これは、消去のための通電によって、ロイコ染料がエレクトロクロミック組成物層50と第1電極20との界面(第1電極20の表面)へと移動して発色してしまい、結果として表示が消去されないことがあるからである。
【0071】
これに対して、エレクトロクロミック表示デバイス100においては、消去のための通電の通電量を厳密に制御しなくても、消去のための通電時には、ロイコ染料は吸着剤53に吸着されるため、ロイコ染料がエレクトロクロミック組成物層50と第1電極20との界面(第1電極20の表面)へと移動して発色してしまうことを防止することができる。
具体的には、ロイコ染料は溶液中で分極している。吸着剤53は、比表面積が大きく吸着能力が高いという特徴を有するとともに、表面が分極している。発色表示のための通電においては、第2電極40は正電極になるから、電子供与性であるロイコ染料は、電子を第2電極40に供与して発色し、表示を行う。一方、消去のための通電では、表示と反対方向に通電を行うため、第2電極40は負電極になる。ロイコ染料は、その負電極となった第2電極40から電子を受容して消色し、発色は消去される。そして、無色となったロイコ染料は、第1電極20の方向へ移動するが、高い吸着能力を有するとともに表面が分極した吸着剤53の存在によって、第1電極20へは到達せずに、吸着剤53へと移動して、捕捉吸着される。これにより、エレクトロクロミック表示デバイス100においては、消去のための通電時に、ロイコ染料が、エレクトロクロミック組成物層50と第1電極20の界面(第1電極20の表面)に移動して発色することを防止することができる。
【0072】
<実施例>
以下に、具体的な実施例によって本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0073】
(エレクトロクロミック表示デバイスの作成)
第2基板30として、0.7mm厚の矩形状の無アルカリガラス基板を用い、その一方の面(下面)に、ITOをスパッタ形成した。スパッタされたITOは、膜厚200nm、表面抵抗10Ω/□であった。スパッタ形成されたITOを、フォトリソグラフィー法を用いて、ストライプ幅0.42mm、ピッチ0.45mmとして、ストライプ状にパターン形成し、第2電極40…を作成した。
同様に、第1基板10として、矩形状の無アルカリガラス基板を用い、その一方の面(上面)に、クロムをスパッタ形成して、スパッタされたクロムの表面に酸化被膜(酸化クロム)を形成した。スパッタされたクロム(表面の酸化クロムも含む)は、膜厚200nm、表面抵抗1Ω/□であった。スパッタ形成されたクロム(表面の酸化クロムも含む)を、フォトリソグラフィー法を用いて、ストライプ幅0.42mm、ピッチ0.45mmとして、ストライプ状にパターン形成し、第1電極20…を作成した。
【0074】
次いで、スペーサ51(粒状体(積水化学工業製ミクロパール(粒径50μm)))と、所定の添加物(表示品質劣化抑制剤、吸着剤53、ポリマー化合物等)が添加されたエレクトロクロミック組成物52(以下、「エレクトロクロミック組成物A」と呼ぶ)と、を混ぜてペースト状にしたものを、第1電極20…が形成された第1電極10と、第2電極40…が形成された第2基板30と、で挟んだ。そして、第1電極20…と第2電極40…とが直交し、その直交部が画素60…となるように調整することによって、エレクトロクロミック表示デバイス100(以下「表示デバイスA」という)を作成した。
【0075】
エレクトロクロミック組成物Aの組成は、
支持電解質(テトラnブチルアンモニウムテトラフルオロボレート((n−CNBF))100mg、
極性溶剤(N,N−ジメチルアセトアミド)1.0g、
ロイコ染料(下記の式(1)に示すブラックに発色するロイコ染料)300mg、
ハイドロキノン誘導体(ハイドロキノン)56mg、
フェロセン誘導体(フェロセン)15mg、
カルボニル基を有する化合物(ジベンゾイル誘導体(ジベンゾイル))106mg、
吸着剤53(酸化アルミニウム;日本軽金属製活性アルミナC200)75mg、
ポリマー化合物(ポリビニルブチラール;積水化学製エスレックBH3)25mgである。
【化1】

【0076】
(表示動作)
表示デバイスAが備えるライン電極(第1電極20)及びデータ電極(第2電極40)に、それぞれ第1電圧切替部200…及び第2電圧切替部400…を接続し、エレクトロクロミック表示デバイス100として表示デバイスAを有する表示装置1000を作成した。
次いで、パッシブマトリクス駆動法を用いて、表示のための通電を行った。具体的には、第1負電圧(−3.5V)を第1電極20に印加して、第1正電圧(+3.5V)を第2電極40に印加することによって、電極間に第1電位差(7.0V)の電圧を印加し、その直後に、第2正電圧(+4.2V)を第1電極20に印加して、第2負電圧(−4.2V)を第2電極40に印加することによって、電極間に第2電位差(8.4V)の電圧を印加した。第1電位差の電圧の印加時間と第2電位差の電圧の印加時間との比は、第1電位差の電圧の印加時間:第2電位差の電圧の印加時間=1:0.5とした。
【0077】
そして、この電圧印加処理を、所定の速度で1ライン毎に行うことにより、スキャンを行って、画像を表示し、当該スキャンを繰り返し行って、当該画像を繰り返し表示した。
ここで、1ライン当たり8秒の速度でスキャンを行ったものを実施例1−1とし、1ライン当たり2m秒の速度でスキャンを行ったものを実施例1−2とする。
【0078】
また、比較例として、従来のエレクトロクロミック表示デバイスに対する電圧印加の仕方(すなわち、画素を発色させるための通電を行った直後に、当該通電とは逆方向の通電を行わない仕方(図11参照))で電圧を印加することによって画像を表示した。
具体的には、表示デバイスAを有する表示装置1000を用い、所定の負電圧(−2.0V)を第1電極20に印加して、所定の正電圧(+2.0V)の正電圧を第2電極40に印加することによって、電極間に所定の電位差(4.0V)の電圧を印加した。
【0079】
そして、この電圧印加処理を、所定の速度で1ライン毎に行うことにより、スキャンを行って、画像を表示し、当該スキャンを繰り返し行って、当該画像を繰り返し表示した。
ここで、1ライン当たり8秒の速度でスキャンを行ったものを比較例1−1とし、1ライン当たり2m秒の速度でスキャンを行ったものを比較例1−2とする。
【0080】
(結果)
実施例1−1で表示された画像の一部を図7、実施例1−2で表示された画像の一部を図8、比較例1−1で表示された画像の一部を図9、比較例1−2で表示された画像の一部を図10に示す。
比較例1−1(8m秒/ライン)で表示された画像よりも、比較例1−2(2m秒/ライン)で表示された画像の方が、不鮮明であることが分かった。
また、実施例1−1(8m秒/ライン)で表示された画像よりも、実施例1−2(2m秒/ライン)で表示された画像の方が、不鮮明であることが分かった。
すなわち、実施例でも、比較例でも、スキャン速度が高速になるほど(すなわち、垂直走査周波数が高くなるほど)、表示される画像が不鮮明になることが分かった。
【0081】
しかしながら、比較例1−1で表示された画像よりも、実施例1−1で表示された画像の方が、鮮明であり、また、比較例1−2で表示された画像よりも、実施例1−2で表示された画像の方が、鮮明であることが分かった。
そして、実施例1−2で表示された画像は、実施例1−1で表示された画像よりは不鮮明であるものの、十分に実用に耐え得る品質であることが分かった。
すなわち、画素を発色させるための通電を行った直後に、当該通電とは逆方向の通電を行うことによって、隔壁を備えなくても、高品質な画像を高速表示できることが分かった。
【0082】
以上説明した本発明のエレクトロクロミック表示デバイス100によれば、第1基板10と、第1基板10の上面に設けられた第1電極20…と、第1基板10の上方に第1基板10に対向して設けられ、透明な材料により形成された第2基板30と、第2基板30の下面に設けられ、少なくとも一部が透明な電極材料により形成された第2電極40…と、第1基板10と第2基板30との間に設けられたエレクトロクロミック組成物層50と、を備え、第1電極20と第2電極40との間の通電によって表示を実施するとともに、第1電極20と第2電極40との間の当該表示のための通電とは逆方向の通電によって当該表示の消去を実施するパッシブマトリクス駆動の表示デバイス素子であり、そして、第1電極20…は、並行して延びる複数の電極であり、第2電極40…は、第1電極20と直交する方向に並行して延びる複数の透明電極によりなる透明表示電極であり、第1電極20と第2電極40とが立体交差する領域に画素60…が形成され、表示を実施する際、選択画素を形成する第1電極20を負電極、当該選択画素を形成する第2電極40を正電極として、電極間に第1電位差の電圧を印加し、その直後に、当該選択画素を形成する第1電極20を正電極、当該選択画素を形成する第2電極40を負電極として、電極間に第1電位差と同等又はそれ以上の第2電位差の電圧を印加するようになっている。
すなわち、選択画素を発色させるための通電の直後に、当該通電とは逆方向(逆極性)の通電を行い、当該選択画素を形成する電極間に発生した電荷を解消することによって、電荷が残存しないようにしている。そのため、残存する電荷の影響で非選択画素が発色してしまうことがなく、また、残存する電荷の影響で表示した画像の消去に時間がかかってしまうこともない。したがって、隔壁を備えることなく、高品質な画像の高速表示及び高速消去を実現することができる。
【0083】
また、以上説明した本発明のエレクトロクロミック表示デバイス100によれば、第2電位差の電圧の印加時間は、第1電位差の電圧の印加時間の0.25〜0.5である。
したがって、選択画素を形成する電極間に発生した電荷を確実に解消することができる。
【0084】
なお、本発明は、上記した実施の形態のものに限るものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0085】
<変形例1>
上記本実施形態では、表示を実施する際、選択画素を形成する第1電極20を負電極、当該選択画素を形成する第2電極40を正電極として、電極間に第1電位差の電圧を印加し、その直後に、当該選択画素を形成する第1電極20を正電極、当該選択画素を形成する第2電極40を負電極として、電極間に第1電位差と同等又はそれ以上の第2電位差の電圧を印加する第1印加処理を行うようにして、ロイコ染料を、エレクトロクロミック組成物層50と第2電極40の界面(第2電極40の表面)に移動させて発色させ、第2基板30の上面側から表示された画像を見るようにしたが、これに限ることはなく、例えば、表示を実施する際、選択画素を形成する第1電極20を正電極、当該選択画素を形成する第2電極40を負電極として、電極間に第1電位差の電圧を印加し、その直後に、当該選択画素を形成する第1電極20を負電極、当該選択画素を形成する第2電極40を正電極として、電極間に第1電位差と同等又はそれ以上の第2電位差の電圧を印加する第2印加処理を行うようにして、ロイコ染料を、エレクトロクロミック組成物層50と第1電極20の界面(第1電極20の表面)に移動させて発色させるようにしても良い。第2印加処理を行った場合、第2基板30の上面側から、第2基板30、第2電極40及びエレクトロクロミック組成物層50を介して、表示された画像を見ることができる。
また、表示を実施する際、第1印加処理と第2印加処理とを交互に行うようにしても良い。
【0086】
第1電圧切替部200及び第2電圧切替部400の回路構成は、それぞれ図3及び図4に示すものに限ることはなく、表示動作の際、選択画素を形成する第1電極20を負電極、当該選択画素を形成する第2電極40を正電極として、電極間に第1電位差の電圧を印加し、その直後に、当該選択画素を形成する第1電極20を正電極、当該選択画素を形成する第2電極40を負電極として、電極間に第1電位差と同等又はそれ以上の第2電位差の電圧を印加することができるのであれば、任意である。
【0087】
選択画素を形成する電極間以外の電極間には電圧を印加しないようにしたが、これに限るものではなく、選択画素を形成する電極間以外の電極間に、所定の低電圧を印加したり、所定の低電流を供給したりして、選択画素を形成する電極間以外の電極間に、当該選択画素を形成する電極間への通電とは逆方向の通電を行うようにしても良い。これにより、漏れ電流の発生をさらに抑制することができる。
【符号の説明】
【0088】
10 第1基板
20 第1電極
30 第2基板
40 第2電極
50 エレクトロクロミック組成物層
60 画素
100 エレクトロクロミック表示デバイス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1基板と、前記第1基板の上面に設けられた第1電極と、前記第1基板の上方に当該第1基板に対向して設けられ、透明な材料により形成された第2基板と、前記第2基板の下面に設けられ、少なくとも一部が透明な電極材料により形成された第2電極と、前記第1基板と前記第2基板との間に設けられたエレクトロクロミック組成物層と、を備え、前記第1電極と前記第2電極との間の通電によって表示を実施するとともに、前記第1電極と前記第2電極との間の当該表示のための通電とは逆方向の通電によって当該表示の消去を実施するパッシブマトリクス駆動のエレクトロクロミック表示デバイスにおいて、
前記第1電極は、並行して延びる複数の電極であり、
前記第2電極は、前記第1電極と直交する方向に並行して延びる複数の透明表示電極であり、
前記第1電極と前記第2電極とが立体交差する領域に画素が形成され、
前記表示を実施する際、選択された画素を形成する前記第1電極を負電極、当該選択された画素を形成する前記第2電極を正電極として、電極間に第1電位差の電圧を印加し、その直後に、当該第1電極を正電極、当該第2電極を負電極として、電極間に前記第1電位差と同等又はそれ以上の第2電位差の電圧を印加する印加処理を行うことを特徴とするエレクトロクロミック表示デバイス。
【請求項2】
第1基板と、前記第1基板の上面に設けられた第1電極と、前記第1基板の上方に当該第1基板に対向して設けられ、透明な材料により形成された第2基板と、前記第2基板の下面に設けられ、少なくとも一部が透明な電極材料により形成された第2電極と、前記第1基板と前記第2基板との間に設けられたエレクトロクロミック組成物層と、を備え、前記第1電極と前記第2電極との間の通電によって表示を実施するとともに、前記第1電極と前記第2電極との間の当該表示のための通電とは逆方向の通電によって当該表示の消去を実施するパッシブマトリクス駆動のエレクトロクロミック表示デバイスにおいて、
前記第1電極は、並行して延びる複数の電極であり、
前記第2電極は、前記第1電極と直交する方向に並行して延びる複数の透明表示電極であり、
前記第1電極と前記第2電極とが立体交差する領域に画素が形成され、
前記表示を実施する際、選択された画素を形成する前記第1電極を正電極、当該選択された画素を形成する前記第2電極を負電極として、電極間に第1電位差の電圧を印加し、その直後に、当該第1電極を負電極、当該第2電極を正電極として、電極間に前記第1電位差と同等又はそれ以上の第2電位差の電圧を印加する印加処理を行うことを特徴とするエレクトロクロミック表示デバイス。
【請求項3】
第1基板と、前記第1基板の上面に設けられた第1電極と、前記第1基板の上方に当該第1基板に対向して設けられ、透明な材料により形成された第2基板と、前記第2基板の下面に設けられ、少なくとも一部が透明な電極材料により形成された第2電極と、前記第1基板と前記第2基板との間に設けられたエレクトロクロミック組成物層と、を備え、前記第1電極と前記第2電極との間の通電によって表示を実施するとともに、前記第1電極と前記第2電極との間の当該表示のための通電とは逆方向の通電によって当該表示の消去を実施するパッシブマトリクス駆動のエレクトロクロミック表示デバイスにおいて、
前記第1電極は、並行して延びる複数の電極であり、
前記第2電極は、前記第1電極と直交する方向に並行して延びる複数の透明表示電極であり、
前記第1電極と前記第2電極とが立体交差する領域に画素が形成され、
前記表示を実施する際、選択された画素を形成する前記第1電極を負電極、当該選択された画素を形成する前記第2電極を正電極として、電極間に第1電位差の電圧を印加し、その直後に、当該第1電極を正電極、当該第2電極を負電極として、電極間に前記第1電位差と同等又はそれ以上の第2電位差の電圧を印加する第1印加処理と、選択された画素を形成する前記第1電極を正電極、当該選択された画素を形成する前記第2電極を負電極として、電極間に第1電位差の電圧を印加し、その直後に、当該第1電極を負電極、当該第2電極を正電極として、電極間に前記第1電位差と同等又はそれ以上の第2電位差の電圧を印加する第2印加処理と、を交互に行うことを特徴とするエレクトロクロミック表示デバイス。
【請求項4】
請求項1〜3の何れか一項に記載のエレクトロクロミック表示デバイスにおいて、
前記第2電位差の電圧の印加時間は、前記第1電位差の電圧の印加時間の0.25〜0.5であることを特徴とするエレクトロクロミック表示デバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図11】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−261983(P2010−261983A)
【公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−110286(P2009−110286)
【出願日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【出願人】(505303059)株式会社船井電機新応用技術研究所 (108)
【出願人】(000125369)学校法人東海大学 (352)
【出願人】(000201113)船井電機株式会社 (7,855)
【Fターム(参考)】