説明

エレクトロクロミック装置

本発明は、線熱膨張係数が35から60.10−7/℃である第1非強化ガラス基板(S1)を含むエレクトロクロミック装置であって、該基板(S1)が、少なくとも1つの透明導電層(2、4)、エレクトロクロミック物質層(EC2)、イオン導電性電解質(EL)および対電極(EC1)を含む積層でコーティングされる装置に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気的に制御された窓を創出するために主として設計された、透明性を制御したエレクトロクロミック装置およびこの製造方法からなる。本発明は、このタイプの装置が備え付けられたエレクトロクロミック窓の他に、この装置の使用方法、および種々様々な用途への後者の適用方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
光透過能力を、良好なレベルの透明性を基準にして、完全な不透明まで通して調整することができる窓が公知である。この窓は多様な技術分野に用途があることが示されている。
【0003】
従って、例えば、外部の状態および利用者の選択に依存して特定の場所に差す陽光のレベルを調整することができるように、この窓を住居に用いることができる。この窓は、外部または隣室のいずれかに関する特定の場所の住人のプライバシーを守るために、遮蔽シェード(insulation shades)として用いることもできる。
【0004】
自動車分野において、このような装置は、例えば、運転手に向かって反射する光の流れを制御し、運転手が光によって目が眩むのを防ぐため、自動車内の風防および/または側窓または屋根ガラス(roof glass)に加え、特定の自動車用アクセサリ、例えば、特にバックミラーの透明性のレベルを調整するのに用いることができる。もちろん、この装置を他の分野、特に航空学の分野において用い、例えば、航空機丸窓/窓の透明性を制御することができる。
【0005】
エレクトロクロミック装置は不透明状態で吸収性であるため、光、特に陽光に露出するとき、過熱しやすい。これは陳列窓として用いられるエレクトロクロミック装置に特にあてはまる。この窓が枠にはめ込まれるとき、例えば、建築物の正面に用いられるとき、結果として、しばしば、ガラスの中央と縁との間に熱変動が出現し、窓の破壊を引き起こしやすい。明るい陽光における陰(shadow cast)は同様の効果を生じ得る。このため、エレクトロクロミック装置において用いられるソーダ石灰シリカガラスの基板は、現時点では、熱機械的抵抗力の増加が得られるように強化される(tempered or hardened)。しかしながら、強化ガラスの使用には不利益がある。このタイプのガラスは切断することができないため、最初に最終形状に切断されていない限り、ガラス基板上に薄膜を被着することができない。建築計画に依存して、切断するガラスの最終形状は大きく変化し得る。薄層をマグネトロン陰極スパッタリング(magnetron cathode sputtering)によってガラスに適用するとき、様々なサイズの基板が金属基板支持体上に配置される。層を被着させるための設定は、ガラスと金属基板支持体との表面積比が考慮されるように個別に調整する必要がある。これにより、この過程は制御困難となる。経済的および物流的理由から、および製造の容易さのため、この薄層を標準サイズ、通常は大サイズの基板上に被着させた後、この基板を所望のサイズまで切断することが可能であることが好ましい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者らは、線熱膨張係数が明瞭に決定されているガラス基板を用いることにより、この目標が達成されていることを示すことができる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
従って、本発明の主題は、線熱膨張係数が35から60.10−7/℃である第1の(initial)非強化ガラス基板を含むエレクトロクロミック装置であって、該基板が少なくとも1つの透明導電層、エレクトロクロミック物質の層、イオン性電解質導体の層および対電極からなる積層でコーティングされる装置である。実際、現在用いられるソーダ石灰シリカ型のガラスは89.10−7/℃のオーダーの熱膨張係数を有する。
【0008】
線膨張係数は線膨張の平均係数を指す。この係数は周囲に近い温度(典型的には、20℃、30℃または50℃)およびガラス転移温度を下回る温度、例えば、300℃、400℃、または500℃でも測定することができる。典型的には、考慮される温度範囲は20℃から300℃の範囲である。ガラスの縦膨張は温度に依存して線形的に変化するため、ガラス転移温度を下回る温度範囲においては、温度の選択が結果に実質的に影響を及ぼすことはない。
【0009】
本発明における装置は、好ましくは、しばしば前面基板として知られる第2ガラス基板を含む。この第2基板も定義されるような線熱膨張係数を有することができ、または反対に、例えば85から90.10−7/℃のオーダーの、標準線熱膨張係数を有していてもよい。
【0010】
好ましくは、第1ガラス基板は50.10−7/℃以下、または45.10−7/℃以下の低線熱膨張係数を有するべきである。
【0011】
第1ガラス基板は、好ましくは、SiO含有率が40%以上、特に50%であるようなタイプのシリカ系ガラス酸化物であるべきである。本明細書において、含有率は質量濃度の観点で示される。
【0012】
第1ガラス基板は、好ましくは、以下の酸化物:SiO、Al、および少なくとも1種類のアルカリ土類金属の酸化物を含む化学組成物であるべきである。
【0013】
前述の酸化物に加えて、基板の組成物は酸化ホウ素(B)および/または少なくとも1種類のアルカリ金属酸化物も含むことができる。
【0014】
基板の組成物は以下の酸化物:ZrO、P、ZnO、SnO、SO、As3、Sbの1以上を含むこともできる。
【0015】
基板は、以下の酸化物:
鉄、バナジウム、チタン、クロム、マンガン、コバルト、ニッケル、銅、セリウム、ネオジム、プラセオジムおよびエルビウム
金属コロイド、例えば、銅、銀もしくは金、または元素もしくはイオン形態にあるもの、例えば、セレンもしくはイオウ
を含む、1種類以上の着色剤を含むこともできる。
【0016】
シリカ(SiO)含有率は、好ましくは50から75%、特に50から65%であるべきである。実際、高含有率には粘度の増加が伴う。
【0017】
アルミナ(Al)含有率は、好ましくは1から20%、特に5から15%であるべきである。高アルミナ含有率は、ガラスの粘度の増加に加えて、失透する傾向につながり得る。
【0018】
酸化ホウ素(B)はガラスの粘度および熱膨張係数の両者を低減するのに有用に用いることができる。この含有率は、好ましくは20%以下、好ましくは15%であるべきである。
【0019】
アルカリ土類金属にはマグネシウム、カルシウム、ストロンチウムおよびバリウムが含まれる。カルシウムおよびマグネシウムが、低経費およびガラスの密度に対する低い衝撃性のために好ましい。アルカリ土類金属の酸化物は、膨張係数を著しく不利にすることなしに、ガラスの粘度を低減させ、融合を容易にするのに有用である。しかしながら、多量では、これらはガラスの失透を促進し得る。従って、合計含有率は、好ましくは、25%以下であり、または20%および15%でさえある。
【0020】
アルカリ金属にはリチウム、ナトリウムおよびカリウムが含まれ、ナトリウムおよびカリウムが低経費のために好ましい。アルカリ金属の酸化物は、ガラスとの融合を、粘度および失透する傾向を低減させることにより、容易にする効果を有する。しかしながら、この酸化物は熱膨張係数の著しい増加につながり、合計含有率は、好ましくは8%以下、特には6%であり、5%ですらある。
【0021】
第1基板は、好ましくは、以下からなる化学組成を備え、以下に定義される質量限界内であるべきである。
【0022】
SiO 50から82% 好ましくは50から75%
0から20%
Al 0から22%
MgO 0から10%
CaO 0から15%
SrO 0から5%
BaO 0から15%
CaO+MgO+BaO+SrO 0から15% 好ましくは5から15%
NaO 0から6%
O 0から8%
NaO+KO 0から8%
さらにより好ましくは、第1基板は、以下で定義される質量限度内の、以下で構成される化学組成を有するべきである。
【0023】
SiO 50から60%
10から15%
Al 10から15%
MgO 2から5%
CaO 2から5%
SrO 0から1%
BaO 0から1%
CaO+MgO+BaO+SrO 5から15%
NaO 0から5%
O 0から5%
NaO+KO 1から6%。
【0024】
各々のガラス基板は当業者が熟知する技術を用いて製造することができる。一般には粉末形態の、天然物または化学産業の副生物である原料を混合した後、炉に入れる。炉は、バーナーによって(空気中で、ガラス浴および/または炉の裏張り内に浸漬させ、原料またはガラス浴に作用させる。)、または再度、ガラス浴に浸漬された電極、典型的には、モリブデン中の電極を用いることによって加熱することができる。炉は、例えば、シリカ、アルミナ、ムライト(ポルセライナイト(porcelainite))、クロム酸化物の、および/またはアルミナ−ジルコン−シリカの固溶体の状態の、耐火レンガで一般に構成されるべきである。原料は加熱の効果に様々に反応し、これが溶融ガラス浴の入手につながる。ガラス浴内の温度は、典型的には1300から1700℃、特に1550から1650℃の範囲をとる。次に、溶融ガラスを形成機器に送る。形成機器は、例えば、薄い溶融浴への注ぎ入れ(「フロートガラス」の作製法として公知の方法)により、または積層ローラー(laminating rollers)を用いることにより形成する。得られたガラスのシートは、一般には、冷却段階の間に生じ得るあらゆる機械的拘束が除去されるように再焼成する。
【0025】
本発明のエレクトロクロミック装置は、好ましくは、第1基板から出発する順序で、または逆の順序で、以下からなる。
− 透明導電層、
− エレクトロクロミック物質と同じ電荷を有するイオンが逆に挿入され得るような、対電極、
− イオン性電解質導体の層、
− 適切な電気エネルギーを受けるときに、挿入および除去状態に対応する酸化の状態が特有の着色を獲得する、イオンを逆におよび同時に挿入することができるエレクトロクロミック材料の層であり、これらのうちのあるものは他の第2透明導電層よりも大きい光透過を提示する層、
− 第2透明導電層。
【0026】
代わりに、2つの透明導電層の間の層の順序を、最初にエレクトロクロミック物質、次いで電解質、最後に対電極となるよう、逆転させることができる。
【0027】
エレクトロクロミック物質は、好ましくは、(陰極エレクトロクロミック物質としての)タングステン酸化物基板、またはイリジウム酸化物のうちの1つ(陽極エレクトロクロミック物質)を有するべきである。これらの物質はカチオン、特にリチウムプロトンまたはイオンを挿入することができる。
【0028】
対電極は、好ましくは、中性着色層またはエレクトロクロミック層が着色状態にあるとき少なくとも透明であるか、または僅かに着色するだけである着色層からなるべきである。対電極は、好ましくは、タングステン、ニッケル、イリジウム、クロム、鉄、コバルトもしくはロジウムのような元素の酸化物に基づくか、またはこれらの元素のうちの少なくとも2つの混合酸化物、特には、ニッケルおよびタングステン酸化物混合物に基づくものであるべきである。エレクトロクロミック物質がタングステン酸化物、着色状態が最も還元された状態を表す陰極エレクトロクロミック物質からなる場合、例えば、ニッケル酸化物またはイリジウム酸化物系陽極エレクトロクロミック物質を対電極として用いることができる。これには、特に混合バナジウムおよびタングステン酸化物またはニッケルおよびタングステン酸化物混合物の層が含まれ得る。エレクトロクロミック物質がイリジウム酸化物である場合、陰極エレクトロクロミック物質、例えば、タングステン酸化物に基づくものが対電極の一部の役割を果たし得る。光学的に不偏の物質、例えば、セリウム酸化物または電子導電性ポリマー(ポリアニリン)もしくはプルシアンブルーのような有機物質なども、酸化状態において用いることができる。
【0029】
第1の実施方法を用いると、電解質はポリマーまたはゲル、特にプロトン導電性ポリマー(protonic conductivity polymer)、例えば、欧州特許EP0253713およびEP0670346に記載されるもの、またはリチウムイオンを導電するためのポリマー、例えば、特許EP0382623、EP0518754もしくはEP0532408に記載されるものの形態で現れる。そこで、これらは混合エレクトロクロミック系と呼ばれる。
【0030】
第2の実施方法によると、電解質は電気的に隔離されたイオン導電体を形成する無機層から構成される。そこで、これらのエレクトロクロミック系は「全固体(all−solid)」であると呼ばれる。欧州特許EP0867752およびEP0831360を参照のこと。
【0031】
本発明の装置は、2つの導電層が、陰極着色ポリマー、イオン導電体電子絶縁ポリマー(および、特にHまたはLi)および、最後に、陽極着色ポリマー(例えば、ポリアニリンまたはポリピロール)からなる積層のいずれかの側部に配置される、「全ポリマー(all−polymer)」型のものであってもよい。
【0032】
エレクトロクロミック積層は様々な層、特に、例えば、次の層の被着を容易にするか、または機械的もしくは化学的攻撃に対して特定の層を保護する(腐食、摩耗等に対する耐性)ように設計されている、下層、最上層または中間層からなるものであってもよい。エレクトロクロミック積層は、例えば、シリカ系および/またはアルミナ系保護層で覆うことができる。
【0033】
本発明における装置は、以下のように製造することができる。インジウムおよびスズ酸化物(ITO)の層またはフッ素ドープスズ酸化物の層、例えばイリジウム酸化物(IrOx)、タングステン酸化物(WO)、タンタル酸化物(Ta)の、エレクトロクロミック機能層および上部導電性電極から一般になる支持基板上に、この基板が透明であろうとこの他であろうと、下部導電性電極を配置する。
【0034】
もちろん、下部および上部導電性電極の両者は、これらにそれぞれの電流を供給するため、コネクタに取り付けなければならない。接続は、通常、上部および下部電極とそれぞれ接触させて配置される金属ホイルを用いて獲得される。
【0035】
エレクトロクロミック装置は、一般には、第2基板(第1基板はエレクトロクロミック積層が被着されるものである。)を有する。これを達成する幾つかの方法が可能である。これら2つの基板を積層することができ、積層されたポリマー(特に、ポリビニルブチラール基部を有するもの、またはエチレンおよび酢酸ビニルのコポリマー−EVA−からなるもの、またはポリウレタンで製造されるもの)は、この積層で覆われた第1基板および第2基板の間に接触させて配置される。両基板は、第2および第1基板の間に間隙が存在する限り、通常はこれらの2つの基板の間にガス層を挿入する周囲枠により、複層ガラスとして代わりに取り付けることができる。ガスは、好ましくは、アルゴンであるべきである。両者の場合において、エレクトロクロミック積層はあらゆるタイプの化学的または機械的攻撃に対して保護されるような方法で、2つの基板の間に配置される。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明によるエレクトロクロミック装置を模式的に表す。
【発明を実施するための形態】
【0037】
図1を参照すると、本発明のエレクトロクロミック装置は、好ましくは「完全固体」で、連続的に以下からなるべきである。
− 35から60.10−7/℃の線熱膨張係数の第1ガラス基板S1、
− 好ましくはITO系で、例えば250nm厚の、特に熱いときに被着された、平方抵抗(square resistance)が10オームのオーダーである下部導電性電極層2であり、この変形は、スズドープフッ素(tin−doped fluorine)もしくはアンチモン酸化物の層、または、特にITOについて15から20nm、ZnO:Alについて60から80nm、銀について3から15nm、ZnO:Alについて60から80nm、ITOについて15から20nmのそれぞれの厚みの、ITO/ZnO:Al/Ag/ZnO:Al/ITO型の層の積み重ねからなる多層からなり得る下部導電性電極層2、
− 構造が特に以下に記述されるものである、エレクトロクロミック系3、
− 好ましくはITOに基づく、例えば110nm厚の、もしくはSnO:Fの上部導電層4、または、変形としての、他の導電性元素からなる上部導電層4。上部伝道層4は、とりわけ、導電層を、導電度および/または導電性ストリップもしくはワイヤの数でこれを上回る層と関連付けることからなり得る。このような多成分導電層の実装のためには、さらに詳しくは、出願WO−00/57243を参照されたい。このタイプの導電層の好ましい製造方法は、ITO層(1以上の導電層で覆われていてもいなくてもよい。)にポリマーシート7の表面上に横たえられた導電性ワイヤ6の網を適用することに存し、このシート7は、この組立体を第2基板S2上で組み立て、エレクトロクロミック積層を電流リード(図示せず)のうちの1つに連結することを可能にする中間シートとして役立つ。
− 線熱膨張係数が、これも35から60.10−7/℃であり得る、第2ガラス基板S2。
【0038】
エレクトロクロミック積層3は、好ましくは、以下であるべきである。
− 対電極、他の金属と合金化されていてもいなくてもよい、40から100nmの厚みを有するイリジウム酸化物(水和物)または40から400nm厚の、水和もしくは非水和の、ニッケル酸化物の陽極エレクトロクロミック物質EC1の層として役立ち、
− 層は、典型的には100nm厚のタングステン酸化物の層と、これに続く、典型的には250nm厚の、水和タンタル酸化物、水和ケイ素酸化物、水和ジルコニウム酸化物、水和アンチモン酸化物またはこれらのあらゆる混合物のいずれかであり得る酸化物層からなる、電解質ELとして機能し、
− 層は、例えば500nm厚の、タングステンWOまたは混合バナジウムおよびタングステン酸化物に基づく陰極エレクトロクロミック物質EC2である。
【0039】
別の好ましいエレクトロクロミック積層は、第1基板からの順序で開始して、以下からなる。
− 例えば300nm厚の、タングステン酸化物WOに基づく陰極エレクトロクロミック物質の層、
− 典型的には180nm厚のタングステン酸化物の層、次いで典型的には50nm厚のケイ素酸化物の層からなる、電解質ELとして役立つ層、
− 例えば250nm厚の、混合ニッケルおよびタングステン酸化物の対電極。この積層を、典型的にはITOおよび/またはスズドープ酸化物に基づく、2つの透明電極の間に挿入する。このタイプの積層において、挿入または除去可能であるカチオンは、好ましくは、リチウムであるべきである。
【0040】
これらの層、好ましくは、磁場援用陰極粉砕(magnetic field−assisted cathodic pulverization)によって被着させるべきである。変形として、熱蒸発もしくは電子流によって支援される蒸発により、レーザーアブレーションにより、プラズマもしくはマイクロ波によって支援される可能性のある化学蒸着(CVD)により、または大気圧技術により、特に、ゾル−ゲル合成による層の被着により、特に、焼戻し、スプレーコーティングもしくは層誘導(laminar induction)によりこれを得ることができる。
【0041】
フランス出願FR−2781084に記述されるように、周辺における電気漏洩が減少するように、機械的手段、またはパルス化され得るレーザー照射によって生成されるチャンネルにより、活動積層3の全体にわたって、または周囲の一部に、切り込みを入れることができる。
【0042】
さらにこの装置には、好ましくは、表面2および3(2および3は基板S1およびS2の内面の慣習的なナンバリングである。)に接触する第1周辺継目が組み込まれ、この第1周辺継目は外部の化学的攻撃に対する障壁を創出するのに適合する。
【0043】
第2周辺継目(図示せず)は、輸送の手段を取り付ける手段、内部および外部の間の防水、審美的機能、ならびに補強を取り込む手段が創出されるように、S1、S2の端部ならびに表面1および4(1および4は基板S1およびS2の外面に一致するナンバリングである。)と接触する。
【0044】
この装置またはエレクトロクロミックガラスパネルには、建築物または自動車、列車もしくは航空機型の乗物の外部に取り付けられる窓(例えば、丸窓)を通過する日光の量の制御に用途がある。この目的は、過剰の日光が存在する場合においてのみではあるが、コックピット/自動車および他の室内の過熱の低減が可能になることである。
【0045】
窓ガラスを通しての可視性の程度を制御するために、特に窓ガラスを曇らせるために、または望ましいときに窓ガラスを通してあらゆるものが見えることを妨げるために用いることもできる。望ましいときには、あらゆる可視性を妨げるのに用いることができる。これには、建築物、列車、航空機内の内部仕切りとして据えられ、または自動車側窓として取り付けられるガラスが含まれ得る。また、運転手が見えない状態になるのを防止するのにバックミラーとして用いられる鏡、または、注意を最もよく引きつけるため、必要なときに、もしくは断続的に、メッセージが現れるようにメッセージを表示するパネルも含まれ得る。
【0046】
従って、本発明の主題は、本発明に基づく装置を含む、建築物もしくは運搬用車両のグレージング、仕切り、バックミラーまたはメッセージパネルでもある。
【0047】
以下の例は本発明を説明するが、これは本発明を限定しない。
【0048】
以下の表1および2は、本発明に基づくエレクトロクロミック装置に組み込まれる基板に用いることができる、ガラスの組成の幾つかの例を示す。
【0049】
これらの表の各々は、(%で表される)酸化物質量含有率、および「CTE」と記載され、10−7/℃で表される熱膨張係数を示す。線熱膨張係数は、典型的には、標準NF−B30−103に基づいて測定する。
【0050】
【表1】

【0051】
【表2】

【0052】
これらの組成を提示するガラス基板を、フローティングによって得た後、エレクトロクロミック積層が被着される第1基板として、図1におけるエレクトロクロミック装置に組み込む。
【0053】
得られたガラスは、強化または硬化ソーダ石灰シリカで製造されたエレクトロクロミックガラスと同様に、またはこれよりも熱機械的に良好に挙動する。他方、制限が存在しないことは、このガラスを切断してはめ込むことができることを意味する。従って、大きい基板上にエレクトロクロミック積層の層を置き、次にこれを切断してコーティングされた基板を所望のサイズに適合させることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
線熱膨張係数が、35から60.10−7/℃である非強化ガラスの第1基板(S1)からなるエレクトロクロミック装置であって、該基板(S1)が、少なくとも1つの透明導電層(2、4)、エレクトロクロミック物質の層(EC2)、イオン性電解質導体の層(EL)および対電極(EC1)からなる積層でコーティングされる装置。
【請求項2】
ガラス基板(S1)が、50.10−7/℃以下、または45.10−7/℃以下の線熱膨張係数を有する、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
ガラス基板(S1)が、以下からなる化学組成を備え、以下に定義される質量限界内である、請求項1から2のいずれかに記載の装置:
SiO 50から82%
0から20%
Al 0から22%
MgO 0から10%
CaO 0から15%
SrO 0から5%
BaO 0から15%
CaO+MgO+BaO+SrO 0から15%
NaO 0から6%
O 0から8%
NaO+KO 0から8%。
【請求項4】
ガラス基板(S1)が、以下の成分を含む化学組成を有する、以下に定義される質量限界を伴う、請求項1から3のいずれかに記載の装置:
SiO 50から60%
10から15%
Al 10から15%
MgO 2から5%
CaO 2から5%
SrO 0から1%
BaO 0から1%
CaO+MgO+BaO+SrO 5から15%
NaO 0から5%
O 0から5%
NaO+KO 1から6%。
【請求項5】
ガラス基板が、第1基板(S1)から出発する順序で、または逆の順序で、以下からなる、請求項1から4のいずれかに記載の装置:
透明導電層(2)、
対電極(EC1)、
イオン性導電性電解質層(EL)、
エレクトロクロミック物質の層(EC2)、
第2透明導電層(4)。
【請求項6】
エレクトロクロミック物質(EC2)が、タングステンまたはイリジウム酸化物に基づく、請求項1から5のいずれかに記載の装置。
【請求項7】
対電極(EL)が、以下の酸化物:タングステン、ニッケル、イリジウム、クロム、鉄、コバルトもしくはロジウムのいずれかに基づくか、またはこれらの酸化物のうちの少なくとも2つの混合酸化物、特に、混合ニッケルおよびタングステン酸化物に基づく、請求項1から6のいずれかに記載の装置。
【請求項8】
電解質(EL)が、電気的に絶縁されるイオン導電体を形成する無機層からなる、請求項1から7のいずれかに記載の装置。
【請求項9】
第2基板(S2)を含み、これら2つの基板(S1、S2)が積層するか、または複層ガラスとして組み立てられる、請求項1から8の一項に記載の装置。
【請求項10】
請求項1から9の一項に基づく装置を組み込む、建築物もしくは乗物仕切り用のグレージング、バックミラーまたはインジケーターボード。

【図1】
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【公表番号】特表2012−533776(P2012−533776A)
【公表日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−521087(P2012−521087)
【出願日】平成22年7月21日(2010.7.21)
【国際出願番号】PCT/FR2010/051543
【国際公開番号】WO2011/010067
【国際公開日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【出願人】(504416080)セイジ・エレクトロクロミクス,インコーポレイテッド (9)
【Fターム(参考)】