説明

エレクトロルミネセンス装置およびエレクトロルミネセンス装置の製造方法

【課題】観察者に認識される光を容易に調整できるようにすることである。
【解決手段】第1のスペクトル分布の光を発光する機能領域と、この機能領域の光路に配置され第1のスペクトル分布の光の所定のスペクトル部分領域を吸収するフィルタ層とを有し、これにより第2のスペクトル分布の光が発光される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はエレクトロルミネセンス装置およびエレクトロルミネセンス装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
この出願は、装置から発光され観察者に認識される光を容易に調整できるエレクトロルミネセンス装置に関する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の課題は、観察者に認識される光を容易に調整できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の装置は請求項1記載の構成により得られる。本発明の装置およびその製造方法の実施形態は従属請求項の対象となっている。
【0005】
本発明によれば、第1のスペクトル分布の光を発光する機能領域と、この機能領域の光路に配置され第1のスペクトル分布の光の所定のスペクトル部分領域を吸収するフィルタ層とを有し、これにより第2のスペクトル分布の光が発光されることを特徴とするエレクトロルミネセンス装置が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
この光は装置の外部にいる観察者から見ると装置のフィルタ層の領域から放出された固有の光として認識される。
【0007】
フィルタ層は第1のスペクトル分布の光の所定の成分を吸収または反射する透過率特性を有している。このため、得られた第2のスペクトル分布の光は相応に低減されたスペクトル分布を有する(図6のA〜Cを参照)。フィルタ層は例えばシート状をなしており、例えば積層プロセスによって特に簡単に機能領域の光路に配置することができる。フィルタ層は例えば印刷プロセスによって装置の種々の領域上に形成することができる。
【0008】
有利には、機能領域は第1の電極層、この第1の電極層上に配置された少なくとも1つの有機機能層、および、この少なくとも1つの有機機能層上に配置された第2の電極層を有する。有機機能層は後述する有機エレクトロルミネセンス材料から成っていてよい。第1の電極層および第2の電極層に電圧が印加されると、電子または正孔が少なくとも1つの有機機能層内に誘起され、電子および正孔の再結合により光が発生する。このことをエレクトロルミネセンスと称する。
【0009】
有利には機能領域は色光を発光する。これは例えば、唯一の光を発光する材料のみから成る機能層を機能領域内に形成することにより実現される。当該の発光材料は、例えば、ポリ(p‐フェニレン‐ビニレン)PPVなどのポリマーベースの有機機能層、または、トリ(8‐ヒドロキシキノリナト)‐アルミニウムAlqなどのいわゆる小分子(small molecules)ベースの有機機能層である。有機ポリマー化合物は例えばウェットケミカルプロセス、例えばインクジェット印刷プロセス、スピンコーティングプロセスまたはスクリーン印刷プロセスにより任意の基板へ被着することができる。それ以外にもいわゆる"小分子"は気相蒸着プロセスによっても任意の基板に被着することができる。こうした装置またはデバイスは有機発光ダイオードOLEDとも称される。
【0010】
また有利には、第1の電極層は相互に平行に延在する複数の第1の電極条片としてパターニングされており、第2の電極層は相互に平行に延在する複数の第2の電極条片としてパターニングされており、第1の電極条片と第2の電極条片とは相互に横断するように延在する。
【0011】
こうした第1の電極条片および第2の電極条片を設ければ特に簡単にパッシブマトリクス装置を実現することができる。この場合、第1の電極条片と第2の電極条片との交点に活性の発光領域、例えばピクセルを形成し、第1の電極条片および第2の電極条片に選択的に電圧を印加することによりこれを駆動することができる。この種のパッシブマトリクス装置はグラフィクス素子またはグラフィクス情報の表示に用いられるエレクトロルミネセンスディスプレイ、例えば有機エレクトロルミネセンスディスプレイの実現に特に有利である。ただし別の実施形態として、本発明のエレクトロルミネセンス装置を用いて同様にピクセルを含むアクティブマトリクス装置を実現することもできる。
【0012】
パッシブマトリクス装置であってもアクティブマトリクス装置であっても、ピクセル、例えば前述の垂直に交差する電極条片の交点は有利には個別に駆動可能である。さらに有利には、ピクセルは活性のエレクトロルミネセンス領域を含むか、または関連する唯一のエレクトロルミネセンス層の一部であってもよい。
【0013】
特に有利には、機能領域は白色光を発光する。このために、例えば種々のエレクトロルミネセンス材料の混合物が使用される。ここでは各材料から発光された種々の色を色混合して白色光を得てもよいし、また白色光を発光できる唯一の材料を用いてもよい。例えば市販で入手可能な材料として、MOM社(Merck-OLED Materials GmbH)のC-EXP-W001を使用することができる。有機エレクトロルミネセンス装置の内部に白色光を発光する機能領域、または白色光を発光する有機機能層を設けると、相応のフィルタ層、特に種々のスペクトル部分領域を吸収する各部分領域から成るフィルタ層の構成により、特に簡単に種々の色を発光可能な多色のエレクトロルミネセンス装置が実現されるという利点が得られる。こうした装置は唯一の光を発光する有機層の領域を基板の表面全体に形成することにより特に簡単に製造できる。このとき、フィルタ層を変化させることにより、つまり例えば光の種々のスペクトル部分領域を吸収する部分構造体へ分割することにより、任意の色を発光する装置が特に簡単に実現される。つまりフィルタ層の構成に応じてどんな色も形成することができるようになるのである。したがって本発明のエレクトロルミネセンス装置では、同じエレクトロルミネセンス材料を用いながらフィルタ層を変化させるのみで観察者に種々の光の波長を認識させることができる。
【0014】
本発明の別の実施形態では、フィルタ層は光吸収性または光反射性の種々のフィルタ材料を有する複数の部分領域を含む。このとき有利には、フィルタ層の各部分領域には、唯一のピクセルのみが対応してもよいし、少なくとも2つまたはそれ以上のピクセルが対応してもよい。
【0015】
有利には、フィルタ層は有機色素を含む。有機色素は容易に処理可能であり、例えば既に液晶ディスプレイLCDの分野で使用されている。
【0016】
本発明の別の有利な実施形態では、フィルタ層は、接着層、この接着層上のプラスティック層およびこのプラスティック層上のカラーフィルタ層を含むシート状層列を有する。
【0017】
こうしたシート状層列は、例えば接着層を介してエレクトロルミネセンス装置に簡単に固定接合することができる。プラスティック層はここでは接着層とカラーフィルタ層とのあいだの支持体層として用いられ、有利には透過率の高いプラスティック、例えばポリエステル、ポリカーボネイトまたはポリエチレンを含む。接着層には種々の透過率を有する材料、例えばエポキシまたはその他の材料が用いられる。
【0018】
本発明の別の実施形態では、シート状層列は、プラスティック層上にカラーフィルタ層が配置され、このカラーフィルタ層上に接着層が設けられるように構成される。この実施形態においても、シート状層列を、例えば接着層を介してエレクトロルミネセンス装置に簡単に固定接合することができる。
【0019】
ここではプラスティック層は複屈折性である。
【0020】
本発明の別の実施形態では、カプセル化部が機能領域の上方に設けられており、この機能領域は基板上に配置されている。ここではフィルタ層は基板のうち機能領域から遠い面(機能領域とは反対側の面)および/またはカプセル化部の面に配置することができる。
【0021】
この実施形態では、フィルタ層は特に簡単に基板の外表面またはカプセル化部の外表面に配置することができる。この場合、フィルタ層を変化させるだけで、同一の機能領域を扱いながら、エレクトロルミネセンス装置から発光され観察者に認識される光を変化させることができる。フィルタ層において種々の吸収性を有する各部分領域を種々のジオメトリで例えば図5に示されているように構成することにより、フィルタ層を変化させるのみで多様なエレクトロルミネセンス装置が実現される。白色光を発光する機能領域が設けられる場合、種々の吸収性を有する各部分領域を備えたフィルタ層を設けることにより、フィルタ層に依存してエレクトロルミネセンス装置の種々のジオメトリひいては種々の放射特性が特に簡単に実現される。
【0022】
さらに有利には、フィルタ層はインクジェット印刷プロセスによって被着された光吸収性のインクを含む。インクジェット印刷プロセスは特に簡単な印刷プロセスである。これによりパターニングされたフィルタ層を例えば基板またはカプセル化部に特に簡単に被着することができる。
【0023】
さらに本発明の別の実施形態では、光路に付加的に円偏光器が配置される。円偏光器は有利には層状に成形され、例えばシートとして設けられる。
【0024】
この種の円偏光器は特に良好に外部から装置へ入射してくる光の後方反射を阻止し、明環境における装置のコントラストを高める。
【0025】
電極層が光反射性であり、例えば鏡面反射するように構成されている場合、当該の円偏光器は特に有利である。この場合例えば、エレクトロルミネセンス装置を、オフの状態でミラーとして用い、オンの状態で照明またはグラフィクス素子またはグラフィクス情報の表示に用いることができる。
【0026】
この実施形態では、本発明のエレクトロルミネセンス装置はフィルタ層および円偏光器を有するが、円偏光器とフィルタ層との相対位置は種々に構成可能であるので、特に有利である。ここで有利にはフィルタ層が前述のシート状層列を含み、このシート状層列内に設けられたプラスティック層が高い複屈折性を有する材料、例えばポリカーボネイトまたはポリエステルを含む。また有利には、フィルタ層のシート状層列は光路で見て円偏光器の後方に配置される。このことは円偏光器が光路で見てフィルタ層のシート状層列よりも機能領域の近傍に配置されるということを意味する。また有利には、フィルタ層は円偏光器上に配置され、この円偏光器はエレクトロルミネセンス装置の基板および/またはカプセル化部の上に配置される。これにより特に簡単に高いコントラストおよび暗い背景が保証される。
【0027】
また、フィルタ層のシート状層列のプラスティック層が円偏光器の機能を阻害しないよう、複屈折性を有さない材料またはきわめて小さな複屈折性しか有さない材料を含むように構成することもできる。この場合、フィルタ層は光路で見て円偏光器の前方に配置される。これにより例えば、円偏光器がフィルタ層上に配置され、フィルタ層が円偏光器よりも発光する機能領域の近傍に位置することになる。この種の装置はフィルタ層の光散乱領域または個々のカラーフィルタ領域を円偏光器の下方に隠し、フィルタ層の種々の色を装置のオフの状態で不可視にすること、または制限された範囲でしか見えないようにすることに特に適している。
【0028】
また、フィルタ層が前述のシート状層列を含まず、例えばインクジェット印刷またはタンポン印刷などの印刷プロセスによって形成されるようにすることもできる。この場合、例えば前述の印刷プロセスにより、フィルタ層がカプセル化部の上および/または機能領域上に配置された基板の上に特に簡単に形成される。この場合、適用分野に応じて、フィルタ層は光路で見て円偏光器の前方または後方のいずれにも配置することができる。
【0029】
円偏光器がフィルタ層上に配置される場合、円偏光器とフィルタ層とのあいだに、例えば図4に示されているようなプレーナ層を設けると特に有利である。
【0030】
この種のプレーナ層はフィルタ層の不均一性、例えば例えば種々のフィルタ材料による個々の部分領域の不均一性を特に簡単に補償することができる。これによりプレーナ層上では例えば接着または積層により円偏光器を良好に配置することができる。プレーナ層の材料として例えばエポキシまたはその他の透明材料が用いられる。
【0031】
本発明の別の実施形態では、フィルタ層の少なくとも一部の部分領域はグラフィクス素子となるようにパターニングされている。グラフィクス素子はエレクトロルミネセンス装置の駆動中に表示される。グラフィクスに関する構成を変化させることにより、同じ機能領域を用いても、フィルタ層の変化のみで種々のグラフィクス素子を表示できるエレクトロルミネセンス装置を実現することができる。
【0032】
さらに本発明はエレクトロルミネセンス装置の製造方法にも関している。ここで、本発明の方法は、機能領域を調製するステップA)と、機能領域の光路にフィルタ層を形成するステップB)とを有する。
【0033】
特に有利には、機能領域はステップA)で基板上に形成され、次いでカプセル化部がこの機能領域の上方の基板上に被着される。このとき、ステップB)で、フィルタ層は基板のうち機能領域から遠い面および/またはカプセル化部の面に形成される。
【0034】
さらに本発明の方法の別の実施形態では、ステップC)として、円偏光器を基板のうち機能領域から遠い面および/またはカプセル化部の面に形成してもよい。前述したように、必要に応じて、円偏光器は光路で見てフィルタ層の前方または後方のいずれにも配置することができる。
【0035】
ここでフィルタ層は前述したシート状層列の形態で基板上またはカプセル化部上に例えば積層または接着により形成することができる。またフィルタ層は例えば印刷プロセスによって基板上および/またはカプセル化部上に形成することもできる。
【0036】
本発明の実施形態に挙げたエレクトロルミネセンス装置は例えば照明のために用いられる。また本発明の装置は、グラフィクス素子および/または数字または文字などのグラフィクス情報を表示するディスプレイとして用いることもできる。
【0037】
例えば前述の相互に垂直に交差する第1の電極条片および第2の電極条片を備えたパッシブマトリクス装置またはアクティブマトリクス装置も照明装置として用いることができる。このとき第1の電極条片および第2の電極条片の交点は活性の照明点として用いられる。この照明点はそれぞれ他の照明点と別個に、または他の全ての照明点とともに空間照明に用いられる。
【実施例】
【0038】
以下に本発明を図示の実施例に基づいて詳細に説明する。図は概略的なものであって縮尺通りに示されていないことに注意されたい。
【0039】
図1には有機エレクトロルミネセンス装置1が示されている。ここでは機能領域5が複数の第1の電極条片5Aとこれに垂直に延在する複数の第2の電極条片5Cを有し、その間に少なくとも1つの有機機能層5Bが配置されている。この有機機能層はこの実施例では3つの層から成る。当該の3つの層は例えば正孔輸送層、電子輸送層、および、その間に配置された発光層である。またこれは例えばPEDOT(ポリエチレンジオキシチオフェン)‐PPV‐2層層列などの任意の他の層列であってもよい。機能領域5は基板20上に配置されており、この基板はカプセル化部25により周囲影響、例えば酸化浸透物質および水に対して保護されている。第1の電極条片5Aは光反射性または鏡面性を有するように構成されており、これによりエレクトロルミネセンス装置1の主たる光路6はカプセル化部25を通して延在する。カプセル化部25の外表面にはフィルタ層10および円偏光器15が配置されている。この場合、フィルタ層10はエレクトロルミネセンス装置1の光路6で見て円偏光器15の前方に配置されている。つまり円偏光器15がフィルタ層10の上に配置されている。しかし本発明のエレクトロルミネセンス装置では、形成した光が透明基板20を通して出力され、相応に円偏光器およびフィルタ層が基板の外表面に配置されるように構成することもできる。
【0040】
図2には図1と類似した有機エレクトロルミネセンス装置1が示されている。図1と異なるのは、フィルタ層10および円偏光器15の配置順序が交換されて、ここではフィルタ層10がエレクトロルミネセンス装置1の光路6で見て円偏光器15の後方に配置されているという点である。
【0041】
図3にはフィルタ層10のシート状層列11の詳細が示されている。ここでは接着層11Aが設けられており、その上にプラスティック層11Bが配置されている。プラスティック層11B上にはカラーフィルタ層11Cが存在している。カラーフィルタ層の材料は一様な化学的組成を有してもよいし、また図示のように種々の波長の光を吸収する種々の部分領域を有してもよい。前述したように、接着層11Aは、シート状層列11を本発明のエレクトロルミネセンス装置に固定するために用いられる。
【0042】
図4にはフィルタ層10、その上に配置されたプレーナ層12、およびさらにその上に配置された円偏光器15の層列が示されている。これは層列全体の断面図である。プレーナ層12は、例えば図1に示されているように円偏光器15がフィルタ層10上に配置される場合、カラーフィルタ層11Cにおける図示の部分領域10A〜10Cの不均一性を平坦化する。フィルタ層10は付加的に接着層11Aおよびプラスティック層11Bを含む。
【0043】
図5には少なくとも5つの異なる部分領域10A〜10Eの設けられたフィルタ層10の実施例が示されている。各部分領域はそれぞれ異なる光吸収性を有するフィルタ材料から成り、これにより種々の波長の光が放出される。ここでは、フィルタ層10は基板20またはカプセル化部25の上に存在する円偏光器15上に配置される。
【0044】
図6のAには本発明のエレクトロルミネセンス装置1の機能領域5から発光された第1のスペクトル分布7の光の波長に対する輝度のグラフが示されている。この場合、スペクトル分布に基づいて観察者にとって黄色に見える光が放出される。
【0045】
図6のBにはフィルタ層10またはその部分領域10A〜10Cの透過率8の特性が波長に依存して示されている。この場合、フィルタは約400nm〜580nmの波長領域できわめて小さな透過率を有し、この波長領域のほとんどの光を吸収または反射する。約600nm〜約800nmの波長領域ではきわめて高い透過率が得られ、この領域では光の大部分がフィルタ層を通過する。
【0046】
図6のCには、機能領域5から発光された光がフィルタ層10を通るときの特性について、図6のA,Bを組み合わせたグラフが示されている。フィルタ層の透過率特性8に基づいて、機能領域から発光された第1のスペクトル分布7の光はフィルタ層の吸収性または反射性の部分領域でのハッチング部分7Aの吸収または反射によって第2のスペクトル分布7Bの光となる。この実施例では、例えば、発光された黄色光が赤‐オレンジ色のフィルタにかけられ、深いオレンジ色の光がエレクトロルミネセンス装置から出力され、観察者に認識される。また、機能領域から発光された光を、種々の吸収率を有するフィルタ層により任意に組み合わせ、任意の色の光が得られるように構成してもよい。エレクトロルミネセンス装置から発光され観察者に認識される光の所望のスペクトルを得るために、機能領域から発光された光のスペクトルとフィルタ層の透過率とが乗算される。
【0047】
図7にはエレクトロルミネセンス装置1のフィルタ層としてのカラー層の形成に適したタンポン印刷機100が示されている。タンポン40および線画凸版60が示されている。印刷プロセスに基づいて、フィルタ層として被着されたインク吸収層の厚さおよび吸収性の色素の濃度を変化させることにより、本発明のエレクトロルミネセンス装置から発光され最終的に観察者に認識される光を特に有利に微調整することができる。タンポン印刷機によれば、光学位置決め装置および光学配向装置の共同作用により、きわめて正確なフィルタ層の形成が保証される。ここでタンポン印刷機はフィルタ層のデザインまたはパターンをエッチングするための1つまたは複数の線画凸版を有する。さらに光吸収性のインクをエレクトロルミネセンス装置の基板またはカプセル化部へ転写するための1つまたは複数のタンポンが設けられている。標準プロセスではエレクトロルミネセンス装置への一様なインクの塗布を保証するのに64線/cmの線画凸版があれば充分である。印刷すべき領域の小さい特別設計のプロセスでは複数の線を備えた線描凸版が使用される。
【0048】
インク層の厚さは最終的な色飽和度(彩度)および光透過率に影響する。
【0049】
インク層の厚さが小さいと、最終的に観察者に認識される光の色飽和度が小さくなり、光透過率は高くなる。一方インク層の厚さが大きいと、観察者には光の色飽和の印象が残り、光透過率は低くなる。
【0050】
インク層の厚さはまず線画凸版のエッチング深度およびタンポンのタイプによって制御される。エッチング深度20μmは線画凸版で一様にカバーされ、透過率と観察者に認識される色飽和度とのあいだの良好な妥協点が見出される。所望の適用分野に応じて、異なる2つのインク材料を使用することもできる。標準的な温度領域で適用され、機械的ストレスが小さい場合には、UV硬化性のインクが使用される。使用温度の範囲が広く機械的ストレスが大きい場合、2成分インクを使用することができる。2成分インクは基板および/またはカプセル化部のガラスに対して高い接着性を有するからである。
【0051】
本発明はここに図示した実施例に限定されない。フィルタ層の種々のジオメトリおよび種々の形状に基づく他の実施例も可能である。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明のエレクトロルミネセンス装置の第1の実施例を示す図である。
【図2】本発明のエレクトロルミネセンス装置の第2の実施例を示す図である。
【図3】フィルタ層の例であるシート状層列を示す図である。
【図4】フィルタ層およびプレーナ層の上に円偏光器の設けられた装置を示す図である。
【図5】種々のスペクトルを吸収する部分領域を備えたフィルタ層の別の構成例を示す図である。
【図6】フィルタ層の動作原理を示すグラフである。
【図7】エレクトロルミネセンス装置のフィルタ層を形成するためのタンポン印刷機を示す図である。
【符号の説明】
【0053】
1 エレクトロルミネセンス装置、 5 機能領域、 5A,5C 電極条片、 5B 有機機能層、 6 光路、 10 フィルタ層、 10A〜10C 部分領域、 11 シート状層列、 11A 接着層、 11B プラスティック層、 11C カラーフィルタ層、 15 円偏光器、 20 基板、 25 カプセル化部、 100 タンポン印刷機、 40 タンポン、 60 線画凸版

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のスペクトル分布(7)の光を発光する機能領域(5)と、該機能領域の光路(6)に配置され第1のスペクトル分布の光の所定のスペクトル部分領域を吸収するフィルタ層(10)とを有し、これにより第2のスペクトル分布の光が発光される
ことを特徴とするエレクトロルミネセンス装置(1)。
【請求項2】
機能領域(5)は白色光を発光する、請求項1記載の装置。
【請求項3】
有機エレクトロルミネセンス装置として構成されており、機能領域(5)は第1の電極層(5A)、該第1の電極層上に配置された少なくとも1つの有機機能層(5B)、および、該有機機能層上に配置された第2の電極層(5C)を有する、請求項1または2記載の装置。
【請求項4】
第1の電極層(5A)は相互に平行に延在する複数の第1の電極条片を有し、第2の電極層(5C)は相互に平行に延在する複数の第2の電極条片を有し、該第1の電極条片と該第2の電極条片とは相互に横断するように延在する、請求項1から3までのいずれか1項記載の装置。
【請求項5】
フィルタ層(10)は第1のスペクトル分布の光の種々のスペクトル領域を吸収する種々の部分領域(10A〜10E)を有する、請求項1から4までのいずれか1項記載の装置。
【請求項6】
フィルタ層(10)は有機色素を含む、請求項1から5までのいずれか1項記載の装置。
【請求項7】
フィルタ層(10)は接着層(11A)、該接着層上のプラスティック層(11B)および該プラスティック層上のカラーフィルタ層(11C)を含むシート状層列(11)を有する、請求項1から6までのいずれか1項記載の装置。
【請求項8】
プラスティック層(11B)はポリエステル、ポリカーボネイトおよびポリエチレンから選択されるポリマーを含む、請求項1から7までのいずれか1項記載の装置。
【請求項9】
プラスティック層(11B)は複屈折性である、請求項7または8記載の装置。
【請求項10】
カプセル化部(25)が機能領域(5)の上方に設けられており、該機能領域は基板(20)上に配置されており、フィルタ層(10)は基板のうち機能領域から遠い面および/またはカプセル化部の面に配置されている、請求項1から9までのいずれか1項記載の装置。
【請求項11】
フィルタ層(10)はインクジェット印刷プロセスによって被着される光吸収性のインクを含む、請求項1から6,10のいずれか1項記載の装置。
【請求項12】
光路(6)に付加的に円偏光器(15)が配置されている、請求項1から11までのいずれか1項記載の装置。
【請求項13】
円偏光器(15)はフィルタ層(10)上に配置されており、ここで円偏光器(15)とフィルタ層(10)とのあいだにプレーナ層(12)が設けられている、請求項1から12までのいずれか1項記載の装置。
【請求項14】
フィルタ層(10)は複屈折性のプラスティック層(11B)を含み、かつ光路(6)で見て円偏光器(15)の後方に配置されている、請求項12記載の装置。
【請求項15】
電極層(5A,5C)の一方は光反射性である、請求項12から14までのいずれか1項記載の装置。
【請求項16】
フィルタ層(10)の少なくとも一部の部分領域はグラフィクス素子となるようにパターニングされている、請求項1から15までのいずれか1項記載の装置。
【請求項17】
フィルタ層の各部分領域では機能領域が複数のピクセルを含み、ここでフィルタ層の各部分領域には少なくとも2つのピクセルが対応している、請求項1から16までのいずれか1項記載の装置。
【請求項18】
請求項1から17までのいずれか1項記載のエレクトロルミネセンス装置(1)の製造方法において、
機能領域(5)を調製するステップA)と、
機能領域(5)の光路(6)にフィルタ層(10)を形成するステップB)と
を有する
ことを特徴とするエレクトロルミネセンス装置の製造方法。
【請求項19】
ステップB)でフィルタ層(10)を印刷プロセスにより形成する、請求項18記載の方法。
【請求項20】
ステップB)で請求項7から9までのいずれか1項記載のシート状層列(11)を被着することによりフィルタ層(10)を形成する、請求項18記載の方法。
【請求項21】
ステップB)でシート状層列(11)を積層プロセスにより被着する、請求項18から20までのいずれか1項記載の方法。
【請求項22】
さらに、円偏光器(15)を光路(6)に形成するステップC)を有する、請求項18から21までのいずれか1項記載の方法。
【請求項23】
プレーナ層(12)をフィルタ層(10)上に形成し、次いで該プレーナ層(12)上に円偏光器(15)を形成する、請求項18から22までのいずれか1項記載の方法。
【請求項24】
円偏光器(15)をまず形成し、次いで該円偏光器上にフィルタ層を形成する、請求項22記載の方法。
【請求項25】
ステップA)で機能領域(5)を基板(20)上に形成し、該機能領域の上方の基板(20)上にカプセル化部(25)を被着し、ステップB)でフィルタ層を基板のうち機能領域から遠い面および/またはカプセル化部の面に形成する、請求項19から24までのいずれか1項記載の方法。
【請求項26】
ステップC)で円偏光器(15)を基板のうち機能領域から遠い面および/またはカプセル化部の面に形成する、請求項19から25までのいずれか1項記載の方法。
【請求項27】
請求項1から17までのいずれか1項記載のエレクトロルミネセンス装置を照明に用いることを特徴とするエレクトロルミネセンス装置の使用。
【請求項28】
請求項1から17までのいずれか1項記載のエレクトロルミネセンス装置をグラフィクス素子および/またはグラフィクス情報の表示に用いることを特徴とするエレクトロルミネセンス装置の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−234599(P2007−234599A)
【公開日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−49406(P2007−49406)
【出願日】平成19年2月28日(2007.2.28)
【出願人】(599133716)オスラム オプト セミコンダクターズ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (586)
【氏名又は名称原語表記】Osram Opto Semiconductors GmbH
【住所又は居所原語表記】Wernerwerkstrasse 2, D−93049 Regensburg, Germany
【Fターム(参考)】