説明

エレクトロルミネセントデバイス、および色変換要素を備えるエレクトロルミネセントデバイスの製造方法

【課題】1つ以上の色変換要素を備えるエレクトロルミネセントデバイス、およびエレクトロルミネセントデバイスの製造方法が開示される。
【解決手段】1つの実施形態において、前記方法は、狭帯域で発光することができるエレクトロルミネセント素子を基板上に形成する工程を含む。前記方法は、複数の色変換要素を前記エレクトロルミネセント素子に選択的に熱転写する工程をさらに含む。別の実施形態において、前記方法は、紫外線を放射することができるエレクトロルミネセント素子を基板上に形成する工程を含む。前記方法は、複数の色変換要素を前記エレクトロルミネセント素子に選択的に熱転写する工程をさらに含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
概して、本開示は、エレクトロルミネセントデバイスに関する。特に、本開示は、エレクトロルミネセントデバイス、エレクトロルミネセント素子と少なくとも1つの色変換要素とを備えるエレクトロルミネセントデバイスの形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
有機または無機エレクトロルミネセントデバイスなどの発光デバイスは、様々なディスプレイ、照明、および他の適用において有用である。概して、これらの発光デバイスは、2つの電極(アノードおよびカソード)の間に配置された、少なくとも1つの発光層などの1つ以上のデバイス層を備える。電圧降下または電流が2つの電極間に提供され、それによって、発光層中の有機または無機系であってもよい発光材料を発光させる。典型的に、光が電極を透過して、視認者または他の受光体に達することができるように、電極の一方または両方が透明である。
【0003】
エレクトロルミネセントデバイスを、上面発光デバイスまたは下面発光デバイスのどちらかであるように構成してもよい。上面発光エレクトロルミネセントデバイスにおいて、発光層は、基板と視認者との間に位置決めされる。下面発光エレクトロルミネセントデバイスにおいて、透明なまたは半透明基板は、発光層と視認者との間に位置決めされる。
【0004】
代表的なカラーエレクトロルミネセントディスプレイにおいて、1つ以上のエレクトロルミネセントデバイスを単一基板上に形成し、グループまたはアレイに配列することができる。カラーエレクトロルミネセントディスプレイを製造するためのいくつかの方法が存在する。例えば、1つの方法は、互いに隣に配置された赤色、緑色、および青色エレクトロルミネセントデバイスサブピクセルを有するアレイを利用する。別の方法は、例えば、色変換を用いてカラーエレクトロルミネセントディスプレイを製造する。色変換を利用するディスプレイは、狭帯域で、例えば、青色光を発光するエレクトロルミネセントデバイスを備えることができる。各々の色変換エレクトロルミネセントデバイスはまた、放射された光(例えば、青色光)が、例えば、赤色色変換要素によって赤色光に、および緑色色変換要素によって緑色光に変換されるように、前記エレクトロルミネセントデバイスと光学結合状態の1つ以上の色変換要素を備える。
【発明の概要】
【0005】
本開示は、エレクトロルミネセント素子と光学結合状態の色変換要素を備えるエレクトロルミネセントデバイスの製造方法を提供する。特に、本開示は、エレクトロルミネセントデバイスに使用するための色変換要素の選択的な熱転写(例えば、レーザー誘起熱画像化(LITI))を包含する技術を提供する。
【0006】
フルカラーデバイスのための赤色、緑色、および青色放射一次有機発光ダイオード(OLED)材料のパターン化は難しいことがわかっている。レーザー熱パターン化、インクジェットパターン化、シャドウマスクパターン化、およびフォトリソグラフィパターン化などのパターン化のための多くの技術が記載されている。
【0007】
放射材料をパターン化せずにフルカラーディスプレイを提供する別の技術には、本願明細書に記載されるような色変換の使用が挙げられる。しかしながら、従来の下面発光エレクトロルミネセントデバイス構成によるこれらの代替技術の使用は、物理的および光学的因子によって限定される。実際的な理由のために、色変換要素は、別個のガラス上または基板上のいずれかにパターン化されなければならない。この場合、発光層とフィルター層との間の距離の影響は、視差問題につながる。換言すれば、エレクトロルミネセントデバイスからのランバートの放射は、光が、相応する色変換要素ならびに多数の隣接した色変換要素に達することを可能にする。結果として、エレクトロルミネセントディスプレイの彩度レベルが低減される。
【0008】
他方、上面発光エレクトロルミネセントデバイスはより複雑なピクセル制御回路、ならびに半導体および基板の選択において、より融通性を可能にする場合がある。代表的な上面発光デバイスにおいて、エレクトロルミネセントデバイス層を基板上に堆積することができ、その後に、薄い、透明な金属電極、および保護層を形成することができる。
【0009】
いくつかの実施形態において、本開示は、エレクトロルミネセント素子の上部電極上または前記エレクトロルミネセント素子の上に形成された保護層上に形成されている色変換要素を備える上面発光エレクトロルミネセントデバイスを形成するための選択的な熱転写(例えば、LITI)技術を提供する。本開示はまた、エレクトロルミネセント素子の反対側の基板表面に形成された色変換要素を備える下面発光エレクトロルミネセントデバイスを形成するための選択的な熱転写(例えば、LITI)技術を提供する。色変換要素を直接に上部電極上にまたは保護層上に形成することによって、位置合わせの難しさおよび視差問題を除くのに役立つ場合がある。
【0010】
さらに、選択的な熱転写パターン化(例えば、乾燥デジタル方法である、LITIパターン化)は、例えば、有機エレクトロルミネセントデバイスについて、使用された材料とより適合性である場合がある。選択的な熱転写はまた、乾燥技術であるので、各層の相対溶解度についての問題を伴わずに単一基板上に多数の層をパターン化することを可能にする場合がある。
【0011】
さらに加えて、色変換要素の選択的な熱転写パターン化は、より容易に可逆的である技術を提供することができる。例えば、色変換要素のパターンが品質管理検査に合格しない場合、前記要素を洗浄除去することができ、エレクトロルミネセント素子に過度の損傷を与えずに再び形成することができる。
【0012】
1つの面において、本開示は、エレクトロルミネセントデバイスの製造方法を提供する。この方法は、放射することができる、好ましくは狭帯域で発光するエレクトロルミネセント素子を基板上に形成する工程を含む。この方法は、複数の色変換要素を前記エレクトロルミネセント素子に選択的に熱転写する工程をさらに含む。
【0013】
別の面において、本開示は、エレクトロルミネセントデバイスの製造方法を提供する。この方法は、放射することができる、好ましくは狭帯域で発光するエレクトロルミネセント素子を基板の第1の主面上に形成する工程を含む。この方法は、複数の色変換要素を前記基板の第2の主面に選択的に熱転写する工程をさらに含む。
【0014】
別の面において、本開示は、エレクトロルミネセントデバイスの製造方法を提供する。この方法は、放射することができる、好ましくは狭帯域で発光するエレクトロルミネセント素子を基板上に形成する工程を含む。この方法は、保護層を前記エレクトロルミネセント素子の少なくとも一部の上に形成する工程と、複数の色変換要素を前記保護層に選択的に熱転写する工程と、をさらに含む。
【0015】
別の面において、本開示は、少なくとも1つのエレクトロルミネセントデバイスを備えるエレクトロルミネセントカラーディスプレイの製造方法を提供する。この方法は、前記少なくとも1つのエレクトロルミネセントデバイスを基板上に形成する工程を含む。少なくとも1つのエレクトロルミネセントデバイスを形成する工程は、放射することができる、好ましくは狭帯域で発光するエレクトロルミネセント素子を基板上に形成する工程と、複数の色変換要素を前記エレクトロルミネセント素子に選択的に熱転写する工程と、を含む。
【0016】
別の面において、本開示は、エレクトロルミネセントデバイスの製造方法を提供する。この方法は、放射することができる、好ましくは紫外線を放射するエレクトロルミネセント素子を基板上に形成する工程を含む。この方法は、複数の色変換要素を前記エレクトロルミネセント素子に選択的に熱転写する工程をさらに含む。
【0017】
別の面において、本開示は、エレクトロルミネセントデバイスを提供する。このデバイスは、基板と、前記基板上の、放射することができる、好ましくは狭帯域で発光するエレクトロルミネセント素子と、前記エレクトロルミネセント素子上の複数の色変換要素と、前記複数の色変換要素の少なくとも1つの色変換要素上の、少なくとも1つのカラーフィルターと、を備える。
【0018】
本明細書中で用いられるとき、「1つの(a)」、「1つの(an)」、「その(the)」、「少なくとも1つの」、および「1つ以上の」は交換可能に用いられる。
【0019】
本発明の上記の要旨は、本発明の各々の開示された実施形態または全ての実装例について記載することを意図するものではない。以下の図面および詳細な説明はより詳しく具体的な実施形態を例示する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】エレクトロルミネセント素子上に形成された色変換要素を備える上面発光エレクトロルミネセントデバイスの1つの実施形態の略図である。
【図2】保護層上に形成された色変換要素を備える上面発光エレクトロルミネセントデバイスの別の実施形態の略図である。
【図3】エレクトロルミネセント素子上に形成された色変換要素と前記色変換要素の1つ以上の上に形成されたカラーフィルターとを備える上面発光エレクトロルミネセントデバイスの別の実施形態の略図である。
【図4】基板上に形成された色変換要素を備える下面発光エレクトロルミネセントデバイスの実施形態の略図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
具体的な実施形態の以下の詳細な説明において、その一部を成す、本発明を実施することができる特定の実施形態が実例として示される添付した図面が参照される。他の実施形態を利用してもよく、本発明の範囲から逸脱せずに構造の変更を行なってもよいことは理解されるはずである。
【0022】
本開示は、エレクトロルミネセントデバイスおよびエレクトロルミネセントデバイスの製造方法に適用できると考えられる。エレクトロルミネセントデバイスは、有機もしくは無機発光体、または両方のタイプの発光体の組合せを備えることができる。有機エレクトロルミネセント(OEL)ディスプレイまたはデバイスは、少なくとも1つの有機発光材料を備えるエレクトロルミネセントディスプレイまたはデバイスを指し、その発光材料は小分子(SM)放射体(例えば、非ポリマー放射体)、SMドープポリマー、SM混合ポリマー、発光ポリマー(LEP)、ドープLEP、混合LEP、または別の有機発光材料であってもよく、単独で提供されるか、またはOELディスプレイまたはデバイスにおいて、機能性または非機能性であるいずれかの他の有機または無機材料と組合わせて提供されてもよい。無機発光材料には、燐光物質、半導体ナノ結晶などがある。
【0023】
概して、エレクトロルミネセントデバイスは、2つの電極(アノードおよびカソード)の間に配置された、少なくとも1つの発光層などの1つ以上のデバイス層を有する。電圧降下または電流が2つの電極の間に与えられ、それによって発光体を発光させる。
【0024】
エレクトロルミネセントデバイスはまた、薄膜エレクトロルミネセントディスプレイまたはデバイスを備えることができる。薄膜エレクトロルミネセントデバイスは、透明な誘電体層の間に挟まれた発光材料と、行および列電極のマトリクスと、を備える。このような薄膜エレクトロルミネセントディスプレイには、例えば、米国特許第4,897,31hormaei)ら)に記載されたディスプレイが挙げられる。
【0025】
図1は、エレクトロルミネセントデバイス10の1つの実施形態の略図である。エレクトロルミネセントデバイス10は、基板12と、基板12の主面14上に形成されたエレクトロルミネセント素子20と、エレクトロルミネセント素子20上に形成された色変換要素30aおよび30b(以降、一括して色変換要素30と称される)と、を備える。エレクトロルミネセント素子20は、第1の電極22と、第2の電極26と、第1の電極22と第2の電極26との間に位置決めされた1つ以上のデバイス層24と、を備える。
【0026】
デバイス10の基板12は、エレクトロルミネセントデバイスまたはディスプレイ用途に適したいずれの基板であってもよい。例えば、基板12は、ガラス、透明プラスチック、または可視光線に対して実質的に透明である他の適した材料から作製されてもよい。基板12はまた、可視光線に対して不透明であってもよく、例えばステンレス鋼、結晶シリコン、ポリシリコン等であってもよい。いくつかの場合、第1の電極22は基板12であってもよい。少なくともいくつかのエレクトロルミネセントデバイスにおいて用いられる材料は特に、酸素または水への暴露による損傷をうけやすい場合があるので、適した基板は、適切な環境バリアを提供するように選択することができ、あるいは適切な環境バリアを提供する1つ以上の層、コーティング、または積層体を与えられる。
【0027】
基板12はまた、トランジスタアレイおよび他の電子デバイス、カラーフィルター、偏光子、波長板、拡散体、および他の光デバイス、絶縁体、バリアリブ、ブラックマトリクス、マスクワーク、および他のこのような構成要素等、エレクトロルミネセントデバイスおよびディスプレイに適した任意の数のデバイスまたは構成要素を備えることができる。基板12はまた、例えば、欧州特許出願第1,220,191号明細書(クウォン(Kwon))に記載されたような複数の独立にアドレス可能な能動デバイスを備えてもよい。
【0028】
エレクトロルミネセントデバイス10はまた、基板12の主面14上に形成されたエレクトロルミネセント素子20を備える。図1は基板12の主面14上に、かつ接触して形成されるようにエレクトロルミネセント素子20を示すが、1つ以上の層またはデバイスが、エレクトロルミネセント素子20と基板12の主面14との間に含有されてもよい。エレクトロルミネセント素子20は、第1の電極22、第2の電極26、および第1の電極22と第2の電極26との間に位置決めされた1つ以上のデバイス層24を備える。第1の電極22がアノードであってもよく、第2の電極26がカソードであってもよく、あるいは第1の電極22がカソードであってもよく、第2の電極26がアノードであってもよい。
【0029】
第1の電極22および第2の電極26は典型的に、金属、合金、金属化合物、金属酸化物、導電性セラミックス、導電性分散体、および導電性ポリマーなどの電気導電性材料を用いて形成される。適した材料の例には、例えば、金、白金、パラジウム、アルミニウム、カルシウム、チタン、窒化チタン、インジウムスズ酸化物(ITO)、フッ素スズ酸化物(FTO)、およびポリアニリンなどがある。第1および第2の電極22および26は導電性材料の単一層であってもよく、またはそれらは多数の層を含有することができる。例えば、第1の電極22および第2の電極26の一方または両方のいずれかが、アルミニウムの層および金の層、カルシウムの層およびアルミニウムの層、アルミニウムの層およびフッ化リチウムの層、または金属層および導電性有機層を備えることができる。
【0030】
第1の電極22と第2の電極26との間に1つ以上のデバイス層24が形成される。1つ以上のデバイス層24が発光層を備える。場合により、1つ以上のデバイス層24が、例えば、正孔輸送層、電子輸送層、正孔注入層、電子注入層、正孔ブロッキング層、電子ブロッキング層、バッファ層、またはそれらのいずれかの組合せなどの1つ以上の付加的な層を備えることができる。
【0031】
発光層は発光材料を含有する。任意の適した発光材料が発光層に用いられてもよい。LEPおよびSM発光体などの様々な発光材料を用いることができる。発光体には、例えば、螢光および燐光材料がある。適したLEP材料のクラスの例には、ポリ(フェニレンビニレン)(PPV)、ポリ−パラ−フェニレン(PPP)、ポリフルオレン(PF)、現在公知であるかまたは後に開発される他のLEP材料、およびコポリマーまたはそれらのブレンドなどがある。適したLEPはまた、分子ドープされ、螢光染料または他の材料を分散され、活性または非活性材料をブレンドされ、活性または非活性材料を分散されてもよい、等々。適したLEP材料の例は、クラフト(Kraft)ら、Angew.Chem.Int.Ed.、37、402〜428ページ(1998年)、米国特許第5,621,131号明細書(クロイダー(Kreuder)ら)、米国特許第5,708,130号明細書(ウー(Woo)ら)、米国特許第5,728,801号明細書(ウー(Wu)ら)、米国特許第5,840,217号明細書(ルーポ(Lupo)ら)、米国特許第5,869,350号明細書(ヒーガー(Heeger)ら)、米国特許第5,900,327号明細書(ペイ(Pei)ら)、米国特許第5,929,194号明細書(ウー(Woo)ら)、米国特許第6,132,641号明細書(リッツ(Rietz)ら)、および米国特許第6,169,163号明細書(ウー(Woo)ら)、および国際公開第99/40655号パンフレット(クロイダー(Kreuder)ら)に記載されている。
【0032】
SM材料は概して、OELディスプレイおよびデバイスにおいて放射体材料、電荷輸送材料として、(例えば、発光色を制御するための)放射体層のドーパントまたは電荷輸送層等として用いることができる非ポリマー有機または有機金属分子材料である。一般に用いられるSM材料には、トリス(8−ヒドロキシキノリン)アルミニウム(AlQ)、およびN,N’−ビス(3−メチルフェニル)−N,N’−ジフェニルベンジジン(TPD)などの金属キレート化合物がある。他のSM材料は、例えば、C.H.チェン(C.H.Chen)ら著、Macromol.Symp.、125:1(1997年)、特開2000−195673号公報(フジイ)、米国特許第6,030,715号明細書(トンプソン(Thompson)ら)、米国特許第6,150,043号明細書(トンプソン(Thompson)ら)、および米国特許第6,242,115号明細書(トンプソン(Thompson)ら)、およびPCT国際公開第00/18851号パンフレット(シプリー(Shipley)ら)(二価ランタニド金属錯体)、国際公開第00/70655号パンフレット(フォーレスト(Forrest)ら)(環金属化イリジウム化合物等)、および国際公開第98/55561号パンフレット(クリストウ(Christou))に開示されている。
【0033】
1つ以上のデバイス層24はまた、正孔輸送層を備えてもよい。正孔輸送層は、アノードからエレクトロルミネセント素子20への正孔の注入、および再結合領域に向かってのそれらの移動を容易にする。正孔輸送層はさらに、アノードへの電子の移行のバリアとして作用することができる。いずれかの適した材料、例えば、ナルワ(Nalwa)ら著、ルミネセンスのハンドブック(Handbook of Luminescence)、「ディスプレイ材料およびデバイス(Display Materials and Devices)」、スティーブンス・ランチ(Stevens Ranch)、CA、アメリカン・サイエンティフィック・パブリッシャー(American Scientific Publishers)、2003年、132−195ページ、チェン(Chen)ら著、分子有機エレクトロルミネセント材料の最近の展開(Recent Developments in Molecular Organic Electroluminescent Materials)、Macromol.Symp.、1:125(1997年)、およびシャイナー・ジョセフ(Shinar,Joseph)編、有機発光デバイス(Organic Light−Emitting Devices)、ベルリン、スプリンガー出版(Berlin、Springer Verlag)、2003年、43〜69ページに記載されたそれらの材料を正孔輸送層のために使用してもよい。
【0034】
1つ以上のデバイス層24はまた、電子輸送層を備えてもよい。電子輸送層は、電子の注入、および再結合領域に向かってのそれらの移動を容易にする。電子輸送層はさらに、必要ならばカソードへの正孔の移行のバリアとして作用することができる。いずれかの適した材料、例えば、ナルワ(Nalwa)ら著、ルミネセンスのハンドブック(Handbook of Luminescence)、「ディスプレイ 材料およびデバイス(Display Materials and Devices)」、スティーブンス・ランチ(Stevens Ranch)、CA、アメリカン・サイエンティフィック・パブリッシャー(American Scientific Publishers)、2003年、132〜195ページ、チェン(Chen)ら著、「分子有機エレクトロルミネセント材料の最近の展開(Recent Developments in Molecular Organic Electroluminescent Materials)」、Macromol.Symp.、1:125(1997年)、およびシャイナー・ジョセフ(Shinar,Joseph)編、「有機発光デバイス(Organic Light−Emitting Devices)」、ベルリン、スプリンガー出版(Berlin、Springer Verlag)、2003年、43〜69ページに記載されたそれらの材料を電子輸送層のために使用してもよい。
【0035】
エレクトロルミネセント素子20が狭帯域で発光することができるのが好ましい場合がある。本明細書中で用いられるとき、用語「狭帯域の光」は、(スペクトルの半値点で測定された)約100nm以下のスペクトル幅を有する光スペクトルを指す。従って、狭帯域放射体は、100nm以下のスペクトル幅を有する光を放射する光源である。例えば、エレクトロルミネセント素子20が青色光を発光することができることが好ましい場合がある。エレクトロルミネセント素子20の発光層の材料は、エレクトロルミネセント素子20が狭帯域で発光、例えば、青色光を放射することができるように選択されてもよいことを当業者は理解するであろう。
【0036】
さもなければ、いくつかの実施形態において、エレクトロルミネセント素子20が紫外(UV)光を放射することができるのが好ましい場合がある。低周波数変換燐光物質によって、紫外線と青色光との両方をより低い周波数の光に「低周波数変換」することができる。紫外線放射エレクトロルミネセント素子については、本明細書にさらに記載されるように、少なくとも3つの色変換要素30がエレクトロルミネセント素子20上に形成されることが好ましい場合がある。
【0037】
1つ以上のデバイス層24は、様々な方法によって、例えば、コーティング(例えば、スピンコーティング)、印刷(例えば、スクリーン印刷またはインクジェット印刷)、物理的または化学蒸着、フォトリソグラフィ、および熱転写方法(例えば、米国特許第6,114,088号明細書(ウルク(Wolk)ら)に記載された方法)によって第1の電極22と第2の電極26との間に形成されてもよい。1つ以上のデバイス層24を連続的に形成することができ、あるいは層の2つ以上を同時に配置することができる。1つ以上のデバイス層24を形成した後またはデバイス層24の堆積と同時に、第2の電極26を1つ以上のデバイス層24上に形成するかあるいは他の方法で配置する。あるいは、エレクトロルミネセント素子20は、例えば、米国特許第6,114,088号明細書(ウルク(Wolk)ら)に記載されたような多層ドナーシートを利用するLITI技術を用いて形成されてもよい。
【0038】
エレクトロルミネセント素子20はまた、本明細書にさらに記載されるようにエレクトロルミネセント素子20の上に形成された保護層(図示せず)を備えてもよい。
【0039】
エレクトロルミネセントデバイス10はまた、エレクトロルミネセント素子20上に形成された色変換要素30を備える。色変換要素30は第2の電極26上に形成されているように示されるが、1つ以上の層またはデバイスが色変換要素30と第2の電極26との間に含有されてもよい。エレクトロルミネセント素子20から放射された光の少なくとも一部が1つ以上の色変換要素30に入射するように、1つ、2つ、またはそれ以上の色変換要素30がエレクトロルミネセント素子20上に形成されてもよい。換言すれば、色変換要素30はエレクトロルミネセント素子20と光学結合状態である。色変換要素30はその上に入射した光を吸収し、選択された狭帯域の光を再放射する。例えば、色変換要素30aは入射光を赤色光に変換することができ、色変換要素30bは入射光を緑色光に変換することができる。本明細書中で用いられるとき、用語「赤色光」は、可視スペクトルの主に上側部分のスペクトルを有する光を指す。さらに本明細書で用いられるとき、用語「緑色光」は、可視スペクトルの主に中間部分のスペクトルを有する光を指す。そして「青色光」は、可視スペクトルの主に下側部分のスペクトルを有する光を指す。いくつかの実施形態において、色変換要素30は、入射光を青色光に変換する色変換要素を備えてもよい。色変換要素と対照的に、(本明細書にさらに記載されるような)カラーフィルターは、波長に比較的変化を生じずに他の波長または周波数を通過させながら特定の波長または周波数を減衰させる。
【0040】
図1に示されていないが、1つ以上の色変換要素が1つ以上の他の色変換要素上に形成されてもよい。例えば、赤色色変換要素が緑色色変換要素から放射された緑色光を吸収し、赤色光を再放射するように、赤色色変換要素が緑色色変換要素上に形成されてもよい。
【0041】
色変換要素30はいずれの適した材料を含有してもよい。例えば、色変換要素30は、いずれの適した色変換材料、例えば、螢光染料、螢光顔料、燐光物質、半導性ナノ結晶等を含有してもよい。これらの色変換材料は、いずれの適したバインダー材料、例えば、モノマー、オリゴマー、ポリマー材料等に分散されてもよい。
【0042】
色変換要素30は、いずれの適した技術、例えば、コーティング(例えば、スピンコーティング)、印刷(例えば、スクリーン印刷またはインクジェット印刷)、物理的または化学蒸着、フォトリソグラフィ、および熱転写方法(例えば、米国特許第6,114,088(ウルク(Wolk)ら)に記載された方法)を用いてエレクトロルミネセント素子20上に形成されてもよい。本明細書にさらに記載されるようにLITI技術を用いて色変換要素30がエレクトロルミネセント素子20上に形成されるのが好ましい場合がある。
【0043】
本開示の方法において、ドナー要素の転写層を受容体(例えば、エレクトロルミネセント素子20)に隣接して配置し、ドナー要素を選択的に加熱することによって、発光ポリマー(LEP)または他の材料を含有する発光材料、色変換要素、およびカラーフィルターをドナーシートの転写層から受容基板に選択的に転写することができる。例えばカラーフィルターの選択的な転写について、例えば、係属中の米国特許出願第_____(「カラーフィルターを備えるエレクトロルミネセントデバイスの作製方法(A METHOD OF MAKING AN ELECTROLUMINESCENT DEVICE INCLUDING A COLOR FILTER)」と題され、これと同日に出願された代理人整理番号59025US007号)を参照のこと。実例として、ドナー中に、しばしば別個の光−熱変換(LTHC)層に配置されたLTHC材料によって吸収されて熱に変換され得る画像化放射線でドナー要素を照射することによってドナー要素を選択的に加熱することができる。あるいは、光−熱変換は、ドナー要素または受容基板のどちらかの層のいずれか1つ以上において行なわれてもよい。ドナーはドナー基板を通して、受容体を通して、または両方を通して画像化放射線に露光されてもよい。放射線は、例えばレーザー、ランプ、または他のこのような放射線源からの可視光線、赤外線、または紫外線などの1つ以上の波長を含めることができる。サーマルプリントヘッドを使用するかまたはサーマルホットスタンプ(例えば、ドナーを選択的に加熱するために使用できるレリーフパターンを有する加熱シリコーンスタンプなどのパターン化サーマルホットスタンプ)を使用するなど、他の選択的な加熱技術もまた使用することができる。熱転写層からの材料をこのようにして受容体に選択的に転写して、転写された材料のパターンを受容体上に画像の通り形成することができる。多くの場合、例えばランプまたはレーザーからの光を用いてパターンの通りドナーを露光する熱転写は、しばしば達成することができる精度および正確さのために有利である場合がある。転写されたパターン(例えば、線、円、四角形、または他の形状)のサイズおよび形状は、例えば、光線のサイズ、光線の露光パターン、ドナーシートと有向ビームの接触時間、またはドナーシートの材料を選択することによって制御されてもよい。転写されたパターンはまた、ドナー要素をマスクを通して照射することによって制御されてもよい。
【0044】
上記したように、ドナー要素を直接に選択的に加熱し、それによって転写層の一部をパターンの通り転写するために(パターン化されるかあるいは他の方法で)サーマルプリントヘッドまたは他の加熱要素を使用することができる。このような場合、ドナーシート中の光−熱変換材料は任意選択である。材料により低解像度のパターンを作製するかまたは配置が精密に制御される必要がない要素をパターン化するためにサーマルプリントヘッドまたは他の加熱要素が特に適していることがある。
【0045】
また、転写層をそれらの全部でドナーシートから転写することができる。例えば、転写層が受容基板に接触された後に、典型的に熱または圧力を適用して剥離することができる仮ライナーとして本質的に作用するドナー基板上に転写層を形成することができる。積層転写と称されるこのような方法を用いて全転写層、またはその大部分を受容体に転写することができる。
【0046】
熱転写の方式は、使用される選択的な加熱のタイプ、ドナーを露光するために用いられる場合の照射のタイプ、任意選択のLTHC層の材料および性質のタイプ、転写層の材料のタイプ、ドナーの全構成、受容基板のタイプ等に応じて変わることができる。いずれの理論にも縛られることを望まないが、転写は概して、1つ以上の機構によって行なわれ、その1つ以上が画像化条件、ドナー構成等に応じて選択的な転写の間に強調されるかまたは脱強調されてもよい。熱転写の1つの機構には熱溶融粘着転写があり、それによって熱転写層とドナー要素の残り部分との間の境界面において加熱することにより、受容体に対する付着性がドナーに対する付着性よりも強くなり、ドナー要素が除去される時に転写層の選択された部分が受容体上に残る。熱転写の別の機構には融蝕性転写があり、それによって、局部加熱を用いて転写層の一部をドナー要素から融蝕除去し、それによって、融蝕された材料を受容体の方へ向けることができる。熱転写のさらに別の機構には昇華があり、それによって、転写層に分散された材料をドナー要素に生じた熱によって昇華することができる。昇華された材料の一部が受容体上に凝縮することができる。本発明は、これらのおよび他の機構の1つ以上を有する転写方式を考察し、それによってドナーシートの選択的な加熱を用いて転写層から受容体表面への材料の転写をもたらすことができる。
【0047】
様々な放射線−放射源を用いてドナーシートを加熱することができる。アナログ技術(例えば、マスクを通しての露光)については、強力光源(例えば、キセノンフラッシュランプおよびレーザー)が有用である。デジタル画像化技術については、赤外線、可視線、および紫外レーザーが特に有用である。適したレーザーには、例えば、強力(≧100mW)シングルモードレーザーダイオード、ファイバー結合レーザーダイオード、およびダイオード励起固体レーザ(例えば、Nd:YAGおよびNd:YLF)などがある。レーザー露光停止時間は、広範囲に、例えば、100分の数マイクロ秒から数十マイクロ秒までまたはそれ以上変化することができ、レーザーフルエンスは、例えば、約0.01〜約5J/cm以上の範囲であってもよい。他の放射線源および照射条件が、とりわけ、ドナー要素構成、転写層材料、熱物質移動のモード、および他のこのような因子に基づいて適している場合がある。
【0048】
大きな基板領域について高スポット配置精度が望ましいとき(例えば、高情報量ディスプレイおよび他のこのような適用のための要素をパターン化するとき)、レーザーは、放射線源として特に有用である場合がある。レーザー源はまた、大きな硬質基板(例えば、1m×1m×1.1mmのガラス)および連続したまたはシート状フィルム基板(例えば、厚さ100μmのポリイミドシート)の両方と適合性である。
【0049】
画像化する間、ドナーシートを受容体と密着させることができ(典型的に熱溶融粘着転写機構の場合である)、またはドナーシートを受容体から特定の距離離隔することができる(融蝕性転写機構または材料昇華転写機構の場合でありうる)。少なくともいくつかの場合、圧力または真空を用いてドナーシートを受容体と密着して保持することができる。いくつかの場合、マスクをドナーシートと受容体との間に配置することができる。このようなマスクは取り外し可能であるか、または転写した後に受容体上に残ってもよい。光−熱変換材料がドナー中に存在する場合、放射線源を用いて画像の通り(例えば、デジタルにまたはマスクを通してアナログに露光することによって)LTHC層(または放射線吸収剤を含有する他の層)を加熱して転写層をドナーシートから受容体に画像の通り転写またはパターン化することができる。
【0050】
典型的に、本明細書にさらに記載されるように任意選択の中間層またはLTHC層などのドナーシートの他の層のかなりの部分を転写せずに転写層の選択された部分を受容体に転写する。任意選択の中間層の存在によって、LTHC層または他の近接した層(例えば、他の中間層)から受容体への材料の転写を除くかまたは低減することができ、あるいは転写層の転写された部分の歪みを低減することができる。好ましくは、画像化条件下で、LTHC層に対する任意選択の中間層の接着性が転写層に対する中間層の接着性より大きい。中間層は、画像化放射線に対して透過性、反射性、または吸収性であってもよく、ドナーを通して透過された画像化放射線のレベルを減衰させるかあるいは他の方法で制御するためにまたはドナーの温度を管理するために、例えば、画像化する間に転写層に対する熱または放射線による損傷を低減するために用いられてもよい。多数の中間層が存在してもよい。
【0051】
1メートル以上の長さおよび幅寸法を有するドナーシートなどの大きなドナーシートを用いることができる。操作において、レーザーを大きなドナーシートにわたってラスターするかあるいは他の方法で移動させることができ、レーザーは、所望のパターンによってドナーシートの一部を照明するように選択的に操作される。あるいは、レーザーが固定されてもよく、ドナーシートまたは受容基板がレーザー下で移動されてもよい。
【0052】
いくつかの場合、2つ以上の異なったドナーシートを連続的に用いて電子デバイスを受容体上に形成することが必要で、望ましいか、または便利である場合がある。例えば、別個の層または層の別個のスタックを異なったドナーシートから転写することによって多数層デバイスを形成することができる。また、例えば、米国特許第6,114,088号明細書(ウルク(Wolk)ら)に記載されているように多層スタックを単一転写単位として単一ドナー要素から転写することができる。例えば、正孔輸送層とLEP層とを単一ドナーから同時に転写することができる。別の例として、半導性ポリマーと発光層とを単一ドナーから同時に転写することができる。また、多数のドナーシートを用いて別個の構成要素を同じ層の受容体上に形成することができる。例えば、異なった色(例えば、赤色、緑色、および青色)を放射することができる色変換要素を備える転写層を各々有する3つの異なったドナーを用いてフルカラー偏光発光電子ディスプレイのためのRGB色変換エレクトロルミネセントデバイスを形成することができる。別の例として、導電性または半導性ポリマーを1つのドナーから熱転写によってパターン化することができ、その後に、発光層を1つ以上の他のドナーから選択的に熱転写してディスプレイに複数のOELデバイスを形成することができる。さらに別の例として、有機トランジスタのための層を(方向付けされるかまたはされていない)電気的活性有機材料の選択的な熱転写によってパターン化することができ、その後に、色変換要素、カラーフィルター、発光層、電荷輸送層、電極層等などの1つ以上のピクセルまたはサブピクセル要素の選択的な熱転写パターン化を行なうことができる。
【0053】
別個のドナーシートからの材料を受容体上に他の材料に隣接して転写して、隣接したデバイス、隣接したデバイスの一部、または同じデバイスの異なった部分を形成することができる。あるいは、別個のドナーシートからの材料を、熱転写または特定の他の方法(例えば、フォトリソグラフィ、シャドウマスクを通しての堆積等)によって受容体上に予めパターン化された他の層または材料の上に直接に、または部分的に重ね合わせて転写することができる。2つ以上のドナーシートの様々な他の組合せを用いてデバイスを形成することができ、各ドナーシートは、デバイスの1つ以上の部分を形成するために用いられる。通常に使用されるかまたは新規に開発された、フォトリソグラフィ方法、インクジェット方法、および様々な他の印刷またはマスクによる方法などのいずれかの適した方法によってこれらのデバイスの他の部分、または受容体上の他のデバイスを全部あるいは部分的に形成してもよいことは理解されるであろう。
【0054】
ドナー基板はポリマーフィルムであってもよい。1つの適したタイプのポリマーフィルムは、ポリエステルフィルム、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)またはポリエチレンナフタレート(PEN)フィルムである。しかしながら、特定の適用に応じて、特定の波長においての光の高透過率や、十分な機械的および熱安定性性質など、十分な光学性質を有する他のフィルムを用いることができる。少なくともいくつかの場合、ドナー基板は、平らであり、均一なコーティングをその上に形成することができる。また、ドナー基板は典型的に、ドナーの1つ以上の層の加熱にもかかわらず安定なままである材料から選択される。しかしながら、本明細書に記載されたように、基板とLTHC層との間に下層を含有することによって、画像化する間にLTHC層に発生された熱から基板を絶縁することができる。ドナー基板の代表的な厚さは0.025〜0.15mm、好ましくは0.05〜0.1mmの範囲であるが、より厚いかまたはより薄いドナー基板を用いてもよい。
【0055】
ドナー基板および任意選択の隣接した下層を形成するために用いられた材料は、ドナー基板と下層との間の接着性を改良し、基板と下層との間の熱輸送を制御し、LTHC層への画像化放射線の移動を制御し、画像化欠陥などを低減するように選択することができる。任意選択の下塗り層を用いて基板上に後続層をコーティングする間、均一性を増加させ、そしてまた、ドナー基板と隣接した層との間の結合強さを増加させることができる。
【0056】
任意選択の下層をドナー基板とLTHC層との間にコーティングするかあるいは他の方法で配置して、例えば画像化する間、基板とLTHC層との間の熱流を制御するか、または貯蔵、取扱、ドナー加工、または画像化のためにドナー要素に対する機械的安定性を提供することができる。適した下層および下層を提供する技術の例は、米国特許第6,284,425号明細書(スタラルら)に開示されている。
【0057】
下層は、所望の機械的または熱的性質をドナー要素に与える材料を含有することができる。例えば、下層は、ドナー基板に対して低い比熱×密度または低い熱伝導率を示す材料を含有することができる。このような下層を用いて転写層への熱流を増加させ、例えばドナーの画像化感度を改良してもよい。
【0058】
下層はまた、それらの機械的性質のための、または基板とLTHCとの間の接着性のための材料を含有してもよい。基板とLTHC層との間の接着性を改良する下層を用いることによって、転写された画像の歪みを低減することができる。例として、いくつかの場合、例えば、ドナー媒体の画像化の間に他の場合なら生じることがあるLTHC層の離層または分離を低減するかまたは除く下層を用いることができる。これは、転写層の転写された部分によって示される物理的歪みの量を低減することができる。しかしながら、他の場合、画像化する間、層間の少なくとも或る程度の分離を促進する下層を使用し、例えば、画像化する間、熱絶縁機能をもたらすことができる層間の空隙を生じさせることが望ましい場合がある。画像化する間の分離はまた、画像化する間、LTHC層の加熱によって生じることがあるガスを放出するための溝を設けることができる。このような溝を設けることによって、画像化欠陥を少なくすることができる場合がある。
【0059】
下層は画像化波長においてほとんど透明であってもよく、あるいはまた、画像化放射線を少なくとも部分的に吸収または反射してもよい。下層による画像化放射線の減衰または反射を用いて、画像化する間の熱の発生を制御してもよい。
【0060】
本発明のドナーシートにLTHC層を含有させて照射エネルギーをドナーシートに結合することができる。LTHC層は好ましくは、ドナーシートから受容体への転写層の転写を可能にするために、入射放射線(例えば、レーザー光)を吸収して入射放射線の少なくとも一部を熱に変換する放射線吸収剤を含有する。
【0061】
概して、LTHC層中の放射線吸収剤は、電磁スペクトルの赤外線、可視線、または紫外線領域の光を吸収し、吸収された放射線を熱に変換する。放射線吸収剤は典型的に、選択された画像化放射線を高度に吸収し、画像化放射線の波長において約0.2〜3またはそれ以上の範囲の光学濃度を有するLTHC層を提供する。層の光学濃度は、層を通して透過された光の強度の、層に入射する光の強度に対する比の対数(底10)の絶対値である。
【0062】
放射線吸収材料をLTHC層の全体にわたって均一に配置することができ、または不均質に分散させることができる。例えば、米国特許第6,228,555号明細書(ホフェンド・ジュニア(Hoffend,Jr.)ら)に記載されているように、不均質なLTHC層を用いてドナー要素の温度分布を制御することができる。これは、改良された転写性質(例えば、所期の転写パターンと実際の転写パターンとの間のより良好な忠実度)を有するドナーシートをもたらすことができる。
【0063】
適した放射線吸収材料には、例えば、染料(例えば、可視染料、紫外染料、赤外染料、螢光染料、および放射線偏光染料)、顔料、金属、金属化合物、金属フィルム、黒体吸収剤、および他の適した吸収材料などが挙げられる。適した放射線吸収剤の例には、カーボンブラック、金属酸化物、および金属硫化物などがある。適したLTHC層の1つの例は、カーボンブラックなどの顔料、および有機ポリマーなどのバインダーを含有することができる。別の適したLTHC層は、薄膜として形成された金属または金属/金属酸化物、例えば、ブラックアルミニウム(すなわち、黒色の視覚的な外観を有する部分的に酸化されたアルミニウム)を含有する。金属および金属化合物フィルムは、例えば、スパッタリングおよび蒸着などの技術によって形成されてもよい。粒状コーティングはバインダーおよびいずれかの適した乾燥または湿潤コーティング技術を用いて形成されてもよい。また、同様なまたは異なった材料を含有する2つ以上のLTHC層を組合わせることによって、LTHC層を形成することができる。例えば、ブラックアルミニウムの薄い層を、バインダー中に置かれたカーボンブラックを含有するコーティングの上に蒸着することによって、LTHC層を形成することができる。
【0064】
LTHC層において放射線吸収剤として使用するために適した染料は、バインダー材料に溶解されるかまたはバインダー材料に少なくとも部分的に分散された、粒状の形状で存在してもよい。分散された粒状放射線吸収剤が用いられるとき、粒度は少なくともいくつかの場合、約10μm以下であることがあるが、約1μm以下であってもよい。適した染料には、スペクトルのIR領域において吸収するそれらの染料がある。特定のバインダーまたはコーティング溶剤への溶解度、および相溶性、ならびに吸収の波長範囲などの因子に基づいて特定の染料を選択してもよい。
【0065】
顔料材料もまた、LTHC層において放射線吸収剤として用いられてもよい。適した顔料の例には、カーボンブラックおよび黒鉛、ならびにフタロシアニン、ニッケルジチオレン、および米国特許第5,166,024号明細書(バグナー(Bugner)ら)および米国特許第5,351,617号明細書(ウィリアムズ(Williams)ら)に記載された他の顔料がある。さらに、例えば、ピラゾロンイエロー、ジアニシジンレッド、およびニッケルアゾイエローの銅またはクロム錯体をベースとした黒色アゾ顔料が有用である場合がある。例えば、アルミニウム、ビスマス、スズ、インジウム、亜鉛、チタン、クロム、モリブデン、タングステン、コバルト、イリジウム、ニッケル、パラジウム、白金、銅、銀、金、ジルコニウム、鉄、鉛、およびテルルなどの金属の酸化物および硫化物など、無機顔料もまた用いることができる。金属ホウ化物、炭化物、窒化物、炭窒化物、青銅構造化酸化物、および青銅族に構造的に関連する酸化物(例えば、WO2.9)もまた用いてもよい。
【0066】
金属放射線吸収剤を例えば米国特許第4,252,671号明細書(スミス(Smith))に記載されているように粒子の形状で、または米国特許第5,256,506号明細書(エリス(Ellis)ら)に開示されているようにフィルムとしてのいずれかで用いてもよい。適した金属には、例えば、アルミニウム、ビスマス、スズ、インジウム、テルルおよび亜鉛などがある。
【0067】
LTHC層に使用するための適したバインダーには、例えば、フェノール樹脂(例えば、ノボラックおよびレゾール樹脂)、ポリビニルブチラール樹脂、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアセタール、ポリ塩化ビニリデン、ポリアクリレート、セルロースエーテルおよびエステル、ニトロセルロース、およびポリカーボネートなどのフィルム形成ポリマーがある。適したバインダーには、重合または架橋されているかまたはされうるモノマー、オリゴマー、またはポリマーが挙げられる。光開始剤などの添加剤もまた、LTHCバインダーの架橋を容易にするために含有されてもよい。いくつかの実施形態において、バインダーは主に、架橋可能なモノマーまたはオリゴマーのコーティングを任意選択のポリマーと共に用いて形成される。
【0068】
熱可塑性樹脂(例えば、ポリマー)を含有することによって、少なくともいくつかの場合、LTHC層の性能(例えば、転写性質または被覆性)を改良することができる。熱可塑性樹脂は、LTHC層の、ドナー基板への接着性を改良することができると考えられる。1つの実施形態において、バインダーは、25〜50重量%(重量パーセントを計算する時に溶媒を除外する)の熱可塑性樹脂、好ましくは、30〜45重量%の熱可塑性樹脂を含有するが、より低量の熱可塑性樹脂を用いてもよい(例えば、1〜15重量%)。熱可塑性樹脂は典型的に、バインダーの他の材料と相溶性(すなわち、1相の配合剤を形成する)であるように選択される。少なくともいくつかの実施形態において、9〜13(cal/cm1/2、好ましくは、9.5〜12(cal/cm1/2の範囲の溶解度パラメーターを有する熱可塑性樹脂が、バインダーのために選択される。適した熱可塑性樹脂の例には、ポリアクリル、スチレン−アクリルポリマーおよび樹脂、およびポリビニルブチラールなどがある。
【0069】
界面活性剤および分散剤などの通常のコーティング助剤を添加してコーティングプロセスを容易にしてもよい。本技術分野に公知の様々なコーティング方法を用いてLTHC層をドナー基板上にコーティングしてもよい。ポリマーまたは有機LTHC層を少なくともいくつかの場合、0.05μm〜20μm、好ましくは、0.5μm〜10μm、より好ましくは、1μm〜7μmの厚さにコーティングすることができる。無機LTHC層を少なくともいくつかの場合、0.0005〜10μm、好ましくは、0.001〜1μmの範囲の厚さにコーティングすることができる。
【0070】
少なくとも1つの任意選択の中間層がLTHC層と転写層との間に配置されてもよい。中間層を用いて、例えば、転写層の転写された部分の損傷および汚染を最小にすることができ、また、転写層の転写された部分の歪みまたは機械的損傷を低減する場合がある。中間層はまた、ドナーシートの残り部分への転写層の接着性に影響を与える場合がある。典型的に、中間層は、高い耐熱性を有する。中間層は、画像化条件下で、特に、転写された画像を非機能的にする程度まで、変形または化学分解しないのが好ましい。中間層は典型的に、転写プロセスの間、LTHC層と接触したままであり、転写層をほとんど転写されない。
【0071】
適した中間層には、例えば、ポリマーフィルム、金属層(例えば、蒸着金属層)、無機層(例えば、無機酸化物(例えば、シリカ、チタニア、および他の金属酸化物)のゾル−ゲル堆積層および蒸着層)、および有機/無機複合層などがある。中間層材料として適した有機材料には、熱硬化性材料と熱可塑性材料との両方がある。適した熱硬化性材料には、架橋したまたは架橋可能なポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリエステル、エポキシ、およびポリウレタンなどがあるがそれらに限定されない、熱、放射線、または化学処理によって架橋してもよい樹脂がある。熱硬化性材料をLTHC層上に例えば、熱可塑性樹脂前駆物質としてコーティングし、次いで架橋して、架橋された中間層を形成してもよい。
【0072】
適した熱可塑性材料には、例えば、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリスチレン、ポリウレタン、ポリスルホン、ポリエステル、およびポリイミドなどがある。これらの熱可塑性有機材料は、通常のコーティング技術(例えば、溶剤コーティング、噴霧コーティング、または押出コーティング)によって適用されてもよい。典型的に、中間層に使用するために適した熱可塑性材料のガラス転移温度(T)は25℃以上、好ましくは50℃以上である。いくつかの実施形態において、中間層は、画像化する間に転写層において達せられる一切の温度よりも高いTを有する熱可塑性材料を含有する。中間層は、画像化放射線波長において透過性、吸収性、反射性、またはそれらの特定の組合せのどれかであってもよい。
【0073】
中間層材料として適した無機材料には例えば、画像化光波長において高透過性または高反射性であるそれらの材料を含めて、金属、金属酸化物、金属硫化物、および無機炭素コーティングなどがある。これらの材料を通常の技術(例えば、真空スパッタリング、真空蒸発、またはプラズマジェット堆積)によって光−熱変換層に適用してもよい。
【0074】
中間層は多数の利点を提供することができる。中間層は、光−熱変換層からの材料の転写に対するバリアとなりうる。中間層はまた、それに近接した層への、またはそれからの一切の材料または汚染物の交換を防ぐバリアとして作用することができる。それはまた、熱的に不安定な材料を転写するために転写層において達した温度を変えることができる。例えば、中間層は、LTHC層において達した温度に対して中間層と転写層との間の境界面の温度を制御するための熱拡散体として作用することができる。これは、転写された層の質(すなわち、表面粗さ、エッジ粗さ等)を改良することができる。中間層の存在はまた、転写された材料の改良された塑性復元をもたらす場合がある。
【0075】
中間層は、例えば、光開始剤、界面活性剤、顔料、可塑剤、およびコーティング助剤などの添加剤を含有してもよい。中間層の厚さは、例えば、中間層の材料、LTHC層の材料および性質、転写層の材料および性質、画像化放射線の波長、および画像化放射線へのドナーシートの暴露時間などの因子に依存する場合がある。ポリマー中間層については、中間層の厚さは典型的に、0.05μm〜10μmの範囲である。無機中間層(例えば、金属または金属化合物中間層)については、中間層の厚さは典型的に0.005μm〜10μmの範囲である。多数の中間層もまた使用できる。例えば、有機系中間層を無機系中間層によって覆い、熱転写プロセスの間、転写層に付加的な保護を与えることができる。
【0076】
熱転写層がドナーシートに含有される。前記転写層は、単独でまたはまたは他の材料と組み合わせて、1つ以上の層に配置されたいずれかの適した材料を含有することができる。ドナー要素が直接加熱されるか、または光−熱変換材料によって吸収されて熱に変換され得る画像化放射線に露光されるとき、転写層をいずれかの適した転写機構によって単体としてまたは部分に分けて選択的に転写することができる。
【0077】
熱転写層を用いて、例えば、色変換要素、カラーフィルター、電子回路部品、抵抗体、キャパシタ、ダイオード、整流器、エレクトロルミネセントランプ、記憶素子、電界効果トランジスタ、バイポーラトランジスタ、単接合トランジスタ、MOSトランジスタ、金属絶縁体半導体トランジスタ、電荷結合デバイス、絶縁体−金属−絶縁体スタック、有機導体−金属−有機導体スタック、集積回路、光検出器、レーザー、レンズ、導波路、格子、ホログラフィック素子、フィルター(例えば、アド−ドロップフィルター、利得等化フィルター、カットオフフィルター等)、鏡、スプリッタ、カップラー、コンバイン、変調器、センサー(例えば、エバネッセントセンサー、位相変調センサー、干渉応用センサー等)、光共振器、ピエゾデバイス、強誘電デバイス、薄膜電池、またはそれらの組合せ、例えば、光ディスプレイのための能動マトリクスアレイとしての電界効果トランジスタと有機エレクトロルミネセントランプとの組合せを形成することができる。多成分転写ユニットおよび/または単一層を転写することによって他の品目を形成してもよい。
【0078】
転写層をドナー要素から、近接して配置された受容基板に選択的に熱転写することができる。多層構成が単一ドナーシートを用いて転写されるように、必要ならば、2つ以上の転写層があってもよい。受容基板は、ガラス、透明なフィルム、反射フィルム、金属、半導体、およびプラスチックなどがあるがそれらに限定されない特定の用途に適したいずれの品目であってもよい。例えば、受容基板は、ディスプレイ用途、例えば、発光型ディスプレイ、透過ディスプレイ、半透過ディスプレイ、エレクトロフェレティックディスプレイ等に適した基板またはディスプレイ要素のいずれのタイプであってもよい。液晶ディスプレイまたは発光型ディスプレイなどのディスプレイに使用するために適した受容基板には、可視光線に対してほとんど透過性である硬質または可撓性の基板がある。適した硬質受容体の例には、インジウムスズ酸化物でコーティングまたはパターン化されるかまたは低温ポリシリコン(LTPS)または有機トランジスタなどの他のトランジスタ構造物で回路形成されているガラスおよび硬質プラスチックがある。
【0079】
適した可撓性の基板には、ほとんど透明なおよび透過ポリマーフィルム、反射フィルム、半透過フィルム、偏光フィルム、多層光学フィルム、金属フィルム、金属シート、金属箔などがある。可撓性の基板はまた、電極材料またはトランジスタ、例えば、可撓性の基板上に直接に形成されるかまたは仮キャリア基板上に形成された後に可撓性の基板に転写されたトランジスタアレイでコーティングまたはパターン化されてもよい。適したポリマー基板には、ポリエステル塩基(例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート)、ポリカーボネート樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリビニル樹脂(例えば、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアセタールなど)、セルロースエステル塩基(例えば、セルローストリアセテート、セルロースアセテート)、および支持体として用いられる他の通常のポリマーフィルムがある。有機エレクトロルミネセントデバイスをプラスチック基板上に作製するために、バリアフィルムまたはコーティングをプラスチック基板の一方または両方の表面に含有して有機発光デバイスおよびそれらの電極を望ましくないレベルの水、酸素等への暴露から保護することがしばしば望ましい。
【0080】
受容基板を電極、トランジスタ、キャパシタ、絶縁リブ、スペーサー、カラーフィルター、ブラックマトリクス、正孔輸送層、電子輸送層の他、電子ディスプレイまたは他のデバイスのために有用な他の要素のいずれか1つ以上で予備パターン化することができる。
【0081】
エレクトロルミネセントデバイスの製造方法は、図1のエレクトロルミネセントデバイス10を参照して記載される。デバイス10のエレクトロルミネセント素子20は、任意の適した技術、例えば、本明細書に記載されたようなLITIパターン化を用いて基板12の主面14上に形成される。本明細書に同様に記載されるように色変換要素30はエレクトロルミネセント素子20に選択的に熱転写される。色変換要素30は、色変換要素30が第2の電極26上にあるようにエレクトロルミネセント素子20に転写されてもよい。あるいは、本明細書にさらに記載されるように色変換要素30は、エレクトロルミネセント素子20の少なくとも一部の上に形成される保護層(図示せず)に転写されてもよい。いくつかの実施形態において、ブラックマトリクスがエレクトロルミネセント素子20上に形成されてもよく、次いで、本明細書にさらに記載されるように色変換要素30がブラックマトリクスの開口に転写されてもよい。
【0082】
図2は、エレクトロルミネセントデバイス100の別の実施形態の略図である。エレクトロルミネセントデバイス100は、図1のエレクトロルミネセントデバイス10に多くの点において似ている。図2に示された実施形態において、エレクトロルミネセントデバイス100は、基板112と、基板112の主面114上に形成されたエレクトロルミネセント素子120と、保護層140上に形成された色変換要素130aおよび130b(以降、一括して色変換要素130と称される)とを備える。エレクトロルミネセント素子120は、第1の電極122と、第2の電極126と、第1の電極122と第2の電極126との間に位置決めされた1つ以上のデバイス層124とを備える。図1に示された実施形態の基板12、エレクトロルミネセント素子20、および色変換要素30に対して本明細書に記載された設計の問題および可能性の全てが、図2に示された実施形態の基板112、前記エレクトロルミネセント素子120、および色変換要素130に等しく当てはまる。
【0083】
エレクトロルミネセントデバイス100はまた、エレクトロルミネセント素子120の少なくとも一部の上に形成された保護層140を備える。保護層140は、エレクトロルミネセント素子120上に、かつ接触して形成されてもよい。あるいは、任意選択の層がエレクトロルミネセント素子120と保護層140との間に含有されてもよい。
【0084】
保護層140は、エレクトロルミネセント素子120、例えば、バリア層、封入剤層等を保護するいずれの適したタイプの層であってもよい。保護層140は、例えば、米国特許出願公開第2004/0195967号明細書(パディヤス(Padiyath)ら)および米国特許第6,522,067号明細書(グラフ(Graff)ら)に記載されているように、いずれの適した材料を用いて形成されてもよい。
【0085】
色変換要素130は、保護層140の主面142に転写される。図1のエレクトロルミネセントデバイス10の色変換要素30に関して本明細書に記載されたように、エレクトロルミネセントデバイス100の色変換要素130は、いずれかの適した技術、例えば、コーティング(例えば、スピンコーティング)、印刷(例えば、スクリーン印刷またはインクジェット印刷)、物理的または化学蒸着、フォトリソグラフィ、および熱転写方法(例えば、米国特許第6,114,088号明細書(ウルク(Wolk)ら)に記載された方法)を用いて形成されてもよい。本明細書に記載されたようなLITI技術を用いて色変換要素130が保護層140に転写されるのが好ましい場合がある。
【0086】
例えば、ブラックマトリクス、カラーフィルター要素等の他の要素がエレクトロルミネセント素子または保護層上に形成されてもよい。例えば、図3は、エレクトロルミネセントデバイス200の別の実施形態の略図である。エレクトロルミネセントデバイス200は、図1のエレクトロルミネセントデバイス10および図2のエレクトロルミネセントデバイス100に多くの点において似ている。エレクトロルミネセントデバイス200は、基板212と、基板212の主面214上に形成されたエレクトロルミネセント素子220と、エレクトロルミネセント素子220上に形成された色変換要素230aおよび230b(以降、一括して色変換要素230と称される)と、を備える。エレクトロルミネセント素子220は、第1の電極222と、第2の電極226と、第1の電極222と第2の電極226との間に位置決めされた1つ以上のデバイス層224とを備える。図1に示された実施形態の基板12、エレクトロルミネセント素子20、および色変換要素30に対して本明細書に記載された設計の問題および可能性の全てが、図3に示された実施形態の基板212、エレクトロルミネセント素子220、および色変換要素230に等しく当てはまる。
【0087】
エレクトロルミネセントデバイス200は、エレクトロルミネセント素子220上に形成された任意選択のブラックマトリクス260をさらに備える。ブラックマトリクス260は、複数の開口262a、262b、および262c(以降、一括して開口262と称される)を備える。図3に示された実施形態は3つの開口262a、262b、および262cを備えるが、ブラックマトリクス260は任意の適した数の開口262を備えることができる。各開口262はいずれの適した形状、例えば、楕円、矩形、多角形等をとってもよい。
【0088】
概して、ブラックマトリクスコーティングは、周辺光を吸収し、コントラストを改良し、そしてTFTを保護するために多くのディスプレイ用途において用いられる。ブラックマトリクス260(典型的に吸収性または非反射性金属、金属酸化物、金属硫化物、染料または顔料など)は、ディスプレイの単独ピクセル、色変換要素、またはカラーフィルターの周りに形成される。多くのディスプレイにおいて、ブラックマトリクス260は、ディスプレイ基板上の黒色酸化クロムの0.1〜0.2μmコーティングである。樹脂ブラックマトリクス(樹脂マトリクス中の顔料)は、黒色酸化クロムに代わる選択肢である。樹脂ブラックマトリクスをディスプレイ基板またはエレクトロルミネセントデバイス上にコーティングすることができ、次いでフォトリソグラフィを用いてパターン化することができる。薄い樹脂ブラックマトリクスコーティングの高い光学濃度を達成するために、フォトリソグラフィを用いてパターン化することが難しいことがある、比較的高い顔料添加量を使用することが典型的に必要である。あるいは、米国特許第6,461,775号明細書(ポコーニィ(Pokorny)ら)に記載されたような熱転写方法を用いてブラックマトリクス260をドナーシートからデバイスに転写することができる。
【0089】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載されたようないずれかの適した技術を用いて各色変換要素230を任意選択のブラックマトリクス260の開口262に転写するように、色変換要素230をエレクトロルミネセント素子220に転写してもよい。例えば、色変換要素230aをブラックマトリクス260の開口262aに転写することができる。
【0090】
エレクトロルミネセントデバイス200は、カラーフィルター250a、250b、および250c(以降、一括してカラーフィルター250と称される)をさらに備える。カラーフィルター250は、1つ以上の色変換要素230上に形成されてもよい。例えば、カラーフィルター250aは、カラーフィルター250aが色変換要素230aと光学結合状態であるように色変換要素230a上に形成される。1つ以上のカラーフィルター250が1つ以上の色変換要素230上に形成されているように示されるが、1つ以上の層またはデバイスがこのようなカラーフィルター250と色変換要素230との間に含有されてもよい。色変換要素230aによって放射された光の少なくとも一部がカラーフィルター250a上に入射し、光がカラーフィルター230aを通してフィルターされる。同様に、カラーフィルター250bは色変換要素230b上に形成される。いくつかの実施形態において、色変換要素と共にカラーフィルターを提供することによって、より飽和されている放射光を提供することができる。
【0091】
さらに、1つ以上のカラーフィルター250がエレクトロルミネセントデバイス220上に形成されてもよい。例えば、カラーフィルター250cは、エレクトロルミネセント素子220と光学結合状態であるように、任意選択のブラックマトリクス260の開口262cにエレクトロルミネセント素子220の第2の電極226上に形成される。いくつかの実施形態において、エレクトロルミネセントデバイスによって放射された青色光がより飽和されるように、フィルターされた青色光を提供することができるカラーフィルター要素が、青色光を放射するエレクトロルミネセント素子上に形成されてもよい。さらに、色変換要素とカラーフィルターとの両方を使用することによって、周辺青色光からの蛍光を低減または除くことができ、従って、ディスプレイのコントラストを増加させることができる。
【0092】
任意の適した材料、例えば、米国特許第5,521,035号明細書(ウルク(Wolk)ら)に記載された材料を用いてカラーフィルター250を形成してもよい。いくつかの実施形態において、エレクトロルミネセント素子220が、紫外線を放射することができるように形成される場合、カラーフィルター250は、紫外線がエレクトロルミネセントデバイス200によって放射されないようにするのを助ける1つ以上の紫外線吸収剤を含有することが好ましい場合がある。さらに、カラーフィルター250は、いずれの適した技術、例えば、コーティング(例えば、スピンコーティング)、印刷(例えば、スクリーン印刷またはインクジェット印刷)、物理的または化学蒸着、フォトリソグラフィ、および熱転写方法(例えば、米国特許第6,114,088号明細書(ウルク(Wolk)ら)に記載された方法)を用いて形成されてもよい。本明細書にさらに記載されるようなLITI技術を用いてカラーフィルター250が形成されることが好ましい場合がある。
【0093】
いくつかの実施形態において、例えば、米国特許第6,485,884号明細書(ウルク(Wolk)ら)および米国特許第5,693,446号明細書(スタラル(Staral)ら)にさらに記載されているように、1つ以上の基板212、1つ以上のデバイス層224、色変換要素230、およびカラーフィルター250を構成して偏光を生じさせてもよい。
【0094】
本明細書に記載されているように、エレクトロルミネセントデバイスは、上面発光(例えば、図1のエレクトロルミネセントデバイス10)または下面発光のどちらであってもよい。下面発光デバイスの1つのこのような実施形態が図4に示されるが、それはエレクトロルミネセントデバイス300の別の実施形態の略図である。エレクトロルミネセントデバイス300は図1のエレクトロルミネセントデバイス10に多くの点において似ている。エレクトロルミネセントデバイス300は、基板312と、基板312の第1の主面314上に形成されたエレクトロルミネセント素子320とを備える。エレクトロルミネセント素子320は、第1の電極322と、第2の電極326と、第1の電極322と第2の電極326との間に位置決めされた1つ以上のデバイス層324とを備える。
【0095】
エレクトロルミネセントデバイス300と図1のエレクトロルミネセントデバイス10との間の1つの相違は、デバイス300が下面発光エレクトロルミネセントデバイスであるということである。この実施形態において、色変換要素330aおよび330b(以降、一括して色変換要素330と称される)は、色変換要素330がエレクトロルミネセント素子320と光学結合状態であるように基板312の第2の主面316上に形成される。換言すれば、エレクトロルミネセント素子320によって放射された光の少なくとも一部が基板312を通過し、少なくとも1つの色変換要素330に入射する。2つだけの色変換要素330が示されているが、エレクトロルミネセントデバイス300は、任意の適した数の色変換要素、例えば、赤色および緑色、赤色、緑色、青色等を備えてもよい。さらに、エレクトロルミネセントデバイス300は、例えば、図3のエレクトロルミネセントデバイス200を参照して本明細書に記載されているように、1つ以上の色変換要素と光学結合状態の、またはエレクトロルミネセント素子と光学結合状態の少なくとも1つのカラーフィルターを備えてもよい。さらに、エレクトロルミネセントデバイス300は、本明細書にさらに記載されるような基板312の第2の主面316上に形成されたブラックマトリクスを備えてもよい。
【0096】
図1の基板12、エレクトロルミネセント素子20、および色変換要素30に対して本明細書に記載された設計の問題および可能性の全てが、図4に示された実施形態の同様な要素に等しく当てはまる。
【0097】
本発明の具体的な実施形態が記載され、本発明の範囲内で可能な変型に対して参照がなされている。本発明のこれらおよび他の変型および変更が本発明の範囲から逸脱することなく実施できることは、当業者には明白であろう。本発明は、ここに示した具体的な実施形態に限定されるものではないことは理解されるはずである。したがって、本発明は、以下に提供される特許請求の範囲によってのみ限定されるものとする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
狭帯域で発光することができるエレクトロルミネセント素子を基板上に形成する工程と、
複数の色変換要素を前記エレクトロルミネセント素子に選択的に熱転写する工程と、
を含む、エレクトロルミネセントデバイスの製造方法。
【請求項2】
前記複数の色変換要素を選択的に熱転写する工程が、
基層と、光−熱変換層と、転写層とを含むドナーシートを提供する工程と、
前記転写層が前記エレクトロルミネセント素子に近接しているように、前記ドナーシートを位置決めする工程と、
前記ドナーシートの一部を選択的に照射して、前記転写層の一部を前記ドナーシートから前記エレクトロルミネセント素子に熱転写する工程と、
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記転写層が、少なくとも1つの色変換材料を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記少なくとも1つの色変換材料が燐光物質を含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
ブラックマトリクスを前記エレクトロルミネセント素子上に形成する工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記ブラックマトリクスを形成する工程が、前記ブラックマトリクスを前記エレクトロルミネセント素子に選択的に熱転写する工程を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記ブラックマトリクスが複数の開口を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
複数の色変換要素を選択的に熱転写する工程が、前記複数の色変換要素の各色変換要素が前記ブラックマトリクスの前記複数の開口の1つの開口に転写されるように、複数の色変換要素を前記エレクトロルミネセント素子に選択的に熱転写する工程を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記基板が複数の独立にアドレス可能な能動デバイスを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記エレクトロルミネセント素子が有機発光材料を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記有機発光材料が発光ポリマーを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記エレクトロルミネセント素子が青色光を放射することができる、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
少なくとも1つのカラーフィルターを前記複数の色変換要素の少なくとも1つの色変換要素に選択的に熱転写する工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記少なくとも1つのカラーフィルターが顔料または染料を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記複数の色変換要素の少なくとも1つの色変換要素が燐光物質を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記複数の色変換要素の少なくとも1つの色変換要素が、前記エレクトロルミネセント素子から放射された光を赤色光に変換することができ、さらに、前記複数の色変換要素の少なくとも1つの色変換要素が、前記エレクトロルミネセント素子から放射された光を緑色光に変換することができる、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
狭帯域で発光することができるエレクトロルミネセント素子を基板の第1の主面上に形成する工程と、
複数の色変換要素を前記基板の第2の主面に選択的に熱転写する工程と、
を含む、エレクトロルミネセントデバイスの製造方法。
【請求項18】
複数の色変換要素を選択的に熱転写する工程が、
基層と、光−熱変換層と、転写層とを含むドナーシートを提供する工程と、
前記転写層が前記基板の前記第2の主面に近接しているように、前記ドナーシートを位置決めする工程と、
前記ドナーシートの一部を選択的に照射して、前記転写層の一部を前記ドナーシートから前記基板の前記第2の主面に熱転写する工程と、
を含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
ブラックマトリクスを前記基板の前記第2の主面上に形成する工程をさらに含む、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記ブラックマトリクスが複数の開口を含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
複数の色変換要素を選択的に熱転写する工程が、前記複数の色変換要素の各色変換要素が前記ブラックマトリクスの前記複数の開口の1つの開口に転写されるように、複数の色変換要素を前記基板の前記第2の主面に選択的に熱転写する工程を含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記基板が、複数の独立にアドレス可能な能動デバイスを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項23】
前記エレクトロルミネセント素子が有機発光材料を含む、請求項17に記載の方法。
【請求項24】
前記有機発光材料が発光ポリマーを含む、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記エレクトロルミネセント素子が青色光を放射することができる、請求項17に記載の方法。
【請求項26】
少なくとも1つのカラーフィルターを前記複数の色変換要素の少なくとも1つの色変換要素に選択的に熱転写する工程をさらに含む、請求項17に記載の方法。
【請求項27】
前記少なくとも1つのカラーフィルターが顔料または染料を含む、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記複数の色変換要素の少なくとも1つの色変換要素が燐光物質を含む、請求項17に記載の方法。
【請求項29】
前記複数の色変換要素の少なくとも1つの色変換要素が、前記エレクトロルミネセント素子から放射された光を赤色光に変換することができ、さらに、前記複数の色変換要素の少なくとも1つの色変換要素が、前記エレクトロルミネセント素子から放射された光を緑色光に変換することができる、請求項17に記載の方法。
【請求項30】
狭帯域で発光することができるエレクトロルミネセント素子を基板上に形成する工程と、
保護層を前記エレクトロルミネセント素子の少なくとも一部の上に形成する工程と、
複数の色変換要素を前記保護層に選択的に熱転写する工程と、
を含む、エレクトロルミネセントデバイスの製造方法。
【請求項31】
前記保護層が誘電体材料を含む、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記少なくとも1つのエレクトロルミネセントデバイスを基板上に形成する工程を含み、前記少なくとも1つのエレクトロルミネセントデバイスを形成する工程が、
狭帯域で発光することができるエレクトロルミネセント素子を前記基板上に形成する工程と、
複数の色変換要素を前記エレクトロルミネセント素子に選択的に熱転写する工程と、
を含む、少なくとも1つのエレクトロルミネセントデバイスを含むエレクトロルミネセントカラーディスプレイの製造方法。
【請求項33】
紫外線を放射することができるエレクトロルミネセント素子を基板上に形成する工程と、
複数の色変換要素を前記エレクトロルミネセント素子に選択的に熱転写する工程と、
を含む、エレクトロルミネセントデバイスの製造方法。
【請求項34】
基板と、
前記基板上にあって、狭帯域で発光することができるエレクトロルミネセント素子と、
前記エレクトロルミネセント素子上の複数の色変換要素と、
前記複数の色変換要素の少なくとも1つの色変換要素上の少なくとも1つのカラーフィルターと、
を含むエレクトロルミネセントデバイス。
【請求項35】
前記複数の色変換要素の少なくとも1つの色変換要素が燐光物質を含む、請求項34に記載のエレクトロルミネセントデバイス。
【請求項36】
前記エレクトロルミネセント素子上にブラックマトリクスをさらに含む、請求項34に記載のエレクトロルミネセントデバイス。
【請求項37】
前記ブラックマトリクスが複数の開口を含む、請求項36に記載のエレクトロルミネセントデバイス。
【請求項38】
前記基板が、複数の独立にアドレス可能な能動デバイスを含む、請求項34に記載のエレクトロルミネセントデバイス。
【請求項39】
前記エレクトロルミネセント素子が有機発光材料を含む、請求項34に記載のエレクトロルミネセントデバイス。
【請求項40】
前記有機発光材料が発光ポリマーを含む、請求項39に記載のエレクトロルミネセントデバイス。
【請求項41】
前記エレクトロルミネセント素子が青色光を放射することができる、請求項34に記載のエレクトロルミネセントデバイス。
【請求項42】
前記少なくとも1つのカラーフィルターが顔料または染料を含む、請求項34に記載のエレクトロルミネセントデバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−43805(P2012−43805A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−225865(P2011−225865)
【出願日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【分割の表示】特願2006−541330(P2006−541330)の分割
【原出願日】平成16年11月16日(2004.11.16)
【出願人】(308040351)三星モバイルディスプレイ株式會社 (764)
【氏名又は名称原語表記】Samsung Mobile Display Co., Ltd.
【住所又は居所原語表記】San #24 Nongseo−Dong,Giheung−Gu,Yongin−City,Gyeonggi−Do 446−711 Republic of KOREA
【Fターム(参考)】