説明

エレクトロルミネッセンスパネル及びその製造方法

【課題】一枚のガラス基板上に複数の発光部を形成した後、スクライブ・アンド・ブレイク法により個々のELパネルに分断してELパネルを製造する場合に、スクライブ代を小さくすることができ、同じ面積の発光部を有するELパネルの面取り数を増加することができるELパネルを提供する。
【解決手段】有機ELパネル11は、ガラス基板12上に第1電極13と第2電極15との間に有機EL層14が設けられた有機EL素子16が設けられ、有機EL素子16を覆うようにスクライブ・アンド・ブレイク法により分断可能な無機材料製の保護膜17が設けられている。有機ELパネル11は、保護膜17の部分で分断されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレクトロルミネッセンスパネル及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、液晶パネル等の表示パネルの製造には、大版のガラス基板を貼り合わせた積層母基板(マザーパネル)からスクライブ・アンド・ブレイクという方法を用いて個々の製品寸法に分割する多面取りが採用されている(例えば、特許文献1参照)。そして、マザーパネルを個々のパネルに分断する場合、マザーパネルを構成する一方のガラス基板にスクライブ線(スクライブ溝)を加工する。次いで、マザーパネルの表裏を反転した後、スクライブ線が加工されなかった他方のガラス基板側のスクライブ線に沿った位置に押圧力を加えることにより、スクライブ線に沿ってブレイク(分断)する。
【0003】
また、液晶表示装置のバックライトとしてエレクトロルミネッセンス素子(エレクトロルミネッセンスパネル)を備えた照明装置が提案されている。以下、エレクトロルミネッセンスを適宜ELと記載する。ELパネルは、陽極と陰極との間に発光層が設けられたEL素子がガラス基板上に形成されている。発光層が有機物質で形成された有機ELパネルの場合、発光層が水分や酸素による悪影響を受け易いため、有機ELパネルは、有機EL素子が形成されたガラス基板と、シール用のガラス基板とが封止材を介して貼り合わされた構成となっている。
【0004】
有機ELパネルとして、発光層が水分や酸素による悪影響を受けるのを防止するため、ガラス基板上に積層形成された陽極、発光層及び陰極を覆うように保護膜を形成する構成のものも提案されている。
【特許文献1】特開2004−348111号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記保護膜を備えた有機ELパネルは、まだ実用化されていない。保護膜を備えた有機ELパネルを多面取りで形成する場合、個々の有機ELパネルに対応する形状に保護膜をパターニングした後、保護膜の形成されていない部分において、ガラス基板をスクライブ・アンド・ブレイク法で分断することが考えられる。しかし、保護膜の形成されていない部分で分断する場合は、スクライブ代、即ちEL素子の周縁からスクライブ線が形成される位置までの距離が大きくなり、1枚のガラス基板におけるELパネルの面取り数を多くするのが難しくなる。なぜならば、保護膜をパターニングして形成する場合、パターンの周縁部が薄く成るため、保護に必要な厚さの部分の周囲にそれより厚さの薄い部分が形成されて、保護膜のパターンが大きくなるからである。
【0006】
また、スクライブ代を小さくするため、図6に示すように、ガラス基板41上に形成された有機EL素子42を覆う保護膜43上からスクライブを行う方法が考えられる。なお、保護膜43の表面には保護フィルム44が貼付されている。しかし、保護膜43上からカッター45により二点差線で示す位置においてスクライブを行うと、保護膜43が粉となって飛び散り、ガラス基板41にクラックが垂直に形成されない。また、ガラス基板41の破断面が荒れた状態となり、外形精度のばらつきが大きくなったり、ガラス基板41の横からの応力に弱くなってひび割れし易くなるという問題もある。
【0007】
本発明は、前記の問題に鑑みてなされたものであって、その目的は一枚のガラス基板上に複数の発光部を形成した後、スクライブ・アンド・ブレイク法により個々のELパネルに分断してELパネルを製造する場合に、スクライブ代を小さくすることができるELパネル及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記の目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、ガラス基板と、前記ガラス基板上に設けられ、第1電極と第2電極との間にエレクトロルミネッセンス発光層が設けられた発光部と、前記発光部を覆うように設けられたスクライブ・アンド・ブレイク法により分断可能な無機材料製の保護膜と、前記保護膜の部分で分断されていることとを備えている。ここで、「スクライブ・アンド・ブレイク法により分断可能な保護膜」とは、保護膜にスクライブ線を形成して分断するのではなく、ガラス基板の保護膜と対応する部分にスクライブ線を形成した状態で、保護膜側からガラス基板に押圧力を作用させてガラス基板と共にブレイク(分断)可能な保護膜を意味する。
【0009】
この発明のELパネルを製造する場合、保護膜の部分を発光部の形状に対応して正確にパターニングする必要が必ずしも無く、多面取りのためにガラス基板(マザー基板)をスクライブ・アンド・ブレイク法により個々のELパネルに分断してELパネルを製造する場合に、スクライブ代を小さくすることができる。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記保護膜は、窒化ケイ素膜、酸窒化ケイ素膜及び酸化ケイ素膜の少なくとも一つを備えている。この発明では、スクライブ・アンド・ブレイク法により分断可能な保護膜を確実に形成できる。
【0011】
請求項3に記載の発明は、ガラス基板上に、第1電極と第2電極との間にエレクトロルミネッセンス発光層が設けられた発光部を複数箇所に形成し、その後、前記発光部を覆う保護膜を設けた後、ガラス基板を各発光部を含む領域に分断して複数のエレクトロルミネッセンスパネルに分割するエレクトロルミネッセンスパネルの製造方法である。そして、前記ガラス基板上に発光部を複数箇所に形成する工程の後に、前記発光部を覆うようにスクライブ・アンド・ブレイク法により分断可能な無機材料製の保護膜を形成する保護膜形成工程を備えている。また、前記保護膜形成工程の後に、前記保護膜と対応する部分において前記ガラス基板の前記保護膜が形成された面と反対側の面にスクライブ線を形成するスクライブ工程と、ガラス基板を保護膜とともにスクライブ線に沿って分断するブレイク工程とを備えている。
【0012】
この発明では、ガラス基板上に発光部が複数箇所に形成された後、保護膜が形成される。そして、保護膜と対応する部分において、ガラス基板にスクライブ線が形成された後、ブレイク工程でスクライブ線に沿って保護膜がガラス基板と共に分断される。従って、保護膜の部分を発光部の形状に対応して正確にパターニングする必要が必ずしも無く、多面取りのためにガラス基板をスクライブ・アンド・ブレイク法により個々のELパネルに分断してELパネルを製造する場合に、スクライブ代を小さくすることができる。また、ガラス基板の大きさによっては、同じ面積の発光部を有するELパネルの面取り数を増加することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、一枚のガラス基板上に複数の発光部を形成した後、スクライブ・アンド・ブレイク法により個々のELパネルに分断してELパネルを製造する場合に、スクライブ代を小さくすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明をELパネルとしての有機ELパネルに具体化した一実施形態を図1〜図4に従って説明する。
図1に示すように、有機ELパネル11は、 ガラス基板12と、ガラス基板12上に順に、第1電極13、エレクトロルミネッセンス発光層としての有機EL層14及び第2電極15が設けられたEL素子としての有機EL素子16が設けられている。有機EL素子16は、発光部として設けられている。有機EL素子16は、有機EL層14が水分(水蒸気)及び酸素の悪影響を受けないように、保護膜17で被覆されている。そして、保護膜17の有機EL素子16と対向する面と反対側の面のほぼ全体を覆うように保護フィルム18が貼付されている。
【0015】
なお、図1は、有機ELパネル11、ガラス基板12、第1電極13、有機EL層14、第2電極15、保護膜17、保護フィルム18等の構成を模式的に示したものであり、図示の都合上、一部の寸法を誇張して分かり易くしているために、それぞれの部分の長さ、厚さ等の寸法の比は実際の比と異なっている。
【0016】
この実施形態では、第1電極13が陽極を構成し、第2電極15が陰極を構成する。第1電極13は、透明な材料で形成されている。ここで、「透明」とは、少なくとも可視光を透過可能なことを意味する。第1電極13は、公知の有機EL素子で透明電極として用いられるITO(インジウム錫酸化物)により形成されている。第2電極15は、金属(例えば、アルミニウム)で形成され、光を反射する機能を有する。有機EL素子16は、有機EL層14からの光がガラス基板12側から取り出される(出射される)所謂ボトムエミッションタイプに構成されている。
【0017】
有機EL層14は、公知の有機EL材料を用いて形成され、例えば、第1電極13側から順に正孔輸送層、発光層及び電子輸送層が積層されて形成されている。有機EL層14は、白色発光を行うように構成され、有機ELパネル11を液晶表示装置のバックライトとして使用する場合、カラーフィルタを使用したフルカラー表示に対応できるようになっている。白色発光を行う構成としては、公知の構成、例えば、赤、緑、青に発光する層を平面的に微細に塗り分けて全体として白色発光とする構成、赤、緑、青に発光する層を積層して全体として白色発光とする構成、赤、緑、青の色素をホスト分子あるいは高分子中に分散させる構成等がある。
【0018】
保護膜17は、第1保護膜17a及び第2保護膜17bの2層構成で構成されている。第1保護膜17aは、有機EL素子16側に設けられ、有機EL素子16のガラス基板12と対向する部分以外を覆うように形成されている。第2保護膜17bは、第1保護膜17aの有機EL素子16と対向する面と反対側の面を覆うように形成されている。
【0019】
保護膜17は、スクライブ・アンド・ブレイク法により分断可能な無機材料製、例えばセラミック製である。この実施形態では、第1保護膜17aは窒化ケイ素膜で形成され、第2保護膜17bは酸化ケイ素膜で形成されている。そして、保護膜17は、スクライブ・アンド・ブレイク法によりブレイク(分断)された分断面を備えている。
【0020】
保護フィルム18は、プラスチックフィルムで形成され、この実施形態では、例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルム(PETフィルム)が使用されている。
次に前記のように構成された有機ELパネル11の製造方法を説明する。
【0021】
先ずステップS1の有機EL素子形成工程において、有機ELパネル11を複数枚面取り可能な大きさのガラス基板12上の複数箇所に有機EL素子16を形成する。有機EL素子16の形成には公知の方法が使用される。例えば、ITO膜が形成された透明なガラス基板12を準備する。このITO膜に対してエッチングを行い、第1電極13を形成する。次にガラス基板12及び第1電極13の洗浄を行った後、第1電極13を覆うように、有機EL層14を形成する。有機EL層14は、例えば、蒸着法で形成され、有機EL層14を構成する各層が蒸着により順次積層されることで形成される。その後、アルミニウムの蒸着により有機EL層14上に第2電極15を形成する。
【0022】
次にステップS2において、有機EL素子16を覆うように、第1保護膜17aをパターニングせずに形成する。第1保護膜17aは、窒化ケイ素膜で形成されている。第1保護膜17a膜は、例えば、プラズマCVD法で形成される。
【0023】
次にステップS3において、第1保護膜17aを覆うように、第2保護膜17bをパターニングせずに形成する。第2保護膜17bは、酸化ケイ素膜で形成されている。第2保護膜17b膜は、例えば、ポリシラザン溶液を第1保護膜17aの表面に塗布後、酸化処理により得られる酸化ケイ素膜により形成される。
【0024】
ステップS2及びステップS3により、有機EL素子16を覆うようにスクライブ・アンド・ブレイク法により分断可能な無機材料製の保護膜17をパターニングせずに形成する保護膜形成工程が構成される。保護膜17はパターン化されずガラス基板12の片面全体に形成されるため、パターン化して形成する場合に比較して製作が容易になる。また、保護膜17はパターン化されずに形成されるため、ガラス基板12上に形成された複数の有機EL素子16間における保護膜17の厚さはほぼ均一になる。
【0025】
次にステップS4の保護フィルム貼付工程において、第2保護膜17b上の各有機EL素子16と対応する箇所に保護フィルム18を貼付する。
以上で図3に示すように、複数の有機ELパネル11が二点差線で示す分断位置で個々の有機ELパネル11に分断される前のマザーパネル20が形成される。
【0026】
次にステップS5のスクライブ工程において、マザーパネル20におけるガラス基板12の保護膜17が形成された面と反対側の面にスクライブ線を形成する。図4に示すように、マザーパネル20は、保護フィルム18の部分においてスクライバー定盤21により吸着された状態に保持され、スクライブ線22は、カッター23により有機EL素子16の端部から予め設定された距離L離れた位置に形成される。カッター23には、例えば、ダイヤモンドカッターが使用される。マザーパネル20を個々の有機ELパネル11に分断するのに必要な全てのスクライブ線22が、順次形成される。
【0027】
次にステップS6のブレイク工程において、マザーパネル20を個々の有機ELパネル11に分断する。詳述すれば、マザーパネル20をガラス基板12側において吸着した状態で保持し、各スクライブ線22と対応する位置において、順次保護膜17側からガラス基板12に押圧力を加えてガラス基板12を保護膜17とともにスクライブ線22に沿って分断する。「押圧力を加えて」とは、ガラス基板に表面と垂直方向の成分を有する状態で力を加えることを意味し、ゆっくり力を加えることに限らず、叩いて短時間で衝撃的に力を加えることも含む。以上により、有機ELパネル11が完成する。
【0028】
次に前記のように構成された有機ELパネル11の作用について説明する。有機ELパネル11は、例えば、液晶表示装置のバックライトとして使用される。
有機ELパネル11は、図示しない電源から第1電極13及び第2電極15間に直流駆動電圧が印加されると、第1電極13、有機EL層14、第2電極15へと電流が流れる。この時、有機EL層14が発光し、その光は透明電極である第1電極13を経てガラス基板12側から外部に取り出される。
【0029】
有機EL層14が、水分及び酸素の悪影響を受けるのを防止するため、有機EL素子16が保護膜17で覆われている。保護膜17は、CVD法で形成された窒化ケイ素膜からなる第1保護膜17aと、ポリシラザンの塗布及び酸化処理で形成された酸化ケイ素膜からなる第2保護膜17bとで構成されている。CVD法で形成された膜は塗布で形成された膜に比較して、所定の保護性能を満たす厚さの膜を形成するのに時間がかかり、あまり薄いとピンホールが発生し易い。しかし、この実施形態では、保護膜17は、塗布及び酸化処理で形成された第2保護膜17bを備えているため、同じ保護性能の保護膜17を短時間で形成できる。
【0030】
この実施形態では以下の効果を有する。
(1)有機ELパネル11は、ガラス基板12と、ガラス基板12上に設けられ、第1電極13と第2電極15との間に有機EL層14が設けられた有機EL素子16と、有機EL素子16を覆うように設けられたスクライブ・アンド・ブレイク法により分断可能な無機材料製の保護膜17とを備えている。そして、保護膜17の部分で分断されている。従って、有機ELパネル11を製造する場合、保護膜17の部分を有機EL素子16の形状に対応して正確にパターニングする必要が必ずしも無く、多面取りのためにガラス基板12をスクライブ・アンド・ブレイク法により個々の有機ELパネル11に分断して有機ELパネル11を製造する場合に、スクライブ代を小さくすることができる。また、有機ELパネル11の小型化に寄与することができる。
【0031】
(2)保護膜17は、窒化ケイ素膜で形成された第1保護膜17aと、酸化ケイ素膜で形成された第2保護膜17bとで構成されている。従って、必要な保護性能を備え、スクライブ・アンド・ブレイク法により分断可能な保護膜17を確実に形成できる。
【0032】
(3)有機ELパネル11の製造方法は、ガラス基板12上に発光部(有機EL素子16)を複数箇所に形成する工程の後に、有機EL素子16を覆うようにスクライブ・アンド・ブレイク法により分断可能な無機材料製の保護膜17をパターニングせずに形成する保護膜形成工程を備えている。従って、保護膜17を各有機EL素子16に対応してパターン化して形成する場合に比較して製作が容易になる。また、保護膜17がパターン化されずに形成されるため、ガラス基板12上に形成された複数の有機EL素子16間における保護膜17の厚さをほぼ均一にすることができる。したがって、マザーパネル20から個々の有機ELパネル11を分断する際、保護膜17をパターニングして形成する場合と異なり、スクライブ線22を隣接する有機ELパネル11の間に1本形成して分断することが可能となり、隣接する有機EL素子16の距離を近づけることができる。その結果、同じ面積のガラス基板12において、有機ELパネル11の面取り数の増加が容易になる。
【0033】
(4)有機ELパネル11の製造方法は、前記保護膜形成工程の後に、保護膜17と対応する部分においてガラス基板12の保護膜17が形成された面と反対側の面にスクライブ線22を形成するスクライブ工程を備えている。そして、スクライブ線22が形成されたガラス基板12に押圧力を加えてガラス基板12を保護膜17とともにスクライブ線22に沿って分断するブレイク工程とを備えている。従って、スクライブ代を小さくすることができる。また、ガラス基板12の大きさによっては、同じ面積の有機EL素子16を有する有機ELパネル11の面取り数を増加することができる。
【0034】
(5)保護膜17は、CVD法で形成される窒化ケイ素膜製の第1保護膜17aと、ポリシラザンの酸化処理等で形成される酸化ケイ素膜製の第2保護膜17bとから構成されている。従って、必要な保護性能を備えた保護膜17を第1保護膜17aのみで構成する場合に比較して、生産性が向上する。
【0035】
実施形態は前記に限定されるものではなく、例えば、次のように構成してもよい。
○ 保護膜17は、スクライブ・アンド・ブレイク法により分断可能な無機材料製で、必要な保護性能を満たす構成であればよく、窒化ケイ素製の第1保護膜17aと酸化ケイ素製の第2保護膜17bとの二層構造に限らない。例えば、窒化ケイ素膜、酸窒化ケイ素膜及び酸化ケイ素膜の少なくとも一つを備えている構成でもよい。保護膜17をケイ素系セラミックスで形成した場合は、ガラス基板12との親和性が良く、スクライブ・アンド・ブレイク法により分断し易い。
【0036】
○ 酸化ケイ素膜はポリシラザンの塗布及び酸化処理により形成する方法に限らず、CVD法で形成してもよい。保護膜17を酸化ケイ素膜の一層構成とする場合は、ポリシラザンの塗布及び酸化処理により形成する方法以外の方法が好ましい。なぜならば、ポリシラザン溶液を塗布する際に、有機EL層14に悪影響を及ぼす虞がある。二層以上の構成で、第2層目以降の膜として酸化ケイ素膜を使用する場合は、ポリシラザンの塗布及び酸化処理により形成する方法が使用できる。
【0037】
○ 図5に示すように、保護膜17をガラス基板12上に形成された各有機EL素子16と対応する形状になるようにパターニングして形成する。そして、第1保護膜17a及び第2保護膜17bの重なる部分で有機EL素子16の端部から所定距離離れた位置において、ガラス基板12の保護膜17と反対側の面にスクライブ線22を形成する。その後、マザーパネル20をガラス基板12側からスクライバー定盤21で吸着保持し、保護膜17側から押圧力を加えて、分断してもよい。
【0038】
○ 1枚のマザーパネル20上に複数行、複数列に分断前の有機ELパネル11が存在する場合、全てのスクライブ線22を形成した後、マザーパネル20の端から順にブレイクする方法に限らない。例えば、先ず行あるいは列の一方のスクライブ線22を形成して、マザーパネル20を1列分あるいは1行分の有機ELパネル11が連続する大きさにブレイクし、次に各有機ELパネル11に対応するスクライブ線22を形成して、ブレイクするようにしてもよい。
【0039】
○ 保護フィルム18を省略してもよい。
○ 第1電極13は、ITOに限らず、IZO(インジウム亜鉛酸化物)、ZnO(酸化亜鉛)、SnO(酸化錫)等を用いることができる。
【0040】
○ 第2電極15は、アルミニウムに限らず、従来用いられている公知の陰極材料等が使用でき、例えば、金、銀、銅、クロム等の金属やこれらの合金等が用いられる。
○ 第2電極15は光反射機能を備えていなくてもよい。
【0041】
○ 有機ELパネル11はガラス基板12側から光を出射する構成に限らず、ガラス基板12と反対側から光を出射する所謂トップエミッションタイプの構成としてもよい。この場合、有機EL素子16は、有機EL層14を挟んでガラス基板12と反対側に透明な電極、例えば第1電極13が形成され、ガラス基板12側に第2電極15が形成される。
【0042】
○ 有機EL層14は白色発光を行う構成に限らず、例えば、赤や青や緑や黄色等の単色光若しくは、その組み合わせを発光する構成としてもよい。
○ ELパネルは、有機ELパネル11に限らず、EL発光層として有機EL層14に代えて無機EL層を有する無機EL素子を備えた構成としてもよい。
【0043】
○ バックライトや照明用の全面発光を行うELパネルに限らず、部分発光可能な表示ディスプレイ用のELパネルに適用してもよい。
○ 有機ELパネル11の分断方法は、ステップS6のように、スクライブ線が形成された面と反対側の面から押圧力を加えてブレイク(分断)する方法に限らない。単にスクライブ線を形成するのみで分断できる構成であってもよい。
【0044】
以下の技術的思想(発明)は前記実施形態から把握できる。
(1)請求項2に記載の発明において、前記保護膜は2層構成で、前記発光部側に設けられる第1保護膜は窒化ケイ素膜で形成され、前記第1保護膜を覆う第2保護膜は酸化ケイ素膜で形成されている。
【0045】
(2)請求項3に記載の発明において、前記ブレイク工程は、スクライブ線が形成された面と反対側の面から前記ガラス基板に押圧力を加える。
(3)請求項3に記載の発明において、前記保護膜形成工程は、第1の保護膜形成工程と第2の保護膜形成工程を備え、第1の保護膜形成工程ではCVD法により第1保護膜を形成し、第2の保護膜形成工程ではポリシラザン溶液の塗布及び酸化処理により第2保護膜を形成する。
【0046】
(4)請求項1〜請求項3及び前記技術的思想(1)〜(3)のいずれか一項に記載の発明において、前記EL発光層は、有機EL発光層である。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】一実施形態の有機ELパネルの模式断面図。
【図2】有機ELパネルの製造手順を示すフローチャート。
【図3】分断前のマザーパネルの模式斜視図。
【図4】分断前のマザーパネルの部分模式断面図。
【図5】別の実施形態における分断前のマザーパネルの部分模式断面図。
【図6】従来技術における分断前のマザーパネルの部分模式断面図。
【符号の説明】
【0048】
S2,S3…保護膜形成工程を構成するステップ、S5…スクライブ工程を構成するステップ、S6…ブレイク工程を構成するステップ、11…ELパネルとしての有機ELパネル、12…ガラス基板、13…第1電極、14…EL発光層としての有機EL層、15…第2電極、16…発光部としての有機EL素子、17…保護膜、22…スクライブ線。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス基板と、
前記ガラス基板上に設けられ、第1電極と第2電極との間にエレクトロルミネッセンス発光層が設けられた発光部と、
前記発光部を覆うように設けられたスクライブ・アンド・ブレイク法により分断可能な無機材料製の保護膜と、
前記保護膜の部分で分断されていることと
を備えたエレクトロルミネッセンスパネル。
【請求項2】
前記保護膜は、窒化ケイ素膜、酸窒化ケイ素膜及び酸化ケイ素膜の少なくとも一つを備えている請求項1に記載のエレクトロルミネッセンスパネル。
【請求項3】
ガラス基板上に、第1電極と第2電極との間にエレクトロルミネッセンス発光層が設けられた発光部を複数箇所に形成し、その後、前記発光部を覆う保護膜を設けた後、ガラス基板を各発光部を含む領域に分断して複数のエレクトロルミネッセンスパネルに分割するエレクトロルミネッセンスパネルの製造方法であって、
前記ガラス基板上に発光部を複数箇所に形成する工程の後に、前記発光部を覆うようにスクライブ・アンド・ブレイク法により分断可能な無機材料製の保護膜を形成する保護膜形成工程と、
前記保護膜形成工程の後に、前記保護膜と対応する部分において前記ガラス基板の前記保護膜が形成された面と反対側の面にスクライブ線を形成するスクライブ工程と、
前記ガラス基板を前記保護膜とともに前記スクライブ線に沿って分断するブレイク工程と
を備えているエレクトロルミネッセンスパネルの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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