説明

エレクトロルミネッセンス装置の強化された対向電極

本発明は、基板(1)を有し、第1の透明な電極(2)、エレクトロルミネッセンス積層構造(3)及び第2の電極(4)の順に前記基板上に積層されるエレクトロルミネッセンス装置を提供する。更に、エレクトロルミネッセンス装置は、前記第2の電極の下に及び/又は前記第2の電極の上部に位置し、前記第2の電極の硬度より高い硬度を有する、少なくとも1つの付加的な硬い層(5)を更に有する。そのようなエレクトロルミネッセンス装置の製造方法も同様に提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、OLED装置等のエレクトロルミネッセンス装置の分野であって、対向電極が、対向電極の硬度より高い硬度を有する少なくとも1つの層により強化されている、エレクトロルミネッセンス装置の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のエレクトロルミネッセンス(EL)装置は通常、光が出射されるガラス又は高分子フォイル等の透明な基板上に電極及び必要な薄いエレクトロルミネッセンス層を堆積することにより形成される。約2乃至10Vの電圧が2つの電極間に印加されるとき、エレクトロルミネッセンス層又はその複数の層の積層構造は発光する。
【0003】
そのようなEL装置においては、通常、基板電極と呼ばれ、また通常、アノードとも呼ばれる基板上に堆積された電極は、導電性であるが、光透過性の酸化物であって、通常ITO(Indium−Tin Oxide)の薄膜として堆積される。通常、対向電極と呼ばれ、また通常、カソードを構成する、基板電極に対向する電極は一般に、エレクトロルミネッセンス層の堆積後に、約100nmの厚さを有するアルミニウム又は銀の層の蒸着により形成される。
【0004】
他の種類のEL装置においては、不透明なアルミニウム電極が、半透明な薄い銀の電極により置き換えられる。この場合、約2/3の、即ち、約66%の透過率を有する透明なEL装置が形成され得る。それらのEL装置は、基板を透過して前面と、銀の電極を透過して背面との両方から、光を出射する。
【0005】
両方の種類の対向電極は傷つき易く、故に、例えば、EL装置を引っかくことなく、従って、損傷することなく、EL装置と電気的に接触するように、ワイヤ等により接触させることはできない。このような対向電極の傷つき易さは、導体及び/又は光リフレクタとして用いられる柔らかい金属によるものである。そのような対向電極の特性は特に、次のような不利な結果に繋がる。
【0006】
導電性接合剤により対向電極を接触させることは、又は両方の電極間に特定な接合剤又は保護用の絶縁層を必要とし、そうでなければ、短絡してしまう。
【0007】
EL装置と共にしばしば、用いられるカバー蓋が、僅かであっても対向電極と接触するとき、短絡が起こる。
【0008】
ゲッタ材料が対向電極と接触するとき、短絡が起こる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、強化された、故に、傷つき難い対向電極をEL装置に備えることである。本発明の更なる目的は、そのようなEL装置を形成する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この目的は、同日提出の特許請求の範囲に従ったEL装置及び方法により達成される。特に、EL装置は、基板を有し、第1の透明電極、エレクトロルミネッセンス積層構造及び第2の電極が、その記載順に基板上に積層され、EL装置は更に、a)第2の電極の下に及び/又は第2の電極の上に位置付けられ、b)第2の電極の硬度より高い硬度を有する、少なくとも1つの付加的な硬い層を更に有する。そのような少なくとも1つの付加的な硬い層により、第2の電極、即ち、対向電極は有利に、強化され、その結果、傷つき難い対向電極が得られる。
【0011】
更に、付加的な硬い層は、短絡が回避されるEL装置のアセンブリを可能にする。特に、実際には有効な任意の導電性接合剤を使用して、対向電極と接触させることが可能になる。従来のEL装置を有する場合、両方の電極間に付加的な保護のための絶縁層が必要である接合剤が使用され得る。更に、付加的な硬い層は、それがカバー蓋及び/又はゲッタ材料と接触するとき、対向電極への損傷を回避する。更に、傷つき難い対向電極のために、ここで、適切な動作を調べるためにEL装置をプローブと接触させることが可能である。これは、機能障害を起こしたEL装置又は低い品質のEL装置を選び出すために、EL装置の製造中には、かなり有利である。
【0012】
EL装置は、当業者が知っている任意のEL装置及び/又はエレクトロルミネッセンスダイオードに基づいて光を生成する任意の装置であり得る。好適には、EL装置は、有機EL装置、即ち、OLED装置である。更なる実施形態においては、本発明のEL装置は、光源、ランプとして用いられ、又は光源、ランプにより構成され、又は、モニタ、スイッチ又はディスプレイにより構成されることが可能である。従って、本発明のEL装置を有する光源、ランプ、モニタ、スイッチ及びディスプレイも、本発明に包含される。
【0013】
以下に、基板を有し、その基板上に積層された第1の透明電極、有機エレクトロルミネッセンス積層構造及び第2の電極が積層された有機EL装置の基本的な構造について、説明する。しかしながら、EL装置の種々の他の基本的構造、特に、有機EL装置については、当業者に知られていて、それらのすべてが本発明に包含されるとして意図されている。
【0014】
例示としての基本的なEL装置は、2つの電極、即ち、アノード及びカソードを有し、アノードは通常、ガラス又はフレキシブルなポリエチレンテレフタレート(PET)等の基板上に備えられる。透明な基板電極の上部に、少なくとも一種類のEL分子を有する少なくとも1つの発光層を有するEL積層構造が備えられる。対向電極としての役割を果たす第2の電極、即ち、カソードが、前記エレクトロルミネッセンス積層構造の上部に備えられる。当業者は、種々の他の層、例えば、アノードと接触することが可能である正孔輸送層、カソードと接触することが可能である電子輸送層、正孔注入層であって、アノードと正孔輸送層との間に備えられた、好適にはpoly(3,4−ethylendioxythiophene)/polystyrolsulfonate(PEDOT/PSS)から成る、正孔注入層、及び/又は電子注入層であって、電子輸送層とカソードとの間に備えられた、好適にはフッ化リチウム又はフッ化セシウムから成るかなり薄い層である、電子注入層、がそのようなEL装置の製造のために組み込まれ得ることを知っている。更に、当業者は、EL積層構造が、2つ以上の発光層が存在するEL積層構造を有することが可能であることを知っている。
【0015】
一実施形態においては、EL装置はOLED装置であり、即ち、エレクトロルミネッセンス発光層は有機分子を有する。更なる好適な実施形態においては、有機分子は、高分子(PLED)又は小さい分子(SMOLED)を有する。本発明は、EL装置においてエレクトロルミネッセンス分子として用いるために適切であるように与えられる特定の有機分子に限定されるものではない。種々のエレクトロルミネッセンス分子及び/又は有機エレクトロルミネッセンス分子が当業者に知られていて、それらのすべてを、本発明が包含するように意図されている。本発明で用いられているように、“エレクトロルミネッセンス分子”は好適には、“有機エレクトロルミネッセンス分子”を意味する。好適な実施形態においては、高分子(PLED)は、poly(p−phenylen−vinyl)の誘導体等の共役高分子であり、例えば、小さい分子(SMOLED)は、Alq3等の有機金属キレート及び/又は共役デンドリマーである。
【0016】
基板は好適には、透明であり、当業者が知っている任意の適切な材料から構成されることが可能である。本発明においては、用語“透明な”は、所与の材料、例えば、基板又は電極において可視光の光を50%以上透過することをいう。残りの光は、故に、反射及び/又は吸収される。“透明な”は、可視光を10%乃至50%の範囲内で透過する材料についていう“半透明な”を含む。従って、“透明な”材料を参照するときはいつでも、この“透明な”の記載は、“半透明な”が記載されていない場合でも、“半透明な”も明確に開示していることになる。好適には、可視領域の光は、450nm乃至700nmの範囲内の波長を有する。従って、例えば、透明な基板又は電極は、入射光の50%以下を吸収する及び/又は反射する。
【0017】
本発明の好適な実施形態においては、基板は、ガラス、プラスチック、セラミックスから成り、並びに/若しくは、金及び銀の少なくとも1つを有する。基板についての更なる好適な材料は、高分子シート又はフォイルであって、より好適には、湿気及び/又は酸素がEL装置に基本的に入り込まないように、適切な湿気及び酸素バリアを有する。基板は、例えば、光取り出しの改善等の光学的目的で、付加的な層を更に有することが可能である。
【0018】
基板は、任意の適切な幾何学的構成、形状又は構造を有することが可能であり、フレキシブルな材料が使用される場合には、必要な任意の三次元形状に成形される又は曲げられることが可能である。
【0019】
電極は、当業者が知っている任意の適切な材料から成ることが可能である。
【0020】
好適な実施形態においては、第1の電極、即ち、基板電極は透明な電極である。本発明の更なる好適な実施形態においては、基板電極は、透明な導電性酸化物(TCO)であって、より好適には、ITO(Indium−Tin Oxide)、ZnO又はドープドZnOを有する。任意に、基板電極は、基板から電極に移動可能な原子又はイオンの拡散を有利に抑制するように、SiO及び/又はSiOがアンダーコートされる。TCOを有する電極は、好適には60%以上且つ100%以下の、より好適には70%以上且つ90%以下の、最も好適には約80%の透過率を有する。
【0021】
本発明の更なる実施形態においては、第2の電極、即ち、対向電極は、非透明なAl電極若しくは透明なAg又はAu電極である。好適には、そのような薄膜電極は、Alの場合には、約100nmの厚さを有し、Ag又はAuの場合には、3nm以上且つ20nm以下の、より好適には5nm以上且つ15nm以上の、最も好適には8nm以上且つ10nm以下の厚さを有する。
【0022】
例えば、Ag又はAu層等の金属層を有する透明な電極は、好適には、50%以上且つ100%以下の、より好適には60%以上且つ80%以下の、最も好適には約66%の透過率を有する。
【0023】
更なる好適な実施形態においては、基板に備えられた第1の透明な電極、即ち、前面又は基板電極はアノードであり、EL積層構造上に備えられた第2の透明な電極、即ち、対向電極又は背面電極はカソードである。
【0024】
それらの電極は、電気導体を介して電圧/電流電源に接続されることが可能である。
【0025】
EL積層構造は、当業者が知っている及び/又はEL装置のために適切である任意のEL積層構造であることが可能である。上記のように、EL積層構造は、EL分子を有する少なくとも1つのEL発光層を有する。単独のEL発光層は好適には、約10nmの厚さを有する。
【0026】
好適なEL積層構造は2つ以上のEL層を有し、それらの各々は、少なくとも一種類のEL分子を有する。好適には、EL層は異なる色の光を発する。これは、色調整可能装置が必要とされる場合には、特に有利である。本発明の更なる実施形態においては、EL積層構造は、異なる発光色を有する少なくとも2つのEL発光層を有する。これは、本発明のEL装置が電圧/電流を印加することにより光を発するようにされる場合に、少なくとも2つの発光層の各々が異なる波長の光を発することを意味する。
【0027】
異なる発光色は通常、EL発光層が有する異なるEL分子を用いることにより得られる。各々のEL発光層は、単独の又は二種類以上のEL分子を有することが可能である。より好適な実施形態においては、EL積層構造は、赤色光、緑色光及び青色光をそれぞれ発する3つのEL発光層を有する。
【0028】
本発明のEL装置は、第2の電極の下に及び/又は第2の電極の上部に位置付けられた少なくとも1つの付加的な硬い層を更に有する。そのような付加的な硬い層は、対向電極が強化され、そのことは、傷つき難い対向電極をもたらすという有利点を有する。更に、EL装置は、より容易に、且つ短絡がもたらされることなく、アセンブルされることが可能である。有利に、従来のEL装置の場合には両方の電極間に付加的な保護のための絶縁層を必要とする複数の導電性接合剤を用いて、対向電極と接触するようになることが可能である。更なる有利点として、付加的な硬い層は、カバー蓋及び/又はゲッタ材料が対向電極に接しないようにする。
【0029】
硬い層は、第2の電極の下に、即ち、第2の電極より第1の電極に近接することが、及び/又は、第2の電極の上部に、即ち、第2電極の上に位置付けられることが可能であり、従って、第1の電極と対向せずに、及び第2の電極に比べて第1の電極から更に離れて、位置付けられることが可能である。
【0030】
好適な実施形態においては、硬い層は、第2の電極の下に及び/又はその上部に直接、位置付けられる、即ち、付加的な硬い層の面は、第2の電極の面と物理的に接触する。
【0031】
より好適な実施形態においては、2つの付加的な硬い層が存在し、第1の硬い層は第2の電極の下に位置付けられ、第2の硬い層は第2の電極の上部に位置付けられる。更なる硬い層が形成されてもよい。
【0032】
本発明の更なる実施形態においては、少なくとも1つの付加的な硬い層の厚さは、5nm以上且つ10μm以下、好適には、10nm以上且つ10μm以下、更に好適には、20nm以上且つ1μm以下である。
【0033】
本発明のEL装置の少なくとも1つの付加的な層は、第2の電極の硬度より高い硬度を有する。本発明で用いている用語“硬度”とは、永久変形に対する固体材料の抵抗のことをいう。硬度は、モース硬度又は種々の他の硬度、例えば、ロックウェル硬度、ビッカース硬度及びブリネル硬度に関して測定されることが可能である。材料の硬度の測定についてのそのような方法については、当業者に知られている。
【0034】
他の好適な実施形態においては、アルミニウムの硬度である、付加的な層の硬度は、モース硬度で、2.75以上且つ10以下であり、好適には3以上且つ9以下であり、より好適には3以上且つ7以下である。
【0035】
保護層の必要な厚さ及び必要な硬度は、用いられる導電性接合剤の種類に依存する。通常、それらの接合剤は、用いられるときには、非導電性である。硬化中に、ポリマーマトリックスは収縮し、導電性粒子を押圧して、接合される層と互いに密接に接触するようにする。保護層の厚さ及び硬度は、ここでは、接合剤の収縮粒子及び導電性粒子の硬度に依存する。実際には、特定の導電性接合剤についてどれだけの厚さが必要か、一連の厚さを試験することにより最も容易になる。Circuitworks社製の導電性エポキシCW2400を用いる場合、銅の層は、OLED装置に対する損傷を回避するのに、約300乃至400nmの厚さで十分である。
【0036】
当業者は、本発明に従った付加的な硬い層を生成するように用いられることが可能である複数の材料について知っている。好適なそのような材料は、気相堆積技術により、より好適には、物理的又は化学的気相堆積技術により堆積されることが可能である。更なる好適な実施形態においては、材料は、加熱蒸着、真空中での加熱蒸着、電子ビーム蒸着又はスパッタリングによる蒸着により堆積されるのが適切である。
【0037】
本発明の好適な実施形態においては、第2の電極の上部に位置付けられる硬い層のために用いられる材料は化学的に不活性な材料である。これは、幅広い導電性接合剤の選択肢が用いられ、ゲッタ材料のゲッタ粒子が第2の電極と接触しないように保たれ、そうでなければ、第2の電極を破壊してしまうという、有利点を有する。特に、付加的な硬い層のために用いられることが可能である化学的に不活性な材料についての好適な例は、フッ化物及び/又は酸化物である。
【0038】
更なる実施形態においては、硬い層のために用いられる材料は、導電性材料、又は非導電性材料であって、例えば、絶縁体である。
【0039】
本発明の好適な実施形態においては、付加的な硬い層としては:例えば、MoO、WO、V等の半導性金属酸化物;銅、マンガン、クロム、鉄等の硬い金属又は金属合金、若しくは、モリブデン又はタングステンのような耐熱性金属;SiO、SiO、TiO等の酸化物;SiN等の窒化物;若しくはCaF又はMgF等のフッ化物;を含む。非導電性層が、第2の電極の上部に位置付けられる付加的な硬い層のために用いられる場合、下の第2の電極に接続する導電性金属を有するカバー層が用いられることが可能である。
【0040】
本発明の特に好適な実施形態においては、少なくとも1つの付加的な硬い層は、第2の電極の下に位置付けられ、少なくとも1つの半導性金属酸化物を有する層を有する。驚いたことに、そのような酸化物は、第2の電極の材料に比べてかなり硬い。より好適には、この半導性金属酸化物は、MoO、WO、Vを含む群から選択される。そのような付加的な硬い層を備えることは、その酸化物が有機層のための電荷インジェクタとしての役割を果たすという有利点を有する。従って、この好適な実施形態の硬い層は、有機層と直接接している。この実施形態の硬い層は、第2の電極の一部を又は第2の電極を完全に覆うことが可能である。好適には、その硬い層は、第2の電極の全部の領域を覆う。
【0041】
本発明の他の特定の好適な実施形態においては、少なくとも1つの付加的な硬い層は、第2の電極の上部に位置付けられ、硬い金属、金属合金及び/又は導電性酸化物を有する導電性層を有する。好適には、硬い金属又は金属合金は、Cu、Mn、Cr、Fe、耐熱性金属、Mb及びWを含む群から選択される少なくとも1つの金属を有する。導電性酸化物は好適には、WOである。本実施形態の硬い層は、第2の電極の一部又は第2の電極を完全に覆うことが可能であり、好適には、第2の電極の全部の領域を覆う。従って、本実施形態の硬い層は、傷つき易い第2の電極を有利に覆って、保護し、同時に、第2の電極を電気的に接触させる手段を提供する。特定の好適な実施形態においては、硬い金属が、200nm以上且つ500nm以下の、より好適には、300nm以上且つ400nm以下の厚さを有するカソードに適用される。更に好適には、そのような硬い金属の層は銅を有する。
【0042】
本発明の更なる特定の実施形態においては、少なくとも1つの付加的な硬い層は、第2の電極の上部に位置付けられ、酸化物、窒化物及びフッ化物を含む群から選択される少なくとも1つを有する非導電性層、即ち絶縁層を有する。本発明に従った特に好適な酸化物はSiO、SiO又はTiOであり、本発明に従った特に好適な窒化物はSiNであり、本発明に従った特に好適なフッ化物はCaF及びMgFである。本実施形態の硬い層は、第2の電極の一部を又は第2の電極を完全に覆うことが可能である。好適には、その硬い層は、第2の電極と接触する更なる導電性層、例えば、金属層による硬い絶縁性層の封止を可能にするように、第2の電極の全部の領域より小さい領域を覆う。従って、最も好適には、硬い層は、中心の位置で、第2の電極を覆い、第2の電極を覆わない周縁状領域で囲まれている。覆われていない周縁状領域は、その場合、更なる導電性層を介して第2の電極と接触するように用いられる。有利であることに、周縁状領域ができるだけ小さく、第2の電極の最外周に位置付けられる場合、接触する更なる導電性層は、EL装置において存在することが可能であるゲッタ材料から第2の電極を完全に保護することができる。
【0043】
従って、更なる好適な実施形態においては、EL装置は、第2の電極と電気的に接触する硬い層の上部に位置付けられる更なる導電性層を更に有する。
【0044】
本発明の特定の好適な実施形態においては、EL装置は、2つ以上の付加的な硬い層、即ち、上記の1つ又はそれ以上の硬い層の組み合わせを有する。より好適には、EL装置は、上記のような第2の電極の下に位置付けられる少なくとも1つの硬い層と、上記のような第2の電極の上部に位置付けられる少なくとも1つの更なる硬い層とを有し、付加的な封止のための導電性層を有することが可能である。従って、有利であることに、第2の電極の下に位置している硬い層の電荷注入効果は、第2の電極の上部に位置している硬い層の保護効果と組み合わされる。
【0045】
本発明の他の実施形態においては、EL装置は、EL装置を好適に気密封止し、湿気、及び気体、例えば、酸素等の環境の影響からEL装置を保護するカバー手段を更に有する。カバー手段の豊富な選択肢が、当業者に知られていて、それらの選択肢にはカバー蓋又はキャビティ蓋がある。カバー手段は、直接的に又は間接的に第2の電極と電気的に接触するように有利に用いられ、それ自体が導電性であり、及び/又はフィードスルー等の接触手段を備えている。
【0046】
本発明のEL装置は、第2の電極にカバー手段を電気的に接触させるように備えられた少なくとも1つの接触手段を更に有することが可能である。この接触は、直接的に又は間接的に実行することが可能である。種々の接触手段が当業者に知られていて、それらの接触手段のすべてを本発明が包含することが意図されている。特定の好適な接触手段には、導電性接合剤及び/又は機械的接触手段がある。
【0047】
導電性接合剤は、EL装置と電気的に接触するように用いられることが可能である。多数の適切な導電性接合剤が当業者に知られていて、それらのすべてを本発明は包含する。有利であることに、第2の電極は、第2の電極の上部に位置付けられた付加的な硬い層により保護される場合、導電性接合剤の幅広い選択肢が用いられることが可能であり、そうでなければ、第2の電極を破壊してしまう。用いられることが可能である特定の好適な接合剤は、例えば、銀粒子を入れた2成分エポキシである“Circuitworks社製の導電性接合剤CW2400”である。この接合剤の有利点は、かなり安価であることである。
【0048】
本発明の他の実施形態においては、EL装置は、直接的に又は間接的に第2の電極と電気的に接触する機械的接触手段を有する。そのような機械的接触手段は、導電性スプリング、導電性ポスト及び/又は導電性スペーサであって、好適には、柔らかいポスト又はスペーサを有する。
【0049】
好適には、カバー手段は、EL装置を封止し、その外側と電気的に接触する。少なくとも1つの接触手段は、カバー手段の内側に接続され、第2の電極、第2の電極の上の硬い層、又は硬い層を封止する付加的な導電性層に接触する。故に、EL装置は電気的に接触される。
【0050】
本明細書で用いている用語“直接的に接触する”は、問題になっている構成要素の間の直接的な物理的な接続を意味している。本明細書で用いている用語“間接的に接触する”は、問題になっている構成要素の間の間接的な接続を意味している。例えば、本発明に従った硬い層が、第2の電極の上部に位置している場合、前記硬い層に接触する接触手段として用いられるスプリングは第2の電極と電気的に接触している一方、それは、硬い層と直接、電気的に接触している。
【0051】
本発明に従ったエレクトロルミネッセンス装置はゲッタ材料を更に有することが可能である。当業者が知っているように、ゲッタ材料は、微量の気体を除去するために用いられる反応性材料であり、カバー手段により生成されたキャビティを満たすように用いられる。好適なゲッタ材料はCaO及び/又はゼオライトを有する。ゲッタ材料が第2の電極と接触することにより、本発明に従った硬い層により保護されるようになるため、第2の電極は、傷つき易い電極を有利に保護することができる。
【0052】
他の特徴においては、本発明は、本発明に従ったEL装置を保護する方法を提供し、a)基板を備えるステップと、b)第1の透明な電極、エレクトロルミネッセンス積層構造及び第2の電極をこの順に基板上に堆積するステップとを有し、少なくとも1つの付加的な硬い層が、第2の電極の堆積前及び/又はその堆積後に、更に堆積され、付加的な硬い層は、第2の電極の硬度に比べて高い硬度を有する。
【0053】
堆積するステップは、任意の適切な手段により実行されることが可能である。当業者に広く知られている好適な堆積技術の群には、複数の気相堆積技術がある。それらの技術には、化学的気相堆積(CVD)、例えば、低圧CVD(LPCVD)、若しくは、物理的気相堆積(PVD)であって、例えば、スパッタリング又は電子ビーム蒸着がある。
【0054】
第2の電極の下に位置している付加的な硬い層を生成するために用いられる材料は、真空中の加熱蒸着により好適に堆積される。
【0055】
第2の電極の上部に位置している付加的な硬い層を生成するために用いられる材料は、加熱蒸着、電子ビーム蒸着又はスパッタリングにより好適に堆積される。
【0056】
本発明に従った方法の好適な実施形態は、上記のEL装置に関する記載を読むことにより、当業者は容易に理解することができる。しかしながら、以下に、好適な実施形態の一部について、明確に開示している。
【0057】
一実施形態においては、少なくとも1つの硬い層の堆積は、硬い層が第2の電極の下に及び/又は上部に位置付けられるように実行される。硬い層の堆積はまた、硬い層がエレクトロルミネッセンス積層構造と接触するように、実行されることが可能である。
【0058】
少なくとも1つの硬い層の堆積は、硬い層が第2の電極の一部を又はその電極を完全に覆うように、更に実行されることが可能である。
【0059】
上記のように、その層の必要な厚さ及び硬度は、用いられる接合剤の種類に依存する。Cirsuitworks社製の導電性接合剤については、300乃至400nmの銅が、OLED装置への損傷を回避するために必要である。当業者は、その必要な厚さが実験的に容易に決定されるように、一連の厚さについて実行されることが有効であることを知っている。
【0060】
本発明の他の実施形態においては、WoO、WO及びVを含む群から好適に選択される少なくとも1つの半導性金属酸化物が、第2の電極の下に位置する硬い層を形成するように、堆積される。
【0061】
本発明の更なる実施形態においては、導電性層が、第2の電極の上部に位置する硬い層として堆積される。好適には、硬い金属、金属合金及び/又は導電性酸化物から選択される少なくとも1つの材料が前記導電性層を形成するように堆積される。
【0062】
本発明の更なる実施形態においては、非導電性層、即ち、絶縁性層が、第2の電極の上部に位置付けられる硬い層として堆積される。好適には、酸化物、窒化物及びフッ化物を含む群から選択される少なくとも1つの材料が、前記導電性層を形成するように堆積される。より好適には、そのような非導電性の硬い層が第2の電極の上部に堆積される場合に、更なる導電性層が、第2の電極と電気的に接触する硬い層の上部に堆積される。
【0063】
本発明の特に好適な実施形態においては、少なくとも2つの硬い層が堆積され、少なくとも1つの硬い層は、第2の電極の堆積の前に、堆積され、少なくとも1つの硬い層は、第2の電極の堆積の後に、堆積される。
【0064】
本発明の他の実施形態においては、方法は、装置の適切な動作を調べるようにEL装置がプローブと一時的に接触するステップを更に有する。好適には、第2の電極の上部の保護のための硬い層がプローブにより接触される、即ち、その接触は、この硬い層の堆積後に、実行される。これは、EL装置を保護する間に、機能障害のEL装置又は低い品質のEL装置が、検出されて、選択される。
【0065】
本発明の他の実施形態においては、方法は、EL装置に、カバー手段、少なくとも1つの接触手段及び/又はゲッタ材料を適用するステップを更に有する。
【0066】
本発明の上記の及び他の特徴については、以下に詳述している実施形態を参照して、理解することにより明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明に従ったEL装置の模式的な断面図である。
【図2】本発明に従ったEL装置の他の実施形態の模式的な断面図である。
【図3】本発明に従ったEL装置の他の実施形態の模式的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0068】
図1は、本発明に従ったEL装置の模式的な断面図である。図示しているEL装置はOLEDであり、透明なITOアノード2がCVDにより堆積された平坦なガラス基板1を有する。電極の上部においては、OLED積層構造3及びAlカソード4が堆積されている。カソードは約100nmの厚さを有する。OLED装置は、その装置を気密封止カバー手段7としての役割を果たすキャビティ蓋により封止されている。
【0069】
図1から更に理解できるように、OLED装置は、キャビティ蓋及びカソードのそれぞれを介して電気的に接触されている。キャビティ蓋は、導電性材料、即ち、金属から成り、2つの接触手段、即ち、カソードに直接付けられた導電性接合剤9、及びキャビティ蓋及び導電性接合剤の両方と接触している導電性スプリング10、を介して、間接的にカソードと電気的に接触している。
【0070】
単独の硬い層5は、約100nmの厚さを有するMoO3を有し、真空中でのその材料の加熱蒸着によりカソードの下に直接堆積され、カソードの下の面を完全に覆っている。硬い層はカソードを接触している。更に、硬い層はOLED積層構造と接触していて、故に、エレクトロルミネッセンス積層構造への電荷注入のために備えられている。
【0071】
図2は、本発明に従ったEL装置の他の実施形態の模式的な断面図である。また、図示しているEL装置は、透明なITOアノード2がCVDにより堆積された平坦なガラス基板1を有するOLED装置である。この第1の電極の上部に、エレクトロルミネッセンス積層構造3及びAgカソード4が堆積されている。カソードは約100nmの厚さを有する。OLED装置は、その装置を気密封止するようにカバー手段7としての役割を果たすキャビティ蓋により封止されている。
【0072】
また、図2のOLED装置は、キャビティ蓋及びカソードのそれぞれを介して電気的に接触されている。キャビティ蓋は、導電性材料、即ち、金属から成り、2つの接触手段8及び硬い層5を介して間接的にカソードと電気的に接触している。接触手段は、単独の硬い導電性層に直接付けられた導電性接合剤9、及びキャビティ蓋及び導電性接合剤の両方と接触する導電性ポスト10である。
【0073】
単独の硬い導電性層5はWOを有し、約100nmの厚さを有する。その導電性層は、カソードの上部を完全に覆うように、電子ビーム蒸着又は加熱蒸着によりカソードの上部に直接堆積されている。硬い層は、カソードと接触していて、その傷つき易い電極を保護するように覆っている。
【0074】
更に、ゲッタ材料(図示せず)が、キャビティ蓋により形成されたキャビティ内に存在する。
【0075】
図3は、本発明に従ったEL装置の更なる実施形態の模式的な断面図である。図1又は2に示すように、図示しているEL装置は、透明なITOアノード2がCVDにより堆積された平坦なガラス基板1を有するOLED装置である。この第1の電極の上部には、エレクトロルミネッセンス積層構造3及びAgカソード4が堆積されている。カソードは約100nmの厚さを有する。OLED装置は、その装置を気密封止するカバー手段7としての役割を果たすキャビティ蓋により封止されている。
【0076】
また、図3のOLED装置は、キャビティ蓋及びカソードのそれぞれを介して電気的に接触されている。キャビティ蓋は、金属から成り、2つの接触手段8及び付加的な導電性金属層6を介して間接的にアノードに電気的に接触している。接触手段は、付加的な導電性層に直接付けられた導電性接合剤9、及びキャビティ蓋及び導電性接合剤の両方、に接触する導電性スペーサ10である。
【0077】
単独の硬い導電性層5はSiOを有し、約100nmの厚さを有する。その導電性層は、スパッタリングによりカソードの上部に直接堆積されていて、カソードの一部のみを覆っている。硬い層はカソードと接触していて、この傷つき易い電極を保護するように覆っている一方、封止のための付加的な導電性金属層6は、硬い非導電性層により覆われ、故に、電気的接続のために備えられている場所でカソードと接触している。
【0078】
本発明については、図に示し、上記記載において詳細に説明しているが、そのような図示及び詳述は、例示とみなされる必要があり、限定的なものではない。
【0079】
開示している実施形態の他の変形を、添付図、上記の詳述及び同時提出の特許請求の範囲から、特許請求の範囲の実行において当業者は理解して、もたらすことができる。特許請求の範囲における用語“を有する”は、他の要素又はステップを排除するものではなく、単数表現は複数表現を排除するものではない。特定の手段が互いに異なる従属請求項に記載されていることのみにより、それらの手段の組み合わせが有利に用いられないことを意味するものではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を有し、第1の透明な電極、エレクトロルミネッセンス積層構造及び第2の電極の順に前記基板上に積層されるエレクトロルミネッセンス装置であって、
当該エレクトロルミネッセンス装置は、前記第2の電極の下に及び/又は前記第2の電極の上部に位置している少なくとも1つの付加的な硬い層を更に有し、前記付加的な硬い層は、前記第2の電極の硬度より高い硬度を有する、
エレクトロルミネッセンス装置。
【請求項2】
前記少なくとも1つの付加的な硬い層は、前記第2の電極の下に直接及び前記第2の電極の上部に直接、位置付けられている、請求項1に記載エレクトロルミネッセンス装置。
【請求項3】
前記少なくとも1つの付加的な硬い層の厚さは5nm以上且つ50nm以下である、請求項1に記載のエレクトロルミネッセンス装置。
【請求項4】
前記少なくとも1つの付加的な硬い層は、前記第2の電極の下に位置付けられ、少なくとも1つの半導性金属酸化物を有する層を有する、請求項1に記載のエレクトロルミネッセンス装置。
【請求項5】
前記少なくとも1つの付加的な硬い層は、前記第2の電極の上部に位置付けられ、導電性層であり、並びに硬い金属、金属合金及び/又は導電性酸化物を有する、請求項1に記載のエレクトロルミネッセンス装置。
【請求項6】
前記少なくとも1つの付加的な硬い層は、前記第2の電極の上部に位置付けられ、非導電性層であり、並びに酸化物、窒化物及びフッ化物を含む群から選択される少なくとも1つの材料を有する、請求項1に記載のエレクトロルミネッセンス装置。
【請求項7】
前記第2の電極に電気的に接触する前記硬い層の上部に位置付けられた導電性層を更に有する、請求項6に記載のエレクトロルミネッセンス装置。
【請求項8】
電気的に前記第2の電極に直接的に又は間接的に接触するように備えられた少なくとも1つの接触手段と、カバー手段とを更に有する、請求項1に記載のエレクトロルミネッセンス装置。
【請求項9】
前記少なくとも1つの接触手段は、導電性接合剤、機械的接触手段、導電性スプリング、導電性ポスト及び導電性スペーサを含む群から選択される、請求項8に記載のエレクトロルミネッセンス装置。
【請求項10】
ゲッタ材料を更に有する、請求項に記載のエレクトロルミネッセンス装置。
【請求項11】
請求項1に記載のエレクトロルミネッセンス装置を有する光源、ランプ、モニタ、スイッチ又はディスプレイ。
【請求項12】
請求項1乃至10に記載のエレクトロルミネッセンス(EL)装置を作製する方法であって:
a)基板を備えるステップ;
b)第1の透明な電極、エレクトロルミネッセンス積層構造及び第2の電極の順に前記基板上に堆積するステップ;
を有する方法であり、
少なくとも1つの付加的な硬い層が、前記第2の電極の堆積の前に及び/又は後に、更に堆積され;
前記付加的な硬い層は、前記第2の電極の硬度より高い硬度を有する;
方法。
【請求項13】
前記エレクトロルミネッセンス装置の適切な動作を調べるように、前記EL装置をプローブと一時的に接触させるステップを更に有する、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記EL装置に、カバー手段、少なくとも1つの接触手段及び/又はゲッタ材料を適用するステップを更に有する、請求項12に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2013−512542(P2013−512542A)
【公表日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−540522(P2012−540522)
【出願日】平成22年11月19日(2010.11.19)
【国際出願番号】PCT/IB2010/055294
【国際公開番号】WO2011/064700
【国際公開日】平成23年6月3日(2011.6.3)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】