説明

エレベータのつり合いおもり

【課題】効率の良い空間利用によりコストの低減を図ることのできるエレベータのつり合いおもりの提供。
【解決手段】乗かごと重量バランスをとるためのサブウエート22がつり合いおもり枠21に積載されるエレベータのつり合いおもり2において、つり合いおもり枠21に、略同一投影断面を有する鋳物製のサブウエート22a及び鋼板製のサブウエート22bを混載し、つり合いおもり2として必要な重量を満たしたうえで、つり合いおもり枠21の積載可能体積内で比重は小さいがコスト的に有利な鋳物製のサブウエート22aを可能な限り積載するようにしたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗かごと重量バランスを取るためのサブウエートがつり合いおもり枠に積載されるエレベータのつり合いおもりに関する。
【背景技術】
【0002】
エレベータは、昇降路を昇降する乗かごと、この乗かごの重量に相当するつり合いおもりとがつるべ式にバランスをとる構造となっているとともに、つり合いおもりは、ロープが接続されるつり合いおもり枠と、このつり合いおもり枠に積載されるサブウエートとからなっている。そして、サブウエートは、鋳物製若しくは鋼板製のものが主流となっている。しかして、近年、世界的な鋼材高騰により、つり合いおもり枠及びこれに積載されるサブウエートが、エレベータのコストに及ぼす影響が大きな割合を占めるようになってきており、サブウエートの選定はコストの観点から重要な要素の1つとなっている。そこで、従来、サブウエートの選定は、つり合いおもり枠の積載可能体積内でつり合いおもりとして必要な重量を満たすため、比重は小さいがコスト的に有利な鋳物製のサブウエート、或いは比重が大きいがコスト的に不利な鋼板製のサブウエートのどちらか一方を選択していた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来のつり合いおもりは、鋳物製のサブウエート、或いは鋼板製のサブウエートのどちらか一方が選択されるものであり、つり合いおもり枠の積載可能体積いっぱいに比重が小さい鋳物製のサブウエートを積載しても、つり合いおもりとして必要な重量に僅かに届かず、コスト的に不利である鋼板製のサブウエートを選択する場合がしばしばある。この場合、コストの上昇を招くことはもちろんのこと、つり合いおもり枠には比重が大きい鋼板製のサブウエートのみが積載されることから、サブウエートの全体体積はつり合いおもり枠の積載可能体積に対して大きな余裕をもったものとなり、空間の有効利用といった点でも問題があった。
【0004】
本発明は、前述した従来技術における実状からなされたもので、その目的は、効率の良い空間利用によりコストの低減を図ることのできるエレベータのつり合いおもりを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記目的を達成するために、本発明の請求項1に係る発明は、乗かごと重量バランスをとるためのサブウエートがつり合いおもり枠に積載されるエレベータのつり合いおもりにおいて、前記サブウエートは、略同一投影断面を有する鋳物製のサブウエート及び鋼板製のサブウエートのそれぞれが混載されてなることを特徴としている。
【0006】
このように構成した本発明の請求項1に係る発明では、略同一投影断面を有する鋳物製のサブウエート及び鋼板製のサブウエートをつり合いおもり枠に混載することにより、つり合いおもりとして必要な重量を満たしたうえで、つり合いおもり枠の積載可能体積内で比重は小さいがコスト的に有利な鋳物製のサブウエートを可能な限り用いることができる。これによって、空間を効率良く利用しコストの低減を図ることができる。
【0007】
また、本発明の請求項2に係る発明は、前記鋼板製のサブウエートが前記つい合いおもり枠の下方に、前記鋳物製のサブウエートが前記つい合いおもり枠の上方にそれぞれ積載されることを特徴としている。
【0008】
このように構成した本発明の請求項2に係る発明は、追加設備等の理由によりエレベータ据付け後に乗かごの重量が増加した場合、これにバランスさせるためつり合いおもりにサブウエートを追設する必要がある。しかしながら、前述したように鋳物製のサブウエート及び鋼板製のサブウエートがつり合いおもり枠の積載可能体積を飽和するように混載されており、サブウエートを単に追加することができない。そこで、比重の小さい鋳物製のサブウエートを取り除き、取り除いた鋳物製のサブウエートの重量と追加分の重量との総和に相当する鋼板製のサブウエートを積載する。したがって、比重の小さい鋳物製のサブウエートを比重の大きな鋼板製のサブウエートの上に設置することにより、作業を容易なものとすることができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、鋳物製のサブウエート及び鋼板製のサブウエートをつり合いおもり枠に混載し、つり合いおもりとして必要な重量を満たしたうえで、つり合いおもり枠の積載可能体積内で比重は小さいがコスト的に有利な鋳物製のサブウエートを可能な限り用いることで、コストの低減を図ることができる。また、比重の小さい鋳物製のサブウエートを比重の大きな鋼板製のサブウエートの上に設置することにより、サブウエートの追設作業を容易なものとすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明に係るエレベータのつり合いおもりの実施の形態を図に基づいて説明する。
【0011】
図1は本発明に係るエレベータのつり合いおもりの一実施形態を示す正面図、図2は図1とは異なる方法でサブウエートを積載した状態を示す正面図、図3はサブウエートの追設作業後の状態を示す正面図、図4は鋳物製のサブウエートの平面図、図5は鋳物製のサブウエートの正面図、図6は鋳物製のサブウエートの側面図、図7は鋼板製のサブウエートの平面図、図8は鋼板製のサブウエートの正面図、図9は鋼板製のサブウエートの側面図、図10はエレベータの概略構成図である。
【0012】
せり上げ方式のエレベータは図10に示すように、昇降路を昇降する昇降体、即ち乗かご1及びつり合いおもり2と、一端が昇降路上部、他端がつり合いおもり2に接続されるとともに、その中間部に、乗かご1がプーリ3を介して係合されるロープ4と、ロープ4の中間部が巻き掛けられ、ロープ4に駆動力を付与する巻上機5とを備えている。
【0013】
つり合いおもり2は、ロープ4がその上部に接続されるつり合いおもり枠21と、このつり合いおもり枠21に、つり合いおもり枠21の重量との和が乗かご1の重量に対応するように積載される複数のサブウエート22とからなっている。また、つり合いおもり枠21には所定の積載可能体積が設定されており、この積載可能体積に収まる数のサブウエート22を積載し、乗かご1と重量バランスをとるようになっている。
【0014】
そして、本実施形態のエレベータのつり合いおもりは図1及び図2に示すように、つり合いおもり枠21に、略同一投影断面を有する鋳物製のサブウエート22a及び鋼板製のサブウエート22bのそれぞれを混載している。
【0015】
鋳物製のサブウエート22a及び鋼板製のサブウエート22bは図4及び図7に示すように、それぞれ略同一投影断面を有している。しかし、図5、図6、図8、図9に示すように、鋳物製のサブウエート22aは鋼板製のサブウエート22bと比較し、比重が小さいく、大きな高さ寸法を有している。一方、鋼板製のサブウエート22bは鋳物製のサブウエート22aと比較し、比重が大きく、小さな高さ寸法を有している。なお、鋳物製のサブウエート22aが鋼板製のサブウエート22bと比較しコスト的に有利である。
【0016】
そこで、各鋳物製のサブウエート22aの重量、及び高さ寸法、各鋼板製のサブウエート22bの重量、及び高さ寸法に基づき、つい合いおもり枠21の積載可能体積を飽和し、かつ、コスト的に有利な鋳物製のサブウエートの数が最大となるように、鋳物製のサブウエート22a及び鋼板製のサブウエート22bの数を算出する。そして、例えば図1に示すように、算出した数の鋼板製のサブウエート22bをつい合いおもり枠21の下方に、算出した数の鋳物製のサブウエート22aをつい合いおもり枠21の上方に積載する。或いは、図2に示すように、算出した数の鋳物製のサブウエート22aをつい合いおもり枠の下方に、算出した数の鋼板製のサブウエート22bをつい合いおもり枠21の上方に積載する。
【0017】
しかして、エレベータにあっては、しばしば顧客要望等により、エレベータ据付け後に、乗かご1に例えば50kgの重量を有するクーラを搭載する場合がある。この場合、つり合いおもり枠21にも同様の、即ち50kg分のサブウエート22を積載する必要がある。しかしながら、前述したように本実施形態のつり合いおもり2にあっては、鋳物製のサブウエート22a及び鋼板製のサブウエート22bがつい合いおもり枠21の積載可能体積を飽和するように混載されており、サブウエート22を単に追加することはできない。そこで、図1を例にして説明すると、まず、つい合いおもり枠21の上部に積載された比重の小さい鋳物製のサブウエート22aを所定数取り除き、次いで、図3に示すように、取り除いた鋳物製のサブウエート22aの重量と追加分の重量、即ち50kgとの総和に相当する鋼板製のサブウエート22bを積載する。このように、エレベータ据付け後に乗かご1に機器を追加することも考慮に入れ、サブウエート22の積載方法としては、図1に示すように、比重の大きな鋼板製のサブウエート22bをつい合いおもり枠21の下方に、比重の小さな鋳物製のサブウエート22aをつい合いおもり枠21の上方に積載したほうが良い。
【0018】
本実施形態によれば、鋳物製のサブウエート22a及び鋼板製のサブウエート22bをつり合いおもり枠21に混載し、つり合いおもり2として必要な重量を満たしたうえで、つり合いおもり枠21の積載可能体積内で比重は小さいがコスト的に有利な鋳物製のサブウエート22aを可能な限り用いることで、コストの低減を図ることができる。また、比重の小さい鋳物製のサブウエート22aを比重の大きな鋼板製のサブウエート22bの上に設置することにより、サブウエート22の追設作業を容易なものとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に係るエレベータのつり合いおもりの一実施形態を示す正面図である。
【図2】図1とは異なる方法でサブウエートを積載した状態を示す正面図である。
【図3】サブウエートの追設作業後の状態を示す正面図である。
【図4】鋳物製のサブウエートの平面図である。
【図5】鋳物製のサブウエートの正面図である。
【図6】鋳物製のサブウエートの側面図である。
【図7】鋼板製のサブウエートの平面図である。
【図8】鋼板製のサブウエートの正面図である。
【図9】鋼板製のサブウエートの側面図である。
【図10】エレベータの概略構成図である。
【符号の説明】
【0020】
1 乗かご
2 つり合いおもり
3 プーリ
4 ロープ
5 巻上機
21 つり合いおもり枠
22 サブウエート
22a 鋳物製のサブウエート
22b 鋼板製のサブウエート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗かごと重量バランスをとるためのサブウエートがつり合いおもり枠に積載されるエレベータのつり合いおもりにおいて、
前記サブウエートは、略同一投影断面を有する鋳物製のサブウエート及び鋼板製のサブウエートのそれぞれが混載されてなることを特徴としたエレベータのつい合いおもり。
【請求項2】
前記鋼板製のサブウエートが前記つい合いおもり枠の下方に、前記鋳物製のサブウエートが前記つい合いおもり枠の上方にそれぞれ積載されることを特徴とした請求項1記載のエレベータのつい合いおもり。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−155024(P2009−155024A)
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−334325(P2007−334325)
【出願日】平成19年12月26日(2007.12.26)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】