説明

エレベータのドア制御装置及びドア制御方法

【課題】乗場ドアがかごドアによって従動される構成において、乗場ドアの開き不足を回避することができる、エレベータのドア制御装置等の提供。
【解決手段】エレベータのドア制御装置51は、かご側OLTスイッチ53と、複数の乗場側OLTスイッチ55と、制御装置57とを備える。かご側OLTスイッチ53は、かごドア9の全開を検出する。乗場側OLTスイッチ55は、対応する乗場ドア11の全開を検出する。制御装置57は、ドアの戸開き動作時、かご側OLTスイッチ53及び対応する乗場側OLTスイッチ55の双方がON状態になったときに、かごドア9の開方向の駆動を停止させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレベータのドア制御装置及びドア制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
エレベータは、上下に延びる昇降路と、その中を移動可能に設けられたかごと、構造物の異なる階層に設けられた複数の乗場とを備えている。かご及び各乗場それぞれには、かごドア及び乗場ドアが設けられており、かごドアが目的の乗場の乗場ドアと揃った状態で、かごドア及び乗場ドアの双方が開かれ、利用者はかごと乗場との間を乗降できるようになっている。
【0003】
かごドアと乗場ドアとの関係は、かごドアは専用の駆動手段によって開閉駆動され、乗場ドアは、かごドアの開閉動作に従動されるようにして駆動される。具体例を挙げると、特許文献1に示されるように、かごドア側にはベーンが設けられており、各乗場側にはドライブローラが設けられている。そして、かごと、それと高さが揃った乗場との間でのみ、ベーンと、対応するドライブローラとの高さも揃い、開閉方向に移動するかごドアと一体的に動くベーンが、ドライブローラを移動させることで、いわゆるインターロックが解錠され、かごドア及び乗場ドアが一緒になって開閉動作を行うように構成されている。
【0004】
しかしながら、乗場の乗降口を画定する三方枠が上下階の乗場にわたってドア開き方向に微妙にずれている階があると、乗場ドアはかごドアによって従動されるだけであるので、その階では、乗場ドアが僅かながら開き不足となる恐れがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−220999号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、乗場ドアがかごドアによって従動される構成において、乗場ドアの開き不足を回避することができる、エレベータのドア制御装置及びドア制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した目的を達成するため、本発明は、かごドアと乗場ドアとの間に設けられた一対のベーン及びドライブローラの係合により、前記かごドアの開閉力が前記乗場ドアに伝達されて、該かごドア及び乗場ドアが一緒に開閉するエレベータのドア制御装置であって、前記かごドアの全開を検出するかご側OLTスイッチと、各乗場に設けられて前記乗場ドアの全開を検出する、複数の乗場側OLTスイッチと、ドアの戸開き動作時、前記かご側OLTスイッチ及び対応する前記乗場側OLTスイッチの双方がON状態になったときに前記かごドアの開方向の駆動を停止する制御装置とを備える。
さらに、同目的を達成するための本発明は、かごドアと乗場ドアとの間に設けられた一対のベーン及びドライブローラの係合により、前記かごドアの開閉力が前記乗場ドアに伝達されて、該かごドア及び乗場ドアが一緒に開閉するエレベータのドア制御方法であって、前記かごドアの全開を検出するかご側OLTスイッチと、各乗場に設けられて前記乗場ドアの全開を検出する、複数の乗場側OLTスイッチとを用意し、ドアの戸開き動作時、前記かご側OLTスイッチ及び対応する前記乗場側OLTスイッチの双方がON状態になったときに前記かごドアの開方向の駆動を停止する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、乗場ドアがかごドアによって従動される構成において、乗場ドアの開き不足を回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施の形態を適用するエレベータの一般的な概要を示す図である。
【図2】かごドアと乗場ドアとの開閉動作状態の関係を模式的に示す図である。
【図3】本実施の形態に係るエレベータのドア制御装置の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係るエレベータのドア制御装置の実施の形態について添付図面に基づいて説明する。なお、図中、同一符号は同一又は対応部分を示すものとする。
【0011】
図1は、本実施の形態を適用するエレベータの一般的な概要を示す図である。エレベータ1は、構造物の異なる階層(図示は例として3階)に設けられた複数の乗場3と、それら複数の乗場3にわたって上下に延びる昇降路5と、昇降路5の中を移動可能に設けられたかご7とを備えている。
【0012】
かご7における乗場3側には、かごドア9が設けられている。また、これに対応し、乗場3の適所にも、乗場ドア11が設けられている。そして、かごドア9と目的階の乗場ドア11との位置が揃った状態で、両ドアが開放されることで、利用者が乗降できるようになっている。
【0013】
次に、かごドア9と乗場ドア11との関係を説明する。図2の(a)には、かごドア及び乗場ドアの開閉動作の基本的な状態が模式的に示されている。図示では、かごドア9及び乗場ドア11共に、2枚パネルの片開きタイプを例示しているが、本発明としてはこれに限定されるものではない。また、図2の紙面下側が、かご7のかご室内側にあたり、紙面上側が、乗場3のフロア側にあたる。かごドア9及び乗場ドア11はそれぞれ、かご出入口13及び対応する乗場乗降口15を開閉する。乗場乗降口15は、対応する乗場3における左側三方枠17a及び右側三方枠17bによって画定されている。三方枠の左右は、紙面の左右方向に合せて述べており、すなわち、かご室内側から乗場フロアに向かってみた状態の左右方向に一致する。
【0014】
図2の(a)に示されるように、平面的にみて、かごドア9と乗場ドア11との間には、一対のベーン19a,19b及びドライブローラ21が設けられている。詳細には、かごドア9における、乗場ドア11に対面する側の面には、一対のベーン19a,19bが設けられている。一対のベーン19a,19bは、相互に左右に所定の間隔をもって離隔している。一方、各乗場ドア11における、かごドア9に対面する側の面には、ドライブローラ21が設けられている。
【0015】
かごドア及び乗場ドアの開閉動作の基本的な状態は次のとおりである。まず、かごドア9が目的の階の乗場ドア11と上下方向(高さ方向)にほぼ揃った状態で、周知の駆動手段によって、かごドア9が矢印の開方向にスライド駆動される。これにより、一対のベーン19a,19bも開方向にスライドし、図示例ではベーン19bがドライブローラ21と係合し、ドライブローラ21に駆動力を付与する。この駆動力は、まず、周知な構成でよいインターロックを解錠させる。すなわち、ドライブローラ21の移動に伴ってインターロックのうちの機械的ロックが解除されると共に、錠スイッチが作動される。さらに、この駆動力は、ドライブローラ21を介して、乗場ドア11も開方向にスライド駆動させる。このように対応のベーン19b及びドライブローラ21の係合により、かごドア9の戸開力が乗場ドア11に伝達されて、かごドア9及び乗場ドア11が一緒に開動作される。なお、閉動作も同様であり、ベーン19a及びドライブローラ21の係合によって、かごドア9の戸閉力が乗場ドア11に伝達されて、かごドア9及び乗場ドア11が一緒に閉動作される。かごドア及び乗場ドアの開閉動作の基本的な状態としては、開き側である左側三方枠17aと、開いた乗場ドア11の端部とが、面一に揃う状態となる。
【0016】
続いて、図3に基づいて、本実施の形態に係るエレベータのドア制御装置について説明する。本実施の形態に係るエレベータのドア制御装置51は、かご側OLTスイッチ53と、複数の乗場側OLTスイッチ55と、制御装置57とを備えている。かご側OLTスイッチ53は、かごドア9の全開状態を検出する。かご側OLTスイッチ53は、制御装置57に接続されており、その検出結果が制御装置57に送られる。
【0017】
複数の乗場側OLTスイッチ55はそれぞれ、対応する乗場ドア11の全開状態、すなわち、各階における乗場ドア11の端部が戸開時に(開き側である)左側三方枠17aと面一になった状態を検出する。複数の乗場側OLTスイッチ55もそれぞれ、制御装置57に接続されており、該当する乗場の戸開時において、対応する乗場側OLTスイッチ55の検出結果が制御装置57に送られる。
【0018】
制御装置57には、さらに、かごドア駆動手段59が接続されている。そして、制御装置57は、ドアの戸開き動作時、かご側OLTスイッチ53の検出結果、及び、該当する乗場側OLTスイッチ55の検出結果を受けて、かご側OLTスイッチ53及び対応する乗場側OLTスイッチ55の双方がON状態になったとき(全開状態を検出したとき)にかごドア駆動手段59を停止させ、すなわち、かごドア9の開方向の駆動を停止する。
【0019】
以上のように構成されたエレベータのドア制御装置の作用、すなわちエレベータのドア制御方法について説明する。かごドア及び乗場ドアの開閉動作の基本的な状態、つまり、乗場の三方枠(特に左側三方枠17a)が厳密に規定どおり形成されている階における開閉動作は、前述の図2の(a)に示したとおりである。これに対し、乗場の左側三方枠17aが僅かながら開き側にずれている階では、従来、次のような問題が起こりうる。図2の(b)に示されるように、戸開き開始時は、図2の(a)の基本的な状態と同様にスタートしても、基本的な状態と同様にかごドア9が移動したことをもって、戸開き動作を終了すると、乗場ドア11においては、その端部が左側三方枠17aよりも僅かながら突出した状態が生じ、つまり、開き不足の状態が生じる。なお、図2は、本発明の適用前の問題を理解し易くするため、三方枠のずれやドアの動作位置等を誇張して描いている。
【0020】
さらに、本発明者が考えたところでは、上記の図2の(b)の開き不足の状態を解消するだけの対策であれば、図2の(c)に示す態様がありうる。図2の(c)の態様では、ベーンとドライブローラとの関係を変更することによって乗場ドアをより広範囲に動かそうという態様である。具体的には、ドアの戸開き動作時の状態として、ドライブローラ21の取り付け位置をベーン19bに対してより接近させるようにずらし、戸開き動作の終了時の乗場ドア11の位置をより開き側にずらすものである。しかしながら、かかる態様では、ドライブローラ21とベーン19bとの隙間が好適に確保できない恐れがあり、場合によっては、ドライブローラ21とベーン19bとの接触やそれによる錠スイッチの誤作動などを起こす懸念がある。
【0021】
これらの問題に対し、本実施の形態であれば、ドアの戸開き動作時、かご側OLTスイッチ53及び対応する乗場側OLTスイッチ55の双方がON状態になったときに、かごドア9の開方向の駆動を停止するので、何れの乗場においても、乗場ドアの開き不足を回避させることができる。よって、図2の(a)のように左側三方枠17aのずれのない階、及び、図2の(d)に示されるように左側三方枠17aの僅かなずれのある階の何れにおいても、乗場ドアの開き不足を回避することができる。しかも、ずれのない階及び僅かにずれのある階の何れにおいても、ベーンとドライブローラとの間隔を好適に維持した状態から戸開き動作を開始させることができ、例えば図2の(a)及び図2の(d)に示されるように、何れの乗場においても、一対のベーンの真ん中にドライブローラが位置した状態から、戸開き動作を開始させることができる。よって、何れの乗場においても、ベーンとドライブローラとの間隔を好適に維持した状態から戸開き動作を開始させながら、なお且つ、乗場ドアの開き不足は防止することができる。
【0022】
以上に、好ましい実施の形態を参照して本発明の内容を具体的に説明したが、本発明の基本的技術思想及び教示に基づいて、当業者であれば、種々の改変態様を採り得ることは自明である。
【符号の説明】
【0023】
1 エレベータ、3 乗場、7 かご、9 かごドア、11 乗場ドア、17a,17b 三方枠、19a,19b ベーン、21 ドライブローラ、51 エレベータのドア制御装置、53 かご側OLTスイッチ、55 乗場側OLTスイッチ、57 制御装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
かごドアと乗場ドアとの間に設けられた一対のベーン及びドライブローラの係合により、前記かごドアの開閉力が前記乗場ドアに伝達されて、該かごドア及び乗場ドアが一緒に開閉するエレベータのドア制御装置であって、
前記かごドアの全開を検出するかご側OLTスイッチと、
各乗場に設けられて前記乗場ドアの全開を検出する、複数の乗場側OLTスイッチと、
ドアの戸開き動作時、前記かご側OLTスイッチ及び対応する前記乗場側OLTスイッチの双方がON状態になったときに前記かごドアの開方向の駆動を停止する制御装置と、を備えた、エレベータのドア制御装置。
【請求項2】
かごドアと乗場ドアとの間に設けられた一対のベーン及びドライブローラの係合により、前記かごドアの開閉力が前記乗場ドアに伝達されて、該かごドア及び乗場ドアが一緒に開閉するエレベータのドア制御方法であって、
前記かごドアの全開を検出するかご側OLTスイッチと、各乗場に設けられて前記乗場ドアの全開を検出する、複数の乗場側OLTスイッチとを用意し、
ドアの戸開き動作時、前記かご側OLTスイッチ及び対応する前記乗場側OLTスイッチの双方がON状態になったときに前記かごドアの開方向の駆動を停止する、
エレベータのドア制御方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2013−43712(P2013−43712A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−180521(P2011−180521)
【出願日】平成23年8月22日(2011.8.22)
【出願人】(000236056)三菱電機ビルテクノサービス株式会社 (1,792)
【Fターム(参考)】