説明

エレベータのドア制御装置

【課題】既設のドアモータ、ドアモータの制御を行うドア駆動回路の基本部分をそのままにして、簡易にエレベータのドアを改修できるエレベータのドア制御装置を提供する。
【解決手段】エレベータのドアモータにモータ電源及び前記ドアモータに流す電流を調整する抵抗を接続、切り離しして前記ドアモータの駆動制御を行うドア駆動回路の一部を構成するエレベータのドア制御装置であって、ドアモータとモータ電源及び抵抗の接続を切換えるためのドア駆動回路中の半導体スイッチ素子111a等と、半導体スイッチ素子とドア駆動回路を接続する回路パターンCP、LCPと、エレベータのドアの状態信号と駆動指令を入力し、これらに基づいて半導体スイッチ素子に開閉制御信号を出力する制御手段22と、を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、エレベータの制御装置、特にエレベータのドア制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のエレベータの制御装置として、機械室に設置されエレベータを既設エレベータとは異なる制御方式で制御する主制御盤と、上記既設エレベータのかご及び乗場に設けられたドア開閉機構と、上記かごに設けられ上記主制御盤と同様の制御方式で制御され上記ドア開閉機構を駆動する新設のドアモータと、上記かごに設けられ上記新設のドアモータを制御する新設のドア制御装置とを備えたものがあった(特許文献1参照)。
【0003】
かかるエレベータの制御装置によれば、既設のエレベータを新方式の制御方式に改修する場合、ドア制御装置を安価に製作できるとともに、据付工事期間を短縮することができる。
【0004】
【特許文献1】特開平10−316326号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記エレベータのドア制御装置は、改修する場合、必ずドアモータを取り替える作業が必要であるので、据付の作業時間がかかった。さらに、ドアモータを取り換えて新規ドアモータを速度制御する場合、既設のかごのドア開閉機構は、殆どがリンク構造(図1の4参照)のため、ドアモータの回転速度とドアの開閉速度が線形でなく、ドア装置の種類によりリンクの構造、減速比が異なる。そのため同一のドア速度パターンでドアを開閉しようとしてもドア装置によってドアモータ速度パターンが異なるため、ドア装置の種類ごとにドアモータの速度パターンを検討しなければならないので、煩雑であるという課題があった。
【0006】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたもので、既設のドアモータ、ドアモータの制御を行うドア駆動回路の基本部分をそのままにして、簡易にエレベータのドアを改修できるエレベータのドア制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は、エレベータのドアモータにモータ電源及び前記ドアモータに流す電流を調整する抵抗を接続、切り離しして前記ドアモータの駆動制御を行うドア駆動回路の一部を構成するエレベータのドア制御装置であって、前記ドアモータとモータ電源及び抵抗の接続を切換えるための前記ドア駆動回路中の半導体スイッチ素子と、前記半導体スイッチ素子とドア駆動回路を接続する回路パターンと、エレベータのドアの状態信号と駆動指令を入力し、これらに基づいて前記半導体スイッチ素子に開閉制御信号を出力する制御手段と、を備えたことを特徴とするエレベータのドア制御装置にある。
【発明の効果】
【0008】
この発明によれば、既設のドアモータ、ドア駆動回路の基本部分をそのままにして、簡易にエレベータのドアを改修できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
最初に、この発明によるエレベータのドア制御装置とその周辺のドアモータ、ドア開閉機構、エレベータ制御装置(主制御盤)との関係について説明する。図1はこの発明によるエレベータのドア制御装置を含むエレベータのドア制御システムの構成を示す。ドアモータ1は直流モータからなり、ドア駆動装置2はモータの回転速度を減速する減速機、全閉、全開などドアの位置を検出するドア位置検出スイッチ、減速用抵抗等を有する。駆動プーリ3は減速機の出力をドアパネル5に伝えるためのもので、リンク4は駆動プーリ3の回転運動を水平方向の運動に変換する。2〜5がドア開閉機構を構成する。
【0010】
年代の古い既設ドア装置のドアモータ1は今と異なり、殆どが直流モータを用いている。また、ドアモータ1の速度制御方法もドアモータ1に直列または並列に挿入した抵抗をドア位置に従って切り替えてモータ電流を切り替える抵抗制御による。
【0011】
エレベータ制御装置7は乗りかごの呼び登録や昇降等も含めてエレベータ全体の制御を行う。ドア制御装置8はドアパネル5の全閉、全開位置を検出するドア駆動装置2のスイッチの信号、エレベータ制御装置7からの戸開閉指令等を入力し、これに従ってドアモータ1の回転方向及び回転トルクを制御し、ドアモータ1を駆動する。エレベータ制御装置7、エレベータのドア制御装置8は既設品を撤去し、新しい制御装置を据付ける。ドア制御基板9はドアモータ1の回転方向及び回転トルクを制御する。抵抗ユニット10は既設のドア駆動回路に用いられ、制御盤内にドア制御装置8内に実装されていた抵抗と同様の抵抗ユニットである。
【0012】
図2は図1のシステムにおけるドア駆動回路の回路図である。戸開用リレーa接点11a,11cは戸開時に閉成し、戸開用リレーb接点11bは戸開時に開放する。戸閉用リレーa接点12a,12cは戸閉時に閉成し、戸閉用リレーb接点12bは戸閉時に開放する。抵抗R1,R2は分圧用、抵抗R3は戸閉押付時のトルク調整用、抵抗R4は戸開閉開始時のトルク調整に関するもの、抵抗R5、R6は戸開時および戸閉時のそれぞれ減速用である。
【0013】
戸閉押付用リレーb接点13bは戸閉押付時以外、閉成する。それぞれ複数の接点を含む戸開減速用リレー接点14、戸閉減速用リレー接点15は戸開、戸閉の減速時に順次閉成する。戸開閉開始用リレー接点16は全閉全開でのみ閉成しモータ回転トルクを増大させる。戸開減速用リレー接点14、戸閉減速用リレー接点15、戸開閉開始用リレー接点16は、かごドアすなわちドアパネル5の開閉位置によって動作位置を決める必要があるため、駆動プーリ3の回転角度によって閉成/開放する構造となっており、ここではドア駆動装置2のドア位置検出スイッチ(図示省略)からの信号によって閉成/開放する。そしてこれらの回路はモータ電源間(DC125V−0V)に接続されている。
【0014】
代表的なドア駆動回路では、図2の実線で示す回路部分がドア制御装置8内に実装され、図2の中央部分の破線で示されたドア駆動回路の基本部分である回路部分がドア装置(図1の右側の1〜5の部分)内に実装されている。ただし例えば、ドアの種類によっては戸開閉開始用リレー接点16と並列に結線されている抵抗R4がドア制御装置8に入っている場合があり、抵抗の実装位置が異なる場合がある。また、オプションが付いた場合、回路構成が異なってくる。
【0015】
図3は図2に示すドア駆動回路において、戸閉時の各段階での電流の流れを示す図である。戸閉時の場合、(a)の戸閉開始時、(b)の戸閉一定速時、(c)の戸閉減速時、(d)の戸閉押付時に分かれる。戸閉開始の場合、戸閉用リレーa接点12a,12c及び戸閉押付用リレーb接点13を閉成させ、さらに戸開閉開始用リレー接点16を閉成させる。これにより(a)のように電流が流れる。戸開閉開始用リレー接点16を閉成させるのは、起動時、より大きいモータ回転トルクが必要なため、モータ電流を増大させるためである。
【0016】
次に、(b)の戸閉一定速の場合、戸開閉開始用リレー接点16が開放されるため、戸開閉開始用リレー接点16と並列の抵抗R4に電流が流れて、戸閉開始時よりモータ回転トルクが抑制される。次に(c)の戸閉減速時、更にモータ電流を抑えるため、戸開減速用リレー接点14を閉成させて、ドアモータ1と並列の抵抗R5に電流を流す。戸閉位置によって戸開減速用リレー接点14が順番に閉成され、ドアモータ1と並列の抵抗R5の抵抗値を調節して、順番にモータ回転トルクを抑えていく。最後に(d)の戸閉押付時の場合、モータトルクを更に抑えるため、戸閉押付用リレーb接点13が開放されて戸閉押付用リレーb接点13と並列の抵抗R3に電流が流れる。戸開時はR1→11a→R4→1→11cのルートで、ドアモータ1に逆方向に電流が流れるが、基本的な動作はほぼ同様である。
【0017】
図2において、既設のエレベータのドアを改修するとき、破線で示されている部分の回路はドア装置内部にあるためそのまま流用し、実線で示してあり元々ドア制御装置8に実装されていた回路を改修して新しくする。実線で示されている部分の各リレー接点はMOSFET等の半導体スイッチ素子に置き換え、ドア制御基板9に実装する。抵抗R1,R2,R3は抵抗ユニット10に実装し、ドア制御基板9と結線する。これによりドア装置内部の結線をそのまま流用できるため、工事期間を短縮できる。
【0018】
図4はこの発明の一実施の形態によるドア制御装置の全体構成を示す図である。図4において、ドア制御装置8は、I/F(インタフェース)21、CPU22,ドア種類選択用SW(スイッチ)24、例えばMOSFET等からなる半導体スイッチ素子111a,112a,113b,111b,112b,111c,112cを搭載したドア制御基板9と、抵抗Rが搭載された抵抗ユニット10とを備える。
【0019】
半導体スイッチ素子111a,112a,113b,111b,112b,111c,112cは図2の接点11a,12a,13b,11b,12b,11c,12cにそれぞれ相当する。抵抗Rは図2の抵抗R1,R2,R3に相当する。
【0020】
I/F21は、ドア駆動装置2のドア位置検出スイッチからのドアパネル5の状態信号であるドア位置信号、全開検出信号、全閉検出信号、エレベータ制御装置7からの駆動指令である戸開指令、戸閉指令等を入力する。ドア種類選択用SW24はドアの種類を指定するための機械的スイッチである。CPU22は、ドア種類選択用SW24で設定されたドア種類のモードで、I/F21を介して得られる状態信号や駆動指令に基づく条件に従って、内蔵された該モードのドア駆動回路制御プログラムに基づき半導体スイッチ素子111a,112a,113b,111b,112b,111c,112cをON(閉成)/OFF(開放)制御する開閉制御信号を出力する。
【0021】
図4に示した例では、ドア制御基板9上には半導体スイッチ素子111a,112a,113b,111b,112b,111c,112cの両端をドア制御基板9の両側の外部端子OTにそれぞれ接続する回路パターンCPが形成されている。また抵抗ユニット10上にも、各抵抗Rの両端を抵抗ユニット10の外部端子OTに接続される回路パターンCPが形成されている。そしてドア制御基板9及び抵抗ユニット10の各外部端子OTは接続ライン(固定でも可動でもよい)等からなる回路パターンLCPにより、自由に他の外部端子OT、ドア駆動回路のドアモータ1や減速用の抵抗R5,R6や減速用リレー接点14,15や戸開閉開始用のリレー接点16や抵抗R4等からなる部分(ドア駆動回路の基本部分)、モータ電源(DC125V−0V)に接続され得る。
【0022】
半導体スイッチ素子111a,112a,113b,111b,112b,111c,112cは、抵抗ユニット10の抵抗Rも含めてドア制御装置8内で、例えば図2のドア駆動回路の実線で示される部分の回路を構成するように、ドア制御基板9及び抵抗ユニット10上の回路パターンCPおよびこれらの外部端子OTから外部に延びる接続ラインからなる回路パターンLCPで結線され、このようにして形成された回路は、回路パターンLCPにより、モータ電源の+側と−側である125Vと0Vとの間に接続される。そして、半導体スイッチ素子113b,111b,112bの一端側が接続されたそれぞれの外部端子OTは、回路パターンLCPにより、ドア装置内に実装されたドアモータ1を含む例えば図2のドア駆動回路の破線で示される部分(ドア駆動回路の基本部分)の回路に接続されている。
【0023】
そしてI/F21を介して得られる状態信号や駆動指令に基づく条件に従ったCPU22による半導体スイッチ素子111a,112a,113b,111b,112b,111c,112cのON/OFF制御により、戸閉時であれば、例えば図3に従って説明したような一連のドアモータ1の電流制御が順次行われ、ドアモータ1の回転方向と回転トルクすなわちモータ電流方向及び電流の大きさの制御が行われる。
【0024】
なお、ドア制御装置8には、どのような回路にも対応できるよう予め複数のドア駆動回路(図示省略)を準備しておく。各ドア駆動回路同士は外部端子OTで結線できるようにし、オプションにも対応できるよう自由度を持たせて構成する。またドア種類に応じてドア制御基板9と抵抗ユニット10との結線を変える。これにより、どのドア種類でも既設のドア駆動回路の回路図があれば、それに基づいて結線すれば対応することができる。
【0025】
また、特殊なオプション以外は一旦、回路及びCPU22のドア種類選択用SW24を標準化すれば、そのまま使用することができる。また、駆動回路同士でドアによって変更のない結線は予め、ドア制御基板9上に回路パターン(図示省略)として配線しておいてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】図1はこの発明によるエレベータのドア制御装置を含むエレベータのドア制御システムの構成を示す。
【図2】図1のシステムにおけるドア駆動回路の回路図である。
【図3】図2に示すドア駆動回路において、戸閉時の各段階での電流の流れを示す図である。
【図4】この発明の一実施の形態によるエレベータのドア制御装置の全体構成を示す図である。
【符号の説明】
【0027】
1 ドアモータ、2 ドア駆動装置、3 駆動プーリ、4 リンク、5 ドアパネル、7 エレベータ制御装置、8 ドア制御装置、9 ドア制御基板、10 抵抗ユニット、11a,11c 戸開用リレーa接点、11b 戸開用リレーb接点、12a,12c 戸閉用リレーa接点、12b 戸閉用リレーb接点、13b 戸閉押付用リレーb接点、14 戸開減速用リレー接点、15 戸閉減速用リレー接点、16 戸開閉開始用リレー接点、21 I/F、22 CPU、24 ドア種類選択用スイッチ、111a,11b,111c,112a,112b,112c,113b 半導体スイッチ素子、CP,LCP 回路パターン、OT 外部端子、R1〜R6 抵抗。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エレベータのドアモータにモータ電源及び前記ドアモータに流す電流を調整する抵抗を接続、切り離しして前記ドアモータの駆動制御を行うドア駆動回路の一部を構成するエレベータのドア制御装置であって、
前記ドアモータとモータ電源及び抵抗の接続を切換えるための前記ドア駆動回路中の半導体スイッチ素子と、
前記半導体スイッチ素子とドア駆動回路を接続する回路パターンと、
エレベータのドアの状態信号と駆動指令を入力し、これらに基づいて前記半導体スイッチ素子に開閉制御信号を出力する制御手段と、
を備えたことを特徴とするエレベータのドア制御装置。
【請求項2】
前記ドア駆動回路が含む複数の抵抗の一部と、前記複数の抵抗の一部と前記半導体スイッチ素子とを接続する回路パターンをさらに備え、
前記エレベータのドアの状態信号がドアの開閉位置を示す信号からなり、前記駆動指令が戸開指令及び戸閉指令からなり、前記半導体スイッチ素子の開閉制御により前記ドアモータの回転方向及び回転トルクを制御することを特徴とする請求項1に記載のエレベータのドア制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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