説明

エレベータの乗りかご内映像記録装置

【課題】エレベータの乗りかご内を撮影した映像の取り出しを容易に行うことができ、しかも、記録媒体として用いる半導体メモリの長寿命化を図ることができるエレベータの乗りかご内映像記録装置を提供する。
【解決手段】エレベータの乗りかご内映像記録装置において、エレベータの乗りかご内に設置される本体ケース6と、本体ケース6に取付けられ、乗りかご内を撮像する撮像部7と、本体ケース6に取付けられ、撮像部7により撮像された映像のデータが記録される半導体メモリ12が着脱可能に装着される記録部8と、半導体メモリ12の記録領域に余白部分が有るか否かを判断する余白判断手段と、半導体メモリ12の記録領域に余白部分が無い場合に最も古いデータが記録されている記録領域を選択する選択手段と、選択された記録領域に撮像した映像のデータを上書きする上書手段と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレベータの乗りかご内を撮影した映像を記録するエレベータの乗りかご内映像記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、下記特許文献1に記載されているように、エレベータの乗りかご内を撮影した映像を記録するエレベータの乗りかご内映像記録装置が知られている。
【0003】
このエレベータの乗りかご内映像記録装置は、乗りかご内に設置されて乗りかご内を撮像するカメラと、機械室内に設置されてカメラで撮影した映像を記録する記録装置とを備えている。この記録装置としては、記録容量の大きいハードディスクが用いられている。なお、記録装置は、エレベータ乗りかごの天井部分に設置されている場合もある。
【0004】
記録装置に記録された映像を再生する必要が生じた場合は、担当者が機械室内や乗りかごの天井部分に入り、記録されている映像を記録装置から取り出している。
【特許文献1】特開2002−87717号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前述のエレベータの乗りかご内映像記録装置においては、以下の点について配慮がなされていない。
【0006】
記録装置に記録されている映像を再生する必要が生じた場合は、担当者が機械室内やエレベータ乗りかごの天井部分に入らなければならず、手間がかかっている。
【0007】
このような対策として、記録媒体として半導体メモリが着脱可能に取付けられるカメラをエレベータ乗りかご内に設置することが考えられる。この場合は、記録されている映像を再生する際にはカメラから半導体メモリを取外せばよく、記録されている映像の再生を容易に行うことができる。
【0008】
しかし、半導体メモリはハードディスクに比べて記録容量が少ない。このため、半導体メモリは、初期化や映像再生時時における再生した映像のデータ削除を行いながら、繰り返し書き込みが行われる。すると、書込回数の多い記録領域が発生することがあり、特定記録領域について書込回数が基準値に達すると、その特定の記録領域においては記録性能が低下し、半導体メモリの寿命が短くなるということが発生しうる。
【0009】
本発明はこのような課題を解決するためになされたもので、その目的は、エレベータの乗りかご内を撮影した映像の取り出しを容易に行うことができ、しかも、記録媒体として用いる半導体メモリの長寿命化を図ることができるエレベータの乗りかご内映像記録装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の実施の形態に係る第1の特徴は、エレベータの乗りかご内映像記録装置において、エレベータの乗りかご内に設置される本体ケースと、前記本体ケースに取付けられ、前記乗りかご内を撮像する撮像部と、前記本体ケースに取付けられ、前記撮像部により撮像された映像のデータが記録される半導体メモリが着脱可能に装着される記録部と、前記半導体メモリの記録領域に余白部分が有るか否かを判断する余白判断手段と、前記半導体メモリの記録領域に余白部分が無い場合に最も古いデータが記録されている記録領域を選択する選択手段と、選択された前記記録領域に撮像した映像のデータを上書きする上書手段と、を備えることである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、エレベータの乗りかご内を撮影した映像の取り出しを容易に行うことができ、しかも、記録媒体として用いる半導体メモリの長寿命化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の一実施の形態のエレベータの乗りかご内映像記録装置を図面を用いて説明する。
【0013】
建物内にエレベータ昇降路(図示せず)が形成され、このエレベータ昇降路内に昇降可能に乗りかご1が設置されている。図1は、かごドア2が閉じた状態の乗りかご1内を示す透視図である。
【0014】
乗りかご1内には、かごドア2の右側に位置する行先階操作盤3と、かごドア2の上部に位置する階床表示盤4と、かごドア2に対向する奥側上部に位置する乗りかご内映像記録装置5とが設けられている。
【0015】
行先階操作盤3には、目的とする行先階を選択する行先階ボタン、かごドア2を開放させる開放ボタン、かごドア2を閉止させる閉止ボタン、非常呼びボタンなどが設けられている。階床表示盤4には、乗りかご1が位置する階床を点灯表示するランプが設けられている。
【0016】
乗りかご内映像記録装置5は、図2に示すように、乗りかご1内に設置される本体ケース6と、本体ケース6に取付けられて乗りかご1内を撮像する撮像部7と、本体ケース6に取付けられて撮像部7により撮像された映像を記録する記録部8と、外部に報知するための表示部9とを備えている。表示部9は、記録部8への最大の書込回数が基準値に達した場合、その旨を報知する報知部として機能する。
【0017】
記録部8は、演算処理部10と、画像処理部11と、半導体メモリ12と、メモリ13とを備えている。
【0018】
メモリ13には、プログラムや固定データが格納されている。
【0019】
画像処理部11は、撮像部7により撮像された映像を画像処理する部分である。この画像処理により、撮像部7により撮像された映像が半導体メモリ12への記録が可能な形式のデータに変換される。
【0020】
演算処理部10は、メモリ13に格納されたプログラムや固定データを用いて乗りかご内映像記録装置5全体を制御する部分である。演算処理部10の制御により、撮像部7による乗りかご1内の撮像、画像処理部11による撮像した映像の画像処理、画像処理されたデータの半導体メモリ12への記録等が行われる。
【0021】
半導体メモリ12は、記録部8に対して着脱可能に取付けられている。半導体メモリ12には、図3に示すように、画像処理部11において画像処理された映像のデータが記録される映像データ記録領域14と、記録部8の動作条件が予め記録される動作条件データ記録領域15とが設けられている。
【0022】
半導体メモリ12内の映像データ記録領域14には、記録領域のアドレス(アドレスA、アドレスB、アドレスC、…、アドレスZ)が記録されるアドレス記録部14aと、各アドレスに対応する映像のデータ(データ1、データ2、データ3、…、データn)が記録される映像データ記録部14bと、各データの撮像日時(日時1、日時2、日時3、…、日時n)が記録される日時記録部14cと、各アドレス毎の書込回数が記録される書込回数記録部14dとが設けられている。
【0023】
表示部9は、液晶を利用した表示装置であり、書込回数の最大値が基準値に達した場合、その旨が画像により表示される。なお、表示部9としては画像表示される構造のものに限定される必要はなく、音声により表示される構造のものであってもよい。
【0024】
撮像部7により撮像された映像が半導体メモリ12に記録される動作について、図4のフローチャートに基づいて説明する。
【0025】
かご内映像記録装置5に電源が投入された場合には、記録部8に半導体メモリ12が装着されているか否かが判断される(S1)。装着されている場合は(S1のYES)、半導体メモリ12の動作条件データ記録領域15に記録されている動作条件データが読取られ(S2)、ここに、動作条件を読取る読取手段が実行される。この動作条件としては、例えば、撮像部7による撮像開始のタイミングをいつにするか、撮像した映像のデータを何秒間隔で記録するか等である。
【0026】
動作条件データの読取りが終了した後、撮像部7による撮像開始のタイミングが到達したか否かが判断される(S3)。例えば、かごドア2が開放され、乗りかご1内に人物が居ることを人感センサで検知したタイミングを、撮像開始のタイミングと定めることができる。
【0027】
撮像開始のタイミングに到達した場合には(S3のYES)、撮像が開始される(S4)。撮像が開始されると、半導体メモリ12の映像データ記録領域14の映像データ記録部14bに余白部分が有るか否かが判断され(S5)、ここに、半導体メモリ12の記録領域に余白部分が有るか否かを判断する余白判断手段が実行される。余白部分が有ると判断された場合(S5のYES)、撮像部7により撮像された映像のデータが余白部分のあるアドレスの記録領域に書き込まれる(S6)。
【0028】
一方、余白部分が無いと判断された場合は(S5のNO)、既に記録されているデータのなかで最も古いデータが記載されているアドレスが選択され(S7)、ここに、最も古いデータが記録されている記録領域を選択する選択手段が実行される。そして、撮像した映像のデータが、選択されたアドレスの記録領域内に上書きされ(S8)、ここに、選択されたアドレスの記録領域に撮像した映像のデータを上書きする上書手段が実行される。
【0029】
ステップS6の余白へのデータの書込み、又は、ステップS8のデータの上書きが行われた後、データの書込み、上書きが行われたアドレスに対応する書込回数記録部14dの書込回数のデータが更新される(S9)。そして、更新された書込回数が、予め設定された基準値に達したか否かが判断され(S10)、ここに、書込回数記録部14dに記録された最大の書込回数が基準値に達したか否かを判断する書込回数判断手段が実行される。この基準値は、半導体メモリ12へ書込みを繰り返し行っても、再生時に映像の品質を保証できる書込みの回数である。
【0030】
書込回数が基準値に達した場合には(S10のYES)、書込回数が基準値に達したことが表示部9に表示され(S11)、ここに、最大の書込回数が規定値に達したことを報知する報知手段が実行される。
【0031】
ここで、この実施の形態では、表示部9を乗りかご内映像記録装置5に設けた場合を例に挙げて説明したが、表示部9をエレベータの管理人室内に設置してもよい。
【0032】
書込回数が基準値に達した場合、半導体メモリ12は直ちにデータの記録が不可能になるものではないため、表示部9に表示が行われた後も引き続きその半導体メモリを継続使用することは可能である。表示部9の表示は、エレベータの管理者に対して半導体メモリ12の交換を促すものである。
【0033】
ステップS10の書込回数が基準値に達したか否かが判断された後、撮像が終了されるか否かが判断される(S12)。撮像が終了しないと判断された場合は(S12のNO)、ステップS4に戻り、撮像が続行される(S4)。一方、撮像が終了であると判断された場合は(S12のYES)、撮像が終了する(S13)。撮像が終了であるか否かの判断は、かごドア2が閉止され、乗りかご1内の人物を人感検知センサが検知しなくなった場合に、撮像が終了であると判断される。
【0034】
このような構成において、この乗りかご内映像記録装置5によれば、乗りかご1内を撮像した映像を再生する必要が生じた場合には、エレベータの管理人が乗りかご1内に入り、半導体メモリ12を乗りかご内映像記録装置5から容易に取外すことができ、容易に再生することができる。
【0035】
また、この乗りかご内映像記録装置5によれば、半導体メモリ12の記録領域に余白部分が無くなった場合は、最も古いデータが記録されているアドレスの順にデータを上書きするため、半導体メモリ12の各アドレスへのデータの書込回数を平均化することができ、特定のアドレスへの書込回数が増大することを抑制して半導体メモリ12の長寿命化を図ることができる。
【0036】
最も書込回数の多いアドレスにおける書込回数が基準値に到達した場合には、その旨が表示部9に表示される。これにより、書込回数が基準値に到達したアドレスが存在する半導体メモリ12を引き続き使用し、そのアドレスに記録された映像の再生が不鮮明になるという不都合の発生を防止することができる。
【0037】
また、個々の半導体メモリ12に動作条件データ記録領域15が設けられ、この動作条件データ記録領域15に記録部8の動作条件が予め記録されているため、半導体メモリ12を記録部8に装着することにより動作条件を設定することができ、記録部8の動作条件の設定や変更を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の一実施の形態に係る乗りかご内映像記録装置が設置された乗りかご内を示す透視図である。
【図2】乗りかご内映像記録装置を示すブロック図である。
【図3】半導体メモリにおける記録領域の構造を示す模式図である。
【図4】撮像部により撮像された映像を半導体メモリに記録する動作について説明するフローチャートである。
【符号の説明】
【0039】
1 乗りかご
6 本体ケース
7 撮像部
9 報知部
12 半導体メモリ
14d 書込回数記録部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エレベータの乗りかご内に設置される本体ケースと、
前記本体ケースに取付けられ、前記乗りかご内を撮像する撮像部と、
前記本体ケースに取付けられ、前記撮像部により撮像された映像のデータが記録される半導体メモリが着脱可能に装着される記録部と、
前記半導体メモリの記録領域に余白部分が有るか否かを判断する余白判断手段と、
前記半導体メモリの記録領域に余白部分が無い場合に最も古いデータが記録されている記録領域を選択する選択手段と、
選択された前記記録領域に撮像した映像のデータを上書きする上書手段と、
を備えることを特徴とするエレベータの乗りかご内映像記録装置。
【請求項2】
前記半導体メモリへの書込回数を記録領域ごとに対応付けて記録する書込回数記録部と、
前記書込回数記録部に記録された最大の書込回数が基準値に達したか否かを判断する書込回数判断手段と、
最大の書込回数が基準値に達したことが報知される報知部と、
を備えることを特徴とする請求項1記載のエレベータの乗りかご内映像記録装置。
【請求項3】
前記記録部の動作条件が前記半導体メモリに記録され、前記動作条件を読取る読取手段が前記記録部に設けられていることを特徴とする請求項1又は2記載のエレベータの乗りかご内映像記録装置。
【請求項4】
前記記録部の動作条件は、撮像開始のタイミング、あるいは撮像した映像のデータを記録する間隔であることを特徴とする請求項3記載のエレベータの乗りかご内映像記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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