説明

エレベータの乗場組込リモート運転制御装置

【課題】突然の機会においても技術者が確実に利用できるように用意しておくことができる、エレベータのリモート運転制御装置の提供。
【解決手段】エレベータの乗場組込リモート運転制御装置21は、インジケータプレート9と、リモート運転コントローラ23と、開閉カバー25とを備える。インジケータプレートは、乗場1に設けられ、少なくとも呼びボタン11を表面側に支持する。リモート運転コントローラは、インジケータプレートの裏面側に設けられている。開閉カバーは、インジケータプレート及びリモート運転コントローラの間に配置されている。開閉カバーには、ロック手段が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレベータの乗場組込リモート運転制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
エレベータは、上下に延びる昇降路と、その中を移動可能に設けられたかごと、構造物の各階に設けられた複数の乗場とを備えている。かご内及び各階の乗場には、インジケータが設けられており、通常、そのインジケータには、行き先階の登録や上昇・下降の希望を登録する呼びボタンや、かごの階数位置を利用者に知らせる表示パネルが設けられている。
【0003】
また、故障時や保守作業時には、専用端末機器を用い、エレベータのかごの外からエレベータのかごの制御を行っていた。この専用端末機器は、例えば、特許文献1に開示されているように、乗場のインジケータの部分で接続し、エレベータのリモート運転を行うものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−308540号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、故障時等、緊急の場面においては、技術者が上述した専用端末機器を用意するのに手間取ったり、専用端末機器を接続場所まで取り寄せ・持参するのに時間がかかったりした場合、速やかにエレベータのリモート運転を開始することが困難な事態も想定される。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、突然の機会においても技術者が確実に利用できるように用意しておくことができる、エレベータのリモート運転制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した目的を達成するため、本発明のエレベータの乗場組込リモート運転制御装置は、乗場に設けられ、少なくとも呼び手段を表面側に支持するインジケータプレートと、前記インジケータプレートの裏面側に設けられたリモート運転コントローラと、前記インジケータプレート及び前記リモート運転コントローラの間に配置された開閉カバーとを備え、前記開閉カバーには、ロック手段が設けられている。
【発明の効果】
【0008】
本発明のエレベータの乗場組込リモート運転制御装置によれば、突然の機会においても技術者が確実に利用できるように用意しておくことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】乗場組込リモート運転制御装置を適用するエレベータの乗場を模式的に示す図である。
【図2】本発明の実施の形態1におけるインジケータプレートの裏面側の構成について、インジケータプレートを外した状態を示す図である。
【図3】本発明の実施の形態2に係る乗場組込リモート運転制御装置の制御態様を示す図である。
【図4】本発明の実施の形態3に関する図3と同態様の図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係るエレベータの乗場組込リモート運転制御装置の実施の形態について添付図面に基づいて説明する。なお、図中、同一符号は同一又は対応部分を示すものとする。
【0011】
実施の形態1.
図1は、本実施の形態に係る乗場組込リモート運転制御装置を適用するエレベータの乗場を模式的に示す図である。図1に例示されるように、エレベータの乗場1には、乗場ドア3が設けられており、開放された乗場ドア3を介して、利用者は、エレベータの図示省略するかごに出入りする。乗場1における乗場ドア3の近傍(側方)には、乗場インジケータ5が設けられている。
【0012】
乗場インジケータ5は、乗場ドア3の側方の壁7に埋設されている。壁7には、乗場インジケータ5のインジケータプレート9が露出している。インジケータプレート9には、その表面側に、少なくとも呼びボタン(呼び手段)11が支持されており、図示例では、さらに、かご位置表示部13が支持されている。
【0013】
次に、図2をも参照しながら、本実施の形態に係るエレベータの乗場組込リモート運転制御装置の構成について説明する。図2は、インジケータプレートの裏面側の構成について、インジケータプレートを外した状態を示す図である。本実施の形態に係る乗場組込リモート運転制御装置21は、少なくとも、インジケータプレート9と、リモート運転コントローラ23と、開閉カバー25とを備えている。
【0014】
乗場ドア3の側方の壁7には、凹所7aが形成されており、リモート運転コントローラ23は、その凹所7aのなかに収容されている(図2の(b)参照)。すなわち、リモート運転コントローラ23は、壁7に取り付けた際のインジケータプレート9の裏面側に設けられている。
【0015】
リモート運転コントローラ23は、かごの外から即ち乗場1から、エレベータの運転制御やプログラムの保守等を行うことができるものである。一例として、リモート運転コントローラ23には、ブレーキ開放スイッチ27、運転阻止コネクタ29、メンテコン接続用コネクタ31や、運転制御に関する指令もくしは表示を行う入出力部33が設けられている。
【0016】
また、凹所7aには、ケーブル配線穴35が開口しており、そのケーブル配線穴35を介して各種ケーブルが凹所7aに引き出されている。それらケーブルのうち、リモート運転コントローラ23には、少なくともコントローラケーブル37が接続されており、必要に応じて、ブレーキ解放用コネクタケーブル39が接続されている。それらのほか、インジケータ用コネクタケーブル41や、非常用バッテリ接続端子ケーブル43が延びている。
【0017】
開閉カバー25は、壁7に取り付けた際のインジケータプレート9とリモート運転コントローラ23との間に配置されている。開閉カバー25は、インジケータプレート9が壁7から取り外された際に、少なくともリモート運転コントローラ23を覆い隠す程度の大きさ有していればよい。開閉カバー25の開閉態様は、特に限定されるものではなく、スライドタイプ、ラッチや爪等を介した完全取り外しタイプでもよいが、本実施の形態では、図示のように揺動扉タイプを採用している。
【0018】
開閉カバー25には、ロック手段45が設けられている。ロック手段45の構成も、特定の者だけが解錠できるタイプであれば特に限定されるものではなく、例えばナンバータイプでもよいが、本実施の形態では、キーをシリンダに挿入・回して施錠・解錠するキータイプを採用している。
【0019】
インジケータプレート9と、リモート運転コントローラ23が収納される凹所7aとの大きさ関係は、図中、符号D1で示される点線がインジケータプレート9の大きさを示し、符号D2で示される点線が凹所7aの大きさを示す。点線D1と点線D2との比較から分かるように、インジケータプレート9は、凹所7aよりも十分に大きく、壁7に取り付けられた際に、凹所7aを完全に覆い隠す。
【0020】
以上のように構成された本実施の形態のエレベータの乗場組込リモート運転制御装置によれば、故障時等に、技術者が乗場1からエレベータの運転を直接制御する場面では、まず、技術者は、壁7からインジケータプレート9を取り外し、図2の(a)に示すように、凹所7aを露出させ、さらに、専用のキーを用いてロック手段45を解錠し、図2の(b)に示すように、開閉カバー25を揺動させて開く。それによって、リモート運転コントローラ23が現われるので、技術者は、リモート運転コントローラ23を用いて、エレベータをリモート運転する。
【0021】
このように、本実施の形態によれば、乗場からエレベータをリモート運転制御できる装置が、乗場インジケータの内部に保管されているので、例え、予期しない突然の機会に予定されていない専門技術者がエレベータのリモート運転を行わなければならない場面であっても、リモート運転制御を行うための装置を探しまわったり、あるいは、リモート運転制御を行うための装置自体の保管場所が分かっていてもそれを取り寄せるために時間がかかったりするという不都合を生じたりすることなく、速やか且つ確実に利用できるようにリモート運転コントローラを用意しておくことができる。
【0022】
また、上記の利点を得るべくリモート運転コントローラ23が常に一般利用者が利用する乗場1に保管されている場合、何らかの理由でインジケータプレート9が外れてしまった場合あるいは意図的にインジケータプレート9が外された場合に、リモート運転コントローラ23が露出してしまう問題がある。しかし、本実施の形態であれば、リモート運転コントローラ23全体が視認されないように開閉カバー25によって覆われており、しかも、開閉カバー25には、ロック手段45が設けられている。よって、技術者以外の者により、誤ってあるいは悪戯でリモート運転コントローラ23が操作されてしまうことを確実に防止することができる。
【0023】
実施の形態2.
次に、図3を参照しながら本発明の実施の形態2に係る乗場組込リモート運転制御装置について説明する。本実施の形態2は、以下に説明する部分を除いては、上記実施の形態1と同様であるものとする。図3は、本発明の実施の形態2に係る乗場組込リモート運転制御装置の制御態様を示す図である。
【0024】
図3に示されるように、乗場組込リモート運転制御装置121は、上記実施の形態1において、開閉センサ147と、制御切り替え手段149とを備えている。
【0025】
開閉センサ147は、開閉カバー25の開閉に関する状態を検出するセンサであり、検出状態については特に限定はないが、例えば開閉カバー25が全閉状態にあるか否か、あるいは、開閉カバー25が僅かに開いているか否かといった状態を検出するものである。また、センサのタイプも特に限定はないが、例えば開閉カバー25のように揺動扉タイプに対しては、開閉カバー25の揺動軸の回転量または回転角度位置を検出するタイプでもよいし、開閉カバー25の弧状の揺動軌跡の特定の対象位置(例えば全閉の位置)に開閉カバー25があるか否かを検出するタイプでもよい。いずれにしても、扉の開閉状態に関する状態を検出する周知のセンサを利用することができる。
【0026】
制御切り替え手段149には、開閉センサ147が接続されており、開閉センサ147による検出結果を受けている。制御切り替え手段149は、各乗場の呼び手段やかごの呼び手段に基づいたサービス運転時の通常の運転制御と、リモート運転コントローラ23による制御とを選択的に切り替える。具体的には、制御切り替え手段149は、開閉センサ147によって、開閉カバー25が開いていることが検出されると、通常の運転制御を無効にし且つリモート運転コントローラ23による制御を有効にし、開閉カバー25が閉じていることが検出されると、リモート運転コントローラ23による制御を無効にし且つ通常の運転制御を有効にする。
【0027】
このような本実施の形態2に係る乗場組込リモート運転制御装置によっても、上記実施の形態1と同様、予期しない突然の機会に予定されていない技術者がエレベータのリモート運転を行わなければならない場面であっても、速やか且つ確実に利用できるようにリモート運転コントローラを用意しておくことができる。さらに、同様に、技術者以外の者により、誤ってあるいは悪戯でリモート運転コントローラが操作されてしまうことを確実に防止することができる。
【0028】
加えて、本実施の形態2では、上記のように、誤ったリモート運転コントローラの操作を防止し且つリモート運転コントローラを使用する際には必ず動作させざるを得ない開閉カバーを、さらに、通常の運転制御とリモート運転コントローラによる制御との確実な切り替えのための手段の一つとしても機能させることが可能となっている。
【0029】
実施の形態3.
次に、図4を参照しながら本発明の実施の形態3に係る乗場組込リモート運転制御装置について説明する。本実施の形態3は、以下に説明する部分を除いては、上記実施の形態1と同様であるものとする。図4は、本発明の実施の形態3に係る乗場組込リモート運転制御装置の制御態様を示す図である。
【0030】
図4に示されるように、乗場組込リモート運転制御装置221は、上記実施の形態1において、ロックセンサ247と、制御切り替え手段149とを備えている。
【0031】
ロックセンサ247は、ロック手段45の施錠解錠に関する状態を検出するセンサであり、キータイプのロックの施錠解錠に関する状態を検出する周知のセンサを利用することができる。
【0032】
制御切り替え手段149には、ロックセンサ247が接続されており、ロックセンサ247による検出結果を受けている。制御切り替え手段149は、ロックセンサ247によって、解錠状態が検出されると、通常の運転制御を無効にし且つリモート運転コントローラ23による制御を有効にし、施錠状態が検出されると、リモート運転コントローラ23による制御を無効にし且つ通常の運転制御を有効にする。
【0033】
このような本実施の形態3に係る乗場組込リモート運転制御装置によっても、上記実施の形態1及び2と同様、予期しない突然の機会に予定されていない技術者がエレベータのリモート運転を行わなければならない場面であっても、速やか且つ確実に利用できるようにリモート運転コントローラを用意しておくことができる。さらに、同様に、技術者以外の者により、誤ってあるいは悪戯でリモート運転コントローラが操作されてしまうことを確実に防止することができる。
【0034】
加えて、本実施の形態3では、上記のように、誤ったリモート運転コントローラの操作を防止し且つリモート運転コントローラを利用する際には必ず動作させざるを得ないロック手段を、さらに、通常の運転制御とリモート運転コントローラによる制御との確実な切り替えのための手段の一つとしても機能させることが可能となっている。
【0035】
以上、好ましい実施の形態を参照して本発明の内容を具体的に説明したが、本発明の基本的技術思想及び教示に基づいて、当業者であれば、種々の改変態様を採り得ることは自明である。
【符号の説明】
【0036】
1 乗場、9 インジケータプレート、21,121,221 乗場組込リモート運転制御装置、23 リモート運転コントローラ、25 開閉カバー、45 ロック手段、147 開閉センサ、149 制御切り替え手段、247 ロックセンサ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗場に設けられ、少なくとも呼び手段を表面側に支持するインジケータプレートと、
前記インジケータプレートの裏面側に設けられたリモート運転コントローラと、
前記インジケータプレート及び前記リモート運転コントローラの間に配置された開閉カバーとを備え、
前記開閉カバーには、ロック手段が設けられている
エレベータの乗場組込リモート運転制御装置。
【請求項2】
前記開閉カバーの開閉に関する状態を検出する開閉センサと、
前記開閉センサにより、開閉カバーが開いていることが検出されると、通常の運転制御の機能を無効化し且つリモート運転コントローラによる制御を実施させ、開閉カバーが閉じていることが検出されると、リモート運転コントローラによる制御を無効化し且つ通常の運転制御を実施させる、制御切り替え手段とを
備えた請求項1のエレベータの乗場組込リモート運転制御装置。
【請求項3】
前記ロック手段の施錠解錠に関する状態を検出するロックセンサと、
前記ロックセンサにより、解錠状態が検出されると、通常の運転制御を無効化し且つリモート運転コントローラによる制御を機能させ、施錠状態が検出されると、リモート運転コントローラによる制御を無効化し且つ通常の運転制御を実施させる、制御切り替え手段とを
備えた請求項1のエレベータの乗場組込リモート運転制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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