説明

エレベータの停電灯点検システム

【課題】点検者の高い注意力を維持することができ、点検の信頼性を高めることが可能なエレベータの停電灯点検システムを提供することである。
【解決手段】停電灯点検システム60は、点検スイッチ31と、制御装置61と、遠隔監視部62と、携帯電話63とで構成され、制御装置61は、停電灯点検手段35と、受付時間内に操作されたかごドア開閉釦18の操作信号に基づいて停電灯20の異常の有無を判定する判定手段36と、バッテリー点検手段37と、点検データを記憶部に保存するデータ保存手段38と、通報手段64とを含む。そして、判定手段36は、受付時間にかごドア開閉釦18の操作信号が取得されない場合には点検が未完了であると判定し、バッテリー点検手段37は、点検が未完了であることを記憶部33に保存する。また、遠隔監視部62は、登録手段65と、メール送信手段66とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレベータの停電灯点検システムに関し、より詳しくは、点検スイッチと、記憶部を含み、点検スイッチが操作されたときに停電灯を試験点灯させる制御装置とを備えたエレベータの停電灯点検システムに関する。
【背景技術】
【0002】
エレベータの乗りかご内には、停電時に点灯する停電灯が設置されている。停電灯は、メイン電源とは異なる電源、具体的には、乗りかごに設置されたバッテリーから電力が供給されるため、停電時においても点灯させることが可能である。つまり、停電灯は、停電により通常運転時に使用される照明装置への電力供給がストップした場合に、バッテリーから電力が供給されて点灯する照明装置である。
【0003】
一般的に、停電灯には、30分以上継続して点灯可能であること、そして、点灯中の照度が基準値以上であること(照度が変化しないこと)が要求される。したがって、エレベータの保守点検時には、停電灯が当該要求を満たして正常に動作することが確認される。しかし、従来の点検では、停電灯の試験点灯時間が10秒程度と短いため、より試験点灯時間を長くて点検の信頼性を高めたいという要求がある。
【0004】
なお、本発明に関連する技術として、乗場にいる乗客が点検札の表示を視認可能な位置まで点検札を三方枠外に突出させるように、点検札を移動させる点検札移動手段を備え、点検札移動手段は、点検者が携帯電話で遠隔監視センターに保守点検作業の開始時および終了時に送信するメール通報を受けて、遠隔監視センターから送信される指令に応じて作動されるエレベータ保守点検用システムが特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009‐286503号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
停電灯の試験点灯時間を長くすることにより、点検の信頼性をより向上させることができる。しかしながら、点検時間を長くすると点検者の注意力が低下するなどの問題が懸念され、例えば、照度低下等の異常を見落としてしまうことが考えられる。
【0007】
即ち、本発明の目的は、停電灯の試験点灯時間を長くした場合であっても、点検者の高い注意力を維持することができ、点検の信頼性を高めることが可能なエレベータの停電灯点検システムを提供することである。また、本発明の他の目的は、長期間にわたる停電灯の点検漏れを防止することが可能なエレベータの停電灯点検システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るエレベータの停電灯点検システムは、点検スイッチと、記憶部を含み、点検スイッチが操作されたときに停電灯を試験点灯させる制御装置と、を備えたエレベータの停電灯点検システムにおいて、制御装置は、停電灯の試験点灯中又は試験点灯終了時のかご内操作盤の操作信号に基づいて、停電灯の異常の有無を判定する判定手段と、判定された異常の有無を含む点検データを記憶部に保存するデータ保存手段とを含むことを特徴とする。
当該構成によれば、停電灯の試験点灯中又は試験点灯終了時に、かご内操作盤の操作を点検者に要求することで、停電灯の試験点灯時間を長くした場合であっても点検者の高い注意力を維持することができ、点検の信頼性を向上させることが可能になる。また、かご内操作盤の操作を行うことで点検結果が自動的に記憶されるので、点検結果の記録漏れを防止できる。
【0009】
また、制御装置の判定手段は、試験点灯中又は試験点灯終了時にかご内操作盤の操作信号が取得されない場合に、点検が未完了であると判定し、データ保存手段は、点検が未完了であることを記憶部に保存する構成であることが好ましい。
当該構成によれば、点検者がかご内操作盤の操作を怠った場合には点検未完了とし、その情報を記憶部に保存することができる。
【0010】
また、制御装置は、試験点灯中又は試験点灯終了時にかご内操作盤の操作信号を取得した場合に、停電灯に電力を供給するバッテリーの電圧を測定する設定としてもよい。
【0011】
また、本発明に係るエレベータの停電灯点検システムは、制御装置に接続され、記憶部から保存されたデータを取得可能な遠隔監視部と、遠隔監視部に無線接続され、点検者が携帯可能な無線通信端末とを更に備え、遠隔監視部は、制御装置から登録信号を取得したときに、点検作業を登録する登録手段と、登録から所定時間経過後に登録された点検作業に係る停電灯の点検データが記憶部に存在しない場合、又は記憶部から点検未完了のデータを取得した場合に、点検が未完了であることを無線通信端末に通知する通知手段とを含む構成とすることができる。
【0012】
また、本発明に係るエレベータの停電灯点検システムは、制御装置に接続され、記憶部から保存されたデータを取得可能な遠隔監視部を更に備え、制御装置は、停電灯の異常を示す点検データが記憶部に存在する場合又は予め設定された期間内の点検データが記憶部に存在しない場合に、遠隔監視部に対して、停電灯異常の通報又は停電灯点検未実施の通報を行う通報手段を含む構成とすることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係るエレベータの停電灯点検システムによれば、点検者の注意力を高めることができ、点検精度をより向上させることが可能になる。また、点検が未完了であることを点検者に知らせることで、長期間にわたる点検漏れを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第1実施形態であるエレベータの停電灯点検システムの概略構成を示す図である。
【図2】第1実施形態であるエレベータの停電灯点検システムの制御手順を示すフローチャートである。
【図3】本発明の第2実施形態であるエレベータの停電灯点検システムの概略構成を示す図である。
【図4】第2実施形態であるエレベータの停電灯点検システムの制御手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図面を用いて、本発明に係るエレベータの停電灯点検システムの実施形態につき、以下詳細に説明する。なお、実施形態では、上部機械室13を有するロープ式のエレベータ10において、乗りかご12に設置された停電灯20及び停電灯20に電力を供給するバッテリー21の点検を行う停電灯点検システム30,60として説明する。
【0016】
<第1実施形態>
図1及び図2を参照して、第1実施形態を詳細に説明する。
図1に示すように、停電灯点検システム30は、エレベータ10に設置されるシステムであって、エレベータ10の一部を構成している。停電灯点検システム30は、点検スイッチ31と、点検スイッチ31が操作されたときに停電灯20を試験点灯させる制御装置32とで構成されている。なお、制御装置32は、エレベータ10の全体を制御する装置であって、停電灯点検システム30としての制御機能を含むものとして説明する。
【0017】
まず、エレベータ10の概略構成について説明する。
図1に示すように、エレベータ10は、昇降路11内において、乗りかご12が各階床に設置された乗場(図示せず)の間を昇降する昇降機構部と、その動作を制御する制御装置32とで構成されている。なお、乗場は、乗りかご12に乗降するための場所であって、通常、各階床に設けられている。乗場の壁面には、乗場ドアや制御装置32に接続された乗場操作盤が設置されている。
【0018】
昇降路11は、乗りかご12の昇降通路であって、その最下部には、緩衝器等が設置されたピットが設けられ、その天井裏には、上部機械室13が設けられている。そして、上部機械室13には、巻上げ機14や制御装置32が設置されている。巻上げ機14のシーブには、一端が乗りかご12の上部、他端がカウンターウエイトに連結された主ロープ15が巻回されており、巻上げ機14の駆動により主ロープ15が巻上げられ又は送り出されて、乗りかご12が昇降路11内を昇降することになる。
【0019】
乗りかご12は、利用者が乗り込むことのできる室内スペースを有し、巻上げ機14の駆動により昇降路11内を昇降する。乗りかご12内の壁面には、制御装置32と接続されたかご内操作盤16が設置されている。そして、かご内操作盤16には、行き先階登録釦17、かごドア開閉釦18、及び点検スイッチ31等が設けられている。また、乗りかご12には、図示しないかごドアやかごドア開閉装置、照明装置19、停電灯20、停電灯20に電力を供給するバッテリー21等が設置されている。
【0020】
かごドア開閉釦18は、かごドアを開閉するための釦であって、開釦22と閉釦23とで構成されている。上記のように、かご内操作盤16は、制御装置32に接続されているので、開釦22及び閉釦23の操作信号は、例えば、制御装置32を介して、かごドア開閉装置に送信される。そして、かごドア開閉装置は、当該操作信号に基づいて、かごドアを開扉又は閉扉する。また、かごドア開閉釦18は、詳しくは後述するように、停電灯20の点検時にも使用される。
【0021】
照明装置19は、乗りかご12内を照らす機能を有し、例えば、乗りかご12内の天井に設置されている。一般的に、照明装置19は、乗りかご12内に利用者が乗っているときに点灯され、乗りかご12内に利用者がいないときには消灯されている。なお、照明装置19には、巻上げ機14やかごドア開閉装置などの設備と同様に、図示しないメイン電源から電力が供給されている。ゆえに、停電によりメイン電源からの電力供給がストップすると、乗りかご12内に利用者が乗っていても照明装置19は消灯する。
【0022】
停電灯20は、停電発生時に点灯する照明装置であって、乗りかご12に設置されたバッテリー21から電力が供給されることで点灯する。即ち、停電灯20は、停電発生時において、照明装置19に代わって乗りかご12内を照らす機能を有する。なお、停電発生時には、通常、乗りかご12の昇降がストップするので、停電灯20には、30分以上継続して点灯可能であること、点灯中の照度が基準値以上である等が要求される。
【0023】
以下、停電灯点検システム30の構成を具体的に説明する。
【0024】
停電灯点検システム30は、上記のように、点検スイッチ31と、制御装置32とで構成される。点検スイッチ31は、停電灯20の点検作業を実施するときに操作されるスイッチであって、例えば、かご内操作盤16のキーボックス内に設けられている。なお、点検スイッチ31としては、所謂、上下灯スイッチ等の既設のスイッチを利用することができる。点検スイッチ31を操作すると、自動運転モードから保守点検モードに切り換えることができ、例えば、乗場呼びに応答しなくなり、図示しない乗りかご12の上下灯が点灯すると同時に、照明装置19が一時的に消灯して停電灯20が試験点灯する。
【0025】
制御装置32は、停電灯点検システム30を含む、エレベータ10の各構成要素を統一的に制御する装置である。制御装置32は、停電灯点検システム30の制御手段として、停電灯点検手段35と、判定手段36と、バッテリー点検手段37と、データ保存手段38とを含む。なお、制御装置32は、CPUと、制御パラメータや制御プログラムを記憶する記憶部33と、制御パラメータ等の入力に用いられる入力部(例えば、制御装置操作盤34)と、入出力ポートなどを備えるコンピュータであり、上記各手段の機能はソフトウェアを実行することで実現できる。
【0026】
制御装置32の記憶部33は、制御パラメータや制御プログラムを記憶していると共に、停電灯点検システム30による点検データ等を記憶する機能を有し、一般的なメモリ装置から構成することができる。なお、制御プログラム等を記憶するメモリ装置と、点検データを記憶するメモリ装置とを分けて構成することもできる。
【0027】
停電灯点検手段35は、点検スイッチ31が操作されたときに停電灯20を試験点灯させる機能を有する。例えば、制御装置操作盤34は、点検スイッチ31の操作信号を取得したときに、照明装置19を消灯して停電灯20を点灯させる。停電灯20の試験点灯時間としては、例えば、1分間以上(60秒以上)に設定される。本実施形態では、試験点灯時間が70秒であり、60秒経過時点で後述の第1発信音が鳴動し、70秒経過時点(つまり試験点灯終了時点)で停電灯20を消灯して照明装置19を点灯させる。
【0028】
判定手段36は、停電灯20の試験点灯中又は試験点灯終了時のかご内操作盤16の操作信号に基づいて、停電灯20の異常の有無を判定する機能を有する。例えば、判定手段36は、停電灯20の試験点灯中又は試験点灯終了時に、第1発信音を鳴動させて点検者にかご内操作盤16の操作のタイミングを知らせ、かご内操作盤16の操作信号を取得する。第1発信音を鳴動させるタイミングとしては、試験点灯の終了間際(例えば、試験点灯時間が70秒の場合、60秒経過時点)や試験点灯終了時点であることが好ましい。そして、判定手段36が、かご内操作盤16の操作信号を取得する時間、即ち判定手段36によって操作信号が受け付けられる時間(以下、受付時間とする)は、例えば、第1発信音の鳴動後数秒以内に設定される。ゆえに、点検者は受付時間内にかご内操作盤16を操作する必要がある。
【0029】
なお、停電灯20に異常がないとき及び異常があるときにそれぞれ操作されるべきかご内操作盤16の釦等が予め設定されており、判定手段36は、どの釦等が操作されたかを特定することで異常の有無を判定する。判定手段36は、例えば、かごドア開閉釦18の開釦22の操作信号を取得したときには異常なしと判定し、閉釦23の操作信号を取得したときには異常ありと判定する。この場合は、開釦22が正常時(異常がないとき)に操作される釦、閉釦23が異常時に操作される釦として予め設定されている。一方、判定手段36は、受付時間内に、かごドア開閉釦18の操作信号が取得されないときには、点検が未完了であると判定する。
【0030】
バッテリー点検手段37は、上記かごドア開閉釦18の操作信号を取得したときに、停電灯20に電力供給中のバッテリー21の電圧を測定する機能を有する。バッテリー21には、例えば、図示しない電圧計が設置されており、バッテリー点検手段37は、かごドア開閉釦18の操作信号を取得することを条件として電圧計の検出値を取得する。そして、取得した検出値と予め設定された基準値範囲とを比較して、検出値が基準範囲内にあるか否かを判定する。更に、バッテリー点検手段37は、検出値が基準範囲内にあり異常がないと判定したときには、第2発信音を鳴動させ、検出値が基準範囲外にあり異常があると判定したときには、第3発信音を鳴動させて、点検者に異常の有無を知らせる機能を有する。なお、第1〜第3発信音は、区別可能な音であれば特に限定されず、例えば、既設のかご内スピーカ等を利用して出力することができる。
【0031】
データ保存手段38は、判定手段36によって判定された停電灯20の異常の有無を含む点検データを記憶部33に保存する機能を有する。また、データ保存手段38は、判定手段36によって点検が未完了であると判定されたときには、点検が未完了であることを記憶部33に保存する。保存されるデータとしては、停電灯20の異常の有無やバッテリー電圧の異常の有無、点検日時等が挙げられる。また、照度のレベル(例えば、行き先階登録釦17を用いて設定)や電圧値等を保存してもよい。
ここで、保存されるデータを例示する。
(例1)2010年10月20日
電灯点灯状態・照度:正常 バッテリー電圧:正常
(例2)2010年10月30日
電灯点灯状態・照度:異常 バッテリー電圧:正常
(例3)2010年10月10日
電灯点灯状態・照度:未完了 バッテリー電圧:−
【0032】
ここで、図2のフローチャートを参照して、停電灯点検システム30による制御手順を例示する。
【0033】
まず初めに、点検スイッチ31の操作信号を取得し(S10)、停電灯20を70秒間試験点灯させる(S11)。S10及びS11の手順は、停電灯点検手段35の機能によって実行される。つまり、停電灯点検手段35は、点検スイッチ31が操作されたか否かを判定して、点検スイッチ31が操作されたときに停電灯20を試験点灯させる。また、試験点灯中は、停電灯20の照度を確認し易くするために照明装置19を消灯することが好ましい。
【0034】
次に、試験点灯開始から60秒経過した時点で第1発信音を出力する(S12)。そして、第1発信音の鳴動後、受付時間内にかごドア開閉釦18の操作信号を取得する(S13)。かごドア開閉釦18の操作信号を取得したときには、開釦22又は閉釦23のいずれの操作に基づく操作信号であるかを識別して(S14)、開釦22の操作信号を取得したときは異常なしと判定し(S15)、閉釦23の操作信号を取得したときは異常ありと判定する(S16)。つまり、点検者は、停電灯20の照度等に異常がないと判断したときには開釦22を操作し、照度等に異常があると判断したときには閉釦23を操作する。 一方、受付時間内にかごドア開閉釦18の操作信号を取得しないときには、点検が未完了であると判定する(S17)。なお、S12〜S17の手順は、判定手段36の機能によって実行される。
【0035】
次に、停電灯20の試験点灯の点検データ(点検結果)を記憶部33に保存する(S18)。また、点検未完了の判定がなされたときには、上記例3に示すように、点検未完了のデータを記憶部33に記憶する(S19)。なお、S18及びS19の手順は、データ保存手段38の機能によって実行される。
【0036】
次に、かごドア開閉釦18が操作されたことを条件として、バッテリー21の電圧を測定する(S20)。この手順は、バッテリー点検手段37の機能によって実行される。バッテリー点検手段37は、かごドア開閉釦18の操作信号を取得し、バッテリー21に設置された電圧計からバッテリー電圧を取得する。そして、バッテリー電圧が予め設定された基準範囲内であるか否かを判定し(S21)、異常がないと判定したときには第2発信音を出力し(S22)、異常があると判定したときには第3発信音を出力する(S23)。このようにして、バッテリー電圧の異常の有無を点検者に知らせることができる。なおS21〜S23の手順も、バッテリー点検手段37の機能によって実行される。
【0037】
最後に、データ保存手段38の機能によってバッテリー電圧の異常の有無を記憶部33に保存する(S24)。なお、S14〜S18の手順とS20〜S24の手順とは、同時に実行することができ、またS18及びS24のデータ保存手順は1つの手順として実行することもできる。
【0038】
以上のように、停電灯点検システム30は、点検スイッチ31の操作に基づいて停電灯20の試験点灯を実行する停電灯点検手段35と、停電灯20の試験点灯終了間際に発信音を出力して点検者にかごドア開閉釦18の操作を促し、受付時間内に操作されたかごドア開閉釦18の操作信号に基づいて停電灯20の異常の有無を判定する判定手段36と、かごドア開閉釦18が操作信号を取得したときにバッテリー21の電圧を測定するバッテリー点検手段37と、判定された異常の有無を含む点検データを記憶部に保存するデータ保存手段38と、を含む制御装置32を備える。
また、判定手段36は、受付時間にかごドア開閉釦18の操作信号が取得されない場合には、点検が未完了であると判定し、バッテリー点検手段37は、点検が未完了であることを記憶部33に保存する。
【0039】
上記構成を備える停電灯点検システム30によれば、停電灯20の試験点灯終了間際に、かごドア開閉釦18の操作を点検者に要求することで、試験点灯時間を長くした場合であっても点検者の高い注意力を維持することができ、点検の信頼性を向上させることが可能になる。また、点検者がかごドア開閉釦18の操作を怠った場合には点検未完了とし、その情報を記憶部33に保存することで、長期間にわたる点検漏れを防止できる。
【0040】
なお、上記では、バッテリー点検手段37は、かごドア開閉釦18の操作信号を取得したときにバッテリー電圧を測定するものとして説明したが、かごドア開閉釦18の操作に関らず、例えば、点検スイッチ31の操作信号を取得することを条件としてバッテリー電圧を測定してもよい。
【0041】
また、上記では、かごドア開閉釦18を利用して停電灯20の異常を判定するものとして説明したが、かご内操作盤16に停電灯20の点検に係る専用スイッチ等を設けて、当該専用スイッチの操作に基づき種々の制御手順を実行してもよい。或いは、かごドア開閉釦18以外の既存設備を利用してもよい。
【0042】
<第2実施形態>
図3及び図4を参照して、第2実施形態を詳細に説明する。
なお、第2実施形態において、第1実施形態と同一の構成要素については、同一の符号を付して重複する説明を省略する。
【0043】
図3に示すように、停電灯点検システム60は、エレベータ50に設置されたシステムであって、点検スイッチ31と、制御装置61と、制御装置61に接続された遠隔監視部62と、遠隔監視部62と無線通信可能な無線通信端末である携帯電話63とで構成されている。そして、制御装置61は、停電灯点検手段35、判定手段36、バッテリー点検手段37、及びデータ保存手段38に加え、通報手段64を含む。また、遠隔監視部62は、登録手段65と、メール送信手段66とを含む。
【0044】
遠隔監視部62としては、エレベータ10を含む管轄地域内に設置された指定のエレベータ等を一括して監視する遠隔監視センター(遠隔監視センターのコンピュータ)が例示できる。遠隔監視部62は、制御装置61に接続され、その記憶部33に保存されたデータを取得可能である。また、遠隔監視部62は、制御装置操作盤34の操作信号等を取得することもでき、点検者が点検作業時に携帯する携帯電話63に各種情報を送信することもできる。
【0045】
携帯電話63は、遠隔監視センターと点検者との連絡を可能にするため、点検作業に出向く点検者は通常所持している。携帯電話63としては、遠隔監視部62と無線通信可能であり、点検作業時に携帯できるものであれば特に限定されない。
【0046】
通報手段64は、停電灯20の異常を示す点検データが記憶部33に存在する場合又は予め設定された期間内(例えば、最近6ヶ月間)の点検データが記憶部33に存在しない場合に、遠隔監視部62に対して、停電灯異常の通報又は停電灯点検未実施の通報を行う機能を有する。なお、バッテリー21の電圧の異常についても通報対象にできるが、バッテリー電圧については、現場での確認作業が必ずしも必要ではないため、遠隔監視部62により遠隔監視することもできる。
【0047】
登録手段65は、例えば、制御装置操作盤34で登録操作がなされたときに当該操作による操作信号を取得して、操作信号が取得されたエレベータ50の点検作業を登録する機能を有する。制御装置操作盤34には、所謂メンテスイッチと呼ばれるスイッチが設置されており、当該スイッチの操作信号を取得した登録手段65は、遠隔監視部62による遠隔監視を休止し、エレベータ50が点検作業中であることを登録する。なお、点検者により作業終了予定時間も登録され、当該作業終了予定時間を経過した場合又は点検作業の終了登録がなされた場合には、遠隔監視部62による遠隔監視が復旧される。
【0048】
メール送信手段66は、点検が未完了であることを携帯電話63に通知する通知手段である。具体的に、メール送信手段66は、上記点検作業の登録から所定時間経過後、つまり作業終了予定時間を経過したとき又は点検作業の終了登録がなされたときに、記憶部33に保存されたデータを取得する。そして、メール送信手段66は、記憶部33から点検未完了のデータを取得した場合、或いは登録された点検作業に係る停電灯20の点検データが記憶部33に存在しない場合に、点検が未完了であることを点検者の携帯電話63にメールで通知する。なお、通知手段としては、メール送信以外の手段、例えば、携帯電話63に電話をかけて点検が未完了であることを通知することもできる。
【0049】
ここで、図4のフローチャートを参照して、停電灯点検システム60による制御手順を例示する。なお、S12〜S26の手順は、図2に示す停電灯点検システム30による制御手順(S10〜S24)と同じであるから、以下では、その説明を省略する。
【0050】
まず初めに、制御装置操作盤34のメンテスイッチの操作信号を取得し(S10)、点検作業の登録を行う(S11)。S10及びS11の手順は、遠隔監視部62の登録手段65の機能によって実行される。つまり、登録手段65は、制御装置操作盤34のメンテスイッチが操作されたか否かを判定して、メンテスイッチが操作されたときに遠隔監視を休止し、エレベータ50が点検作業中であることを登録する。
【0051】
そして、S14で第1発信音が鳴動してから受付時間内にかごドア開閉釦18が操作されず、点検未完了のデータが記憶部33に保存された場合であって(S15,S19,S21)、遠隔監視が復旧されるときに、点検が未完了であることを点検者の携帯電話63にメールで通知する(S27)。S27の手順は、メール送信手段66の機能によって実行され、当該手順により、点検が未完了であることを点検者に知らせて、再点検を促すことができる。
【0052】
また、点検作業登録の有無に関わらず、例えば、6ヶ月以内の点検データが記憶部33に存在しない場合、又は停電灯20の異常を示す点検データが記憶部33に保存されている場合には、遠隔監視部62にその内容を通報する(S28,S29)。この手順は、通報手段64の機能によって実行され、当該手順により、長期間にわたる点検漏れを防止することができる。
【0053】
なお、上記では、いずれの実施形態においても、バッテリー点検手段37を備えるものとして説明したが、例えば、停電灯点検システム60は、バッテリー点検手段37を備えない構成であってもよい。
【符号の説明】
【0054】
10,50 エレベータ、11 昇降路、12 乗りかご、13 上部機械室、14 巻上げ機、15 主ロープ、16 かご内操作盤、17 行き先階登録釦、18 かごドア開閉釦、19 照明装置、20 停電灯、21 バッテリー、22 開釦、23 閉釦、30,60 停電灯点検システム、31 点検スイッチ、32,61 制御装置、33 記憶部、34 制御装置操作盤、35 停電灯点検手段、36 判定手段、37 バッテリー点検手段、38 データ保存手段、62 遠隔監視部、63 携帯電話、64 通報手段、65 登録手段、66 メール送信手段。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
点検スイッチと、
記憶部を含み、点検スイッチが操作されたときに停電灯を試験点灯させる制御装置と、
を備えたエレベータの停電灯点検システムにおいて、
制御装置は、
停電灯の試験点灯中又は試験点灯終了時のかご内操作盤の操作信号に基づいて、停電灯の異常の有無を判定する判定手段と、
判定された異常の有無を含む点検データを記憶部に保存するデータ保存手段と、
を含むことを特徴とするエレベータの停電灯点検システム。
【請求項2】
請求項1に記載のエレベータの停電灯点検システムにおいて、
判定手段は、試験点灯中又は試験点灯終了時にかご内操作盤の操作信号が取得されない場合に、点検が未完了であると判定し、
データ保存手段は、点検が未完了であることを記憶部に保存することを特徴とするエレベータの停電灯点検システム。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のエレベータの停電灯点検システムにおいて、
制御装置は、試験点灯中又は試験点灯終了時にかご内操作盤の操作信号を取得した場合に、停電灯に電力を供給するバッテリーの電圧を測定することを特徴とするエレベータの停電灯点検システム。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1に記載のエレベータの停電灯点検システムにおいて、
制御装置に接続され、記憶部から保存されたデータを取得可能な遠隔監視部と、
遠隔監視部と無線接続され、点検者が携帯可能な無線通信端末と、
を備え、
遠隔監視部は、
制御装置から登録信号を取得したときに、点検作業を登録する登録手段と、
登録から所定時間経過後に登録された点検作業に係る停電灯の点検データが記憶部に存在しない場合、又は記憶部から点検未完了のデータを取得した場合に、点検が未完了であることを無線通信端末に通知する通知手段と、
を含むことを特徴とするエレベータの停電灯点検システム。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれか1に記載のエレベータの停電灯点検システムにおいて、
制御装置に接続され、記憶部から保存されたデータを取得可能な遠隔監視部を備え、
制御装置は、停電灯の異常を示す点検データが記憶部に存在する場合又は予め設定された期間内の点検データが記憶部に存在しない場合に、遠隔監視部に対して、停電灯異常の通報又は停電灯点検未実施の通報を行う通報手段を含むことを特徴とするエレベータの停電灯点検システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−153448(P2012−153448A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−11749(P2011−11749)
【出願日】平成23年1月24日(2011.1.24)
【出願人】(000236056)三菱電機ビルテクノサービス株式会社 (1,792)
【Fターム(参考)】