説明

エレベータの戸開時間延長装置

【課題】本発明は、残りの戸開時間をより明確に利用者に知らせるとともに、戸閉ボタンの誤操作を防止することを目的とするものである。
【解決手段】ダイヤル操作部5は、基準位置から所望の延長時間に応じた角度だけ回動操作されると、戸閉開始までの残りの戸開時間に応じて逆方向へ自動的に回動して基準位置に戻る。ダイヤル操作部5は、円筒状のダイヤル本体5aと、ダイヤル本体5aから径方向外側へ突出した矢印状の指針部5bとを有している。ダイヤル本体5aは、戸開ボタン2を囲繞している。操作盤1のダイヤル操作部5の周囲には、ダイヤル操作部5の回動位置に対応する残りの戸開時間を表示した時間目盛部6が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば荷物用エレベータ等に設けられ、かごの戸及び乗場の戸が全開となっている時間を通常の設定時間よりも延長するエレベータの戸開時間延長装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
エレベータの戸開時間延長装置は、かご内操作盤又は乗場操作盤に設置されており、かごの戸及び乗場の戸が全開となっている時間を通常よりも延長させ、荷物の搬入・搬出時間や身体障害者の乗降時間を確保する装置である。
【0003】
従来のエレベータでは、戸開時間延長ボタンに応答灯が内蔵されており、戸開時間延長ボタンが押されると、残りの戸開時間に応じた周期で応答灯が点滅される(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、従来のエレベータの戸開延長装置では、戸開時間延長ボタンが押されている時間、又は押された回数に応じて、演算部により戸開延長時間が演算される。また、発光色の異なる複数の表示灯が戸開時間延長ボタン内に設けられており、残りの戸開時間に応じた発光色の表示灯が点灯される(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平6−271258号公報
【特許文献2】特開平7−315735号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のような従来の戸開延長装置では、設定された戸開延長時間、及び表示灯の点滅や色の意味が、一般の利用者、特にそのエレベータを初めて利用する利用者等に知らされていないため、利用者は、何秒後に戸閉動作が開始されるかが分からなかった。このため、戸閉動作の開始に常に気を配りながら、搬入・搬出作業等を続けなければならず、作業に集中することができなかった。また、従来の戸開時間延長ボタンは、戸閉ボタンと同じタイプの押しボタンであるため、不意に戸閉動作が開始され、戸開時間を延長させたいときに、誤って戸閉ボタンを押してしまう恐れがあった。
【0007】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、残りの戸開時間をより明確に利用者に知らせることができるとともに、戸閉ボタンの誤操作を防止することができるエレベータの戸開時間延長装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明に係るエレベータの戸開時間延長装置は、操作盤に設けられ、基準位置から所望の延長時間に応じた角度だけ回動操作されると、残りの戸開時間に応じて逆方向へ回動して基準位置に戻るダイヤル操作部、及び操作盤に設けられ、ダイヤル操作部の回動位置に対応する残りの戸開時間を表示した時間目盛部を備えている。
【発明の効果】
【0009】
この発明のエレベータの戸開時間延長装置は、ダイヤル方式の操作部及び目盛を用いて、延長時間の設定と残りの戸開時間の表示とを行うようにしたので、残りの戸開時間をより明確に利用者に知らせることができるとともに、戸閉ボタンの誤操作を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】この発明の実施の形態1によるエレベータの操作盤の要部を示す正面図である。
【図2】図1に示した部分を下方から見た図である。
【図3】図1のダイヤル操作部及び時間目盛部を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、この発明を実施するための形態について、図面を参照して説明する。
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1によるエレベータの操作盤の要部を示す正面図、図2は図1に示した部分を下方から見た図、図3は図1のダイヤル操作部及び時間目盛部を示す斜視図である。
【0012】
図において、操作盤(かご内操作盤又は乗場操作盤)1には、戸開ボタン2及び戸閉ボタン3が設けられている。戸開ボタン2及び戸閉ボタン3は、操作盤1の幅方向(図1の左右方向)に互いに間隔をおいて、操作盤1の上下方向の同じ位置に配置されている。また、戸開ボタン2及び戸閉ボタン3の正面形状は円形である。
【0013】
操作盤1は、かごの戸及び乗場の戸(図示せず)の開閉を制御するドア制御部4に接続されている。戸開ボタン2が押圧操作されることにより、かごの戸及び乗場の戸を開放するための指令がドア制御部4に入力される。また、戸閉ボタン3が押圧操作されることにより、かごの戸及び乗場の戸を閉鎖するための指令がドア制御部4に入力される。
【0014】
操作盤1の戸開ボタン2の外側には、かごの戸及び乗場の戸が全開となっている時間を通常の設定時間よりも延長するためのダイヤル操作部5が設けられている。ダイヤル操作部5は、操作盤1の正面に垂直な軸を中心として回動操作可能となっている。また、ダイヤル操作部5は、基準位置(図1の位置)から所望の延長時間に応じた角度だけ回動操作されると、戸閉開始までの残りの戸開時間に応じて逆方向へ自動的に回動して基準位置に戻る。
【0015】
さらに、ダイヤル操作部5は、円筒状のダイヤル本体5aと、ダイヤル本体5aから径方向外側へ突出した矢印状の指針部5bとを有している。ダイヤル本体5aは、戸開ボタン2を囲繞している。即ち、戸開ボタン2は、ダイヤル本体5aの内側に配置されている。ダイヤル操作部5の回動操作は、ダイヤル本体5aの外周を指で摘むことで行う。このため、ダイヤル本体5aの外周面には、操作時の滑り止めとして、軸方向に平行な多数の微小な溝が設けられている。
【0016】
操作盤1のダイヤル操作部5の周囲には、ダイヤル操作部5の回動位置に対応する残りの戸開時間を表示した時間目盛部6が設けられている。この例では、1回の操作による最大の戸開延長時間を180秒とし、時間目盛部6には、0秒から180秒までの目盛が描かれている。ダイヤル操作部5が基準位置にあるとき、指針部5bは時間目盛部6の0秒を指している。また、指針部5bや時間目盛部6の表示を、例えば赤色等に着色し、目立つようにしてもよい。
【0017】
操作盤1内には、設定時間の範囲(0秒〜180秒)外へ回動できないようにダイヤル操作部5の回動範囲を規制するストッパ(図示せず)が設けられている。この例では、ダイヤル操作部5の回動範囲が、基準位置から270°までに設定されている。
【0018】
戸開ボタン2は、ダイヤル操作部5が基準位置にあるときのみ機能し、基準位置以外の位置では機能しないようになっている。即ち、ドア制御部4は、ダイヤル操作部5が基準位置にあるときに戸開ボタン2の操作を有効とし、ダイヤル操作部5が基準位置以外に回動されているときに戸開ボタン2の操作を無効とする。
【0019】
ダイヤル操作部5の動作機構は、図示は省略したが、ぜんまいばねを用いた機械式タイマの構造となっている。ダイヤル操作部5を任意の時間まで回動させ、戸開延長時間を設定すると、すぐにタイマが機能し、ダイヤル操作部5は、ぜんまいばねの復元力により左回り(図1の反時計方向)に徐々に回転する。ダイヤル操作部5のタイマは、戸開の継続時間が時間目盛部6の目盛に合わせて減少するように調節されている。指針部5bが0秒に達すると、ドア制御部4からドアモータ(図示せず)に戸閉信号が出力され、戸閉動作が開始される。
【0020】
また、戸開時間の延長中に、ダイヤル操作部5を延長側へさらに回動操作し、延長時間を追加することも可能である。さらに、作業が早く済めば、戸閉ボタン3を押して戸開延長を終了することもできる。
【0021】
このようなエレベータの戸開時間延長装置では、ダイヤル方式の操作部及び目盛を用いて、延長時間の設定と残りの戸開時間の表示とを行うようにしたので、残りの戸開時間をより明確に利用者に知らせることができるとともに、戸閉ボタン3の誤操作を防止することができる。
【0022】
即ち、戸開延長した場合、利用者は、時間目盛部6の目盛を読むことにより残り時間を目視で明確に認識することができる。また、アナログ表示なので、デジタル表示よりも残り時間を瞬時に把握することができる。さらに、ダイヤル方式は、押圧操作ではなく回転操作であり、戸閉ボタン3とは操作方式が異なるため、咄嗟の判断でも戸閉ボタン3を誤操作することがなくなる。
【0023】
なお、戸開ボタン2は、ダイヤル操作部5を回動操作したときにダイヤル本体5aとともに回動するようにしてもよい。
また、実施の形態1では、ダイヤル操作部5の内側に戸開ボタン2を配置したが、ダイヤル操作部5は、戸開ボタン2に対して間隔をおいて配置してもよい。即ち、ダイヤル操作部5は、戸開ボタン2とは別に、戸開ボタン2の隣や上下等に設けてもよい。
さらに、時間目盛部がダイヤル操作部とともに回動するようにして、指針部を操作盤又は戸開ボタンに付してもよい。
さらにまた、ダイヤル操作部5の正面形状は、円形に限定されるものではなく、例えば多角形であってもよい。また、戸開ボタン2や戸閉ボタン3の正面形状も円形に限定されるものではなく、例えば四角形であってもよい。
【符号の説明】
【0024】
1 操作盤、3 戸開ボタン、5 ダイヤル操作部、5a ダイヤル本体、6 時間目盛部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
操作盤に設けられ、基準位置から所望の延長時間に応じた角度だけ回動操作されると、残りの戸開時間に応じて逆方向へ回動して基準位置に戻るダイヤル操作部、及び
上記操作盤に設けられ、上記ダイヤル操作部の回動位置に対応する残りの戸開時間を表示した時間目盛部
を備えていることを特徴とするエレベータの戸開時間延長装置。
【請求項2】
上記ダイヤル操作部は円筒状のダイヤル本体を有し、上記ダイヤル本体の内側に戸開ボタンが設けられていることを特徴とする請求項1記載のエレベータの戸開時間延長装置。
【請求項3】
上記ダイヤル操作部は、ぜんまいばねを用いた機械式タイマの動作機構を有していることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のエレベータの戸開時間延長装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−190019(P2011−190019A)
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−56344(P2010−56344)
【出願日】平成22年3月12日(2010.3.12)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】