説明

エレベータシステム

【課題】エレベータシステムにおいて、竣工後のエレベータシステムの乗りかご内において表示される意匠を自由に変更することである。
【解決手段】エレベータシステム10は、乗りかご21内に設けられる物品に意匠を表示する表示部22と、乗客が所有する意匠情報を取得する意匠情報取得部18と、意匠情報取得部18によって取得された意匠情報に基づいて、乗りかご21内に設けられる物品に表示する意匠の内容を変更させる制御部20と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレベータシステムに係り、特に、表示部を備えるエレベータシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、商業施設等の種々の場所において、エレベータシステムが設置されている。しかし、現在のエレベータシステムでは、乗りかご内の物品に表示される意匠は、竣工時の初期施工状態から年月が経過した後の大規模な意匠改修工事までの間は大きな変更等は無く、乗客がいつエレベータシステムを利用しても意匠が変更することがないため、日常的にそのエレベータシステムを利用する乗客にとっては面白みにかけることがある。
【0003】
本発明に関連する技術として、例えば、特許文献1には、エレベーターかごの意匠仕様検討システムとして、指示部、表示部、記憶部および制御部を備える構成が開示されている。そして、この制御部は、上記表示部にエレベーターかごの内部各部の意匠図を表示する意匠図表示手段と、上記表示部に上記エレベーターかごの内部各部の意匠仕様を表示するかご意匠仕様表示手段と、上記表示部に上記エレベーターかごの内部各部の名称を表示する名称表示手段と、上記指示部により上記名称表示手段で表示された名称のうち特定の名称が指示されたときその名称に相当する部分に使用するパーツ意匠仕様群を上記意匠図および上記かご意匠仕様とともに上記表示部に表示するパーツ意匠仕様表示手段とを備える構成が開示されている。さらに、上記指示部により上記パーツ意匠仕様表示手段で表示されたパーツ意匠仕様群のうちの一つが指示されたとき上記意匠図の該当部分を当該指示された材質又は色彩に変更するとともに上記意匠仕様の該当するデータを指示されたパーツ意匠仕様のデータに変更するデータ変更手段とを備える構成が開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、エレベーターのかご室の意匠決定用具として、開口部および差し込み口を有するケースと、上記差し込み口から差し込まれて上記開口部から見ることができる透明な複数のシートとからなり、この複数のシートにかご室の構成部分の意匠の絵を立体的に印刷し、この複数のシートを重ね合わせるとかご室内の意匠の絵が再構成されるようにした構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8−263537号公報
【特許文献2】特開平8−157165号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1は、乗りかごの意匠仕様を決定するためにマイクロコンピュータを用いたシステムであり、主にエレベータシステムの新設時又は乗りかご交換変更時に顧客に乗りかごの意匠を提案することはできるが、竣工後のエレベータシステムの乗りかご内において表示される意匠を自由に変更することはできない。
【0007】
また、上記特許文献2は、複数のシートを組み合わせて乗りかご内の意匠を決定する際に用いる道具であり、竣工後のエレベータシステムの乗りかご内において表示される意匠を自由に変更することはできない。
【0008】
本発明の目的は、竣工後のエレベータシステムの乗りかご内において表示される意匠を自由に変更することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係るエレベータシステムは、乗りかご内に設けられる物品に意匠を表示する表示部と、乗客が所有する意匠情報を取得する意匠情報取得部と、意匠情報取得部によって取得された意匠情報に基づいて、乗りかご内に設けられる物品に表示する意匠の内容を変更させる表示制御部と、を備えることを特徴とする。
【0010】
また、本発明に係るエレベータシステムにおいて、意匠情報取得部は、乗りかご内において乗客の意匠情報を無線で取得可能な領域である情報取得可能領域に入った乗客の意匠情報を無線で取得することが好ましい。
【0011】
また、本発明に係るエレベータシステムにおいて、意匠情報取得部は、乗りかご内に複数人の乗客が乗り込んできた場合には、最初に情報取得可能領域に入った取得された乗客の意匠情報を表示制御部に送信し、表示制御部は、最初に情報取得可能領域に入った乗客の意匠情報に基づいて、乗りかご内に設けられる物品に表示する意匠の内容を変更させることが好ましい。
【0012】
また、本発明に係るエレベータシステムにおいて、意匠情報取得部は、情報取得可能領域に入った乗客が最後の一人になった場合には、最後の一人になった乗客の意匠情報を取得し、該意匠情報を表示制御部に送信し、表示制御部は、最後の一人になった乗客の意匠情報に基づいて、乗りかご内に設けられた物品に表示する意匠の内容を変更させることが好ましい。
【0013】
また、本発明に係るエレベータシステムにおいて、表示部は、乗りかご内の側面壁に意匠を表示する有機EL表示部材であることが好ましい。
【0014】
また、本発明に係るエレベータシステムにおいて、乗りかご内に設けられる物品は、既設の乗りかご内の側面壁に沿って設けられる意匠表示用壁であり、表示部は、意匠表示用壁に意匠を表示する有機EL表示部材であることが好ましい。
【0015】
また、本発明に係るエレベータシステムにおいて、表示部は、乗りかご内の天井部に意匠を表示する有機EL表示部材であることが好ましい。
【0016】
また、本発明に係るエレベータシステムにおいて、表示部は、乗りかご内の乗りかご操作盤に意匠を表示する有機EL表示部材であることが好ましい。
【0017】
また、本発明に係るエレベータシステムにおいて、表示部は、乗りかご内の乗りかご扉に意匠を表示する有機EL表示部材であることが好ましい。
【0018】
また、本発明に係るエレベータシステムにおいて、意匠情報取得部は、乗客が表示部によって表示されることを望む意匠の内容が意匠情報として記録されたICタグから意匠情報を取得することが好ましい。
【0019】
また、本発明に係るエレベータシステムにおいて、表示制御部は、乗りかご内から全ての乗客が降りた場合に、初期設定された意匠の内容に表示を変更させることが好ましい。
【0020】
また、本発明に係るエレベータシステムにおいて、表示部は、色彩によって意匠の内容を変更することが好ましい。
【0021】
また、本発明に係るエレベータシステムにおいて、表示部は、模様によって意匠の内容を変更することが好ましい。
【発明の効果】
【0022】
上記構成のエレベータシステムによれば、意匠情報取得部によって取得された意匠情報に基づいて、乗りかご内に設けられる物品に表示する意匠の内容を変更させることができる。したがって、竣工後のエレベータシステムの乗りかご内において表示される意匠を自由に変更することができる。
【0023】
上記構成の乗客が表示部によって表示されることを望む意匠の内容が意匠情報として記録されたICタグから意匠情報を取得するエレベータシステムによれば、乗りかご内に設けられる物品において乗客が望む意匠を表示できるため、乗客がエレベータシステムを利用する際の楽しみが増す。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の実施の形態において、エレベータシステムを乗場側から見た様子を示す図である。
【図2】本発明の実施の形態において、エレベータシステムの各要素を説明するために乗場扉を開放している様子を示す図である。
【図3】本発明の実施の形態において、エレベータシステムのうち乗りかご内から乗場側を見た様子を示す図である。
【図4】本発明の実施の形態において、乗客のICタグに記録された情報に基づいて、乗りかごの側面壁に表示させる意匠の内容を変更する手順を示すフローチャートである。
【図5】本発明の実施の形態において、エレベータシステムを利用する乗客のICタグの情報に基づいて、乗りかごの側面壁に表示される意匠を変更させる様子を示す参考図である。
【図6】本発明の実施の形態において、乗客のICタグに記録された情報に基づいて、乗りかごの側面壁に表示させる意匠の内容を変更する手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下に、本発明に係る実施の形態について添付図面を参照しながら詳細に説明する。また、以下では、全ての図面において同様の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、以下では、表示部によって意匠が表示される物品であって、乗りかご内に設けられる物品は、側面壁、乗りかご扉、天井面、乗りかご操作盤、意匠表示用壁であるとして説明するが、これらが表示部によって意匠を表示される場合には、それぞれの物品は、適当な強度を有する透明部材を用いて構成することができる。また、以下では、表示部によって意匠が表示される側面壁は三方の側面壁として説明するが、開口を有する側面壁(乗りかご扉が設けられる壁)も含んだ四方の側面壁に意匠が表示されてもよい。また、以下では、表示部によって意匠が表示される物品であって、乗りかご内に設けられる物品は、側面壁、乗りかご扉、天井面、乗りかご操作盤、意匠表示用壁として説明するが、これら以外でも乗りかご内に設けられる物品であればよく、例えば、底面や天井面に設けられる照明器具であってもよい。
【0026】
図1は、エレベータシステム10を乗場8側から見た様子を示す図である。図2は、エレベータシステム10の各要素を説明するために乗場扉16を開放している様子を示す図である。図3は、エレベータシステム10において乗りかご21内から乗場8側を見た様子を示す図である。
【0027】
エレベータシステム10は、乗客5を所望の行先階まで移動させるための装置である。エレベータシステム10は、乗場8と、乗場壁9と、乗場操作盤12と、乗場三方枠14と、乗場扉16と、乗りかご21と、意匠情報取得部18と、制御部20と、表示部22とを含んで構成される。
【0028】
乗場8は、乗客5が乗りかご21の到着を待つための空間である。乗場壁9は、乗場8と、乗りかご21が昇降するための昇降路(図示しない)との間の境界に設置される壁である。
【0029】
乗場操作盤12は、乗場壁9に取り付けられる操作盤であり、乗りかご21を呼ぶための呼びボタンや乗りかご21が現在位置している階床位置を表示する表示部を有している。
【0030】
乗場三方枠14は、乗客5が乗りかご21に対して乗り降りするために乗場壁9に形成される開口の周囲に設けられる枠である。
【0031】
乗場扉16は、乗場三方枠14で囲まれた開口を開閉する片開き、あるいは、両開きの扉である。
【0032】
乗りかご21は、乗客5が所望の行先階まで移動する際に乗り込むための空間を有する装置である。そして、乗りかご21において乗客5が乗り込むための空間は、側面壁24a,24b,24c,24dと、乗りかご21内を照明するための照明が設けられた天井面25と、底面26とによって形成される。また、乗りかご21は、乗りかご操作盤29と、乗りかご扉27とを含んでいる。
【0033】
側面壁24aは、乗場8側から乗りかご21内を見た際に奥側に立設される壁である。側面壁24bは、乗場8側から乗りかご21内を見た際に左側に立設される壁である。側面壁24cは、乗場8側から乗りかご21内を見た際に右側に立設される壁である。側面壁24dは、乗りかご21内から乗場8側を見た際に乗りかご21の奥側に立設される壁であり、各階床に到着した際に乗客5が乗り降りするための開口が設けられている。
【0034】
乗りかご操作盤29は、側面壁24dに設けられる操作盤であり、乗りかご21内に乗り込んだ乗客5が所望の行先階を設定するボタンと、乗りかご21が現在位置している階床を表示する表示部を備えている。
【0035】
乗りかご扉27は、乗客5が乗りかご21に対して乗り降りするために、側面壁24dに形成される開口を開閉する片開き、あるいは、両開きの扉である。
【0036】
エレベータシステム10を利用しようとする乗客5が所有しているICタグ7(RFIDタグ)は、乗客5に関する身分証明情報が記録されているとともに、その乗客5が乗りかご21内の側面壁24a,24b,24cの三方の壁に表示させたい意匠の内容を意匠情報として記録する。ここで、表示させたい意匠の内容としては、例えば、三方の壁の全面を「赤色」「青色」「黄色」「紫色」「水色」「金色」「銀色」の色彩で統一してもよく、また、側面壁24aを「赤色」、側面壁24bを「黄色」、側面壁24cを「紫色」と各側面壁で別々の色彩に分けて表示してもよい。また、意匠の内容としては、種々の色彩を表示させる他、乗客5が好む種々の模様、例えば、「市松模様」や「縞模様」を表示させてもよい。
【0037】
表示部22は、乗りかご21内の側面壁24a,24b,24cの三方の壁の全面に意匠を表示する有機ELディスプレイ装置である。ここで、有機ELディスプレイ装置は、発光層が有機化合物のフィルムから成る発光ダイオードであって、有機化合物中に注入された電子と正孔の再結合によって生じた励起子によって発光する現象を利用している薄型ディスプレイ装置である。また、表示部22は、制御部20の制御によって乗りかご21内の側面壁24a,24b,24cに表示させる意匠(模様・色彩またはこれらの結合)の変更をする。なお、図2では、表示部22は、側面壁24aに配置されるように図示されているが、この図示された配置に限定されず、側面壁24a,24b,24cの全面に意匠を表示できるように配置されていればよく、例えば、側面壁24a,24b,24cの裏側面において、側面壁24a,24b,24cに跨って配置されていてもよい。
【0038】
意匠情報取得部18は、無線通信によってICタグ7に記録された情報を取得し、それらの情報を制御部20に送信する機能を有する。また、意匠情報取得部18は、ICタグ7に記録された情報を取得したか否かを判断する機能を有する。ここで、意匠情報取得部18は、乗りかご21内において、側面壁24bに取り付けられ、底面26から200センチメートルの範囲内の領域をICタグ7に記録された情報が取得可能な情報取得可能領域として設定されている。さらに、意匠情報取得部18は、情報取得可能領域においてICタグ7が存在するか否かで乗客5が乗りかご21にいるか否かを判断する機能を有する。
【0039】
制御部20は、表示部22に対して意匠表示指令を与える機能を有する。具体的には、制御部20は、意匠情報取得部18から意匠情報を取得していない場合には、意匠の初期設定として、例えば、背景色が白色で無模様の意匠を表示するように指令を与える。また、意匠情報取得部18から意匠情報を取得している場合に、その意匠情報が、例えば、背景色が青色で無模様の意匠を表示させることを望んでいる意匠情報である場合には、表示部22に背景色が青色で無模様の意匠を表示するように指令を与える。
【0040】
上記構成のエレベータシステム10の動作について、図1〜図4を用いて説明する。図4は、乗客5のICタグ7に記録された意匠情報に基づいて、乗りかご21の側面壁24a,24b,24cに表示させる意匠の内容を変更する手順を示すフローチャートである。まず、制御部20は、乗りかご21の側面壁24a,24b,24cに初期設定の意匠を表示させるように表示部22に指令を与える(S10)。具体的には、初期設定の意匠として、背景色が白色で無模様の意匠を乗りかご21の側面壁24a,24b,24cに表示させるように表示部22に指令を与える。
【0041】
そして、意匠情報取得部18は、乗客5の意匠情報を取得したか否かを判断する(S12)。意匠情報取得部18が乗客5の意匠情報を取得していないと判断した場合には、再びS12へと戻る。
【0042】
S12において、意匠情報取得部18が乗客5の意匠情報を取得したと判断した場合には、意匠情報取得部18は、制御部20に当該意匠情報を送信し、制御部20は、当該意匠情報に基づいた意匠を表示部22に表示させるように指令する(S14)。例えば、乗客5の意匠情報が、背景色が青色で無模様の意匠の表示を望んでいる場合には、そのような意匠を乗りかご21の側面壁24a,24b,24cに表示させるように指令する。
【0043】
次に、意匠情報取得部18は、乗りかご21内に乗客5がいるか否かを判断する(S16)。具体的には、意匠情報取得部18は、乗りかご21内の情報取得可能領域において、乗客5の意匠情報を取得できる場合には、乗りかご21に乗客5がいると判断して再びS16へと戻る。
【0044】
そして、S16において、意匠情報取得部18が、情報取得可能領域において乗客5の意匠情報を取得できない場合には、乗りかご21に乗客5がいないと判断し、さらにリターン処理を介して、制御部20は、再び乗りかご21の側面壁24a,24b,24cに初期設定の意匠を表示させるように表示部22に指令を与える(S10)。
【0045】
このように、エレベータシステム10によれば、乗りかご21内に乗り込んだ乗客5の所有するICタグ7に記録された意匠情報に基づいて、乗りかご21の側面壁24a,24b,24cの意匠を自由かつ瞬時に変更することができる。したがって、エレベータシステム10によれば、乗客5が望んで設定した意匠を乗りかご21の側面壁24a,24b,24cに表示できるため、乗客5がエレベータシステム10を利用する際の楽しみが増すという効果がある。
【0046】
図5は、エレベータシステム10を利用する乗客5のICタグ7の情報に基づいて、乗りかご21の側面壁24a,24b,24cに表示される意匠を変更させる様子を示す参考図である。図5(a)には、エレベータシステム10の乗場8付近において、乗場操作盤12を操作するために移動している様子が示されている。図5(b)には、乗客5が乗場操作盤12を操作して、乗りかご12が階床に到着した際に乗場扉16,乗りかご扉27が開いた様子を示す図である。このとき、乗りかご21の側面壁24a,24b,24cには、初期設定の意匠である「背景色が白色で無模様の意匠」が表示されている。図5(c)には、乗客5が乗りかご21に乗り込んで、意匠情報取得部18にICタグ7の意匠情報が取得されて、制御部20の制御によって表示部22が乗りかご21の側面壁24a,24b,24cが当該意匠情報に基づいた意匠(例えば、背景色が青色で無模様の意匠)を表示している様子が示されている。
【0047】
次に、エレベータシステム10の第1変形例について説明する。エレベータシステム10の第1変形例とエレベータシステム10との相違は、意匠情報取得部18であるため、その相違点を中心に説明する。
【0048】
意匠情報取得部18は、無線通信によってICタグ7に記録された情報を取得し、それらの情報を制御部20に送信する機能を有する。ここで、意匠情報取得部18は、乗りかご21内において、側面壁24bに取り付けられ、底面26から200センチメートルの範囲内の領域をICタグ7に記録された情報が取得可能な情報取得可能領域として設定されている。そして、意匠情報取得部18は、情報取得可能領域内においてICタグ7がいくつ存在するかを判断する機能を有する。また、意匠情報取得部18は、複数のICタグ7から情報を取得した場合には、最初に取得した意匠情報を制御部20に対して送信する。さらに、意匠情報取得部18は、複数のICタグ7から情報を取得した場合に、情報取得可能領域の存在するICタグ7の数を監視し、ICタグ7の数が残りの1つになった場合、換言すれば、最後の一人の乗客5のみになっている場合に、当該ICタグ7の意匠情報を再度取得し、乗客5の意匠情報を更新するために当該意匠情報を制御部20に送信する機能を有する。
【0049】
続いて、エレベータシステム10の第1変形例の動作について、図6等を用いて説明する。図6は、乗客5のICタグ7に記録された意匠情報に基づいて、乗りかご21の側面壁24a,24b,24cに表示させる意匠の内容を変更する手順を示すフローチャートである。まず、制御部20は、乗りかご21の側面壁24a,24b,24cに初期設定の意匠を表示させるように表示部22に指令する(S20)。具体的には、初期設定の意匠として、背景色が白色で無模様の意匠を乗りかご21の側面壁24a,24b,24cに表示させるように表示部22に指令を与える。
【0050】
そして、意匠情報取得部18は、乗客5の意匠情報を取得したか否かを判断する(S22)。意匠情報取得部18が乗客5の意匠情報を取得していないと判断した場合には、再びS22へと戻る。
【0051】
S22において、乗客5の意匠情報を取得したと判断した場合には、さらに、意匠情報取得部18は、複数の乗客5の意匠情報を取得したか否かを判断する(S24)。S24において、複数の乗客5の意匠情報を取得していないと判断した場合には、意匠情報取得部18は、取得した1つの意匠情報を制御部20に送信し、制御部20は、当該意匠情報に基づいて意匠を表示部22に表示させるように指令する(S25)。その後、S34へと進む。
【0052】
S24において、意匠情報取得部18が複数の意匠情報を取得していると判断した場合には、最初に取得した意匠情報を制御部20に送信し、制御部20は、当該意匠情報に基づいた意匠を表示部22に表示させるように指令する(S26)。
【0053】
S26の後は、意匠情報取得部18が乗りかご21内の乗客5が残り1人であるか否かを判断する(S28)。具体的には、意匠情報取得部18によって情報取得可能領域内において取得できる意匠情報の数が残り1個になっているか否かで判断する。S28において、意匠情報の数が残り1個でないと判断された場合には、再びS28へと戻る。
【0054】
S28において、意匠情報取得部18において取得できる意匠情報の数が残り1個であると判断された場合には、残り1人の乗客5の意匠情報を再度取得して、当該意匠情報を制御部20へ送信する(S30)。
【0055】
次に、制御部20は、残り1人の乗客5の意匠情報に基づいて、乗りかご21の側面壁24a,24b,24cに表示させる意匠の内容を変更させるように表示部22に指令を与える(S32)。
【0056】
そして、意匠情報取得部18は、乗りかご21内に乗客5がいるか否かを判断する(S34)。具体的には、情報取得可能領域において、乗客5の意匠情報が取得できると判断した場合には、乗りかご21に乗客5がいると判断して再びS34へと戻る。
【0057】
それから、情報取得可能領域において、乗客5の意匠情報が取得できないと判断した場合には、乗りかご21に乗客5がいないと判断して、リターン処理を介して、再び乗りかご21の側面壁24a,24b,24cに初期設定の意匠を表示させるように表示部22に指令を与える(S20)。
【0058】
このように、エレベータシステム10の第1変形例によれば、乗りかご21内に乗り込んだ乗客5が複数いる場合であっても、乗りかご21の側面壁24a,24b,24cに表示させる意匠の内容を柔軟に変更することができる。
【0059】
次に、エレベータシステム10の第2変形例について説明する。エレベータシステム10の第2変形例とエレベータシステム10の相違は、表示部22によって意匠を表示させる物品(乗りかご21の天井面25)のみであるため、その点を中心に説明する。
【0060】
表示部22は、天井面25の全面に意匠を表示する有機ELディスプレイ装置である。表示部22は、制御部20の制御によって天井面25に表示させる意匠(模様・色彩またはこれらの結合)の変更をする機能を有する。
【0061】
続いて、エレベータシステム10の第2変形例の作用について説明する。上記のようにエレベータシステム10の第2変形例によれば、エレベータシステム10とは異なり天井面25に意匠が表示されるため、乗客5が天井を見上げた際に楽しみが増すような意匠の変更を行うことができる。
【0062】
次に、エレベータシステム10の第3変形例について説明する。エレベータシステム10の第3変形例とエレベータシステム10の相違は、表示部22によって意匠を表示させる物品(乗りかご21の乗りかご操作盤29)であるため、その点を中心に説明する。
【0063】
表示部22は、乗りかご操作盤29に意匠を表示する有機ELディスプレイ装置である。制御部20の制御によって乗りかご操作盤29に表示させる意匠(模様・色彩またはこれらの結合)の変更をする機能を有する。
【0064】
続いて、エレベータシステム10の第3変形例の作用について説明する。上記のようにエレベータシステム10の第3変形例によれば、エレベータシステム10とは異なり乗りかご操作盤29に意匠が表示されるため、乗客5が乗りかご操作盤29をボダン操作等の操作する際に楽しみが増すような意匠の変更を行うことができる。
【0065】
次に、エレベータシステム10の第4変形例について説明する。エレベータシステム10の第4変形例とエレベータシステム10の相違は、表示部22によって意匠を表示させる物品(乗りかご扉27)であるため、その点を中心に説明する。
【0066】
表示部22は、乗りかご扉27に意匠を表示する有機ELディスプレイ装置である。制御部20の制御によって乗りかご扉27に表示させる意匠(模様・色彩またはこれらの結合)の変更をする機能を有する。
【0067】
続いて、エレベータシステム10の第4変形例の作用について説明する。上記のようにエレベータシステム10の第4変形例によれば、エレベータシステム10とは異なり乗りかご扉27に意匠が表示されるため、乗客5が乗りかご21内に乗り込んで、乗りかご扉27側を向くために振り向いた際の楽しみが増すような意匠の変更を行うことができる。
【0068】
次に、エレベータシステム10の第5変形例について説明する。エレベータシステム10の第5変形例とエレベータシステム10の相違は、表示部22によって意匠を表示させる物品であるため、その点を中心に説明する。
【0069】
エレベータシステム10の第5変形例において表示部22によって意匠を表示させる物品は、上記エレベータシステム10およびエレベータシステム10の第1〜第4変形例と異なり、既設の乗りかご21に後から設置される意匠表示用壁である。
【0070】
意匠表示用壁は、乗りかご21の側面壁24a,24b,24cに沿って設けられ、乗りかご21の側面壁24a,24b,24cの総面積とほぼ同じ総面積の壁である。意匠表示用壁は、上述したとおり、既設のエレベータシステムに後から簡単に取り付けることができる。
【0071】
表示部22は、乗りかご21内に設けられる意匠表示用壁の全面に意匠を表示する有機ELディスプレイ装置である。表示部22は、エレベータシステム10において説明したように制御部20の制御によって表示する意匠の内容を変更する。
【0072】
続いて、エレベータシステム10の第5変形例の作用について説明する。上記のようにエレベータシステム10の第5変形例によれば、意匠表示用壁を乗りかご21の側面壁24a,24b,24cに沿って設ける等といった比較的簡単な工事で乗りかご21内の変更することができるため、大規模な意匠の改修工事を行う必要がないというメリットがある。
【符号の説明】
【0073】
5 乗客、7 ICタグ、8 乗場、9 乗場壁、10 エレベータシステム、12 乗場操作盤、14 乗場三方枠、16 乗場扉、18 意匠情報取得部、20 制御部、22 表示部、24a,24b,24c,24d 側面壁、25 天井面、26 底面、27 乗りかご扉、29 乗りかご操作盤。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗りかご内に設けられる物品に意匠を表示する表示部と、
乗客が所有する意匠情報を取得する意匠情報取得部と、
意匠情報取得部によって取得された意匠情報に基づいて、乗りかご内に設けられる物品に表示する意匠の内容を変更させる表示制御部と、
を備えることを特徴とするエレベータシステム。
【請求項2】
請求項1に記載のエレベータシステムにおいて、
意匠情報取得部は、
乗りかご内において乗客の意匠情報を無線で取得可能な領域である情報取得可能領域に入った乗客の意匠情報を無線で取得することを特徴とするエレベータシステム。
【請求項3】
請求項2に記載のエレベータシステムにおいて、
意匠情報取得部は、
乗りかご内に複数人の乗客が乗り込んできた場合には、最初に情報取得可能領域に入った取得された乗客の意匠情報を表示制御部に送信し、
表示制御部は、
最初に情報取得可能領域に入った乗客の意匠情報に基づいて、乗りかご内に設けられる物品に表示する意匠の内容を変更させることを特徴とするエレベータシステム。
【請求項4】
請求項3に記載のエレベータシステムにおいて、
意匠情報取得部は、
情報取得可能領域に入った乗客が最後の一人になった場合には、最後の一人になった乗客の意匠情報を取得し、該意匠情報を表示制御部に送信し、
表示制御部は、
最後の一人になった乗客の意匠情報に基づいて、乗りかご内に設けられた物品に表示する意匠の内容を変更させることを特徴とするエレベータシステム。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか1に記載のエレベータシステムにおいて、
表示部は、
乗りかご内の側面壁に意匠を表示する有機EL表示部材であることを特徴とするエレベータシステム。
【請求項6】
請求項1から請求項4のいずれか1に記載のエレベータシステムにおいて、
乗りかご内に設けられる物品は、既設の乗りかご内の側面壁に沿って設けられる意匠表示用壁であり、
表示部は、
意匠表示用壁に意匠を表示する有機EL表示部材であることを特徴とするエレベータシステム。
【請求項7】
請求項1から請求項4のいずれか1に記載のエレベータシステムにおいて、
表示部は、
乗りかご内の天井部に意匠を表示する有機EL表示部材であることを特徴とするエレベータシステム。
【請求項8】
請求項1から請求項4のいずれか1に記載のエレベータシステムにおいて、
表示部は、
乗りかご内の乗りかご操作盤に意匠を表示する有機EL表示部材であることを特徴とするエレベータシステム。
【請求項9】
請求項1から請求項4のいずれか1に記載のエレベータシステムにおいて、
表示部は、
乗りかご内の乗りかご扉に意匠を表示する有機EL表示部材であることを特徴とするエレベータシステム。
【請求項10】
請求項1から請求項9のいずれか1に記載のエレベータシステムにおいて、
意匠情報取得部は、
乗客が表示部によって表示されることを望む意匠の内容が意匠情報として記録されたICタグから意匠情報を取得することを特徴とするエレベータシステム。
【請求項11】
請求項1から請求項10のいずれか1に記載のエレベータシステムにおいて、
表示制御部は、
乗りかご内から全ての乗客が降りた場合に、初期設定された意匠の内容に表示を変更させることを特徴とするエレベータシステム。
【請求項12】
請求項1から請求項11のいずれか1に記載のエレベータシステムにおいて、
表示部は、色彩によって意匠の内容を変更することを特徴とするエレベータシステム。
【請求項13】
請求項1から請求項12のいずれか1に記載のエレベータシステムにおいて、
表示部は、模様によって意匠の内容を変更することを特徴とするエレベータシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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