説明

エレベータシャフト内のアスベスト処理工法

【課題】エレベータシャフト内のアスベスト処理を、エレベータを完全に停止させることなく、アスベスト処理工法自体の省力化、並びに工期の短縮化を図ること。
【解決手段】エレベータシャフト内における既設のアスベスト構造体に対するアスベスト処理工法であり、エレベータかご3の上部14に作業ステージ15を設け、処理対象のシャフトを隔離する隔離手段19を設け、ステージに作業者を搭乗させ、エレベータかごを間欠的に昇降させ、停止時にエレベータ昇降路内のアスベスト構造体に対するアスベスト処理を行う工程とを含み、隔離手段が、アスベスト処理を行うエレベータ昇降路4に対応する各フロアFにおけるエレベータ出入り口の少なくとも一つに設けたセキュリティゾーン21と、エレベータ昇降路に連通するように、少なくとも一つのフロアに設けた負圧除塵機25と、エレベータシャフトの周囲を目張りする目張り手段とを含むことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、エレベータシステムにおけるエレベータシャフト内に、断熱性並びに耐火性などを高める目的で吹き付けなどにより施工されている既存のアスベスト構造体に対するアスベスト処理工法にかかるものであり、特に、エレベータシャフト内におけるアスベスト粉塵の飛散を確実に防止し得るように構成してなるアスベスト除去処理工法並びにアスベスト封じ込め処理工法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
周知のように、エレベータシステムにおけるエレベータシャフトは、エレベータかごが昇降するエレベータ昇降路、並びに、エレベータかごを昇降駆動する巻上機および制御盤などを収容する機械室を含むものにより構成されている。このエレベータシャフト内には、断熱性、耐火性並びに吸音性などを高めるための建材として、アスベスト材が多用されてきている。特に、従来多用されてきたアスベスト繊維を含有する既設建材については、エレベータの高速化に伴う昇降路内の高速気流、高速乱流によって、該建材中のアスベスト繊維が粉塵化して飛散するという極めて大きな弊害が多発している。粉塵化して飛散したアスベストは、人体に侵入することによる多大な有害性が指摘されており、極めて大きな社会問題として指摘され、既存のエレベータシステムなどにおけるアスベスト処理が緊急な課題として提起されている。
【0003】
不特定多数の人々が利用するエレベータにおいては、その昇降路内並びに機械室内にあるアスベストの処理対策が早急に望まれている。しかしながら、当該エレベータシステムの特殊性から、現在稼働中のエレベータを完全に停止した状態でのアスベスト処理は、極めて現実性に乏しいものである。そのため、現在のところ、当該エレベータシステムにおけるエレベータ昇降路内のアスベスト処理の有効な工法についての開発はなされていないのが実情である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで、この発明は、エレベータシステムにおけるエレベータ昇降路内並びに機械室内のアスベスト処理に対し、極めて安全な施工が可能であり、エレベータ昇降路内という特殊性にもかかわらず、エレベータを完全に停止させることなく、一部を稼動させた状態での施工を可能とするものであり、さらには、アスベスト処理工法自体の省力化並びに工期の短縮化を可能とするとともに、極めて確実性の高いアスベスト処理を可能とするエレベータシャフト内のアスベスト処理工法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明は、上記する目的を達成するにあたって、請求項1に記載の発明は、エレベータシャフト(エレベータ昇降路および機械室を含む)内における既設のアスベスト構造体に対し、アスベストを除去処理あるいは封じ込め処理するエレベータシャフト内のアスベスト処理工法であって、
エレベータかごの天井側外部に、アスベスト作業者が搭乗するための作業ステージを設ける工程と、
アスベスト処理を行うエレベータシャフトを隔離する隔離手段を設ける工程と、
前記作業ステージにアスベスト処理作業者を搭乗させ、前記エレベータかごを間欠的に昇降、停止させ、停止時にエレベータ昇降路内のアスベスト構造体に対するアスベスト処理を行うアスベスト処理工程とを含むものからなり、
前記隔離手段が、アスベスト処理を行うエレベータ昇降路に対応する各フロアにおけるエレベータ出入り口の少なくとも一つに設けたセキュリティゾーンと、前記エレベータ昇降路に連通するように、少なくとも一つのフロアに設けた負圧除塵機と、前記エレベータシャフトの周囲を目張りする目張り手段とを含むものからなることを特徴とするエレベータシャフト内のアスベスト処理工法を構成するものである。
【0006】
さらに、この発明において、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のエレベータシャフト内のアスベスト処理工法であって、前記作業ステージが、前記エレベータかごにおける天井側外部に設置されている上梁に対して吊り下げ状に組み付けられていて、かご天井に負荷がかからないように構成するとともに、作業者の搭乗時におけるバランス維持手段を備えたものからなることを特徴とするものである。
【0007】
さらに、この発明において、請求項3に記載の発明は、請求項1あるいは請求項2に記載のエレベータシャフト内のアスベスト処理工法であって、前記作業ステージに対し、カウンターウェートから作業者を防護する防護手段を設けたことを特徴とするものである。
【0008】
さらに、この発明において、請求項4に記載の発明は、請求項1〜請求項3のいずれかに記載のエレベータシャフト内のアスベスト処理工法であって、前記セキュリティゾーンが、更衣室、エアシャワーによる洗浄室および前室の三室、あるいは更衣室と前室の二室からなることを特徴とするものである。
【0009】
さらに、この発明において、請求項5に記載の発明は、請求項1〜請求項4のいずれかに記載のエレベータシャフト内のアスベスト処理工法であって、前記隔離手段が、機械室における巻上機を覆う隔離カバー手段を含むものからなることを特徴とするものである。
【0010】
さらに、この発明において、請求項6に記載の発明は、請求項1〜請求項5のいずれかに記載のエレベータシャフト内のアスベスト処理工法であって、複数のエレベータかごが、それぞれ個別に昇降するように並設されたエレベータシステムにおいて、一部のエレベータを稼動させながら、他のエレベータの昇降路をアスベスト処理する場合、前記隔離手段が、アスベスト処理工事区画と、エレベータ稼動区画とを隔離する上下方向にのびる間仕切り手段を含むものからなることを特徴とするものである。
【0011】
さらに、この発明において、請求項7に記載の発明は、エレベータ昇降路内における既設のアスベスト構造体に対し、アスベストを封じ込め処理するエレベータシャフト内のアスベスト処理工法であって、
エレベータかごの天井側外部に、アスベスト作業者が搭乗するための作業ステージを設ける工程と、
アスベスト処理を行うエレベータシャフトを隔離する隔離手段を設ける工程と、
前記作業ステージにアスベスト処理作業者を搭乗させ、前記エレベータかごを間欠的に昇降、停止させ、停止時にエレベータ昇降路内のアスベスト構造体に対して、浸透性の高い第1のアスベスト処理剤を塗布ないしは吹き付けて、該アスベスト構造体内に浸透させ、しかる後、封着性の高い第2のアスベスト処理剤を吹き付け塗布して、当該アスベスト構造体を覆い、アスベストを封じ込めるアスベスト封じ込め処理工程とを含むものからなり、
前記隔離手段が、アスベスト処理を行うエレベータ昇降路に対応する各フロアにおけるエレベータ出入り口の少なくとも一つに設けたセキュリティゾーンと、前記エレベータ昇降路に連通するように、少なくとも一つのフロアに設けた負圧除塵機と、前記エレベータシャフトの周囲を目張りする目張り手段とを含むものからなることを特徴とするエレベータシャフト内のアスベスト処理工法を構成するものである。
【0012】
さらに、この発明において、請求項8に記載の発明は、請求項7に記載のエレベータシャフト内のアスベスト処理工法であって、前記第1のアスベスト処理剤が、主として、金属の水酸化物および/または強塩基と弱酸の金属塩と、天然の糊または樹脂バインダーと、水とを混合してなる浸透性の高いアスベスト処理剤であり、
前記第2のアスベスト処理剤が、主として、金属の水酸化物および/または強塩基と弱酸の金属塩と、天然の糊または樹脂バインダーと、骨材と、水とを混合してなる封着性の高いアスベスト処理剤であることを特徴とするものである。
【0013】
さらに、この発明において、請求項9に記載の発明は、請求項7あるいは請求項8に記載のエレベータシャフト内のアスベスト処理工法であって、前記第1のアスベスト処理剤が、0.1〜2重量%の金属の水酸化物および/または強塩基と弱酸の金属塩と、0.5〜20重量%の天然の糊または樹脂バインダーと、78〜99重量%の水とを混合してなる浸透性の高いアスベスト処理剤であり、
前記第2のアスベスト処理剤が、20〜50重量%の金属の水酸化物および/または強塩基と弱酸の金属塩と、0.5〜10重量%の天然の糊または樹脂バインダーと、1〜10重量%の骨材と、25〜75重量%の水とを混合してなる封着性の高いアスベスト処理剤であることを特徴とするものである。
【0014】
さらに、この発明において、請求項10に記載の発明は、請求項7〜請求項9のいずれかに記載のエレベータシャフト内のアスベスト処理工法であって、前記第2のアスベスト処理剤に、0.01〜5重量%の有機または無機の短繊維および/または長繊維繊維を混合してなることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0015】
以上の構成になるこの発明のエレベータシャフト内のアスベスト処理工法によれば、エレベータシステムにおけるエレベータ昇降路内という極めて特殊性の高い部所に対して、単に吹き付け処理によって既設施工されているアスベストの処理を対象とするものであって、当該アスベストを除去処理する工法、並びに、極めて安全な状態に封じ込め処理する工法を提供するというものであり、特に、アスベスト処理作業部所に対する隔離手段を完璧に構成することによって、安全性の向上を図り、さらには、エレベータを完全に停止させることなく、一部のエレベータについては、これを稼働させた状態での施工を可能とするものであり、アスベスト処理工法自体の省力化並びに工期の短縮化を可能とするなどの点において極めて有効に作用するものといえる。
【0016】
さらに、この発明の他の構成例になるアスベストの封じ込め処理工法では、エレベータ機械室並びにエレベータ昇降路内におけるアスベスト構造体に対して、まず最初に、浸透性の高い第1のアスベスト処理剤を塗布あるいは吹き付けによりアスベスト構造体の内部に浸透させ、しかる後、石灰を主成分とする封着性の高い第2のアスベスト処理剤を吹き付けて、アスベスト繊維を封着し、炭酸ガスとの作用により経時的に石灰岩化し、周囲環境に対し、作業者に対して極めて安全性の高いアスベスト処理を可能とする点において、極めて有効に作用するものといえる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、この発明になるエレベータシャフト内のアスベスト処理工法について、図面に示す具体的な実施例に基づいて詳細に説明する。
図1は、この発明が適用されるエレベータシステムの一例を示すものであって、中層階を破断して示す概略的な側断面図であり、図2は、二基が並設されたエレベータシステムの一例を示す概略的な平面視断面図である。図3は、この発明の適用にかかるエレベータシステムの一例を示すものであって、図3Aは、その上層階部分の概略的な側断面図であり、図3Bは、図3Aの下端側に連続する下層階部分の概略的な側断面図である。
【0018】
一方、図4は、エレベータかごの天井側外部に、作業ステージ(作業用の足場)を設けた状態の一例を示す概略的な平面視断面図である。図5は、左から第1基〜第4基の順に四基が並設されているエレベータシステムにおいて、エレベータ昇降路内のアスベスト処理のための施工手順の一例を示すものであって、図5Aは、第2基および第3基のエレベータかご上に作業ステージを設置して、左二基と右二基との間に間仕切り壁を施工する状況を示す概略的な平面視断面図であり、図5Bは、第3基のエレベータかご上の作業ステージを解体し、第1基のエレベータかご上に作業ステージを設置し、左二基を第1工区として、そのエレベータ昇降路内のアスベスト処理作業を行う状況を示す概略的な平面視断面図であり、図5Cは、第1および第2基のエレベータかご上の作業ステージを解体してエレベータ稼動可能とし、第3および第4基のエレベータかご上に作業ステージを設置して、右二基を第2工区として、そのエレベータ昇降路内のアスベスト処理作業を行う状況を示す概略的な平面視断面図である。
【0019】
さらに、図6は、例えば、複数基のエレベータが並設されているようなエレベータシステムにおいて、一部のエレベータを稼動させた状態で他のエレベータシャフト内のアスベスト処理作業をする場合に、その両者間を間仕切るための構成例を示すものであって、図6Aは、間仕切り手段の一例を示す概略的な正面図であり、図6Bは、この間仕切り手段の設置部への移動の状況を示す概略的な斜視図であり、図6Cは、設置された状態を示す概略的な斜視図である。さらに、図7は、作業者がエレベータかご上の作業ステージに出入りする際に通過する三室からなるセキュリティゾーンの設置例を示すものであって、図7Aは、その概略的な平面視断面図であり、図7Bは、その概略的な側断面図である。
【0020】
まず、建造物などにおけるエレベータシステム1について、その一例になるロープ式エレベータの構造について、図1および図2に示す具体的な実施例に基づいて詳細に説明する。このロープ式エレベータは、最上層に設けた機械室2、エレベータかご3、昇降路4、ピットPおよび各フロアに設けた乗り場N1〜Nnによって構成されている。前記機械室2には、電動機によって駆動する巻上機5並びに前記巻上機5の駆動を制御する制御盤6が据え付けられており、その他に、電磁ブレーキ、調速機などが設置されている。前記巻上機5には、ロープ7が掛けられていて、該ロープ7の一端7aは、前記エレベータかご3に対して、そのエレベータかご上梁8に連結されており、ロープ7の他端7bは、カウンターウェート9に連結されている。
【0021】
前記エレベータ昇降路4に対して、建造物の各フロアFにおける昇降路壁面Wには、乗場側ドア10が設けてあり、前記エレベータかご3には、かご側ドア11が設けてある。前記エレベータ昇降路4の最下階のさらに下部(ピットPという)には、エレベータかご3のためのかご緩衝器12、およびカウンターウェート9のためのウェート緩衝器13が設けてある。前記緩衝器12、13は、バネあるいは油圧ダンパーによって構成されている。この緩衝器は、前記エレベータ昇降路4の最上階の上部ピット(図示せず)にも設けられている。
【0022】
上記するような構成になるエレベータシステム1は、単基のエレベータにより構成されているもの、図2に示すように、二基のエレベータにより構成されているもの、さらには、図4に示すように、四基のエレベータにより構成されているもの、さらに多数基のエレベータによって構成されているものの何れであってもよい。
【0023】
前記エレベータシステム1におけるエレベータ機械室2の壁面並びにエレベータ昇降路4の壁面は、金属製梁構造体、鉄筋コンクリートなどの構造体により構築されており、その壁材としては、断熱性、耐火性並びに吸音性などを高める目的で、アスベスト材が多用されている。
【0024】
このエレベータ昇降路4の内壁に用いられているアスベスト材は、単なる吹き付けにより施工されているにすぎないものであり、高速化するエレベータシステムにおいて、エレベータかごの高速移動による高速気流および高速乱流によって粉塵化して飛散するものであり、人体に対して、極めて危険な状況を呈するものであった。
【0025】
この発明では、上記するエレベータシステム1において、既設施工されているアスベスト吹き付け構造体に対して、アスベストの飛散を防止するとともに、当該アスベストを完全に覆い、最終的には、当該アスベストを石灰岩化して、その危険性を完全に払拭するものである。
【0026】
以下、この発明になるエレベータシャフト内のアスベスト処理工法についての作業手順について、図面に示す具体的な実施例に基づいて詳細に説明する。
この発明は、エレベータシャフト(エレベータ昇降路および機械室を含む)内における既設のアスベスト構造体に対し、アスベストを除去処理あるいは封じ込め処理するエレベータシャフト内のアスベスト処理工法である。
【0027】
そして、その工法は、エレベータかごの天井側外部に、アスベスト作業者が搭乗するための作業ステージを設ける工程と、アスベスト処理を行うエレベータシャフトを隔離する隔離手段を設ける工程と、前記作業ステージにアスベスト処理作業者を搭乗させ、前記エレベータかごを間欠的に昇降、停止させ、停止時にエレベータ昇降路内のアスベスト構造体に対するアスベスト処理を行うアスベスト処理工程とを含むものによって構成されている。
【0028】
前記作業ステージを設ける工程では、前記エレベータかご3における天井側の上部外側14に作業ステージ15が設けられる。この作業ステージ15は、エレベータ昇降路4におけるアスベスト処理のための作業を行う作業者が搭乗する作業用の足場である。
【0029】
この作業ステージ15は、従来よく知られている架設用構築部材を適宜組み合わせて組み立てられるものであり、特に重要な点は、前記作業ステージ15が、前記エレベータかご3における天井側外部14に設置されている上梁8に対して吊り下げ部材15aを介して吊り下げ状に組み付けられていて、かご天井に負荷がかからないように構成するとともに、作業者の搭乗時におけるバランス維持手段17を備えたものからなっていることである。
【0030】
前記作業ステージ15は、少なくとも作業者を安全に確保するための複数の手摺り枠16を含むものからなり、高層階のエレベータ昇降路の作業に際しては、命綱の併用も慣行されるようになっている。さらに、前記作業ステージ15に対して、前記カウンターウェート9から作業者を防護する防護手段18が設けられている。
【0031】
次に、アスベスト処理を行うエレベータシャフトを隔離するための隔離手段19について説明する。まず、第1の隔離手段19は、複数のエレベータかご3が、それぞれ個別に昇降するように並設されたエレベータシステムにおいて、一部のエレベータを稼動させながら、他のエレベータの昇降路をアスベスト処理する場合に、アスベスト処理工事区画と、エレベータ稼動区画とを隔離するための間仕切り手段20によって構成されるものである。この間仕切り手段20を設ける手順については、追って詳述する。
【0032】
エレベータシャフトを隔離するための第2の隔離手段19は、セキュリティゾーン21によって構成される。前記セキュリティゾーン21は、アスベスト処理を行うエレベータシャフトに対応する各フロアFにおけるエレベータ出入り口10の少なくとも一つに設けられる。
【0033】
前記セキュリティゾーン21は、アスベスト処理作業者が、アスベスト処理作業を始める前、および、アスベスト処理作業を終えた後に通る仮設隔離室であって、アスベスト除去処理のような大規模な工事の場合には、図7各図に示すように、保護衣、呼吸用保護具などが準備されている更衣室22、エアシャワーによる洗浄室23、HEAPフィルタ付き真空掃除機、保護衣廃棄用ゴミ袋などが準備されている前室24の三室によって構成され、アスベスト封じ込め処理のような場合には、更衣室22および前室24の二室によって構成されるものである。
【0034】
エレベータシャフトを隔離するための第3の隔離手段19は、前記エレベータ昇降路に連通するように、少なくとも一つのフロアに設けた負圧除塵機25を含むものからなっている。前記負圧除塵機25は、アスベスト処理を行う対象のエレベータ昇降路内を負圧状態に維持するためのものである。
【0035】
エレベータシャフトを隔離するための第4の隔離手段19は、前記エレベータ昇降路の周囲を目張りするための目張り手段26、並びに、機械室2における巻上機5を覆う隔離カバー手段27を含むものによって構成されている。なお、当然のことながら、この発明になるアスベスト処理に際して、機械室2における制御盤など、およびエレベータ昇降路4内におけるセンサー、リミットスイッチ、カウンターウェート、ワイヤーロープ、緩衝器などは、保護カバー28によって覆われるようになっている。
【0036】
次いで、実際にアスベスト処理を行う場合の手順について、図面に示す実施例に基づいて詳細に説明する。
【0037】
この発明になるエレベータシャフト内のアスベスト処理を行う場合、例えば、図5各図に示すように、左から第1基のエレベータEV1、第2基のエレベータEV2、第3基のエレベータEV3および第4基のエレベータEV4の順に四基のエレベータが並設されているエレベータシステムでは、まず、図5Aに示すように、第2基のエレベータEV2、第3基のエレベータEV3の各エレベータかご上に作業ステージ15を組み立てる。この作業ステージ15に作業者が搭乗し、左側二基のエレベータと右側二基のエレベータとの間に間仕切り手段20を設ける。
【0038】
この間仕切り手段20は、図6に示すような間仕切りプレート31と締め付け連結具32とによって構成されている。前記間仕切りプレート31は、プラスチック製のプレート、木製のプレートあるいは金属製のプレートのいずれであってもよい。前記間仕切りプレート31は、例えば、図6Aに示すように、長さ寸法Lが5m、幅寸法Wが500mm程度の細長い平板である。
【0039】
この間仕切りプレート31は、その一端側31aに、前記締め付け連結具32の軸部32aが挿通するスリット33を備え、その他端側31bに、前記締め付け連結具32の軸部32aが挿通する複数個の挿通孔34を備えている。前記挿通孔34は、例えば、100mm程度の刻みで複数個設けてある。図6A中、当該間仕切りプレート31における長さ方向の寸法Laは、エレベータシャフトにおけるビーム30の高さ寸法に合うように予め設計される。
【0040】
この間仕切りプレート31は、図6Bに示すようなプレート搬送手段35により施工部所に運び込まれる。前記プレート搬送手段35は、ロープ36と、該ロープ36の先端に設けたフック37と、ロープ36に挿通されたプレート挟持部材38とからなっていて、前記フック37を当該間仕切りプレート31のスリット33に引っ掛けて、前記プレート挟持部材38により、当該間仕切りプレート31の上方部分を挟持して施工部所に運び込む。
【0041】
この間仕切りプレート31は、例えば、図6Cに示すように、一つの間仕切りプレート31Aの上部に設けた挿通孔34の一つと、他の間仕切りプレート31Bの下部に設けたスリット33とを合わせて、前記締め付け連結具32を挿通し、前記締め付け連結具32のフック32bをエレベータシャフトにおけるビーム30に係合させて、締め付けにより固定する。
【0042】
間仕切り壁を設置する場合、アスベスト構造体には直接接触させない方法が原則であり、その際に、アスベスト構造体と間仕切り壁との間に隙間が生ずるが、作業工区の密閉を確保するために耐火被覆の補修に用いられる補修剤にて隙間をうめる。その際に、作業前処理として補修剤が接触するアスベスト構造体部分に湿潤剤を塗布し、アスベストの飛散防止を図る。
【0043】
間仕切りプレート31により間仕切り壁が形成された後、第3基のエレベータかご上の作業ステージが解体される。この段階で、第1基のエレベータかご上に作業ステージが設置される。図5Bに示すように、左二基のエレベータを第1工区として、そのエレベータ昇降路内のアスベスト処理作業が行われる。この第1工区のアスベスト処理作業中、第2工区の二基のエレベータは停止することなく稼動している。
【0044】
第1工区のアスベスト処理作業が終了した後、第1および第2基のエレベータかご上の作業ステージを解体し、エレベータ稼動可能とし、第3および第4基のエレベータかご上に作業ステージを設置して、右二基を第2工区として、そのエレベータ昇降路内のアスベスト処理作業を行う。前記アスベスト処理作業は、前記作業ステージにアスベスト処理作業者が搭乗し、前記エレベータかごを間欠的に昇降、停止させ、停止時にエレベータ昇降路内のアスベスト構造体に対するアスベスト処理を行う。
【0045】
この発明において、アスベスト処理作業は、既存のアスベスト構造体自体を除去するアスベスト除去処理と、既存のアスベスト構造体に対するアスベスト封じ込め処理とを含むものである。前者のアスベスト除去処理の場合は、アスベストが飛散しないように前記アスベスト構造体に対して事前の前処理を行った後、当該アスベスト構造体を解体して、除去する。
【0046】
一方、後者のアスベスト封じ込め処理の場合は、既存のアスベスト構造体に対して、当該アスベスト封じ込めに適したアスベスト処理剤が準備される。この発明において、上記するアスベスト処理剤は、特に限定されるものではなく、一般的に提供されるアスベスト封じ込め処理剤であればよい。
【0047】
より好ましい例において、前記アスベスト封じ込め処理剤は、塗布あるいは吹き付けによりアスベスト構造体内に浸透する浸透性の高い第1のアスベスト処理剤と、吹き付け塗布によりアスベスト構造体を覆い、アスベストを封じ込む封着性の高い第2のアスベスト処理剤との組み合わせによって構成される。
【0048】
前記第1のアスベスト処理剤は、主として、金属の水酸化物および/または強塩基と弱酸の金属塩と、天然の糊または樹脂バインダーと、水とを混合してなる浸透性の高いアスベスト処理剤であり、前記第2のアスベスト処理剤が、主として、金属の水酸化物および/または強塩基と弱酸の金属塩と、天然の糊または樹脂バインダーと、骨材と、水とを混合してなる封着性の高いアスベスト処理剤である。
【0049】
さらに、具体的には、前記第1のアスベスト処理剤は、0.1〜2重量%の金属の水酸化物および/または強塩基と弱酸の金属塩と、0.5〜20重量%の天然の糊または樹脂バインダーと、78〜99重量%の水とを混合してなる浸透性の高いアスベスト処理剤であり、前記第2のアスベスト処理剤は、20〜50重量%の金属の水酸化物および/または強塩基と弱酸の金属塩と、0.5〜10重量%の天然の糊または樹脂バインダーと、1〜10重量%の骨材と、25〜75重量%の水とを混合してなる封着性の高いアスベスト処理剤である。前記第2のアスベスト処理剤に、0.01〜5重量%の有機または無機の短繊維および/または長繊維繊維を混合したものであってもよい。
【0050】
この第1のアスベスト処理剤は、浸透性の高い溶液からなっているので、アスベスト繊維を含む建造物構造体の表面に塗布、吹き付けあるいは注入することにより、次第に建造物構造体内部に浸透していき、乾燥後に有機金属化合物を形成する。第2のアスベスト処理剤は、石灰を主成分とする封着性の高い溶液からなっているので、第1のアスベスト処理剤の処理後の建造物構造体に吹き付けることにより、カルシウムイオンをアスベスト繊維表面に作用させて、アスベスト繊維と強固に結合させ、大気中の炭酸ガス作用により経時的に石灰岩化する。
【0051】
この発明において、金属イオンを含むアルカリ性の水溶液またはスラリーは、金属の水酸化物および/または強塩基と弱酸の金属塩によるものであり、前記金属の水酸化物としては、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化亜鉛あるいは水酸化鉄などが有効であり、前記強塩基と弱酸の金属塩としては、珪酸ナトリウム、珪酸カリウム、珪酸カルシウム、硼酸ナトリウムあるいはリン酸ナトリウムなどが有効である。
【0052】
一方、この発明において、前記第1および第2のアスベスト処理剤中に、植物性または動物性の油を添加することもある。この植物性または動物性の油としては、菜種油、ごま油、大豆油、やし油などの植物性の油、または、魚油などの動物性の油が有効であり、前記植物性または動物性の糊としては、澱粉、銀杏、つのまたなどの植物性の糊、または、ゼラチン、コラーゲン、にかわなどの動物性の糊が有効である。前記有機または無機の繊維としては、麻、マニラ麻、セルロースなどの天然繊維、レーヨン、ナイロン、ポリプロピレン、アラミド繊維などの有機繊維、または、ガラス繊維、炭素繊維などの無機繊維が有効である。
【0053】
さらに、この発明においては、上記する構成により得られるアスベスト処理剤に対して、適量の合成樹脂を添加したものであってもよいし、あるいは、さらに、微量の天然ゴムあるいは合成ゴムを添加したものであってもよい。
【0054】
前記合成樹脂としては、例えば、酢酸ビニル、エチレン−酢酸ビニル共重合体などが有効であり、合成ゴムとしては、スチレンブタジエンゴムなどが有効である。
【0055】
前記第2のアスベスト処理剤には骨材が混入される。この骨材としては、例えば、パーライト、シラスバルーン、ビーズ発泡スチロールなどが有効である。
【0056】
上記する構成成分において、前記金属の水酸化物または/および強塩基と弱酸の金属塩に関して、前記第1のアスベスト処理剤では、これが、0.1重量%以下である場合には、濃度が薄すぎて機能せず、2重量%以上である場合には、浸透性が落ちるため好ましくなかった。一方、前記第2のアスベスト処理剤では、これが、20重量%以下である場合には、被膜が薄くなってしまい、粉塵封鎖に効果がない。一方、これが50重量%以上の場合には、混合物液体の粘度が高くなりすぎて、吹き付けなどにおいて問題があった。
【0057】
さらにまた、上記する構成成分において、前記植物性または動物性の糊に関して、これが0.5重量%以下である場合には、封鎖状態を長期間にわたり固定できない。一方、これが20重量%以上の場合には、粘度が高くなりすぎて建造物構造体内に充分に浸透できない。
【0058】
さらにまた、上記する構成成分において、前記有機または無機の繊維の混合量に関しては、当該有機または無機の繊維を混合しない第1のアスベスト処理剤の場合、建造物構造体内への浸透性を高める効果を奏し、当該有機または無機の繊維を混合した第2のアスベスト処理剤の場合、建造物構造体内での粉塵の封着性を高める効果を奏する。
【0059】
このアスベスト処理のための準備作業としては、アスベスト構造体の吹き付け厚を計測する事前調査、周辺環境の設備・備品・壁・床・天井などの作業前清掃、アスベスト処理に必要な諸機器の設置などが行われる。この準備作業段階で、作業前の粉塵濃度測定がなされる。
【0060】
この発明になる第1のアスベスト処理剤の塗布作業としては、まず、第1のアスベスト処理剤の試験吹きが行われ、飛散防止処理を介在して、第1のアスベスト処理剤の吹き付け処理が行われ、浸透チェックが行われる。この段階で、作業中の粉塵濃度測定がなされる。この第1のアスベスト処理剤の処理に関しては、後述するアスベスト処理剤注入器具1を用いて、前記第1のアスベスト処理剤を施工すべき建造物構造体内に圧入するものであってもよい。
【0061】
次いで、第2のアスベスト処理剤の塗布作業としては、まず、第2のアスベスト処理剤並びに第2のアスベスト処理のための機材が準備される。その後、第2のアスベスト処理剤の試験吹きが行われ、第2のアスベスト処理剤の吹き付け処理が行われる。
【0062】
最終的に、検査・片付け作業がなされる。この段階では、アスベスト処理の検査・確認がなされ、諸機材の片付け作業が行われる。この検査・片付け作業中に、作業後の粉塵濃度測定がなされる。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】図1は、この発明が適用されるエレベータシステムの一例を示すものであって、中層階を破断して示す概略的な側断面図である。
【図2】図2は、二基が並設されたエレベータシステムの一例を示す概略的な平面視断面図である。
【図3】図3は、この発明の適用にかかるエレベータシステムの一例を示すものであって、図3Aは、その上層階部分の概略的な側断面図であり、図3Bは、図3Aの下端側に連続する下層階部分の概略的な側断面図である。
【図4】図4は、エレベータかごの天井側外部に、作業ステージ(作業用足場)を設けた状態の一例を示す概略的な平面視断面図である。
【図5】図5は、左から第1基〜第4基の順に四基が並設されているエレベータシステムにおいて、エレベータ昇降路内のアスベスト処理のための施工手順の一例を示すものであって、図5Aは、第2基および第3基のエレベータかご上に作業ステージを設置して、左二基と右二基との間に間仕切り壁を施工する状況を示す概略的な平面視断面図であり、図5Bは、第3基の作業ステージを解体し、第1基のエレベータかご上に作業ステージを設置し、左二基を第1工区として、そのエレベータ昇降路内のアスベスト処理作業を行う状況を示す概略的な平面視断面図であり、図5Cは、第1および第2基のエレベータかご上の作業ステージを解体してエレベータ稼動可能とし、第3および第4基のエレベータかご上に作業ステージを設置して、右二基を第2工区として、そのエレベータ昇降路内のアスベスト処理作業を行う状況を示す概略的な平面視断面図である。
【図6】図6は、複数基のエレベータが並設されているようなエレベータシステムにおいて、一部のエレベータを稼動させた状態で他のエレベータシャフト内のアスベスト処理作業をする場合に、その両者間を間仕切るための構成例を示すものであって、図6Aは、間仕切り手段の一例を示す概略的な正面図であり、図6Bは、この間仕切り手段の設置部への移動の状況を示す概略的な斜視図であり、図6Cは、設置された状態を示す概略的な斜視図である。
【図7】図7は、作業者がエレベータかご上の作業ステージに出入りする際に通過する三室からなるセキュリティゾーンの設置例を示すものであって、図7Aは、その概略的な平面視断面図であり、図7Bは、その概略的な側断面図である。
【符号の説明】
【0064】
1 エレベータシステム
2 機械室
3 エレベータかご
4 エレベータ昇降路
5 巻き上げ機
6 制御盤
7 ワイヤーロープ
7a ロープの一端
7b ロープの他端
8 エレベータ上梁
9 カウンターウェート
10 乗場側ドア
F 建造物の各フロア
W 昇降路壁面
P ピット
N1〜Nn 各フロアの乗り場
11 かご側ドア
12 エレベータかごのためのかご緩衝器
13 カウンターウェートのためのウェート緩衝器
14 天井側の上部外側
15 作業ステージ
16 複数の手摺り枠
17 バランス維持手段
18 カウンターウェート防護手段
19 隔離手段
20 間仕切り手段
21 セキュリティゾーン
22 更衣室
23 洗浄室
24 前室
25 負圧除塵機
26 目張り手段
27 隔離カバー手段
28 保護カバー
30 エレベータシャフトにおけるビーム
31 間仕切りプレート
32 締め付け連結具
33 スリット
34 複数個の挿通孔
35 プレート搬送手段
36 搬送ロープ
37 フック
38 プレート挟持部材
EV1 第1基のエレベータ
EV2 第2基のエレベータ
EV3 第3基のエレベータ
EV4 第4基のエレベータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エレベータシャフト(エレベータ昇降路および機械室を含む)内における既設のアスベスト構造体に対し、アスベストを除去処理あるいは封じ込め処理するエレベータシャフト内のアスベスト処理工法であって、
エレベータかごの天井側外部に、アスベスト作業者が搭乗するための作業ステージを設ける工程と、
アスベスト処理を行うエレベータシャフトを隔離する隔離手段を設ける工程と、
前記作業ステージにアスベスト処理作業者を搭乗させ、前記エレベータかごを間欠的に昇降、停止させ、停止時にエレベータ昇降路内のアスベスト構造体に対するアスベスト処理を行うアスベスト処理工程とを含むものからなり、
前記隔離手段が、アスベスト処理を行うエレベータ昇降路に対応する各フロアにおけるエレベータ出入り口の少なくとも一つに設けたセキュリティゾーンと、前記エレベータ昇降路に連通するように、少なくとも一つのフロアに設けた負圧除塵機と、前記エレベータシャフトの周囲を目張りする目張り手段とを含むものからなることを特徴とするエレベータシャフト内のアスベスト処理工法。
【請求項2】
前記作業ステージが、前記エレベータかごにおける天井側外部に設置されている上梁に対して吊り下げ状に組み付けられていて、かご天井に負荷がかからないように構成するとともに、作業者の搭乗時におけるバランス維持手段を備えたものからなることを特徴とする請求項1に記載のエレベータシャフト内のアスベスト処理工法。
【請求項3】
前記作業ステージに対し、カウンターウェートから作業者を防護する防護手段を設けたことを特徴とする請求項1あるいは請求項2に記載のエレベータシャフト内のアスベスト処理工法。
【請求項4】
前記セキュリティゾーンが、更衣室、エアシャワーによる洗浄室および前室の三室、あるいは更衣室と前室の二室からなることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載のエレベータシャフト内のアスベスト処理工法。
【請求項5】
前記隔離手段が、機械室における巻上機を覆う隔離カバー手段を含むものからなることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれかに記載のエレベータシャフト内のアスベスト処理工法。
【請求項6】
複数のエレベータかごが、それぞれ個別に昇降するように並設されたエレベータシステムにおいて、一部のエレベータを稼動させながら、他のエレベータの昇降路をアスベスト処理する場合、前記隔離手段が、アスベスト処理工事区画と、エレベータ稼動区画とを隔離する上下方向にのびる間仕切り手段を含むものからなることを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれかに記載のエレベータシャフト内のアスベスト処理工法。
【請求項7】
エレベータ昇降路内における既設のアスベスト構造体に対し、アスベストを封じ込め処理するエレベータシャフト内のアスベスト処理工法であって、
エレベータかごの天井側外部に、アスベスト作業者が搭乗するための作業ステージを設ける工程と、
アスベスト処理を行うエレベータシャフトを隔離する隔離手段を設ける工程と、
前記作業ステージにアスベスト処理作業者を搭乗させ、前記エレベータかごを間欠的に昇降、停止させ、停止時にエレベータ昇降路内のアスベスト構造体に対して、浸透性の高い第1のアスベスト処理剤を塗布ないしは吹き付けて、該アスベスト構造体内に浸透させ、しかる後、封着性の高い第2のアスベスト処理剤を吹き付け塗布して、当該アスベスト構造体を覆い、アスベストを封じ込めるアスベスト封じ込め処理工程とを含むものからなり、
前記隔離手段が、アスベスト処理を行うエレベータ昇降路に対応する各フロアにおけるエレベータ出入り口の少なくとも一つに設けたセキュリティゾーンと、前記エレベータ昇降路に連通するように、少なくとも一つのフロアに設けた負圧除塵機と、前記エレベータシャフトの周囲を目張りする目張り手段とを含むものからなることを特徴とするエレベータシャフト内のアスベスト処理工法。
【請求項8】
前記第1のアスベスト処理剤が、主として、金属の水酸化物および/または強塩基と弱酸の金属塩と、天然の糊または樹脂バインダーと、水とを混合してなる浸透性の高いアスベスト処理剤であり、
前記第2のアスベスト処理剤が、主として、金属の水酸化物および/または強塩基と弱酸の金属塩と、天然の糊または樹脂バインダーと、骨材と、水とを混合してなる封着性の高いアスベスト処理剤であることを特徴とする請求項7に記載のエレベータシャフト内のアスベスト処理工法。
【請求項9】
前記第1のアスベスト処理剤が、0.1〜2重量%の金属の水酸化物および/または強塩基と弱酸の金属塩と、0.5〜20重量%の天然の糊または樹脂バインダーと、78〜99重量%の水とを混合してなる浸透性の高いアスベスト処理剤であり、
前記第2のアスベスト処理剤が、20〜50重量%の金属の水酸化物および/または強塩基と弱酸の金属塩と、0.5〜10重量%の天然の糊または樹脂バインダーと、1〜10重量%の骨材と、25〜75重量%の水とを混合してなる封着性の高いアスベスト処理剤であることを特徴とする請求項7あるいは請求項8に記載のエレベータシャフト内のアスベスト処理工法。
【請求項10】
前記第2のアスベスト処理剤に、0.01〜5重量%の有機または無機の短繊維および/または長繊維繊維を混合してなることを特徴とする請求項7〜請求項9のいずれかに記載のエレベータシャフトシャフト内のアスベスト処理工法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−263114(P2009−263114A)
【公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−116916(P2008−116916)
【出願日】平成20年4月28日(2008.4.28)
【出願人】(591102822)富士工業株式会社 (20)
【Fターム(参考)】