説明

エレベータドアレールの清掃及び給油保守具

【課題】エレベータドアレールの上面の清掃及び給油を簡易に行うエレベータドアレールの清掃及び給油保守具を提供する。
【解決手段】本保持具1は、エレベータのドアレール11の上面に堆積した塵埃を清掃し、ドアレール11の表面に給油する保守具1において、把持部2と、把持部2の一端に接続される油供給部3と、油供給部3内に差し込まれ把持部2の他端から突き出す給油管4と、給油管4の先端に設けられて油が給油される塗布部材5と、把持部2に接続して塗布部材5を支持する支持部7、及び塗布部材5の上面12及び両側面13a,13bを包むコの字型の断面の取付け部8を有する取付け金具6と備え、取付け金具6は、取付け部8の側面の縁部によりドアレール11の上面に堆積した塵埃を削り取ることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレベータドアレールの清掃及び給油保守具に係り、特に、エレベータのドアレールの上面に堆積した塵埃を清掃し、エレベータのドアレールの表面に給油するエレベータドアレールの清掃及び給油保守具に関する。
【背景技術】
【0002】
エレベータには、エレベータ乗場に設けられた乗場ドアを案内する乗場ドアレール、及びエレベータかごに設けられたかごドアを案内するかごドアレールが設置されている。そして、エレベータが乗場位置に達すると乗場ドア、及びかごドアが共に開閉してエレベータの乗客を乗降させる。
【0003】
図6に、エレベータの乗場ドアレールと乗場ドアの位置関係を示す。図6(a)にドアレール側から見た概略の断面を示し、図6(b)にエレベータ乗場側から見た概略の側面を示す。乗場ドアレール22はレール状の断面を有してエレベータ乗場30の乗場ドア20の上部に設けられている。乗場ドア20の上部には、ハンガープレート21を介してローラ23が設けられ、このローラ23が乗場ドアレール22の上面に懸垂している。これらの乗場ドアレール22やローラ23は、ハンガーケース24、取り付けカバー25により囲われている。
【0004】
図(b)に示すように、乗場ドア20は乗場ドアレール22の一定の移動範囲(W)内を往復するために、乗場ドアレール22の上面に堆積した塵埃を左右端に運び、塵埃の塊27が発生する。この塵埃の塊27は、乗場ドアレール22の上面に塗布される油を含んで固化し、ローラ23の開閉が円滑に行われなくなる。また、乗場ドアレール22の上面に塗布される油が切れると乗場ドアレール22上を回転走行するローラ23との接触によりきしみ音が発生する場合がある。
【0005】
この乗場ドアレール22の上面は、エレベータの定期的な保守点検などの際には、保守員により取り付けカバー25を剥がして清掃や給油が行われる。しかし、定期的な保守点検の間においてもドアレールの清掃及び給油作業をしなければならない場合が発生する。この場合には、エレベータの試運転前に取り付けカバー25を付けたままドアレールの清掃作業及び給油作業が行われる。
【0006】
従来、このドアレールの清掃作業及び給油作業は、先端に爪を有する保守具を用いて塵埃の塊を清掃し、油差しとウエスとを用いて給油を行っていた。
【0007】
一方、特許文献1には、エレベータのドアレール保守具が開示されている。ここでは、下端部に握り部がある柄の上端部の折曲部に清掃器、或いは油塗布器などの保守器を設け、作業者が柄の握り部を持って下方から戸とハンガーケースのカバーとの隙間に柄を通し、この柄に設けた清掃器、或いは油塗布器が取り付いた保守器によりドアレールの上部を清掃、或いは清掃した面に油を塗布することが記載されている。また、清掃器、と油塗布器とは、保守具の柄の折曲部に刃部を設け、作業に応じて清掃器と油塗布器とを付け換えて使用する。また、油塗布器は、保持筒の下端部にスポンジ状の塗布部材が固定され、保持筒の上部に潤滑油などの油が充填されている。
【0008】
【特許文献1】特開平03−95092号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従来、エレベータの保守員は、ドアレールの清掃作業、或いは給油作業ごとにドアレール保守具の先端を取替えながら作業をしていた。この保守作業はエレベータを停止して行うため短時間で終了しなければならず、この作業を効率よく行わなければならないという問題があった。
【0010】
また、ドアレールの給油作業では、給油量の調節が難しい、塗布部材の劣化や磨耗による交換が容易でない、運搬時に塗布器内の油が漏洩する、といった問題があった。
【0011】
本願の目的は、かかる課題を解決し、エレベータドアレールの上面の清掃及び給油を簡易に行うエレベータドアレールの清掃及び給油保守具を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するため、本発明に係るエレベータドアレールの清掃及び給油保守具は、エレベータのドアレールの上面に堆積した塵埃を清掃し、ドアレールの表面に給油する保守具において、把持部と、把持部の一端に接続されて油を貯蔵する油供給部と、油供給部内に差し込まれて把持部の他端から突き出す給油管と、給油管の先端に設けられて給油される塗布部材と、把持部に接続して塗布部材を支持する支持部、及びコの字型の断面により塗布部材を上面及び両側面から包む取付け部を有する取付け金具と、を備え、取付け金具は、取付け部側面の縁部によりドアレールの上面に堆積した塵埃を削り取ることを特徴とする。
【0013】
上記構成により、取付け金具は、エレベータドアレールの給油を行う塗布部材を固定する役割と共に、側面の縁部によりドアレールの上面に堆積した塵埃を削り取るという役割を持つ。従って、ドアレールの清掃作業及び給油作業について、取付け部品をその都度取り替えることなく連続的に行うことができる。
【0014】
また、エレベータドアレールの清掃及び給油保守具は、塗布部材が、略直方体であり、取付け金具の側面の幅よりも大きな厚みを有し、保守具を引き下げて塗布部材を収縮させることで取付け金具の側面をドアレールに接触させることが好ましい。これにより、ドアレールの上面に給油する際に取付け金具の側面に邪魔されずに接触することができる。
【0015】
また、エレベータドアレールの清掃及び給油保守具は、塗布部材が、取付け金具の側面近傍において厚みが減少することが好ましい。これにより、ドアレールの上面に堆積した塵埃を削り取る際に塗布部材に邪魔されずに接触することができる。
【0016】
また、エレベータドアレールの清掃及び給油保守具は、油供給部を押圧することで油が塗布部材に給油されることが好ましい。これにより、保守員による油供給部への押圧力のかけ方で塗布部材への給油量の調整が容易にできる。
【0017】
また、エレベータドアレールの清掃及び給油保守具は、塗布部材が、締結具により取付け金具に着脱可能に固定されることが好ましい。これにより、保守員により本保守具を運搬或いは保管する際に、内部の油の漏洩を確実に防止することができる。
【0018】
さらに、エレベータドアレールの清掃及び給油保守具は、油供給部が、把持部に着脱自在に接続されてキャップにより密封されることが好ましい。これにより、塗布部材の劣化による交換を容易に行うことができる。
【発明の効果】
【0019】
以上のように、本発明に係るエレベータドアレールの清掃及び給油保守具によれば、エレベータドアレールの上面の清掃及び給油を簡易に行うことが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下に、図面を用いて本発明に係るエレベータドアレールの清掃及び給油保守具の実施の形態につき、詳細に説明する。
【0021】
図1に、エレベータドアレールの清掃及び給油保守具の1つの実施形態の概略構成を示す。図1(a)は、本保守具1の斜視図であり、図1(b)は、エレベータのドアレールの上面を清掃及び給油する状態を表した側面図である。本保守具1は、把持部2、油供給部3、給油管4、塗布部材5、及び取付け金具6から構成される。
【0022】
把持部2は、保守員が本保守具1を手で握る部分であり、蓋部16及び内部が空洞の円筒部17から構成される。油供給部3は、把持部2の一端に着脱自在に接続され、ドアレール11に給油する油28を貯蔵する。油供給部3の上部には取出し口15が設けられ、給油管4が取出し口15から油供給部3の内部に差し込まれる。この給油管4は、把持部2を貫通して把持部2の蓋部16を突き抜けて、塗布部材5に油28を供給する。
【0023】
油供給部3は、いわゆるスポイトのように保守員が手で押圧すると塗布部材5に油28を供給できるように、例えば、プラスティックのような柔らかな素材からなる。これにより、保守員による油供給部3への押圧力のかけ方で塗布部材5への給油量の調整が容易にできる。また、この油供給部3は外部から油28の量が確認できるように透明な素材であることが好ましい。さらに、図2に示すように、油供給部3の取出し口15には、キャップ29が取り付けられて密封される。これにより、保守員により本保守具1を運搬或いは保管する際に、内部の油28の漏洩を確実に防止することができる。
【0024】
取付け金具6は、支持部7及び取付け部8から構成される。支持部7は、本実施形態では角型の断面を有し、把持部2の蓋部16に固定されて塗布部材5を支持する。また、支持部7は、把持部2の蓋部16を突き抜けた給油管4を固定具19などの固定手段により保持する。取付け部8は、塗布部材5を包むコの字型の断面であり、塗布部材5をその内部に抱え込む。塗布部材5は、略直方体であり、ドアレール11に給油する油28が染み込む材料、例えばフェルトなどが用いられる。
【0025】
図3に、取付け金具6を拡大して示す。また、図4(a)には、図3のA方向からみた側面図を、図4(b)には、図3のB方向からみた側面図を示す。図3及び図4(a)に示すように、塗布部材5は、上面12、及び両側面13a,13bからなるコの字型の取付け部8に収められ、塗布部材固定ビス9により着脱自在に固定される。このため、取付け部8の側面13a,13bには塗布部材固定ビス9を通す開口が設けられている。これにより、塗布部材の劣化による交換を容易に行うことができる。さらに、取付け部8の上面12には、給油管4を通す開口が設けられ、塗布部材5の内部に突っ込まれた給油管4の先端から油28が給油される。また、図4(a)及び(b)に示すように、塗布部材5は、取付け部8の両側面13a,13bのエッジ部18よりも突出している。
【0026】
図5に、本保守具1を用いたドアレール11の清掃及び給油方法を説明する。図5(a)の左図にように、支持部7を介して把持部2を図中“m”の方向に引くと塗布部材5が収縮し、取付け部8のエッジ部18aがドアレール11の上面に接触する。このエッジ部18aによりドアレール11の上面に堆積した塵埃の塊27を削り取って清掃することができる。
【0027】
また、図5(a)の中央図にように、支持部7を介して把持部2を図中“n”の方向に戻すと塗布部材5が膨張し、塗布部材5の先端が取付け部8のエッジ部18a,18bよりも突出する。この状態で、油供給部3を押圧すると、給油管4から塗布部材5に油28が供給される。これにより、ドアレール11の上面に給油することができる。
【0028】
さらに、図5(a)の右図にように、支持部7を介して把持部2を図中“p”の方向に再度引くと塗布部材5が収縮し、取付け部8のエッジ部18bがドアレール11の上面に接触する。このエッジ部18bによりドアレール11の上面に給油された余分な油28を拭き取ることができる。
【0029】
すなわち、本保守具1によれば、エッジ部18により(1)ドアレール11の上面に堆積した塵埃の塊27を削り取って清掃すること、(2)ドアレール11の上面に給油すること、及び(3)ドアレール11の上面に給油された余分な油28を拭き取ること、が保守具1の取付け部品をその都度取り替えることなく連続的に行うことができる。
【0030】
上述した(1)及び(3)の作業は、図5(b)のように、保守具1をドアレール11に対して斜めに傾け、図中“q”の方向に移動させても良い。これにより、塗布部材5に邪魔されずにドアレール11上の塵埃の塊27を削り取ることができる。
【0031】
上述した(1)及び(3)の作業の場合、図4(a)中の一点鎖線に示すように、塗布部材5には、取付け金具6の側面13近傍において厚みが減少するように切り落とし部14を設けることが好ましい。こうすることで、より塗布部材5に邪魔されずにドアレール11上の塵埃の塊27をより確実に削り取ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明に係るエレベータドアレールの清掃及び給油保守具の1つの実施形態の概略構成を示す斜視図である。
【図2】油供給部の取出し口にキャップを取り付けた斜視図である。
【図3】取付け金具を拡大した透視図である。
【図4】図6の取付け金具を側面から見た側面図である。
【図5】本保守具を用いたドアレールの清掃及び給油方法を説明する説明図である。
【図6】エレベータの乗場ドアレールと乗場ドアの位置関係を示す断面図及び側面図である。
【符号の説明】
【0033】
1 (エレベータドアレールの清掃及び給油)保守具、2 把持部、3 油供給部、4 給油管、5 塗布部材、6 取付け金具、7 支持部、8 取付け部、9 塗布部材固定ビス、11 ドアレール、12 上面、13a,13b 側面、14 切り落し部、15 取出し口、16 蓋部、17 円筒部、18 エッジ部、19 固定具、20 乗場ドア、21 ハンガープレート、22 乗場ドアレール、23 ローラ、24 ハンガーケース、25 取り付けカバー、27 塵埃の塊、28 油、29 キャップ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エレベータのドアレールの上面に堆積した塵埃を清掃し、ドアレールの表面に給油する保守具において、
把持部と、把持部の一端に接続されて油を貯蔵する油供給部と、油供給部内に差し込まれて把持部の他端から突き出す給油管と、給油管の先端に設けられて給油される塗布部材と、把持部に接続して塗布部材を支持する支持部、及びコの字型の断面により塗布部材を上面及び両側面から包む取付け部を有する取付け金具と、を備え、
取付け金具は、取付け部側面の縁部によりドアレールの上面に堆積した塵埃を削り取ることを特徴とするエレベータドアレールの清掃及び給油保守具。
【請求項2】
請求項1に記載のエレベータドアレールの清掃及び給油保守具であって、塗布部材は、略直方体であり、取付け金具の側面の幅よりも大きな厚みを有し、保守具を引き下げて塗布部材を収縮させることで取付け金具の側面をドアレールに接触させることを特徴とするエレベータドアレールの清掃及び給油保守具。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のエレベータドアレールの清掃及び給油保守具であって、塗布部材は、取付け金具の側面近傍において厚みが減少することを特徴とするエレベータドアレールの清掃及び給油保守具。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1に記載のエレベータドアレールの清掃及び給油保守具であって、油供給部を押圧することで油が塗布部材に給油されることを特徴とするエレベータドアレールの清掃及び給油保守具。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1に記載のエレベータドアレールの清掃及び給油保守具であって、塗布部材は、締結具により取付け金具に着脱可能に固定されることを特徴とするエレベータドアレールの清掃及び給油保守具。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1に記載のエレベータドアレールの清掃及び給油保守具であって、油供給部は、把持部に着脱自在に接続されてキャップにより密封されることを特徴とするエレベータドアレールの清掃及び給油保守具。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2010−149979(P2010−149979A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−328937(P2008−328937)
【出願日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【出願人】(000236056)三菱電機ビルテクノサービス株式会社 (1,792)
【Fターム(参考)】