説明

エレベーター制御装置の据付構造

【課題】制御装置周辺に配線用ダクトの設置スペースを利用し、制御装置の底面よりも広い範囲の床面への固定を可能とするエレベーター制御装置の据付構造を提供する。
【解決手段】制御装置1は、制御装置1を固定する固定枠2の上に載置されており、固定枠2はアンカーボルト3により機械室の床4に固定されている。固定枠2の前面側および後面側には、固定枠2に隣接して制御装置1への配線5を他の機器へ通線するための配線用ダクト6が設置されている。配線用ダクト6の内部には、互いに直交する方向に折り曲げられた第1取付部8a、および第2取付部8bが形成された補強部材8が設けられており、第1取付部8aはアンカーボルト9により機械室の床4に固定され、第2取付部8bはボルト10により固定枠2に固定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、エレベーターの機械室へ設置される制御装置を強固に固定するためのエレベーター制御装置の据付構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、機械室のあるエレベーターにおいては、法規上機械室に十分な広さが確保されていたため、機械室へ設置する制御装置の大きさはそれほど大きな問題にならなかった。しかし、最近では法規にとらわれないシステムが製品化可能となり、機械室に占める制御装置の大きさが製品化における重要課題の一つになってきている。しかし、床占有面積を小さくした薄型制御装置は、自ずと床面積に比較して高さが高くなり、制御装置自体の耐震強度を確保することが困難となる。
【0003】
そこで、制御装置の下部に取り付けられ、制御装置を機械室の床に固定する取付台と、機械室の床に固定され、取付台を機械室の床に固定する複数本のアンカーボルトと、機械室の床の上面に敷設され、取付台をアンカーボルトとともに埋め込むシンダーコンクリートとを用いて制御装置を据付けるとともに、取付台に取り付けた支持柱により、制御装置の上部を支持固定する技術が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−67880号公報(要約の欄、図9)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、前記特許文献1に開示された技術によれば、制御装置の上部を支持固定する支持柱が設置されるため、制御装置への配線を他の機器へ通線するための配線用ダクトは支持柱を回避して敷設する必要がある。このため、配線用ダクトの敷設に制限が生じたり、配線用ダクトの形状が複雑になって、配線用ダクトを含めると機械室での機器のレイアウトに大きな制約となる課題がある。
【0006】
この発明は、前記課題を解決するためになされたもので、制御装置周辺に配線用ダクトの設置スペースを利用し、制御装置の底面よりも広い範囲の床面への固定を可能とするエレベーター制御装置の据付構造を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明に係るエレベーター制御装置の据付構造は、エレベーターの機械室に設置され、前記エレベーターを制御する制御装置と、前記制御装置を前記機械室の床に固定する固定部位に隣接し、前記制御装置に接続される配線を収納する配線収納手段と、前記配線収納手段の内部に設けられ、前記機械室の床への取付部である第1の取付部と前記固定部位への取付部である第2取付部とを有する補強部材と、前記第1の取付部を前記機械室の床へ取り付ける第1の固定具と、前記第2の取付部を前記固定部位へ取り付ける第2の固定具と、を備えたものである。
【発明の効果】
【0008】
この発明によれば、エレベーターの機械室に設置され、前記エレベーターを制御する制御装置と、前記制御装置を前記機械室の床に固定する固定部位に隣接し、前記制御装置に接続される配線を収納する配線収納手段と、前記配線収納手段の内部に設けられ、前記機械室の床への取付部である第1の取付部と前記固定部位への取付部である第2取付部とを有する補強部材と、前記第1の取付部を前記機械室の床へ取り付ける第1の固定具と、前記第2の取付部を前記固定部位へ取り付ける第2の固定具と、を備えたので、配線用ダクトの機械室でのレイアウト性を損ねることなく、また、制御装置を固定する手段を制御装置の底面より広げることなく、制御装置を固定できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】この発明の実施の形態1に係るエレベーター制御装置の据付構造を説明する側面断面図である。
【図2】この発明の実施の形態1に係るエレベーター制御装置の据付構造に用いられる補強部材の要部斜視図である。
【図3】この発明の実施の形態2に係るエレベーター制御装置の据付構造を説明する側面断面図である。
【図4】この発明の実施の形態2に係るエレベーター制御装置の据付構造を説明する要部斜視図である。
【図5】この発明の実施の形態3に係るエレベーター制御装置の据付構造を説明する側面断面図である。
【図6】この発明の実施の形態3に係るエレベーター制御装置の据付構造を説明する要部斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付の図面を参照して、この発明に係るエレベーター制御装置の据付構造について好適な実施の形態を説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0011】
実施の形態1.
図1は、この発明の実施の形態1に係るエレベーター制御装置の据付構造を説明する側面断面図である。図1において、制御装置1は、制御装置1を固定する固定枠2の上に載置されている。固定枠2は、第1の固定具である、例えばアンカーボルト3により機械室の床4に固定されている。固定枠2の前面側および後面側には、固定枠2に隣接して制御装置1への配線5を他の機器へ通線するための配線収納手段となる配線用ダクト6が設置されており、配線用ダクト6の固定枠2と反対側にはシンダーコンクリート7が配線用ダクト6と同一上面を形成するように機械室の床4に敷設されている。
【0012】
配線用ダクト6の内部には、図2に斜視図を示す補強部材8が設けられている。この補強部材8には、互いに直交する方向に折り曲げられた第1取付部8a、および第2取付部8bが形成されており、第1取付部8aは、第2の固定具である、例えばアンカーボルト9により機械室の床4に固定され、第2取付部8bは、例えばボルト10などの固定具により固定枠2に固定されている。なお、補強部材8の高さ寸法hは配線用ダクト6の高さ寸法より低く形成されている。また、図1においては、配線5を配線用ダクト6の側面と補強部材8の側部間で、且つ機械室の床4の上面に布線しているが、補強部材8の上面と配線用ダクト6の上面との間の間隙に布線してもよい。
【0013】
前記のように構成された実施の形態1において、制御装置1の固定にあたり、通常は固定枠2の内部で機械室の床4との固定をアンカーボルトなどの固定具3で行うが、十分な強度が得られない場合は、固定枠2の外部に補強固定部を設けることになる。このような場合に、補強部材8を配線用ダクト6の内部に設け、第1取付部8aを、例えばアンカーボルト9などの固定具により機械室の床4に固定し、第2取付部8bを、例えばボルト10などの固定具により固定枠2に固定する。
【0014】
このように、実施の形態1に係るエレベーター制御装置の据付構造によれば、制御装置1の固定にあたり、その補強を配線用ダクト6の内部に設けることが出来、容易に補強が可能となるので、配線用ダクト6の機械室でのレイアウト性を損ねることがなくなる。更に、補強を配線用ダクト6の内部に設けるので、補強部材8の設置手順の制約が少なく、後から補強部材8を追加することも可能である。従って、耐震クラスが通常の固定状態から耐震強度の強化を行う場合などにおいても、容易に固定部分の追加が可能となる。
【0015】
なお、前記実施の形態1においては、制御装置1と固定枠2とを分けた形態について図示説明したが、制御装置1が固定枠2の構造を兼ねていてもよいことは勿論であり、配線用ダクト6は配線5を通すためのパイプであってもよい。
【0016】
また、補強部材8の構造は、図示した形状にとらわれず、機械室の床4と固定枠2とに固定できる形状であればよいことも勿論であり、数量も図に示している数量にとらわれるものではない。更に、アンカーボルト3、9や、ボルト10などの固定具の本数も図に示している数量にとらわれるものではない。
【0017】
実施の形態2.
次に、実施の形態2について説明する。図3および図4は、実施の形態2に係るエレベーター制御装置の据付構造を説明する図で、図3は側面断面図であり、図4は要部斜視図である。この実施の形態2は、配線の布線効率の低下を防ぎ、且つ分離配線を容易に行うための構造である。
【0018】
実施の形態2は、図3および図4に示すように、補強部材8の上面に敷板30を敷設し、敷板30の上面に配線5aを布線するとともに、配線用ダクト6の側面と補強部材8の側部間で、且つ機械室の床4の上面に配線5bを布線したものである。その他の構成は、実施の形態1と同様であり、同一符号を付すことにより説明を省略する。
【0019】
このように、実施の形態2によれば、補強部材8の上面に敷設した敷板30により、配線用ダクト6の内部の配線を、敷板30の上面に布線した配線5aと、配線用ダクト6の側面と補強部材8の側部間で、且つ機械室の床4の上面に布線した配線5bに分離できる。従って、配線の布線効率の低下を防ぎ、且つ分離配線を容易に行うことができる。なお、配線本数、および固定枠2への引き込み口の形状は、図示したものに限定されないことは勿論である。
【0020】
なお、前記実施の形態2においては、制御装置1と固定枠2とを分けた形態について図示説明したが、制御装置1が固定枠2の構造を兼ねていてもよいことは勿論であり、配線用ダクト6は配線5を通すためのパイプであってもよい。
【0021】
実施の形態3.
次に、実施の形態3について説明する。図5および図6は、実施の形態3に係るエレベーター制御装置の据付構造を説明する図で、図5は側面断面図であり、図6は要部斜視図である。この実施の形態3は、補強部材の構造を実施の形態1と異なる構造にしたものである。
【0022】
実施の形態3は、図5および図6に示すように、補強部材50が断面L形状に形成されるとともに、両端部が配線用ダクト6内に設置され、中央部が固定枠2を図5において左右方向に貫通する構造になっている。固定枠2は、例えば、アンカーボルト3などの固定具により機械室の床4に固定され、補強部材50は、例えばアンカーボルト9などの固定具により機械室の床4に固定される。また、補強部材50と固定枠2とはボルト10により固定される。なお、その他の構成は、実施の形態1と同様であり、同一符号を付すことにより説明を省略する。
【0023】
このように、実施の形態3によれば、補強部材50を断面L形状に形成するとともに、両端部を配線用ダクト6内に設置し、中央部が固定枠2を貫通する構造としたので、補強部材50を簡易な形状で構成した上で、実施の形態1と同様の効果を得ることができる。
【0024】
なお、前記実施の形態3においては、制御装置1と固定枠2とを分けた形態について図示説明したが、制御装置1が固定枠2の構造を兼ねていてもよいことは勿論であり、配線用ダクト6は配線5を通すためのパイプであってもよい。
【0025】
また、断面L形状に形成した補強部材50の数量は、図に示している数量にとらわれるものではなく、アンカーボルト3、9や、ボルト10などの固定具の本数も図に示している数量にとらわれるものではない。
【符号の説明】
【0026】
1 制御装置
2 固定枠
3、9 アンカーボルト
4 機械室の床
5、5a、5b 配線
6 配線用ダクト
7 シンダーコンクリート
8、50 補強部材
8a 第1取付部
8b 第2取付部
10 ボルト
30 敷板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エレベーターの機械室に設置され、前記エレベーターを制御する制御装置と、
前記制御装置を前記機械室の床に固定する固定部位に隣接し、前記制御装置に接続される配線を収納する配線収納手段と、
前記配線収納手段の内部に設けられ、前記機械室の床への取付部である第1の取付部と前記固定部位への取付部である第2取付部とを有する補強部材と、
前記第1の取付部を前記機械室の床へ取り付ける第1の固定具と、
前記第2の取付部を前記固定部位へ取り付ける第2の固定具と、
を備えたことを特徴とするエレベーター制御装置の据付構造。
【請求項2】
前記補強部材の上面に敷板を敷設し、前記配線を前記敷板上に布線するとともに、前記配線収納手段の側面と前記補強部材の側部間で、且つ前記機械室の床の上面に布線することを特徴とする請求項1に記載のエレベーター制御装置の据付構造。
【請求項3】
エレベーターの機械室に設置され、前記エレベーターを制御する制御装置と、
前記制御装置を前記機械室の床に固定する固定部位の両側に隣接し、前記制御装置に接続される配線を収納する配線収納手段と、
両端部が前記配線収納手段の内部に設置され、中央部が前記固定部位を貫通する補強部材と、
前記補強部材に設けられる取付部を前記機械室の床へ取り付ける固定具と、
を備えたことを特徴とするエレベーター制御装置の据付構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−285254(P2010−285254A)
【公開日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−141035(P2009−141035)
【出願日】平成21年6月12日(2009.6.12)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】