説明

エレベーター

【課題】機械室のないトラクション式エレベーターの駆動装置を、従来のエレベーターと同等の昇降路寸法に取付け、しかも堅固に支えることのできる取り付け構造を有するエレベーターを提供することにある。
【解決手段】 本発明は、トラクションシーブ9により吊りロープ10を駆動して乗りかご4と釣合い重りを5昇降駆動させるエレベーターにおいて、トラクションシーブ9を備えた駆動装置6を有し、乗りかご用ガイドレール1a,1bと釣合い重り用ガイドレール2a,2b間をそれぞれ一体連結する支持梁3a,3bに駆動装置6を配置したエレベーターを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動装置を設置する機械室を不要にしたトラクション式駆動装置の支持構造を改良したエレベーターに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、日照権の問題から昇降路の頂部に設けられたロープ式エレベーターの機械室をなくす目的で、乗りかごと昇降路壁の隙間に巻上機を設置したエレベーターが提案されている(特許文献1及び特許文献2参照)。
【0003】
特許文献1では、図18で示すように、駆動装置53として電動機を用い、乗りかご55と釣合い重り56をつるべ式に吊るしている。昇降路54上部にトラクションシーブ57を配置し、このトラクションシーブ57に巻き付けた吊りロープ58の一端に乗りかご55を、他端に釣合い重り56を配置している。そして、このトラクションシーブ57を電動機により駆動して、吊りロープ58とトラクションシーブ57との間の摩擦により駆動力を吊りロープ58に伝達して、乗りかご55と釣合い重り56とを相互に昇降させている。この構造では、駆動装置53が大型となるため、昇降路54を大きくすることで従来の機械室を不要にし、駆動装置53を昇降路54の空きスペースに配置している。
【0004】
また、特許文献2の例では、図19(a)(b)で示すように、基本的には、図18のものと同様の動作原理である。駆動装置53として電動機を用い、乗りかご55と釣合い重り56をつるべ式に吊るしている。昇降路54の上部にトラクションシーブ57を配置し、このトラクションシーブ57に巻き付けた吊りロープ58の一端に乗りかご55を、他端に釣合い重り56を配置している。そして、このトラクションシーブ57を電動機により駆動して、吊りロープ58とトラクションシーブ57との間の摩擦により駆動力を吊りロープ58に伝達して、乗りかご55と釣合い重り56を昇降させている。但し、本方式による構造では、駆動装置53を昇降路54の空きスペースに配置する方法として、駆動装置53を、固定部材を介して、釣合い重り用ガイドレール59a,59bに取り付けるとともに、駆動装置53を昇降路54の空きスペースに配置する目的で吊りロープ58は転向プーリ60a〜cを経由している。このように配置することで従来の機械室を不要にしている。
【特許文献1】実公平4−50297号公報
【特許文献2】特許第2593288号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図18で説明した昇降路内頂部、昇降路壁と乗りかごの隙間に駆動装置を設置する駆動装置支持構造の例では、トラクションシーブ57の回転面がかご側面に直交する形で配置されているため、乗りかごと壁の隙間の寸法を通常のエレベーターより大きくとらなければならず、建物の有効利用面積が小さくなるという問題があった。
【0006】
また、図19で説明したもう一つの例では、乗りかごの定格の積載量が大きくなった場合、トラクションシーブ57の厚さが大きくなり乗りかごと昇降路壁の隙間に収まりきれなくなるばかりか、ガイドレールで駆動装置を支えているため、ガイドレールの負担が大きくなり、エレベーターの大型化に対応できないという問題があった。また、乗りかごに返し車を設けた構成となるため、駆動装置の支持構造が複雑で、部品数も増え、コストや据付け保守の手間という面でも問題があった。
【0007】
本発明の目的は、機械室のないトラクションシーブ式エの駆動装置を、従来の機械室のある場合と同等の昇降路寸法で、建物の屋上に突出部を設けることなく取付け、しかも堅固に支える構造としたエレベーターを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の発明は、図1及び図2で示すように、昇降路31内を昇降する乗りかご4と、前記乗りかご4の昇降を案内する乗りかご用ガイドレール1a,1bと、前記昇降路31内を前記乗りかご4の昇降とは反対方向に昇降する釣合い重り5と、前記釣合い重り5の昇降を案内する釣合おもり用ガイドレール2a,2bと、前記昇降路31内の頂部に配置され、吊りロープ10が巻付けられるトラクションシーブ9を有し、当該トラクションシーブ9を回転させることにより前記吊りロープ10を介して前記乗りかご4および釣合い重り5を昇降させる巻上用の駆動装置6とを有するエレベーターであって、前記巻上用の駆動装置6を、図3で示すように,前記乗りかご4の昇降通路の上に配置し、且つ平面図において前記巻上用の駆動装置6の一部が前記乗りかご4と重なることを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載のエレベーターは、図1及び図2で示すように、昇降路31に立設された乗りかご用のレール1a,1bに案内されて昇降する乗りかご4と、上記昇降路31に立設された他の釣合重いり用のレール2a,2bに案内されて昇降する釣合い重り5と、上記昇降路31に吊設されて一側が上記乗りかご4に他側は上記釣合い重り5にそれぞれ係合された吊りロープ10と、水平軸線によって枢持されて上記吊りロープ10が巻掛けられたトラクションシーブ9が設けられ、上記レール1a,1b及び2a,2bの上端部に支持されて下面が上記乗りかご4及び釣合い重り5の最上昇位置よりも上方に配置され、図3に示すように,水平投影面において上記乗りかご4と重合して配置された巻上用の駆動装置6とを備えている。
【0010】
請求項3に記載のエレベーターは、図3で示すように、前記トラクションシーブ9が前記昇降路31の壁面側に向くよう前記巻上用の駆動装置6を配置し、平面図において前記トラクションシーブ9を前記昇降路31の壁面と前記乗りかご4の隙間に位置させている。
【0011】
請求項4に記載のエレベーターでは、前記巻上用の駆動装置6は、前記トラクションシーブ9と当該トラクションシーブ9を回転させるモータ部からなり、当該モータ部の一部を平面図において前記乗りかご4と重ねて位置させている。
【0012】
請求項5に記載のエレベーターでは、図6で示すように、前記乗りかご用ガイドレール2a,2bの頂部に固定された支持梁3a,3bを有し、前記巻上用の駆動装置6を前記支持梁3a,3bに固定している。
【0013】
請求項6記載のエレベーターでは、図12で示すように、前記巻上用の駆動装置6を固定する支持梁3a,3bと、当該支持梁3a,3bと巻上用の駆動装置6との間に設けられ前記巻上用駆動装置6の、垂直方向の荷重を弾性支持する弾性材20を有している。
【0014】
することを特徴とする。
【0015】
請求項7に記載のエレベーターでは、図13で示すように、前記巻上用の駆動装置6を固定する支持部材12a,12b,12cと、当該支持部材に取り付けられ、前記巻上用の駆動装置6の横揺れを防止する振止め用の弾性材20b,20cを設けている。
【0016】
請求項8に記載のエレベーターでは、ガイドレール2a,2bに沿って動く乗りかご4と別のガイドレール1a,1bに沿って動く釣合いおもり5と昇降路31内に配置された駆動装置6とを備え、トラクションシーブ9及び吊りロープ10を有するエレベーターであって、前記駆動装置6は前記乗りかご用のガイドレール2a,2bと前記釣合いおもり用の別のガイドレール1a,1bとの両方に固定された支持梁3a,3b上に配置されている。
【0017】
請求項9に記載のエレベーターでは、前記乗りかご用のガイドレール2a,2bは前記支持梁3a,3bとの結合に続いて、図4に示すように、当該支持梁を越えて上方に延びていることを特徴とする。
【0018】
請求項10に記載のエレベーターでは、前記釣合いおもり用のガイドレール1a,1bは、図6で示すように、前記支持梁3a,3bを越えずに終端するように当該支持梁3a,3bに結合されている。
【0019】
請求項11に記載のエレベーターでは、吊りロープ10が、図2で示すように、前記トラクションシーブ9から前記乗りかご4の下側のヒッチ部33と、前記釣合いおもり5の 上側32とに直接導かれている。
【0020】
請求項12に記載のエレベーターでは、図12で示すように、前記ガイドレール1a,1b及び2a,2bに固定するための支持梁3a,3bと駆動装置6の取付脚8及び鋼材7で取付部を構成し、この取付部は、図12で示すように、振動減衰式に前記乗りかご用ガイドレール2a,2bに結合されている。
【0021】
請求項13に記載のエレベーターは、前記支持梁13a,13bと前記取付脚8は固定的に相互結合されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
以上詳述したように、この発明によれば、昇降路頂部に特別のスペースを考慮しなくとも駆動装置を昇降路内に配置可能であり、特別な機械室を別個に建築施工することなくエレベーターが設置でき、建築コストの削減と、スペースの有効活用、短期間の施工が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明による乗客コンベアの一実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。
【0024】
まず、本発明の一実施の形態であるエレベーターの概要を図1乃至図4に示す。本実施形態のエレベーターは、乗りかご4および釣合い重り5が昇降するための昇降路31に、乗りかご4および釣合い重り5の昇降をそれぞれ案内するための一対の乗りかご用ガイドレール1a,1bおよび一対の釣合い重り用ガイドレール2a,2bが設置されている。
【0025】
乗りかご4は、利用客が乗るかご室4aと、かご室4aを支持するかご枠4bとで構成され、出入口部4cを備えている。乗りかご用ガイドレール1a,1bと釣合い重り用ガイドレール2a,2bの頂部には、それぞれのガイドレールに亘って設けられた支持梁3a,3bが一対設けられている。そして、駆動装置6を載置するための溝形鋼7が支持梁3a,3b間に跨がって取り付けられている。
【0026】
溝形鋼7に載置された駆動装置6は、巻上機(駆動モータ)、ブレーキおよびこれらを支持するフレームと、溝形鋼7に固定するための支持具から構成される減速機を用いないギヤレスの駆動装置であり、巻上げ機の両端には駆動用のトラクションシーブ9が設けられている。
【0027】
これらのトラクションシーブ9には吊りロープ10がそれぞれつるべ状に巻き掛けられ、吊りロープ10の一端は釣合い重り5上部のロープヒッチ部32に接続され、他端は乗りかご4の下部のかご枠4bに設けられたヒッチ部33にシャックルロッド34を介して取り付けられている。このヒッチ部33は、乗りかご4の出入口部4cからみて後方(釣合い重り5側)に、かつほぼ左右対称の位置に計2カ所設けられている。
【0028】
釣合い重り5は、乗りかご4の出入口部4cから見て背面に配置され、駆動装置6は釣合い重り5の昇降方向上部の延長上の昇降路31頂部に位置している。図3は、第1の実施形態のエレベーターの水平断面図である。図3に示されるように、駆動装置6は出入口からみて幅方向に長尺な構造をしており、駆動装置6の駆動モータの出力軸の両端に設けられたトラクションシーブ9は、昇降路31の釣合い重り5が対向する対向壁面31aと隣接する隣接壁面31bに寄せて設けられ、乗りかご4の側面35a,35b(かごが釣合い重り5と対向する面と隣接する側の面)と昇降路31の隣接壁面31bとの間の空間に、それぞれ乗りかごの水平投影断面36外に配置されている。また、図2に示すとおり、駆動装置6のフレーム外径B(巻上げモータの外径)は、トラクションシーブ9の直径Aよりも小さくしている。
【0029】
次に、駆動装置6の支持構造を図4を用いて説明する。図4に於いて、乗りかご4をガイドする乗りかご用ガイドレール1a,1bと釣合い重り5をガイドする釣合い重り用ガイドレール2a,2bとの間に、左右それぞれ1本ずつの支持梁3a,3bを、同一の高さに水平に固定する。ガイドレール1a,1b,2a,2bと支持梁3a,3bは、ボルト及びナットにて強固に固着されている。
【0030】
左右一対の支持梁3a,3bの上面に、駆動装置6の下部を支える溝形鋼7を2本配置し、その上面に、エレベーターの駆動装置6の下部に配置した取付脚8を乗せ、ボルト及びナットにて固着する。駆動装置6の両端には、エレベーター駆動用のトラクションシーブ9がガイドレール1a,1b,2a,2b側に突出し、乗りかご4と釣合い重り5をつなぐ吊りロープ10が巻きかけられている。
【0031】
次に、本実施形態の動作を説明する。図1に於いて、駆動装置6の駆動モータが、制御装置(図示せず)の指令により回転すると、駆動装置6に連結した出力軸が回転し、その端部に配置したトラクションシーブ9が回転し、吊りロープ10を駆動することで、乗りかご4が釣合い重り5とバランスする形で、乗りかご用ガイドレール1a,1bに沿って昇降する。この時、駆動装置6を4本のガイドレール1a,1b,2a,2bの上部中央に、支持梁3a,3b及び溝形鋼7にて強固に固定され、乗りかご4と釣合い重り5を安全に保持する。
【0032】
本実施形態によれば、駆動装置6にかかるすべての重量は4本のガイドレール1a,1b,2a,2bで支えられ、その荷重は昇降路下面に伝えられるため、昇降路構造に対して負担がかからない。
【0033】
また、ガイドレール1a,1b,2a,2bを中心として、支持梁3a,3bと溝形鋼7で構成される一定の位置関係にて駆動装置6が設置されているので、乗りかご4、釣合い重り5と駆動装置6の位置関係を保ちながら、容易に芯出し作業ができる。さらに、事前に駆動装置6をガイドレール1a,1b,2a,2bに対して、地上において固定し、ガイドレール1a,1b,2a,2bの荷揚作業時に、同時に、駆動装置6を据えつけることもできる。
【0034】
本発明の他の実施の形態を図5にて示す。図5に於いて、乗りかご4をガイドする乗りかご用ガイドレール1a,1bと釣合い重り5をガイドする釣合い重り用ガイドレール2a,2bとの間に、それぞれ1本ずつの支持梁3a,3bを、少なくともそのうちの一方は、乗りかご4の直上の投影面から外れた位置に、水平に固定する。ガイドレール1a,1b,2a,2bと支持梁3a,3bは、ボルト及びナットにて強固に固着されている。
【0035】
一対の支持梁3aの上面に、駆動装置6の下部を支え、乗りかご4の直上の投影面に近い位置に配置した支持梁3bの側面に、駆動装置6の側面を支える、溝形鋼7を2本配置し、その上面に、エレベーターの駆動装置6の下部に配置した取付脚8aを乗せ、その側面に、エレベーターの駆動装置6の側面に配置した取付脚8bを取り付け、ボルト及びナットにて固着する。駆動装置6の両端には、エレベーター駆動用のトラクションシーブ9がガイドレール1a,1b,2a,2b側に突出し、乗りかご4と釣合い重り5をつなぐ吊りロープ10が巻きかけられている。
【0036】
図5に於いて、駆動装置6の駆動モータが、制御装置(図示せず)の指令により回転すると、駆動装置6に連結した駆動軸が回転し、その端部に配置したトラクションシーブ9が回転し、吊りロープ10を駆動することで、乗りかご4が釣合い重り5とバランスする形で、乗りかご用ガイドレール1a,1bに沿って昇降する。この時、駆動装置6を4本のガイドレール1a,1b,2a,2bの上部中央に、支持梁3a,3b及び溝形鋼7にて強固に固定され、乗りかご4と釣合い重り5を安全に保持する。
【0037】
この実施の形態によれば、乗りかご4側の駆動装置6の取付脚8bが駆動装置6の側面にあるため、乗りかご4が昇降する高さを、駆動装置6の下部に取付脚8a,8bがある場合と比べて、取付脚8bの位置を引き上げた分高くでき、昇降路スペースを有効活用できる。
【0038】
次に、本発明のさらに他の実施の形態を図6及び部品毎に展開した図7にて示す。駆動装置6の支持梁3a,3bは、乗りかご4及び釣合い重り5のガイドレール1a,1b,2a,2bの上端面1cに設置する。左右の支持梁3a,3bに両端を支持するように、ガイドレール1a,1b,2a,2bの背面で、ボルト及びナットにて補強板14を固定し、また、支持梁3a,3bに、ボルト及びナットにて溝形鋼7を固定し、さらに、溝形鋼7の上面に駆動装置6を配置する。
【0039】
上記構成において、駆動装置6にかかる駆動装置6の自重、乗りかご4、釣合い重り5のすべての荷重はガイドレール1a,1b,2a,2bの上端面1cの鉛直下方に加わり、保持される。駆動装置6の両端に配置したトラクションシーブ9には、吊りロープ(図示せず)が巻きかけられ、第1の実施形態と同様に乗りかご4を駆動することができる。
【0040】
この実施の形態によれば、駆動装置6に加わるすべての荷重がガイドレール1a,1b,2a,2bの上端面1cに垂直にかかる為、ガイドレール1a,1b,2a,2bに加わるモーメント力が減少し、ガイドレール1a,1b,2a,2bの端面の発生応力が減少する。また、支持梁3a,3bをガイドレール1a,1b,2a,2bの側面で固定する前述の実施形態の場合、締結用ボルトにせん断荷重が加わるが、本例では圧縮荷重のみとなるので、ボルトのサイズを小さくすることができる。また、4本のガイドレール1a,1b,2a,2bの長さを製造工場にて管理することで、駆動装置6を容易に水平の位置で設置することができる。
【0041】
また、本発明の別の実施の形態を図8に示す。乗りかご4又は釣合い重り5用のガイドレール1a,1b又は2a,2bの上端面1cに固定板11a,11bを固定する。固定方法は、溶接あるいは、逆L字形の受け金具21を使用して行う。その上面には駆動装置6を受ける溝形鋼7を設置する。
【0042】
この実施の形態に於いては、駆動装置6は、乗りかご4又は釣合い重り5用のガイドレール1a,1b又は2a,2bの2本で荷重を支えることとなる。本実施形態によれば、第1ないし第3の実施形態で説明した支持梁3a,3bの設置作業が不要となるので、より簡素な構造となり、製造コストの低減と据付工事作業の簡易化がはかれる。また固定板11a,11bの大きさを変更することで、駆動装置6の配置の自由度が向上する。
【0043】
つぎに、本発明のさらに別の実施の形態を図9に示す。乗りかご4又は釣合い重り5用のガイドレール1a,1b又は2a,2bの上端部にL字形に構成した支持部材12を懸架し、ガイドレール1a,1b又は2a,2bの上端部と接する水平支持部材12aにより垂直荷重を支持する。ガイドレール1a,1b又は2a,2bの正面側に、ガイドレール1a,1b又は2a,2bの歯面2cと平行に垂下した正面支持部材12cを、上端部及び下端部にてガイドレール1a,1b又は2a,2bの歯面と通しボルト14にて固定する。ガイドレール1a,1b又は2a,2bの正面支持部材12cの鉛直面に、乗りかご4及び釣合い重り5に巻きかけられた吊りロープ(図示しない。)を介して乗りかご4を駆動する駆動装置6をボルト等の締結部材又は溶接にて固定する。なお、固定方法として、更に、U字形に構成した支持部材12を懸架して、上記の水平支持12aに加えて、ガイドレール1a,1b又は2a,2bの背面側にて、ガイドレール1a,1b又は2a,2bの歯面2cと背面支持部材12bを通しボルト13にて固定しても良い。
【0044】
上記構成において、L字形の支持部材12の場合を例として作用を説明する。正面支持部材12cの上端に設けられた水平支持部材12aにより、駆動装置6及び乗りかご4、釣合い重り5の荷重を、ガイドレール1a,1b又は2a,2bへ伝える。ガイドレール1a,1b又は2a,2bの正面の支持部材12cは、駆動装置6からのモーメントを受けて、支持部材12が傾くことを防止する。また、正面支持部材12cは駆動装置6を支持する。このことは、U字形の支持部材12の場合でも、背面においても駆動装置6からのモーメントを受ける点が異なるのみで、同様の作用となる。
【0045】
この実施の形態によれば、駆動装置6は一対のガイドレール1a,1b又は2a,2bに懸架するだけで昇降路内に設置できるので、据付作業の簡易化がはかれると同時にガイドレール1a,1b又は2a,2b相互間の設置寸法に左右されず、一定の支持部材12,12a,12b,12cにて、駆動装置6を昇降路内に固定できる。
【0046】
次に、図10で示す実施の形態を説明する。乗りかご4又は釣合い重り5用のガイドレール1a,1b或いは2a,2bの上端部に、L字形に構成した支持部材12を懸架し、支持部材12の上面に水平部材15を固定し、他端を他のガイドレール2a,2b或いは1a,1bの上部に固定する。
【0047】
この実施の形態では、駆動装置6に加わる乗りかご4、釣合い重り5等の荷重を相対する他のガイドレールに伝える機能を持つ。U字形の支持部材12の場合であっても、同様の機能を持つ。
【0048】
この実施形態によれば乗りかご4、釣合い重り5等の重量が大きくなった時でも、荷重のモーメントにより生じる曲げ荷重を、相対する他のガイドレールに伝達することができるので、強度が約2倍となり、駆動装置を強固に固定できる。また地震時等でも、4本のガイドレール1a,1b及び2a,2bで荷重を分散するので、安全性が向上する。
【0049】
次に、図11で示す実施の形態を説明する。昇降路上部の壁19に、L字形状の支持部材16をアンカーボルト17により固定する。支持部材16の上部の水平面に、駆動装置6を支える溝形鋼7を設置し、その上に駆動装置6を固定する。支持部材16には補強部材18を設ける。
【0050】
この実施の形態によれば、駆動装置6に加わる荷重は、すべて昇降路壁19にて支持される。本実施形態の場合、昇降路壁19が鉄筋コンクリートとすると、昇降路壁19の任意の位置に設置できることとなる。また、据付時点に於いてガイドレール1a,1b,2a,2b施工前でもゴンドラや足場があれば設置できるので、エレベーターの施工工程の中で、任意の時期に設置できる。
【0051】
次に、図12乃至図14に示す実施の形態を説明する。図10〜図12はそれぞれ前述した実施の形態の変形例であり、図12、14に於いては、駆動装置6を支える溝形鋼7と支持梁3a,3b、または、支持部材16との間に弾性ゴム等の弾性材20を設置している。図12は、ガイドレール1a,1b,2a,2bの間に駆動装置6を取り付ける実施形態を示し、図14は、昇降路壁19に駆動装置6を取り付ける実施形態を示す。また、図13に於いては、水平支持部材12aとガイドレール1a,1b又は2a,2bの上部の受け金具21との間に弾性材20a、背面支持部材12bと受け金具21との間に弾性材20b、正面支持部材12cとガイドレール1a,1b又は2a,2bの歯面との間に弾性材20cを配置し、弾性材20dを介して、通しボルト14にて、ガイドレール1a,1b又は2a,2bに支持部材12を固定する。駆動装置6は正面支持部材12cにボルト等で固定される。
【0052】
これらの実施の形態では、駆動装置6はガイドレール1a,1b,2a,2b或いは昇降路壁19との間で防振支持されている。このため、エレベーター走行中、駆動装置6から発生する振動は、ガイドレール1a,1b,2a,2b或いは昇降路壁19に伝播することがなくなり、駆動装置6を昇降路内に設置しても、振動、騒音等の問題を発生させずにエレベーターを使用できる。
【0053】
次に、図15に示す実施の形態を説明する。駆動装置6の取付脚8に直付した台座22は弾性材23で前後を挟みこんだ形で、アンカーボルト24にて昇降路壁19に固定されている。また台座22の下部は弾性材25を介し、受け金具26で支持され、受け金具26は、アンカーボルト27で昇降路壁19に固定される。
【0054】
この実施の形態によれば、駆動装置6が昇降路壁19に直付けされると共に、荷重は受け金具26で支持され、かつ、駆動装置6全体は、昇降路壁19に対して弾性支持されている。駆動装置6は、昇降路に直付けされているので、駆動装置6の占有する面積は最小となる。鉛直荷重は受け金具26が負担し、昇降路へと伝える。しかしエレベーター動作中の振動は、弾性材23,25により遮断されるため、騒音の無い静かな運転が可能となる。
【0055】
次に、図16、17に示す実施の形態を説明する。図16において、駆動装置6は昇降路背面(出入口部から見てかごの背面)の昇降路頂部に乗りかご4の水平投影面28と干渉しない位置に配置する。特段、釣合い重り5の水平投影面29とは位置関係を指定しない。
【0056】
また、図17において、駆動装置6は、昇降路側面(出入口部から見てかごの側面)の昇降路頂部に、乗りかご4の水平投影面28と干渉しない位置に配置する。特段、釣合い重り5の水平投影面29とは位置関係を指定しない。駆動装置6の両端に設置したトラクションシーブ9により、吊りロープ10を介して、乗りかご4と釣合い重り5は連結され、駆動装置6の動作により、乗りかご4が昇降路内を昇降する。
【0057】
吊りロープ10は、乗りかご4の下部のヒッチ部30にて固定され、乗客の乗るかご室外面に干渉しない位置に配置する。本実施形態において、乗りかご4が昇降した時、駆動装置6は乗りかご4の投影面の外側に位置するため、乗りかご4が上昇してきても、駆動装置6と接触することは無い。従って、昇降路頂部に駆動装置6を設置するスペースを特別に考慮せずとも、かご上部が昇降路頂部に干渉しない寸法を確保すれば、昇降路全高を最小に設計施工できる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の一実施の形態のエレベーターの全体構成図である。
【図2】上記一実施の形態の全体構成を示す側面図である。
【図3】上記一実施の形態の水平断面図である。
【図4】上記一実施の形態におけるエレベーターの駆動装置を示す側面図である。
【図5】本発明の他の実施の形態のエレベーターの駆動装置を示す側面図である。
【図6】本発明のさらに他の実施形態のエレベーターの駆動装置を示す側面図である。
【図7】上記さらに他の実施の形態におけるエレベーターの駆動装置の部品構成を示す図である。
【図8】本発明の別の実施の形態におけるエレベーターの駆動装置の部品構成を示す図である。
【図9】本発明のさらに別の実施の形態におけるエレベーターの駆動装置を示す側面図である。
【図10】本発明の第6の実施形態のエレベーターの駆動装置を示す側面図である。
【図11】本発明の第7の実施形態のエレベーターの駆動装置を示す側面図である。
【図12】本発明の第8の実施形態のエレベーターの駆動装置を示す側面図である。
【図13】本発明の第8の実施形態のエレベーターの駆動装置を示す側面図である。
【図14】本発明の第8の実施形態のエレベーターの駆動装置を示す側面図である。
【図15】本発明の第9の実施形態のエレベーターの駆動装置を示す側面図である。
【図16】本発明の第10の実施形態のエレベーターの駆動装置を示す側面図である。
【図17】本発明の第10の実施形態のエレベーターの駆動装置を示す側面図である。
【図18】従来の機械室レス型エレベーターの構成を示す図である。
【図19】従来の機械室レス型エレベーターの構成を示す図である。
【符号の説明】
【0059】
1a、1b…乗りかご用ガイドレール
2a、2b…釣合い重り用ガイドレール
3a、3b…支持梁
4…乗りかご
5…釣合い重り
6…駆動装置
7…溝形鋼
8a、8b…取付脚
9…トラクションシーブ
10…吊りロープ
11a、11b…固定板
12、16…支持部材
12a…水平支持部材
12b…背面支持部材
12c…正面支持部材
14…通しボルト
17、22、24、27…アンカーボルト
18…補強部材
19…昇降路壁
20、20a、20b、20c、20d、23、25…弾性材
21、26…受け金具
22…台座
31…昇降路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
昇降路内を昇降する乗りかごと、前記乗りかごの昇降を案内する乗りかご用ガイドレールと、前記昇降路内を前記乗りかごの昇降とは反対方向に昇降する釣合おもりと、前記釣合おもりの昇降を案内する釣合おもり用ガイドレールと、前記昇降路内の頂部に配置され、吊りロープが巻付けられるトラクションシーブを有し、当該トラクションシーブを回転させることにより前記吊りロープを介して前記乗りかごおよび釣合おもりを昇降させる巻上用の駆動装置とを有するエレベーターであって、前記巻上用の駆動装置を、前記乗りかごの昇降通路の上に配置し、且つ平面図において前記巻上用の駆動装置の一部が前記乗りかごと重なることを特徴とするエレベーター。
【請求項2】
昇降路に立設された乗りかご用のレールに案内されて昇降する乗りかごと、上記昇降路に立設された他の釣合いおもり用のレールに案内されて昇降する釣合おもりと、上記昇降路に吊設されて一側が上記乗りかごに他側は上記釣合おもりにそれぞれ係合された吊りロープと、水平軸線によって枢持されて上記吊りロープが巻掛けられたトラクションシーブが設けられ、上記レールの上端部に支持されて下面が上記乗りかご及び釣合おもりの最上昇位置よりも上方に配置され、水平投影面において上記乗りかごと重合して配置された巻上用の駆動装置とを備えたエレベーター。
【請求項3】
前記トラクションシーブが前記昇降路の壁面側に向くよう前記巻上用の駆動装置を配置し、平面図において前記トラクションシーブを前記昇降路壁と前記乗りかごの隙間に位置させたことを特徴とする請求項1記載のエレベーター。
【請求項4】
前記巻上用の駆動装置は前記トラクションシーブと当該トラクションシーブを回転させるモータ部からなり、当該モータ部の一部を平面図において前記乗りかごと重ねて位置させたことを特徴とする請求項3記載のエレベーター。
【請求項5】
前記乗りかご用ガイドレールの頂部に固定された支持梁を有し、前記巻上用の駆動装置を前記支持梁に固定したことを特徴とする請求項1記載のエレベーター。
【請求項6】
前記巻上用の駆動装置を固定する支持梁と、当該支持梁と巻上用の駆動装置との間に設けられ前記巻上用駆動装置の、垂直方向の荷重を弾性支持する弾性材を有することを特徴とする請求項1記載のエレベーター。
【請求項7】
前記巻上用の駆動装置を固定する支持梁と、当該支持梁に取り付けられ、前記巻上用の駆動装置の横揺れを防止する振止め用の弾性材を設けたことを特徴とする請求項6記載のエレベーター。
【請求項8】
ガイドレールに沿って動く乗りかごと別のガイドレールに沿って動く釣合いおもりと昇降路内に配置された駆動装置とを備え、トラクションシーブ及び吊りロープを有するエレベーターであって、前記駆動装置は前記乗りかご用のガイドレールと前記釣合いおもり用の別のガイドレールとの両方に固定された支持梁上に配置されていることを特徴とするエレベーター。
【請求項9】
前記乗りかご用のガイドレールは前記支持梁との結合に続いて、当該支持梁を越えて上方に延びていることを特徴とする請求項8に記載のエレベーター。
【請求項10】
前記釣合いおもり用のガイドレールは前記支持梁を越えずに終端するように当該支持梁に結合されていることを特徴とする請求項8に記載のエレベーター。
【請求項11】
吊りロープが、前記トラクションシーブから前記乗りかごの下側のヒッチ部と、前記釣合いおもりの上側とに直接導かれていることを特徴とする請求項8に記載のエレベーター。
【請求項12】
前記ガイドレールに固定するための支持梁と駆動装置の取付脚とで取付部を構成し、この取付部は振動減衰式に前記乗りかご用のガイドレールに結合されていることを特徴とする請求項8に記載のエレベーター。
【請求項13】
前記支持梁と前記取付脚は固定的に相互結合されていることを特徴とする請求項8に記載のエレベーター。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2007−137681(P2007−137681A)
【公開日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−19696(P2007−19696)
【出願日】平成19年1月30日(2007.1.30)
【分割の表示】特願平9−302375の分割
【原出願日】平成9年11月5日(1997.11.5)
【出願人】(390025265)東芝エレベータ株式会社 (2,543)
【Fターム(参考)】