説明

エレベータ安全装置

【課題】ドア隙間の異物引き込み防止と遮煙ができるエレベータ安全装置の提供。
【解決手段】スライド型の扉のドア隙間に沿って弾性遮蔽体11を設けて異物引き込み防止をするエレベータ安全装置において、弾性遮蔽体が、三方枠に取り付けられた長い弾性部材14と、この弾性部材の少なくとも扉に摺動接触する部分上に設けられた低摩擦被覆15とを備えている。弾性部材はゴム、軟質合成樹脂あるいは板バネであり、低摩擦被覆がテフロン(登録商標)コーティングである。
【効果】簡単で信頼性の高い構造によりドア隙間への異物の引き込みを防止できるとともに、ドア隙間を気密に封止して遮煙もできる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はエレベータ安全装置に関し、特にスライド型の扉によって開閉される出入口開口において三方枠あるいは扉とこれら三方枠あるいは扉に対して相対的に移動する他の扉との間の隙間に異物が引き込まれるのを防ぐための弾性遮蔽体を備えたエレベータ安全装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
本発明の関連するエレベータ安全装置として、ドア開口部周縁と両引き戸との間に、昇温によって膨張してこの間を塞ぐ遮炎、遮煙要の膨張性耐火材を介在させてなるエレベータ用防火ドア構造が知られている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
また、ホールドアに、板バネの弾性力によって三方枠の上枠折り返し部に接触してホールドアと三方枠との間の隙間を密閉する密閉部材を設け、ホールドアが閉位置のときカム作用によって密閉部材を三方枠に接触させて隙間を密閉するものも提案されている(例えば特許文献2参照)。
【0004】
また、三方枠の上枠に取り付けられ、ドアパネルに接触して上枠とドアパネルとの間の隙間を密閉して遮煙する弾性体からなるパッキンを、パッキンを弾性的に挟み込んで着脱自在に保持する機構として、パッキンの取付、交換の能率を良くことも提案されている(例えば特許文献3参照)。
【0005】
更に、エレベータ安全装置としてエレベータの三方枠の扉との間に隙間を形成する角部に柱状の切り欠き部を設け、切り欠き部内に、柱状の可動部材を弾性支持して設けたものも知られている。弾性部材は、可動部材に外力が加わったときに、隙間の長さが可変するように三方枠に対して可動部材を水平方向に弾性支持するものである。このエレベータの安全装置によれば、可動部材がかご扉との間の隙間を狭めるように移動することにより、かご扉と三方枠との間に異物が引き込まれることを防止することができる(例えば特許文献4参照)。
【0006】
【特許文献1】特開2003−246571号公報
【特許文献2】特開2004−338851号公報
【特許文献3】特開2005−306578号公報
【特許文献4】特開2006−256761号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このような従来のエレベータ安全装置に於いて、ドア隙間を遮煙の目的で密閉するために提案されている構造は、いずれも三方枠の上枠とドアとの間のドア隙間を対象としたものであり、異物のドア隙間への引き込みを防止することはできない。また、弾性支持された可動部材によりドア隙間を狭める安全装置は、気密封止ができないので遮煙が不可能であり、扉と可動部材との間の隙間が狭まるため、硬い可動部材と扉との間に異物が一旦挟み込まれてしまうと、抜き出すことが容易ではない。
【0008】
従ってこの発明の目的は、ドア隙間への異物の引き込みを防止できるとともに、ドア隙間の遮煙もできるエレベータ安全装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
スライド型の扉によって開閉される出入口開口において、三方枠あるいは扉とこれら三方枠あるいは扉に対して相対的に移動する他の扉との間のドア隙間に異物が引き込まれるのを防ぐために、上記ドア隙間に沿って弾性遮蔽体を設けたエレベータ安全装置において、上記弾性遮蔽体が、上記扉あるいは三方枠に取り付けられて相対する上記扉に向かって延びた長い弾性部材と、この弾性部材の少なくとも上記扉に摺動接触する部分上に設けられた低摩擦被覆とを備えていることを特徴とするエレベータ安全装置。
【発明の効果】
【0010】
この発明のエレベータ安全装置によれば、簡単で信頼性の高い構造によりドア隙間への異物の引き込みを防止できるとともに、ドア隙間を気密に封止して遮煙もできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
実施の形態1.
図1はこの発明のエレベータ安全装置を適用したエレベータ装置の出入口部分の概略平面断面図、図2は図1のドア隙間部分の概略拡大図、図3は弾性遮蔽体を示す斜視図である。
【0012】
図1〜3に示すエレベータ装置は、スライド型の扉1によって開閉され、三方枠2によって囲まれた出入口開口3を持つ乗場4と、スライド型の扉5によって開閉され、三方枠6によって囲まれた出入口開口7を持つかご8とを備えている。乗場4の扉1は中央で両側に開くスライド式両開き2枚戸であり、三方枠2とこの三方枠2に対して相対的に移動して開位置あるいは閉位置になる。このようなスライド運動を可能にするために、三方枠2と扉1との間にはドア隙間9が形成されている。このような関係は、かご8の側の扉5と三方枠6とについても同様であり、ドア隙間10が形成されている。
【0013】
図2によく示されているように、ドア隙間9および10に異物が引き込まれてしまうのを防ぐために、ドア隙間9および10にはそれぞれ長い紐状の弾性遮蔽体11が設けられている。弾性遮蔽体11はドア隙間9および10に沿って三方枠2あるいは6に接着剤などによって取り付けられている。
【0014】
図3に示す弾性遮蔽体11は、断面形がほぼD字型で、平坦な底面12で三方枠2あるいは6に取り付けられ、半円形断面の円筒面13の部分はドア隙間9あるいは10を形成している扉1あるいは5に向かって延びて、その先端部分あるいは稜線部分が扉1あるいは5に隙間無く接触している。
【0015】
図3に詳細を示すように、弾性遮蔽体11は、三方枠2あるいは6に取り付けられて相対してドア隙間9あるいは10を形成する扉1あるいは5に向かって延びた弾性部材14と、この弾性部材14の少なくとも扉に摺動接触する部分上に設けられた低摩擦被覆15とを備えている。弾性部材14は例えばゴムあるいは軟質合成樹脂であり、低摩擦被覆15は例えばテフロン(登録商標)コーティングである。
【0016】
弾性部材14は、ドア隙間9あるいは10に入り込もうとする異物を排除するのに十分な硬さを持つ一方、扉1あるいは5の開閉移動中にも気密封止関係を維持するのに十分な柔らかさを持つものである。
【0017】
このような弾性遮蔽体11は、三方枠2あるいは6に取り付けられていてドア隙間9あるいは10に沿って延びてシール作用をしており、ドア隙間9あるいは10を気密に封止することになる。扉1および5が図示の閉位置から両側にスライドして開いた開位置に移動する場合にも、弾性遮蔽体11は扉1および5の表面に接触し続けて気密封止関係を維持し続けることができる。
【0018】
また、弾性遮蔽体11上に低摩擦被覆15が設けられいるため、扉1あるいは5のスライド開閉運動が妨げられることなく、また弾性遮蔽体11が扉1あるいは5に沿って接触しながら移動する際にも摺動音の発生を防ぐことができる。必要あれば扉1あるいは5の少なくとも弾性遮蔽体11が接触摺動する部分にも低摩擦被覆を設けて、摩擦をより低減し、あるいは被覆の寿命を長く維持することができる。
【0019】
実施の形態2.
図4に示す弾性遮蔽体16は、弾性部材17が断面U字型の金属製あるいは合成樹脂製の板バネ材であり、その上にテフロン(登録商標)コーティングである低摩擦被覆15が設けてある。弾性部材17にはフランジ18が設けてあり、フランジ18に三方枠2あるいは6への取付を容易にするためのベースプレート19が取り付けられている。ベースプレート19を利用すると接着剤だけでなくネジ等も利用して取り付けることができる。
【0020】
弾性部材17が板バネ材である場合には、製造が容易であり、弾性部材17の硬さ即ち弾力性の設定自由度が高く、様々な設計条件に容易に対応できる。
【0021】
以上の説明ではこの発明のエレベータ安全装置を特定の実施形態に関連して説明したが、例えばこの発明を三方枠の上枠と扉との間のドア隙間に適用することもできるし、開戸方式の異なるエレベータ装置に適用することなど、様々な変形や変更が可能である。
【0022】
図5にはこの発明のエレベータ安全装置を両開き4枚戸のエレベータ装置に適用した例を概略平面断面図で示してある。この例においては、弾性遮蔽体11は三方枠2および6と扉1および5との間のドア隙間9および10だけでなく、低速側の扉1および5と高速扉20および21との間のドア隙間22および23にも設けられている。
【0023】
図6には、この発明のエレベータ安全装置を片開き2枚戸のエレベータ装置に適用した例を概略平面断面図で示してあり、図7にはこの発明のエレベータ安全装置を片開き3枚戸のエレベータ装置に適用した例を概略平面断面図で示してある。図7の例においては、弾性遮蔽体11は、高速扉20および21と最高速扉24および25との間のドア隙間26および27にも設けられている。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】この発明のエレベータ安全装置を用いた両開き2枚戸のエレベータ装置の出入口部分の概略平面断面図である。
【図2】図1のドア隙間部分の概略拡大図である。
【図3】弾性遮蔽体の一例を示す斜視図である。
【図4】弾性遮蔽体の別の例を示す斜視図である。
【図5】この発明のエレベータ安全装置を用いた両開き4枚戸のエレベータ装置を示す概略平面断面図である。
【図6】この発明のエレベータ安全装置を用いた片開き2枚戸のエレベータ装置を示す概略平面断面図である。
【図7】この発明のエレベータ安全装置を用いた片開き3枚戸のエレベータ装置を示す概略平面断面図である。
【符号の説明】
【0025】
1、5 扉、2、6 三方枠、3、7 出入口開口、4 乗場、8 かご、9、10 ドア隙間、11、16 弾性遮蔽体、12 底面、13 円筒面、14、17 弾性部材、15 低摩擦被覆、18 フランジ、19 ベースプレート、20、21 高速扉、22、23 ドア隙間、24、25 最高速扉、26、27 ドア隙間。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スライド型の扉によって開閉される出入口開口において三方枠あるいは扉とこれら三方枠あるいは扉に対して相対的に移動する他の扉との間のドア隙間に異物が引き込まれるのを防ぐために、上記ドア隙間に沿って弾性遮蔽体を設けたエレベータ安全装置において、
上記弾性遮蔽体が、上記扉あるいは三方枠に取り付けられて相対する上記扉に向かって延びた長い弾性部材と、この弾性部材の少なくとも上記扉に摺動接触する部分上に設けられた低摩擦被覆とを備えていることを特徴とするエレベータ安全装置。
【請求項2】
上記弾性部材がゴムあるいは軟質合成樹脂であり、上記低摩擦被覆がテフロン(登録商標)コーティングであることを特徴とする請求項1に記載のエレベータ安全装置。
【請求項3】
上記弾性部材が金属製あるいは合成樹脂製板バネ材であり、上記低摩擦被覆がテフロン(登録商標)コーティングであることを特徴とする請求項1に記載のエレベータ安全装置。
【請求項4】
上記弾性遮蔽体が上記ドア隙間を気密に封止することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のエレベータ安全装置。
【請求項5】
上記扉の少なくとも上記弾性遮蔽体が接触する部分に低摩擦被覆を設けたことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のエレベータ安全装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−179431(P2009−179431A)
【公開日】平成21年8月13日(2009.8.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−19252(P2008−19252)
【出願日】平成20年1月30日(2008.1.30)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】