説明

エレベータ巻上機のリニューアル方法、エレベータシステム及びマシンベッド

【課題】既設の巻上機に対するリニューアルを効率よく短時間で実施する。
【解決手段】エレベータのかごが上下移動するエレベータ昇降路20の上側に設けられた機械室21の床22にマシンビーム24の下部が埋設され、このマシンビームの上面にマシンベッド27が取付けられ、このマシンベッドの上面に、かごを上下移動させる巻上機28が固定されたエレベータシステムにおけるエレベータ巻上機のリニューアル方法において、既設のマシンベッド27の上面に固定された既設の巻上機28を除去し、この既設の巻上機が上面から除去された後の既設のマシンベッド27の上面に、新規の巻上機29を固定可能な新規のマシンベッド30を取付け、この取付けられた新規のマシンベッド30の上面に、新規の巻上機29を固定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビル等に設置されたエレベータシステムにおけるエレベータ巻上機のリニューアル方法、このリニューアル方法でリニューアルされたエレベータシステム、及びこのリニューアル方法で採用されるマシンベッドに関する。
【背景技術】
【0002】
ビルやマンション等に設置されたエレベータシステムにおいては、設置時点から十数年が経過すると、エレベータシステムを構成しているエレベータ昇降路内を上下移動するエレベータのかごや、エレベータ昇降路の上側に設けられた機械室に設置されたかごをロープを介して上下移動させる巻上機や、巻上機を駆動制御する制御盤等の各構成部材が老朽化したり、機能が最新のシステムに対して、見劣りするようになる。
【0003】
したがって、既設の各構成部材についてそれぞれ高機能を有した新規の構成部材に更新するリニューアルを実施する必要がある。この場合、一般的に、エレベータシステムを構成する全部の構成部材を同時にリニューアルすることはなく、改修費用に対する効果等を考慮して、機能に直結する電動機や減速器やシープ等が組込まれた巻上機、及びこの巻上機を制御する制御盤に限って、リニューアルすることが実施されている。
【0004】
また、リニューアルすべきエレベータが設置されたビルやマンション等においては、従業員や住民が存在するので、短期間にリニューアルを完了する必要がある。
【0005】
上述した機械室内に設置された既設の巻上機を新規の巻上機に更新するリニューアル手法が特許文献1に提唱されている。
【0006】
図7(a)は、リニューアル前の機械室内に設置された巻上機の断面模式図である。機械室の床1の上面は、シンダーコンクリート2で覆われている。このシンダーコンクリート2に、一対のマシンビーム3の下部が埋込固定されている。この一対のマシンビーム3の上面に、これと直交する方向に一対の横ビーム4が取付けられており、この横ビーム4の上面に、電動機や減速器やシープ等が組込まれた巻上機5が固定されている。
【0007】
このような既設の巻上機5を高い機能を有した新規の巻上機にリニューアルする場合において、既設の巻上機5の取付寸法と、新規の巻上機の取付寸法が異なることが一般的である。このような場合、巻上機のリニューアルを実施する場合、マシンビーム3、横ビーム)4も同時に、新規の巻上機の取付寸法に合致した寸法を有する新規のマシンビーム、横ビームに交換する必要がある。
【0008】
しかし、マシンビーム3の下部は、床1のシンダーコンクリート2に埋込固定されているので、この既設のマシンビーム3を新規のマシンビームに取替えるには、大きな騒音を伴う工事を実施する必要があるので、図7(a)の既設の巻上機5、既設の横ビーム4のみを除去する。
【0009】
次に、図7(b)に示すように、既設の一対のマシンビーム3の隣接位置に、シンダーコンクリート2を貫通して下端が床1に固定した支持台6を設ける。既設の一対のマシンビーム3と支持台6との上面に新規の横ビーム8を取付け、この新規の横ビーム8の上面に、この横ビーム8に対して直交する方向に、新規のマシンビーム9を二層分だけ積層する。1層目のマシンビーム9と2層目のマシンビーム9との間には、防振部材10が介挿されている。そして、この新規のマシンビーム9の上面に既設の巻上機11を固定する。
【0010】
このように、支持台6を設けることにより、既設のマシンビーム3を機械室の床1に残した状態で、既設の巻上機5を新規の巻上機11にリニューアルすることが可能となる。
【特許文献1】特許第2728156号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら図7(a)、(b)に示すエレベータ巻上機のリニューアル手法においても、まだ解消すべき次のような課題があった。
【0012】
すなわち、既設の巻上機、既設の横ビーム、その他巻上機に付随した構成部品について、それらを撤去した後にエレベータの機械室から搬出し、階段などを経由、または建物近辺よりクレーン車を使用して、不要となったこれらの用品を搬出し、廃棄物として破棄しなければならなかった。
【0013】
近年、環境保護の観点から産業廃棄物の削減が強く求められる中で、エレベータのリニューアル工事においてもできるだけ廃棄物を抑制することが求められている。
【0014】
さらに既設の不要部材の搬出、新規の必要部材の搬入に際して、機械室に至る経路が狭いので、搬出入の時間的制約でクレーン車が使用できない等の理由が発生するが、機械室に搬出入する用品が大きいと経路の確保の為、建物の一部を壊して機械室に至る経路を拡張し、さらに専用の搬送治具を使用し、大掛かりな搬出入作業を余儀なくされる。これらの付帯工事を削減させることは工事費の削減にも直結する為、不要となる旧巻上機に関連した構成部材をリニューアル後のエレベータシスムにできるだけ流用できることが求められている。
【0015】
さらに、前述したリニューアル手法においては、支持台6を床1に固定するために、床1の上面を覆うシンダーコンクリート2の一部を除去する工事が必要であり、騒音問題が生じる。
【0016】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、エレベータシステムの機能低下を招くことなく、巻上機のリニューアルに伴う不要部材の発生量を極力抑制でき、かつ新規の各構成部材の機械室に対する搬入を容易にでき、もって、巻上機に対するリニューアル工事期間を短縮でき、このエレベータシステムが組込まれたビルやマンションのエレベータ利用者に対するサービス低下を極力抑制できるエレベータ巻上機のリニューアル方法、このリニューアル方法でリニューアルされたエレベータシステム、及びこのリニューアル方法で採用されるマシンベッドを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記課題を解消するために、本発明は、エレベータのかごが上下移動するエレベータ昇降路の上側に設けられた機械室の床にマシンビームの下部が埋設され、このマシンビームの上面にマシンベッドが取付けられ、このマシンベッドの上面に、かごを上下移動させる巻上機が固定されたエレベータシステムにおけるエレベータ巻上機のリニューアル方法において、既設のマシンベッドの上面に固定された既設の巻上機を除去するステップと、この既設の巻上機が上面から除去された既設のマシンベッドの上面に、新規の巻上機を固定可能な新規のマシンベッドを取付けるステップと、この取付けられた新規のマシンベッドの上面に、新規の巻上機を固定するステップとを備えている。
【0018】
このように構成されたエレベータ巻上機のリニューアル方法においては、既設の巻上機を既設のマシンベッドの上面から除去した後に、この既設のマシンベッドの上面に新規の巻上機に対応する新規のマシンベッドを取付ける。そして、この新規のマシンベッドの上面に新規の巻上機が固定される。
【0019】
したがって、このリニューアル方法で除去される構成部材は既設の巻上機のみとなるので、このリニューアル方法で除去される構成部材を最小限に抑制できる。また、機械室の床に対する工事を実施しないので、騒音問題が生じることを未然に防止できる。
【0020】
また、別の発明は、上述した発明のエレベータ巻上機のリニューアル方法において、新規のマシンベッドは複数の部材に分解可能な構造を有している。さらに、新規のマシンベッドを複数の部材に分解した状態で、機械室に搬入するステップと、この機械室に搬入された複数の部材を新規のマシンベッドに組立てるステップとを有している。そして、新規のマシンベッドを取付けるステップは、既設の巻上機が除去された既設のマシンベッドの上面に、組立てられた新規のマシンベッドを取付ける。
【0021】
このように構成されたエレベータ巻上機のリニューアル方法においては、新規のマシンベッドは複数の部材に分解可能であるので、複数の部材に分解した状態で機械室に搬入でき、機械室への狭い通路を搬送できるので、機械室に臨時に外部に開かれた搬入口を形成し、外部から大型クレーン等を用いて、新規のマシンベッドを臨時の搬入口から機械室に搬入する大がかりな作業を実施する必要がない。
【0022】
また、別の発明は、上述した発明のエレベータ巻上機のリニューアル方法において、新規のマシンベッドを取付けるステップは、既設の巻上機が除去された既設のマシンベッドの上面に、複数の新規のマシンベッドを積層して取付けるようにしている。
【0023】
また、別の発明は、エレベータのかごが上下移動するエレベータ昇降路の上側に設けられた機械室の床にマシンビームの下部が埋設され、このマシンビームの上面にマシンベッドが取付けられ、このマシンベッドの上面に、かごを上下移動させる巻上機が固定されたエレベータシステムにおけるエレベータ巻上機のリニューアル方法において、
既設のマシンベッドの上面に固定された既設の巻上機を除去するステップと、既設のマシンビームの上面に取付けられた既設のマシンベッドを除去するステップと、複数の部材に分解可能な構造を有し、上面に新規の巻上機を固定可能な新規のマシンベッドを、複数の部材に分解した状態で、機械室に搬入するステップと、この機械室に搬入された複数の部材を前記新規のマシンベッドに組立てるステップと、既設のマシンベッドが上面から除去された既設のマシンビームの上面に、組立てられた新規のマシンベッドを取付けるステップと、この既設のマシンビームの上面に取付けられた新規のマシンベッドの上面に、新規の巻上機を固定するステップとを備えている。
【0024】
このように構成されエレベータ巻上機のリニューアル方法においては、除去される構成部材は既設の巻上機と既設のマシンベッドである。そして、新規のマシンベッドは複数の部材に分解した状態で機械室に搬入される。
【0025】
また、別の発明は、リニューアル後のエレベータシステムである。そして、このエレベータシステムは、エレベータのかごが上下移動するエレベータ昇降路の上側に設けられた機械室の床に下部が埋設された既設のマシンビームと、この既設のマシンビームの上面に取付けられ、上面にかごを上下移動させるための巻上機を固定するための既設のマシンベッドと、この既設のマシンベッドの上面に取付けられ、上面にかごを上下移動させるための新規の巻上機を固定するための新規のマシンベッドと、この新規のマシンベッドの上面に固定され上面にかごを上下移動させるための新規の巻上機と、機械室内に設置され、この新規の巻上機を駆動制御する新規の制御盤とを備えている。
【0026】
このように構成されたリニューアル後のエレベータシステムにおいては、既設のエレベータシステムから少ない改修費用で高性能のエレベータシステムを実現できる。
【0027】
また、別の発明は、エレベータのかごが上下移動するエレベータ昇降路の上側に設けられた機械室の床に下部が埋設されたマシンビームの上面と、かごを上下移動させる巻上機との間に介挿され、上面に巻上機が固定されるエレベータ巻上機のマシンベッドである。そして、このエレベータ巻上機のマシンベッドは、互いに平行に配設された2本の下側アングル材と、この2本の下側アングル材の上面に、この2本の下側アングル材間を連結するように配設された互いに平行する複数本の上側アングル材と、2本の下側アングル材と複数本の上側アングル材とを、この2本の下側アングル材と複数本の上側アングル材との水平方向の交差角を可動自在に連結する複数の連結部材とを備えている。
【0028】
このように構成されたマシンベッドにおいては、下側アングル材と複数本の下側アングル材との水平方向の交差角は可動であるので、このマシンベッドを上方から見た形状を矩形から菱形に変形可能である。したがって、菱形に変形してこのマシンベッドの幅を狭くさせることによって、このマシンベッドを機械室に容易に搬入できる。
【発明の効果】
【0029】
本発明においては、既設の巻上機を既設のマシンベッドの上面から除去した後に、この既設のマシンベッドの上面に新規のマシンベッドを取付け、この新規のマシンベッドの上面に新規の巻上機を固定している。
【0030】
したがって、このリニューアル方法で除去される構成部材を最小限に抑制でき、また、機械室の床に対する工事を実施しないので、騒音問題が生じることを未然に防止でき、かつ新規の各構成部材の機械室に対する搬入を容易にできる。また、少ない改修費用で、巻上機に対するリニューアル工事期間を短縮でき、このエレベータシステムが組込まれたビルやマンションのエレベータ利用者に対するサービス低下を極力抑制できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下、本発明の各実施形態を図面を用いて説明する。
【0032】
(第1実施形態)
図1(a)〜(e)は、本発明の第1実施形態に係わるエレベータ巻上機のリニューアル方法の各リニューアル工程を示す断面模式図である。
【0033】
図1(a)は、リニューアル前の巻上機が設置された機械室の断面模式図である。エレベータのかごが上下移動するエレベータ昇降路20の上側に設けられた機械室21の床22の上面はシンダーコンクリート23で覆われている。このシンダーコンクリート23に既設のマシンビーム24の下部が埋込固定されている。この既設のマシンビーム24の一方端近傍に設けられた軸25aにそらせシープ25が枢支されている。このそらせシープ25にメインロープ26が懸架されている。
【0034】
既設のマシンビーム24の上面に既設のマシンベッド27が取付られており、この既設のマシンベッド27の上面に既設の巻上機28が固定されている。既設の巻上機28には電動機や減速器や主シープや取付部材等が組込まれている。そして主シープには前記メインロープ26が懸架されている。このメインロープ26の両端には、エレベータ昇降路20の図示しないかご及び釣合重りが取付けられている。また、機械室21内には、既設の巻上機28を駆動制御する図示しない既設の制御盤が配設されている。したがって、既設の巻上機28は既設の制御盤の駆動制御に基づいて、前記かごをエレベータ昇降路20内で上下移動させる。
【0035】
このような構成のリニューアル前のエレベータシステムにおける既設の巻上機28を、寸法形状の異なる高性能の新規の巻上機29にリニューアルする場合、先ず、エレベータ昇降路20内のかごを例えば1階等の基準階に固定し、メインロープ26を主シープ及びそらせシープ25から取外す。さらに、そらせシープ25を既設のマシンビーム24の軸25aから一時的に取外す。そして、図1(b)に示すように、既設の巻上機28を既設のマシンベッド27の上面から除去する。
【0036】
その後、図1(c)に示すように、既設の巻上機28が除去された既設のマシンベッド27の上面に、新規の巻上機29の寸法形状に対応する形状を有した新規のマシンベッド30を取付ける。そして、図1(d)に示すように、新規のマシンベッド30の上面に電動機や減速器や主シープや取付部材等が組込まれている新規の巻上機29を固定する。図1(d)に示すように、そらせシープ25をマシンビーム24の軸25aに取付け、メインロープ26を新規の巻上機29の主シープ及びそらせシープ25に懸架する。
【0037】
最後に、図示しない既設の制御盤を図示しない新規の制御盤に交換して、新規の制御盤と新規の巻上機29の電動機とを電力線及び信号線で接続する。
【0038】
このように構成された第1実施形態のエレベータ巻上機のリニューアル方法においては、図1(a)〜(e)に示すように、既設の巻上機28を既設のマシンベッド27の上面から除去した後に、この既設のマシンベッド27の上面に新規のマシンベッド30を取付ける。この新規のマシンベッド30の上面に新規の巻上機29が固定される。
【0039】
したがって、最終的に、このリニューアル方法で除去される構成部材は既設の巻上機29のみとなるので、このリニューアル方法で除去される構成部材を最小限に抑制できる。また、機械室21の床22及びシンダーコンクリート23に対する工事を実施しないので、騒音問題が生じることを未然に防止できる。
【0040】
(第2実施形態)
図2は本発明の第2実施形態に係わる新規の巻上機29が組込まれたリニューアル後のエレベータシステムの要部を取出して示す詳細断面図である。前述した図1(e)の断面模試図と同一部分には、同一符号が付されている。
【0041】
この第2実施形態のエレベータシステムにおいては、エレベータのかごが上下移動するエレベータ昇降路20の上側に設けられた機械室21の床22の上面はシンダーコンクリート23で覆われている。このシンダーコンクリート23に既設のマシンビーム24の下部が埋込固定されている。この既設のマシンビーム24の一方端近傍に設けられた軸25aにそらせシープ25が枢支されている。このそらせシープ25にメインロープ26が懸架されている。
【0042】
既設のマシンビーム24の上面に防振部材31a、31b、31cを介して既設のマシンベッド27が取付られており、この既設のマシンベッド27の上面に同一構成の2台の新規のマシンベッド30a、30bが、相互間に防振部材32a、32bを挟んで積層されている。具体的には、下側の新規のマシンベッド30aが、既設のマシンベッド27に対してボルト/ナット37で固定されている。
【0043】
また、既設のマシンベッド27内における新規のマシンベッド30a、30bの端部が当接する位置に、新規の巻上機29の重量を支えるための補強アングル36が紙面に直交する方向に、このリニューアル作業の一環として、追加取付されている。
【0044】
積層された2台の新規のマシンベッド30a、30bのうちの上側の新規のマシンベッド30bの上面には、新規の巻上機29が、取付部材33を介して、複数のボルト/ナット35で固定されている。新規の巻上機29の主シープ34には前記メインロープ26が懸架されている。このメインロープ26の両端には、エレベータ昇降路20の図示しないかご及び釣合重りが取付けられている。また、機械室21内には、新規の巻上機29を駆動制御する図示しない新規の制御盤が配設されている。したがって、新規の巻上機29は新規の制御盤の駆動制御に基づいて、前記かごをエレベータ昇降路20内で上下移動させる。
【0045】
図3は、上側に位置する新規のマシンベッド30bの詳細構成図であり、図3(a)は斜視図、図3(b)は上面図、図3(c)は正面図である。
【0046】
この新規のマシンベッド30bは、略コ字状型断面形状を有した4枚の金属板38a、38b、38c、38dで上下端開口の角筒を形成し、この角筒内に2枚の補強用の金属板38e、38fを介在させたものである。金属板38a〜38f相互間は、ボルト/ナット39で固定されている。したがって、各ボルト/ナット39を取外すことにより、この新規のマシンベッド30bを6枚の金属板38a〜38fに分解可能である。
【0047】
なお、下側の新規のマシンベッド30aも、上側の新規のマシンベッド30bとほぼ同一構成を有する。
【0048】
このように構成された第2実施形態のエレベータシステムにおいては、図1(a)に示す既設のエレベータシステムから、既設の巻上機28及び既設の制御盤を新規の巻上機29及び新規の制御盤に変更して、新規のマシンベッド30a、30bを追加するのみであるので、少ない改修費用で高性能のエレベータシステムを実現できる。
【0049】
さらに、新規のマシンベッド30a、30bを、図3に示すように、それぞれ6枚の金属板38a〜38fに分解可能であるので、リニューアル工事の際には、新規のマシンベッド30a、30bをそれぞれ6枚の金属板38a〜38fに分解した状態で、狭い通路を経て機械室21に搬入できる。そして、機械室21内において、ボルト/ナット39を用いて新規のマシンベッド30a、30bを組立てればよい。
【0050】
したがって、機械室21に新規のマシンベッド30a、30bを搬入するに際して、例えば、建物の一部を壊して拡張し、さらに専用の搬送治具を使用し、大掛かりな搬出入作業を実施する必要はなく、機械室21に新規のマシンベッド30a、30bを簡単に搬入できる。よって、リニューアル工事期間を短縮できるとともにリニューアル工事費用を節減できる。
【0051】
なお、この実施形態においては、ロープ26がそらせシープ25位置で大きく屈曲して、そらせシープ26に過大な負荷が掛かることを防止するために、2つの新規のマシンベッド30a、30bを積層した。しかし、図1(e)に示すように、1つの新規のマシンベッド30のみであってもよいことは言うまでもない。
【0052】
(第3実施形態)
図4は、本発明の第3実施形態に係わるエレベータ巻上機のリニューアル方法で採用される新規のマシンベッド40の詳細構成図であり、図4(a)は斜視図、図4(b)は上面図、図4(c)はこの新規のマシンベッド40を矩形から菱形に変形した状態を示す上面図である。
【0053】
この新規のマシンベッド40は、略コ字状型断面形状を有した互いに平行に配設された2本の下側アングル材41a、41bの上面に、この2本の下側アングル材41a、41b間を連結するように配設された互いに平行する4本の上側アングル材42a、42b、42c、42dが連結ピン45で接続されている。したがって、2本の下側アングル材41a、41bと4本の上側アングル材42a〜42dとの水平方向の交差角θは図4(c)に示すように任意に変更可能である。
【0054】
このように構成された新規のマシンベッド40において、この新規のマシンベッド40を機械室21へ搬入する時には、図4(c)に示すように、この新規のマシンベッド40を菱形に変形してこの新規のマシンベッド40の幅を狭くさせることによって、この新規のマシンベッド40を機械室21に容易に搬入できる。
【0055】
そして、この新規のマシンベッド40を図1(c)に示すように、既設のマシンベッド27上に取付ける場合においては、図4(a)、図4(b)に示すように、2本の下側アングル材41a、41bと4本の上側アングル材42a〜42dとの水平方向の交差角θを90°にして、新規のマシンベッド40の外形を直方体形状に戻す。
【0056】
したがって、図3に示した第2実施形態の新規のマシンベッド30a、30bと同様に、大掛かりな搬出入作業を実施する必要はなく、機械室21に新規のマシンベッド40を簡単に搬入できる。よって、リニューアル工事期間を短縮できるとともにリニューアル工事費用を節減できる。
【0057】
さらに、この新規のマシンベッド40は機械室21で簡単に正規の使用状態に復元できるので、リニューアル工事をより効率的に実施できる。
【0058】
(第4実施形態)
図5は、本発明の第4実施形態に係わるエレベータ巻上機のリニューアル方法で採用される新規のマシンベッド46の詳細構成図であり、図5(a)は上面図、図5(b)は正面図、図5(c)はこの新規のマシンベッド46の組立図である。
【0059】
この新規のマシンベッド46は、4個の貫通孔49a、49b、49c、49dが穿設された2枚の金属板47a、47bと、両端が各貫通孔49a、49b、49c、49dに挿入され、2枚の金属板47a、47bを連結する4本の軸棒48a、48b、48c、48dとで構成されている。
【0060】
この新規のマシンベッド46は、図5(c)に示すように、2枚の金属板47a、47bと4本の軸棒48a、48b、48c、48dとに簡単に分解可能であるので、リニューアル工事の際には、新規のマシンベッド46を2枚の金属板47a、47bと4本の軸棒48a、48b、48c、48dとに分解した状態で、狭い通路を経て機械室21に搬入できる。そして、機械室21内において、図5(c)に示す手順で図5(a)、(b)に示す直方体形状の新規のマシンベッド46に組立てればよい。
【0061】
したがって、図3に示した第2実施形態の新規のマシンベッド30a、30bと同様に、大掛かりな搬出入作業を実施する必要はなく、機械室21に新規のマシンベッド46を簡単に搬入できる。よって、リニューアル工事期間を短縮できるとともにリニューアル工事費用を節減できる。
【0062】
(第5実施形態)
図6(a)〜(e)は、本発明の第5実施形態に係わるエレベータ巻上機のリニューアル方法の各リニューアル工程を示す断面模式図である。図1(a)〜(e)に示す第1実施形態に係わるエレベータ巻上機のリニューアル方法と同一部分には、同一符号を付して重複する部分の詳細説明を省略する。
【0063】
この第5実施形態においては、先ず、かごを基準階に固定し、メインロープ26を主シープ及びそらせシープ25から取外す。さらに、そらせシープ25を既設のマシンビーム24の軸25aから一時的に取外す。そして、図6(b)に示すように、既設の巻上機28を既設のマシンベッド27の上面から除去する。さらに、図6(c)に示すように、既設のマシンベッド27を既設のマシンビーム24の上面から除去する。
【0064】
その後、図6(d)に示すように、既設のマシンベッド27が除去された後の既設のマシンビーム24の上面に新規のマシンベッド30を取付ける。そして、図6(d)に示すように、新規のマシンベッド30の上面に電動機や減速器や主シープや取付部材等が組込まれている新規の巻上機29を固定する。その後、そらせシープ25をマシンビーム24の軸25aに取付け、メインロープ26を新規の巻上機29の主シープ及びそらせシープ25に懸架する。
【0065】
最後に、図示しない既設の制御盤を図示しない新規の制御盤に交換して、新規の制御盤と新規の巻上機29の電動機と電力線及び信号線で接続する。
【0066】
このように構成された第5実施形態のエレベータ巻上機のリニューアル方法においては、図6(a)〜(e)に示すように、既設の巻上機28及び既設のマシンベッド27を既設のマシンビーム24の上面から除去した後に、この既設のマシンビーム24の上面に新規のマシンベッド30を取付ける。この新規のマシンベッド30の上面に新規の巻上機29が固定される。
【0067】
したがって、最終的に、このリニューアル方法で除去される構成部材は既設の巻上機29、既設のマシンベッド27のみとなるので、このリニューアル方法で除去される構成部材を抑制できる。さらに、新規のマシンベッド30は前述したように、6枚の金属板38a〜38fに分解可能であるので、この新規のマシンベッド30を機械室21に容易に搬入可能である。
【0068】
したがって、図1(a)〜(e)に示す第1実施形態に係わるエレベータ巻上機のリニューアル方法とほぼ同じ作用効果を奏することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本発明の第1実施形態に係わるエレベータ巻上機のリニューアル方法の各リニューアル工程を示す断面模式図
【図2】本発明の第2実施形態に係わるリニューアル後のエレベータシステムの要部を取出して示す詳細断面図
【図3】同リニューアル後のエレベータシステムに組込まれた新規のマシンベッドの概略構成を示す図
【図4】本発明の第3実施形態に係わる新規のマシンベッドの概略構成を示す図
【図5】本発明の第4実施形態に係わる新規のマシンベッドの概略構成を示す図
【図6】本発明の第5実施形態に係わるエレベータ巻上機のリニューアル方法の各リニューアル工程を示す断面模式図
【図7】従来のエレベータ巻上機のリニューアル方法の各リニューアル工程を示す断面模式図
【符号の説明】
【0070】
20…エレベータ昇降路、21…機械室、22…床、23…シンダーコンクリート、24…既設のマシンビーム、25…そらせシープ、26…メインロープ、27…既設のマシンベッド、28…既設の巻上機、29…新規の巻上機、30,30a,30b,40,46…新規のマシンベッド、31a,31b,31c,32a,32b…防振部材、33…取付部材、34…主シープ、35,37,39…ボルト/ナット、36…補強アングル、38a〜38f、47a,47b…金属板、41a,41b…下側アングル材、42a,42b…上側アングル材、45…連結ピン、48a〜48d…軸棒

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エレベータのかごが上下移動するエレベータ昇降路の上側に設けられた機械室の床にマシンビームの下部が埋設され、このマシンビームの上面にマシンベッドが取付けられ、このマシンベッドの上面に、前記かごを上下移動させる巻上機が固定されたエレベータシステムにおけるエレベータ巻上機のリニューアル方法において、
既設のマシンベッドの上面に固定された既設の巻上機を除去するステップと、
この既設の巻上機が上面から除去された既設のマシンベッドの上面に、新規の巻上機を固定可能な新規のマシンベッドを取付けるステップと、
この取付けられた新規のマシンベッドの上面に、前記新規の巻上機を固定するステップと
を備えたことを特徴とするエレベータ巻上機のリニューアル方法。
【請求項2】
前記新規のマシンベッドは複数の部材に分解可能な構造を有し、
前記新規のマシンベッドを複数の部材に分解した状態で、前記機械室に搬入するステップと、この機械室に搬入された複数の部材を前記新規のマシンベッドに組立てるステップとを有し、
前記新規のマシンベッドを取付けるステップは、前記既設の巻上機が除去された既設のマシンベッドの上面に、前記組立てられた新規のマシンベッドを取付ける
ことを特徴とする請求項1記載のエレベータ巻上機のリニューアル方法。
【請求項3】
前記新規のマシンベッドを取付けるステップは、前記既設の巻上機が除去された既設のマシンベッドの上面に、複数の新規のマシンベッドを積層して取付ける
ことを特徴とする請求項1又は2記載のエレベータ巻上機のリニューアル方法。
【請求項4】
エレベータのかごが上下移動するエレベータ昇降路の上側に設けられた機械室の床にマシンビームの下部が埋設され、このマシンビームの上面にマシンベッドが取付けられ、このマシンベッドの上面に、前記かごを上下移動させる巻上機が固定されたエレベータシステムにおけるエレベータ巻上機のリニューアル方法において、
既設のマシンベッドの上面に固定された既設の巻上機を除去するステップと、
既設のマシンビームの上面に取付けられた既設のマシンベッドを除去するステップと、
複数の部材に分解可能な構造を有し、上面に新規の巻上機を固定可能な新規のマシンベッドを、前記複数の部材に分解した状態で、前記機械室に搬入するステップと、
この機械室に搬入された複数の部材を前記新規のマシンベッドに組立てるステップと、
前記既設のマシンベッドが上面から除去された既設のマシンビームの上面に、前記組立てられた新規のマシンベッドを取付けるステップと、
この既設のマシンビームの上面に取付けられた新規のマシンベッドの上面に、前記新規の巻上機を固定するステップと
を備えたことを特徴とするエレベータ巻上機のリニューアル方法。
【請求項5】
エレベータのかごが上下移動するエレベータ昇降路の上側に設けられた機械室の床に下部が埋設された既設のマシンビームと、
この既設のマシンビームの上面に取付けられ、上面に前記かごを上下移動させるための巻上機を固定するための既設のマシンベッドと、
この既設のマシンベッドの上面に取付けられ、上面に前記かごを上下移動させるための新規の巻上機を固定するための新規のマシンベッドと、
この新規のマシンベッドの上面に固定され、上面に前記かごを上下移動させるための新規の巻上機と、
前記機械室内に設置され、前記新規の巻上機を駆動制御する新規の制御盤と
を備えたことを特徴とするエレベータシステム。
【請求項6】
エレベータのかごが上下移動するエレベータ昇降路の上側に設けられた機械室の床に下部が埋設されたマシンビームの上面と、前記かごを上下移動させる巻上機との間に介挿され、上面に前記巻上機が固定されるエレベータ巻上機のマシンベッドにおいて、
互いに平行に配設された複数の下側アングル材と、
この複数の下側アングル材の上面に、この複数の下側アングル材間を連結するように配設された互いに平行する複数本の上側アングル材と、
前記複数の下側アングル材と前記複数本の上側アングル材とを、この複数の下側アングル材と前記複数本の上側アングル材との水平方向の交差角を可動自在に連結する複数の連結部材と
を備えたことを特徴とするエレベータ巻上機のマシンベッド。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−70082(P2007−70082A)
【公開日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−260824(P2005−260824)
【出願日】平成17年9月8日(2005.9.8)
【出願人】(390025265)東芝エレベータ株式会社 (2,543)
【Fターム(参考)】