説明

エレベータ昇降用ベルト

【課題】駆動シーブの幅をコンパクトにするとともにスラスト方向の位置の安定化を実現するエレベータ昇降用ベルトを提供すること。
【解決手段】長尺形状を有するベルト本体110とベルト本体110の長手方向に埋設した複数の芯線120とベルト本体110の長手方向に延びた複数の突条部130と複数の突条部130間に形成されて駆動シーブのガイド突条と係合する被ガイド溝部140とを備え、被ガイド溝部140が溝底面141を有し、突条部130の頂部側突条幅W1が底部側突条幅W2より狭くなるように突条部130の両側の突条側面131が傾いて形成されているとともに、突条部130が少なくともベルト本体110の幅方向両端に配設されているエレベータ昇降用ベルト100。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動シーブの動力をエレベータケージに伝達するエレベータ昇降用ベルトに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、駆動シーブの動力をエレベータケージに伝達するエレベータ昇降用ベルトが知られている(例えば、特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4346553号公報(特許請求の範囲、図1参照。)
【特許文献2】特開2009−29635号公報(特許請求の範囲、図1参照。)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来のエレベータ昇降用ベルトが騒音対策としてベルト本体の長手方向に対して傾斜した溝パターンのみを有した構造であったため、駆動シーブが回動した際にエレベータ昇降用ベルトが蛇行するように駆動シーブに対してスラスト方向に不安定に変位し駆動シーブから外れてしまうという問題があった。
また、エレベータ昇降用ベルトの駆動シーブに対するスラスト方向の不安定な変位を許容するために、駆動シーブの幅寸法をエレベータ昇降用ベルトの幅寸法に対して大きく設けるとともに駆動シーブの形状をクラウン状にしなければならないという問題があった。
【0005】
そこで、本発明は、前述したような従来技術の問題を解決するものであって、すなわち、本発明の目的は、駆動シーブに対するスラスト方向の位置の安定化を実現するとともに駆動シーブの幅をコンパクトにするエレベータ昇降用ベルトを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本請求項1に係る発明は、長尺形状を有するベルト本体と該ベルト本体の長手方向に埋設した複数の芯線と前記ベルト本体の長手方向に延びた複数の突条部と該複数の突条部間に形成されて駆動シーブのガイド突条と係合する被ガイド溝部とを備え、前記駆動シーブの動力をエレベータケージに伝達するエレベータ昇降用ベルトにおいて、前記被ガイド溝部が溝底面を有し、前記突条部の頂部側突条幅が底部側突条幅より狭くなるように突条部の両側の突条側面が傾いて形成されているとともに、前記突条部が少なくとも前記ベルト本体の幅方向両端に配設されていることにより、前述した課題を解決するものである。
【0007】
本請求項2に係る発明は、請求項1に記載されたエレベータ昇降用ベルトの構成に加えて、前記駆動シーブに巻き掛けられている範囲の突条部および被ガイド溝部の全体が、前記駆動シーブと面接触していることにより、前述した課題をさらに解決するものである。
【0008】
本請求項3に係る発明は、請求項1または請求項2に記載されたエレベータ昇降用ベルトの構成に加え、前記突条部の突条頂面には、前記ベルト本体の長手方向に対して交差する方向に延びた第1溝パターンが形成されていることにより、前述した課題をさらに解決するものである。
【0009】
本請求項4に係る発明は、請求項1乃至請求項3のいずれか1つに記載されたエレベータ昇降用ベルトの構成に加え、前記被ガイド溝部の溝底面には、前記ベルト本体の長手方向に対して交差する方向に延びた第2溝パターンが形成されていることにより、前述した課題をさらに解決するものである。
【0010】
本請求項5に係る発明は、請求項1乃至請求項4のいずれか1つに記載されたエレベータ昇降用ベルトの構成に加え、前記突条部および被ガイド溝部の少なくとも一部に補強布が貼られていることにより、前述した課題をさらに解決するものである。
【0011】
本請求項6に係る発明は、請求項1乃至請求項5のいずれか1つに記載されたエレベータ昇降用ベルトの構成に加え、前記ベルト本体を基準とした前記突条部と反対側には、前記ベルト本体の長手方向に延びた複数の背面側突条部と該複数の背面側突条部間に形成された背面側被ガイド溝部とが形成されていることにより、前述した課題をさらに解決するものである。
【0012】
本請求項7に係る発明は、請求項1乃至請求項6のいずれか1つに記載されたエレベータ昇降用ベルトの構成に加え、前記芯線を除くベルト本体および突条部が透明な材料で形成されていることにより、前述した課題をさらに解決するものである。
【発明の効果】
【0013】
本請求項1に係る発明のエレベータ昇降用ベルトは、長尺形状を有するベルト本体とベルト本体の長手方向に埋設した複数の芯線とベルト本体の長手方向に延びた複数の突条部と複数の突条部間に形成されて駆動シーブのガイド突条と係合する被ガイド溝部とを備え、駆動シーブの動力をエレベータケージに伝達するエレベータ昇降用ベルトにおいて、被ガイド溝部が溝底面を有し、突条部の頂部側突条幅が底部側突条幅より狭くなるように突条部の両側の突条側面が傾いて形成されているとともに、突条部が少なくともベルト本体の幅方向両端に配設されていることにより、被ガイド溝部の溝幅が広くなるため、被ガイド溝部が溝底面を有さない構造と比較して、駆動シーブのガイド突条と被ガイド溝部とをしっかりと係合させることができる。
つまり、エレベータ昇降用ベルトが駆動シーブに対してスラスト方向にずれることを確実に防止できる。
また、ベルト本体の幅方向両端の突条部の外側の突条側面に駆動シーブの幅方向両側のフランジを接触させてもよいため、ベルト本体の幅方向両端にフランジが接触する構造と比較して、駆動シーブの幅をコンパクトにすることができる。
つまり、駆動シーブの幅を突条部および被ガイド溝部が巻き付く幅にすることができる。
【0014】
本請求項2に係る発明のエレベータ昇降用ベルトは、請求項1に係るエレベータ昇降用ベルトが奏する効果に加えて、駆動シーブに巻き掛けられている範囲の突条部および被ガイド溝部の全体が、駆動シーブと面接触していることにより、接触しない箇所がない分だけ摩擦力が向上するため、駆動シーブからエレベータ昇降用ベルトへの伝動効率を向上させることができる。
【0015】
本請求項3に係る発明のエレベータ昇降用ベルトは、請求項1または請求項2に係るエレベータ昇降用ベルトが奏する効果に加えて、突条部の突条頂面には、ベルト本体の長手方向に対して交差する方向に延びた第1溝パターンが形成されていることにより、突条部の突条頂面と駆動シーブとの間に異物が入った場合、異物が突条頂面と駆動シーブとの間から掻き出されるようにして第1溝パターンに入り突条部の突条頂面と駆動シーブとが直接接触するため、突条部の突条頂面と駆動シーブとの間の摩擦力の低下を防止できる。
また、エレベータ昇降用ベルトが駆動シーブの外周に沿って曲がる際の芯線より内側となる箇所に第1溝パターンがあることで芯線より内側の弾性変形量が少なくなるため、エレベータ昇降用ベルトを駆動シーブの外周に沿って曲がりやすくすることができる。
【0016】
本請求項4に係る発明のエレベータ昇降用ベルトは、請求項1乃至請求項3のいずれか1つに係るエレベータ昇降用ベルトが奏する効果に加えて、被ガイド溝部の溝底面には、ベルト本体の長手方向に対して交差する方向に延びた第2溝パターンが形成されていることにより、被ガイド溝部の溝底面と駆動シーブとの間の異物が入った場合、異物が溝底面と駆動シーブとの間から掻き出されるようにして第2溝パターンに入り被ガイド溝部の溝底面と駆動シーブとが直接接触するため、被ガイド溝部の溝底面と駆動シーブとの間の摩擦力の低下を防止できる。
また、エレベータ昇降用ベルトが駆動シーブの外周に沿って曲がる際の芯線より内側となる箇所に第2溝パターンがあることで芯線より内側の弾性変形量が少なくなるため、エレベータ昇降用ベルトを駆動シーブの外周に沿って曲がりやすくすることができる。
【0017】
本請求項5に係る発明のエレベータ昇降用ベルトは、請求項1乃至請求項4のいずれか1つに係るエレベータ昇降用ベルトが奏する効果に加えて、突条部および被ガイド溝部の少なくとも一部に補強布が貼られていることにより、駆動シーブと接触する箇所がすり減りにくくなるため、エレベータ昇降用ベルトの耐久性を向上させることができる。
また、すり減りの程度により駆動シーブと接触する箇所の外観が変化するため、エレベータ昇降用ベルトの交換時期の目安にすることができる。
【0018】
本請求項6に係る発明のエレベータ昇降用ベルトは、請求項1乃至請求項5のいずれか1つに係るエレベータ昇降用ベルトが奏する効果に加えて、ベルト本体を基準とした突条部と反対側には、ベルト本体の長手方向に延びた複数の背面側突条部と複数の背面側突条部間に形成された背面側被ガイド溝部とが形成されていることにより、駆動シーブと接触するエレベータ昇降用ベルトの面と反対側の背面と接触する他のシーブが設けられている場合、背面の背面側被ガイド溝部が他のシーブのガイド突条と係合するため、他のシーブに対してスラスト方向のエレベータ昇降用ベルトの位置を安定させることができる。
【0019】
本請求項7に係る発明のエレベータ昇降用ベルトは、請求項1乃至請求項6のいずれか1つに係るエレベータ昇降用ベルトが奏する効果に加えて、芯線を除くベルト本体および突条部が透明な材料で形成されていることにより、ベルト本体の内部の芯線の位置まで透けるため、点検時に芯線の状態を目視することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の第1実施例のエレベータ昇降用ベルトの断面斜視図、正面断面図および平面図。
【図2】図1に示すエレベータ昇降用ベルトを適用したエレベータの概略正面図。
【図3】本発明の第2実施例のエレベータ昇降用ベルトの断面斜視図、正面断面図および平面図。
【図4】本発明の第3実施例のエレベータ昇降用ベルトの断面斜視図、正面断面図および平面図。
【図5】本発明の第4実施例のエレベータ昇降用ベルトの断面斜視図、正面断面図および平面図。
【図6】本発明の第5実施例のエレベータ昇降用ベルトの断面斜視図、正面断面図および平面図。
【図7】本発明の第6実施例のエレベータ昇降用ベルトの断面斜視図、正面断面図および平面図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明のエレベータ昇降用ベルトは、長尺形状を有するベルト本体とベルト本体の長手方向に埋設した複数の芯線とベルト本体の長手方向に延びた複数の突条部と複数の突条部間に形成されて駆動シーブのガイド突条と係合する被ガイド溝部とを備え、駆動シーブの動力をエレベータケージに伝達するエレベータ昇降用ベルトにおいて、被ガイド溝部が溝底面を有し、突条部の頂部側突条幅が底部側突条幅より狭くなるように突条部の両側の突条側面が傾いて形成されているとともに、突条部が少なくともベルト本体の幅方向両端に配設されていることによって、被ガイド溝部の溝幅が広くなるとともにベルト本体の幅方向両端の突条部の外側の突条側面が駆動シーブの幅方向両側のフランジと接触するものであれば、その具体的な実施態様は、如何なるものであっても構わない。
【0022】
例えば、突条部の数は2つ以上であれば被ガイド溝部が少なくとも1つ形成されるので、突条部の数は2つ以上であればいくつでもよい。
また、エレベータ昇降用ベルトの芯線以外の部分を形成する材料は可撓性を有するものであればよく、例えばウレタンを用いて形成してもよい。
さらに、突条部および被ガイド溝部の全体でなく、それぞれの一部が駆動シーブと接触する構造でもよい。
【実施例1】
【0023】
以下に、本発明の第1実施例であるエレベータ昇降用ベルト100について、図1および図2に基づいて説明する。
ここで、図1(a)は、本発明の第1実施例のエレベータ昇降用ベルト100の断面斜視図であり、図1(b)は、駆動シーブ720に巻き掛けられた状態の本発明の第1実施例のエレベータ昇降用ベルト100の正面断面図であり、図1(c)は、駆動シーブ720と接する側からみた本発明の第1実施例のエレベータ昇降用ベルト100の平面図であり、図2は、図1に示すエレベータ昇降用ベルト100を適用したエレベータ装置700の概略正面図である。
【0024】
本発明の第1実施例であるエレベータ昇降用ベルト100は、図1および図2に示すように、長尺形状を有するベルト本体110とベルト本体110の長手方向に埋設した複数の芯線120とベルト本体110の長手方向に延びた複数の突条部130と複数の突条部130間に形成されて駆動シーブ720のガイド突条721と係合する被ガイド溝部140とを備え、駆動シーブ720の動力をエレベータケージ710に伝達するように構成されている。
【0025】
また、被ガイド溝部140が溝底面141を有している。
これにより、被ガイド溝部140の溝幅が広くなる。
さらに、突条部130の頂部側突条幅W1が底部側突条幅W2より狭くなるように突条部130の両側の突条側面131が傾いて形成されているとともに、突条部130が少なくともベルト本体110の幅方向両端に配設されている。
これにより、ベルト本体110の幅方向両端の突条部130の外側の突条側面131が、駆動シーブ720のフランジ722と接触する。
【0026】
また、複数の芯線120は、ベルト本体110の長手方向に並列に配列されている。
これにより、従来のワイヤー式昇降のエレベータの駆動シーブの径より、駆動シーブ720の径が小さくてもよくなるため、駆動シーブ720を有する巻上げ機を小型化することができ、さらに省電力とすることができる。
さらに、複数の芯線120は、エレベータ昇降用ベルト100の芯線120以外の箇所を形成するウレタンによって完全に被膜されている。
これにより、金属で形成された芯線120が外気に触れないため、芯線120が酸化等の劣化することを防止できる。
【0027】
また、エレベータ昇降用ベルト100の芯線120以外の箇所が、透明なウレタンで形成されている。
これにより、ベルト本体110の内部の芯線120を可視できるため、位置や状態を確認することができる。
さらに、被ガイド溝部140が、駆動シーブ720の周方向に延設されたガイド突条721と係合するように構成されている。
これにより、駆動シーブ720のスラスト方向のエレベータ昇降用ベルト100と駆動シーブ720との相対的な位置関係が規制されるため、駆動シーブ720に対してスラスト方向のエレベータ昇降用ベルト100の位置を安定させることができる。
【0028】
突条部130の突条頂面132、突条側面131および被ガイド溝部140の溝底面141が、駆動シーブ720のガイド突条721に乗り上げることなく所謂、ジャストタッチでぴったりと接触している。
言い換えると、駆動シーブ720に巻き掛けられている範囲A(図2参照)の突条部130および被ガイド溝部140の全体が、駆動シーブ720と面接触している。
これにより、接触しない箇所がない分だけ摩擦力が向上する。
【0029】
続いて、本実施例1のエレベータ昇降用ベルト100を適用したエレベータについて説明する。
図2に示すように、エレベータ装置700は、エレベータケージ710と、巻上げ機の駆動シーブ720と、従動シーブ730と、つり合いおもり740とを備えている。
エレベータ昇降用ベルト100の両端が所定の箇所に固定され、エレベータ昇降用ベルト100は、図示しないモータの動力によって駆動する巻上げ機の駆動シーブ720に巻き掛けられている。
【0030】
ここで、上述したようにエレベータ昇降用ベルト100の突条部130および被ガイド溝部140が駆動シーブ720と接触している。
さらに、エレベータ昇降用ベルト100の背面が、エレベータケージ710の下方に設けられた従動シーブ730およびつり合いおもり740に支持する従動シーブ730と接触している。
そして、図示しない操作盤で操作され巻上げ機の駆動シーブ720が図中の時計方向へ回動することにより、エレベータケージ710が下降するとともにつり合いおもり740が引っ張られて上昇する。
他方、駆動シーブ720が図中の反時計方向へ回動することにより、エレベータケージ710が引っ張られて上昇するとともにつり合いおもり740が下降する。
【0031】
このようにして得られた第1実施例であるエレベータ昇降用ベルト100は、長尺形状を有するベルト本体110とベルト本体110の長手方向に埋設した複数の芯線120とベルト本体110の長手方向に延びた複数の突条部130と複数の突条部130間に形成されて駆動シーブ720のガイド突条721と係合する被ガイド溝部140とを備え、駆動シーブ720の動力をエレベータケージ710に伝達するエレベータ昇降用ベルト100において、被ガイド溝部140が溝底面141を有し、突条部130の頂部側突条幅W1が底部側突条幅W2より狭くなるように突条部130の両側の突条側面131が傾いて形成されているとともに、突条部130が少なくともベルト本体110の幅方向両端に配設されていることにより、エレベータ昇降用ベルト100が駆動シーブ720に対してスラスト方向にずれることを確実に防止できるとともに、駆動シーブ720の幅を突条部130および被ガイド溝部140が巻き付く幅にする、すなわち、コンパクトにすることができる。
なお、図1(b)では、駆動シーブ720のフランジ722を大きく示しているが、フランジ722はベルト本体110の幅方向両端の突条部130の外側の突条側面131と接触する箇所だけでもよい。
これにより、駆動シーブ720の幅をコンパクトにすることができる。
【0032】
また、駆動シーブ720に巻き掛けられている範囲Aの突条部130および被ガイド溝部140の全体が、駆動シーブ720と面接触していることにより、駆動シーブ720からエレベータ昇降用ベルト100への伝動効率を向上させることができる。
さらに、芯線120を除くベルト本体110および突条部130が透明な材料で形成されていることにより、点検時に芯線120の状態を目視することができるなど、その効果は甚大である。
【実施例2】
【0033】
続いて、本発明の第2実施例であるエレベータ昇降用ベルト200について、図3に基づいて説明する。
ここで、図3(a)に示すのは、本発明の第2実施例のエレベータ昇降用ベルト200の断面斜視図であり、図3(b)は、駆動シーブ720に巻き掛けられた状態の本発明の第2実施例のエレベータ昇降用ベルト200の正面断面図であり、図3(c)は、駆動シーブ720と接する側からみた本発明の第2実施例のエレベータ昇降用ベルト200の平面図である。
【0034】
第2実施例のエレベータ昇降用ベルト200は、第1実施例のエレベータ昇降用ベルト100の突条部130の突条頂面132にベルト本体110の長手方向に対して交差する方向に延びた第1溝パターン233を形成したものであり、多くの要素について第1実施例のエレベータ昇降用ベルト100と共通するので、共通する事項については詳しい説明を省略し、下2桁が共通する200番台の符号を付すのみとする。
【0035】
本発明の第2実施例のエレベータ昇降用ベルト200は、図3に示すように、第1溝パターン233を有し、第1溝パターン233が、突条部230の突条頂面232に、ベルト本体210の長手方向に対して交差する方向に延びて形成されている。
これにより、突条部230の突条頂面232と駆動シーブ720との間に異物が入った場合、異物が突条頂面232と駆動シーブ720との間から掻き出されるようにして第1溝パターン233に入り突条部230の突条頂面232と駆動シーブ720とが直接接触する。
また、エレベータ昇降用ベルト200が駆動シーブ720の外周に沿って曲がる際の芯線220より内側となる箇所に第1溝パターン233があることで芯線220より内側の弾性変形量が少なくなる。
【0036】
なお、第1溝パターン233の延設方向がベルト本体210の幅方向(短手方向)に対しても交差していることより、第1溝パターン233によって形成された突条部230の突条頂面232の端(角)が駆動シーブ720と接触するタイミングが分散するため、騒音を低減させることができる。
【0037】
また、被ガイド溝部240の溝底面241と駆動シーブ720のガイド突条721との間に僅かな隙間が設けられている。
これにより、突条部230の突条頂面232に第1溝パターン233を形成した場合であっても、突条部230の突条頂面232と駆動シーブ720とがしっかりと密に接触するため、突条部230の突条頂面232と駆動シーブ720との間の摩擦力を向上させることができる。
【0038】
このようにして得られた第2実施例であるエレベータ昇降用ベルト200において、突条部230の突条頂面232には、ベルト本体210の長手方向に対して交差する方向に延びた第1溝パターン233が形成されていることにより、突条部230の突条頂面232と駆動シーブ720との間の摩擦力の低下を防止できるとともに、エレベータ昇降用ベルト200を駆動シーブ720の外周に沿って曲がりやすくすることができるなど、その効果は甚大である。
【実施例3】
【0039】
続いて、本発明の第3実施例であるエレベータ昇降用ベルト300について、図4に基づいて説明する。
ここで、図4(a)に示すのは、本発明の第3実施例のエレベータ昇降用ベルト300の断面斜視図であり、図4(b)は、駆動シーブ720に巻き掛けられた状態の本発明の第3実施例のエレベータ昇降用ベルト300の正面断面図であり、図4(c)は、駆動シーブ720と接する側からみた本発明の第3実施例のエレベータ昇降用ベルト300の平面図である。
【0040】
第3実施例のエレベータ昇降用ベルト300は、第2実施例のエレベータ昇降用ベルト200の被ガイド溝部240の溝底面241にベルト本体210の長手方向に対して交差する方向に延びた第2溝パターン342を形成したものであり、多くの要素について第2実施例のエレベータ昇降用ベルト200と共通するので、共通する事項については詳しい説明を省略し、下2桁が共通する300番台の符号を付すのみとする。
【0041】
本発明の第3実施例のエレベータ昇降用ベルト300は、図4に示すように、第2溝パターン342を有し、第2溝パターン342が、駆動シーブ720のガイド突条721とジャストタッチでぴったりと接触する被ガイド溝部340の溝底面341に、ベルト本体310の長手方向に対して交差する方向に延びて形成されている。
これにより、被ガイド溝部340の溝底面341と駆動シーブ720との間の異物が入った場合、異物が溝底面341と駆動シーブ720との間から掻き出されるようにして第2溝パターン342に入り被ガイド溝部340の溝底面341と駆動シーブ720とが直接接触する。
【0042】
また、エレベータ昇降用ベルト300が駆動シーブ720の外周に沿って曲がる際の芯線320より内側となる箇所に第2溝パターン342があることで芯線320より内側の弾性変形量が少なくなる。
さらに、第2溝パターン342は、突条部330の突条頂面332に形成された第1溝パターン333の方向に対してベルト本体310の長手方向を軸として線対称となる方向に延設されている。
【0043】
これにより、第1溝パターン333により生じるスラスト方向の力の向きと、第2溝パターン342により生じるスラスト方向の力の向きとの関係が逆向きの関係となるため、第1溝パターン333により生じるスラスト方向の力と、第2溝パターン342により生じるスラスト方向の力とを相殺させることができる。
【0044】
なお、第2溝パターン342の延設方向がベルト本体310の幅方向(短手方向)に対しても交差していることより、第2溝パターン342によって形成された被ガイド溝部340の溝底面341の端(角)が駆動シーブ720と接触するタイミングが分散するため、騒音を低減させることができる。
【0045】
このようにして得られた第3実施例であるエレベータ昇降用ベルト300において、被ガイド溝部340の溝底面341には、ベルト本体310の長手方向に対して交差する方向に延びた第2溝パターン342が形成されていることにより、被ガイド溝部340の溝底面341と駆動シーブ720との間の摩擦力の低下を防止できるとともに、エレベータ昇降用ベルト300を駆動シーブ720の外周に沿って曲がりやすくすることができるなど、その効果は甚大である。
【実施例4】
【0046】
続いて、本発明の第4実施例であるエレベータ昇降用ベルト400について、図5に基づいて説明する。
ここで、図5(a)に示すのは、本発明の第4実施例のエレベータ昇降用ベルト400の断面斜視図であり、図5(b)は、駆動シーブ720に巻き掛けられた状態の本発明の第4実施例のエレベータ昇降用ベルト400の正面断面図であり、図5(c)は、駆動シーブ720と接する側からみた本発明の第4実施例のエレベータ昇降用ベルト400の平面図である。
【0047】
第4実施例のエレベータ昇降用ベルト400は、第1実施例のエレベータ昇降用ベルト100の突条部130および被ガイド溝部140に耐摩耗性を向上させるための補強布450を貼ったものであり、多くの要素について第1実施例のエレベータ昇降用ベルト100と共通するので、共通する事項については詳しい説明を省略し、下2桁が共通する400番台の符号を付すのみとする。
【0048】
本発明の第4実施例のエレベータ昇降用ベルト400は、図5に示すように、耐摩耗性を向上させるための補強布450を有し、補強布450が突条部430および被ガイド溝部440の少なくとも一部に貼られている。
これにより、駆動シーブ720と接触する箇所がすり減りにくくなるとともに、すり減りの程度により駆動シーブ720と接触する箇所の外観が変化する。
なお、補強布450は、エレベータ昇降用ベルト400の背面には貼られず、突条部430および被ガイド溝部440が形成されている側の面に貼られている。
これにより、必ず背面側からベルト本体410の内部の芯線420の位置まで透けるため、点検時に芯線420の状態を確実に目視することができる。
【0049】
このようにして得られた第4実施例であるエレベータ昇降用ベルト400において、突条部430および被ガイド溝部440の少なくとも一部に補強布450が貼られていることにより、エレベータ昇降用ベルト400の耐久性を向上させることができるとともに、エレベータ昇降用ベルト400の交換時期の目安にすることができるなど、その効果は甚大である。
【実施例5】
【0050】
続いて、本発明の第5実施例であるエレベータ昇降用ベルト500について、図6に基づいて説明する。
ここで、図6(a)に示すのは、本発明の第5実施例のエレベータ昇降用ベルト500の断面斜視図であり、図6(b)は、駆動シーブ720に巻き掛けられた状態の本発明の第5実施例のエレベータ昇降用ベルト500の正面断面図であり、図6(c)は、駆動シーブ720と接する側からみた本発明の第5実施例のエレベータ昇降用ベルト500の平面図である。
【0051】
第5実施例のエレベータ昇降用ベルト500は、第1実施例のエレベータ昇降用ベルト100の背面に複数の背面側突条部560と背面側被ガイド溝部570とを形成したものであり、多くの要素について第1実施例のエレベータ昇降用ベルト100と共通するので、共通する事項については詳しい説明を省略し、下2桁が共通する500番台の符号を付すのみとする。
【0052】
本発明の第5実施例のエレベータ昇降用ベルト500は、図6に示すように、ベルト本体510の長手方向に延びた複数の背面側突条部560と複数の背面側突条部560間に形成された背面側被ガイド溝部570とを備え、複数の背面側突条部560および背面側被ガイド溝部570が、ベルト本体510を基準とした突条部530と反対側に形成されている。
これにより、駆動シーブ720と接触するエレベータ昇降用ベルト500の面と反対側の背面と接触する他のシーブの一例である従動シーブ730(図2参照)が設けられている場合、背面の背面側被ガイド溝部570が従動シーブ730の図示しないガイド突条と係合する。
【0053】
このようにして得られた第5実施例であるエレベータ昇降用ベルト500において、ベルト本体510を基準とした突条部530と反対側には、ベルト本体510の長手方向に延びた複数の背面側突条部560と複数の背面側突条部560間に形成された背面側被ガイド溝部570とが形成されていることにより、従動シーブ730に対してスラスト方向のエレベータ昇降用ベルト500の位置を安定させることができるなど、その効果は甚大である。
【実施例6】
【0054】
続いて、本発明の第6実施例であるエレベータ昇降用ベルト600について、図7に基づいて説明する。
ここで、図7(a)に示すのは、本発明の第6実施例のエレベータ昇降用ベルト600の断面斜視図であり、図7(b)は、駆動シーブ720に巻き掛けられた状態の本発明の第6実施例のエレベータ昇降用ベルト600の正面断面図であり、図7(c)は、駆動シーブ720と接する側からみた本発明の第6実施例のエレベータ昇降用ベルト600の平面図である。
【0055】
第6実施例のエレベータ昇降用ベルト600は、第1実施例のエレベータ昇降用ベルト100の被ガイド溝部140の溝底面141の溝幅をより広くするとともに突条部130の突条幅をより狭くしたものであり、多くの要素について第1実施例のエレベータ昇降用ベルト100と共通するので、共通する事項については詳しい説明を省略し、下2桁が共通する600番台の符号を付すのみとする。
【0056】
本発明の第6実施例のエレベータ昇降用ベルト600は、図7に示すように、ベルト本体610の長手方向に延びた複数の突条部630と複数の突条部630間に形成されて駆動シーブ720のガイド突条721と係合する被ガイド溝部640とを備え、被ガイド溝部640の溝底面641の溝幅が、突条部630の突条幅より広くなっている。
これにより、駆動シーブ720のガイド突条721の幅が十分な幅となる。
【0057】
このようにして得られた第6実施例であるエレベータ昇降用ベルト600は、長尺形状を有するベルト本体610とベルト本体610の長手方向に埋設した複数の芯線620とベルト本体610の長手方向に延びた複数の突条部630と複数の突条部630間に形成されて駆動シーブ720のガイド突条721と係合する被ガイド溝部640とを備え、駆動シーブ720の動力をエレベータケージ710に伝達するエレベータ昇降用ベルト600において、被ガイド溝部640が溝底面641を有し、突条部630の頂部側突条幅W1が底部側突条幅W2より狭くなるように突条部630の両側の突条側面631が傾いて形成されているとともに、突条部630が少なくともベルト本体610の幅方向両端に配設されていることにより、エレベータ昇降用ベルト600が駆動シーブ720に対してスラスト方向にずれることを確実に防止できるとともに、駆動シーブ720の幅を突条部630および被ガイド溝部640が巻き付く幅にする、すなわち、コンパクトにすることができる。
【符号の説明】
【0058】
100、200、300、400、500、600 ・・・ エレベータ昇降用ベルト
110、210、310、410、510、610 ・・・ ベルト本体
120、220、320、420、520、620 ・・・ 芯線
130、230、330、430、530、630 ・・・ 突条部
131、231、331、431、531、631 ・・・ 突条側面
132、232、332、432、532、632 ・・・ 突条頂面
233、333 ・・・ 第1溝パターン
140、240、340、440、540、640 ・・・ 被ガイド溝部
141、241、341、441、541、641 ・・・ 溝底面
342 ・・・ 第2溝パターン
450 ・・・ 補強布
560 ・・・ 背面側突条部
570 ・・・ 背面側被ガイド溝部
700 ・・・ エレベータ装置
710 ・・・ エレベータケージ
720 ・・・ 巻上げ機の駆動シーブ
721 ・・・ ガイド突条
722 ・・・ フランジ
730 ・・・ 従動シーブ
740 ・・・ つり合いおもり
A ・・・ 巻き掛けられている範囲
W1 ・・・ 頂部側突条幅
W2 ・・・ 底部側突条幅

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺形状を有するベルト本体と該ベルト本体の長手方向に埋設した複数の芯線と前記ベルト本体の長手方向に延びた複数の突条部と該複数の突条部間に形成されて駆動シーブのガイド突条と係合する被ガイド溝部とを備え、前記駆動シーブの動力をエレベータケージに伝達するエレベータ昇降用ベルトにおいて、
前記被ガイド溝部が溝底面を有し、前記突条部の頂部側突条幅が底部側突条幅より狭くなるように突条部の両側の突条側面が傾いて形成されているとともに、前記突条部が少なくとも前記ベルト本体の幅方向両端に配設されていることを特徴とするエレベータ昇降用ベルト。
【請求項2】
前記駆動シーブに巻き掛けられている範囲の突条部および被ガイド溝部の全体が、前記駆動シーブと面接触していることを特徴とする請求項1に記載のエレベータ昇降用ベルト。
【請求項3】
前記突条部の突条頂面には、前記ベルト本体の長手方向に対して交差する方向に延びた第1溝パターンが形成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のエレベータ昇降用ベルト。
【請求項4】
前記被ガイド溝部の溝底面には、前記ベルト本体の長手方向に対して交差する方向に延びた第2溝パターンが形成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1つに記載のエレベータ昇降用ベルト。
【請求項5】
前記突条部および被ガイド溝部の少なくとも一部に補強布が貼られていることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1つに記載のエレベータ昇降用ベルト。
【請求項6】
前記ベルト本体を基準とした前記突条部と反対側には、前記ベルト本体の長手方向に延びた複数の背面側突条部と該複数の背面側突条部間に形成された背面側被ガイド溝部とが形成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1つに記載のエレベータ昇降用ベルト。
【請求項7】
前記芯線を除くベルト本体および突条部が透明な材料で形成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか1つに記載のエレベータ昇降用ベルト。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−86887(P2013−86887A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−226330(P2011−226330)
【出願日】平成23年10月14日(2011.10.14)
【出願人】(000003355)株式会社椿本チエイン (861)
【Fターム(参考)】