説明

エレベータ用ドア隙間寸法測定装置

【課題】エレベータ用ドア隙間寸法測定装置において、ドア隙間寸法を容易かつ短時間で測定し点検できるようにすることである
【解決手段】ドア隙間測定装置28は、ドア隙間寸法を測定可能な測定部32と、測定部32で測定された測定値を表示する表示部38と、操作部40が操作された場合に測定部32で測定されている測定値を記録する記録部と、演算部とを含む。記録部は、複数の測定値を集積して記録する機能を有する。演算部は、操作部40の操作に応じて、集積された複数の測定値から複数の測定値に関係する関係値を演算し、表示部38に関係値を表示させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレベータドアとドア収容部側の壁部との間のドア隙間寸法を測定可能な測定部を備え、例えば乗場の三方枠の壁部とエレベータドアとの隙間であるドア隙間寸法についての完成検査や定期的な点検を容易に行えるようにするためのエレベータ用ドア隙間寸法測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来からエレベータにおいて、利用者の手足等、身体の一部や、衣服あるいは荷物が引き込まれることを防止する等の必要性、及び法定基準や社内基準からの要求等から、エレベータドアとドア収容部側の壁部との間のドア隙間寸法を点検者により測定することが行われている。図12は、エレベータの到着階の乗場に設けられた両開き形のエレベータドアである乗場扉の1例を示している。2枚の乗場扉10は、乗場12に設けられた三方枠14の開口部である出入り口16を閉鎖しており、図示しない乗りかごの到着に応じて三方枠14の左右両側の裏側に設けられた図示しないドア収容部に互いに離れるように移動し収容されることで、出入り口16を開放する。
【0003】
このような乗場扉10では、図12の状態で、乗場扉10と三方枠14の壁部18,20との隙間であるドア隙間(ドアチリ)が大きいと、子供等のいたずらで指詰めが発生したり、衣服が引き込まれる可能性がないとはいえない。このため、法定基準や社内基準でドア隙間の最大値が許容限度以下となることが要求されたり、予め定められた複数の所定部位のドア隙間の平均値が許容範囲内に収まる等が要求される。例えば、図12に示す例では図12の矢印で示す複数の位置(図12では8箇所)でドア隙間寸法を測定し、検査することが行われる。
【0004】
なお、乗場扉は、図12に示すような2枚の両開き形に限定されるものではなく、例えば4枚の両開き形や、2枚、3枚等の片開き形、2枚、3枚等の上開き等の他の形式もある。図13は、2枚の片開き形の乗場扉の1例を示している。2枚の乗場扉22,24は、乗りかごの到着に応じて三方枠14の左右片側(図13の例では左側)の裏側に設けられた図示しないドア収容部に互いに離れるように移動し収容されることで、出入り口16を開放する。この乗場扉22,24では、図13の矢印で示す複数の位置(図13では11箇所)でドア隙間寸法を測定し、検査することが行われる。なお、ドア隙間を検査する位置や数は、図12,13の例に限定されるものではなく扉の形式や、基準等から予め定められる所定の位置及び数とする。いずれにしても従来から、図14に示すようなテーパゲージ26等の単純な棒状の目盛が表示された隙間ゲージにより、乗場扉10,22,24と壁部18,20との間のドア隙間Dを測定することが行われている。
【0005】
また、特許文献1には、エレベータドアの吊り作業時にハンガープレートの取り付けボルトを緩めてエレベータドアを乗場枠に近づく方向または遠ざかる方向に移動させてチリ寸法を調整することが記載されている。また、特許文献2には、ドアハンガーに乗場ドアを取り付けるときに三方枠の縁部と乗場ドアとの隙間寸法を調整用冶具の規制部により規制することが記載されている。なお、本発明に関連する先行技術文献として、特許文献1,2の他に特許文献3がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平7−267552号公報
【特許文献2】特開2009−263074号公報
【特許文献3】実開平3−8707号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のように従来からドア隙間寸法D(図14)の測定のために目盛が表示された隙間ゲージを使用することが行われているが、この場合、点検者が隙間ゲージで複数個所を目盛の目視で測定し、その測定の度に点検者が紙等に記録し、それを例えば全階で行うため、点検作業が面倒であるだけでなく、作業時間が長くなりやすい。このため、ドア隙間寸法Dを容易かつ短時間で測定し点検できる手段の実現が望まれている。
【0008】
これに対して、特許文献1,2には、ドアハンガーに乗場ドアを取り付けるときに規制部等を用いてドア隙間を調整することが記載されているのに過ぎず、完成時や使用時等の点検必要時に、ドア隙間寸法を測定し点検する手段は記載されていない。
【0009】
また、特許文献3には、回転電機の回転子と固定子との間の空隙寸法を測定する空隙測定器が記載されているのに過ぎない。また、この空隙測定器は、湾曲板に固定した歪みゲージの抵抗値の変化を利用して、隙間の大きさを液晶文字表示窓に表示させるのに過ぎない。このため、この空隙測定器を利用してドア隙間を測定することも考えられるが、その場合でも測定された測定値を測定毎に紙等に点検者が記録する必要がある。ドア隙間の点検者には、一般的に、乗場毎で複数部位を測定した測定値から最大値や平均値等の複数の測定値を利用した演算値を求めて、その演算値が許容限度以下または許容範囲以内にあるか否かを確認することが求められる。上記の特許文献3の測定器は単に測定値を表示するだけであるので、この測定器を利用する方法でも、ドア隙間寸法を容易かつ短時間で測定し点検できるようにする面からは改良の余地がある。
【0010】
また、上記では、乗場扉と三方枠との間のドア隙間を点検する場合の改良すべき点を説明したが、乗りかご側にもエレベータドアである乗りかご扉が設けられており、乗りかご扉と、出入り口の両側にあるドア収容部側の壁部である、出入り口柱部との間のドア隙間が、予め定められた範囲または許容限度以下にあるか等を点検することが求められる。この場合も上記と同様に点検者が隙間ゲージ等で複数個所を点検し紙等で記録している従来方法では、点検作業が面倒であり、かつ、作業時間に長時間を要する。このため、ドア隙間寸法を容易かつ短時間で測定し点検できるようにすることが望まれている。
【0011】
本発明の目的は、エレベータ用ドア隙間寸法測定装置において、ドア隙間寸法を容易かつ短時間で測定し点検できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係るエレベータ用ドア隙間寸法測定装置は、エレベータドアとドア収容部側の壁部との間のドア隙間寸法を測定可能な測定部と、測定部で測定された測定値を表示する表示部と、操作者により操作可能な操作部と、操作部が操作された場合に測定部で測定されている測定値を記録する記録部と、演算部とを備え、記録部は、複数の測定値を集積して記録する機能を有し、演算部は、操作部の操作に応じて、集積された複数の測定値から複数の測定値に関係する関係値を演算し、表示部に関係値を表示させることを特徴とするエレベータ用ドア隙間寸法測定装置である。
【0013】
本発明に係るエレベータ用ドア隙間寸法測定装置において、好ましくは、演算部は、操作部の操作に応じて、集積された複数の測定値から関係値である最大測定値を演算し、表示部に最大測定値を表示させる。
【0014】
また、本発明に係るエレベータ用ドア隙間寸法測定装置において、好ましくは、演算部は、操作部の操作に応じて、集積された複数の測定値から関係値である平均測定値を演算し、表示部に平均測定値を表示させる。
【0015】
また、本発明に係るエレベータ用ドア隙間寸法測定装置において、好ましくは、警告部を備え、警告部は、演算部で演算された関係値が予め設定された所定範囲から外れた場合に、警告報知を行う。
【0016】
また、本発明に係るエレベータ用ドア隙間寸法測定装置において、好ましくは、測定部は、エレベータドアとドア収容部側の壁部との一方の部材に突き当て可能な突き当て面と、突き当て面に対し傾斜している傾斜面とを含み、エレベータドアとドア収容部側の壁部との他方の部材により傾斜面上で押圧される点の位置を検出して、検出された位置と傾斜面との間隔からドア隙間寸法を測定する。
【0017】
また、本発明に係るエレベータ用ドア隙間寸法測定装置において、好ましくは、測定部は、エレベータドアとドア収容部側の壁部との一方の部材に突き当て可能な突き当て面と、突き当て面を有する突き当て部の先端部に揺動可能に支持された揺動板と、突き当て面と揺動板との間に設けられ、突き当て面と揺動板との間隔が拡縮することに伴って伸縮する伸縮部とを含み、突き当て部の先端がドア隙間に予め設定された所定長さ分挿入された場合の伸縮部の伸縮量からドア隙間寸法を測定する。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係るエレベータ用ドア隙間寸法測定装置によれば、ドア隙間寸法を容易かつ短時間で測定し点検できる。すなわち、ドア隙間の点検者がエレベータ用ドア隙間寸法測定装置の測定部で必要な複数部位のドア隙間を測定するのみで、記録部が複数の測定値を集積して記録し、演算部が最大測定値や平均測定値等の複数の測定値に関係する関係値を演算し表示する。このため、点検時の点検作業を容易に行え、かつ、短時間で行える。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に係る実施の形態のエレベータ用ドア隙間寸法測定装置の1例を示す図である。
【図2】図1の下方から上方に見た図である。
【図3】図1のエレベータ用ドア隙間寸法測定装置の基本的構成を示す図である。
【図4】点検作業者が図1のエレベータ用ドア隙間寸法測定装置を用いてドア隙間の点検を行う様子を示す図である。
【図5】図1のエレベータ用ドア隙間寸法測定装置を2部材間のドア隙間に差し込む様子を示す略断面図である。
【図6】図1のエレベータ用ドア隙間寸法測定装置に設けた操作部の操作に応じて変化する表示部の2例を示す図である。
【図7】図1のエレベータ用ドア隙間寸法測定装置に設けた操作部の操作に応じて変化する表示部の2例を示す図である。
【図8】図1のエレベータ用ドア隙間寸法測定装置において、操作部の変形例を示す図である。
【図9】図1のエレベータ用ドア隙間寸法測定装置を用いて、同じ部位のドア隙間を異なる方向から測定し、平均測定値を求める様子を示す図である。
【図10】本発明に係る実施の形態のエレベータ用ドア隙間寸法測定装置の別例の第1例を示す図である。
【図11】本発明に係る実施の形態のエレベータ用ドア隙間寸法測定装置の別例の第2例を示す図である。
【図12】2枚両開き形の乗場扉の1例を示す図である。
【図13】2枚片開き形の乗場扉の1例を示す図である。
【図14】従来からドア隙間の測定で用いられている隙間ゲージであるテーパゲージの1例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下において、図面を用いて本発明に係る実施の形態につき詳細に説明する。図1から図8は、本発明の実施の形態の1例を示している
【0021】
図1、図2に示すように、本実施の形態のエレベータ用ドア隙間寸法測定装置であるドア隙間測定装置28は、人が持ち運び可能なケース30と測定部32とを備えるもので、エレベータドアである乗場扉10,22,24(図12,13)とドア収容部側の壁部である三方枠14の壁部18,20(図12,13)との間のドア隙間寸法、またはエレベータドアである乗りかご扉とドア収容部側の壁部である出入り口両側の出入り口柱部との間のドア隙間寸法(以下、ドア隙間寸法は単に「ドア隙間」という。)を測定し、演算された最大測定値や平均測定値等の関係値を確認するために使用する。以下では、ドア隙間測定装置28により、エレベータの乗場扉10,22,24と三方枠14の壁部18,20との間のドア隙間D(図5、14)を測定する場合を主に説明する。
【0022】
ケース30は互いに平行な天板部34及び底板部36を有する断面略矩形の箱状で、天板部34に液晶表示部等の表示部38と、押しボタン等の操作部40とが設けられている。ケース30は三方または四方を側壁部42で内部空間を覆っており、ケース30の片側に測定部32が結合固定されている。測定部32は、底板部36と同一平面上の突き当て面44を有する突き当て部46と、突き当て部46に対し傾斜している傾斜面48を有する傾斜部50とを有する断面三角形の楔状に形成されている。傾斜部50及び突き当て部46の左右方向(図1の上下方向、図2の表裏方向)両端には、側壁部52が結合されている。このため、突き当て面44と傾斜面48とは、鋭角な角度θで結合されている。このようなケース30及び測定部32は、金属または樹脂等により構成される。突き当て面44は、ドア隙間Dを介して対向する乗場扉10,22,24と三方枠14の壁部18,20との一方の部材(例えば乗場扉10)の側面(表面)に突き当て可能である。
【0023】
また、図3に示すように、ケース30(図1、図2)の内側には制御装置54が設けられている。制御装置54は、CPU,メモリ等を有するマイクロコンピュータを含むもので、記録部56と、演算部58と、警告部60とを有する。このようにドア隙間測定装置28には、一体的に測定部32と記録部56と演算部58と表示部38とが設けられている。
【0024】
操作部40は、外部から押す等の操作がされることにより、操作者、すなわち点検者からの入力を受け取る。操作部40が操作されたことを表す信号は制御装置54に入力される。また、測定部32は後述する図5に示すように、互いに対向する2部材である、乗場扉10,22,24と三方枠14の壁部18,20との間のドア隙間Dに挿入された場合に、乗場扉10,22,24と三方枠14の壁部18,20との他方の部材(例えば壁部18,20)が操作部40の傾斜面48に接触することでドア隙間Dの大きさを検出可能とする。
【0025】
例えば、傾斜面48には複数の接触感知センサ(図示せず)の検知部が傾斜面の長さ方向である図5の矢印α方向に並ぶように配置されている。図5の例では、乗場扉10と三方枠14の壁部18とによりドア隙間Dが形成され、突き当て面44は乗場扉10の表面に突き当て可能としている。図5に示すように、測定部32の先端部がドア隙間Dに挿入され、三方枠14の壁部18の縁部62がいずれかの接触感知センサに接触すると、その接触位置にある検知部の位置と突き当て面44との間の距離から隙間が測定部32で測定され、測定された隙間の測定値がドア隙間Dの測定値として、表示部38に表示される。すなわち、測定部32は、乗場扉10と三方枠14の壁部18との他方の部材である、三方枠14の壁部18により傾斜面48上で押圧される点の位置を検出して、その検出された位置と傾斜面48との間隔からドア隙間Dの大きさを測定する。なお、接触感知センサの信号を入力された演算部58(図3)が、その接触感知センサの検知部位置と突き当て面44との間の距離を演算して、その距離をドア隙間の測定値として出力するようにしてもよい。すなわち、測定部32の一部は演算部58により構成されてもよい。
【0026】
いずれにしても測定された測定値は、演算部58が表示部38(図3)に出力する、すなわち表示させる。このため、点検者がその表示を見て測定値を確認できる。また、演算部58は記録部56にその測定値を記録させる。このようなドア隙間測定装置28では、点検者がドア隙間Dに測定部32を差し込んで、測定を希望するタイミングで操作部40を操作する、すなわち押圧することで、測定部32が測定を開始し、表示部38に測定値を表示する。すなわち、表示部38は、測定部32で測定された測定値を表示する機能を有する。また、表示部38は、後述するように演算部58により演算される、複数の測定値の最大測定値、平均測定値等の複数の測定値に関係する関係値を表示する機能も有する。
【0027】
また、演算部58は記録部56にその測定した測定値をデータとして記録させる。このため、記録部56は、測定値を記録する機能を有するが、さらに複数の測定値がデータとして入力された場合に、その測定値を、例えばケース30の側面に設けた図示しないリセットスイッチが操作されるまで、集積して記録する機能も有する。なお、図示しない電源スイッチがオンされた状態で、操作部40が所定時間以上長押し等された場合に、記録部56に記録された測定値の集積をリセットするリセットスイッチの機能を操作部40に持たせることもできる。
【0028】
また、ケース30内には電源である乾電池または充電池等を収容する電池ケース(図示せず)が設けられている。電池ケースに電池が収容された状態で、電池は電源スイッチのオン状態で、制御装置54等への電力供給を可能とする。
【0029】
なお、電源スイッチは、ケース30の側面に操作部40とは別に設ける以外に、操作部40に電源スイッチの機能を持たせることもできる。例えば、電源スイッチがオフされている場合に操作部40を長押し等することで電源をオンする、すなわち電池から制御装置54等への電力供給を可能とすることもできる。
【0030】
また、演算部58は、操作部40の操作に応じて、集積された複数の測定値から複数の測定値に関係する関係値を所定の関係式やプログラム等により演算し、表示部38に関係値を表示させる。例えば、演算部58は、操作者の操作部40による操作に応じて、集積された複数の測定値から関係値である最大測定値を演算し、表示部38に最大測定値を表示させる機能を有する構成とすることができる。また、これに代えて、またはこれとともに、演算部58は、操作者の操作部40による操作に応じて、集積された複数の測定値から関係値である平均測定値を演算し、表示部38に平均測定値を表示させる機能を有する構成とすることもできる。また、演算部58は、最大測定値の演算とともに、操作者の操作に応じて、集積された複数の測定値から関係値である測定最小値を演算し、表示部38に測定最小値を表示させる機能を有する構成とすることもできる。
【0031】
また、警告部60(図3)は、演算部58で演算された最大測定値、平均測定値等の関係値が予め設定された所定範囲から外れた場合に、表示部38で警告報知を行う機能を有する。例えば、最大測定値が予め設定された所定の許容上限を超えている場合や、平均測定値が予め設定された所望の平均値を中心とする所定の許容範囲から外れた場合には、警告部60は、表示部38に最大測定値が許容値を超えている等の警告表示を表示させる。
【0032】
なお、警告部は、ブザー等の警告音発生部やランプ、発光LED等の点灯部等を含むものとし、警告部は、演算部58で演算された最大測定値、平均測定値等の関係値が予め設定された所定範囲から外れた場合に、警告音発生部や点灯部で警告報知を行うようにする構成とすることもできる。例えば、警告音発生部で警告音を発生させたり、点灯部を点灯または点滅させることにより警告報知を行う構成とすることもできる。
【0033】
このようなドア隙間測定装置28を用いて点検者によりドア隙間Dを測定する場合、例えば図4のようにして行う。図4は、点検作業者である点検者64が図1のドア隙間測定装置28を用いてドア隙間の点検を行う様子を示す図である。図4では、点検者64が、乗場扉10と三方枠14の壁部18との間のドア隙間を測定している。この場合、ドア隙間測定装置28は、ドア隙間の長さ方向(図4の上下方向)に対し直交する方向、すなわち水平方向に、ドア隙間に挿入される。例えば、図5に示すように、乗場扉10の表面にケース30の底板部36の底面及び突き当て面44を面接触させ、スライドさせながらドア隙間Dに、測定部32の先端部を図5の矢印方向に挿入する。この際、三方枠14の壁部18の縁部62が傾斜面48に接触することで、ドア隙間Dの大きさが測定部32で測定可能となり、表示部38にその測定値を表示させることができる。この場合、例えば操作部40を短時間操作する、すなわち短時間押すことで記録部56(図3)にその測定値が記録されるようにすることができる。
【0034】
このような測定作業は、上記の図12に矢印で示したように複数個所で行う。そして測定毎の測定値が記録部56に集積され記録される。そして1の乗場12(図12)での複数回の測定作業が終了したら、操作部40を予め設定された時間以上長押し等することで、次の図6、図7のように表示部38に、集積された測定値に基づく関係値が表示される。
【0035】
図6、図7は、それぞれ図1のドア隙間測定装置28に設けられた操作部40の操作に応じて変化する表示部38の2例を示す図である。例えば、図6では、表示部38の表示状態を(a)と(b)との間で交互に切り換え可能としている。(a)では、測定部32(図1、図2)で測定された測定値が表示部38に表示される。(a)の状態で、例えば操作部40(図1)を所定時間、長押し等することで表示部38が(b)に変化して、複数の測定値の平均測定値と、最大測定値と、最小測定値とが表示されるようにしている。最小測定値は省略されることもできる。また、(b)の状態からさらに操作部40を所定時間、長押し等することで、(a)の状態に切り換え可能としている。
【0036】
また、表示部38の表示状態を図7のように切換可能とすることもできる。図7では、(a)の測定値の表示状態と、(b)の最大測定値の表示状態とが、操作部40(図1)の長押し等により交互に切り換わるようにしている。なお、表示部38において、(a)の測定値を表示する状態と、平均測定値を表示する状態とが切り換わるようにすることもできる。
【0037】
図8は、図1から図3に示したドア隙間測定装置28において、操作部の変形例を示す図である。図8のように、上記の図1の図3に示したドア隙間測定装置28において、それぞれ操作部である第1押しボタン、第2押しボタン、リセットボタン等の総数を2個または3個またはそれ以上の複数個が設けられるようにすることもできる。例えば、操作部66は、その操作により、表示部38に測定された測定値を表示させるとともに、測定値を記録部56(図3参照)に記録させる第1押しボタン68と、その操作により、演算部58(図3参照)で最大測定値等の関係値を演算させるとともに、演算された関係値を表示部38に表示させる第2押しボタン70と、その操作により記録部56に集積された測定値をリセットさせるリセットボタン72とにより構成することができる。
【0038】
このようなドア隙間測定装置28によれば、ドア隙間を容易かつ短時間で測定し点検できる。すなわち、ドア隙間Dの点検者がドア隙間測定装置28の測定部32で必要な複数部位のドア隙間Dを測定するのみで、記録部56(図3)が複数の測定値を集積して記録し、演算部58(図3)が最大測定値や平均測定値等の複数の測定値に関係する関係値を演算し表示する。このため、点検者が測定毎に紙等に記録する必要がなくなり、かつ、最大測定値等の関係値を表示部38の目視で確認できる。このため、点検時の点検作業を容易に行え、かつ、短時間で行える。
【0039】
また、ドア隙間測定装置28は、演算部58で演算された関係値が予め設定された所定範囲から外れた場合に、警告報知を行う警告部60を備えるので、最大測定値や平均測定値等の関係値が所望の範囲から外れたことを点検者が容易に認識できる。なお、上記では、主に2枚の両開き形の乗場扉10でドア隙間Dを測定する場合を説明したが、例えば上記の図13のような2枚の片開き形や、4枚の両開き形や、3枚の片開き形、2枚、3枚等の上開き等の他の形式の乗場扉でドア隙間を測定することもできる。また、乗りかご側の乗りかご扉でドア隙間を測定することもできる。
【0040】
図9は、図1のドア隙間測定装置28を用いて、同じ部位のドア隙間を異なる方向から測定し、平均測定値を求める様子を示す図である。上記の図1から図3に示したドア隙間測定装置28では、複数回同じ部位のドア隙間の測定値を求めて平均測定値を演算し、表示部38に表示させることができる。例えばドア隙間について、同じ部位を測定方向を異ならせて複数回測定し、複数の測定値から演算された平均測定値を表示部38で確認することもできる。例えば、図9に示すように、同じ部位を測定するためにドア隙間に対し直交する方向(a)と、斜めになる方向(b)(c)との3種類で測定してその平均測定値を求めることで、ドア隙間の測定精度を向上させることもできる。
【0041】
図10は、本発明に係る実施の形態のエレベータ用ドア隙間寸法測定装置の別例の第1例を示す図である。図10に示す別例のドア隙間測定装置74は、上記の図1〜3に示したドア隙間測定装置28で、記録部56及び演算部58を含む制御装置の機能を省略した測定本体部76と、測定本体部76に有線または無線で接続されたパーソナルコンピュータ(以下、「PC」という。)78とにより構成されている。PC78に設けられた制御装置80は、上記のドア隙間測定装置28の記録部56及び演算部58の機能を有する。この場合、ドア隙間測定装置74の測定部32で測定された測定値は表示部38で表示されるが、測定値はPC78の記録部56に集積され、記録される。また、PCの演算部58で集積された測定値に基づく最大測定値等の関係値が演算され、測定本体部76の操作に応じてその関係値がPC78から測定本体部76に送信され、表示部38で表示される。測定本体部76とPC78とは例えば、互いに接続されたケーブルを取り外すことで分離可能である。このようにドア隙間測定装置74は分離可能な複数の要素により構成することもできる。
【0042】
図11は、本発明に係る実施の形態のエレベータ用ドア隙間寸法測定装置の別例の第2例を示す図である。図11に示す別例の第2例のドア隙間測定装置82では、測定部84は、突き当て部である突き当て板86と揺動板88と伸縮部90とを含む。突き当て板86は、一端がケース30に固定され、ケース30の底板部36の底面と同一平面上に位置する突き当て面92を有する。突き当て面92は、ドア隙間Dを介して対向する2部材である、エレベータドアである乗場扉10とドア収容部側の壁部である三方枠14の壁部18との一方の部材、例えば乗場扉10の側面(表面)に突き当て可能である。
【0043】
揺動板88は、突き当て板86の先端部に揺動軸94を中心とする揺動可能に支持されている。伸縮部90は、突き当て板86に固定されたシリンダに往復移動可能なロッド96を含んでおり、ロッド96の先端部が揺動板88の裏面にボールジョイント等により、揺動板88に対するロッド96の揺動可能に結合されている。なお、ロッド96の先端部は単に揺動板88の裏面に押し付けた構成とすることもできる。また、揺動板88と突き当て板86との間に、揺動板88に突き当て板86に対する傾斜角度が大きくなる方向の付勢力を付勢するバネ98が設けられている。このため、伸縮部90は、突き当て面92と揺動板88との間に設けられ、突き当て面92と揺動板88との間隔が拡縮することに伴って伸縮する。伸縮部90の伸縮量は、例えば電気抵抗の変化を利用する等の図示しないセンサにより検出され、センサの検出信号が制御装置54の演算部58(図3参照)に入力される。演算部58はその検出信号から、予め設定された関係式やマップ等に基づいてドア隙間Dを演算し求める。
【0044】
すなわち、ドア隙間測定装置82は、突き当て板86の先端がドア隙間Dに予め設定された所定長さ分挿入された場合の伸縮部90の伸縮量からドア隙間Dを測定する。例えば、図11に示すように突き当て板86の先端Sの挿入長さLを予め設定しておく。例えば、突き当て板86の先端Sからの挿入長さLに対応して、突き当て板86の長さ方向(図11の左右方向)中間部にマークを表示しておく。そしてマークがドア隙間Dの開口端、すなわち三方枠14の壁部18の縁部62に対向する位置に到達するまで、突き当て板86の先端部をドア隙間Dに挿入する。これにより、揺動板88が壁部18により押圧されて、揺動板88と突き当て板86との傾斜角度θ2が小さくなり、伸縮部90の長さが小さくなる、すなわち縮小量が大きくなる。この場合に、マークがドア隙間Dの開口端、すなわち縁部62に対向する位置に到達したときに操作部40(図1等参照)を操作者が操作すると、その位置での伸縮部90の伸縮量が演算部58に入力され、演算部58がドア隙間Dを演算し、表示部38(図1等参照)にドア隙間Dの測定値を表示させる。ドア隙間Dの測定値は記録部56(図3参照)に入力され、記録部56で集積して記録される。
【0045】
また、演算部58は、操作者の操作部40による操作に応じて、集積された複数の測定値から複数の測定値に関係する最大測定値、最小測定値、平均測定値等の関係値を演算し、表示部38にその関係値を表示させる。このようなドア隙間測定装置82によっても、点検時の点検作業を容易に行え、かつ、短時間で行える。また、このようなドア隙間測定装置82において、上記の図1〜8の実施の形態のように警告部を設けることもできる。その他の構成及び作用は、上記の図1から図8に示した実施形態の場合と同様である。
【0046】
なお、上記の各実施の形態と異なり、上記の特許文献3に記載された空隙測定器と同様の構成を有し、かつ、上記の各実施形態のように記録部56と演算部58と表示部38とを備えるドア隙間測定装置を構成することもできる。この場合、記録部56において、測定部32で測定された測定値を記録させ、操作者の操作に応じて、演算部58で集積された複数の測定値から複数の測定値に関係する最大測定値、最小測定値、平均測定値等の関係値を演算し、表示部38に関係値を表示させることもできる。また、この場合に、ドア隙間測定装置に警告部を設けることもできる。すなわち、ドア隙間測定装置は、長尺な平板の先端部に薄板製の可撓性のある湾曲板の一端部を固定し、湾曲板の他端部を平板にスライド可能に設け、湾曲板の裏面に歪みゲージを固着して測定部を構成し、湾曲板の曲率の変化に伴う歪みゲージで検出された電気抵抗値の変化を利用して、測定部が挿入されたドア隙間の大きさを液晶文字表示窓等の表示部に表示させる構成も採用できる。これとともに、表示部で上記の各実施形態と同様に、最大測定値等の関係値を表示可能とする。この構成によっても、点検時の点検作業を容易に行え、かつ、短時間で行える。このようにドア隙間を測定可能な測定部は、種々の構成を採用できる。
【符号の説明】
【0047】
10 乗場扉、12 乗場、14 三方枠、16 出入り口、18,20 壁部、22,24 乗場扉、26 テーパゲージ、28 ドア隙間測定装置、30 ケース、32 測定部、34 天板部、36 底板部、38 表示部、40 操作部、42 側壁部、44 突き当て面、46 突き当て部、48 傾斜面、50 傾斜部、52 側壁部、54 制御装置、56 記録部、58 演算部、60 警告部、62 縁部、64 点検者、66 操作部、68 第1押しボタン、70 第2押しボタン、72 リセットボタン、74 ドア隙間測定装置、 76 測定本体部、78 パーソナルコンピュータ(PC)、80 制御装置、82 ドア隙間測定装置、84 測定部、86 突き当て板、88 揺動板、90 伸縮部、92 突き当て面、94 揺動軸、96 ロッド、98 バネ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エレベータドアとドア収容部側の壁部との間のドア隙間寸法を測定可能な測定部と、
測定部で測定された測定値を表示する表示部と、
操作者により操作可能な操作部と、
操作部が操作された場合に測定部で測定されている測定値を記録する記録部と、
演算部とを備え、
記録部は、複数の測定値を集積して記録する機能を有し、
演算部は、操作部の操作に応じて、集積された複数の測定値から複数の測定値に関係する関係値を演算し、表示部に関係値を表示させることを特徴とするエレベータ用ドア隙間寸法測定装置。
【請求項2】
請求項1に記載のエレベータ用ドア隙間寸法測定装置において、
演算部は、操作部の操作に応じて、集積された複数の測定値から関係値である最大測定値を演算し、表示部に最大測定値を表示させることを特徴とするエレベータ用ドア隙間寸法測定装置。
【請求項3】
請求項1に記載のエレベータ用ドア隙間寸法測定装置において、
演算部は、操作部の操作に応じて、集積された複数の測定値から関係値である平均測定値を演算し、表示部に平均測定値を表示させることを特徴とするエレベータ用ドア隙間寸法測定装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1に記載のエレベータ用ドア隙間寸法測定装置において、
警告部を備え、
警告部は、演算部で演算された関係値が予め設定された所定範囲から外れた場合に、警告報知を行うことを特徴とするエレベータ用ドア隙間寸法測定装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか1に記載のエレベータ用ドア隙間寸法測定装置において、
測定部は、
エレベータドアとドア収容部側の壁部との一方の部材に突き当て可能な突き当て面と、
突き当て面に対し傾斜している傾斜面とを含み、
エレベータドアとドア収容部側の壁部との他方の部材により傾斜面上で押圧される点の位置を検出して、検出された位置と傾斜面との間隔からドア隙間寸法を測定することを特徴とするエレベータ用ドア隙間寸法測定装置。
【請求項6】
請求項1から請求項4のいずれか1に記載のエレベータ用ドア隙間寸法測定装置において、
測定部は、
エレベータドアとドア収容部側の壁部との一方の部材に突き当て可能な突き当て面と、
突き当て面を有する突き当て部の先端部に揺動可能に支持された揺動板と、
突き当て面と揺動板との間に設けられ、突き当て面と揺動板との間隔が拡縮することに伴って伸縮する伸縮部とを含み、
突き当て部の先端がドア隙間に予め設定された所定長さ分挿入された場合の伸縮部の伸縮量からドア隙間寸法を測定することを特徴とするエレベータ用ドア隙間寸法測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−158413(P2012−158413A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−17828(P2011−17828)
【出願日】平成23年1月31日(2011.1.31)
【出願人】(000236056)三菱電機ビルテクノサービス株式会社 (1,792)
【Fターム(参考)】