説明

エレベータ装置

【課題】外部への視界を妨げることなく、エレベータ昇降路の壁面部分を広告利用などの情報の発信場所として利用できるエレベータ装置を提供する。
【解決手段】乗り場側と対向する壁面31が透明な素材により形成されたエレベータ昇降路30の、前記透明な壁面31に、所定の情報を表示するための映像を投影する映像投影装置24を有する。この映像投影装置24は、エレベータかごが停止状態であることを条件に映像を透明な壁面31に投影し、外部に情報を発信する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、広告映像などの情報発信機能を有するエレベータ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
最近、都市部のビルにおいて、昇降路の建物外部に面した側面をガラス張りにして、かご内に居る利用者が建物外部の景色を展望できるようにしたエレベータが、多く採用されるようになってきた。このような、展望用エレベータは、かごに乗ったエレベータ利用者の目を楽しませるだけでなく、かごが昇降路を移動する様子を街行く人々が外部から眺めることができ、建物自体を印象づけることができるものであり、多くの特許提案も行われている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このような展望用エレベータを建物(施設)に設置する場合、そのエレベータの使用目的からエレベータの昇降路に相当する部分の建物(施設)外壁部分にはガラス等、景観を望める透明な素材を使用し、視界を極力確保している。このため、エレベータの昇降路に相当する部分の建物(施設)外壁を、広告利用など視界を遮るように用いることには制限があった。
【0004】
また、建物外側からは、エレベータ昇降路内を見ることが可能であり、建物の美観を損なうことも考えられる。すなわち、エレベータ昇降路は、エレベータかごの昇降用機材とエレベータを運行する為に必要な機材を収納するスペースとしてのみ利用されている。このため、展望用エレベータや、マンション等に設置される窓付きエレベータのように昇降路内を見ることができる場合は、無機質な機械が見えるデッドスペースとなっていた。
【特許文献1】特開2004−161462号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような展望用エレベータを設置した建物において、エレベータ昇降路に相当する部分の建物(施設)外壁部分は、外部展望を妨げないように透明な状態を維持する必要があり、広告利用などの情報の発信場所として使用することが困難であった。また、建物のエレベータ昇降路の外壁部分を透明にすることは、外部に対して昇降路内部の無機質な機械設備を露出することになるので、建物の設置状況によっては美観を損なうことにもなる。
【0006】
本発明の目的は、外部への視界を妨げることなく、エレベータ昇降路の壁面部分を広告利用などの情報の発信場所として利用できるエレベータ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のエレベータ装置は、乗り場側と対向する壁面が透明な素材により形成されたエレベータ昇降路と、前記エレベータ昇降路の、乗り場側と対向する透明な壁面に、所定の情報を表示するための映像を投影する映像投影装置と、前記エレベータ昇降路内におけるエレベータかごの昇降運転を制御するエレベータ制御装置と、前記エレベータ制御装置から、エレベータの運転状況信号を入力し、エレベータかごが停止状態であることを条件に前記映像投影装置を動作させ、前記映像を投影させる情報制御装置とを備えたことを特徴とする。
【0008】
また、本発明のエレベータ装置は、乗り場側と対向する壁面が透明な素材により形成され、かつ、この乗り場側と対向する透明な壁面は複数の区画に区分されているエレベータ昇降路と、前記透明な壁面の複数に区分された各区画に対応して複数設けられ、それぞれ対応する区画に所定の情報を表示するための映像を投影する映像投影装置と、前記エレベータ昇降路内におけるエレベータかごの昇降運転を制御すると共に、前記エレベータかごの現在位置を検出する位置検出機能を有するエレベータ制御装置と、前記エレベータ制御装置からのエレベータかごの現在位置信号を入力し、このエレベータかごが存在しない区画に対応する前記映像投影装置を動作させ、当該区画に前記映像を投影させる情報制御装置とを備えた構成でもよい。
【0009】
さらに、本発明のエレベータ装置は、乗降用のかご扉面に外部を視認可能な窓を設けたエレベータかごと、このエレベータかごの前記かご扉の外面と対向するエレベータ昇降路の階間部に、前記かご扉の窓から映像を視認可能な状態で配置された映像表示装置と、前記エレベータ昇降路内におけるエレベータかごの昇降運転を制御すると共に、前記エレベータかごの現在位置を検出する位置検出機能を有するエレベータ制御装置と、このエレベータ制御装置からのエレベータかごの現在位置信号を入力し、このエレベータかごの現在位置近くに位置する前記映像表示装置を表示動作させる情報制御装置とを備えた構成でもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、エレベータの昇降路に相当する部分の壁面を、エレベータの使用目的である展望性等を損なうこと無く、広告等の情報発信の場として有効に使用することができる。このため、従来、情報発信用に使用していた媒体(紙や、垂れ幕)を用意する必要がなく、意匠性が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明に係るエレベータ装置の一実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。
【0012】
図1は、この実施の形態によるエレベータ装置の構成図であり、図2は、そのエレベータ昇降路を上側から見た構成図である。これら図1及び図2において、1はエレベータかごであり、このエレベータかご1は、昇降路30内に昇降可能に設けられ、図示しない釣合い重りとの間に設けられた主ロープにより駆動シーブを介して吊支され、図示しない駆動モータにより昇降駆動される。また、このエレベータかご1は、昇降路30の上部の機械室に設けられたエレベータ制御盤2内のエレベータ制御装置2aにより、乗客の指示する呼び階又は目的階等の所定階に移動するようにより運転制御される。このエレベータかご1の乗降用出入り口には、図3で示すように、その左右方向に開閉動作する両開き式のかご扉1aが設けられている。このかご扉1aの扉面には、外部を視認可能な窓1bが設けられている。
【0013】
エレベータ昇降路30は、乗り場側(図1の左側)と対向する壁面(建物の外壁の一部でもある)31が透明な素材により形成されている。また、この乗り場側と対向する透明な壁面31は、図4で示すように、複数の区画31a〜31hに区分されている。24は映像投影装置であり、透明な壁面31の複数に区分された各区画31a〜31hに対応して昇降路30内に複数個設けられている。これら映像投影装置24は、それぞれ対応する区画に、所定の情報を表示するための映像を個別に投影する。
【0014】
また、エレベータ昇降路の30の、乗り場フロア側(図1の左側)、すなわち、エレベータかご1のかご扉1aの外面と対向する階間部32には、図3で示すように、映像表示装置25が設けられている。この映像表示装置25は、かご扉1aの窓1bから、表示映像が視認できる状態で表示面が配置されている。
【0015】
エレベータ制御盤2内のエレベータ制御装置2aは、前述のようにエレベータ昇降路30内におけるエレベータかご1の昇降運転を制御する。また、エレベータかご1の現在位置を検出するエレベータ位置検出装置3と接続し、エレベータかご1が、現在、昇降路30内のどの階床、またはどの階床間に位置するかを検出する機能を有する。
【0016】
前記機械室内には、エレベータ制御盤2の他に情報制御盤20が設けられている。この情報制御盤20内には、情報制御装置20a、情報出力装置21、情報入力装置22、及び外部情報と接続することが可能な外部インタフェース23が設置されている。情報制御装置20aは、エレベータ制御装置2aからのエレベータかご1の運転状況信号または現在位置信号を入力し、これらの信号に応じて映像投影装置24又は映像表示装置25のいずれか又は双方を動作させる。情報入力装置22及び外部インタフェース23は、広告や、或いはその他の各種の映像情報を入手する。情報制御装置20aは、これら映像情報を、エレベータ制御装置2aからのエレベータかご1の運転状況信号または現在位置信号に基づき、所定のタイミングで情報出力装置21から映像投影装置24又は映像表示装置25のいずれか又は双方に出力する。
【0017】
上記構成において、エレベータ制御装置2aは、エレベータの運転を制御するものであるから、現在、エレベータが運転中で、エレベータかご1が階床間を昇/降中か、又は、ある階床に停止中であるかを把握しており、それらの状況を表す運転状況信号を出力する。情報制御装置20aは、この運転状況信号を入力し、エレベータが停止している状態において、画像情報を、情報出力装置21からエレベータ昇降路30に設置した情報投影装置24に出力し、これを投影動作させる。この画像情報は、予め情報入力装置22や外部接続インタフェース23より入手され、設定された広告情報などである。情報投影装置24は、この画像をエレベータ昇降路30の透明な建物(施設)外壁部分31に投影する。
【0018】
この動作により、エレベータかご1の停止状態において、エレベータ昇降路30の透明な建物(施設)外壁部分31に映像が投影され、建物外部に対して情報を発信することができる。
【0019】
エレベータが運転され、エレベータかご1が昇/降を開始すると、情報制御装置20aは、エレベータ制御装置2aからの運転状況(運転中)信号により、情報投影装置24による映像情報の投影を停止させる。このため、エレベータ昇降路30の透明な建物(施設)外壁部分31から映像はなくなり、再び透明な状態になるので、エレベータ利用者に対する展望用エレベータとしての機能を損なうことはない。
【0020】
ここで、情報投影装置24によるエレベータ昇降路30の透明な建物(施設)外壁部分31への画像情報投影は、エレベータの運転が停止し、エレベータかご1が階床に停止している状態で行われるので、エレベータ利用者に対する展望用エレベータとしての機能が大きく損なわれることはない。すなわち、エレベータかご1が階床に停止しているとき、エレベータ利用者の多くは、エレベータかご1に乗り込んだり、かご1から降りたりしている状態である。このような状況において透明な建物(施設)外壁部分31に映像が投影され、外方への視界が一時的に妨げられても特に問題はない。それは、エレベータかごが昇/降を開始すれば映像の投影は停止され透明な状態となって外方への視界が確保されるためであり、乗客はその展望機能に対して大きな不満が生じることはない。
【0021】
このように制御することにより、展望機能を損なうことなく、しかも、従来、情報発信の面でデッドスペースであった部分を有効活用して情報発信に利用することが可能となった。さらに、情報発信時は、エレベータ昇降路30内の無機質な機構部分が外部に露出しないので、美観を向上させることもできる。
【0022】
上記説明では、エレベータの運転が停止している場合に、映像を投影するようにしているが、エレベータ運転に伴うエレベータかご1の位置の変化に伴い、映像の投影位置を制御してもよい。
【0023】
エレベータ制御装置2aは、エレベータの運転を制御するものであるから、エレベータ位置検出装置3により、運転中及び停止中を問わず、エレベータかご1の現在位置を把握することができる。すなわち、運転中であれば、どの階床間を昇/降動作中か、停止中であれば、どの階床に停止中であるかを把握しており、エレベータかご1の現在位置を表す位置信号を出力している。そこで、情報制御装置20aは、このエレベータかご1の位置信号を用い、透明な建物(施設)外壁部分31の、エレベータかご1と対向する部分以外に映像を投影して情報発信を行うようにしてもよい。
【0024】
すなわち、前述したように、エレベータ昇降路30の透明な壁面31は、図4で示したように、複数の区画31a〜31hに区分されており、これら複数の区画に対応して映像投影装置24が配置されている。情報制御装置20aは、エレベータ制御装置2aからエレベータかご1の現在位置信号を入力し、このエレベータかご1が存在しない区画(図4の例では、31a,31c,31d,31e,31f,31g)に対応する映像投影装置24を動作させ、当該区画に映像を投影させている。
【0025】
この場合、エレベータかご1が存在する区画(図4の例では31b、31h)への、情報投影装置24による情報投影は停止する。したがって、この区画31b、31hは透明な状態を維持し、エレベータかご1からの展望を妨げることはない。他のエレベータかご1が存在しない区画31a,31c,31d,31e,31f,31gは、情報投影装置24により、常時情報が投影され、外部への情報発信が行われる。もちろん、エレベータの運転によりエレベータかご1が昇/降動作すれば、それに伴って情報投影が停止される透明な区画も移動し、エレベータかご1の乗客に対する展望機能を維持する。
【0026】
上記説明は、エレベータ昇降路31の透明な建物外壁31部分による、建物外部への情報発信についてであるが、次に、エレベータかご1内の乗客に対する情報発信機能を説明する。
【0027】
エレベータかご1の乗降用のかご扉1aの扉面には、防犯用などの目的で外部を視認可能な窓1bが設けられている。一方、エレベータ昇降路30の、かご扉1bの外面と対向する側には、図1で示したように、階間部32に映像表示装置25が設けられている。この映像表示装置25は、かご扉1aの窓1bから視認可能な状態で表示面が配置されている。そこで、情報制御装置20aにより、これら映像表示装置25を、エレベータかご1の昇/降動作に連動して表示させ、エレベータかご1内から窓1bを通して目視できるように制御する。
【0028】
すなわち、情報制御装置20aは、エレベータ制御装置から2aからエレベータかご1の現在位置信号を入力しているので、この位置信号にしたがって、エレベータかご1の現在位置近くに位置する映像表示装置24を表示動作させる。映像表示装置24に表示する映像には、情報入力装置22や外部インタフェース23により入手され、予め設定された各種情報を用いることができる。
【0029】
このように制御することにより、エレベータかご1が通過するタイミングにあわせて映像表示装置24が表示動作するので、かご1内の乗客に対する情報発信を確実に行うことができる。
【0030】
なお、図1では、エレベータ昇降路30内に映像投影装置24と映像表示装置25とをそれぞれ設けた場合を示しているが、これら映像投影装置24及び映像表示装置25のいずれかを省略してもよい。
【0031】
このように、エレベータ昇降路内に設置された映写機などに代表される情報投影装置24と電子ペーパーなどに代表される情報表示装置25のいずれか又は双方を設置し、エレベータ制御装置2aから受け取る位置情報や運行状況と連動することでエレベータの昇降路30の透明な建物(施設)外壁部分31を、広告等情報発信の場として有効に使用することができる。すなわち、従来使用できなかったスペースを、展望機能を損なうことなく、情報発信の場として有効に活用することが可能になる。また、昇降路30内の、エレベータかご扉と対向する階間部に情報表示装置を設けることにより、かご1内の乗客に対する情報の発信も確実に行うことができる。さらに、情報に映像等を使用することで従来情報発信用に使用していた媒体(紙や、垂れ幕)を用意する必要がなくなる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明によるエレベータ装置の一実施の形態を示す構成図である。
【図2】同上一実施の形態におけるエレベータ昇降路の内部機器配置を説明する平面図である。
【図3】同上一実施の形態におけるかご扉の形状例を示す正面図である。
【図4】同上一実施の形態における昇降路の透明な建物外壁部分の区分状態を示す正面図である。
【符号の説明】
【0033】
1 エレベータかご
1a かご扉
1b 窓
2a エレベータ制御装置
3 エレベータ位置検出装置
24 映像投影装置
25 映像表示装置
30 エレベータ昇降路
31 透明な建物外壁部分
32 階床間部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗り場側と対向する壁面が透明な素材により形成されたエレベータ昇降路と、
前記エレベータ昇降路の、乗り場側と対向する透明な壁面に、所定の情報を表示するための映像を投影する映像投影装置と、
前記エレベータ昇降路内におけるエレベータかごの昇降運転を制御するエレベータ制御装置と、
前記エレベータ制御装置から、エレベータの運転状況信号を入力し、エレベータかごが停止状態であることを条件に前記映像投影装置を動作させ、前記映像を投影させる情報制御装置と、
を備えたことを特徴とするエレベータ装置。
【請求項2】
乗り場側と対向する壁面が透明な素材により形成され、かつ、この乗り場側と対向する透明な壁面は複数の区画に区分されているエレベータ昇降路と、
前記透明な壁面の複数に区分された各区画に対応して複数設けられ、それぞれ対応する区画に所定の情報を表示するための映像を投影する映像投影装置と、
前記エレベータ昇降路内におけるエレベータかごの昇降運転を制御すると共に、前記エレベータかごの現在位置を検出する位置検出機能を有するエレベータ制御装置と、
前記エレベータ制御装置からのエレベータかごの現在位置信号を入力し、このエレベータかごが存在しない区画に対応する前記映像投影装置を動作させ、当該区画に前記映像を投影させる情報制御装置と、
を備えたことを特徴とするエレベータ装置。
【請求項3】
乗降用のかご扉面に外部を視認可能な窓を設けたエレベータかごと、
このエレベータかごの前記かご扉の外面と対向するエレベータ昇降路の階間部に、前記かご扉の窓から映像を視認可能な状態で配置された映像表示装置と、
前記エレベータ昇降路内におけるエレベータかごの昇降運転を制御すると共に、前記エレベータかごの現在位置を検出する位置検出機能を有するエレベータ制御装置と、
このエレベータ制御装置からのエレベータかごの現在位置信号を入力し、このエレベータかごの現在位置近くに位置する前記映像表示装置を表示動作させる情報制御装置と、
を備えたことを特徴とするエレベータ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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