説明

エレベータ装置

【課題】 ウレタン等のシーブ材料を用いた場合におけるシーブ寿命の低下を抑制できるエレベータ装置を提供すること。
【解決手段】 エレベータ装置は、シーブの磨耗度を測定するシーブ磨耗度測定手段23と、かごの走行履歴に関するデータに基づいて、シーブの磨耗度を算出するシーブ磨耗度算出手段31と、シーブ磨耗度測定手段23により測定したシーブの磨耗度と、シーブ磨耗度算出手段31により算出したシーブの磨耗度との磨耗度差を算出するシーブ磨耗度差算出手段32と、前記磨耗度差が所定値を超えた場合、シーブに異常な磨耗が生じていると判断する判断手段33と、判断手段33により、シーブに異常な磨耗が生じていると判断された場合、当該異常を発報する発報手段37とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、トラクション方式のエレベータ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
トラクション方式のエレベータ装置においては、ローブとシーブとの間のトラクション(摩擦)を確保するために、ロープと接触する部分をウレタンで形成したシーブ(ウレタンシーブ)の製品化が進んでいる。ウレタンシーブを採用すると、かごの軽量化も図れるというメリットもある。
【0003】
かごの昇降を繰り返していくと、シーブのウレタン部分が磨耗していく。その結果、ローブとウレタンシーブとの間のトラクション特性が低下する。磨耗が進んだウレタンシーブは、新しいウレタンシーブと交換する必要がある。
【0004】
一方、従来技術の一つとして、定期的かつ自動的にシーブの磨耗度を検出して、シーブの交換を発報するエレベータ制御装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−221284号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記の従来技術は、シーブの交換時期に入ったところで発報するだけで、一つのシーブを交換せずに使用し続けることができる期間を長くするための技術ではない。
【0007】
したがって、一つのシーブを交換せずに使用し続けることができる期間を長くできるエレベータ装置が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
実施形態のエレベータ装置は、エレベータのかごと、前記かごに繋がれたロープと、前記ロープが巻き掛けられたシーブと、前記シーブの磨耗度を測定するシーブ磨耗度測定手段と、前記かごの走行履歴に関するデータに基づいて、前記シーブの磨耗度を算出するシーブ磨耗度算出手段と、前記シーブ磨耗度測定手段により測定した前記シーブの磨耗度と、前記シーブ磨耗度算出手段により算出した前記シーブの磨耗度との磨耗度差を算出するシーブ磨耗度差算出手段と、前記磨耗度差が所定値を超えた場合、前記シーブに異常な磨耗が生じていると判断する判断手段と、前記判断手段により、前記シーブに異常な磨耗が生じていると判断された場合、当該異常を発報する発報手段とを具備してなることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】第1の実施形態に係るエレベータ装置を示す概略構成図である。
【図2】第1の実施形態に係るエレベータ装置の制御盤およびそれに接続されたシーブ磨耗度測定部の機能ブロック図である。
【図3】シーブ寿命差に基づいてシーブに異常な寿命変化が生じているか否かを判断する方法の一例を説明するための図である。
【図4】シーブ寿命差と走行データに基づいてシーブに異常な寿命変化が生じているか否かを判断する方法の一例を説明するための図である。
【図5】第1の実施形態に係るエレベータ装置の動作を説明するためのフローチャートである。
【図6】図5に続く第1の実施形態に係るエレベータ装置の動作を説明するためのフローチャートである。
【図7】第2の実施形態に係るエレベータ装置の要部の機能ブロック図である。
【図8】第2の実施形態に係るエレベータ装置により偏磨耗を抑制できる理由を説明するための図である。
【図9】シーブの外周面を四つの部分外周面に分けた様子を示す図である。
【図10】四つの部分外周面と四つパーキング角との関係を示す図である。
【図11】第2の実施形態に係るエレベータ装置の動作を説明するためのフローチャートである。
【図12】第3の実施形態に係るエレベータ装置の要部の機能ブロック図である。
【図13】第3の実施形態に係るエレベータ装置の動作を説明するためのフローチャートである。
【図14】図13に続く第1の実施形態に係るエレベータ装置の動作を説明するためのフローチャートである。
【図15】着検板に対応するシーブの部分外周面と、当該部分外周面に対応するパルス値との関係を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら実施形態を説明する。
【0011】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係るエレベータ装置を示す概略構成図である。
【0012】
本実施形態のエレベータ装置は、エレベータの乗りかご1と、一端が乗りかご1に繋がれたロープ2と、ロープ2の他端に繋がれたカウンタウェイト3と、ロープ2が巻装されたシーブ4と、昇降路5内で、乗りかご1とカウンタウェイト3とを互いに逆方向に昇降するように、シーブ4を駆動するためのモーター6と、乗りかご1の速度や運行管理、モーター6の回転速度など、さまざまな制御をつかさどる制御盤7と、制御盤7に接続された周知のシーブ磨耗度自動測定部(不図示)とを備えている。このシーブ磨耗度自動測定部は図2を用いて後で詳説する。
【0013】
シーブ4はウレタン製である。すなわち、シーブ4は、ロープ2との間のトラクションを確保できるように、ロープ2と接触する部分(シーブ外周面)は摩擦が大きくなるようにウレタン樹脂で形成されている。トラクションを確保できるなら、ウレタン樹脂以外の材料を用いても構わない。
【0014】
なお、図1において、8はガイドレール(かごガイドレール8a、カウンタウェイトガイドレール8b)、9(9a,9b)は着検板(着検検出板)、10は遠隔保守端末装置、21はパルスジェネレータを示している。遠隔保守端末装置10は制御盤7に接続されている。着検板9は各階に設けられているが、図では簡単のため、隣り合う二つの階の着検板9a,9bだけしか示されていない。
【0015】
図2は、制御盤7およびそれに接続されたシーブ磨耗度自動測定部20の機能ブロック図である。
【0016】
シーブ磨耗度自動測定部20は図1に示したシーブ4の磨耗度(シーブ摩耗度)を自動的に取得するための周知のシステムである。シーブ磨耗度自動測定部20は、パルスジェネレータ21と、パルスカウント部22と、磨耗度測定部23とを備えている。
【0017】
パルスジェネレータ21は図1に示したモーター6に取り付けられている。パルスジェネレータ21は乗りかご1の走行に同期してパルス信号を発生する。パルスジェネレータ21で発生したパルス信号のパルス数はパルスカウント部22によってカウントされる。パルスカウント部22でカウントされたパルス数は磨耗度測定部23に与えられる。磨耗度測定部23は、パルスカウント部22からのパルス数の累積値を算出して、測定データ(実測シーブ摩耗度)であるシーブ4の摩耗度を求める。
【0018】
磨耗度測定部23は制御盤7に接続されている。磨耗度測定部23の測定データは、制御盤7の一部であるシーブ磨耗差算出部32および種々のデータを記憶するための記憶装置40に与えられる。磨耗度測定部23の測定データは、遠隔保守端末装置10を介して、図示しないデータセンタにも送られるようになっている。データセンタは、エレベータ監視センタの一部またはエレベータ監視センタと別のセンタでも構わない。
【0019】
図2に示すように、本実施形態の制御盤7は、シーブ磨耗度算出部31と、シーブ磨耗度差算出部32と、異常シーブ摩耗度判断部33と、シーブ寿命予測部34と、シーブ寿命差算出部35と、異常シーブ寿命判断部36と、異常値発報部37と、摩耗度予測曲線計算部38を備えている。
【0020】
シーブ磨耗度算出部31は、乗りかご1の走行履歴に関するデータ(走行データ)に基づいて、シーブ4の磨耗度を計算により求める。走行データは、例えば、乗りかご1の走行時間、走行回数または走行距離である。走行データは、走行データ測定部39による測定により取得され、この取得された走行データは記憶装置40に保存される。この記憶装置40に保存された走行データは、上記のシーブ4の磨耗度の計算に使用される。シーブ磨耗度算出部31により算出されたシーブ4の磨耗度(算出シーブ摩耗度)は、記憶装置40に記憶される。
【0021】
シーブ磨耗度差算出部32は、記憶装置40から実測シーブ摩耗度および算出シーブ摩耗度を読み出し、これらの差(シーブ磨耗度差)を算出する。このシーブ磨耗度差は、異常値発報部37の異常摩耗度発報部37aにセットされる。シーブ磨耗度差がある一定値(閾値)を超えた場合、異常摩耗度発報部37aは、当該異常を遠隔保守端末装置10を介してデータセンタ(エレベータ監視センタ)に発報する。
【0022】
シーブ寿命予測部34は、記憶装置40に保存されている算出シーブ磨耗度を読み出し、さらに、記憶装置40に保存されているシーブ4の初期径(シーブ初期径)および磨耗度予測曲線を読み出し、算出シーブ磨耗度とシーブ初期径とシーブ磨耗度予測曲線とに基づいて、シーブ4の寿命(シーブ寿命)を予測する。本実施形態では、シーブ寿命は摩耗度で規定される。磨耗度予測曲線は、時間の経過とともにシーブ4の摩耗度がどのように変化するかを示す曲線である。
【0023】
現時点での算出シーブ摩耗度が同じであれば、一般には、初期径が大きいほど、残りのシーブ寿命は長くなる。また、初期径が同じであれば、一般には、現時点での算出シーブ摩耗度が高いほど、残りのシーブ寿命は短くなる。このような観点から磨耗度予測曲線は計算により取得できる。算出シーブ摩耗度がある一定値(閾値)に達したら、シーブ寿命は尽きたと判断される。
【0024】
シーブ寿命差算出部35は、シーブ寿命予測部34により予測された最新のシーブ寿命と、当該シーブ寿命よりも一つ前にシーブ寿命予測部34により予測されたシーブ寿命との差(シーブ寿命差)を算出する。なお、最新の予測されたシーブ寿命とそれ以前の全ての予測されたシーブ寿命との差を算出しても構わない。
【0025】
シーブ寿命差算出部35で算出されたシーブ寿命差は、異常シーブ寿命判断部36に与えられる。異常シーブ寿命判断部36は、シーブ寿命差に基づいて、シーブ4に異常な寿命変化が生じているか否かを判断する。
【0026】
例えば、通常のエレベータ運行が行われている場合、図3(a)に示すように、一定の時間間隔Δtで算出されるシーブ寿命差は、直線からの距離が一定以下の領域R内に分布すると考えられる。したがって、例えば、図3(b)に示すように、算出されたシーブ寿命差が領域R(所定値)の外にある場合、シーブ4に異常な寿命変化が生じていると判断される。
【0027】
異常シーブ寿命判断部36は、シーブ寿命差と走行データに基づいて、シーブに異常な寿命変化が生じているか否かを判断しても構わない。走行データ(走行距離、走行回数および走行時間の少なくとも一つ)を考慮することにより、より正確な判断が期待できる。
【0028】
その理由は、例えば、図4に示すように、領域R内に分布する場合でも、走行回数が同じ(N)であるにも拘わらず、シーブ寿命差(ΔL)の低下が大きい場合、シーブ4に異常な寿命変化が生じている可能性があり、このような可能性を見落とさずに済むからである。
【0029】
異常シーブ寿命判断部36の判断結果は、異常値発報部37のシーブ寿命発報部37bにセットされる。シーブ寿命発報部37bは、シーブに異常な寿命変化が生じていると判断された場合、当該異常を遠隔保守端末装置10をデータセンタ(エレベータ監視センタ)に発報する。
【0030】
摩耗度予測曲線計算部38は、異常シーブ摩耗度判断部33により、シーブ4に異常な摩耗が生じていないと判断された場合、記憶装置40に保存されている前回の摩耗度予測曲線と記憶装置40に保存されている今回の走行データとに基づいて、摩耗度予測曲線を再計算する。すなわち、シーブ摩耗度が正常であると判断された場合、摩耗度予測曲線計算部38は、最新のデータを用いて、摩耗度予測曲線を更新する。
【0031】
図5および図6は、本実施形態に係るエレベータ装置の動作を説明するためのフローチャートである。
【0032】
まず、磨耗度自動測定部20によりシーブ摩耗度の自動測定が行われる(ステップS1)。この自動測定により取得された測定データ(実測シーブ摩耗度)は、記憶装置40に保存されるとともに、遠隔保守端末装置10およびシーブ摩耗度差算出部32に与えられる。
【0033】
次に、シーブ摩耗度算出部31は、記憶装置40に記憶されている走行データに基づいて、シーブ摩耗度を計算により求める(ステップS2)。
【0034】
走行距離が長いほどシーブ摩耗度は高くなる。同様に、走行回数が多いほど、また、走行時間が長いほど、シーブ摩耗度は高くなる。これらの観点からシーブ摩耗度を計算により求めることができる。走行距離に基づいてシーブ摩耗度を計算により求める場合、記憶装置40に記憶されているシーブ4の摩耗度予測曲線(シーブ摩耗度予測曲線)が使用される。
【0035】
次に、シーブ摩耗度差算出部32は、算出シーブ摩耗度と実測シーブ摩耗度との差(シーブ摩耗度差)を算出する(ステップS3)。
【0036】
シーブ摩耗度差は、例えば、|実測シーブ摩耗度−算出シーブ摩耗度|の絶対値で与えられる。以下の説明では、シーブ摩耗度差は絶対値で与えられたものとして説明する。また、シーブ摩耗度差算出部32で算出されたシーブ摩耗度差は、異常シーブ摩耗度判断部33にも与えられる。
【0037】
次に、異常シーブ摩耗度判断部33は、シーブ摩耗度差が規定値(所定値)を超えた場合、シーブ4に異常な摩耗が生じていると判断し、シーブ摩耗度差が規定値以下の場合、シーブ4に異常な摩耗は生じていないと判断する(ステップS4)。
【0038】
例えば、100×シーブ摩耗度差/算出シーブ摩耗度≦3%の場合、異常な摩耗は生じていないと判断され、それ以外の場合(上記左辺>3%)、異常な摩耗が生じていると判断される。上記の不等式の代わりに、100×シーブ摩耗度差/実測シーブ摩耗度≦3%に基づいて、同様に、異常摩耗の有無の判断を行っても構わない。
【0039】
従来は、ステップS1で取得された実測シーブ摩耗度が規定値内か否かが判断される。したがって、従来は、乗りかごの走行データ(走行履歴)を考慮せずに、シーブ摩耗度は評価されることになる。シーブ摩耗度が一定値を超えた場合、シーブ交換が行われる。
【0040】
一方、本実施形態は、乗りかごの走行データ(走行履歴)も考慮して、シーブ摩耗度は評価されることになる。
【0041】
ステップS4で使用される規定値は、通常のエレベータの運行上では考えられないシーブ磨耗度を考慮して決められる。
【0042】
異常シーブ摩耗度判断部33がシーブ4に異常な摩耗は生じていないと判断した場合(ステップS4でYesの場合)、磨耗度予測曲線計算部38は、今回のシーブ磨耗度自動測定で取得された測定データ(シーブ摩耗度、走行データ)と過去の測定データとを加えて得られたデータ(更新データ)を用いて、シーブ磨耗度予測曲線を算出する(ステップS5)。この算出したシーブ磨耗度予測曲線(更新シーブ磨耗度予測曲線)は、記憶装置40に保存される(ステップS5)。過去のシーブ摩耗度予測曲線はログとして残しておいても構わない。
【0043】
一方、異常シーブ摩耗度判断部33がシーブに異常な摩耗は生じていると判断した場合(ステップS4でNoの場合)、シーブ摩耗度差が規定値を超えていることを記憶装置40に保存する(ステップS6)。
【0044】
シーブ摩耗度差が大きいとは、実測シーブ摩耗度と算出シーブ摩耗度との乖離が大きいことを意味する。算出シーブ摩耗度は、走行データ(走行履歴)に基づいて算出される。したがって、シーブ摩耗度差が大きい場合、その原因はエレベータの運行に伴う経時的なシーブ消耗に基づくものではなく、エレベータを構成するシーブ以外の機器の機械的または電気的な障害であると考えられる。この障害を修理等により取り除けば、シーブ交換を行わずに済むので、一つのシーブを交換せずに使用し続けることができる期間を長くできる。
【0045】
次に、ステップS1で取得された実測シーブ摩耗度、当該実測シーブ摩耗度の測定時における乗りかご1に関する走行データ(走行距離、走行時間、走行回数)、および、ステップS2で計算により取得された算出シーブ摩耗度は、記憶装置40に保存される(ステップS7)。
【0046】
なお、実測シーブ摩耗度および走行データは、更新シーブ磨耗度予測曲線や算出シーブ摩耗度よりも先に取得できるので、先に実測シーブ摩耗度および走行データを保存し、後で更新シーブ磨耗度予測曲線や算出シーブ摩耗度を保存するなど、実測シーブ摩耗度、更新シーブ磨耗度予測曲線、走行データ、算出シーブ摩耗度を記憶装置40に保存するタイミングは適宜変更可能である。
【0047】
次に、シーブ寿命予測部34は、記憶装置40に保存された算出シーブ磨耗度とシーブ4の初期径と磨耗度予測曲線とに基づいて、シーブ寿命を予測する(ステップS8)。
【0048】
ここで、算出シーブ磨耗度は、乗りかご1の走行データ(かご走行履歴)を考慮して取得されているので、予測されたシーブ寿命も走行履歴を考慮して取得されたことになる。
【0049】
次に、ステップS4の判断結果がYesであったか否か、つまり、シーブ4の摩耗に異常がなかったか否かが判断される(ステップS9)。
【0050】
ステップS9の判断結果がYesの場合、シーブ寿命差算出部35は、シーブ寿命差を算出する(ステップS10)。
【0051】
次に、異常シーブ寿命判断部36は、上記シーブ寿命差に基づいて、または、上記シーブ寿命差と走行データ(走行履歴)の両方に基づいて、シーブに異常な寿命変化が生じているか否かを判断する(ステップS11)。
【0052】
ステップS11でシーブ4に異常な寿命変化が生じていると判断された場合(No)、異常値発報部37(シーブ寿命発報部37b)は当該異常を遠隔保守端末装置10を介してデータセンタに発報する(ステップS12)。
【0053】
さらに、ステップS9の判断結果がNoの場合も、異常値発報部37(異常摩耗度発報部37a)はシーブ摩耗度に異常があること(異常値)を遠隔保守端末装置10を介してデータセンタに発報する(ステップS12)。
【0054】
データセンタが異常値の発報を受けた場合、シーブ等の機器(部品)の点検が行われ、点検の結果、異常が発見された場合には、機器(部品)の修理、修復、交換等が作業員により行われる。
【0055】
本実施形態によれば、シーブ摩耗度の異常やシーブ寿命の異常を捉えることができるので、これらの異常の発見に対して早期の点検や修理等を行うことが可能となる。手遅れになる前に早期に異常に対処することにより、シーブ4の磨耗や損傷の進行等を遅らせることができる。これにより、一つのシーブを交換せずに使用し続けることができる期間を長くできる。また、早期に異常に対処することは、異常のあるシーブ4を使い続けることによる他の機器への悪影響を防止できることにつながるので、エレベータの寿命の長期化を図れるようになる。また、異常を発見し、点検や修理等を行った後に、再発防止の対策を実施しても構わない。これはシーブ寿命の長期化につながる。
【0056】
なお、摩耗度測定部23で取得されたシーブ摩耗度は、従来通りに、遠隔保守端末装置10を介してデータセンタに送られる。データセンタが規定値に達したシーブ摩耗度を受信した場合、シーブ交換の時期が来たことになるので、作業員によるシーブ交換の作業が行われる。
【0057】
異常値と判断された予測シーブ寿命はシーブ寿命として記憶装置40に保存される(ステップS13)。
【0058】
その後、走行データ測定部39にストアされているデータ(走行データ)、異常値発報部37にストアされているデータ(異常値)等がリセットされる(ステップS14)。また、ステップS11でシーブに異常な寿命変化が生じていないと判断された場合(yes)も、ステップS14に進み、データのリセットが行われる。
【0059】
(第2の実施形態)
図7は、第2の実施形態に係るエレベータ装置の要部の機能ブロック図である。なお、以下の図において、既出の図と対応する部分には既出の図と同一符号を付してあり、詳細な説明は省略する。
【0060】
本実施形態のエレベータ装置が第1の実施形態と異なる点は、シーブ4の偏磨耗を抑制する偏磨耗抑制手段を備えていることにある。この偏磨耗抑制手段は、シーブ4の偏磨耗の進行を抑制できる位置に乗りかご1をパーキング(待機)させる。上記偏磨耗抑制手段は、パーキング位置設定装置50と、パーキング位置設定装置50が必要とするデータが記憶された記憶装置40とを備えている。
【0061】
上記偏磨耗抑制手段のより具体的な構成は以下の通りである。
【0062】
上記偏磨耗抑制手段は、乗りかご1が通常運転で制御される通常動作から待機運転で制御されるパーキング動作へと切り替わったか否かを確認(判断)するパーキング動作確認部51と、乗りかご1を待機させる毎に、乗りかご1を待機させた時のシーブ4の回転角度(パーキング角度)と該パーキング角度での乗りかご1の待機時間(パーキング時間)とを記憶するための記憶装置40と、記憶装置40に記憶されているパーキング角度のうち、最も短い待機時間に対応する回転角度を選択するパーキング角度選択部52と、乗りかご1を待機させる時に、パーキング角度選択部52により選択されたパーキング角度となるように、シーブ4を回転させるモーター6を制御するモーター制御部53とを備えている。
【0063】
なお、図7には、簡単のため、記憶装置40が記憶するデータとして、パーキング位置設定装置50が必要とするデータのみが示されている。すなわち、パーキング角度とそれに対応するパーキング時間としか示していない。
【0064】
次に、シーブ4の偏磨耗を抑制できる理由について説明する。
【0065】
図8(a)に示すように、シーブ4の摩耗度の高い外周面Aが、ロープ2から荷重を受けた状態で、乗りかご1の待機(パーキング)を行うと、外周面Aの摩耗度は進む。その結果、シーブ4の偏磨耗も進む。
【0066】
そこで、本実施形態では、図8(b)に示すように、外周面Aよりも摩耗度の低い外周面Bが、ロープ2から荷重を受けた状態で、乗りかご1を待機させる。
【0067】
外周面Bに対応する乗りかご1の待機位置は、必ずしも1階、2階、3階等の整数で表させる階床ではない。例えば、外周面Bに対応する乗りかご1の待機位置は、1階と2階との間の位置である場合もある。
【0068】
そこで、本実施形態のモーター制御部53は、外周面Bに対応する乗りかご1の待機位置が、例えば、1階と2階との間の位置などのように、整数で表させる階床以外の位置にも設定できるように、シーブ4を回転させることができるように構成されている。具体的には、モーター制御部53は、モーター6が停止する時のモーター軸の回転角度を制御するように構成されている。
【0069】
これに対して従来のエレベータ装置の場合、乗りかごの待機位置は、代表的には、1階のみである。また、複数の待機位置だとしても、1階、2階または3階等の整数で表させる階床のみであるので、シーブ4の偏摩耗度を抑制できる位置に待機することは困難である。
【0070】
本実施形態では、例えば、図9に示すように、シーブ4の外周面を四つの部分外周面4A,4B,4C,4Dに分け、摩耗度が最も小さい部分外周面を選択し、当該選択した部分外周面がロープ2から荷重を受ける状態で、乗りかご1を待機させることにより、シーブ4の偏摩耗度を抑制する。部分外周面4A,4B,4C,4Dは、必ずしも、1階、2階、3階、4階等の整数で表させる階床には対応しない。
【0071】
以下、シーブ4の外周面を四つの部分外周面4A,4B,4C,4Dに分けた場合についてさらに説明する。
【0072】
本実施形態では、図10(a)に示すように、部分外周面4Aがロープ2から荷重を受けた状態でパーキングを行う場合、パーキング角θを90°に設定する。
【0073】
ここで、パーキング角θは、シーブ4の中心をx−y直交座標の原点とし、部分外周面4Aで規定される弧の中央cと上記原点とを結ぶ線分とx軸とのなす角度である。
【0074】
なお、パーキング角θは90°には限定されず、45°<θ<135°であればよい。以下、部分外周面4Aがロープ2から荷重を受ける状態で、パーキングを行う場合のパーキング角をθaと表記する。
【0075】
また、本実施形態では、図10(b)に示すように、部分外周面4Bがロープ2から荷重を受けた状態でパーキングを行う場合、パーキング角θを180°に設定する。パーキング角θは180°には限定されず、135°<θ<225°であればよい。以下、部分外周面4Bがロープ2から荷重を受ける状態で、パーキングを行う場合のパーキング角をθbと表記する。
【0076】
また、本実施形態では、図10(c)に示すように、部分外周面4Cがロープ2から荷重を受けた状態でパーキングを行う場合、パーキング角θを270°(−90°)に設定する。パーキング角θは270°(−90°)には限定されず、225°<θ<315°(−45°)であればよい。以下、部分外周面4Cがロープ2から荷重を受ける状態で、パーキングを行う場合のパーキング角をθcと表記する。
【0077】
そして、本実施形態では、図10(d)に示すように、部分外周面4Dがロープ2から荷重を受けた状態でパーキングを行う場合、パーキング角θを0°に設定する。パーキング角θは0°には限定されず、−90°<θ<45°であればよい。以下、部分外周面4Dがロープ2から荷重を受けた状態で、パーキングを行う場合のパーキング角をθdと表記する。
【0078】
本実施形態の場合、四つの部分外周面(4A,4B,4C,4D)と四つのパーキング角(θa,θb,θc,θd)との間には1対1の対応関係がある。したがって、パーキング角度選択部52は、摩耗度が最も低い部分外周面に対応するパーキング角を選択することになる。
【0079】
なお、四つのパーキング角(θa,θb,θc,θd)のうち、二つ以上のパーキング角が、最も低い部分外周面に該当する場合もあるので、例えば、最も値の大きいパーキング角を選択するなどのルールを予め決めておく。
【0080】
ここで、摩耗度が最も低い部分外周面は、待機状態時において、ロープ2から荷重を受けている時間が最も短いと考えられる。
【0081】
摩耗度が最も低い部分外周面を判断できるように、乗りかご1を待機させる毎に、パーキング角(θa,θb,θcまたはθd)、および、当該パーキング角で待機していたパーキング時間(Ta,Tb,TcまたはTd)は、記憶装置40に記憶される。パーキング角は、例えば、パルスジェネレータ21のパルス数に基づいて取得される。パーキング時間は、例えば、図示しないタイマーより取得される。
【0082】
したがって、パーキング角度選択部52は、記憶装置40に保存されている最も短いパーキング時間に対応するパーキング角(シーブ角)を選択する。この選択されたパーキング角でのパーキング時間は、記憶装置40に記憶されていた当該選択されたパーキング角に対応するパーキング時間に加算され、更新される。
【0083】
なお、本実施形態では、シーブ4の外周面を四つの部分外周面に分けた場合について説明したが、五つ以上に分けても構わないし、または、二つもしくは三つに分けても構わない。部分外周面の数に対応して、選択しうるパーキング角度の数も変わる。
【0084】
図11は、本実施形態に係るエレベータ装置の動作を説明するためのフローチャートである。
【0085】
パーキング動作確認部51により、パーキング動作に切り替わったか否かを判断(確認)する(ステップS21)。
【0086】
ステップS21でパーキング動作に切り替わった判断された場合(Yes)、パーキング角度選択部52により、Ta<Tb,Tc,Tdであるか否かが判断される(ステップS22)。
【0087】
ステップS22でTa<Tb,Tc,Tdであると判断された場合(Yes)、ステップS25aに進み、一方、ステップS22でTa≧Tb,Tc,Tdであると判断された場合(No)、ステップS23に進む。
【0088】
ステップS23では、パーキング角度選択部52により、Tb<Tc,Tdであるか否かが否か判断される。
【0089】
ステップS23でTb<Tc,Tdであると判断された場合(Yes)、ステップS25bに進み、一方、ステップS23でTb≧Tc,Tdであると判断された場合(No)、ステップS24に進む。
【0090】
ステップS24では、パーキング角度選択部52により、Tc<Tdであるか否かが判断される。
【0091】
ステップS24でTc<Tdであると判断された場合(Yes)、ステップS25cに進み、一方、ステップS24でTc≧Tdであると判断された場合(No)、ステップS25dに進む。
【0092】
ステップS22の判断結果がYesで、ステップS25aに進んだ場合、パーキング角度選択部52により、パーキング角θaが選択されることになる。パーキング角θaでのパーキング動作から通常運転動作に切り替わった場合、その時のパーキング時間ΔTaをパーキング時間Taに加えた得られた時間を更新したパーキング時間Taとして記憶装置40に記憶する(ステップS26a)。このパーキング時間Taの更新は、例えば、パーキング角度選択部52により行われる。
【0093】
ステップS23の判断結果がYesで、ステップS25bに進んだ場合、パーキング角度選択部52により、パーキング角θbが選択されることになる。パーキング角θbでのパーキング動作から通常運転動作に切り替わった場合、その時のパーキング時間ΔTbをパーキング時間Tbに加えた得られた時間を更新したパーキング時間Tbとして記憶装置40に記憶する(ステップS26b)。このパーキング時間Tbの更新は、例えば、パーキング角度選択部52により行われる。
【0094】
ステップS24の判断結果がYesで、ステップS25cに進んだ場合、パーキング角度選択部52により、パーキング角θcが選択されることになる。パーキング角θcでのパーキング動作から通常運転動作に切り替わった場合、その時のパーキング時間ΔTcをパーキング時間Tcに加えた得られた時間を更新したパーキング時間Tcとして記憶装置40に記憶する(ステップS26c)。このパーキング時間Tcの更新は、例えば、パーキング角度選択部52により行われる。
【0095】
ステップS22の判断結果がNoで、ステップS25dに進んだ場合、パーキング角度選択部52により、パーキング角θdが選択されることになる。パーキング角θdでのパーキング動作から通常運転動作に切り替わった場合、その時のパーキング時間ΔTdをパーキング時間Tdに加えた得られた時間を更新したパーキング時間Tdとして記憶装置40に記憶する(ステップS26d)。このパーキング時間Tdの更新は、例えば、パーキング角度選択部52により行われる。
【0096】
以上のステップにより、最も短いパーキング時間に対応したパーキング角度を選択できるので、この選択したパーキング角度でパーキングを行うことにより、シーブ4の偏磨耗の進行を抑制でき、シーブ寿命の長期化、安定化を図ることができるようになる。
【0097】
(第3の実施形態)
図12は、第3の実施形態に係るエレベータ装置の要部の機能ブロック図である。
【0098】
第2の実施形態の偏磨耗度抑制手段は、パーキング時間に基づいてパーキング位置を決定した。本実施形態では、着検板を検出する時のパルス信号に基づいてパーキング位置を決定する。
【0099】
本実施形態の偏磨耗度抑制手段は、着検板9a(または着検板9b)を検出してから着検板9a(または着検板9b)を検出しなくなるまでの間に測定された、パルスジェネレータ2が発生するパルス信号のパルス数(測定パルス値)ΔAと、着検板9b(または着検板9a)を検出してから着検板9b(または着検板9a)を検出しなくなるまでの間に測定された、パルスジェネレータ2が発生するパルス信号のパルス数(測定パルス値)ΔBとを記憶する記憶装置40と、記憶装置40に記憶された測定パルス値ΔAと測定パルス値ΔBとに基づいて、シーブ4の偏磨耗が減少するように、乗りかご1を待機させる時のシーブ4の回転角度(パーキング角度)を算出するパーキング角度算出部54と、乗りかご1を待機させる時に、パーキング角度算出部54により算出されたパーキング角度となるように、シーブ4を回転させるモーター6を制御するモーター制御部53とを具備している。図12には、簡単のため、記憶装置40が記憶するデータとして、パーキング位置設定装置50が必要とするデータのみが示されている。すなわち、データ(ΔA,ΔB,A0,B0)しか示していない。
【0100】
以下、図13および図14を参照して、本実施形態のエレベータ装置の動作を説明するためのフローチャートである。以下の説明では、乗りかご1は上から下に向かって走行(上昇)しているとする。
【0101】
乗りかご1の走行中に着検板9aの検出が開始されたか否かを判断する(ステップS30)。
【0102】
着検板9aはパルスカウンタ部20に接続されている。乗りかご1には図示しない着検スイッチが設置されている。着検スイッチが着検板9aの下端に接すると、パルスカウンタ部20は、パルスジェネレータ20で発生しているパルス信号(着検板信号)のパルス数をカウントし始める。これにより、着検板9aの検出が開始されたか否かを判断することができる。
【0103】
また、着検スイッチが着検板9aの上端を通り過ぎると、パルスカウンタ部20はカウントを止め、着検板9aの検出は終了する。
【0104】
ステップS31で着検板9aの検出が開始された場合(Yes)、パルスカウント部20は、着検板9aの検出の開始から終了までの間にパルスジェネレータ2で発生したパルス信号のパルス数をカウントする(ステップS31)。この時にカウントされたパルス数が測定パルス値ΔAである。
【0105】
次に、ステップS31でパルスのカウントが始まった時(検出開始時)のパルスカウント部20の検出開始値A0と、測定パルス値ΔAとが記憶装置40に記憶される(ステップS32)。
【0106】
次に、着検板9aを検出した後、乗りかご1が停止したか否かが判断される(ステップS33)。
【0107】
ステップS33で乗りかご1が停止したと判断された場合(Yes)、記憶装置40に記憶された検出開始値A0と測定パルス値ΔAとをリセットし(ステップS34)、ステップS30に戻る。
【0108】
一方、ステップS33で乗りかご1が停止しなかったと判断された場合(No)、乗りかご1の走行中に次の着検板(ここでは着検板9b)の検出が開始されたか否かを判断する(ステップS35)。
【0109】
ステップS35で着検板9bの検出が開始されたと判断された場合(Yes)、パルスカウント部20は、着検板9bの検出の開始から終了までの間にパルスジェネレータ2で発生したパルス信号のパルス数をカウントする(ステップS36)。この時にカウントされたパルス数が測定パルス値ΔBである。
【0110】
次に、ステップS36でパルスのカウントが始まった時(検出開始時)のパルスカウント部20の検出開始値B0と、測定パルス値ΔBとが記憶装置40に記憶される(ステップS37)。
【0111】
次に、測定パルス値比較部61は、パーキング角度を算出するために、まず、記憶装置40に記憶された測定パルス値ΔAと測定パルス値ΔBとの大きさを比較し、ΔA>ΔBであるか否かを判断する(ステップS38)。
【0112】
ステップS38で、ΔA>ΔBであると判断された場合(Yes)、パーキング角算出部62は、検出開始値A0をシーブ一回転分のパルス値で割った余り(RA)の1/2の値と検出開始値Aとの和(A0+RA/2)を算出する(ステップS39)。この算出値(A0+RA/2)はパーキング角θaとして記憶装置40に記憶される。
【0113】
以下、ステップ39について、さらに説明する説明する。
【0114】
着検板9aと着検板9bとが同じサイズだとすると、測定パルス値ΔAが測定パルス値ΔBよりも大きい場合(ΔA>ΔB)、着検板9aに対応するシーブ4の部分外周面の摩耗度は、着検板9bに対応するシーブ4の部分外周面の摩耗度に比べて小さいと考えられる。
【0115】
したがって、ΔA>ΔBの場合、着検板9aに対応するシーブ4の部分外周面がロープ2から荷重を受けた状態で、乗りかご1を待機させることにより、偏摩耗度を小さくすることができる。
【0116】
本実施形態の場合、着検板9aに対応するシーブ4の部分外周面は、A0と(A0+RA)との間のパルス値に対応する。以下、この点について、図15(a)−図15(c)を用いて具体的に説明する。
【0117】
図15(a)に示すように、シーブ4の1回転に対応するパルスのカウント数を1000とする。また、検出開始値A0を6300とする。
【0118】
図15(b)に示すように、着検板9aの検出開始時のシーブ4の回転角度は、6300/1000=6余り300であるので、カウント数300に対応する回転角度は、108°(=360×300/1000)となる。
【0119】
図15(c)に示すように、着検板9aの検出終了時のシーブ4の回転角度は、測定パルス値ΔAが400だとすると、カウント数700(=300+400)に対応する回転角度は、252°(=360×700/1000)となる。
【0120】
したがって、108°〜252°の範囲内にパーキング角θを設定すれば、偏摩耗度を小さくすることが可能となる。本実施形態では、上記範囲(108°〜252°)の中央値(180°)にパーキング角θを設定する。このパーキング角はA0+RA/2の部分外面に対応する。
【0121】
なお、パルスの測定開始と測定終了との間に対応する部分外周面の範囲内のどこが特に膨らんでいるかは分からないが、着検板サイズのパルスの場合、どこをとっても膨らみ具合は大きく変わらないとは考えられる。したがって、上記例の場合(180°)とは異なり、パルス測定開始時のパルス値(300)とパルス測定終了時のパルス値(7000)との中央値(500)以外の値に対応するパーキング角を選んでも構わない。
【0122】
同様に、ステップS38の判断結果が、測定パルス値ΔB>測定パルス値ΔAの場合(No)、パーキング角算出部62は、検出開始値B0をシーブ一回転分のパルス値で割った余り(RB)の1/2の値と検出開始値Bとの和(B0+RB/2)をパーキング角θbとして算出する(ステップS40)。この算出されたパーキング角(A0+RA/2)は記憶装置40に記憶される。
【0123】
次に、パーキング動作確認部51により、エレベータの動作モードを診断し、パーキング動作へと切り替わったか否かを判断する(ステップS41)。
【0124】
ステップS41でパーキング動作へと切り替わったと判断された場合(Yes)、記憶装置40に記憶されたパーキング角がモーター制御部53に与えられ、モーター制御部53によりモーター6の停止時のモーター軸の回転角度が制御され、上記パーキング角に対応する位置に乗りかご1は待機(パーキング)される(ステップS42)。
【0125】
なお、ステップS39またはステップS40でパーキング角を算出する前に、パーキング動作へと切り替わる可能性もある。このような状況に対応するためには、例えば、第2の実施形態と第3の実施形態とを組み合わせたエレベータ装置を用いればよい。このようなエレベータ装置によれば、ステップS42において、記憶装置40にステップS39またはステップS40で算出されたパーキング角が無い場合、図11のステップS22に進み、偏磨耗を抑制できる位置に乗りかご1をパーキングさせることができる。
【0126】
また、本実施形態では、シーブ偏平度の測定のために、二つの着検板9a,9bの検出信号(パルス信号)を測定したが、乗りかご1が一定走行中に通過する全ての着検板に対して検出信号(パルス信号)を測定しても構わない。この場合、最大のパルス数に対応するパーキング角を設定して乗りかご1をパーキングさせる。
【0127】
また、着検板の検出信号(パルス信号)の検出は、乗りかご1の通常の走行中以外にも行っても構わない。例えば、着検板の検出信号(パルス信号)を検出するための運転を実施し、その時に検出を行っても構わない。
【0128】
以上述べたように本実施形態によれば、互いに階が異なる二つ以上の着検板の検出信号(パルス信号)の相違に基づいてパーキング角度を決定することにより、シーブ4の偏磨耗の進行を抑制でき、シーブ寿命の長期化、安定化を図ることができるようになる。
【0129】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0130】
1…乗りかご、2…ロープ、3…カウンタウェイト、4…シーブ、5…昇降路、6…モーター、7…制御盤、8…ガイドレール、8a…かごガイドレール、8b…カウンタウェイトガイドレール、9,9a,9b…着検板、10…遠隔保守端末装置、20…シーブ磨耗度自動測定部(シーブ摩耗度測定手段)、21…パルスジェネレータ、22…パルスカウント部、23…磨耗度測定部、31…シーブ磨耗度算出部(シーブ摩耗度算出手段)、32…シーブ磨耗差算出部(シーブ摩耗度差算出手段)、33…異常シーブ摩耗度判断部(判断手段)、34…シーブ寿命予測部(シーブ寿命予測手段)、35…シーブ寿命差算出部(シーブ寿命差算出手段)、36…異常シーブ寿命判断部、37…異常値発報部(発報手段)、37a…異常摩耗度発報部、37b…シーブ寿命発報部、38…摩耗度予測曲線計算部、39…走行データ測定部、40…記憶装置、50…パーキング位置設定装置(偏磨耗度抑制手段)、51…パーキング動作確認部、52…パーキング角度選択部、53…モーター制御部、54…パーキング角算出部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エレベータのかごと、
前記かごに繋がれたロープと、
前記ロープが巻き掛けられたシーブと、
前記シーブの磨耗度を測定するシーブ磨耗度測定手段と、
前記かごの走行履歴に関するデータに基づいて、前記シーブの磨耗度を算出するシーブ磨耗度算出手段と、
前記シーブ磨耗度測定手段により測定した前記シーブの磨耗度と、前記シーブ磨耗度算出手段により算出した前記シーブの磨耗度との磨耗度差を算出するシーブ磨耗度差算出手段と、
前記磨耗度差が所定値を超えた場合、前記シーブに異常な磨耗が生じていると判断する判断手段と、
前記判断手段により、前記シーブに異常な磨耗が生じていると判断された場合、当該異常を発報する発報手段と
を具備してなることを特徴とするエレベータ装置。
【請求項2】
前記シーブ磨耗度算出手段により算出した前記シーブの磨耗度と、前記シーブの初期径とに基づいて、前記シーブの寿命を予測するシーブ寿命予測手段と、
前記シーブ寿命予測手段により予測された前記シーブの最新の寿命と、当該最新の寿命よりも前に前記シーブ寿命予測手段により予測された寿命との寿命差を算出するシーブ寿命差算出手段とをさらに具備してなり、
前記判断手段は、さらに、前記寿命差が所定値を超えた場合、前記シーブに異常な寿命変化が生じていると判断し、
前記発報手段は、さらに、前記判断手段により、前記シーブに異常な寿命変化が生じていると判断された場合、当該異常を発報することを特徴とする請求項1に記載のエレベータ装置。
【請求項3】
前記シーブの偏磨耗を抑制する偏磨耗抑制手段をさらに具備してなることを特徴する請求項1に記載のエレベータ装置。
【請求項4】
前記偏磨耗抑制手段は、前記かごを待機させる時に、前記ロープと接触する前記シーブの外周面のうち、摩耗度が高い外周面を避けて摩耗度が低い外周面が前記ロープから荷重を受けるように、前記シーブを回転させることを特徴とする請求項3に記載のエレベータ装置。
【請求項5】
前記偏磨耗抑制手段は、
前記かごを待機させる毎に、前記かごを待機させた時の前記シーブの回転角度と前記回転角度での前記かごの待機時間とを記憶するための記憶手段と、
前記記憶手段に記憶されている前記回転角度のうち、前記記憶手段に記憶されている最も短い待機時間に対応する回転角度を選択する選択手段と、
前記かごを待機させる時に、前記選択手段により選択された前記回転角度となるように、前記シーブを回転させる回転手段と
を具備してなることを特徴とする請求項4に記載のエレベータ装置
【請求項6】
前記かごの走行と同期してパルス信号を発生するパルス信号発生手段と、
前記降路内に第1および第2の階床に対応する位置にそれぞれ設置された第1および第2の着検板と、
前記第1および第2の着検板を検出する検出手段とをさらに具備してなり、
前記偏磨耗抑制手段は、
前記床検出手段が前記第1の着検板を検出してから前記第1の着検板を検出しなくなるまでの間に、前記パルス発生手段が発生するパルス信号の第1のパルス数と、前記検出手段が前記第2の着検板を検出してから前記第2の着検板を検出しなくなるまでの間に、前記パルス発生手段が発生するパルス信号の第2のパルス数とを記憶する記憶手段と、
前記記憶手段により記憶された前記第1および第2のパルス数とに基づいて、前記シーブの偏磨耗が減少するように、前記かごを待機させる時の前記シーブの回転角度を算出する回転角度算出手段と、
前記かごを待機させる時に、前記回転角度算出手段により算出された前記回転角度となるように、前記シーブを回転させる回転手段と
を具備してなることを特徴する請求項4に記載のエレベータ装置。
【請求項7】
前記回転角算度出手段は、前記第1および第2のパルス数の一方が他方よりも大きい場合、大きい方のパルス数を、前記シーブの1回転分のパルス数で割った時の余りを算出し、該余りに基づいて、前記かごを待機させる時の前記シーブの回転角度を算出することを特徴とする請求項6に記載のエレベータ装置。
【請求項8】
前記シーブはウレタン製であることを特徴とする請求項1に記載のエレベータ装置。
【請求項9】
前記かごの走行履歴に関するデータは、前記かごの走行距離、前記かごの走行回数および前記かごの走行時間の少なくとも一つを含むことを特徴とする請求項1に記載のエレベータ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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