説明

エレベータ

【課題】エレベータの乗りかごと吊り合い錘のバランス調整を、無負荷で行なう場合の作業効率を向上させる。
【解決手段】平均トルク計算装置11は、無負荷状態の乗りかご8の下降運転時および上昇運転時における定常走行状態のトルク指令値の平均値をそれぞれ計算する。走行終了後、吊り合いトルク計算装置12は、下降運転時のトルク指令値の平均値と上昇運転時のトルク指令値の平均値との平均トルクである吊り合いトルクを計算する。荷重換算装置13は、計算した吊り合いトルクを荷重値へ換算する。ウエイト量計算装置14は、換算済みの荷重値とバランスロード相当の積載値との差分を、C/W9の重量の所要調整量として計算する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吊り下げ式の乗りかごと吊り合い錘のバランス調整機能を有するエレベータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エレベータの乗りかごと吊り合い錘のバランスを調整する、つまり、バランスロード時の乗りかごの重さと吊り合い錘の重さを同じとするために、乗りかごにバランスロード相当のテストウエイトを積載してバランス調整を行なっていた。この場合、バランス調整のためにテストウエイトが必要となり、当該テストウエイトの準備、建物内への搬入、乗りかごへの積み下ろし作業が大きな負担となる。
【0003】
また、テストウエイトを用いずに乗りかごと吊り合い錘のバランスを調整する方法として、例えば特許文献1に開示されるように、無負荷状態の乗りかごの上昇運転時および下降運転時のそれぞれの電流値を計測し、これらの計測結果の平均値と予め調査した電流推奨値との比較を行ない、この比較により得られた差分値に換算係数を掛けることで吊り合い錘のウエイト調整値を算出するものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−306557号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述した、テストウエイトを用いない調整方法において、運転時に現場で計測する電流値との比較のための電流推奨値は、エレベータの電動機の電流特性を事前調査することで得られるもので、電動機の種類ごとに電流計測値との比較用のテーブル表を事前に作成する必要があり、このテーブル表作成のための時間と手間を要してしまう。また、運転時に計測する電流値は、上昇運転および下降運転を数回繰り返した際の平均値であるため、この電流値の計測にも時間と手間を要してしまう。これらに理由により、無負荷状態の乗りかごと吊り合い錘のバランス調整にかかる作業効率が不十分であった。
【0006】
そこで、本発明の目的は、エレベータの乗りかごと吊り合い錘のバランス調整を、無負荷で行なう場合の作業効率を向上させることが可能になるエレベータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち、本発明に係わるエレベータは、シーブに巻き掛けられてロープを介してカウンタウエイトと連結されて吊り下げられる乗りかごと、前記シーブを回転させる巻き上げ機と、前記乗りかごの走行速度の指令値を設定する速度指令手段と、前記巻き上げ機の回転速度を検出する速度検出手段と、前記速度指令手段が設定した速度指令値と前記速度検出手段が検出した速度検出値との偏差に基づいて前記巻き上げ機の回転速度制御のためのトルク指令値信号を出力するトルク指令出力手段と、前記トルク指令出力手段が出力した信号で示されるトルク指令値をもとに前記巻き上げ機への供給電流を制御する電流制御手段と、前記トルク指令出力手段が出力したトルク指令値を検出するトルク指令検出手段と、前記乗りかごを無負荷状態にて一往復運転させた際の上昇運転の定常走行時において前記トルク指令検出手段により検出したトルク指令値の平均値を計算し、前記一往復運転における下降運転の定常走行時において前記トルク指令検出手段により検出したトルク指令値の平均値を計算する平均トルク計算手段と、前記平均トルク計算手段による、前記上昇運転の定常走行時における計算値と前記下降運転の定常走行時における計算値との平均値を計算することで吊り合いトルクを計算する吊り合いトルク計算手段と、前記吊り合いトルク計算手段により計算した吊り合いトルクを荷重値に換算する荷重換算手段と、前記荷重換算手段により換算した荷重値と所定のバランスロード積載値との差分を計算することで前記カウンタウエイトの重量の調整値を計算する重量計算手段とを備えたことを特徴とする。
【0008】
また、本発明に係わるエレベータは、シーブに巻き掛けられてロープを介してカウンタウエイトと連結されて吊り下げられる乗りかごと、前記シーブを回転させる巻き上げ機と、前記乗りかごの走行速度の指令値を設定する速度指令手段と、前記巻き上げ機の回転速度を検出する速度検出手段と、前記速度指令手段が設定した速度指令値と前記速度検出手段が検出した速度検出値との偏差に基づいて前記巻き上げ機の回転速度制御のためのトルク指令値信号を出力するトルク指令出力手段と、前記トルク指令出力手段が出力した信号で示されるトルク指令値をもとに前記巻き上げ機への供給電流を制御する電流制御手段と、前記トルク指令出力手段が出力したトルク指令値を検出するトルク指令検出手段と、前記乗りかごの昇降路における位置を検出するかご位置検出手段と、前記かご位置検出手段により検出した位置が、吊り合いトルクの計算のために位置する範囲である、昇降路の最上階と最下階との間の中間位置を含む所定の範囲内である場合に、前記速度指令手段により設定する走行速度の指令値を第1の速度値に切り替え、前記かご位置検出手段により検出した位置が前記所定の範囲内でない場合に、前記速度指令手段により設定する走行速度の指令値を前記第1の速度より速い第2の速度値に切り替える速度切り替え手段と、前記乗りかごの上昇運転時や下降運転時において前記トルク指令検出手段により検出したトルク指令値の平均値を計算する平均トルク計算手段と、前記速度切り替え手段により、前記速度指令手段により設定する走行速度の指令値を前記第1の速度値に切り替えている場合における、前記平均トルク計算手段による、前記乗りかごの上昇運転時の計算値と前記乗りかごの下降運転時の計算値との平均値を計算することで前記吊り合いトルクを計算する吊り合いトルク計算手段と、前記吊り合いトルク計算手段により計算した吊り合いトルクを荷重値に換算する荷重換算手段と、前記荷重換算手段により換算した荷重値と所定のバランスロード積載値との差分を計算することで前記カウンタウエイトの重量の調整値を計算する重量計算手段とを備えたことを特徴とする。
【0009】
また、本発明に係わるエレベータは、シーブに巻き掛けられてロープを介してカウンタウエイトと連結されて吊り下げられる乗りかごと、前記シーブを回転させる巻き上げ機と、前記乗りかごの走行速度の指令値を設定する速度指令手段と、前記巻き上げ機の回転速度を検出する速度検出手段と、前記速度指令手段が設定した速度指令値と前記速度検出手段が検出した速度検出値との偏差に基づいて前記巻き上げ機の回転速度制御のためのトルク指令値信号を出力するトルク指令出力手段と、前記トルク指令出力手段が出力した信号で示されるトルク指令値をもとに前記巻き上げ機への供給電流を制御する電流制御手段と、前記トルク指令出力手段が出力したトルク指令値を検出するトルク指令検出手段と、乗りかごの運転モードを、呼び登録にしたがって前記乗りかごを昇降させる通常運転モード、および、前記呼び登録の有無に関わらず前記乗りかごを前記通常運転モードにおける定格速度と比較して低い定格速度で手動昇降させる点検運転モードの間で切り替える運転モード切り替え手段と、前記乗りかごの昇降路における位置を検出するかご位置検出手段と、前記乗りかごの運転モードが前記運転モード切り替え手段により前記点検運転モードに切り替えられた場合において、前記かご位置検出手段により検出した位置が最上階近辺である際に前記トルク指令検出手段により検出したトルク指令値と前記かご位置検出手段により検出した位置が最下階近辺である際に前記トルク指令検出手段により検出したトルク指令値との平均値を計算することで吊り合いトルクを計算する吊り合いトルク計算手段と、前記吊り合いトルク計算手段により計算した吊り合いトルクを荷重値に換算する荷重換算手段と、前記荷重換算手段により換算した荷重値と所定のバランスロード積載値との差分を計算することで前記カウンタウエイトの重量の調整値を計算する重量計算手段とを備えたことを特徴とする。
【0010】
また、本発明に係わるエレベータは、シーブに巻き掛けられてロープを介してカウンタウエイトと連結されて吊り下げられる乗りかごと、前記シーブを回転させる巻き上げ機と、前記乗りかごの走行速度の指令値を設定する速度指令手段と、前記巻き上げ機の回転速度を検出する速度検出手段と、前記速度指令手段が設定した速度指令値と前記速度検出手段が検出した速度検出値との偏差に基づいて前記巻き上げ機の回転速度制御のためのトルク指令値信号を出力するトルク指令出力手段と、前記トルク指令出力手段が出力した信号で示されるトルク指令値をもとに前記巻き上げ機への供給電流を制御する電流制御手段と、前記トルク指令出力手段が出力したトルク指令値を検出するトルク指令検出手段と、前記乗りかごの昇降路における位置を検出するかご位置検出手段と、前記巻き上げ機を制動動作するブレーキ装置と、吊り合いトルクの検出のために、前記かご位置検出手段により検出した位置が最上階と最下階との中間位置に位置するように前記速度指令手段により設定する走行速度の指令値を切り替え、当該切り替えにより、前記かご位置検出手段により検出した位置が前記中間位置となった場合に、前記速度指令手段により設定する走行速度の指令値をゼロに切り替える速度切り替え手段と、前記速度切り替え手段により前記速度指令手段により設定する指令値がゼロとなった場合に、前記ブレーキ装置による制動動作を解除するブレーキ制御手段と、前記ブレーキ装置による制動動作が解除された場合に、前記トルク指令検出手段により検出したトルク指令値を検出することで前記吊り合いトルクを計算する吊り合いトルク計算手段と、前記吊り合いトルク計算手段により計算した吊り合いトルクを荷重値に換算する荷重換算手段と、前記荷重換算手段により換算した荷重値と所定のバランスロード積載値との差分を計算することで前記カウンタウエイトの重量の調整値を計算する重量計算手段とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、エレベータの乗りかごと吊り合い錘のバランス調整を、無負荷で行なう場合の作業効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の第1の実施形態におけるエレベータの構成例を示す図。
【図2】本発明の第1の実施形態におけるエレベータによるバランス調整のための処理動作の一例を示すフローチャート。
【図3】本発明の第1の実施形態におけるエレベータの乗りかごを通常運転で一往復運転させた際のトルク波形の一例を示す図。
【図4】本発明の第2の実施形態におけるエレベータの構成例を示す図。
【図5】本発明の第2の実施形態におけるエレベータによるバランス調整に関するトルク指令平均値の計算のための処理動作の一例を示すフローチャート。
【図6】本発明の第3の実施形態におけるエレベータの構成例を示す図。
【図7】本発明の第3の実施形態におけるエレベータによるバランス調整に関する吊り合いトルクの計算のための処理動作の一例を示すフローチャート。
【図8】本発明の第3の実施形態におけるエレベータの乗りかごを点検運転で一往復運転させた際のトルク波形の一例を示す図。
【図9】本発明の第3の実施形態におけるエレベータの構成例を示す図。
【図10】本発明の第4の実施形態におけるエレベータによるバランス調整に関する吊り合いトルクの計算のための処理動作の一例を示すフローチャート。
【図11】本発明の第5の実施形態におけるエレベータの構成例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下図面により本発明の実施形態について説明する。
(第1の実施形態)
まず、本発明の第1の実施形態について説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態におけるエレベータの構成例を示す図である。
図1に示すように、本発明の第1の実施形態におけるエレベータは、速度指令装置1、速度制御装置2、電流制御装置3、電流検出装置4、速度検出装置6、巻上げ電動機であるモータ5、シーブ7、乗りかご8、吊り合い錘(カウンタウエイト、C/W)9、トルク指令検出装置10、平均トルク計算装置11、吊り合いトルク計算装置12、荷重換算装置13、ウエイト量計算装置14、BL(バランスロード)積載設定装置15を備える。
【0014】
乗りかご8は当該乗りかご8に対応して設けられるシーブ7に巻き掛けられたロープを介してC/W9と連結されており、モータ5の駆動によるシーブ7の回転に伴い、C/W9とともに互いに上下反対方向に昇降する。
【0015】
ここで、本実施形態の概要について説明する。このエレベータは、乗りかご8とC/W9とのアンバランスを吊り合いトルクと呼ばれる補償トルクで補償しながら走行しており、乗りかご8とC/W9とのバランスポイントが調整されている場合には、乗りかご8内に乗客や荷物が積載されていない状態であるNL(ノーロード)状態時に荷重換算値でBL相当の吊り合いトルクを乗りかご8側に出力することになる。
【0016】
この関係を言い換えると、NL状態の吊り合いトルクの荷重換算値がBL相当であれば、乗りかご8とC/W9とのバランスポイントが調整されていると言える。よって、乗りかご8とC/W9とのバランスポイント調整に必要な当該C/W9の調整ウエイト量は、NL状態の吊り合いトルクの荷重換算値とBL相当の荷重値との差分を計算することで決定できる。
【0017】
速度指令装置1は乗りかご8の予め定められた走行パターンに従った速度指令値を示す信号を出力する。
速度検出装置6はモータ5の回転速度を検出する。速度制御装置2は、速度指令装置1からの速度指令値と速度検出装置6が検出した速度値との偏差を計算し、この偏差がなくなるようにモータ5の回転速度制御のためのトルク指令値を示す信号を出力する。
【0018】
電流制御装置3は、速度制御装置2からの出力値をもとにモータ5への供給電流値の目標値を決定する。
電流検出装置4はモータ5への供給電流値を検出し、この値を示す信号を電流制御装置3に出力する。
【0019】
電流制御装置3は電流検出装置4が検出した供給電流値が供給電流値の目標値となるようにモータ5への供給電流の制御値をコントロールする。
トルク指令検出装置10は、速度制御装置2が出力するトルク指令値を所定時間間隔で検出する。平均トルク計算装置11は、NL状態の乗りかご8の上昇運転時における定常走行状態、つまり定格速度による走行状態においてトルク指令検出装置10によって所定時間間隔で検出したトルク指令値の平均値、およびNL状態の乗りかご8の下降運転時における定常走行状態においてトルク指令検出装置10によって所定時間間隔で検出したトルク指令値の平均値をそれぞれ計算する。
【0020】
吊り合いトルク計算装置12は、平均トルク計算装置11による前述した上昇運転時における計算値と下降運転時における計算値とを平均した値を吊り合いトルクとして計算する。
荷重換算装置13は、吊り合いトルク計算装置12によって計算した吊り合いトルクを所定の換算方程式によって荷重値へ換算する。
【0021】
BL積載設定装置15は、所定のBL相当の積載値を設定する。ウエイト量計算装置14は、荷重換算装置13によって換算された荷重値とBL積載設定装置15によって設定されるBL相当積載値との差分をC/W9の重量の所要調整量として計算する。
【0022】
次に、図1に示した構成のエレベータの乗りかご8とC/W9とのバランス調整のための処理動作について説明する。図2は、本発明の第1の実施形態におけるエレベータによるバランス調整のための処理動作の一例を示すフローチャートである。図3は、本発明の第1の実施形態におけるエレベータの乗りかごを通常運転で一往復運転させた際のトルク波形の一例を示す図である。図3に示したトルク波形は、ロープ自重によるトルク変動のないエレベータの走行波形であるとする。
【0023】
ここで、処理動作の概要を説明する。このエレベータでは、まず、乗りかご8を最上階と最下階の間で一往復させて吊り合いトルクの計算を行ない、次に当該吊り合いトルクの荷重換算を行ない、次にC/W9の重量の所要調整量の計算を行なう。
【0024】
次に処理動作の詳細を説明する。初期状態として、乗りかご8はNL状態で最上階に位置しているとする。この状態で、速度指令装置1は、NL状態の乗りかご8を最上階から最下階に走行させるための速度指令を出力する。この走行の定格速度は、吊り合いトルクの計算結果への振動による影響を少なくするため、乗客を乗せる通常運転時の定格速度より低いとする。
【0025】
この状態で、平均トルク計算装置11は、速度制御装置2からのトルク指令値のトルク指令検出装置10による検出結果をもとに乗りかご1の走行状態が定常走行状態であるか否かを検出し、定常走行状態であることを検出すると、定常走行開始から終了までの間、トルク指令検出装置10による検出結果である所定時間間隔のトルク指令値を取得し、この取得結果の平均値TmAveDNを計算する(ステップS1)。
【0026】
走行中はレールからの振動やノイズの影響を受けやすいので、前述したように、定常走行の開始から終了までにわたってトルク指令値を計算して平均化することで、最上階と最下階の中間位置での一点でトルク指令値の検出を行なう場合と比較して正確な吊り合いトルクを検出できる。
【0027】
次に、速度指令装置1は、NL状態の乗りかご8を最下階から最上階に走行させるための速度指令を出力する。この走行の定格速度は、下降運転時と同様、乗客を乗せる通常運転時の定格速度より低い。この状態で、トルク指令検出装置10は、速度制御装置2からのトルク指令値のトルク指令検出装置10による検出結果をもとに乗りかご1の走行状態が定常走行状態であるか否かを検出し、定常走行状態であることを検出すると、定常走行開始から終了までの間、下降運転時と同様に、トルク指令検出装置10による検出結果である所定時間間隔のトルク指令値を取得し、この取得結果の平均値TmAveUPを計算する(ステップS2)。
【0028】
走行終了後、吊り合いトルク計算装置12は、計算済みのTmAveUPとTmAveDNとの平均トルクである吊り合いトルクTmDifを以下の式(1)にしたがって計算する(ステップS3)。
【0029】
TmDif=(TmAveUP+TmAveDN)/2 …式(1)
このように、上昇運転時のトルクの平均値TmAveUPおよび下降運転時のトルクの平均値TmAveDNの平均値を計算することで吊り合いトルクTmDifを計算すると、上昇運転時と下降運転時のそれぞれで発生する走行ロスが図3に示すように互いに打ち消し合うので、正確な吊り合いトルクTmDifを計算できる。
【0030】
次に、荷重換算装置13は、吊り合いトルク計算装置12により計算した吊り合いトルクの荷重換算を行なう(ステップS4)。トルクと力の関係は、トルク=回転軸からの距離×力で表される。よって、モータシーブ径をD[m]とし、吊り合いトルクTmDifの荷重換算値をWT_Dif[kg]とすると、吊り合いトルクTmDif[N・m]は、以下の式(2)で表される。
【0031】
TmDif=(D/2)×(WT_Dif×9.8) …式(2)
この式(2)を変形すると、以下の式(3)となる。
【0032】
WT_Dif=TmDif/(D/2)×9.8 …式(3)
となる。
よって上述の式(3)の右辺に計算済みの吊り合いトルクTmDifおよびシーブ径Dを代入することで吊り合いトルクTmDifの荷重換算値WT_Difが決定する。
【0033】
最後に、ウエイト量計算装置14は、BL積載設定装置15が設定するBL相当の積載値WT_BLを取得し、前述のように計算済みの荷重換算値WT_Difと取得済みのBL相当の積載値WT_BLとの差分、つまり、乗りかご8とC/W9とのバランス調整のためのC/W9の重量の所要調整量WT_ADjを以下の式(4)にしたがって計算する(ステップS5)。
【0034】
WT_ADj=WT_Dif−WT_BL …式(4)
この計算した調整量WT_ADjが正の値である場合は、この値はC/W9に積み増すことが必要な重量である。また、計算した調整量WT_ADjが負の値である場合は、この値はC/W9から下ろすことが必要な重量である。
【0035】
以上説明したように、本発明の第1の実施形態におけるエレベータでは、乗りかご8とC/W9とのバランスポイントを調整する際に、従来のようなテストウエイトの積載や電流計測を必要とせずに、また、乗りかご8を一往復運転させるだけでC/W9の重量の調整値を正確に求めることができるため、調整のための工数および費用を削減できる。よって、エレベータの無負荷状態の乗りかごと吊り合い錘のバランス調整にかかる作業効率を大幅に向上させることができる。
【0036】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。なお、以下の各実施形態における構成のうちは図1に示したものと同一部分の説明は省略する。
図4は、本発明の第2の実施形態におけるエレベータの構成例を示す図である。
図4に示すように、本発明の第2の実施形態におけるエレベータでは、第1の実施形態と比較して、ガバナPG16、かご位置検出装置17および速度切替装置18をさらに備える。
【0037】
かご位置検出装置17は、ガバナPG16より出力されるパルスデータをもとに生成されるかご位置情報を検出し、この検出結果を速度切替装置18および平均トルク計算装置11に出力する。
【0038】
速度切替装置18は、かご位置検出装置17によって検出されたかご位置によって速度指令装置1へ速度切替指令を出力する。
また、平均トルク計算装置11は、かご位置検出装置17によって検出されたかご位置によってトルク平均計算処理の切替処理を行なう。
【0039】
この第2の実施形態では、第1の実施形態で説明した、トルク指令値の検出の効率をより効率的に行なうためにトルク検出位置を限定し、トルク検出を行わないかご位置では走行速度を高速に切替える。
【0040】
具体的には、かご位置がロープ自重アンバランスの影響を受けない位置である中間位置およびその近傍にある場合には走行速度を低速に切替えてトルク検出を行ない、それ以外の位置ではトルク検出を行なわずに乗りかご8を高速で走行させる。なお、トルク検出は、精度を高めるため第1の実施形態と同様に平均トルク計算装置11による平均値処理を行なうこととする。
【0041】
つまり乗りかご8の昇降行程をX、平均トルク計算装置11による平均値処理エリアをαとすると、かご位置がX/2±αの範囲内にある場合に平均値処理を行なうことになる。
【0042】
次に、トルク平均値の具体的な計算処理について説明する。図5は、本発明の第2の実施形態におけるエレベータによるバランス調整に関するトルク指令平均値の計算のための処理動作の一例を示すフローチャートである。ここでは、下降運転時のトルク指令平均値の計算のみの説明を行なうが上昇運転時は走行開始後に同様の手順でトルク指令平均値を計算できる。
初期状態として、乗りかご8はNL状態で最上階付近に位置しているとする。この状態で、速度指令装置1は、NL状態の乗りかご8の下降運転の走行指令を出力する(ステップS11)。走行開始後、速度切替装置18は、かご位置検出装置17により検出したかご位置がX/2±αの範囲内であるか否かを判別する(ステップS12)。
【0043】
かご位置がX/2±αの範囲内である場合には(ステップS12のYES)、速度切替装置18は、乗りかご8の速度を乗客を乗せる通常運転時の定格速度より低い速度である低速とする指令を速度指令装置1に出力する。このように乗りかご8の速度を通常運転時の定格速度より低くするのは、レールから乗りかご8への振動を少なくしてトルク指令値の検出誤差を抑制するためである。
【0044】
また、この場合は、平均トルク計算装置11は、かご位置がX/2±αの範囲内であるとの検出結果をかご位置検出装置17から得ることになる。平均トルク計算装置11は、かご位置がX/2±αの範囲内との検出結果がかご位置検出装置17から得られた場合に限り、トルク指令検出装置10による検出結果をもとにしたトルクの平均値TmAveDNの計算を行なう(ステップS13)。
【0045】
一方、かご位置がX/2±αの範囲内でない場合には(ステップS12のNO)、速度切替装置18は、乗りかご8の速度を高速とする指令を速度指令装置1に出力する。この速度は、前述したような、かご位置がX/2±αの範囲内である場合に出力する指令で示される速度である低速より速く、乗客を乗せる通常運転時の定格速度と同じである。
【0046】
また、この場合は、平均トルク計算装置11は、かご位置がX/2±αの範囲内でないとの検出結果をかご位置検出装置17から得ることになる。この場合、平均トルク計算装置11は、トルク指令検出装置10による検出結果をもとにしたトルクの平均値TmAveDNの計算は行なわない(ステップS14)。
【0047】
本実施形態では、これらの処理を上昇運転時にも行ない、下降及び上昇運転において得られたトルクの平均値TmAveDNおよびTmAveUPをもとに、第1の実施形態で説明したステップS3の処理である、吊り合いトルク計算装置12による吊り合いトルクの計算から、ステップS5の処理である、C/W9の重量の所要調整値の決定までの処理がなされることになる。
【0048】
以上説明したように、本発明の第2の実施形態におけるエレベータでは、第1の実施形態と比較して、吊り合いトルク算出に必要である、速度制御装置2からのトルク指令値の検出ポイントを限定し、この検出ポイント以外のかご位置では走行速度を高速とするので、第1の実施形態に比べ、乗りかご8とC/W9とのバランス調整のための作業所要時間の更なる短縮が見込める。特に昇降行程が長い物件では大きな効果を発揮する。
【0049】
(第3の実施形態)
次に、本発明の第3の実施形態について説明する。図6は、本発明の第3の実施形態におけるエレベータの構成例を示す図である。
図6に示すように、本発明の第3の実施形態におけるエレベータは、第1の実施形態と比較して、ガバナPG16、かご位置検出装置17および運転モード切替装置19をさらに備える一方で、平均トルク計算装置11は備えない。
【0050】
かご位置検出装置17は、ガバナPG16より出力されるパルスデータをもとに生成されるかご位置情報を検出し、この検出結果を速度指令装置1および吊り合いトルク計算装置12に出力する。
【0051】
運転モード切替装置19は、図示しない操作器への作業員による操作にしたがい、乗りかご8の運転モードを呼び登録にしたがって乗りかご8を昇降させる通常運転モード、および、呼び登録の有無に関係なく乗りかご8の図示しない点検運転操作器の手動操作にしたがって乗りかご8を通常運転モード時の定格速度より低い定格速度である点検速度で昇降させる点検運転モードのうちいずれかの運転モードを設定する装置である。速度指令装置1は、この設定したモードにしたがった速度指令を行なう。
【0052】
また、点検運転操作器は、作業員により操作するための上昇運転スイッチおよび下降運転スイッチを備える。上昇運転スイッチおよび下降運転スイッチは、切り替え状態をオン状態とオフ状態のとの間で切り替えることができる。
【0053】
点検運転モード時に上昇運転スイッチが作業員の操作によりオン状態となると乗りかご8が点検速度で上昇し、当該上昇運転スイッチが再度の操作によりオフ状態となると乗りかご8が停止する。
【0054】
また、点検運転モード時に下降運転スイッチが作業員の操作によりオン状態となると乗りかご8が点検速度で下降し、当該下降運転スイッチが再度の操作によりオフ状態となると乗りかご8が停止する。
【0055】
図7は、本発明の第3の実施形態におけるエレベータによるバランス調整に関する吊り合いトルクの計算のための処理動作の一例を示すフローチャートである。図8は、本発明の第3の実施形態におけるエレベータの乗りかごを点検運転で一往復運転させた際のトルク波形の一例を示す図である。
第3の実施形態では、第1の実施形態で説明したステップS1からS3の処理である吊り合いトルク検出までの処理に代えて、走行ロスが少ない点検運転時のトルク指令値を吊り合いトルクとして検出する。
【0056】
初期状態として、乗りかご8はNL状態で最上階より下に位置しており、運転モードは通常運転モードであるとする。この状態において、運転モード切替装置19は、作業員による操作にしたがって運転モードを点検運転モードに設定すると、この旨の通知信号を速度指令装置1および吊り合いトルク計算装置12に出力する(ステップS21)。この時点では、点検運転操作器の上昇運転スイッチおよび下降運転スイッチはともにオフ状態である。
【0057】
速度指令装置1は、運転モード切替装置19からの通知信号を受け、かつ、点検運転操作器の上昇運転スイッチが作業員の操作によりオン状態となると、NL状態の乗りかご8が点検速度で最上階に向かうように速度指令を行なう。
そして、乗りかご8が点検速度で最上階近辺に到達することで、かご位置検出装置17により検出したかご位置が当該最上階近辺となり、かつ、点検運転操作器の上昇運転スイッチが作業員の操作によりオフ状態に戻ると、吊り合いトルク計算装置12は、この時点でトルク指令検出装置10により検出したトルク指令値を最上階近辺の走行トルクTmINS_TOPとして検出する(ステップS22)。
【0058】
また、前述したように、かご位置検出装置17により検出したかご位置が当該最上階近辺となり、かつ、点検運転操作器の上昇運転スイッチが作業員の操作によりオフ状態に戻った上で、点検運転操作器の下降運転スイッチが作業員の操作によりオン状態になると、速度指令装置1は、乗りかご8が点検速度で最下階に向かうように速度指令を行なう。
そして、乗りかご8が点検速度で最下階近辺に到達することで、かご位置検出装置17により検出したかご位置が当該最下階近辺となり、かつ、点検運転操作器の下降運転スイッチが作業員の操作によりオフ状態に戻ると、吊り合いトルク計算装置12は、この時点でトルク指令検出装置10により検出したトルク指令値を最下階近辺の走行トルクTmINS_BOTとして検出する(ステップS23)。
【0059】
図8に示すように、TmINS_TOPとTmINS_BOTは中間位置を中心に、それぞれ同じ量のロープ自重補償トルクTmCMPを含んでいる。吊り合いトルク計算装置12は、TmINS_TOPとTmINS_BOTの平均値である吊り合いトルクTmDifを以下の式(5)にしたがって計算する(ステップS24)。
【0060】
TmDif=(TmINS_TOP+TmINS_BOT)/2 …式(5)
このように、最上階付近のトルク指令値および最下階付近のトルク指令値を平均してロープ自重補償トルクTmCMPを相殺することができるので、正確な吊り合いトルクTmDifが算出できる。
この後は、第1の実施形態で説明したステップS4以降の処理がなされて、最終的にC/W9の重量の所要調整量が決定されることになる。
【0061】
以上説明したように、本発明の第3の実施形態におけるエレベータでは、点検運転時のトルク指令を吊り合いトルクとして検出するので、走行ロスの少ない条件で検出が行なえる。よって第1の実施形態と比較して、より精度の高い吊り合いトルクが検出できるため、乗りかご8とC/W9とのバランスポイントの精度向上が望める。
【0062】
(第4の実施形態)
次に、本発明の第4の実施形態について説明する。図9は、本発明の第4の実施形態におけるエレベータの構成例を示す図である。
図9に示すように、本発明の第4の実施形態におけるエレベータは、第3の実施形態と比較して、速度切替装置18をさらに備える。また、この実施形態では、モータ5の機械的な制動動作を行なうためのブレーキ装置20およびブレーキ制御装置21についても説明する。
【0063】
かご位置検出装置17は、ガバナPG16より出力されるパルスデータをもとに生成されるかご位置情報を検出し、この検出結果を速度切替装置18に出力する。
運転モード切替装置19は、図示しない操作器への作業員による操作にしたがい、乗りかご8の運転モードを呼び登録にしたがって乗りかご8を昇降させる通常運転モード、および、吊り合いトルク検出のために呼び登録の有無に関係なく乗りかご8の点検運転操作器の手動操作にしたがって乗りかご8を点検速度で昇降させる運転モードである吊り合いトルク検出モードのうちいずれかの運転モードを設定する装置である。この運転操作器は第3の実施形態と同様に上昇運転スイッチおよび下降運転スイッチを備える。
【0064】
図10は、本発明の第4の実施形態におけるエレベータによるバランス調整に関する吊り合いトルクの計算のための処理動作の一例を示すフローチャートである。
第4の実施形態では、第1の実施形態で説明したステップS1からS3の処理である吊り合いトルク検出までの処理に代えて、昇降路の中間位置にNL状態の乗りかご8を移動させ、速度0[m/min]の指令を出力している状態でブレーキ開放した際に出力されるトルク指令値を吊り合いトルクとして検出する。
【0065】
次に処理動作の詳細を説明する。初期状態として、乗りかご8はNL状態であって、かご位置は中間位置と異なる位置であり、運転モードは通常運転モードであるとする。ここでは、かご位置は中間位置より低い位置であるとする。
【0066】
この状態で、運転モード切替装置19は、運転モードを吊り合いトルク検出モードに設定すると(ステップS21のYES)、この旨の通知信号を、速度指令装置1、速度切替装置18およびブレーキ制御装置21に出力する。
【0067】
速度指令装置1は、運転モード切替装置19からの通知信号を受け、かつ、乗りかご8の点検運転操作器の上昇運転スイッチが作業員の操作によりオン状態となると、NL状態の乗りかご8が最上階と最下階の間の中間位置に向かうように速度指令を行なう(ステップS22)。
【0068】
このように乗りかご8を中間位置に移動させるのは、正確な吊り合いトルクを検出するために、当該中間位置が吊り合いトルク検出にかかるロープ自重の影響を受けない位置である中間位置に乗りかご8を位置させる事が必要であるからである。
【0069】
そして、乗りかご8が中間位置に到達することで、かご位置検出装置17により検出したかご位置が当該中間位置となると、速度切替装置18は、かご位置が中間位置であるとの検出結果をかご位置検出装置17から得ることになる。
【0070】
速度切替装置18は、運転モード切替装置19からの吊り合いトルク検出モードの設定の通知信号を入力した状態で、かご位置が中間位置であるとの検出結果がかご位置検出装置17から得られた場合には、乗りかご8の点検運転操作器の切り替え状態に関わらず乗りかご8の速度を0に切り替える指令信号を速度指令装置1およびブレーキ制御装置21に出力する。
【0071】
速度指令装置1は、速度切替装置18からの、乗りかご8の速度を0に切り替える指令信号を入力すると乗りかご8の速度が0となるように速度指令を行なう。これにより乗りかご8の速度が0に設定される(ステップS23)。
【0072】
また、ブレーキ制御装置21は、運転モード切替装置19からの吊り合いトルク検出モードの設定の通知信号を入力した状態で、速度切替装置18からの、速度が0となる速度指令の信号を入力するとブレーキ装置20を作動させる。これにより乗りかご8は中間位置で停止した状態となる。
【0073】
なお、別の例として、ブレーキ制御装置21は、速度検出装置6からの信号を入力し、この信号で示される速度が0となった場合にブレーキ装置20を作動させるようにしてもよい。
【0074】
この停止後、ブレーキ制御装置21は、ブレーキ装置20を開放し(ステップS24)、このブレーキ開放の通知信号を吊り合いトルク計算装置12に出力する。
吊り合いトルク計算装置12は、ブレーキ制御装置21からの通知信号を入力すると、この時点でトルク指令検出装置10により検出したトルク指令値を吊り合いトルクTmDifとして検出する(ステップS25)。
この後は、第1の実施形態で説明したステップS4以降の処理がなされて、最終的にC/W9の重量の所要調整量が決定されることになる。
【0075】
以上説明したように、本発明の第4の実施形態におけるエレベータでは、走行ロスの無い状態である停止状態のトルク指令値を吊り合いトルクとして検出するので、第1の実施形態や第3の実施形態と比較して、より度の高い吊り合いトルクが検出できるため、乗りかご8とC/W9とのバランスポイントの精度向上が望める。
【0076】
(第5の実施形態)
次に、本発明の第5の実施形態について説明する。図11は、本発明の第5の実施形態におけるエレベータの構成例を示す図である。
図11に示すように、本発明の第5の実施形態では第1の実施形態と比較して、表示装置22をさらに備える。表示装置22は、ウエイト量計算装置14により算出したC/W9の重量の所要調整量を作業員に視覚的に認識させるための出力装置である。
【0077】
なお、表示装置22は、C/W9の重量の所要調整量を符号付データとして出力する。例えば所要調整量がプラスの値であればC/W9に積むウエイト量を示し、マイナスの値であればC/W9から下ろすウエイト量として作業者が認識して積み下ろし作業を行なうことができる。
【0078】
以上説明したように、本発明の第5の実施形態におけるエレベータでは、表示装置により積み下ろしウエイト量が明確になるため、作業員はC/W9の重量の所要調整量を容易かつ正確に把握できるので、積み下ろし作業を正確に行なうことができる。
【0079】
なお、この発明は前記実施形態そのままに限定されるものではなく実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、前記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を省略してもよい。更に、異なる実施形態に亘る構成要素を適宜組み合せてもよい。
【符号の説明】
【0080】
1…速度指令装置、2…速度制御装置、3…電流制御装置、4…電流検出装置、5…モータ、6…速度検出装置、7…シーブ、8…乗りかご、9…吊り合い錘(C/W)、10…トルク指令検出装置、11…平均トルク計算装置、12…吊り合いトルク計算装置、13…荷重換算装置、14…ウエイト量計算装置、15…BL積載設定装置、16…ガバナPG、17…かご位置検出装置、18…速度切替装置、19…運転モード切替装置、20…ブレーキ装置、21…ブレーキ制御装置、22…表示装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シーブに巻き掛けられてロープを介してカウンタウエイトと連結されて吊り下げられる乗りかごと、
前記シーブを回転させる巻き上げ機と、
前記乗りかごの走行速度の指令値を設定する速度指令手段と、
前記巻き上げ機の回転速度を検出する速度検出手段と、
前記速度指令手段が設定した速度指令値と前記速度検出手段が検出した速度検出値との偏差に基づいて前記巻き上げ機の回転速度制御のためのトルク指令値信号を出力するトルク指令出力手段と、
前記トルク指令出力手段が出力した信号で示されるトルク指令値をもとに前記巻き上げ機への供給電流を制御する電流制御手段と、
前記トルク指令出力手段が出力したトルク指令値を検出するトルク指令検出手段と、
前記乗りかごを無負荷状態にて一往復運転させた際の上昇運転の定常走行時において前記トルク指令検出手段により検出したトルク指令値の平均値を計算し、前記一往復運転における下降運転の定常走行時において前記トルク指令検出手段により検出したトルク指令値の平均値を計算する平均トルク計算手段と、
前記平均トルク計算手段による、前記上昇運転の定常走行時における計算値と前記下降運転の定常走行時における計算値との平均値を計算することで吊り合いトルクを計算する吊り合いトルク計算手段と、
前記吊り合いトルク計算手段により計算した吊り合いトルクを荷重値に換算する荷重換算手段と、
前記荷重換算手段により換算した荷重値と所定のバランスロード積載値との差分を計算することで前記カウンタウエイトの重量の調整値を計算する重量計算手段と
を備えたことを特徴とするエレベータ。
【請求項2】
シーブに巻き掛けられてロープを介してカウンタウエイトと連結されて吊り下げられる乗りかごと、
前記シーブを回転させる巻き上げ機と、
前記乗りかごの走行速度の指令値を設定する速度指令手段と、
前記巻き上げ機の回転速度を検出する速度検出手段と、
前記速度指令手段が設定した速度指令値と前記速度検出手段が検出した速度検出値との偏差に基づいて前記巻き上げ機の回転速度制御のためのトルク指令値信号を出力するトルク指令出力手段と、
前記トルク指令出力手段が出力した信号で示されるトルク指令値をもとに前記巻き上げ機への供給電流を制御する電流制御手段と、
前記トルク指令出力手段が出力したトルク指令値を検出するトルク指令検出手段と、
前記乗りかごの昇降路における位置を検出するかご位置検出手段と、
前記かご位置検出手段により検出した位置が、吊り合いトルクの計算のために位置する範囲である、昇降路の最上階と最下階との間の中間位置を含む所定の範囲内である場合に、前記速度指令手段により設定する走行速度の指令値を第1の速度値に切り替え、前記かご位置検出手段により検出した位置が前記所定の範囲内でない場合に、前記速度指令手段により設定する走行速度の指令値を前記第1の速度より速い第2の速度値に切り替える速度切り替え手段と、
前記乗りかごの上昇運転時や下降運転時において前記トルク指令検出手段により検出したトルク指令値の平均値を計算する平均トルク計算手段と、
前記速度切り替え手段により、前記速度指令手段により設定する走行速度の指令値を前記第1の速度値に切り替えている場合における、前記平均トルク計算手段による、前記乗りかごの上昇運転時の計算値と前記乗りかごの下降運転時の計算値との平均値を計算することで前記吊り合いトルクを計算する吊り合いトルク計算手段と、
前記吊り合いトルク計算手段により計算した吊り合いトルクを荷重値に換算する荷重換算手段と、
前記荷重換算手段により換算した荷重値と所定のバランスロード積載値との差分を計算することで前記カウンタウエイトの重量の調整値を計算する重量計算手段と
を備えたことを特徴とするエレベータ。
【請求項3】
シーブに巻き掛けられてロープを介してカウンタウエイトと連結されて吊り下げられる乗りかごと、
前記シーブを回転させる巻き上げ機と、
前記乗りかごの走行速度の指令値を設定する速度指令手段と、
前記巻き上げ機の回転速度を検出する速度検出手段と、
前記速度指令手段が設定した速度指令値と前記速度検出手段が検出した速度検出値との偏差に基づいて前記巻き上げ機の回転速度制御のためのトルク指令値信号を出力するトルク指令出力手段と、
前記トルク指令出力手段が出力した信号で示されるトルク指令値をもとに前記巻き上げ機への供給電流を制御する電流制御手段と、
前記トルク指令出力手段が出力したトルク指令値を検出するトルク指令検出手段と、
乗りかごの運転モードを、呼び登録にしたがって前記乗りかごを昇降させる通常運転モード、および、前記呼び登録の有無に関わらず前記乗りかごを前記通常運転モードにおける定格速度と比較して低い定格速度で手動昇降させる点検運転モードの間で切り替える運転モード切り替え手段と、
前記乗りかごの昇降路における位置を検出するかご位置検出手段と、
前記乗りかごの運転モードが前記運転モード切り替え手段により前記点検運転モードに切り替えられた場合において、前記かご位置検出手段により検出した位置が最上階近辺である際に前記トルク指令検出手段により検出したトルク指令値と前記かご位置検出手段により検出した位置が最下階近辺である際に前記トルク指令検出手段により検出したトルク指令値との平均値を計算することで吊り合いトルクを計算する吊り合いトルク計算手段と、
前記吊り合いトルク計算手段により計算した吊り合いトルクを荷重値に換算する荷重換算手段と、
前記荷重換算手段により換算した荷重値と所定のバランスロード積載値との差分を計算することで前記カウンタウエイトの重量の調整値を計算する重量計算手段と
を備えたことを特徴とするエレベータ。
【請求項4】
シーブに巻き掛けられてロープを介してカウンタウエイトと連結されて吊り下げられる乗りかごと、
前記シーブを回転させる巻き上げ機と、
前記乗りかごの走行速度の指令値を設定する速度指令手段と、
前記巻き上げ機の回転速度を検出する速度検出手段と、
前記速度指令手段が設定した速度指令値と前記速度検出手段が検出した速度検出値との偏差に基づいて前記巻き上げ機の回転速度制御のためのトルク指令値信号を出力するトルク指令出力手段と、
前記トルク指令出力手段が出力した信号で示されるトルク指令値をもとに前記巻き上げ機への供給電流を制御する電流制御手段と、
前記トルク指令出力手段が出力したトルク指令値を検出するトルク指令検出手段と、
前記乗りかごの昇降路における位置を検出するかご位置検出手段と、
前記巻き上げ機を制動動作するブレーキ装置と、
吊り合いトルクの検出のために、前記かご位置検出手段により検出した位置が最上階と最下階との中間位置に位置するように前記速度指令手段により設定する走行速度の指令値を切り替え、当該切り替えにより、前記かご位置検出手段により検出した位置が前記中間位置となった場合に、前記速度指令手段により設定する走行速度の指令値をゼロに切り替える速度切り替え手段と、
前記速度切り替え手段により前記速度指令手段により設定する指令値がゼロとなった場合に、前記ブレーキ装置による制動動作を解除するブレーキ制御手段と、
前記ブレーキ装置による制動動作が解除された場合に、前記トルク指令検出手段により検出したトルク指令値を検出することで前記吊り合いトルクを計算する吊り合いトルク計算手段と、
前記吊り合いトルク計算手段により計算した吊り合いトルクを荷重値に換算する荷重換算手段と、
前記荷重換算手段により換算した荷重値と所定のバランスロード積載値との差分を計算することで前記カウンタウエイトの重量の調整値を計算する重量計算手段と
を備えたことを特徴とするエレベータ。
【請求項5】
前記重量計算手段による計算結果を表示する表示手段をさらに備えたことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のエレベータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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