説明

エレベータ

【課題】複数の異なる意味づけがなされたエリアを有する物件において、設置基数を低減することが可能でありながら、搬送効率の低下を招くことなく、複数のエリアの利用者に対応することができる、エレベータの提供。
【解決手段】エレベータ11は、昇降路15と、昇降路内に設けられ、制限エリア側及び非制限エリア側それぞれに扉19,21が設けられたかご17と、かご内に固定されてかごと一体に昇降する制限ゲート13とを備える。制限ゲートは、かご室内を制限エリア側スペース25と非制限エリア側スペース23とに区分けし、所定条件を満たす場合のみ一方のスペースから他方のスペースへの通り抜けを許可する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の異なる意味づけがなされたエリアを有する物件に設けられるエレベータに関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在、エレベータの設定場所に含まれる物件として、鉄道交通の駅がある。鉄道の駅においては、乗車券を持たなくても自由に通行・利用できるエリア(非制限エリア)と、乗車券を持っている者だけが利用できるエリア(制限エリア)とが、改札で区切られるようにして並存している。このため、駅では、エリア毎に、エレベータが設けられていた。しかしながら、エリア毎にエレベータを設けると、2種類のエリアがあれば最低でもエレベータは2基必要で、2基分の設置場所や設置等の費用を強いられ、スペースやコストが増大する問題があった。
【0003】
これに関連し、特許文献1には、かごの反対側面それぞれに扉を設けたエレベータが開示されている。かかるエレベータでは、一方側の扉を非制限エリア側に臨ませ、他方側の扉を制限エリア側に臨ませておき、利用者の呼び要求をみながら選択的に片側のみの扉を使用して、利用者を、何れかのエリアの範囲内だけで目的階へと搬送していた。よって、1基のエレベータで二つのエリアの利用者に対応することが可能であった。
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示のエレベータでは、一方のエリアの利用者を搬送している間は、他方のエリアの利用者は待たされることとなり、エリア毎にエレベータを設ける場合よりも搬送効率が低下する問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−322772号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、複数の異なる意味づけがなされたエリアを有する物件において、設置基数を低減することが可能でありながら、搬送効率の低下を招くことなく、複数のエリアの利用者に対応することができる、エレベータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した目的を達成するため、本発明のエレベータは、昇降路と、前記昇降路内に設けられ、制限エリア側及び非制限エリア側それぞれに扉が設けられたかごと、前記かご内に固定されて該かごと一体に昇降する制限ゲートとを備え、前記制限ゲートは、かご室内を制限エリア側スペースと非制限エリア側スペースとに区分けし、所定条件を満たす場合のみ一方のスペースから他方のスペースへの通り抜けを許可する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、複数の異なる意味づけがなされたエリアを有する物件において、設置基数を低減することが可能でありながら、搬送効率の低下を招くことなく、複数のエリアの利用者に対応することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施の形態に係るエレベータを側方から示す図である。
【図2】本実施の形態のエレベータにおけるかごを平面的に示す図である。
【図3】本実施の形態において、利用者の移動ルートを説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係るエレベータ及びそれを備えた駅の実施の形態について添付図面をもとに説明する。なお、図中、同一符号は同一又は対応部分を示すものとする。
【0011】
図1は、本実施の形態に係るエレベータを側方から示す図である。本実施の形態に係るエレベータは、例えば地下鉄などの鉄道駅に適用されている。まず、鉄道駅1は、上下に並ぶ複数のフロアを有しており、本例では、地下鉄の駅であるので、少なくとも、地上階3と、改札階5と、ホーム階7とを含んでいる。
【0012】
地上階3は、いわば駅への出入り口をなすフロアとなっている。改札階5は、地上階3よりも下階であって、従来からある一般的な固定改札機が設けられているフロアである。駅出入り口からこの固定改札機を通らなくても行ける改札外側エリアが非制限エリアであり、固定改札機を通らない限り利用できない改札内側エリアが制限エリアとなっている。ホーム階7は、さらに改札階5よりも下階であって、鉄道車両が到着するプラットホームがあるフロアである。
【0013】
また、鉄道駅1は、移動改札機を有している。移動改札機は、本実施の形態に係るエレベータ11によって地上階3、改札階5及びホーム階7にわたって昇降されるものであり、エレベータ11内に設けられた制限ゲート13として設けられている。
【0014】
エレベータ11は、制限ゲート13と、昇降路15と、かご17とを備えている。昇降路15は、少なくとも地上階3、改札階5及びホーム階7にわたって延びている。かご17は、昇降路15内を昇降可能に設けられている。
【0015】
さらに、図2も参照しながら説明する。図2は、本実施の形態のエレベータにおけるかごを平面的に示す図である。図1及び図2に示されるように、かご17は、非制限エリア側の側面及び制限エリア側の側面それぞれに、扉19,21を有している。本実施の形態では、非制限エリア側の側面と制限エリア側の側面とは相互に反対側に配置されている。なお、両扉の位置関係は特にこれに限定されるものではない。
【0016】
かご室内には、前述の制限ゲート13が設けられており、制限ゲート13はかご17と一体に昇降される。制限ゲート13は、かご室内を制限エリア側スペース23と非制限エリア側スペース25とに区分けし、所定条件を満たす者に対してのみ、一方のスペースから他方のスペースへの通り抜けを許可する。
【0017】
制限ゲート13は、少なくとも二つの非接触カードリーダ27,29と、開閉ゲート31とを有している。一方の非接触カードリーダ27は、非制限エリア側スペース23内に設けられており、他方の非接触カードリーダ29は、制限エリア側スペース25内に設けられている。開閉ゲート31は、非接触カードリーダ27,29によって読み込まれた認証データの正否に対応して開閉するものである。このように構成された制限ゲート13は、かご室内に設けられたことを除いては既存の改札機と同様な機能を有するものである。また、制限ゲート13は、中継ボックス33を介して、改札システム35に接続され、改札機として機能するように制御されている(図1参照)。
【0018】
かご17のかご室内には、少なくとも二つの操作盤37,39が設けられている。一方の操作盤37は、非制限エリア側スペース23内に設けられており、非制限エリア側の扉19の開閉を制御したり、行先階数の指示や現在階数の表示を行ったりしている。他方の操作盤39は、制限エリア側スペース25内に設けられており、制限エリア側の扉21の開閉を制御したり、同じく、行先階数の指示や現在階数の表示を行ったりしている。
【0019】
図1において、地上階3における非制限エリア側の乗場3aには、乗場ドア41及び呼びボタン43が設けられている。改札階5における非制限エリアの乗場5aならびに制限エリアの乗場5bにはそれぞれ、乗場ドア45及び呼びボタン47、ならびに、乗場ドア49及び呼びボタン51が設けられている。さらに、ホーム階7における制限エリアの乗場7bには、乗場ドア53及び呼びボタン55が設けられている。本例では、エレベータ11は、地上階3においては非制限エリアに関してのみ乗場を有し、改札階5においては両エリアに関して乗場を有し、ホーム階7においては、制限エリアに関してのみ乗場を有する。
【0020】
次に、このように構成された本実施の形態に係るエレベータの動作について説明する。図3は、エレベータ利用者の移動ルートを模式的に示す図である。
【0021】
まず、切符等の乗車券を購入した後に地下鉄に乗ろうとしている利用者は、図3において、矢印Aで示されるように、地上階3の非制限エリアからエレベータ11に乗って改札階5の非制限エリアで降りて、改札階5における図示しない券売機にて切符等の乗車券を購入する。このような場合、利用者は、かご17内において制限ゲート13を通り抜けることなくエレベータを乗り降りする。すなわち、利用者は、地上階3における非制限エリア側の乗場3aから、かご室の非制限エリア側スペース23に乗り込み、そのまま下降し、かご室の非制限エリア側スペース23から改札階5における非制限エリアの乗場5aに降りる。
【0022】
券売機にて切符等の乗車券を購入した利用者は、図示しない固定改札機を通って、改札階5における非制限エリアから制限エリア内に入る。そして、図3において、矢印Bで示されるように、利用者は、改札階5の制限エリアからエレベータ11に乗ってホーム階7の制限エリアで降りて、ホーム階7における図示しないプラットホームから目的の地下鉄に乗車する。この場合も、利用者は、かご17内において制限ゲート13を通り抜けることなくエレベータを乗り降りする。すなわち、利用者は、改札階5における制限エリアの乗場5bから、かご室の制限エリア側スペース25に乗り込み、そのまま下降し、かご室の制限エリア側スペース25からホーム階7における制限エリアの乗場7bに降りる。
【0023】
このように、エレベータ11は、エリア毎にそのエリアの範囲内で利用者を搬送することができ、1基のエレベータで複数のエリアの利用者に昇降サービスを提供することができる。
【0024】
ところで、これまでのエレベータにおいては、1基で、非制限エリアと制限エリアにまたがって運転する場合、非制限エリアで利用者を乗せた場合、無賃乗車を防止する理由から、非制限エリアの他の階で利用者が完全に降りきるまで、制限エリア側の扉を開くことができないという制約があった。このため、定期券等、その都度、券売機に立ち寄る必要がない乗車券を予め有している利用者であっても、一度は、改札階でエレベータを降り、固定改札機を通過した後、再度、エレベータに乗ってホーム階まで行かなければならなかった。また、同様な理由から、非制限エリアに対して乗り降りする利用者と、制限エリアに対して乗り降りする利用者とを一緒にかご室に収容することができず、一方のエリアの利用者を搬送している間は、他方のエリアの利用者は待たされることとなり、搬送効率が低下する問題があった。
【0025】
これに対し、本実施の形態に係るエレベータ11では、乗車券を予め有している利用者は、図3において、矢印Cで示されるように、地上階3の非制限エリアからエレベータ11に乗って直接、ホーム階7の制限エリアまで降りることもできる。すなわち、乗車券を予め有している利用者は、地上階3における非制限エリア側の乗場3aから、かご室の非制限エリア側スペース23に乗り込んだ後、乗車券を非接触カードリーダ27にかざし、開閉ゲート31を開放させる。そして、利用者は、制限ゲート13を通って非制限エリア側スペース23から制限エリア側スペース25へと進む。制限エリア側スペース25に移った利用者は、かご17からホーム階7における制限エリアの乗場7bへと降りる。このようにして、乗車券を予め有している利用者は、いったん、改札階5でエレベータを降りることなく、矢印Cで示されるように、地上階3から直接、ホーム階7まで降りることもできる。
【0026】
さらに、本実施の形態に係るエレベータでは、かご17は、地上階3からホーム階7へと下降するに際して、一例として、地上階3から乗車券を持った利用者を乗せ、改札階5における非制限エリアから乗車券を持った利用者を乗せ、且つ、改札階5における制限エリアから乗車券を持った利用者を乗せて、ホーム階7で制限エリア側の扉21を開くような運転も可能である。すなわち、非制限エリアからの利用者を乗せていても、制限エリアからの利用者を乗せることができ、何れかのエリアの利用者を待たせないで済む。そして、この場合でも、例えば、地上階3から乗った乗車券を持たない利用者が改札階5の非制限エリアで降りそこねたり、改札階5の非制限エリアから乗車券を持たない利用者が乗り込んできたりしても、そのような利用者が誤ってホーム階7の制限エリアに降りることができないようになっている。
【0027】
なお、以上の説明は、地下鉄への乗車に向けた下降ルートで説明したが、この逆に、地下鉄から降車した後の上昇ルートでも同様な作用が得られる。
【0028】
以上のように、本実施の形態に係るエレベータ及びそれを備えた駅によれば、これまでエレベータを2基以上設けなければならなかった運用につき、1基で複数のエリアの利用者に対応することができ、尚且つ、1基のエレベータにつき、何れかのエリアの利用者を待たせないで複数のエリアの利用者が利用できるように運行することができる。よって、エレベータ設置基数を低減することが可能でありながら、搬送効率の低下を招くことなく、複数のエリアの利用者に対応することができる。加えて、乗車券を持った利用者は、改札階に立ち寄らないで済むので、施設の利便性を大幅に向上させることができる。
【0029】
以上、好ましい実施の形態を参照して本発明の内容を具体的に説明したが、本発明の基本的技術思想及び教示に基づいて、当業者であれば、種々の改変態様を採り得ることは自明である。
【0030】
例えば、本発明は、地下鉄の駅に関して実施されることに限定されるものではなく、地上を走行する鉄道の駅に関して実施することも可能である。その場合、駅への出入り口とプラットホームとが同じ階にある、あるいは、改札階が地上階よりも上階であり、ホーム階はさらに改札階よりも上階である構成も考えられる。さらに、本発明は、地下鉄の駅と地上を走行する鉄道の駅とが組み合わされた構成や、駅と駅ビルとが組み合わされた構成に関して実施することもできる。
【0031】
上記実施の形態では、複数のエリアに区分けする意味づけとして、鉄道車両への乗車権限(乗車券)の有無を例に説明したが、本発明においてエリアを区分けする意味づけはこれに限定されるものではない。よって、例えば、情報(秘密)へのアクセス権限の有無、危険区域立ち入り権限の有無、あるいは、特定の操作の許可権限の有無などの意味づけに関して実施することも可能である。
【0032】
なお、そのような様々な意味づけのなかでも、鉄道車両への乗車権限によるエリア区分けに関しては特殊な事情がある。すなわち、乗車権限によるエリア区分けでは、当初、制限エリアへ立ち入ることができない者が、所定のフロアに立ち寄ることで権限(乗車券)を入手することができ、それによって、さらに異なるフロアの制限エリアに入りそこで権限を使用する(乗車券で車両に乗車する)という行動パターンをとる。このように特定のフロアを経ることで権限が途中から備わるパターンは、他の意味づけによるエリア区分けでは少ない。したがって、本来は上記のような行動パターンをとる鉄道車両駅のエリアに対して、本発明を適用することにより、予め乗車券を有する者だけが上記の行動パターンを強いられなくなり、固定改札を通ることなく直接、ホームに到達できるようになる。よって、本発明を、鉄道車両駅のエリア区分けに適用することは、他の意味づけによるエリア区分けに適用すること以上に、特に有益であることが理解されるだろう。
【0033】
また、本発明を提供するフロア構成は、上記実施の形態のように3階に限定されるものではなく、4階以上あってもよい。加えて、最上階及び最下階を含め各階が非制限エリアと制限エリアとの双方を有するフロア構成であってもよい。
【0034】
また、本発明は、エリアの数は2種類に限定されず、一つの物件に複数種類のエリアが含まれたものに適用することもできる。さらに、エリアの配置態様も特に限定はなく、例えば、1つの制限エリアが2つの非制限エリアに挟まれるような配置の物件に適用することもできる。
【符号の説明】
【0035】
1 鉄道駅、3 地上階、5 改札階、7 ホーム階、11 エレベータ、13 制限ゲート、15 昇降路、17 かご、19,21 扉、23 非制限エリア側スペース、25 制限エリア側スペース。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
昇降路と、
前記昇降路内に設けられ、制限エリア側及び非制限エリア側それぞれに扉が設けられたかごと、
前記かご内に固定されて該かごと一体に昇降する制限ゲートとを備え、
前記制限ゲートは、かご室内を制限エリア側スペースと非制限エリア側スペースとに区分けし、所定条件を満たす場合のみ一方のスペースから他方のスペースへの通り抜けを許可する、
エレベータ。
【請求項2】
上下に並ぶ複数のフロアと、
前記複数のフロアにわたって昇降可能な移動改札機とを含み、
前記移動改札機は、請求項1に記載のエレベータによって昇降され、
前記移動改札機は、前記制限ゲートであり、
前記制限エリア及び非制限エリアはそれぞれ、改札内側エリア及び改札外側エリアである、
鉄道駅。
【請求項3】
地下鉄の駅に設けられるエレベータであって、
前記昇降路は、地上階と、該地上階よりも下階であって固定改札機が設けられている改札階と、該改札階よりも下階であってプラットホームがあるホーム階とにわたって延びており、
前記制限ゲートは、移動改札機であり、
前記制限エリア及び非制限エリアはそれぞれ、改札内側エリア及び改札外側エリアである、
請求項1のエレベータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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