説明

エレメントホルダ及びフィルタユニット

【課題】圧力変動の影響を受けずに連続生産が可能で、且つフィルタ交換、クリーニング作業が容易なフィルタユニットと、そのエレメントホルダを提供する。
【解決手段】エレメントホルダ10に周方向に等間隔に可塑材料通過孔12が設けられ、各々にフィルタエレメント20が嵌挿されている。背面カバー20には可塑材料通過孔12と重なるように可塑材料入口43とフィルタエレメント交換口44とが設けられている。エレメントホルダ10の背面には、フィルタエレメントの切り替え途中で可塑材料入口43と重なるように凹部13が設けられ、各凹部13は圧抜き孔14を介して外部に連通している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶融樹脂などの可塑材料の混練機や押出機などの流出部に配置されるフィルタユニットに係り、特に盤状のエレメントホルダに複数のフィルタエレメントを着脱可能に装着したフィルタユニットに関する。また、本発明はこのフィルタユニットに用いられるエレメントホルダに関する。
【背景技術】
【0002】
樹脂溶融混練機などで生産した成形用樹脂の中に異物が混入すると、成形品が不良品となったり、成形機や金型に破損が生じるおそれがある。
【0003】
そこで、これら異物などを除去するために樹脂溶融混練機や押出機の出口部にはフィルタユニットが設置されている。このようなフィルタの簡易なものとしては、特許文献1(特開平9−39071)のように多数の貫通孔を有したブレーカプレートに対しスクリーンを重ね合わせたものが知られている。特許文献1では、このブレーカプレート及びスクリーンを往復回動可能なスライド枠に2対セットし、一方のブレーカプレート及びスクリーンで溶融樹脂の濾過を行うときに他方のブレーカプレート及びスクリーンを押出成形機の外部に露呈させ、スクリーンの交換を可能としている。
【0004】
特許文献2(特開平6−47794)、特許文献3(特表2007−513806)には、複数の穴を周方向に配設した円板の該穴にフィルタを嵌装し、この円板をその軸心回りにステップ回動させ、1個のフィルタエレメントを濾過に供している間に他のフィルタエレメントを外部に露呈させ、フィルタエレメントの交換を行うようにしたフィルタが記載されている。
【0005】
特許文献4(特開2010−201767)、特許文献5(特開2001−38792)には円筒状スクリーンカートリッジを交換可能に備えたフィルタが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平9−39071
【特許文献2】特開平6−47794
【特許文献3】特表2007−513806
【特許文献4】特開2010−201767
【特許文献5】特開2001−38792
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1,2では、フィルタの切り替え途中時(すなわち、特許文献1ではスライド枠を回動させているとき、特許文献2では円板を回動させているときに、一時的に濾過面積が小さくなり、このときに押出機内の圧力が上昇し、樹脂流れの均等性が損なわれる。特許文献3は、かかる問題点を解決するものであり、回転円板の穴及び該穴に装着されるフィルタエレメントを特殊形状としているが、そのためにかなりのコスト高となる。
【0008】
特許文献4は、複数のカートリッジを有しているため、濾過面積は広く取ることが出来るが、装置が極めて複雑となり生産終了後の分解クリーニング作業に多大な労力を要する。
【0009】
特許文献5は、溶融樹脂の流路が2系列であるため、流路を切り替えた際に閉止流路の溜まり樹脂が分解して炭化物が生じる。また、再度流路を切り替えた時、この分解物・炭化物が製品中に混入してコンタミなどの原因となり、製品に品質上の問題が生じることがある。
【0010】
本発明は、上記問題点を解決し、圧力変動の影響を受けずに連続生産が可能で、且つフィルタ交換、クリーニング作業が容易なフィルタユニットと、そのためのエレメントホルダを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明のエレメントホルダは、周方向に間隔をおいて複数個の可塑材料通過孔が設けられたエレメントホルダであって、各可塑材料通過孔間に凹部が設けられていることを特徴とするものである。
【0012】
このエレメントホルダの一態様においては、前記凹部は、前記エレメントホルダの外周側ほど周方向幅が大きくなる形状を有している。
【0013】
本発明のフィルタユニットは、周方向に間隔をおいて複数個の可塑材料通過孔が設けられたエレメントホルダと、該可塑材料通過孔に着脱可能に装着されたフィルタエレメントと、該エレメントホルダの背面側を覆う背面カバーと、該背面カバーに該可塑材料通過孔とそれぞれ等半径位に設けられた可塑材料入口及びフィルタエレメント交換口と、該エレメントホルダを回転させる駆動装置と、を有するフィルタユニットであって、該エレメントホルダを回転させている途中時に該可塑材料入口と対面する凹部が該エレメントホルダの背面側に設けられると共に、該凹部をエレメントホルダ外に連通させる圧抜き孔が該エレメントホルダに設けられていることを特徴とするものである。
【0014】
本発明の一態様のフィルタユニットでは、前記凹部は、前記エレメントホルダの外周側ほど周方向幅が大きくなる形状を有している。
【0015】
本発明の一態様のフィルタユニットでは、前記圧抜き孔は前記エレメントホルダの外周面に開口している。
【0016】
本発明の一態様のフィルタユニットでは、前記エレメントホルダの背面に該エレメントホルダの軸心に対し同心状に環形凸条が設けられ、前記背面カバーの前面に、該環形凸条が嵌合した環形凹条が設けられている。
【発明の効果】
【0017】
本発明のエレメントホルダを有するフィルタユニットでは、押出機又は混練機からの可塑材料が背面カバーの可塑材料入口、フィルタエレメントを通過し、濾過される。フィルタエレメントはエレメントホルダが周方向に複数個設けられており、1個のエレメントホルダで濾過を行っているときに他のフィルタエレメントを背面カバーのエレメント交換口を通して交換ないしメンテナンスすることができる。
【0018】
また、エレメントホルダを回転させることにより、濾過に供するフィルタエレメントを切り替えることができる。このエレメントホルダを回転させている途中時に背面カバーの可塑材料入口がエレメントホルダの凹部に対面し、押出機又は混練機からの可塑材料の圧が凹部及び圧抜き孔を介して抜ける。これにより、押出機又は混練機内の圧力変動を防止ないし抑制しつつ押出機又は混練機を連続的に稼動させることができる。なお、この凹部や圧抜き孔に入り込んだ樹脂等の可塑材料は、エレメントホルダの可塑材料通過孔側に戻ることはなく、製品に混入しない。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】実施の形態に係るフィルタユニットの前方からの斜視図である。
【図2】図1のフィルタユニットの後方からの斜視図である。
【図3】図1のフィルタユニットの分解斜視図(前方図)である。
【図4】図1のフィルタユニットの分解斜視図(後方図)である。
【図5】エレメントホルダの正面図である。
【図6】エレメントホルダの背面図である。
【図7】エレメントホルダの側面図である。
【図8】(a)図は図6のVIII−VIII線断面図であり、(b)図はフィルタエレメント装着状態における(a)図と同一箇所の断面図である。
【図9】図6のIX−IX線断面図である。
【図10】フィルタユニットの断面図である。
【図11】図10のXI−XI線断面図である。
【図12】図10のXII−XII線断面図である。
【図13】エレメントホルダの回転途中における図12と同一箇所の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図1〜13を参照して実施の形態に係るフィルタユニット1及びそのエレメントホルダ10について説明する。
【0021】
このフィルタユニット1は、図3,4に示すように、エレメントホルダ10と、該エレメントホルダ10に保持されたフィルタエレメント20と、該エレメントホルダ10の前面側及び背面側にそれぞれ装着された前面カバー30及び背面カバー40と、エレメントホルダ10を回転させるための駆動装置50と、前面カバー30に取り付けられたダイヘッド60等を備えている。
【0022】
エレメントホルダ10は、円形盤状であり、軸心部に駆動軸挿通孔11が軸心線方向に貫設され、該駆動軸挿通孔11に駆動装置50の駆動軸51(図2〜4)が挿通される。駆動軸挿通孔11の内周面と駆動軸51の外周面とにはセレーション等の係合手段が設けられ、エレメントホルダ10は駆動軸51と一体的に回転するよう構成されている。
【0023】
エレメントホルダ10には複数個の可塑材料通過孔12が設けられている。可塑材料通過孔12の数は、押出機又は混練機の大きさや生産時間から必要とされる交換頻度によって任意に設定できるが、この実施の形態では6個設けられている。可塑材料通過孔12は、エレメントホルダ10の周方向に等間隔かつ該エレメントホルダ10の軸心から等半径位に配設されている。
【0024】
図8に明示の通り、可塑材料通過孔12の背面側12aは前面側12bよりも拡径しており、該背面側12aにフィルタエレメント20が嵌挿される。該背面側12aと前面側12bとの間に段差部12cが形成されている。該背面側12aに嵌装されたフィルタエレメント20はこの段差部12cに当接する。
【0025】
エレメントホルダ10の外周には、エレメントホルダ10を周回する環状壁15が設けられている。エレメントホルダ10の後面のうち周方向に隣接した各可塑材料通過孔12同士の間にそれぞれ凹部13が設けられている。図4,9,12,13に明示の通り、各凹部13は、環状壁15を貫く圧抜き孔14を介してエレメントホルダ10の外周側に連通している。凹部13は、エレメントホルダ10の外周側ほど周方向の幅が大きくなる略扇形状である。また、圧抜き孔14は、この凹部13の最外周側と同一の周方向長さを有している。そのため、可塑材料の圧が凹部13及び圧抜き孔14を通って抜け易くなっている。
【0026】
エレメントホルダ10の背面には、駆動軸挿通孔11と同心状の環形凸条16が周設されている。環形凸条16は可塑材料通過孔12よりも若干軸心側に位置している。前記凹部13は、各可塑材料通過孔12の間を通ってこの環形凸条16の近傍にまで達している。図8,9の通り、環形凸条16の内側領域17は平坦面となっている。
【0027】
フィルタエレメント20はディスク(円板)形状であり、前述の通り可塑材料通過孔12の背面側12aに嵌合する直径を有している。フィルタエレメント20には、厚み方向に貫通する多数の小孔21が設けられている。可塑材料は該小孔21を通過する際に濾過され、異物が除去される。
【0028】
前面カバー30は、エレメントホルダ10よりも若干大径の円盤状であり、軸心には駆動軸挿通孔31が設けられている。前面カバー30の前面側には、駆動軸挿通孔31を通過した駆動軸51を軸承する軸受32が取り付けられている。
【0029】
図3,4に明示されるように、前面カバー31には、エレメントホルダ10の可塑材料通過孔12と等半径位にて1個の押出口33が設けられている。この押出口33の口径は可塑材料通過孔12の前面側12bと同一となっている。この押出口33の前面側にダイヘッド60が取り付けられている。
【0030】
前面カバー30の外周縁から後方に環状壁34が突設されている。この環状壁34の内側にエレメントホルダ10の前面側が嵌合される。
【0031】
背面カバー40は、エレメントホルダ10の環状壁15に内嵌する円盤状であり、軸心部に駆動軸挿通孔41が貫設されている。背面カバー40の前面には、該駆動軸挿通孔41と同心状に環形凹条42が設けられている。背面カバー40を厚み方向に貫通するように、該環形凹条42の外周側に可塑材料入口43とフィルタエレメント交換口44とが設けられている。
【0032】
環形凹条42の直径は、エレメントホルダ10の環形凸条16の直径と同一であり、背面カバー40をエレメントホルダ10に係合させたときに環形凸条16と環形凹条42とが係合する。これにより、可塑材料がエレメントホルダ10と背面カバー40との合わせ面に入り込んでも環形凸条16よりも内側に入り込むことが防止される。
【0033】
フィルタエレメント交換口44は、可塑材料通過孔12の背面側12aよりも若干大きい直径を有しており、該交換口44を通してフィルタエレメント20を出し入れすることが可能となっている。
【0034】
可塑材料入口43とフィルタエレメント交換口44とは駆動軸挿通孔41を挟んで反対側に対称状に配置されている。フィルタエレメント交換口44と可塑材料入口43とは等半径位に位置しており、図10の通り、可塑材料入口43をいずれか1つの可塑材料通過孔12に対面させたときに、フィルタエレメント交換口44は当該可塑材料通過孔12と直径方向反対側の可塑材料通過孔12に対面する。
【0035】
駆動装置50は、モータ52(図2〜4)によって駆動軸51を回転させ、エレメントホルダ10を回転させるためのものであり、背面カバー40に取り付けられている。このモータ52としては60°ずつ回転するステップモータを用いることができるが、これに限定されない。
【0036】
図10に示すように、可塑材料入口43に対し押出機又は混練機70の先端部が係合される。通常の押出工程にあっては、可塑材料入口43と、1個のフィルタエレメント20及び可塑材料通過孔12と、押出口33とが一直線状に配列され、この押出機又は混練機70からの可塑材料が、可塑材料入口43、図10の下側のフィルタエレメント20、可塑材料通過孔12、押出口33及びダイヘッド60を通って送り出される。可塑材料がフィルタエレメント20の小孔21を通過する際に濾過される。
【0037】
この状態では、フィルタエレメント交換口44が図10の上側のフィルタエレメント20と対面しており、この交換口44を通して図10の上側のフィルタエレメント20を交換したり、メンテナンス(例えばクリーニング)することが可能となっている。
【0038】
濾過に用いるフィルタエレメント20を切り替えるときには、駆動装置50によって、図13の矢印θのように、エレメントホルダ10を60°だけ回転させる。この回転途中では、図13の状態となり、一時的に可塑材料入口43がいずれのフィルタエレメント20の小孔21に全く又は殆ど重なり合わない状態となるが、この状態では凹部13が可塑材料入口43と重なり合うので、可塑材料入口43からの可塑材料は凹部13から圧抜き孔14を介してエレメントホルダ10外に押し出される。これにより、押出機又は混練機70内の圧力変動が防止ないし抑制される。なお、凹部13や圧抜き孔14に入り込んだ可塑材料はその後可塑材料通過孔12側に流れることはないので、ダイヘッド60から送り出される可塑材料に混入しない。このため、ダイヘッド60から送り出される可塑材料の品質が安定したものとなる。
【0039】
図13の状態を経て再び図12の状態となり、可塑材料は切り替えられたフィルタエレメント20を通過する。また、新たに図12の最上部に移動してきたフィルタエレメント20について、交換口44を通して交換したりメンテナンスする。
【0040】
このように、この実施の形態によると、押出機又は混練機70を連続的に稼動させながら、エレメントホルダ10を回転させて濾過に供するフィルタエレメント20を切り替えることができる。そして、切り替えたフィルタエレメントについて、押出機又は混練機70を稼動させた状態で交換又はメンテナンスすることができる。また、このエレメントホルダ10の回転途中状態での押出機又は混練機70内の圧力変動が防止ないし抑制される。さらに、ダイヘッド60から送り出される可塑材料の品質が安定したものとなる。
【0041】
上記実施の形態は本発明の一例であり、本発明は図示以外の形態とされてもよい。例えば、上記実施の形態では駆動装置50の駆動軸51によってエレメントホルダ10を回転させているが、前記特許文献2,3のようにエレメントホルダの外周側に駆動機構を配置してもよい。
【符号の説明】
【0042】
1 フィルタユニット
10 エレメントホルダ
11,31,41 駆動軸挿通孔
12 可塑材料通過孔
13 凹部
14 圧抜き孔
15 環状壁
20 フィルタエレメント
30 前面カバー
32 押出口
40 背面カバー
43 可塑材料入口
44 フィルタエレメント交換口
50 駆動装置
60 ダイヘッド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
周方向に間隔をおいて複数個の可塑材料通過孔が設けられたエレメントホルダであって、各可塑材料通過孔間に凹部が設けられていることを特徴とするエレメントホルダ。
【請求項2】
請求項1において、前記凹部は、前記エレメントホルダの外周側ほど周方向幅が大きくなる形状を有していることを特徴とするエレメントホルダ。
【請求項3】
周方向に間隔をおいて複数個の可塑材料通過孔が設けられたエレメントホルダと、
該可塑材料通過孔に着脱可能に装着されたフィルタエレメントと、
該エレメントホルダの背面側を覆う背面カバーと、
該背面カバーに該可塑材料通過孔とそれぞれ等半径位に設けられた可塑材料入口及びフィルタエレメント交換口と、
該エレメントホルダを回転させる駆動装置と、
を有するフィルタユニットであって、
該エレメントホルダを回転させている途中時に該可塑材料入口と対面する凹部が該エレメントホルダの背面側に設けられると共に、
該凹部をエレメントホルダ外に連通させる圧抜き孔が該エレメントホルダに設けられていることを特徴とするフィルタユニット。
【請求項4】
請求項3において、前記凹部は、前記エレメントホルダの外周側ほど周方向幅が大きくなる形状を有していることを特徴とするフィルタユニット。
【請求項5】
請求項3又は4において、前記圧抜き孔は前記エレメントホルダの外周面に開口していることを特徴とするフィルタユニット。
【請求項6】
請求項3ないし5のいずれか1項において、前記エレメントホルダの背面に該エレメントホルダの軸心に対し同心状に環形凸条が設けられ、前記背面カバーの前面に、該環形凸条が嵌合した環形凹条が設けられていることを特徴とするフィルタユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−239999(P2012−239999A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−113745(P2011−113745)
【出願日】平成23年5月20日(2011.5.20)
【出願人】(502163421)ユーエムジー・エービーエス株式会社 (116)
【Fターム(参考)】