説明

エンコーダヘッド及びエンコーダシステム

【課題】コンパクトな構成で、小型化、省配線化を図ること。
【解決手段】検出部1から出力された電気信号から変位情報及び方向情報生成部2によりスケール11と検出部1との間の相対的な変位と当該変位の方向とを含む少なくとも2相の位置情報信号を生成し、さらに伝送用情報変換部3により1つのデジタル信号の伝送用信号としての伝送用データに変換し、この伝送用データを電源重畳部4により電源線とGND線とから成るエンコーダデータ・電源供給ライン5に供給される電源電圧上に伝送用データを重畳し、エンコーダ情報再生部10に伝送する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検出部材の変位を検出するためのエンコーダヘッド及びこのエンコーダヘッドを用いたエンコーダシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、エンコーダは、被検出部材の変位を検出してその位置情報を得て伝送する。このようなエンコーダは、少なくとも2相の位置情報信号をシリアル信号に変換し伝送することを行う。かかるエンコーダの技術は、例えば特許文献1に開示されている。この特許文献1は、インクリメンタル信号をカウンタに入力し、そのカウンタ値の一定時間における変化量をシリアル信号に変換して伝送する手法を開示する。又、特許文献1は、エンコーダ等の位置検出器からのインクリメンタル信号の伝送手法として、ラインドライバのBUS線及び反転BUS線と、電源線と、グランド(GND)線とを接続して成ることを開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3330992号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1は、情報伝送にあたり、少なくとも電源線とグランド(GND)線と、さらにはラインドライバのBUS線及び反転BUS線との各1本以上で合計で少なくとも4本の信号線が必要である。このため、複数の被検出部材の各変位を検出する必要がある場合、複数のエンコーダを設けると、これらエンコーダからインクリメンタル信号を伝送するためには、少なくともエンコーダの設置数×4本の信号線が必要となり、配線数が増加し、エンコーダシステムが大型化する。
【0005】
そこで本発明は、コンパクトな構成で、小型化、省配線化を図ることができるエンコーダヘッド及びエンコーダシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の主要な局面に係るエンコーダヘッドは、スケールと、スケールとの間の相対変位を検出する検出部と、検出部から出力される電気信号に基づいてスケールと検出器との間の相対的な変位と当該変位の方向とを含む複数の位置情報信号を生成する位置・方向情報生成部と、位置・方向情報生成部により生成された複数の位置情報信号を1つのデジタル信号に変換して伝送用信号として出力する伝送用情報変換部と、外部から電力を供給するための電源ラインと接地ラインとの間に、伝送用情報変換部から出力される伝送用信号を重畳して伝送する電源重畳部とを具備する。
【0007】
本発明の主要な局面に係るエンコーダシステムは、被検出部材の変位を検出するエンコーダヘッドと、このエンコーダヘッドから出力される位置情報信号に基づいて被検出部材の少なくとも変位量を取得するエンコーダ情報再生部とから成るエンコーダシステムであって、エンコーダヘッドは、被検出部材に設けられるスケールと、スケールとの間の相対変位を検出する検出部と、検出部から出力される電気信号に基づいてスケールと検出器との間の相対的な変位と当該変位の方向とを含む複数の位置情報信号を生成する位置・方向情報生成部と、位置・方向情報生成部により生成された複数の位置情報信号を1つのデジタル信号に変換して伝送用信号として出力する伝送用情報変換部と、外部から電力を供給するための電源ラインと接地ラインとの間に、伝送用情報変換部から出力される伝送用信号を重畳して伝送する電源重畳部とを有し、エンコーダ情報再生部は、電源ラインと接地ラインとの間に重畳する伝送用信号を電源ラインと接地ラインとから分離する電源重畳分離部と、電源重畳分離部により分離された伝送用信号を位置情報信号に変換するエンコーダ情報変換部とを有する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、コンパクトな構成で、小型化、省配線化を図ることができるエンコーダヘッド及びエンコーダシステムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明に係るエンコーダシステムの一実施の形態を示すブロック構成図。
【図2】同システムにおける2相の位置情報信号から2値化信号への変換処理の例を示す図。
【図3】同エンコーダヘッド内に電源投入検出部を付加したブロック構成図。
【図4】同システムにおける2値化信号から伝送用データへの変換処理の例を示すフローチャート。
【図5】同システムにおける位置情報信号から伝送用データへの変換処理にて作成される伝送用データの例を示す図。
【図6】同システムにおけるエンコーダ情報再生部のエンコーダ情報再生フローチャート。
【図7】同システムにおける位置情報信号から伝送用データへの変換処理の別の例を示すフローチャート。
【図8】同システムにおける位置情報信号から伝送用データへの変換処理にて作成される伝送用データの例を示す図。
【図9】同システムにおけるエンコーダ情報再生部のエンコーダ情報再生フローチャート。
【図10】同システムにおける伝送用データにおけるデータ送信開始確認パターン及びアイドリングパターンの例を示す図。
【図11】同システムにおけるデータ送信時にデータエラーを検出するための送信フォーマット例を示す図。
【図12】同システムにおける電源重畳部及び電源重畳分離部の一部具体的な回路構成図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の一実施の形態について図面を参照して説明する。
図1はエンコーダシステムのブロック構成図を示す。このエンコーダシステムは、被検出部材の変位を検出するエンコーダヘッド9と、このエンコーダヘッド9から出力される位置情報信号に基づいて被検出部材の少なくとも変位量を取得するエンコーダ情報再生部10とから成る。これらエンコーダヘッド9とエンコーダ情報再生部10とは、エンコーダデータ・電源供給ライン5を介して接続されている。
【0011】
エンコーダヘッド9は、スケール11を有し、かつ検出部1と、変位情報及び方向情報生成部2と、伝送用情報変換部3と、電源重畳部4と、電源供給ライン26とから成る。スケール11は、被検出部材に設けられる。なお、エンコーダヘッド9は、被検出部材に設置し、エンコーダヘッド9に対向する部材にスケール11を設け、エンコーダヘッド9とスケール11との相対変位を検出しても良い。
検出部1は、スケール11との間の相対変位に応じた電気信号を出力する。
【0012】
変位情報及び方向情報生成部2は、検出部1から出力された電気信号を入力し、この電気信号に基づいてスケール11と検出部1との間の相対的な変位と当該変位の方向とを含む少なくとも2相の位置情報信号を生成し、この位置情報信号を逓倍処理し、2値化信号へ変換し、伝送用情報変換部3に出力する。
この伝送用情報変換部3は、変位情報及び方向情報生成部2から出力された2値化信号を入力し、この2値化信号を電源線(電源ライン)とグランド(GND)線との間に重畳しても安定した情報の伝送が行えることを考慮した1つのデジタル信号の伝送用信号としての伝送用データに変換し、電源重畳部4へ出力する。すなわち、伝送用情報変換部3は、複数の位置情報信号を1つのデジタル信号にパラレルーシリアル変換する。
【0013】
電源重畳部4は、伝送用情報変換部3から出力された伝送用データを入力し、この伝送用データを電源線とGND線とから成るエンコーダデータ・電源供給ライン5に重畳する。具体的に電源重畳部4は、電源線とグランド線との間に供給される電源電圧上に伝送用データを重畳する。当該重畳された伝送用データは、エンコーダデータ・電源供給ライン5を通してエンコーダ情報再生部10へ伝送される。
【0014】
一方、エンコーダ情報再生部10は、電源重畳分離部6と、電源7と、エンコーダ情報変換部8とから成る。
電源重畳分離部6は、エンコーダヘッド9からの伝送用データをエンコーダデータ・電源供給ライン5から分離し、2値化信号に変換する。
エンコーダ情報変換部8は、電源重畳分離部6により変換された2値化信号から相対変位、すなわち変位情報及び方向情報を取得する。
【0015】
次に、上記の如く構成されたエンコーダシステムの動作について説明する。
検出部1は、スケール11との間の相対変位に応じた電気信号を出力する。
変位情報及び方向情報生成部2は、検出部1から出力された電気信号を入力し、この電気信号に基づいてスケール11と検出部1との間の相対的な変位と当該変位の方向とを含む少なくとも2相の位置情報信号を生成し、この位置情報信号を逓倍処理し、2値化信号へ変換する。ここで、変位情報及び方向情報生成部2の動作の一例を説明する。検出部1は図2(a)に示すようにA相の電気信号とB相の電気信号を生成するものとする。信号Aは正弦波の波形として現れるので、変位情報及び方向情報生成部2は、この正弦波の波形が基準電圧に対して高い電圧側(H)にあるか低い電圧側(L)にあるのかを判定する。この判定は、例えば図2(a)(b)に示すように少なくとも4つの区間t1、t2、t3、t4毎に行われる。この判定の結果、図2(a)(b)に示すように区間t1、区間t2、区間t3、区間t4、において、信号Aは、それぞれ、ローレベル「L」、ローレベル「L」、ハイレベル「H」、ハイレベル「H」であるので、変位情報及び方向情報生成部2は、伝送用情報変換部3に、電気信号(A相)の2値化信号として、それぞれ「0」(区間t1)、「0」(区間t2)、「1」(区間t3)、「1」(区間t4)を出力する。
【0016】
同様に、電気信号Bも正弦波の波形として現れるので、変位情報及び方向情報生成部2は、この正弦波の波形が正側にあるか、又は負側にあるのかを判定する。この判定も例えば図2(a)(b)に示すように4つの区間t1、t2、t3、t4毎に行われる。
この判定の結果、図2(a)(b)に示すように区間t1、区間t2、区間t3、区間t4、において、信号Bは、それぞれ、ハイレベル「H」、ローレベル「L」、ローレベル「L」、ハイレベル「H」であるので、変位情報及び方向情報生成部2は、伝送用情報変換部3に、信号B(B相)の2値化信号として、それぞれ「1」(区間t1)、「0」(区間t2)、「0」(区間t3)、「1」(区間t4)を出力する。
【0017】
伝送用情報変換部3は、変位情報及び方向情報生成部2から出力された2値化信号を入力し、この2値化信号を電源線とGND線との間に重畳しても安定した情報の伝送が行えることを考慮した1つの信号の伝送用信号としての伝送用データに変換し、電源重畳部4へ出力する。
【0018】
電源重畳部4は、伝送用情報変換部3から出力された伝送用データを重畳用に生成し、この伝送用データを電源線とGND線とから成るエンコーダデータ・電源供給ライン5に供給される電源電圧上に伝送用データを重畳する。この重畳された伝送用データは、エンコーダデータ・電源供給ライン5を通してエンコーダ情報再生部10へ伝送される。
【0019】
一方、エンコーダ情報再生部10において電源重畳分離部6は、エンコーダヘッド9からの伝送用データをエンコーダデータ・電源供給ライン5から分離し、2値化信号に変換する。
エンコーダ情報変換部8は、電源重畳分離部6により変換された2値化信号から相対変位、すなわち変位情報及び方向情報を取得する。
【0020】
このように上記一実施の形態であれば、検出部1から出力された電気信号から変位情報及び方向情報生成部2によりスケール11と検出部1との間の相対的な変位と当該変位の方向とを含む少なくとも2相の位置情報信号を生成し、さらに伝送用情報変換部3により1つの信号の伝送用信号としての伝送用データに変換し、この伝送用データを電源重畳部4により電源線とGND線とから成るエンコーダデータ・電源供給ライン5に供給される電源電圧上に伝送用データを重畳し、エンコーダ情報再生部10に伝送する。
【0021】
これにより、エンコーダヘッド9とエンコーダ情報再生部10との間の信号伝達及び電源供給は、電源線とGND線から成るエンコーダデータ・電源供給ライン5を介して一括して行う構成となり、エンコーダヘッド9とエンコーダ情報再生部10との間の配線数を少なくすることができる。これにより、配線スペースの削減、組立性の向上、取扱性の向上等の効果が得られる。特に、複数の被検出部材の各変位を検出する必要がある場合、複数のエンコーダを設けたとしても、配線数が増加せずにエンコーダシステムが大型化することなく、コンパクトな構成で、小型化、省配線化を図ることができる。
【0022】
又、変位情報及び方向情報生成部2により生成する信号は、2値化信号に限らない。例えば、検出部1により検出した位置情報信号をデジタル変換したものや、位置情報信号から逓倍処理を行ってカウントデータをパルス信号としたもの、方向信号とカウントパルスを分離した信号として組み合わせデータとしたもの、さらには位置情報信号を逓倍処理し、カウントデータをシリアルデータ化したものを伝送用情報変換部3により伝送用データとして変換して送信し、一方、エンコーダ情報再生部10において適宜必要な逓倍処理等を施し、位置情報を取得するようにしてもよい。
【0023】
なお、図1に示すエンコーダシステムは、伝送の同期をとるために必要な情報埋め込みの構成、例えば、先ず、データ送信開始確認パターンを送信し、次に区間t1、t2、t3、t4、…、の順に2値化信号A、Bの振幅(レベル)の組み合わせの状態を送信するような構成にしてもよい。
【0024】
次に、上記一実施の形態に電源投入検出部12を付加した例について図面を参照して説明する。
図3はエンコーダシステムのブロック構成図を示す。このエンコーダシステムにおけるエンコーダヘッド9には、電源投入検出部12が設けられている。この電源投入検出部12は、電源が投入されてデータ伝送が可能か否かを検出し、データ伝送が可能であれば、伝送用情報変換部3に対して伝送可能である旨を伝える。
【0025】
このような構成であれば、上記同様に、検出部1は、スケール11との間の相対変位に応じた電気信号を出力する。変位情報及び方向情報生成部2は、検出部1から出力された電気信号を入力し、この電気信号に基づいてスケール11と検出部1との間の相対的な変位と当該変位の方向とを含む少なくとも2相の位置情報信号を生成し、この位置情報信号を逓倍処理し、2値化信号へ変換する。
電源投入検出部12は、電源が投入されてデータ伝送が可能か否かを検出し、データ伝送が可能であれば、伝送用情報変換部3に対して伝送可能である旨を伝える。
【0026】
伝送可能である旨が伝送用情報変換部3に伝えられると、この伝送用情報変換部3は、変位情報及び方向情報生成部2から出力された2値化信号を入力し、この2値化信号を電源線とGND線との間に重畳しても安定した情報の伝送が行えることを考慮した1つのデジタル信号の伝送用信号としての伝送用データに変換し、電源重畳部4へ出力する。
【0027】
電源重畳部4は、伝送用情報変換部3から出力された伝送用データを入力し、この伝送用データを電源線とGND線とから成るエンコーダデータ・電源供給ライン5に供給される電源電圧上に伝送用データを重畳する。この重畳された伝送用データは、エンコーダデータ・電源供給ライン5を通してエンコーダ情報再生部10へ伝送される。
このような電源投入検出部12を付加した構成であっても、上記第1の実施の形態と同様の効果を奏することは言うまでもない。
【0028】
ここで、上記図3に示すエンコーダシステムにおけるエンコーダヘッド9の位置情報信号から伝送用データへの変換処理の具体例について説明する。なお、かかるエンコーダヘッド9の位置情報信号から伝送用データへの変換処理は、図3に示す電源投入検出部12を付加したエンコーダシステムで説明する。
【0029】
図4は伝送用情報変換部3における位置情報信号から伝送用データへの変換処理のフローチャートを示す。
電源投入検出部12は、電源投入後、ステップS1において、位置情報信号である伝送用データを伝送できる状態にあるか否かを判定する。この判定の結果、データ伝送が不可能の場合、電源投入検出部12は、データ伝送が不可能である旨を伝送用情報変換部3に送る。これにより、伝送用情報変換部3は、伝送用データを伝送せずに待機する。電源投入検出部12は、データ伝送が可能になるまでステップS1を繰り返す。
データ伝送が可能になってデータ伝送が可能である旨を受けると、伝送用情報変換部3は、ステップS2に移り、図5に示すようなデータ送信開始確認パターンを出力する。
【0030】
次に、伝送用情報変換部3は、ステップS3において、図2(a)に示すような変位情報及び方向情報生成部2からの2相の位置情報信号の2値化信号A、Bを入力し、これら2値化信号A、Bの値の変化から検出部1とスケール11とが相対的に変位しているか否かを判定する。なお、2値化信号AはA相の2値化信号であり、2値化信号BはB相の2値化信号であることを示す。
【0031】
この判定の結果、検出部1とスケール11とが相対的に変位していれば、伝送用情報変換部3は、ステップS4において、移動状態確認ビット「1」を出力する。一方、検出部1とスケール11とが相対的に変位していなければ、伝送用情報変換部3は、ステップS5において、移動状態確認ビット「0」と「01」とを繰り返し出力する。
【0032】
移動状態確認ビットが「1」で、検出部1とスケール11とが相対的に変位している場合、伝送用情報変換部3は、ステップS6において、A相の2値化信号を出力する。次に、情報変換部3は、ステップS7において、B相の2値化信号を出力する。
【0033】
しかるに、伝送用情報変換部3は、図5に示すような位置情報伝送フォーマット、すなわち、先ず、データ送信開始確認パターンを送信し、次に移動状態確認ビットを送信し、次に2値化信号Aが正側又は負側にあるかを示す状態を送信し、次に2値化信号Bが正側又は負側にあるかを示す状態を送信する。以降、伝送用情報変換部3は、移動状態確認ビット、2値化信号Aの状態、次に2値化信号Bの状態を繰り返して送信する。
【0034】
従って、検出部1とスケール11とが相対的に変位している場合、図2(a)に示す2値化信号A、Bの波形の変化であれば、伝送用情報変換部3は、図5に示すように移動状態確認ビット、2値化信号Aの状態「0」、次に2値化信号B「1」、移動状態確認ビット、2値化信号Aの状態「0」、次に2値化信号B「0」、移動状態確認ビット、2値化信号Aの状態「1」、次に2値化信号B「0」、…、を出力する。
【0035】
検出部1とスケール11とが相対的に変位していない場合、伝送用情報変換部3は、図5に示すように移動状態確認ビット、2値化信号Aの状態「0」、次に2値化信号B「1」、移動状態確認ビット、2値化信号Aの状態「0」、次に2値化信号B「1」、移動状態確認ビット、2値化信号Aの状態「0」、次に2値化信号B「1」、…、を出力する。
【0036】
しかるに、電源重畳部4は、伝送用情報変換部3から出力された位置情報伝送フォーマットの伝送用データを重畳用に生成し、この伝送用データを電源線とGND線とから成るエンコーダデータ・電源供給ライン5に供給される電源電圧上に伝送用データを重畳する。
【0037】
一方、エンコーダ情報再生部10は、図6に示すエンコーダ情報再生フローチャートに従って変位量及び変位方向の情報を取得する。
先ず、エンコーダ情報再生部10において電源重畳分離部6は、エンコーダヘッド9からの伝送用データをエンコーダデータ・電源供給ライン5から分離し、2値化信号に変換する。
【0038】
次に、エンコーダ情報変換部8は、電源重畳分離部6により変換された2値化信号を受け取り、ステップS20において、2値化信号の移動状態確認ビットにより移動の有無を判断する。すなわち、移動状態確認ビットが「1」であれば、エンコーダ情報変換部8は、A相とB相と各2値化信号の値の組合せによりカウンタの値を加算若しくは減算し、変位量及び変位方向の情報を取得し、ステップS20に戻る。一方、移動状態確認ビットが「0」であれば、エンコーダ情報変換部8は、ステップS20に移り、最後の位置情報を保持し、ステップS20に戻る。
【0039】
なお、エンコーダヘッド9の位置情報信号から伝送用データへの変換処理は、上記図3に示す電源投入検出部12を付加したエンコーダシステムで説明したが、図1に示す電源投入検出部12を設けていないエンコーダシステムであれば、図4に示す上記ステップS1及びステップS2をスキップする。これにより、データ送信開始確認パターンは付加されず、位置情報信号を2値化した移動状態確認ビットとそれぞれA、B相の2値化信号のレベル値が時間経過とともにサンプリング順に次々と送信される。
【0040】
又、上記図2及び図4に示すエンコーダヘッド9の位置情報信号から伝送用データへの変換処理及び伝送用データは勿論一例であり、値の組み合わせ等はこれ以外でも良い。また、電源投入からデータ送信開始まで、何も伝送しないのでは無く、それ自体に意味を持たない情報のアイドリングパターンの伝送を行っても良い。前記アイドリングパターンは、データ送信開始確認パターンの有無に関わらず付加しても良い。
【0041】
図7は上記とは別の例の伝送用情報変換部3における位置情報信号から伝送用データへの変換処理のフローチャートを示す。
電源投入検出部12は、電源投入後、ステップS30において、位置情報信号を伝送できる状態にあるか否かを判定する。この判定の結果、データ伝送が不可能の場合、電源投入検出部12は、データ伝送が不可能である旨を伝送用情報変換部3に送る。これにより、伝送用情報変換部3は、伝送用データを伝送せずに待機する。電源投入検出部12は、データ伝送が可能になるまでステップS30を繰り返す。
【0042】
一方、データ伝送が可能になってデータ伝送が可能である旨を受けると、伝送用情報変換部3は、ステップS31に移り、図8(c)に示すようなデータ送信開始確認パターンを出力する。
【0043】
伝送用情報変換部3は、データ送信開始後は、A相及びB相の各2値化信号の振幅(レベル)の組み合わせによって同レベルが連続することが少ない任意の例えば3bitパターンに変換し、シリアル変換し、出力する。
以下、具体的に説明する。図2に示した通り、正弦波の波形を有する信号A、Bが4つの区間t1、t2、t3、t4毎に正側にあるか、又は負側にあるのかを判定し、「1」「0」により示した場合、例えば、区間t1において、2値化信号A、Bの振幅(レベル)の組み合わせ(A,B)は、(0,1)になる。又、区間t2において、2値化信号A、Bの振幅(レベル)の組み合わせ(A,B)は、(0,0)になる。
【0044】
しかるに、伝送用情報変換部3は、ステップS32において、振幅(レベル)状態の組み合わせが(A,B)=(0,1)であるか否かを判定する。この判定の結果、振幅(レベル)状態の組み合わせが(A,B)=(0,1)であれば、伝送用情報変換部3は、ステップS33において、3bitのレベル値「010」を出力し、ステップS32に戻る。
【0045】
振幅(レベル)状態の組み合わせが(A,B)=(0,1)でなければ、伝送用情報変換部3は、ステップS34に移り、振幅(レベル)状態の組み合わせが(A,B)=(0,0)であるか否かを判定する。この判定の結果、振幅(レベル)状態の組み合わせが(A,B)=(0,0)であれば、伝送用情報変換部3は、ステップS35において、3bitのレベル値「011」を出力し、ステップS32に戻る。
【0046】
振幅(レベル)状態の組み合わせが(A,B)=(0,0)でなければ、伝送用情報変換部3は、ステップS36に移り、振幅(レベル)状態の組み合わせが(A,B)=(1,0)であるか否かを判定する。この判定の結果、振幅(レベル)状態の組み合わせが(A,B)=(1,0)であれば、伝送用情報変換部3は、ステップS37において、「100」を出力し、ステップS32に戻る。振幅(レベル)状態の組み合わせが(A,B)=(1,0)でなければ、伝送用情報変換部3は、ステップS38において、3bitのレベル値「101」を出力し、ステップS32に戻る。
【0047】
伝送用情報変換部3は、図8(c)に示すように位置情報伝送フォーマット、すなわち、先ず、データ送信開始確認パターンを送信し、次に区間t1、t2、t3、t4、…、の順に2値化信号A、Bの振幅(レベル)の組み合わせの状態を送信する。ここでは、データ送信開始確認パターンを送信し、次に区間t1における2値化信号A、Bの振幅(レベル)の組み合わせの状態(A,B)=(0,1)の3bitのレベル値「010」を送信し、次に区間t2における2値化信号A、Bの振幅(レベル)の組み合わせの状態(A,B)=(0,0)の3bitのレベル値「011」を送信し、次に区間t3における2値化信号A、Bの振幅(レベル)の組み合わせの状態(A,B)=(1,0)の3bitのレベル値「100」を送信し、次に区間t4における2値化信号A、Bの振幅(レベル)の組み合わせの状態(A,B)=(1,1)の3bitのレベル値「101」を送信する。
【0048】
しかるに、電源重畳部4は、伝送用情報変換部3から出力された位置情報伝送フォーマットの伝送用データを入力し、この伝送用データを電源線とGND線とから成るエンコーダデータ・電源供給ライン5に供給される電源電圧上に伝送用データを重畳する。
【0049】
一方、エンコーダ情報再生部10は、図9に示すエンコーダ情報再生フローチャートに従って変位量及び変位方向の情報を取得する。すなわち、エンコーダ情報再生部10は、エンコーダヘッド9から出力された値を受信すると、受信パターンに基づいてカウンタの値を加算若しくは減算し、変位量及び変位方向の情報を取得し、当該ステップS40を繰り返す。
【0050】
なお、エンコーダヘッド9の位置情報信号から伝送用データへの変換処理は、上記図3に示す電源投入検出部12を付加したエンコーダシステムで説明したが、図1に示す電源投入検出部12を設けていないエンコーダシステムであれば、図7に示す上記ステップS30及びステップS31をスキップする。これにより、データ送信開始確認パターンは付加されず、位置情報信号を2値化した移動状態確認ビットとそれぞれA、B相の2値化信号のレベル値が時間経過とともにサンプリング順に次々と送信される。
【0051】
又、上記図7及び図8に示すエンコーダヘッド9の位置情報信号から伝送用データへの変換処理及び伝送用データは勿論一例であり、値の組み合わせ等はこれ以外でも良い。また、電源投入からデータ送信開始まで、何も伝送しないのでは無く、それ自体に意味を持たない情報のアイドリングパターンの伝送を行っても良い。前記アイドリングパターンは、データ送信開始確認パターンの有無に関わらず付加しても良い。
【0052】
図10(a)(b)は上記伝送用データにおけるデータ送信開始確認パターン及びアイドリングパターンの例を示す。例えば、電源投入後、エンコーダヘッド9は、位置情報信号を伝送できる状態になると、エンコーダ位置情報の送信開始時にデータ送信開始確認パターンを送信しても良いし、電源投入後からアイドリングパターン、例えば「00101」を繰り返し送信し、位置情報信号を伝送できる状態になると、エンコーダ位置情報の送信開始時にデータ送信開始確認パターンを送信しても良い。
【0053】
図11はデータ送信時にデータエラーを検出するための送信フォーマット例を示す。エンコーダヘッド9の伝送用情報変換部3は、少なくとも2回繰り返して伝送用デジタルエンコーダ信号を送信する。
一方、エンコーダ情報再生部10は、伝送用デジタルエンコーダ信号を受信すると、この伝送用デジタルエンコーダ信号が少なくとも2回繰り返えされるか否かを判定する。この判定の結果、伝送用デジタルエンコーダ信号が少なくとも2回繰り返えさなければ、エンコーダ情報再生部10は、エラーが発生したことを把握し、情報の信頼性が落ちたことを警告できる。この警告は、例えば表示デバイスや信号出力により行う。データエラーを検出するための送信フォーマットは、例えばアイドリングパターンの有無、データ送信開始確認パターンの有無に関わらず用いても良い。
【0054】
次に、上記一実施の形態の応用例について説明する。なお、図1と同一部分には同一符号を付してその詳しい説明は省略する。
図12はエンコーダシステムの一部具体的な回路構成図を示す。電源重畳部4は、LVDSドライバ13を有する。このLVDSドライバ13は、エンコーダヘッド9の伝送用情報変換部3から出力されるシリアルの伝送用データを入力する。このLVDSドライバ13の各出力端の一方は、キャパシタ15を介してツイストペア通信線18の電源ライン18aに接続され、他方は、キャパシタ16を介してツイストペア通信線18のGND線18bに接続されている。各キャパシタ15、16は、それぞれ電源ライン18aに交流信号であるシリアルの伝送用データQを重畳させる。
又、電源ライン18aと検出部1との間にはインダクタ14が接続され、GND線18bと検出部1との間にはインダクタ17が接続されている。これらインダクタ14、17は、それぞれ交流成分を抑制する。
ツイストペア通信線18は、上記エンコーダデータ・電源供給ライン5に対応する。
【0055】
一方、エンコーダ情報再生部10における電源重畳分離部6は、各キャパシタ20、21を有する。一方のキャパシタ20は、一端を電源ライン18aに接続し、他端をLVDSレシーバー25の一入力端に接続している。他方のキャパシタ21は、一端をGND線18bに接続し、他端をLVDSレシーバー25の他入力端に接続している。各キャパシタ20、21は、電源電圧から交流信号であるシリアルの伝送用データQを分離してLVDSレシーバー25に伝送するためのものである。
【0056】
又、電源ライン18aには、インダクタ19を介して電源供給部23が接続されている。GND線18bには、インダクタ22を介して共通グランド(GND)24が接続されている。
LVDSレシーバー25は、シリアルの伝送用データQを出力する。
【0057】
このような構成であれば、エンコーダヘッド9の伝送用情報変換部3から出力されるシリアルの伝送用データQは、LVDSドライバ13から各キャパシタ15、16を通してツイストペア通信線18の電源ライン18aとGND線18bとの間に供給される電源電圧に重畳される。
【0058】
一方、エンコーダ情報再生部10の電源重畳分離部6は、ツイストペア通信線18を通して電源電圧及び当該電源電圧に重畳されているシリアルの伝送用データQを入力し、各キャパシタ20、21によって電源電圧から交流信号であるシリアルの伝送用データQを分離してLVDSレシーバー25に伝送する。
【0059】
このような構成であれば、電源重畳部4と電源重畳分離部6とは、信号線と電源ラインを共通にするという作用を有し、配線数の削減と電源重畳部4の小型化を可能にするという効果が得られる。
又、図12においてLVDSドライバ13及びLDVSレシーバー25を送受信側に対にして配することで、双方向通信が可能となる。
【0060】
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除しても、発明が解決しようとする課題の欄で述べられた課題が解決でき、かつ、発明の効果が得られる場合には、この構成要素が削除された構成も発明として抽出され得る。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0061】
1…検出部、2…変位情報及び方向情報生成部、3…伝送用情報変換部、4…電源重畳部、5…エンコーダデータ・電源供給ライン、6…電源重畳分離部、7…電源、8…エンコーダ情報変換部、9…エンコーダヘッド、10…エンコーダ情報再生部、11…スケール、12…電源投入検出部、13…LVDSドライバ、14…インダクタンス、15…キャパシタ、16…キャパシタ、17…インダクタンス、18…ツイストペア通信線、19…インダクタ、20…キャパシタ、21…キャパシタ、22…インダクタ、23…電源供給部、24…共通GND、25…LVDSレシーバー、26…電源供給ライン。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スケールと、
前記スケールとの間の相対変位を検出する検出部と、
前記検出部から出力される電気信号に基づいて前記スケールと前記検出器との間の相対的な変位と当該変位の方向とを含む複数の位置情報信号を生成する位置・方向情報生成部と、
前記位置・方向情報生成部により生成された前記複数の位置情報信号を1つのデジタル信号に変換して伝送用信号として出力する伝送用情報変換部と、
外部から電力を供給するための電源ラインと接地ラインとの間に、前記伝送用情報変換部から出力される前記伝送用信号を重畳して伝送する電源重畳部と、
を具備することを特徴とするエンコーダヘッド。
【請求項2】
電源が投入されてデータ伝送が可能か否かを検出し、前記データ伝送が可能であれば、前記伝送用情報変換部に対して伝送可能である旨を伝える電源投入検出部、
を有することを特徴とする請求項1に記載のエンコーダヘッド。
【請求項3】
前記電源投入検出部は、前記データ伝送が可能になると、前記データ送信の開始を認識するためのデータを前記伝送用信号に付与して送信することを特徴とする請求項2に記載のエンコーダヘッド。
【請求項4】
前記伝送用情報変換部は、電源投入後、前記データ送信の開始時までアイドリングパターンを出力することを特徴とする請求項1乃至3のうちいずれか1項に記載のエンコーダヘッド。
【請求項5】
前記伝送用情報変換部は、少なくとも2回、同一内容の前記伝送用信号度を繰り返し出力することを特徴とする請求項1乃至4のうちいずれか1項に記載のエンコーダヘッド。
【請求項6】
前記伝送用情報変換部は、前記複数の位置情報信号を1つのデジタル信号にパラレルーシリアル変換することを特徴とする請求項1に記載のエンコーダヘッド。
【請求項7】
被検出部材の変位を検出するエンコーダヘッドと、このエンコーダヘッドから出力される位置情報信号に基づいて前記被検出部材の少なくとも変位量を取得するエンコーダ情報再生部とから成るエンコーダシステムにおいて、
前記エンコーダヘッドは、前記被検出部材に設けられるスケールと、
前記スケールとの間の相対変位を検出する検出部と、
前記検出部から出力される電気信号に基づいて前記スケールと前記検出器との間の相対的な変位と当該変位の方向とを含む複数の位置情報信号を生成する位置・方向情報生成部と、
前記位置・方向情報生成部により生成された前記複数の位置情報信号を1つのデジタル信号に変換して伝送用信号として出力する伝送用情報変換部と、
外部から電力を供給するための電源ラインと接地ラインとの間に、前記伝送用情報変換部から出力される前記伝送用信号を重畳して伝送する電源重畳部と、
を有し、
前記エンコーダ情報再生部は、前記電源ラインと前記接地ラインとの間に重畳する前記伝送用信号を前記電源ラインと前記接地ラインとから分離する電源重畳分離部と、
前記電源重畳分離部により分離された前記伝送用信号を前記位置情報信号に変換するエンコーダ情報変換部と、
を有する、
ことを特徴とするエンコーダシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−58972(P2011−58972A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−209482(P2009−209482)
【出願日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】