説明

エンジンのシール構造

【課題】従来のエンジンにおける三面合わせ部のシール構造では、シリンダブロックとシリンダヘッドとの間のガスケットのビード終端部がクランク軸方向に配置されていたので、エンジンの温度変化によりガスケットの終端縁と、チェーンカバー側の液状ガスケットとが剥離し易く、オイル漏れの原因となっていた。
【解決手段】シリンダブロック4の上方にガスケット6を介してシリンダヘッド8が接合され、該シリンダブロック4およびシリンダヘッド8のクランク軸14方向における一端面側に液状ガスケット22を介してチェーンカバー20が接合されるエンジン2において、前記ガスケットの一端面側におけるチェーンカバー当接部分に、クランク軸方向へ広がる面62aを形成し、前記ガスケットにおけるビードの終端部61aをクランク軸方向と略直交する方向に形成して、該ビードの終端縁61bを、前記ガスケットのクランク軸方向へ広がる面まで延設した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンのシール構造に関し、特に、3点以上部材が集合する部位のシールを行うエンジンのシール構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エンジンとしては、図10に示すエンジン102のように、シリンダブロック104の上方にシリンダヘッドガスケット106を介してシリンダヘッド108を接合し、このシリンダヘッド108の上方にシリンダヘッドカバーガスケット110を介してシリンダヘッドカバー112を設け、シリンダブロック104の下方にクランク軸114を軸支するロアクランクケース116を設け、このロアクランクケース116の底部にオイルパン118を設け、さらに、シリンダブロック104とシリンダヘッド108とロアクランクケース116とのクランク軸方向における一端面側にチェーンカバー(タイミングチェーンカバー)120を接合して設けたものがある。
このチェーンカバー120は、シリンダブロック104、シリンダヘッド108、およびロアクランクケース116の一端面とともにタイミングチェーンを覆うチェーン室120aを形成し、その周縁部が液状ガスケット(液状シール)122を介してシリンダブロック104、シリンダヘッド108、およびロアクランクケース116の一端面に接合されている。
【0003】
このようなエンジンにおいては、図11〜図13に示すように、シリンダブロック104とシリンダヘッド108との接合部では、シリンダヘッドガスケット106のビード106aによりチェーン室120a内部のオイルをシールしており、シリンダブロック104およびシリンダヘッド108とチェーンカバー120との接合部では、両者間に充填された液状ガスケット122によりチェーン室120a内部のオイルをシールしている。
また、シリンダブロック104とシリンダヘッド108とチェーンカバー120との3つの部材が集合している、所謂三面合わせ部においては、ビード106の終端縁と液状ガスケット122とが接着することにより内部のオイルをシールしている。
つまり、ビード106の終端部においては、前記クランク軸114方向に延設されたビード106aが、前記液状ガスケット122と接合されていて、ビード106aの終端縁によるシール方向はクランク軸114方向となっている。
【0004】
さらに、シリンダブロック104とシリンダヘッド108とチェーンカバー120との三面合わせ部のシール構造としては、例えば特許文献1に示すように、チェーンカバー120のシリンダヘッドガスケット106に対応する部位に溝部を形成し、この溝部に、前記シリンダブロック104とシリンダヘッド108との間に配設されるとともに前記シリンダヘッドガスケット106の一端面に当接する弾性部材を設けることにより、該三面合わせ部のシールを行うように構成したものがある。
【特許文献1】特開2002−276462号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述のごとく、従来のエンジンのシール構造にあっては、図14に示すように、シリンダブロック104、シリンダヘッド108、およびチェーンカバー120が集合する三面合わせ部では、各部品の製造上の公差、材質やエンジン稼動時の温度の違いによる熱膨張等により、シリンダブロック104の一端面よりもシリンダヘッド108の一端面との間に段差が生ずるとともに、シリンダヘッドガスケット106の一端面がシリンダブロック104およびシリンダヘッド108の一端面よりも内側(クランク軸方向における反チェーンカバー120側)に窪んで位置している。
【0006】
前述のように、シリンダヘッドガスケット106の一端面がシリンダブロック104およびシリンダヘッド108の一端面よりも内側へ窪んで位置しているため、該シリンダヘッドガスケット106の厚み相当の隙間しかない窪み部Cに液状ガスケット122が充填されにくく、シリンダヘッドガスケット106の一端面を液状ガスケットにより確実にシールすることが困難であった。
また、図15に示すように、シリンダブロック104、シリンダヘッド108、およびチェーンカバー120のクランク軸方向における相対位置は、エンジン稼動時における温度変化により大きく変動するため、その相対位置変動に液状ガスケット106が追従して変形することができず、シリンダヘッドガスケット106の終端縁と液状ガスケット106とが剥離し易くなっている。
さらに、前記窪み部Cに充填された液状ガスケット122は硬化時に収縮し、該液状ガスケット122のシリンダヘッドガスケット106との接合面には、該シリンダヘッドガスケット106の一端面から離れる方向の力がかかるため、シリンダヘッドガスケット106の一端面と液状ガスケット106とが、さらに剥離し易い。
【0007】
このように、従来のエンジンのシール構造においては、シリンダヘッドガスケット106の終端部が、該シリンダヘッドガスケット106の温度変化による相対位置変化が大きなクランク軸方向に配置されている等の理由により、シリンダヘッドガスケット106の終端縁となる一端面と液状ガスケット122とが剥離し、この剥離した箇所からチェーン室120a内部のオイルの外部への漏れが発生することとなる。
【0008】
また、前述の特許文献1に記載されているように、前記シリンダヘッドガスケット106の一端面に当接する弾性部材を設けた構成の場合も同様に、該シリンダヘッドガスケット106の温度変化による相対位置変化により、シリンダヘッドガスケット106の終端縁と弾性部材とが剥離して、チェーン室120a内部のオイルの外部への漏れが発生し易い構造となっている。
そこで、本発明においては、シリンダブロック104、シリンダヘッド108、およびチェーンカバー120が集合する三面合わせ部における、オイル漏れの発生を抑えることが可能なエンジンのシール構造を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するエンジンのシール構造は、以下の特徴を有する。
即ち、請求項1記載の如く、シリンダブロックの上方にガスケットを介してシリンダヘッドが接合され、該シリンダブロックおよびシリンダヘッドのクランク軸方向における一端面側に液状ガスケットを介してチェーンカバーが接合されるエンジンにおいて、前記ガスケットの一端面側におけるチェーンカバー当接部分に、クランク軸方向へ広がる面を形成し、前記ガスケットにおけるビードの終端部をクランク軸方向と略直交する方向に形成して、該ビードの終端縁を、前記ガスケットのクランク軸方向へ広がる面まで延設した。
このように、ガスケットのビードの終端部を、シリンダブロック、シリンダヘッド、およびチェーンカバーの温度変化による相対位置変動が僅かである、クランク軸方向と略直交する方向に配置しているため、互いに当接するビードの終端縁と該終端縁の当接部材との間に、クランク軸方向と略直交する方向への位置変動があまり生じることがなく、両者が剥離して隙間が生じることを抑制できる。
これにより、オイルがビードの終端縁部分から外部へ漏れ出すことを防止することができる。
【0010】
また、請求項2記載の如く、前記ガスケットのクランク軸方向へ広がる面に延設される前記ビードの終端縁が、弾性部材によりクランク軸方向と略直交する方向に押圧される。
これにより、前記ビードの終端縁と弾性部材とが圧着して、両者間のシール状態を確実に保持することができる。さらに、ビードの終端縁と弾性部材との当接状態は、液状ガスケットの硬化時の収縮により影響を受けることがなく、ビードの終端縁と弾性部材との間に隙間が生じることはない。
これにより、より確実にビードの終端縁と該終端縁が当接する部材である弾性部材とが剥離することを防止して、オイルが外部へ漏れ出すことを抑えることができる。
【0011】
また、請求項3記載の如く、前記シリンダブロックおよびシリンダヘッドの一端面に、両者を跨ぐように凹部を形成し、前記ガスケットに、前記凹部と位置および形状を合わせた切欠部を形成し、該ビードの終端縁を、前記ガスケットの切欠部における、クランク軸方向に広がる面まで延設し、前記シリンダブロックおよびシリンダヘッドの凹部、並びに前記ガスケットの切欠部に弾性部材を挿入して、該弾性部材により前記ビードの終端縁をクランク軸方向と略直交する方向に押圧した。
このように、シリンダブロックおよびシリンダヘッドに凹部を形成するとともに、ガスケットに切欠部を形成して、該凹部および切欠部に弾性部材を挿入しているので、該弾性部材を確実に保持することができ、オイル漏れ防止効果を高めることができる。
【0012】
また、請求項4記載の如く、前記ビードの終端縁を、前記ガスケットにおける、シリンダブロック、シリンダヘッド、およびチェーンカバーにて形成される空間に接するとともに、クランク軸方向に広がる面まで延設し、該ビードの終端縁を、チェーンカバーに取り付けた弾性部材によりクランク軸方向と略直交する方向に押圧した。
このように構成することで、シリンダブロックやシリンダヘッドに凹部を形成するなどの加工を施す必要がないので、簡易な構成でビードの終端縁からのオイル漏れを防止することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、互いに当接するビードの終端縁と該終端縁の当接部材との間に、クランク軸方向と略直交する方向への位置変動があまり生じることがなく、両者が剥離して隙間が生じることを抑制できる。これにより、オイルがビードの終端縁部分から外部へ漏れ出すことを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
次に、本発明を実施するための形態を、添付の図面を用いて説明する。
【0015】
図1に示すエンジン2は、本発明にかかるシール構造を有したエンジンの一実施形態である。
【0016】
該エンジン2においては、シリンダブロック4の上方にシリンダヘッドガスケット6を介してシリンダヘッド8が接合されている。このシリンダヘッド8の上方にシリンダヘッドカバーガスケット10を介してシリンダヘッドカバー12が設けられ、シリンダブロック4の下方にクランク軸14を軸支するロアクランクケース16が設けられ、このロアクランクケース16の底部にオイルパン18が設けられている。
さらに、シリンダブロック4とシリンダヘッド8とロアクランクケース6とのクランク軸方向における一端面側にチェーンカバー(タイミングチェーンカバー)20が接合されている。
【0017】
このチェーンカバー20は、シリンダブロック4、シリンダヘッド8、およびロアクランクケース6の一端面とともに、タイミングチェーンを覆う空間となるチェーン室20aを形成し、その周縁部が液状ガスケット(液状シール)22を介してシリンダブロック4、シリンダヘッド8、およびロアクランクケース16の一端面に接合されている。
【0018】
次に、このようなエンジン2における、シリンダブロック4、シリンダヘッド8、およびチェーンカバー20の3部材が集合する、所謂三面合わせ部のシール構造について説明する。
図2〜図5に示すように、シリンダブロック4とシリンダヘッド8との接合部に配置されるシリンダヘッドガスケット6においては、ビード61によりチェーン室20aの内部をシールしており、シリンダブロック4およびシリンダヘッド8とチェーンカバー20との接合部では、両者間に充填された液状ガスケット22によりチェーン室20aの内部をシールしている。
【0019】
また、シリンダブロック4とシリンダヘッド8とチェーンカバー20との3つの部材が集合している三面合わせ部においては、前記シリンダブロック4およびシリンダヘッド8の一端面(チェーンカバー20側の側面)に、両者を跨ぐようにそれぞれ凹部4aおよび凹部8aが形成されている。
つまり、凹部4aはシリンダブロック4の一端面および上面にかかるように形成され、凹部8aはシリンダヘッド8の一端面および下面にかかるように形成されており、該凹部4aと凹部8aとは平面視において略同じ位置および略同じ形状に形成されている。
【0020】
さらに、前記シリンダヘッドガスケット6の三面合わせ部に位置する部分においては、前記凹部4aおよび凹部8aと平面視形状を合わせた切欠部62が形成されている。
前記シリンダヘッドガスケット6のビード61の終端部61aは、クランク軸14方向と略直交する方向へ延びるように配置されており、該ビード61の終端縁61bは、前記切欠部62における、クランク軸14方向に広がる面62aまで延設されている。
【0021】
また、前記シリンダブロック4およびシリンダヘッド8の凹部4a・8a、並びに前記シリンダヘッドガスケット6の切欠部62には、ゴム部材等で形成される弾性部材31が挿入されている。
前記弾性部材31は、シリンダブロック4およびシリンダヘッド8の一端面にチェーンカバー20が接合された状態では、前記凹部4a・8aおよび切欠部62に圧入された状態となっており、前記ビード61の終端縁61bは、圧入された弾性部材31により、クランク軸14方向と略直交する方向に押圧されている。
【0022】
つまり、クランク軸14方向と略直交する方向に配置されたビード61の終端部61aにおいては、切欠部62のクランク軸14方向に広がる面62aまで延設される終端縁61bが弾性部材31に当接していて、ビード61の終端縁61bによるシール方向はクランク軸14方向と略直交する方向となっている。
また、例えば弾性部材31は、前記凹部4a・8aおよび切欠部62の奥端部までは挿入されておらず、該凹部4a・8aおよび切欠部62の奥端部には液状ガスケット22が充填されている。
【0023】
なお、弾性部材31を前記凹部4a・8aおよび切欠部62に挿入する際には、例えばシリンダブロック4およびシリンダヘッド8の一端面、ならびに凹部4a・8aおよび切欠部62内に液状ガスケット22を塗布した状態で、該弾性部材31を凹部4a・8aおよび切欠部62に挿入するようにしている。
弾性部材31をこのように挿入することで、凹部4a・8aおよび切欠部62内に充填されている液状ガスケット22が加圧され、加圧された液状ガスケット22の反発力により弾性部材31が押圧されることとなる。弾性部材31が液状ガスケット22に押圧されることにより、該弾性部材31にクランク軸14方向と略直交する方向への加圧力が発生し、弾性部材31がビード61の終端縁61bを押圧することとなる。
【0024】
以上のごとく構成される、シリンダブロック4とシリンダヘッド8とチェーンカバー20との3つの部材が集合している三面合わせ部においては、シリンダブロック4とシリンダヘッド8との間に介装されるシリンダヘッドガスケット6のビード61、シリンダブロック4およびシリンダヘッド8とチェーンカバー20との間に充填される液状ガスケット22、および前記凹部4a・8aおよび切欠部62に圧入される弾性部材31により、該三面合わせ部をシールして、チェーン室20a内部のオイルが外部へ漏れ出すことを防止している。
【0025】
ここで、エンジン2においては、シリンダブロック4、シリンダヘッド8、およびチェーンカバー20のクランク軸14方向における相対位置は、エンジン稼動時における温度変化により大きく変動する。
一方、シリンダブロック4、シリンダヘッド8、およびチェーンカバー20のクランク軸14方向と略直交する方向の、エンジン稼動時における温度変化による相対位置変動は、僅かである。
【0026】
このように、シリンダブロック4、シリンダヘッド8、およびチェーンカバー20のクランク軸14方向における相対位置は、エンジン稼動時における温度変化により大きく変動するため、従来のように、シリンダヘッドガスケット6のビード61の終端部61aをクランク軸14方向に配置して、該ビード61の終端縁61bと液状ガスケット22とを当接させた場合には、エンジン稼動時における温度変化により、ビード61の終端縁61bと液状ガスケット22とが剥離する恐れがある。
【0027】
しかし、本エンジン2においては、シリンダヘッドガスケット6のビード61の終端部61aを、シリンダブロック4、シリンダヘッド8、およびチェーンカバー20の温度変化による相対位置変動が僅かである、クランク軸14方向と略直交する方向に配置しているため、互いに当接するビード61の終端縁61bと前記弾性部材31との間に、クランク軸14方向と略直交する方向への位置変動があまり生じることがなく、両者が剥離して隙間が生じることを抑制できる。
これにより、ビード61の終端縁61b部分から、チェーン室20a内部のオイルが外部へ漏れ出すことを防止することができる。
【0028】
また、ビード61の終端縁61bは、凹部4a・8aおよび切欠部62に挿入される弾性部材31により、クランク軸14方向と略直交する方向に押圧されているので、該終端縁61bと弾性部材31とが圧着して、両者の当接状態を確実に保持することができる。さらに、ビード61の終端縁61bと弾性部材31との当接状態は、液状ガスケット22の硬化時の収縮により影響を受けることがなく、ビード61の終端縁61bと弾性部材31との間に隙間が生じることはない。
これにより、より確実にビード61の終端縁61bと弾性部材31とが剥離することを防止して、チェーン室20a内部のオイルが外部へ漏れ出すことを抑えることができる。
特に、本例では、シリンダブロック4およびシリンダヘッド8に凹部4a・8aを形成するとともに、シリンダヘッドガスケット6に切欠部62を形成して、該凹部4a・8aおよび切欠部62に弾性部材31を挿入しているので、該弾性部材31を確実に保持することができ、オイル漏れ防止効果を高めることができる。
【0029】
また、シリンダブロック4、シリンダヘッド8、およびチェーンカバー20の3部材が集合する三面合わせ部のシール構造は、次のように構成することもできる。
図6〜図8に示すように、シリンダブロック4とシリンダヘッド8との接合部に配置されるシリンダヘッドガスケット6の三面合わせ部に位置する部分においては、前記シリンダヘッドガスケット6のビード61の終端部61aは、クランク軸14方向と略直交する方向へ延びるように配置されており、該ビード61の終端縁61bは、シリンダヘッドガスケット6の、前記チェーン室20aに接するとともに、クランク軸14方向に広がる面6aまで延設されている。
なお、本例では、三面合わせ部におけるシリンダブロック4およびシリンダヘッド8の一端面には、前述のような凹部4a・8aは形成されていない。
【0030】
前記チェーンカバー20における、前記シリンダヘッドガスケット6のクランク軸14方向に広がる面6aの近傍位置には、前記チェーン室20a内へ突出する係合突起20bが形成されており、該係合突起20bには、ゴム部材等で形成される弾性部材32が係合されている。
係合突起20bに係合してチェーンカバー20に取り付けられた弾性部材32は、該チェーンカバー20がシリンダブロック4およびシリンダヘッド8の一端面に接合された状態では、前記シリンダヘッドガスケット6のクランク軸14方向に広がる面6a、すなわちビード61の終端縁61bに圧接している。
【0031】
これにより、ビード61の終端縁61bは、弾性部材32によりクランク軸14方向と略直交する方向に押圧されることとなる。
つまり、クランク軸14方向と略直交する方向に配置されたビード61の終端部61aにおいては、切欠部62のクランク軸14方向に広がる面62aまで延設される終端縁61bが弾性部材32に当接していて、ビード61の終端縁61bによるシール方向はクランク軸14方向と略直交する方向となっている。
【0032】
このように、本例においても、三面合わせ部におけるビード61の終端部61aを、シリンダブロック4、シリンダヘッド8、およびチェーンカバー20の温度変化による相対位置変動が僅かである、クランク軸14方向と略直交する方向に配置しているため、互いに当接するビード61の終端縁61bと前記弾性部材32とが剥離して両者間に隙間が生じることを抑制できる。
これにより、ビード61の終端縁61b部分から、チェーン室20a内部のオイルが外部へ漏れ出すことを防止することができる。
【0033】
また、ビード61の終端縁61bは、チェーンカバー20に取り付けられた弾性部材32により、クランク軸14方向と略直交する方向に押圧されているので、該終端縁61bと弾性部材32とが圧着して、両者の当接状態を確実に保持することができる。さらに、ビード61の終端縁61bと弾性部材32との当接状態は、液状ガスケット22の硬化時の収縮により影響を受けることがなく、ビード61の終端縁61bと弾性部材32との間に隙間が生じることはない。
これにより、より確実にビード61の終端縁61bと弾性部材32とが剥離することを防止して、チェーン室20a内部のオイルが外部へ漏れ出すことを抑えることができる。
特に、本例においては、シリンダブロック4やシリンダヘッド8に凹部4a・8aを形成するなどの加工を施す必要がないので、簡易な構成でビード61の終端縁61bからのオイル漏れを防止することができる。
【0034】
また、シリンダブロック4、シリンダヘッド8、およびチェーンカバー20の3部材が集合する三面合わせ部のシール構造は、次のように構成することもできる。
図9に示すように、シリンダブロック4とシリンダヘッド8との接合部に配置されるシリンダヘッドガスケット6の三面合わせ部に位置する部分においては、前記シリンダヘッドガスケット6のビード61の終端部61aは、クランク軸14方向と略直交する方向へ延びるように配置されており、該ビード61の終端縁61bは、シリンダヘッドガスケット6の、前記チェーン室20aに接するとともに、クランク軸14方向に広がる面6aまで延設されている。
なお、本例では、三面合わせ部におけるシリンダブロック4およびシリンダヘッド8の一端面には、前述のような凹部4a・8aは形成されていない。
【0035】
前記チェーンカバー20における、前記シリンダヘッドガスケット6のクランク軸14方向に広がる面6aの近傍位置には、前記チェーン室20a内へ突出する突起部20cが形成されている。
【0036】
該突起部20cは、クランク軸14方向において、ビード61の終端縁61bよりも反チェーンカバー20側まで延設されるとともに、クランク軸14方向と直交する方向において、シリンダヘッドガスケット6のクランク軸14方向に広がる面6aと所定寸法だけ離れた位置に配置されている。
また、突起部20cの先端部には、他部よりもシリンダヘッドガスケット6のクランク軸14方向に広がる面6a側に突出する加圧部20dが形成されている。
【0037】
このように構成されているシール構造においては、チェーンカバー20のシリンダブロック4およびシリンダヘッド8との接合面に液状ガスケット22を塗布した状態で、該チェーンカバー20をシリンダブロック4およびシリンダヘッド8に接合した際に、前記突起部20cとシリンダヘッドガスケット6のクランク軸14方向に広がる面6aとの間で、かつ加圧部20dよりもチェーンカバー20側に位置する空間に存在する液状ガスケット22aが加圧され、加圧された液状ガスケット22aがシリンダヘッドガスケット6のクランク軸14方向に広がる面6aを押圧することとなる。
【0038】
つまり、液状ガスケット22は、接合された状態のチェーンカバー20とシリンダブロック4およびシリンダヘッド8との隙間寸法よりも若干厚い寸法に塗布されているため、液状ガスケット22を塗布した状態のチェーンカバー20をシリンダブロック4およびシリンダヘッド8に接合すると、塗布された液状ガスケット22が押し潰される。
この場合、前記突起部20c近傍に位置する液状ガスケット22は、該突起部20cとシリンダヘッドガスケット6のクランク軸14方向に広がる面6aとの間を通じて反チェーンカバー20側へ流動しようとするが、突起部20cの先端には加圧部20dが形成されているため、反チェーンカバー20側への流動が制限される。
【0039】
その結果、前記突起部20cとシリンダヘッドガスケット6のクランク軸14方向に広がる面6aとの間で、かつ加圧部20dよりもチェーンカバー20側に位置する空間に存在す前記液状ガスケット22aにかかる圧力が高まり、シリンダヘッドガスケット6のクランク軸14方向に広がる面6aを押圧することとなる。
つまり、クランク軸14方向と略直交する方向に配置されたビード61の終端部61aにおいては、切欠部62のクランク軸14方向に広がる面62aまで延設される終端縁61bが液状ガスケット22に当接していて、ビード61の終端縁61bによるシール方向はクランク軸14方向と略直交する方向となっている。
【0040】
これにより、シリンダヘッドガスケット6のクランク軸14方向に広がる面6aにまで延設されるビード61の終端縁61bに液状ガスケット22aが圧接されるため、液状ガスケット22が硬化時に収縮したとしても、ビード61の終端縁61bと液状ガスケット22aとの間に隙間が生じることを抑えることができる。
【0041】
また、本例においても、ビード61の終端部61aは、三面合わせ部におけるビード61の終端部61aを、シリンダブロック4、シリンダヘッド8、およびチェーンカバー20の温度変化による相対位置変動が僅かである、クランク軸14方向と略直交する方向に配置されているため、互いに当接するビード61の終端縁61bと前記弾性部材32とが剥離して両者間に隙間が生じることを抑制できる。
これにより、ビード61の終端縁61b部分から、チェーン室20a内部のオイルが外部へ漏れ出すことを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明のシール構造が適用されるエンジンを示す側面図である。
【図2】シール構造の第1の実施形態における、シリンダブロックとシリンダヘッドとの間に介装されるシリンダヘッドガスケットの一端面部分を示す平面図である。
【図3】シール構造の第1の実施形態における、シリンダブロックおよびシリンダヘッドとチェーンカバーとの三面合わせ部を示す平面図である。
【図4】シール構造の第1の実施形態における、シリンダブロックおよびシリンダヘッドとチェーンカバーとの三面合わせ部を示す側面断面図である。
【図5】シール構造の第1の実施形態における、三面合わせ部におけるシリンダブロックおよびシリンダヘッドを示す斜視図である。
【図6】シール構造の第2の実施形態における、シリンダブロックとシリンダヘッドとの間に介装されるシリンダヘッドガスケットの一端面部分を示す平面図である。
【図7】シール構造の第2の実施形態における、シリンダブロックおよびシリンダヘッドとチェーンカバーとの三面合わせ部を示す平面図である。
【図8】シール構造の第2の実施形態における、シリンダブロックおよびシリンダヘッドとチェーンカバーとの三面合わせ部を示す側面断面図である。
【図9】シール構造の第3の実施形態における、シリンダブロックおよびシリンダヘッドとチェーンカバーとの三面合わせ部を示す平面図である。
【図10】従来のシール構造が適用されるエンジンを示す側面図である。
【図11】従来のシール構造における、シリンダブロックおよびシリンダヘッドとチェーンカバーとの三面合わせ部を示す平面図である。
【図12】従来のシール構造における、シリンダブロックとシリンダヘッドとの間に介装されるシリンダヘッドガスケットによるシールの様子を示す側面断面図である。
【図13】従来のシール構造における、シリンダブロックとシリンダヘッドとの間に介装されるシリンダヘッドガスケットによるシールの様子を示す斜視図である。
【図14】従来のシール構造における、シリンダブロックおよびシリンダヘッドとチェーンカバーとの三面合わせ部を示す側面断面図である。
【図15】従来のシール構造における、シリンダブロック、シリンダヘッド、およびチェーンカバーのクランク軸方向における相対位置変動により、シリンダヘッドガスケットと液状ガスケットとのシール部が剥離する様子を示す側面断面図である。
【符号の説明】
【0043】
2 エンジン
4 シリンダブロック
4a (シリンダブロックの)凹部
6 シリンダヘッドガスケット
8 シリンダヘッド
8a (シリンダブロックの)凹部
14 クランク軸
20 チェーンカバー
22 液状ガスケット
31・32 弾性部材
61 ビード
61a (ビードの)終端部
61b (ビードの)終端縁
62 (ビードの)切欠部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダブロックの上方にガスケットを介してシリンダヘッドが接合され、該シリンダブロックおよびシリンダヘッドのクランク軸方向における一端面側に液状ガスケットを介してチェーンカバーが接合されるエンジンにおいて、
前記ガスケットの一端面側におけるチェーンカバー当接部分に、クランク軸方向へ広がる面を形成し、
前記ガスケットにおけるビードの終端部をクランク軸方向と略直交する方向に形成して、該ビードの終端縁を、前記ガスケットのクランク軸方向へ広がる面まで延設した、
ことを特徴とするエンジンのシール構造。
【請求項2】
前記ガスケットのクランク軸方向へ広がる面に延設される前記ビードの終端縁が、弾性部材によりクランク軸方向と略直交する方向に押圧される、
ことを特徴とする請求項1に記載のエンジンのシール構造。
【請求項3】
前記シリンダブロックおよびシリンダヘッドの一端面に、両者を跨ぐように凹部を形成し、
前記ガスケットに、前記凹部と位置および形状を合わせた切欠部を形成し、
該ビードの終端縁を、前記ガスケットの切欠部における、クランク軸方向に広がる面まで延設し、
前記シリンダブロックおよびシリンダヘッドの凹部、並びに前記ガスケットの切欠部に弾性部材を挿入して、該弾性部材により前記ビードの終端縁をクランク軸方向と略直交する方向に押圧した、
ことを特徴とする請求項2に記載のエンジンのシール構造。
【請求項4】
前記ビードの終端縁を、前記ガスケットにおける、シリンダブロック、シリンダヘッド、およびチェーンカバーにて形成される空間に接するとともに、クランク軸方向に広がる面まで延設し、
該ビードの終端縁を、チェーンカバーに取り付けた弾性部材によりクランク軸方向と略直交する方向に押圧した、
ことを特徴とする請求項2に記載のエンジンのシール構造。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2008−75483(P2008−75483A)
【公開日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−253420(P2006−253420)
【出願日】平成18年9月19日(2006.9.19)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】